特許第6112034号(P6112034)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 新日本理化株式会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6112034
(24)【登録日】2017年3月24日
(45)【発行日】2017年4月12日
(54)【発明の名称】新規なエステル系潤滑油基油
(51)【国際特許分類】
   C10M 105/36 20060101AFI20170403BHJP
   C10N 30/00 20060101ALN20170403BHJP
   C10N 40/04 20060101ALN20170403BHJP
   C10N 40/08 20060101ALN20170403BHJP
   C10N 40/20 20060101ALN20170403BHJP
   C10N 40/30 20060101ALN20170403BHJP
   C10N 50/10 20060101ALN20170403BHJP
【FI】
   C10M105/36
   C10N30:00 Z
   C10N40:04
   C10N40:08
   C10N40:20
   C10N40:30
   C10N50:10
【請求項の数】5
【全頁数】28
(21)【出願番号】特願2014-26386(P2014-26386)
(22)【出願日】2014年2月14日
(65)【公開番号】特開2014-80631(P2014-80631A)
(43)【公開日】2014年5月8日
【審査請求日】2016年4月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000191250
【氏名又は名称】新日本理化株式会社
(72)【発明者】
【氏名】辻本 真也
(72)【発明者】
【氏名】川原 康行
(72)【発明者】
【氏名】峯 礼子
【審査官】 中野 孝一
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第97/021792(WO,A1)
【文献】 特開平09−221690(JP,A)
【文献】 特開2014−015525(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0144572(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10M101/00−177/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)
【化1】
[式中、R及びRは、同一又は異なって、それぞれ、n−ノニル基又は2−メチル−オクチル基を表し、Rは、水素原子又はメチル基を表す。また、脂環骨格の4位と5位の間の結合は、単結合又は二重結合を表す。]
で表される脂環式ジカルボン酸ジエステル2種以上を含有し、かつ、その2種以上の脂環式ジカルボン酸ジエステルにはR及びRの少なくとも何れか一方がn−ノニル基で表される脂環式ジカルボン酸ジエステルが含まれる潤滑油基油。
【請求項2】
及びRの少なくとも何れか一方がn−ノニル基で表される脂環式ジカルボン酸ジエステルの割合が、脂環式ジカルボン酸ジエステルの総重量に対して50重量%以上である、請求項1に記載の潤滑油基油。
【請求項3】
2種以上の脂環式ジカルボン酸ジエステルに一般式(1)におけるR及びRの少なくとも何れか一方が2−メチル−オクチル基で表される脂環式ジカルボン酸ジエステルが含まれる、請求項1又は請求項2に記載の潤滑油基油。
【請求項4】
脂環式ジカルボン酸ジエステルが、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸ジエステル、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸ジエステル、3−メチル−1,2−シクロヘキサンジカルボン酸ジエステル、4−メチル−1,2−シクロヘキサンジカルボン酸ジエステル、3−メチル−4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸ジエステル又は4−メチル−4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸ジエステルである、請求項1〜3のいずれかに記載の潤滑油基油。
【請求項5】
潤滑油基油が、グリース基油、金属加工油基油、油圧作動油基油、圧縮機基油又はギア油基油である請求項1〜のいずれかに記載の潤滑油基油。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なエステル系潤滑油基油に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車、家電、電子情報機器、工業用機械等の様々な産業分野で使用されている装置や機械では、潤滑油の性能向上が強く求められている。即ち、高速化、高効率化、及び装置の小型化に伴い、グリース、金属加工油、油圧作動油、ギア油等の使用条件は益々過酷になっており、従来の潤滑油に比べてより高い性能を有する潤滑油が必要とされている。
【0003】
従来、潤滑油基油としては安価で入手容易な鉱物油が主に使用されてきた。鉱物油は種々の化学構造を有する炭化水素油の混合物であり、主成分の炭化水素によりパラフィン系とナフテン系(シクロパラフィン系)に大別される(「トライボロジーハンドブック(養賢堂)」など)。パラフィン系鉱物油とナフテン系鉱物油は、粘度特性(例えば、粘度指数等)、潤滑特性、低温流動性、更には精製度により耐熱性、添加剤との適合性にも違いがみられ、潤滑油基油に使用する際には、各々の特性を生かした使い分けがなされている。
【0004】
しかしながら、最近の高負荷条件での使用、メンテナンスフリーなど要求特性が厳しくなるに従い、鉱物油では基油としての要求性能を満足することが困難となり、耐熱性に優れる合成炭化水素油や有機酸エステル等の合成潤滑油基油が用いられるようになってきた。特に有機酸エステルは、耐熱性が良好であると共に、潤滑油の熱劣化や酸化劣化により生成するスラッジやタールの溶解性に優れる。そのため、有機酸エステルを単独で、若しくは鉱物油、合成炭化水素油との混合で用いることにより潤滑油基油の性能を向上させることが可能である。
【0005】
しかし、従来の有機酸エステル、例えば、ジオクチルセバケート、ジオクチルアジペートに代表される脂肪族二塩基酸エステル、トリメチロールプロパントリオクタノエート、ネオペンチルグリコールオクタノエートに代表されるポリオールエステル等は、高温、水分存在下では容易にエステルの分解反応が生じるという問題があり、より加水分解安定性に優れたエステル系潤滑油基油の開発が望まれている。(特許文献1〜3)加水分解安定性に優れた潤滑油基油としては、脂環構造を有するものが提案されている。(特許文献4〜5)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−172267
【特許文献2】特開平03−21697
【特許文献3】特開平05−17787
【特許文献4】国際公開第97/21792号パンフレット
【特許文献5】特開2014−15525
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、加水分解安定性に優れた、良好な低温流動性を有する新規なエステル系潤滑油基油を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を達成すべく鋭意検討の結果、特定の構造を有する脂環式ジカルボン酸ジエステルを潤滑油基油として評価した結果、加水分解安定性に優れた、高い粘度指数及び良好な低温流動性を有する潤滑油基油であることを見出し、かかる知見に基づいて本発明を完成するに至った。
【0009】
即ち本発明は、以下の項目の潤滑油基油を提供するものである。
【0010】
[項1]
一般式(1)
【化1】
[式中、R及びRは、同一又は異なって、それぞれ、炭素数8〜12の直鎖状若しくは分岐鎖状アルキル基を表し、Rは、水素原子又はメチル基を表す。また、脂環骨格の4位と5位の間の結合は、単結合又は二重結合を表す。]
で表される脂環式ジカルボン酸ジエステル2種以上を含有し、かつ、その2種以上の脂環式ジカルボン酸ジエステルにはR及びRの少なくとも何れか一方がn−ノニル基で表される脂環式ジカルボン酸ジエステルが含まれる潤滑油基油。
【0011】
[項2]
及びRの少なくとも何れか一方がn−ノニル基で表される脂環式ジカルボン酸ジエステルの割合が、脂環式ジカルボン酸ジエステルの総重量に対して50重量%以上である、項1に記載の潤滑油基油。
【0012】
[項3]
2種以上の脂環式ジカルボン酸ジエステルに一般式(1)におけるR及びRの少なくとも何れか一方が炭素数9の分岐鎖状アルキル基で表される脂環式ジカルボン酸ジエステルが含まれる、項1又は項2に記載の潤滑油基油。
【0013】
[項4]
脂環式ジカルボン酸ジエステルが、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸ジエステル、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸ジエステル、3−メチル−1,2−シクロヘキサンジカルボン酸ジエステル、4−メチル−1,2−シクロヘキサンジカルボン酸ジエステル、3−メチル−4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸ジエステル又は4−メチル−4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸ジエステルである、項1〜3のいずれかに記載の潤滑油基油。
【0014】
[項5]
脂環式ジカルボン酸若しくはその無水物と、炭素数9の脂肪族飽和アルコールの混合物とをエステル化反応して得られる脂環式ジカルボン酸ジエステルを含有する潤滑油基油であって、前記炭素数9の脂肪族飽和アルコールの混合物が、(1)1−オクテン、一酸化炭素と水素とのヒドロホルミル化反応による炭素数9のアルデヒドを製造する工程及び(2)炭素数9のアルデヒドを水素添加してアルコールに還元する工程を具備する製造工程により製造された直鎖構造及び分岐鎖構造を有する炭素数9の脂肪族飽和アルコールを含むことを特徴とする潤滑油基油。
【0015】
[項6]
脂環式ジカルボン酸が、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸、3−メチル−1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、4−メチル−1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、3−メチル−4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸又は4−メチル−4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸である、項5に記載の潤滑油基油。
【0016】
[項7]
一般式(2)
【化2】
[式中、R及びRは、同一又は異なって、それぞれ、炭素数8〜12の直鎖状若しくは分岐鎖状アルキル基を表し、Rは、水素原子又はメチル基を表す。]
で表される芳香族ジカルボン酸ジエステル2種以上を含有し、かつ、その2種以上の芳香族ジカルボン酸ジエステルにはR及びRの少なくとも何れか一方がn−ノニル基で表される芳香族ジカルボン酸ジエステルを、水素化することによって得られる脂環式ジカルボン酸ジエステルが含まれる潤滑油基油。
【0017】
[項8]
潤滑油基油が、グリース基油、金属加工油基油、油圧作動油基油、圧縮機基油又はギア油基油である項1〜7のいずれかに記載の潤滑油基油。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、加水分解安定性に優れ、高い粘度指数及び良好な低温流動性を有するエステル系潤滑油基油を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明のエステル系潤滑油基油は、一般式(1)で表される脂環式ジカルボン酸ジエステルを2種以上含有することを特徴とするものである。
【0020】
<脂環式ジカルボン酸ジエステル>
本発明の潤滑油基油に使用する脂環式ジカルボン酸ジエステルは、一般式(1)で表される脂環式ジカルボン酸ジエステルを2種以上含有し、かつ、その2種以上の脂環式ジカルボン酸ジエステルに一般式(1)におけるR及びRの少なくとも何れか一方がn−ノニル基で表される脂環式ジカルボン酸ジエステルを含む混合物である。
【0021】
一般式(1)におけるR及びRの少なくとも何れか一方がn−ノニル基で表される脂環式ジカルボン酸ジエステルの含有割合は、2種以上の脂環式ジカルボン酸ジエステルの総重量に対して、好ましくは50%重量以上、より好ましくは50〜98重量%、特に70〜95重量%が推奨される。
【0022】
上記一般式(1)のR及びRは、同一又は異なって、それぞれ、炭素数8〜12の直鎖状若しくは分岐鎖状アルキル基であり、好ましくは炭素数8〜10の直鎖状若しくは分岐鎖状アルキル基、特にn−ノニル基又は炭素数9の分岐鎖状アルキル基が推奨される。
【0023】
前記アルキル基として、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ウンデシル基、n−ドデデシル基の直鎖状アルキル基、6−メチル−ヘプチル基、5−メチル−ヘプチル基、4−メチル−ヘプチル基、3−メチル−ヘプチル基、2−メチル−ヘプチル基、1−メチル−ヘプチル基、5,5−ジメチル−ヘキシル基、4,5−ジメチル−ヘキシル基、3,5−ジメチル−ヘキシル基、2,5−ジメチル−ヘキシル基、4,4−ジメチル−ヘキシル基、3,4−ジメチル−ヘキシル基、2,4−ジメチル−ヘキシル基、3,3−ジメチル−ヘキシル基、2,3−ジメチル−ヘキシル基、2,2−ジメチル−ヘキシル基、4−エチル−ヘキシル基、3−エチル−ヘキシル基、2−エチル−ヘキシル基、3−エチル−4−メチル−ペンチル基、3−エチル−3−メチル−ペンチル基、3−エチル−2−メチル−ペンチル基、2−エチル−4−メチル−ペンチル基、2−エチル−3−メチル−ペンチル基、2−エチル−2−メチル−ペンチル基等の炭素数8の分岐鎖状アルキル基;7−メチル−オクチル基、6−メチル−オクチル基、5−メチル−オクチル基、4−メチル−オクチル基、3−メチル−オクチル基、2−メチル−オクチル基、1−メチル−オクチル基、6,6−ジメチル−ヘプチル基、5,6−ジメチル−ヘプチル基、4,6−ジメチル−ヘプチル基、3,6−ジメチル−ヘプチル基、2,6−ジメチル−ヘプチル基、5,5−ジメチル−ヘプチル基、4,5−ジメチル−ヘプチル基、3,5−ジメチル−ヘプチル基、2,5−ジメチル−ヘプチル基、4,4−ジメチル−ヘプチル基、3,4−ジメチル−ヘプチル基、2,4−ジメチル−ヘプチル基、3,3−ジメチル−ヘプチル基、2,3−ジメチル−ヘプチル基、2,2−ジメチル−ヘプチル基、5−エチル−へプチル基、4−エチル−へプチル基、3−エチル−へプチル基、2−エチル−へプチル基、4,5,5−トリメチル−ヘキシル基、3,5,5−トリメチル−ヘキシル基、2,5,5−トリメチル−ヘキシル基、4,4,5−トリメチル−ヘキシル基、3,4,4−トリメチル−ヘキシル基、2,4,4−トリメチル−ヘキシル基、3,3,5−トリメチル−ヘキシル基、3,3,4−トリメチル−ヘキシル基、2,3,3−トリメチル−ヘキシル基、2,2,5−トリメチル−ヘキシル基、2,2,4−トリメチル−ヘキシル基、2,2,3−トリメチル−ヘキシル基等の炭素数9の分岐鎖状アルキル基;8−メチル−ノニル基、7−メチル−ノニル基、6−メチル−ノニル基、5−メチル−ノニル基、4−メチル−ノニル基、3−メチル−ノニル基、2−メチル−ノニル基、1−メチル−ノニル基、7,7−ジメチル−オクチル基、6,7−ジメチル−オクチル基、5,7−ジメチル−オクチル基、4,7−ジメチル−オクチル基、3,7−ジメチル−オクチル基、2,7−ジメチル−オクチル基、6,6−ジメチル−オクチル基、5,6−ジメチル−オクチル基、4,6−ジメチル−オクチル基、3,6−ジメチル−オクチル基、2,6−ジメチル−オクチル基、5,5−ジメチル−オクチル基、4,5−ジメチル−オクチル基、3,5−ジメチル−オクチル基、2,5−ジメチル−オクチル基、4,4−ジメチル−オクチル基、3,4−ジメチル−オクチル基、2,4−ジメチル−オクチル基、3,3−ジメチル−オクチル基、2,3−ジメチル−オクチル基、2,2−ジメチル−オクチル基、6−エチル−オクチル基、5−エチル−オクチル基、4−エチル−オクチル基、3−エチル−オクチル基、2−エチル−オクチル基、5,6,6−トリメチル−ヘプチル基、4,6,6−トリメチル−ヘプチル基、3,6,6−トリメチル−ヘプチル基、2,6,6−トリメチル−ヘプチル基、5,5,6−トリメチル−ヘプチル基、4,5,5−トリメチル−ヘプチル基、3,5,5−トリメチル−ヘプチル基、2,5,5−トリメチル−ヘプチル基、4,4,6−トリメチル−ヘプチル基、4,4,5−トリメチル−ヘプチル基、3,4,4−トリメチル−ヘプチル基、2,4,4−トリメチル−ヘプチル基、3,3,6−トリメチル−ヘプチル基、3,3,5−トリメチル−ヘプチル基、3,3,4−トリメチル−ヘプチル基、2,3,3−トリメチル−ヘプチル基、2,2,6−トリメチル−ヘプチル基、2,2,5−トリメチル−ヘプチル基、2,2,4−トリメチル−ヘプチル基、2,2,3−トリメチル−ヘプチル基等の炭素数10の分岐鎖状アルキル基;9−メチル−デシル基、8−メチル−デシル基、7−メチル−デシル基、6−メチル−デシル基、5−メチル−デシル基、4−メチル−デシル基、3−メチル−デシル基、2−メチル−デシル基、1−メチル−デシル基等の炭素数11の分岐鎖状アルキル基;10−メチル−ウンデシル基、9−メチル−ウンデシル基、8−メチル−ウンデシル基、7−メチル−ウンデシル基、6−メチル−ウンデシル基、5−メチル−ウンデシル基、4−メチル−ウンデシル基、3−メチル−ウンデシル基、2−メチル−ウンデシル基、1−メチル−ウンデシル基、2−ブチル−オクチル基等の炭素数12の分岐鎖状アルキル基、などが例示される。
【0024】
本発明に係る脂環式ジカルボン酸ジエステルの化学構造の一部を構成する一般式(1)における脂環骨格の4位と5位の間の結合は、単結合又は二重結合であり、Rは、水素原子又はメチル基である。
【0025】
脂環骨格の具体例としては、シクロヘキサン骨格、4−シクロヘキセン骨格、3−メチルシクロヘキサン骨格、4−メチルシクロヘキサン骨格、3−メチル−4−シクロヘキセン骨格、4−メチル−4−シクロヘキセン骨格が例示される。これらの中でも、シクロヘキサン骨格、3−メチルシクロヘキサン骨格、4−メチルシクロヘキサン骨格が好ましく、特に、シクロヘキサン骨格、4−メチルシクロヘキサン骨格が好ましい。
【0026】
本発明に係る脂環式ジカルボン酸ジエステルの製造方法は、目的物が得られれば特にその製法に限定されない。例えば、所定の脂環式ジカルボン酸成分(1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸、3−メチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸、4−メチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸、3−メチル−4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸、4−メチル−4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸、それらの無水酸や塩化物等)と所定のアルコール成分(炭素数8〜12の脂肪族飽和アルコール)とを常法に従って、好ましくは窒素等の不活性化ガス雰囲気下において、エステル化触媒の存在下または無触媒下で加熱撹拌しながらエステル化反応することにより調製する方法や、シクロヘキサンジカルボン酸ジエステルにあっては、ベンゼン−1,2−ジカルボン酸及びその誘導体(無水酸、塩化物、アルキル核置換体等を含む)と所定のアルコール成分(炭素数8〜12の脂肪族飽和アルコール)とを常法に従って、好ましくは窒素等の不活性化ガス雰囲気下において、エステル化触媒の存在下または無触媒下で加熱撹拌しながらエステル化反応した後、当該ベンゼン環を常法に従って、水素雰囲気下において、水素化触媒の存在下で核水素化反応することにより調製する方法、などが例示される。
【0027】
前記の製造方法の例示の通り、上記項5の発明において、脂環式ジカルボン酸ジエステルを含有する潤滑油基油の「脂環式ジカルボン酸ジエステル」を、脂環式ジカルボン酸若しくはその無水物と炭素数9の脂肪族飽和アルコールの混合物とをエステル化反応して得られるものと記載しているが、前記のとおり、ベンゼン−1,2−ジカルボン酸の誘導体及びその誘導体を出発物質としたエステル化反応・核水素化反応を経由して得られるものも同義であり、当該「脂環式ジカルボン酸ジエステル」は製法により限定されるものではない。
【0028】
本発明に係る脂環式ジカルボン酸ジエステルを得るために用いられる所定のアルコール成分としては、n−ノナノールと炭素数8〜12の直鎖状又は分岐鎖状脂肪族飽和アルコール(ただしn−ノナノールを除く。)であり、該炭素数8〜12の直鎖状又は分岐鎖状脂肪族飽和アルコールは、好ましくは炭素数8〜10の直鎖状脂肪族飽和アルコール、より好ましくは炭素数9の分岐鎖状脂肪族飽和アルコールが必須成分として含まれる態様が推奨される。
【0029】
前記炭素数8〜12の直鎖状又は分岐鎖状脂肪族飽和アルコール(ただしn−ノナノールを除く。)の具体例としては、n−オクタノール、n−デカノール、n−ウンデカノール、n−ドデカノールの直鎖状脂肪族飽和アルコール、6−メチル−ヘプタノール、5−メチル−ヘプタノール、4−メチル−ヘプタノール、3−メチル−ヘプタノール、2−メチル−ヘプタノール、1−メチル−ヘプタノール、5,5−ジメチル−ヘキサノール、4,5−ジメチル−ヘキサノール、3,5−ジメチル−ヘキサノール、2,5−ジメチル−ヘキサノール、4,4−ジメチル−ヘキサノール、3,4−ジメチル−ヘキサノール、2,4−ジメチル−ヘキサノール、3,3−ジメチル−ヘキサノール、2,3−ジメチル−ヘキサノール、2,2−ジメチル−ヘキサノール、4−エチル−ヘキサノール、3−エチル−ヘキサノール、2−エチル−ヘキサノール、3−エチル−4−メチル−ペンタノール基、3−エチル−3−メチル−ペンタノール、3−エチル−2−メチル−ペンタノール、2−エチル−4−メチル−ペンタノール、2−エチル−3−メチル−ペンタノール、2−エチル−2−メチル−ペンタノール等の炭素数8の分岐鎖状脂肪族飽和アルコール;7−メチル−オクタノール、6−メチル−オクタノール、5−メチル−オクタノール、4−メチル−オクタノール、3−メチル−オクタノール、2−メチル−オクタノール、1−メチル−オクタノール、6,6−ジメチル−ヘプタノール、5,6−ジメチル−ヘプタノール、4,6−ジメチル−ヘプタノール、3,6−ジメチル−ヘプタノール、2,6−ジメチル−ヘプタノール、5,5−ジメチル−ヘプタノール、4,5−ジメチル−ヘプタノール、3,5−ジメチル−ヘプタノール、2,5−ジメチル−ヘプタノール、4,4−ジメチル−ヘプタノール、3,4−ジメチル−ヘプタノール、2,4−ジメチル−ヘプタノール、3,3−ジメチル−ヘプタノール、2,3−ジメチル−ヘプタノール、2,2−ジメチル−ヘプタノール、5−エチル−へプタノール、4−エチル−へプタノール、3−エチル−へプタノール、2−エチル−へプタノール、4,5,5−トリメチル−ヘキサノール、3,5,5−トリメチル−ヘキサノール、2,5,5−トリメチル−ヘキサノール、4,4,5−トリメチル−ヘキサノール、3,4,4−トリメチル−ヘキサノール、2,4,4−トリメチル−ヘキサノール、3,3,5−トリメチル−ヘキサノール、3,3,4−トリメチル−ヘキサノール、2,3,3−トリメチル−ヘキサノール、2,2,5−トリメチル−ヘキサノール、2,2,4−トリメチル−ヘキサノール、2,2,3−トリメチル−ヘキサノール等の炭素数9の分岐鎖状脂肪族飽和アルコール;8−メチル−ノナノール、7−メチル−ノナノール、6−メチル−ノナノール、5−メチル−ノナノール、4−メチル−ノナノール、3−メチル−ノナノール、2−メチル−ノナノール、1−メチル−ノナノール、7,7−ジメチル−オクタノール、6,7−ジメチル−オクタノール、5,7−ジメチル−オクタノール、4,7−ジメチル−オクタノール、3,7−ジメチル−オクタノール、2,7−ジメチル−オクタノール、6,6−ジメチル−オクタノール、5,6−ジメチル−オクタノール、4,6−ジメチル−オクタノール、3,6−ジメチル−オクタノール、2,6−ジメチル−オクタノール、5,5−ジメチル−オクタノール、4,5−ジメチル−オクタノール、3,5−ジメチル−オクタノール、2,5−ジメチル−オクタノール、4,4−ジメチル−オクタノール、3,4−ジメチル−オクタノール、2,4−ジメチル−オクタノール、3,3−ジメチル−オクタノール、2,3−ジメチル−オクタノール、2,2−ジメチル−オクタノール、6−エチル−オクタノール、5−エチル−オクタノール、4−エチル−オクタノール、3−エチル−オクタノール、2−エチル−オクタノール、5,6,6−トリメチル−ヘプタノール、4,6,6−トリメチル−ヘプタノール、3,6,6−トリメチル−ヘプタノール、2,6,6−トリメチル−ヘプタノール、5,5,6−トリメチル−ヘプタノール、4,5,5−トリメチル−ヘプタノール、3,5,5−トリメチル−ヘプタノール、2,5,5−トリメチル−ヘプタノール、4,4,6−トリメチル−ヘプタノール、4,4,5−トリメチル−ヘプタノール、3,4,4−トリメチル−ヘプタノール、2,4,4−トリメチル−ヘプタノール、3,3,6−トリメチル−ヘプタノール、3,3,5−トリメチル−ヘプタノール、3,3,4−トリメチル−ヘプタノール、2,3,3−トリメチル−ヘプタノール、2,2,6−トリメチル−ヘプタノール、2,2,5−トリメチル−ヘプタノール、2,2,4−トリメチル−ヘプタノール、2,2,3−トリメチル−ヘプタノール等の炭素数10の分岐鎖状脂肪族飽和アルコール;9−メチル−デカノール、8−メチル−デカノール、7−メチル−デカノール、6−メチル−デカノール、5−メチル−デカノール、4−メチル−デカノール、3−メチル−デカノール、2−メチル−デカノール、1−メチル−デカノール等の炭素数11の分岐鎖状脂肪族飽和アルコール;10−メチル−ウンデカノール、9−メチル−ウンデカノール、8−メチル−ウンデカノール、7−メチル−ウンデカノール、6−メチル−ウンデカノール、5−メチル−ウンデカノール、4−メチル−ウンデカノール、3−メチル−ウンデカノール、2−メチル−ウンデカノール、1−メチル−ウンデカノール、2−ブチル−オクタノール等の炭素数12の分岐鎖状脂肪族飽和アルコール、などが例示される。
【0030】
前記脂肪族飽和アルコールは、市販品、試薬や公知の合成方法で調製したものなどが使用できる。例えば、直鎖状脂肪族飽和アルコールの公知の合成方法としては、脂肪酸(或いはメチルエステル化物)水素還元して製造する方法や、α−オレフィンと一酸化炭素と水素とからヒドロホルミル化反応してアルデヒドとし、そのアルデヒドを水素化してアルコールに還元する方法などが例示される。
【0031】
市販品としては、市販品としては、「コノール 10WS」(製品名,新日本理化社製,n−オクタノール),「コノール 1098」(製品名,新日本理化社製,n−デカノール)、「コノール 20P」(製品名,新日本理化社製,n−ドデカノール)などが例示される。またn−ノナノールが主成分である「リネボール9」(製品名,シェルケミカルズ社製,組成:70%以上のn−ノナノールと30%以下の2−メチル−1−オクタノールの混合物)のような混合アルコールは、そのままエステル化反応に供することが可能な市販品である。例えば、前記「リネボール9」のような直鎖状脂肪族飽和アルコールを主成分とする混合アルコールは、(1)1−オクテン、一酸化炭素と水素とのヒドロホルミル化反応による炭素数9のアルデヒドを製造する工程及び(2)炭素数9のアルデヒドを水素添加してアルコールに還元する工程を具備する製造工程により製造することができる。前記(1)の工程であるヒドロホルミル化反応は、例えば、コバルト触媒又はロジウム触媒の存在下、1−オクテン、一酸化炭素及び水素を反応することにより炭素数9のアルデヒドを製造することができる。また(2)の工程である水素添加は、例えば、ニッケル触媒又はパラジウム触媒等の貴金属触媒の存在下、炭素数9のアルデヒドを水素加圧化で、水素添加することによりアルコールに還元することができる。
前記工程(1)と工程(2)の間、工程(2)の後に、適宜、それぞれ分離処理、吸着処理、蒸留処理等の処理工程を設けることができる。
【0032】
分岐鎖状脂肪族飽和アルコールの公知の合成方法としては、例えば、プロピレンをヒドロホルミル化してブチルアルデヒドとし、それをアルドール縮合反応後に水素化して2−エチルヘキサノールを調製する方法や、イソブチレンを2量体化(2量化反応)して得られるジイソブチレンをヒドロホルミル化した後に水素化して3,5,5−トリメチル−1−ヘキサノールを調製する方法や、プロピレンを3量化反応して得られたものをヒドロホルミル化(オキソ法)した後に水素化して分岐鎖状のデカノールを調製する方法(なお該デカノールは、8−メチル−1−ノナノールを含む、メチル分枝を有する複数の異性体からなる混合物であり、このような混合物の場合には「イソデカノール」と称して分岐鎖状の飽和脂肪族アルコールを表現する。)、など挙げられる。
【0033】
換言すると、プロピレン、n−ブチレン、イソブチレンなどの低級オレフィンを出発原料として、2量化反応や3量化反応、ヒドロホルミル化反応(オキソ法)、アルドール縮合反応、水素化反応(オレフィンやアルデヒド基などの還元)等を適宜組み合わせて、比較的総炭素数の多い(例えば炭素数8以上)分岐鎖状の飽和脂肪族アルコールを調製する方法である。出発物質や反応方法の組み合わせによっては、単一化合物ではなく、前記「イソデカノール」のように、同じ炭素数の分岐状態が異なる分岐鎖状の飽和脂肪族モノアルコールの異性体の混合物となる場合もある。得られたアルコールが異性体の混合物の場合には、精留などの分離方法により当該異性体を分離して得ることも可能である。
【0034】
主な市販品としては、例えば、3−メチル−1−ヘキサノール、5−メチル−1−ヘキサノール、3−メチル−1−ヘプタノール、5−メチル−1−ヘプタノール、2−エチル−1−ヘキサノール、「オクタノール」(製品名,KHネオケム社製)、3,5,5−トリメチル−1−ヘキサノール、「ノナノール」(製品名,KHネオケム社製)、7−メチル−1−オクタノール、「オキソコール900」(製品名,KHネオケム社製)、「Diadol 9」(製品名,三菱化学社製)、「イソノナノール」(製品名,三菱化学社製)、「Exaal 9」(製品名,エクソン社製)、2−エチル−1−オクタノール、8−メチル−1−ノナノール、「デカノール」(製品名,KHネオケム社製)、などが挙げられる。
【0035】
なお工業的に入手される市販品の中にも、メチル分枝を有する複数の異性体の混合物がある。その場合には、本明細書および特許請求の範囲において、「イソ」を付して当該アルコールを表現する。そして、その対応するアルコールの一般式(1)におけるR及びRは「イソアルキル基」と称して当該フタル酸ジエステルを表現する。例えば、「イソノナノール」の場合、総炭素数9で分岐状態が異なる異性体の混合物(メチル分枝がある位置が異なる等の複数の異性体を含む混合物)を意味し、その対応するアルコールの一般式(1)のR及びRは「イソノニル基」と表す。
【0036】
前記アルコール成分と酸成分とをエステル化反応を行うに際し、該アルコール成分は、例えば、酸成分1モルに対して2〜5モル、好ましくは2.01〜3モル、特に2.02〜2.5モルの範囲で使用することが好ましい(換言すると、酸成分1当量に対して1〜2.5当量、好ましくは1.005〜1.5当量、特に1.01〜1.25当量の範囲で使用することが好ましい)。
【0037】
エステル化反応に用いる触媒としては、鉱酸、有機酸又はルイス酸類等が例示される。より具体的には、鉱酸として、硫酸、塩酸、燐酸が例示され、有機酸としては、p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸等が例示され、ルイス酸としては、アルミニウム誘導体、スズ誘導体、チタン誘導体、鉛誘導体、亜鉛誘導体が例示され、これらの1種又は2種以上を併用することが可能である。
【0038】
それらの中でも、p−トルエンスルホン酸、炭素数3〜8のテトラアルキルチタネート、酸化チタン、水酸化チタン、炭素数3〜12の脂肪酸スズ、酸化スズ、水酸化スズ、酸化亜鉛、水酸化亜鉛、酸化鉛、水酸化鉛、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウムが特に好ましい。その使用量は、例えば、エステル合成原料である酸成分およびアルコール成分の総重量に対して0.01重量%〜5.0重量%、好ましくは0.02重量%〜4.0重量%、特に0.03重量%〜3.0重量%を使用することが好ましい。
【0039】
反応温度としては、100℃〜230℃が例示され、通常、3時間〜30時間で反応は完結する。
【0040】
エステル化反応においては、必要に応じて、反応により副生してくる水の留出を促進するために、ベンゼン、トルエン、キシレン、シクロヘキサンなどの水同伴剤(共沸作用、同伴作用等)を使用することが可能である。
【0041】
又、エステル化反応時に原料、生成エステル及び有機溶媒(水同伴剤)の酸化劣化により酸化物、過酸化物、カルボニル化合物などの含酸素有機化合物を生成すると耐熱性、耐候性等に悪影響を与えるため、系内を窒素ガスなどの不活性ガス雰囲気下又は不活性ガス気流下で、常圧ないし減圧下にて反応を行うことが望ましい。
【0042】
反応後に得られる「エステル化粗物」を後処理する工程としては次の工程が例示される。例えば、減圧下又は常圧下にて蒸留可能な過剰の原料等を減圧下または常圧下にて留去する工程、原料由来のカルボン酸成分が残存する場合にはアルカリ水溶液による洗浄(中和)及び水洗を行う工程、液液抽出等の抽出操作により精製する工程、吸着剤により吸着精製する工程などが例示される。これらの工程を適宜組み合わせて、エステル化粗物を後処理して精製することにより、本発明に係る脂環式ジカルボン酸ジエステルを得ることができる。
【0043】
前記アルカリ水溶液による洗浄(中和)を行う場合、その洗浄液としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、炭酸ナトリウム等のアルカリ水溶液が例示される。そのアルカリ濃度は特に限定されないが、0.5〜20重量%程度が好ましい。アルカリ水溶液の使用量は反応終了後のエステル化粗物の全酸価に対して等当量又は適宜過剰となる量が推奨される。そして、アルカリ洗浄(中和)後の洗浄物に対して、さらに水による洗浄操作を水洗水の水層が中性となるまで繰り返すことが好ましい。
【0044】
前記吸着精製に用いる吸着剤としては、活性炭、活性白土、活性アルミナ、ハイドロタルサイト、シリカゲル、シリカアルミナ、ゼオライト、マグネシア、カルシア、珪藻土などが例示される。
【0045】
また、シクロヘキサンジカルボン酸ジエステルにあっては、ベンゼン−1,2−ジカルボン酸及びその誘導体(無水酸、塩化物、アルキル核置換体等を含む)と所定のアルコール成分(炭素数8〜12の脂肪族飽和アルコール)とを常法に従って、好ましくは窒素等の不活性化ガス雰囲気下において、エステル化触媒の存在下または無触媒下で加熱撹拌しながらエステル化反応し、芳香族ジカルボン酸ジエステルとした後、当該ベンゼン環を常法に従って、水素雰囲気下において、水素化触媒の存在下で核水素化反応することにより調製する方法が例示される。
【0046】
水素化触媒としては、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛などの卑金属、ロジウム、ルテニウム、白金、パラジウムなどの貴金属などが触媒として使用できる。
【0047】
卑金属としては、0価の金属に限らず、硝酸塩、硫酸塩、酢酸塩、塩化物、臭化物、酸化物、水酸化物等の無機化合物、アセチルアセトナート化合物、アミン化合物、ホスフィン化合物、カルボニル化合物との錯体等が挙げられる。
【0048】
さらに、上記卑金属の他に、ホウ素、マグネシウム、アルミニウム、ケイ素、カルシウム、チタン、クロム、マンガン、パラジウム、銀、スズ、バリウム、モリブテン等の1種以上を添加した変性触媒として使用することもできる。
【0049】
上記卑金属触媒はそのままで使用することができるが、通常、スポンジメタル型触媒又は担体担持型触媒として使用される。
【0050】
スポンジメタル型触媒としては、従来公知或いは市販されているものが広く使用でき、例えば、スポンジニッケル触媒、スポンジコバルト触媒、スポンジ銅触媒、スポンジ鉄触媒、スポンジ亜鉛触媒等が挙げられ、この中でもスポンジニッケル触媒、スポンジコバルト触媒が好ましく、選択率が高い点から、特にスポンジニッケル触媒が好ましい。
【0051】
スポンジメタル型触媒は、展開後の含水状態のものから、水分を適当な溶媒で置換した後に使用することが好ましい。水分を置換する際に使用する溶媒としては、水と相溶し、水素化生成物に悪影響を及ぼさない溶媒であれば、特に限定されない。
【0052】
担体担持型触媒としては、従来公知或いは市販されているものが広く使用でき、例えば、安定化ニッケル触媒、耐硫黄性ニッケル触媒、フレークニッケル触媒、担持コバルト触媒等が挙げられる。この中でも安定化ニッケル触媒、耐硫黄性ニッケル触媒が好ましい。
【0053】
該担体担持型触媒に使用される坦体としては、珪藻土、軽石、活性炭、グラファイト、シリカゲル、アルミナ、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン、ゼオライト、炭酸カルシウム、硫酸バリウム等が例示され、なかでも珪藻土、アルミナ等が好ましい。これらの坦体は、1種でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0054】
該担体担持型触媒の卑金属成分の担持量は、特に限定されないが、触媒の総重量に対して、卑金属分として、通常、1〜90重量%程度、好ましくは20〜80重量%である。
【0055】
これらの担体担持触媒の製造方法は特に限定されず、例えば、含浸法、共沈法等の従来公知の方法により容易に製造することができる。通常は、市販されているものをそのまま、或いは、使用する前に還元処理等の適当な活性化処理をした後で反応に供することができる。
【0056】
これら卑金属触媒の形態は特に限定されず、選択される反応方式に応じて粉末状、成型触媒など適宜選択して使用される。粉末状の触媒は、通常、回分或いは連続の懸濁床の水素化反応に用いられ、成型触媒は、固定床連続式の水素化反応に使用される。また、成型触媒としては、使用する反応器の大きさにより適宜選択されるが、通常は直径2〜6mm、高さ2〜8mmの範囲の円柱状が好ましい。
【0057】
水素化反応に用いられる卑金属触媒の使用量は、通常、原料に対して、0.1〜50重量%の範囲であり、好ましくは0.5〜20重量%、特に好ましくは1〜10重量%が推奨される。この範囲内において、経済的に有利かつ十分な反応速度で水素化反応を行うことができる。
【0058】
上記貴金属としては、従来公知のものが広く使用できるが、具体的には、0価の金属、硝酸塩、硫酸塩、酢酸塩、塩化物、臭化物、酸化物、水酸化物等の各種該金属含有無機物化合物、アセチルアセトナート化合物等の各種該金属含有有機物、アミン錯体、ホスフィン錯体、カルボニル化合物等の各種該金属含有錯体化合物などが例示される。これらは、それぞれ単独で又は2種以上組み合わせて触媒として使用することもできる。
【0059】
上記貴金属触媒は、そのままで使用することもできるが、通常、担体担持触媒として使用することが好ましい。担体担持触媒としては、従来公知或いは市販されているものでもよく、具体的には、珪藻土、軽石、カーボン(グラファイト、活性炭等)、シリカゲル、アルミナ、ハイドロタルサイト、硫酸バリウム、硫酸マグネシウム、ゼオライト、炭酸カルシウム及びこれらの混合物等が例示される。これらのうち特に、カーボン担持触媒が、反応性や選択性の点で好ましい。
【0060】
担体担持触媒の貴金属成分の担持量は、特に限定されないが、触媒の総重量に対して、貴金属として、通常0.1〜10重量%程度、好ましくは0.5〜5重量%である。担持量が0.1重量%未満では、触媒重量あたりの活性が低下し、触媒を多量に使用する必要が生じて設備的にも経済的にも不利である。また、10重量%を超えた貴金属触媒では、担持した貴金属量に見合う反応速度の向上は得られずあまり好ましくない。
【0061】
貴金属触媒の使用量としては、特に限定されないが、原料に対して、貴金属として0.01〜5重量%が例示され、より好ましくは0.05〜2重量%である。
【0062】
これらの貴金属触媒の形態は、特に限定されず、選択される反応方式に応じて粉末状、タブレット状等適宜選択して使用される。具体的には、回分或いは連続の懸濁床反応には粉末触媒が、また、固定床反応にはタブレット触媒が好適に使用される。
【0063】
水素化反応の反応温度は、触媒の種類、触媒量、水素圧力等により異なり、一概にはいえないが、50〜280℃の範囲が好ましく、特に70〜250℃が推奨される。水素化時の水素分圧としては、広い範囲から選択することができるが、0.5〜20MPaの範囲、特に1〜10MPaの範囲が好ましい。反応時間は、触媒の種類、触媒量や諸条件によって異なるが、通常1〜12時間程度である。
【0064】
反応形式としては、回分反応、連続反応いずれの方法でもよく、また流動床、固定床のいずれも選択することができる。
【0065】
水素化反応終了後は、濾過、遠心分離等公知の方法により触媒を分離除去した後、必要に応じて上記記載の「エステル化粗物」の後処理工程を行ない、本発明に係るシクロヘキサンジカルボン酸ジエステルを得ることができる。
【0066】
かくして得られる脂環式ジカルボン酸ジエステルは、2つのエステル基の立体配置によりトランス体とシス体の異性体が存在する場合があるが、本発明の効果を発揮させる上ではトランス体、シス体及びそれらの混合物の何れも使用が可能である。
【0067】
脂環式ジカルボン酸ジエステルの酸価としては、好ましくは0.1mgKOH/g以下、より好ましくは0.05mgKOH/g以下が推奨される。酸価が0.1mgKOH/g以下のときには脂環式ジカルボン酸ジエステル自身の耐熱性がより向上する傾向が認められ、このような好ましい範囲では本発明の潤滑油の耐熱酸化安定性の向上にも好影響を与える。酸価を低減する方法としては、反応を十分に進行させる方法や、後処理工程でのアルカリ成分で中和・水洗する方法(上記のアルカリ水溶液による洗浄(中和)及び水による洗浄を行う工程)などが例示される。
【0068】
脂環式ジカルボン酸ジエステルの水酸基価としては、好ましくは2mgKOH/g以下、より好ましくは1mgKOH/g以下が推奨される。水酸基価が2mgKOH/g以下のときには脂環式ジカルボン酸ジエステル自身の吸湿性がより低くなり、耐熱性もより向上する傾向が認められ、このような好ましい範囲では本発明の潤滑油の耐水性及び耐熱酸化安定性の向上にも好影響を与える。水酸基価を低減する方法としては、反応を十分に進行させる方法や、後処理工程でのモノアルコール成分を減圧留去する方法(上記の蒸留可能な過剰の原料等を減圧下または常圧下にて留去する工程)などが例示される。
【0069】
上述の通り、本発明の潤滑油基油には脂環式ジカルボン酸ジエステルを2種以上使用し、かつ、その内2種以上の内、2つのアルキルエステル基の少なくとも何れか一方がn−ノニルエステル基(即ち、n−ノニルオキシカルボニル基)で表される脂環式ジカルボン酸ジエステルを含むことが必須である。
【0070】
前記の2つのアルキルエステル基の少なくとも何れか一方がn−ノニルエステル基で表される脂環式ジカルボン酸ジエステルとしては、例えば、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸ジ(n−ノニル)、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸ジ(n−ノニル)、4−メチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジ(n−ノニル)、3−メチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジ(n−ノニル)、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸とn−ノナノール及び2−エチル−1−ヘキサノールとから得られる混基エステル、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸とn−ノナノール及び7−メチル−1−オクタノールとから得られる混基エステル、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸とn−ノナノール及び2−メチル−1−オクタノールとから得られる混基エステル、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸とn−ノナノール及びイソノナノールとから得られる混基エステル、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸とn−ノナノール及び8−メチル−1−ノナノールとから得られる混基エステル、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸とn−ノナノール及びイソデカノールとから得られる混基エステル、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸とn−ノナノール及び3,5,5−トリメチルヘキサノールとから得られる混基エステル、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸とn−ノナノール及び2−エチル−1−ヘキサノールとから得られる混基エステル、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸とn−ノナノール及び7−メチル−1−オクタノールとから得られる混基エステル、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸とn−ノナノール及び2−メチル−1−オクタノールとから得られる混基エステル、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸とn−ノナノール及びイソノナノールとから得られる混基エステル、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸とn−ノナノール及び8−メチル−1−ノナノールとから得られる混基エステル、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸とn−ノナノール及びイソデカノールとから得られる混基エステル、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸とn−ノナノール及び3,5,5−トリメチルヘキサノールとから得られる混基エステル、4−メチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸とn−ノナノール及び6−メチル−1−ヘプタノールとから得られる混基エステル、4−メチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸とn−ノナノール及び2−エチル−1−ヘキサノールとから得られる混基エステル、4−メチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸とn−ノナノール及び7−メチル−1−オクタノールとから得られる混基エステル、4−メチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸とn−ノナノール及び2−メチル−1−オクタノールとから得られる混基エステル、4−メチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸とn−ノナノール及びイソノナノールとから得られる混基エステル、4−メチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸とn−ノナノール及び8−メチル−1−ノナノールとから得られる混基エステル、4−メチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸とn−ノナノール及びイソデカノールとから得られる混基エステル、4−メチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸とn−ノナノール及び3,5,5−トリメチルヘキサノールとから得られる混基エステル、3−メチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸とn−ノナノール及び6−メチル−1−ヘプタノールとから得られる混基エステル、3−メチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸とn−ノナノール及び2−エチル−1−ヘキサノールとから得られる混基エステル、3−メチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸とn−ノナノール及び7−メチル−1−オクタノールとから得られる混基エステル、3−メチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸とn−ノナノール及び2−メチル−1−オクタノールとから得られる混基エステル、3−メチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸とn−ノナノール及びイソノナノールとから得られる混基エステル、3−メチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸とn−ノナノール及び8−メチル−1−ノナノールとから得られる混基エステル、3−メチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸とn−ノナノール及びイソデカノールとから得られる混基エステル、3−メチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸とn−ノナノール及び3,5,5−トリメチルヘキサノールとから得られる混基エステル、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸とn−ノナノール及びn−オクタノールとから得られる混基エステル、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸とn−ノナノール及びn−デカノールとから得られる混基エステル、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸とn−ノナノール及びn−ウンデカノールとから得られる混基エステル、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸とn−ノナノール及びn−ドデカノールとから得られる混基エステル、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸とn−ノナノール及びn−オクタノールとから得られる混基エステル、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸とn−ノナノール及びn−デカノールとから得られる混基エステル、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸とn−ノナノール及びn−ウンデカノールとから得られる混基エステル、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸とn−ノナノール及びn−ドデカノールとから得られる混基エステル、4−メチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸とn−ノナノール及びn−ブタノールとから得られる混基エステル、4−メチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸とn−ノナノール及びn−ペンタノールとから得られる混基エステル、4−メチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸とn−ノナノール及びn−ヘキサノールとから得られる混基エステル、4−メチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸とn−ノナノール及びn−オクタノールとから得られる混基エステル、4−メチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸とn−ノナノール及びn−デカノールとから得られる混基エステル、4−メチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸とn−ノナノール及びn−ウンデカノールとから得られる混基エステル、4−メチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸とn−ノナノール及びn−ドデカノールとから得られる混基エステル、3−メチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸とn−ノナノール及びn−オクタノールとから得られる混基エステル、3−メチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸とn−ノナノール及びn−デカノールとから得られる混基エステル、3−メチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸とn−ノナノール及びn−ウンデカノールとから得られる混基エステル、3−メチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸とn−ノナノール及びn−ドデカノールとから得られる混基エステル、などが例示される。
【0071】
また、当該脂環式ジカルボン酸ジエステルの内、2つのアルキルエステル基の何れもn−ノニルエステル基を含まないアルキル基で表される脂環式ジカルボン酸ジエステルの具体例としては、例えば、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸ジ(6−メチルヘプチル)、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸ジ(2−エチルヘキシル)、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸ジ(7−メチルオクチル)、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸ジ(2−メチルオクチル)、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸ジ(イソノニル)、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸ジ(8−メチルノニル)、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸ジ(イソデシル)、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸ジ(3,5,5−トリメチルヘキシル)、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸ジ(6−メチルヘプチル)、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸ジ(2−エチルヘキシル)、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸ジ(イソノニル)、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸ジ(イソデシル)、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸ジ(3,5,5−トリメチルヘキシル)、4−メチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジ(2−メチルプロピル)、4−メチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジ(3−メチルブチル)、4−メチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジ(4−メチルペンチル)、4−メチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジ(5−メチルヘキシル)、4−メチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジ(6−メチルヘプチル)、4−メチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジ(2−エチルヘキシル)、4−メチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジ(イソノニル)、4−メチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジ(イソデシル)、4−メチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジ(3,5,5−トリメチルヘキシル)、3−メチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジ(6−メチルヘプチル)、3−メチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジ(2−エチルヘキシル)、3−メチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジ(イソノニル)、3−メチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジ(イソデシル)、3−メチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジ(3,5,5−トリメチルヘキシル)、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸ジ(n−オクチル)、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸ジ(n−デシル)、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸ジ(n−ウンデシル)、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸ジ(n−ドデシル)、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸ジ(n−オクチル)、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸ジ(n−デシル)、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸ジ(n−ウンデシル)、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸ジ(n−ドデシル)、4−メチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジ(n−オクチル)、4−メチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジ(n−デシル)、4−メチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジ(n−ウンデシル)、4−メチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジ(n−ドデシル)、3−メチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジ(n−オクチル)、3−メチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジ(n−デシル)、3−メチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジ(n−ウンデシル)、3−メチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジ(n−ドデシル)、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸とn−オクタノール及び6−メチル−1−ヘプタノールとから得られる混基エステル、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸とn−オクタノール及び2−エチル−1−ヘキサノールとから得られる混基エステル、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸とn−オクタノール及び7−メチル−1−オクタノールとから得られる混基エステル、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸とn−オクタノール及び2−メチル−1−オクタノールとから得られる混基エステル、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸とn−オクタノール及びイソノナノールとから得られる混基エステル、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸とn−オクタノール及び8−メチル−1−ノナノールとから得られる混基エステル、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸とn−オクタノール及びイソデカノールとから得られる混基エステル、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸とn−オクタノール及び3,5,5−トリメチルヘキサノールとから得られる混基エステル、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸とn−オクタノール及び6−メチル−1−ヘプタノールとから得られる混基エステル、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸とn−オクタノール及び2−エチル−1−ヘキサノールとから得られる混基エステル、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸とn−オクタノール及び7−メチル−1−オクタノールとから得られる混基エステル、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸とn−オクタノール及び2−メチル−1−オクタノールとから得られる混基エステル、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸とn−オクタノール及びイソノナノールとから得られる混基エステル、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸とn−オクタノール及び8−メチル−1−ノナノールとから得られる混基エステル、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸とn−オクタノール及びイソデカノールとから得られる混基エステル、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸とn−オクタノール及び3,5,5−トリメチルヘキサノールとから得られる混基エステル、4−メチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸とn−オクタノール及び6−メチル−1−ヘプタノールとから得られる混基エステル、4−メチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸とn−オクタノール及び2−エチル−1−ヘキサノールとから得られる混基エステル、4−メチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸とn−オクタノール及び7−メチル−1−オクタノールとから得られる混基エステル、4−メチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸とn−オクタノール及び2−メチル−1−オクタノールとから得られる混基エステル、4−メチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸とn−オクタノール及びイソノナノールとから得られる混基エステル、4−メチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸とn−オクタノール及び8−メチル−1−ノナノールとから得られる混基エステル、4−メチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸とn−オクタノール及びイソデカノールとから得られる混基エステル、4−メチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸とn−オクタノール及び3,5,5−トリメチルヘキサノールとから得られる混基エステル、3−メチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸とn−オクタノール及び6−メチル−1−ヘプタノールとから得られる混基エステル、3−メチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸とn−オクタノール及び2−エチル−1−ヘキサノールとから得られる混基エステル、3−メチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸とn−オクタノール及び7−メチル−1−オクタノールとから得られる混基エステル、3−メチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸とn−オクタノール及び2−メチル−1−オクタノールとから得られる混基エステル、3−メチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸とn−オクタノール及びイソノナノールとから得られる混基エステル、3−メチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸とn−オクタノール及び8−メチル−1−ノナノールとから得られる混基エステル、3−メチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸とn−オクタノール及びイソデカノールとから得られる混基エステル、3−メチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸とn−オクタノール及び3,5,5−トリメチルヘキサノールとから得られる混基エステル、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸とn−デカノール及び6−メチル−1−ヘプタノールとから得られる混基エステル、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸とn−デカノール及び2−エチル−1−ヘキサノールとから得られる混基エステル、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸とn−デカノール及び7−メチル−1−オクタノールとから得られる混基エステル、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸とn−デカノール及び2−メチル−1−オクタノールとから得られる混基エステル、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸とn−デカノール及びイソノナノールとから得られる混基エステル、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸とn−デカノール及び8−メチル−1−ノナノールとから得られる混基エステル、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸とn−デカノール及びイソデカノールとから得られる混基エステル、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸とn−デカノール及び3,5,5−トリメチルヘキサノールとから得られる混基エステル、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸とn−デカノール及び6−メチル−1−ヘプタノールとから得られる混基エステル、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸とn−デカノール及び2−エチル−1−ヘキサノールとから得られる混基エステル、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸とn−デカノール及び7−メチル−1−オクタノールとから得られる混基エステル、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸とn−デカノール及び2−メチル−1−オクタノールとから得られる混基エステル、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸とn−デカノール及びイソノナノールとから得られる混基エステル、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸とn−デカノール及び8−メチル−1−ノナノールとから得られる混基エステル、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸とn−デカノール及びイソデカノールとから得られる混基エステル、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸とn−デカノール及び3,5,5−トリメチルヘキサノールとから得られる混基エステル、4−メチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸とn−デカノール及び6−メチル−1−ヘプタノールとから得られる混基エステル、4−メチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸とn−デカノール及び2−エチル−1−ヘキサノールとから得られる混基エステル、4−メチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸とn−デカノール及び7−メチル−1−オクタノールとから得られる混基エステル、4−メチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸とn−デカノール及び2−メチル−1−オクタノールとから得られる混基エステル、4−メチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸とn−デカノール及びイソノナノールとから得られる混基エステル、4−メチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸とn−デカノール及び8−メチル−1−ノナノールとから得られる混基エステル、4−メチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸とn−デカノール及びイソデカノールとから得られる混基エステル、4−メチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸とn−デカノール及び3,5,5−トリメチルヘキサノールとから得られる混基エステル、3−メチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸とn−デカノール及び6−メチル−1−ヘプタノールとから得られる混基エステル、3−メチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸とn−デカノール及び2−エチル−1−ヘキサノールとから得られる混基エステル、3−メチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸とn−デカノール及び7−メチル−1−オクタノールとから得られる混基エステル、3−メチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸とn−デカノール及び2−メチル−1−オクタノールとから得られる混基エステル、3−メチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸とn−デカノール及びイソノナノールとから得られる混基エステル、3−メチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸とn−デカノール及び8−メチル−1−ノナノールとから得られる混基エステル、3−メチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸とn−デカノール及びイソデカノールとから得られる混基エステル、3−メチルシク
ロヘキサン−1,2−ジカルボン酸とn−デカノール及び3,5,5−トリメチルヘキサノールとから得られる混基エステル、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸と2−メチル−1−オクタノール及びn−ウンデカノールから得られる混基エステル、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸と2−メチル−1−オクタノール及びn−ドデカノールから得られる混基エステル、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸と2−メチル−1−オクタノール及び2−エチル−1−ヘキサノールとから得られる混基エステル、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸と2−メチル−1−オクタノール及び2−メチル−1−ヘプタノールとから得られる混基エステル、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸と2−メチル−1−オクタノール及びイソオクタノールとから得られる混基エステル、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸と2−メチル−1−オクタノール及びイソノナノールとから得られる混基エステル、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸と2−メチル−1−オクタノール及び3,5,5−トリメチル−1−ヘキサノールとから得られる混基エステル、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸と2−メチル−1−オクタノール及びイソデカノールとから得られる混基エステル、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸と2−メチル−1−オクタノール及びイソウンデカノールとから得られる混基エステル、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸と2−メチル−1−オクタノール及びn−ウンデカノールから得られる混基エステル、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸と2−メチル−1−オクタノール及びn−ドデカノールから得られる混基エステル、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸と2−メチル−1−オクタノール及び2−エチル−1−ヘキサノールとから得られる混基エステル、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸と2−メチル−1−オクタノール及び2−メチル−1−ヘプタノールとから得られる混基エステル、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸と2−メチル−1−オクタノール及びイソオクタノールとから得られる混基エステル、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸と2−メチル−1−オクタノール及びイソノナノールとから得られる混基エステル、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸と2−メチル−1−オクタノール及び3,5,5−トリメチル−1−ヘキサノールとから得られる混基エステル、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸と2−メチル−1−オクタノール及びイソデカノールとから得られる混基エステル、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸と2−メチル−1−オクタノール及びイソウンデカノールとから得られる混基エステル、3−メチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸と2−メチル−1−オクタノール及びn−ウンデカノールから得られる混基エステル、3−メチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸と2−メチル−1−オクタノール及びn−ドデカノールから得られる混基エステル、3−メチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸と2−メチル−1−オクタノール及び2−エチル−1−ヘキサノールとから得られる混基エステル、3−メチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸と2−メチル−1−オクタノール及び2−メチル−1−ヘプタノールとから得られる混基エステル、3−メチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸と2−メチル−1−オクタノール及びイソオクタノールとから得られる混基エステル、3−メチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸と2−メチル−1−オクタノール及びイソノナノールとから得られる混基エステル、3−メチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸と2−メチル−1−オクタノール及び3,5,5−トリメチル−1−ヘキサノールとから得られる混基エステル、3−メチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸と2−メチル−1−オクタノール及びイソデカノールとから得られる混基エステル、3−メチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸と2−メチル−1−オクタノール及びイソウンデカノールとから得られる混基エステル、4−メチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸と2−メチル−1−オクタノール及びn−ウンデカノールから得られる混基エステル、4−メチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸と2−メチル−1−オクタノール及びn−ドデカノールから得られる混基エステル、4−メチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸と2−メチル−1−オクタノール及び2−エチル−1−ペンタノールとから得られる混基エステル、4−メチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸と2−メチル−1−オクタノール及び2−エチル−1−ヘキサノールとから得られる混基エステル、4−メチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸と2−メチル−1−オクタノール及び2−メチル−1−ヘプタノールとから得られる混基エステル、4−メチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸と2−メチル−1−オクタノール及びイソオクタノールとから得られる混基エステル、4−メチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸と2−メチル−1−オクタノール及びイソノナノールとから得られる混基エステル、4−メチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸と2−メチル−1−オクタノール及び3,5,5−トリメチル−1−ヘキサノールとから得られる混基エステル、4−メチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸と2−メチル−1−オクタノール及びイソデカノールとから得られる混基エステル、4−メチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸と2−メチル−1−オクタノール及びイソウンデカノールとから得られる混基エステル、などが挙げられる。
【0072】
なお、本明細書及び特許請求の範囲において、上記「混基エステル」とは、一般式(1)で説明すれば、RとRが互いに異なるアルキル基で構成されるジエステルを意味する。例えば、上記で「1,2−シクロヘキサンジカルボン酸とn−ノナノール及び2−メチル−1−オクタノールとから得られる混基エステル」の例で説明すれば、一般式(1)では、RとRの一方がn−ノニル基で、他方が2−メチルオクチル基で表されるジエステルであることを意味する。また本明細書及び特許請求項の範囲において、その同義として、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸(2−メチルオクチル)(n−ノニル)と表記することもある。
【0073】
本発明の潤滑油基油の100℃における動粘度は、好ましくは1.5〜40mm/s、より好ましくは2.5〜30mm/sが推奨される。
【0074】
本発明の潤滑油基油の粘度指数は、好ましくは80〜160、より好ましくは90〜160が推奨される。
【0075】
本発明の潤滑油基油の流動点は、好ましくは−10℃以下、より好ましくは−15℃以下、特に−20℃以下が推奨される。
【0076】
本発明の潤滑油基油の引火点は、好ましくは200℃以上、より好ましくは220℃以上が推奨される。
【0077】
本発明の潤滑油基油は、グリース基油、金属加工油基油、油圧作動油基油、圧縮機基油又はギア油基油として良好に使用できる。
【0078】
本発明の潤滑油基油は、併用基油として鉱物油(石油の精製によって得られる炭化水素油)、ポリ−α−オレフィン、ポリブテン、アルキルベンゼン、アルキルナフタレン、脂環式炭化水素油、フィッシャートロプシュ法によって得られる合成炭化水素の異性化油などの合成炭化水素油、動植物油、本エステル以外の有機酸エステル、ポリアルキレングリコール、ポリビニルエーテル、ポリフェニルエーテル、アルキルフェニルエーテル、シリコーン油などの併用基油の少なくとも1種を適宜併用することができる。
【0079】
鉱物油としては、溶剤精製鉱油、水素化精製鉱油、ワックス異性化油が挙げられるが、通常、100℃における動粘度が1.0〜25mm/s、好ましくは2.0〜20.0mm/sの範囲にあるものが用いられる。
【0080】
ポリ−α−オレフィンとしては、炭素数2〜16のα−オレフィン(例えばエチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1ーヘキサデセン等)の重合体又は共重合体であって、100℃における動粘度が1.0〜25mm/s、粘度指数が100以上のものが例示され、特に100℃における動粘度が1.5〜20.0mm/sで、粘度指数が120以上のものが好ましい。
【0081】
ポリブテンとしては、イソブチレンを重合したもの、イソブチレンをノルマルブチレンと共重合したものがあり、一般に100℃の動粘度が2.0〜40mm/sの広範囲のものが挙げられる。
【0082】
アルキルベンゼンとしては、炭素数1〜40の直鎖又は分岐のアルキル基で置換された、分子量が200〜450であるモノアルキルベンゼン、ジアルキルベンゼン、トリアルキルベンゼン、テトラアルキルベンゼン等が例示される。
【0083】
アルキルナフタレンとしては、炭素数1〜30の直鎖又は分岐のアルキル基で置換されたモノアルキルナフタレン、ジアルキルナフタレン等が例示される。
【0084】
動植物油としては、牛脂、豚脂、パーム油、ヤシ油、ナタネ油、ヒマシ油、ヒマワリ油等が例示される。
【0085】
有機酸エステルとしては、脂肪酸モノエステル、脂肪族二塩基酸ジエステル、脂肪族二価アルコールジエステル、ポリオールエステル及びその他のエステルが例示される。
【0086】
脂肪酸モノエステルとしては、炭素数5〜22の脂肪族直鎖状又は分岐鎖状モノカルボン酸と炭素数3〜22の直鎖状又は分岐鎖状の飽和若しくは不飽和の脂肪族アルコールとのエステルが挙げられる。
【0087】
脂肪族二塩基酸ジエステルとしては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,9−ノナメチレンジカルボン酸、1,10−デカメチレンジカルボン酸等脂肪族二塩基酸若しくはその無水物と炭素数3〜22の直鎖状又は分岐鎖状の飽和若しくは不飽和の脂肪族アルコールとのフルエステルが挙げられる。
【0088】
脂肪族二価アルコールジエステル、ポリオールエステルとしては、ネオペンチルグリコール、2,2−ジエチルプロパンジオール、2−ブチル2−エチルプロパンンジオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリスリトール等のネオペンチル型構造のポリオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,2−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、2−メチル−1,4−ブタンジオール、1,4−ペンタンジオール、2−メチル−1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,5−ヘキサンジオール、2−メチル−1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,6−ヘキサンジオール、1,6−ヘプタンジオール、2−メチル−1,7−ヘプタンジオール、3−メチル−1,7−ヘプタンジオール、4−メチル−1,7−ヘプタンジオール、1,7−オクタンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、3−メチル−1,8−オクタンジオール、4−メチル−1,8−オクタンジオール、1,8−ノナンジオール、2−メチル−1,9−ノナンジオール、3−メチル−1,9−ノナンジオール、4−メチル−1,9−ノナンジオール、5−メチル−1,9−ノナンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオール、グリセリン、ポリグリセリン、ソルビトール等の非ネオペンチル型構造のポリオールと炭素数3〜22の直鎖状及び/又は分岐鎖状の飽和又は不飽和の脂肪酸とのフルエステルを使用することが可能である。
【0089】
その他のエステルとしては、ダイマー酸、水添ダイマー酸などの重合脂肪酸、或いは、縮合ヒマシ油脂肪酸、水添縮合ヒマシ油脂肪酸などのヒドロキシ脂肪酸と炭素数3〜22の直鎖状若しくは分岐鎖状の飽和又は不飽和の脂肪族アルコールとのエステルが挙げられる。
【0090】
ポリアルキレングリコールとしては、アルコールと炭素数2〜4の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキレンオキシドの開環重合体が例示される。アルキレンオキシドとしてはエチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシドが挙げられ、これらの1種を用いた重合体、若しくは2種以上の混合物を用いた共重合体が使用可能である。又、片端又は両端の水酸基部分がエーテル化した化合物も使用可能である。重合体の動粘度としては、好ましくは5.0〜1000mm/s(40℃)、より好ましくは5.0〜500mm/s(40℃)が推奨される。
【0091】
ポリビニルエーテルとしては、ビニルエーテルモノマーの重合によって得られる化合物であり、モノマーとしてはメチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、sec−ブチルビニルエーテル、tert−ブチルビニルエーテル、n−ペンチルビニルエーテル、n−ヘキシルビニルエーテル、2−メトキシエチルビニルエーテル、2−エトキシエチルビニルエーテル等が挙げられる。重合体の動粘度としては、好ましくは5.0〜1000mm/s(40℃)、より好ましくは5.0〜500mm/s(40℃)が推奨される。
【0092】
ポリフェニルエーテルとしては、2個以上の芳香環のメタ位をエーテル結合又はチオエーテル結合でつないだ構造を有する化合物が挙げられ、具体的には、ビス(m−フェノキシフェニル)エーテル、m−ビス(m−フェノキシフェノキシ)ベンゼン、及びそれらの酸素の1個若しくは2個以上を硫黄に置換したチオエーテル類(通称C−エーテル)等が例示される。
【0093】
アルキルフェニルエーテルとしては、ポリフェニルエーテルを炭素数6〜18の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基で置換した化合物が挙げられ、特に1個以上のアルキル基で置換したアルキルジフェニルエーテルが好ましい。
【0094】
シリコーン油としては、ジメチルシリコーン、メチルフェニルシリコーンのほか、長鎖アルキルシリコーン、フルオロシリコーン等の変性シリコーンが挙げられる。
【0095】
本発明の潤滑油基油に中における併用基油の含有量としては、10重量%未満が推奨され、好ましくは5重量%未満、特に2重量%が好ましい。
【0096】
本発明の潤滑油基油には、その性能を向上させるために、潤滑油基油(即ち、本発明の脂環式ジカルボン酸ジエステル、又は脂環式ジカルボン酸ジエステルと併用基油との混合物)に加えて、酸化防止剤、金属清浄剤、無灰分散剤、油性剤、摩耗防止剤、極圧剤、金属不活性剤、防錆剤、粘度指数向上剤、流動点降下剤、消泡剤、加水分解抑制剤、増ちょう剤、腐食防止剤、色相安定剤等の添加剤の少なくとも1種を適宜配合することも可能である。これらの配合量は、本発明の効果を奏する限り特に限定されるものではないが、その具体的な例を以下に示す。
【0097】
酸化防止剤としては、2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール、4,4’−メチレンビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−イソプロピリデンビスフェノール、2,4−ジメチル−6−tert−ブチルフェノール、テトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、2,2’−ジヒドロキシ−3,3’−ジ(α−メチルシクロヘキシル)−5,5’−ジメチル−ジフェニルメタン、2,2’−イソブチリデンビス(4,6−ジメチルフェノール)、2,6−ビス(2’−ヒドロキシ−3’−tert−ブチル−5’−メチルベンジル)−4−メチルフェノール、1,1’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、2,5−ジ−tert−アミルヒドロキノン、2,5−ジ−tert−ブチルヒドロキノン、1,4−ジヒドロキシアントラキノン、3−tert−ブチル−4−ヒドロキシアニソール、2−tert−ブチル−4−ヒドロキシアニソール、2,4−ジベンゾイルレゾルシノール、4−tert−ブチルカテコール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−エチルフェノール、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,4,5−トリヒドロキシベンゾフェノン、α−トコフェロール、ビス[2−(2−ヒドロキシ−5−メチル−3−tert−ブチルベンジル)−4−メチル−6−tert−ブチルフェニル]テレフタレート、トリエチレングリコールビス[3−(3−tert−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,6−ヘキサンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ジフェニルアミン、モノブチル(直鎖及び分岐鎖を含む)ジフェニルアミン、モノペンチル(直鎖及び分岐鎖を含む)ジフェニルアミン、モノヘキシル(直鎖及び分岐鎖を含む)ジフェニルアミン、モノヘプチル(直鎖及び分岐鎖を含む)ジフェニルアミン、モノオクチル(直鎖及び分岐鎖を含む)ジフェニルアミン等のモノアルキルジフェニルアミン、特にモノ(C−Cアルキル)ジフェニルアミン(即ち、ジフェニルアミンの二つのベンゼン環の一方が、アルキル基、特にC−Cアルキル基でモノ置換されているもの、即ち、モノアルキル置換されたジフェニルアミン)、p,p’−ジブチル(直鎖及び分岐鎖を含む)ジフェニルアミン、p,p’−ジペンチル(直鎖及び分岐鎖を含む)ジフェニルアミン、p,p’−ジヘキシル(直鎖及び分岐鎖を含む)ジフェニルアミン、p,p’−ジヘプチル(直鎖及び分岐鎖を含む)ジフェニルアミン、p,p’−ジオクチル(直鎖及び分岐鎖を含む)ジフェニルアミン、p,p’−ジノニル(直鎖及び分岐鎖を含む)ジフェニルアミン等のジ(アルキルフェニル)アミン、特にp,p’−ジ(C−Cアルキルフェニル)アミン(即ち、ジフェニルアミンの二つのベンゼン環の各々が、アルキル基、特にC−Cアルキル基でモノ置換されているジアルキル置換のジフェニルアミンであって、二つのアルキル基が同一であるもの)、ジ(モノC−Cアルキルフェニル)アミンであって、一方のベンゼン環上のアルキル基が他方のベンゼン環上のアルキル基と異なるもの、ジ(ジ−C−Cアルキルフェニル)アミンであって、二つのベンゼン環上の4つのアルキル基のうちの少なくとも1つが残りのアルキル基と異なるもの等のジフェニルアミン類;N−フェニル−1−ナフチルアミン、N−フェニル−2−ナフチルアミン、4−オクチルフェニル−1−ナフチルアミン、4−オクチルフェニル−2−ナフチルアミン等のナフチルアミン類;p−フェニレンジアミン、N−フェニル−N’−イソプロピル−p−フェニレンジアミン、N−フェニル−N’−(1,3−ジメチルブチル)−p−フェニレンジアミン等のフェニレンジアミン類等が例示される。この中でも、特に、p,p’−ジオクチル(直鎖及び分岐鎖を含む)ジフェニルアミン、p,p’−ジノニル(直鎖及び分岐鎖を含む)ジフェニルアミン、N−フェニル−1−ナフチルアミン、チオジプロピオン酸ジ(n−ドデシル)、チオジプロピオン酸ジ(n−オクタデシル)等のチオジプロピオン酸エステル、フェノチアジン等の硫黄系化合物等が例示される。これらの酸化防止剤は、単独で又は適宜2種以上組み合わせて用いることができる。酸化防止剤を使用する場合、通常、潤滑油基油に対して0.01〜5重量%、好ましくは0.05〜3重量%程度添加することが望ましい。
【0098】
ここで、本明細書及び特許請求の範囲において、「潤滑油基油に対して0.01〜5重量%」のように、「潤滑油基油に対して」との表現を用いて、添加剤の配合量の範囲を規定している場合がある。この場合に用いる「潤滑油基油」は、本発明に係る脂環式ジカルボン酸ジエステルのみからなる潤滑油基油又は脂環式ジカルボン酸ジエステルと併用基油との混合物からなる潤滑油基油の何れかの意味で用いている。そしてまた、「潤滑油基油に対して0.01〜5重量%」の例で言えば、潤滑油基油100重量部に対して、0.01〜5重量部という意味と同義である。
【0099】
金属清浄剤としては、Ca−石油スルフォネート、過塩基性Ca−石油スルフォネート、Ca−アルキルベンゼンスルフォネート、過塩基性Ca−アルキルベンゼンスルフォネート、Ba−アルキルベンゼンスルフォネート、過塩基性Ba−アルキルベンゼンスルフォネート、Mg−アルキルベンゼンスルフォネート、過塩基性Mg−アルキルベンゼンスルフォネート、Na−アルキルベンゼンスルフォネート、過塩基性Na−アルキルベンゼンスルフォネート、Ca−アルキルナフタレンスルフォネート、過塩基性Ca−アルキルナフタレンスルフォネート等の金属スルフォネート、Ca−フェネート、過塩基性Ca−フェネート、Ba−フェネート、過塩基性Ba−フェネート等の金属フェネート、Ca−サリシレート、過塩基性Ca−サリシレート等の金属サリシレート、Ca−フォスフォネート、過塩基性Ca−フォスフォネート、Ba−フォスフォネート、過塩基性Ba−フォスフォネート等の金属フォスフォネート、過塩基性Ca−カルボキシレート等が使用可能である。金属清浄剤を使用する場合、通常、潤滑油組成物に対して1〜10重量%程度、好ましくは2〜7重量%程度添加することが望ましい。
【0100】
無灰分散剤としては、ポリアルケニルコハク酸イミド、ポリアルケニルコハク酸アミド、ポリアルケニルベンジルアミン、ポリアルケニルコハク酸エステル等が例示される。これらの無灰分散剤は、単独で又は組合わせて用いてもよく、これを使用する場合、通常、潤滑油基油に対して1〜10重量%、好ましくは2〜7重量%程度添加することが望ましい。
【0101】
油性剤としては、ステアリン酸、オレイン酸などの脂肪族飽和及び不飽和モノカルボン酸、ダイマー酸、水添ダイマー酸などの重合脂肪酸、リシノレイン酸、12−ヒドロキシステアリン酸などのヒドロキシ脂肪酸、ラウリルアルコール、オレイルアルコールなどの脂肪族飽和及び不飽和モノアルコール、ステアリルアミン、オレイルアミンなどの脂肪族飽和及び不飽和モノアミン、ラウリン酸アミド、オレイン酸アミドなどの脂肪族飽和及び不飽和モノカルボン酸アミド、バチルアルコール、キミルアルコール、セラキルアルコールなどのグリセリンエーテル、ラウリルポリグリセリンエーテル、オレイルポリグリセリルエーテルなどのアルキル若しくはアルケニルポリグリセリルエーテル、ジ(2−エチルヘキシル)モノエタノールアミン、ジイソトリデシルモノエタノールアミンなどのアルキル若しくはアルケニルアミンのポリ(アルキレンオキサイド)付加物等が例示される。これらの油性剤は、単独で又は組合わせて用いてもよく、これを使用する場合、通常、潤滑油基油に対して0.01〜5重量%、好ましくは0.1〜3重量%程度添加することが望ましい。
【0102】
摩耗防止剤・極圧剤としては、トリクレジルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、アルキルフェニルホスフェート類、トリブチルホスフェート、ジブチルホスフェート等のリン酸エステル類、トリブチルホスファイト、ジブチルホスファイト、トリイソプロピルホスファイト等の亜リン酸エステル類及びこれらのアミン塩等のリン系、硫化油脂、硫化オレイン酸などの硫化脂肪酸、ジベンジルジスルフィド、硫化オレフィン、ジアルキルジスルフィドなどの硫黄系、Zn−ジアルキルジチオフォスフェート、Zn−ジアルキルジチオフォスフェート、Mo−ジアルキルジチオフォスフェート、Mo−ジアルキルジチオカルバメートなどの有機金属系化合物等が例示される。これらの摩耗防止剤は、単独で又は組み合わせて用いてもよく、これを使用する場合、通常、潤滑油基油に対して0.01〜10重量%、好ましくは0.1〜5重量%程度添加することが望ましい。
【0103】
金属不活性剤としては、ベンゾトリアゾール系、チアジアゾール系、没食子酸エステル系の化合物等が例示される。これらの金属不活性剤は、単独で又は組み合わせて用いてもよく、これを使用する場合、通常、潤滑油基油に対して0.01〜0.4重量%、好ましくは0.01〜0.2重量%程度添加することが望ましい。
【0104】
防錆剤としては、ドデセニルコハク酸ハーフエステル、オクタデセニルコハク酸無水物、ドデセニルコハク酸アミドなどのアルキル又はアルケニルコハク酸誘導体、ソルビタンモノオレエート、グリセリンモノオレエート、ペンタエリスリトールモノオレエートなどの多価アルコール部分エステル、Ca−石油スルフォネート、Ca−アルキルベンゼンスルフォネート、Ba−アルキルベンゼンスルフォネート、Mg−アルキルベンゼンスルフォネート、Na−アルキルベンゼンスルフォネート、Zn−アルキルベンゼンスルフォネート、Ca−アルキルナフタレンスルフォネートなどの金属スルフォネート、ロジンアミン、N−オレイルザルコシンなどのアミン類、ジアルキルホスファイトアミン塩等が例示される。これらの防錆剤は、単独で又は組み合わせて用いてもよく、これを使用する場合、通常、潤滑油基油に対して0.01〜5重量%、好ましくは0.05〜2重量%程度添加することが望ましい。
【0105】
粘度指数向上剤としては、ポリアルキルメタクリレート、ポリアルキルスチレン、ポリブテン、エチレン−プロピレン共重合体、スチレン−ジエン共重合体、スチレン−無水マレイン酸エステル共重合体などのオレフィン共重合体が例示される。これらの粘度指数向上剤は、単独で又は組み合わせて用いてもよく、これを使用する場合、通常、潤滑油基油に対して0.1〜15重量%、好ましくは0.5〜7重量%程度添加することが望ましい。
【0106】
流動点降下剤としては、塩素化パラフィンとアルキルナフタレンの縮合物、塩素化パラフィンとフェノールの縮合物、既述の粘度指数向上剤であるポリアルキルメタクリレート、ポリアルキルスチレン、ポリブテン等が例示される。これらの流動点降下剤は、単独で又は組み合わせて用いてもよく、これを使用する場合、通常、潤滑油基油に対して0.01〜5重量%、好ましくは0.1〜3重量%程度添加することが望ましい。
【0107】
消泡剤としては、液状シリコーンが適しており、これを使用する場合、その添加量は、通常、潤滑油基油に対して0.0005〜0.01重量%程度である。
【0108】
加水分解抑制剤としては、アルキルグリシジルエーテル類、アルキルグリシジルエステル類、アルキレングリコールグリシジルエーテル類、脂環式エポキシ類、フェニルグリシジルエーテルなどのエポキシ化合物、ジ−tert−ブチルカルボジイミド、1,3−ジ−p−トリルカルボジイミドなどのカルボジイミド化合物が使用可能であり、通常、潤滑油基油に対して0.05〜2重量%程度である。
【0109】
本発明の潤滑油基油に増ちょう剤を適宜組み合わせることにより、「グリース基油」とすることができる。
【0110】
増ちょう剤としては、ナトリウム石鹸、リチウム石鹸、カルシウム石鹸、カルシウムコンプレックス石鹸、アルミニウムコンプレックス石鹸、リチウムコンプレックス石鹸等の石鹸系や、ベントナイト、シリカエアロゲル、ナトリウムテレフタラメート、ウレア化合物、ポリテトラフルオロエチレン、窒化ホウ素等の非石鹸系が挙げられる。
【0111】
金属石けん系増ちょう剤としては、リチウム−12−ヒドロキシステアレート等の水酸基を有する脂肪族カルボン酸リチウム塩、リチウムステアレート等の脂肪族カルボン酸リチウム塩またはそれらの混合物などが例示される。
【0112】
複合体金属石けん系増ちょう剤としては、水酸基を有する1価の脂肪族カルボン酸金属塩と2価の脂肪族カルボン酸金属塩とのコンプレックス等が挙げられ、具体的には複合体リチウム石けんや複合体アルミニウム石けんが例示される。
【0113】
ウレア化合物としては、脂環族、芳香族、脂肪族、ジウレア、トリウレア、テトラウレア、ウレア・ウレタン化合物等が例示される。
【0114】
上記の中でも、増ちょう剤として、リチウム石鹸、リチウムコンプレックス石鹸、ウレア化合物が好ましく、耐熱性の点から特にウレア化合物が好ましい。
【0115】
これらの増ちょう剤は1種でまたは適宜2種以上を組み合わせて用いることができ、その添加量は所定の効果を奏する限り特に限定されるものではない。
【0116】
腐食防止剤としては、ナトリウムスルホネートやソルビタンエステルが例示され、通常、潤滑油基油に対して0.1〜3.0重量%程度添加される。
【0117】
色相安定剤としては、置換ハイドロキノン、フルフラールアジン等が例示され、通常、潤滑油基油に対して0.01〜0.1重量%程度添加される。
【実施例】
【0118】
以下に実施例を掲げて本発明を詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、本実施例及び比較例において、エステル化合物の諸性状は以下の方法により測定又は評価した。特に言及していない化合物は試薬を使用した。
【0119】
(a)エステル化合物の組成分析
下記条件でガスクロマトグラフィーを用いてエステル化合物の組成分析をした。得られたガスクロマトグラムの単純面積比をもってエステル化合物の組成比とした。
<測定条件>
機器:島津製作所製 GC−2010
使用カラム:J&W製 TC−5 30m×0.25mm
カラム温度:100〜300℃(昇温速度20℃/min)
インジェクション温度/検出温度:300℃/300℃
検出器:FID
キャリアガス:ヘリウム
ガス流量:0.97mL/min
スプリット比:1/50
【0120】
(b)全酸価、水酸基価
全酸価はJIS K2501(2003)、水酸基価はJIS K0070(1992)に準拠して測定を実施した。
【0121】
(c)動粘度
JIS K2283(2000)に準拠して40℃、100℃における動粘度を測定した。但し、0℃動粘度はJIS K2283(2000)に規定される粘度−温度関係式より算出した。
【0122】
(d)粘度指数
JIS K2283(2000)に準拠して算出した。
(e)流動点
JIS K2269(1987)に準拠して測定をした。
【0123】
(f)引火点
JIS K2265−4(クリーブランド開放式)(2007)に準拠して測定した。
【0124】
(g)加水分解安定性試験
内径6.6mm、高さ30cmのガラス試験管に長さ4cmの鉄、銅およびアルミニウムの針金を入れ、表1に記載のエステルを2.0g、蒸留水を0.2g秤取る。アスピレーターで脱気しながらその試験管を封じ、オーブンに入れて175℃で40時間加熱する。試験後のエステルの酸価を測定して、試験前の酸価との差を求めた。酸価の上昇値(mgKOH/g)が小さいものほど、エステル自身の加水分解安定性が良好であることを示す。
酸価上昇値(mgKOH/g)=試験後の酸価−試験前の酸価
【0125】
[実施例1]
撹拌機、温度計、Dean−Stark水分離器を備えた4ツ口フラスコに、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸無水物231g(1.5モル)、アルコール成分として「リネボール9(LINEVOL9)」(製品名,シェルケミカルズ社製)475.2g(3.3モル)、水同伴剤としてキシレンを仕込み原料に対し5重量%に相当する量(23.8g)、及びエステル化触媒として酸化スズ触媒を仕込み原料に対し0.2重量%に相当する量(0.95g)を仕込み、窒素置換した後、窒素雰囲気下、徐々に210℃まで昇温した。エステル化反応中に副生した水を水分分離器で除去しながら、常圧で5時間エステル化反応を行い、引き続き210℃を保持したまま減圧下(0.02MPa)で5時間反応し続けて、反応混合物の酸価は1mgKOH/g以下となり、エステル化粗物を得た。
次に、そのエステル化粗物の後処理を行った。まずエステル化粗物からキシレン及び過剰のモノアルコール成分を180℃、1330Paの減圧条件下で留去し、得られた液状残査に5%苛性ソーダ水溶液30gを加えて80℃で2時間撹拌を行なうことにより中和を行った。その中和処理をしたものを水洗水の水層が中性になるまで繰り返し水洗して液状物を得た。次いで活性アルミナを加えて攪拌して吸着処理した後、吸引濾過を行うことにより、本発明の潤滑油基油として脂環式ジカルボン酸ジエステル(エステルA)592gを得た。
前記エステルAの全酸価は0.01mgKOH/g、水酸基価は1mgKOH/g未満であった。また、エステルAの組成は、ガスクロマトグラムから以下の通りであった。
(a)1,2−シクロヘキサンジカルボン酸ジ(2−メチルオクチル)
(b)1,2−シクロヘキサンジカルボン酸(2−メチルオクチル)(n−ノニル)
(c)1,2−シクロヘキサンジカルボン酸ジ(n−ノニル)
(a)/(b)/(c)=6.4/10.5/83.1(面積%)
【0126】
本発明の潤滑油基油であるエステルAの、動粘度、粘度指数、流動点、引火点及び加水分解安定性試験の結果を表1に示した。
【0127】
[実施例2]
仕込み原料の1,2−シクロヘキサンジカルボン酸無水物231g(1.5モル)を4−シクロヘキセン1,2−ジカルボン酸無水物228g(1.5モル)に変えた他は、製造例1と同様の方法で実施して、本発明の潤滑油基油として脂環式ジカルボン酸ジエステル(エステルB)582gを得た。
前記エステルBの全酸価は0.01mgKOH/g、水酸基価は1mgKOH/g未満であった。また、エステルBの組成は、ガスクロマトグラムから以下の通りであった。
(a)4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸ジ(2−メチルオクチル)
(b)4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸(2−メチルオクチル)(n−ノニル)
(c)4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸ジ(n−ノニル)
(a)/(b)/(c)=6.8/10.9/82.3(面積%)
【0128】
本発明の潤滑油基油であるエステルBの、動粘度、粘度指数、流動点、引火点及び加水分解安定性試験の結果を表1に示した。
【0129】
[実施例3]
仕込み原料の1,2−シクロヘキサンジカルボン酸無水物231g(1.5モル)を無水フタル酸222g(1.5モル)に変えた他は製造例1と同様の方法により製造し、フタル酸ジエステル595gを得た。得られたフタル酸ジエステル80gをオートクレーブに仕込み、5%Ru/Al0.8g(1重量%)の存在下、120℃、水素圧力3MPaの条件下で2時間水素化を行った。その後、触媒を濾別し、後処理として、活性アルミナ、マグネシア(各0.5重量%)で吸着処理することにより、本発明に係る脂環式ジカルボン酸ジエステル(エステルC)77gを得た。エステルCの酸価は0.01mgKOH/g、水酸基価は1mgKOH/g未満であった。また、組成は、ガスクロマトグラムから以下の通りであった。
(a)1,2−シクロヘキサンジカルボン酸ジ(2−メチルオクチル)
(b)1,2−シクロヘキサンジカルボン酸(2−メチルオクチル)(n−ノニル)
(c)1,2−シクロヘキサンジカルボン酸ジ(n−ノニル)
(a)/(b)/(c)=6.6/11.3/82.1(面積%)
【0130】
エステルCの、動粘度、粘度指数、流動点、引火点及び加水分解安定性試験の結果を表1に示した。
【0131】
[比較例1]
エステルD;商品名「エヌジェルブTP−320」(新日本理化(株)製,トリメチロールプロパンと1−オクタン酸及び1−デカン酸とから得られるトリエステル混合物)の動粘度、粘度指数、流動点、引火点及び加水分解安定性試験の結果を表1に示した。
【0132】
【表1】
【0133】
表1より、本発明の潤滑油基油であるエステルA、B及びCは、加水分解安定性に優れていることは明らかである。又、90以上の高い粘度指数を示し、低温での粘度増加が小さく、かつ、低温流動性も良好であることがわかる。また引火点も高いことから、グリース基油、金属加工油基油、油圧作動油基油、圧縮機基油、ギア油基油としても好適できる。
【産業上の利用可能性】
【0134】
本発明の潤滑油基油は、加水分解安定性に優れ、高い粘度指数及び良好な低温流動性を有することから、特に加水分解性を必要とする工業用潤滑油用途に活用できる。また、引火点も高いことから、グリース基油、金属加工油基油、油圧作動油基油、圧縮機基油、ギア油基油等としても好適である。