(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6112049
(24)【登録日】2017年3月24日
(45)【発行日】2017年4月12日
(54)【発明の名称】刻印装置およびその刻印ヘッド
(51)【国際特許分類】
B41K 3/14 20060101AFI20170403BHJP
B41F 17/26 20060101ALI20170403BHJP
【FI】
B41K3/14
B41F17/26
【請求項の数】10
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-51909(P2014-51909)
(22)【出願日】2014年3月14日
(65)【公開番号】特開2015-174301(P2015-174301A)
(43)【公開日】2015年10月5日
【審査請求日】2016年6月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000122298
【氏名又は名称】王子ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】特許業務法人 谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】浦 隆順
【審査官】
藏田 敦之
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭62−167633(JP,U)
【文献】
実開昭55−15059(JP,U)
【文献】
実開昭63−184726(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41K 1/00 − 3/68
B41F 16/00 −17/38
B41J 3/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周面から刻印駒の先端が突出する刻印ヘッドと、この刻印ヘッドと平行に配される受けローラーとを含み、この受けローラーと駆動回転する前記刻印ヘッドとの間に被加工対象物を通過させ、被加工対象物に刻印を施す刻印装置であって、前記刻印ヘッドは、
外周壁と、この外周壁に隣接してその径方向内側に位置し、刻印駒の基端部を収容する段部と、この段部に隣接してさらにその径方向内側に位置する凹部とを有する本体と、
この本体の前記外周壁に形成され、その周方向に沿って一定間隔で放射状に配列する複数本の放射状溝からなり、個々の放射状溝が刻印駒の先端部をそれぞれ収容する少なくとも1ユニットの溝列と、
刻印駒の基端面が当接するように前記段部から突出する外周面を有し、前記本体に対する相対回転位置を変更可能に前記凹部に収容されるバックアップリングと、
前記本体に対する前記バックアップリングの相対回転位置を固定するための固定手段と、
前記バックアップリングを覆うように前記本体に重ね合わされ、前記本体とで刻印駒を挾持し得るカバーと、
このカバーを前記本体に対して締結するための締結手段と
を具えたことを特徴とする刻印装置。
【請求項2】
前記バックアップリングの外周面に表面硬化処理が施されていることを特徴とする請求項1に記載の刻印装置。
【請求項3】
前記固定手段は、
複数本のボルトと、
前記本体に形成されて前記ボルトの軸部がそれぞれ貫通する複数個の貫通孔と、
前記バックアップリングに形成されて前記ボルトの軸部がそれぞれねじ込まれる複数の雌ねじ部と
を含み、前記貫通孔が周方向に沿った長孔であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の刻印装置。
【請求項4】
前記締結手段は、
複数本のボルトと、
前記カバーに形成されて前記ボルトの軸部がそれぞれ貫通する複数個の貫通孔と、
前記バックアップリングに形成されて前記ボルトの軸部がそれぞれ貫通する複数個の貫通孔と、
前記本体に形成されて前記ボルトの軸部がそれぞれねじ込まれる複数の雌ねじ部と
を含み、前記バックアップリングに形成される複数個の貫通孔が周方向に沿った長孔であることを特徴とする請求項1から請求項3の何れかに記載の刻印装置。
【請求項5】
複数ユニットの前記溝列が前記1ユニットの溝列を構成する複数の放射状溝の配列間隔よりも広い間隔をあけて前記本体の外周壁に形成されていることを特徴とする請求項1から請求項4の何れかに記載の刻印装置。
【請求項6】
外周壁と、この外周壁に隣接してその径方向内側に位置し、刻印駒の基端部を収容する段部と、この段部に隣接してさらにその径方向内側に位置する凹部とを有する本体と、
この本体の前記外周壁に形成され、その周方向に沿って一定間隔で放射状に配列する複数本の放射状溝からなり、個々の放射状溝が刻印駒の先端部をそれぞれ収容する少なくとも1ユニットの溝列と、
刻印駒の基端面が当接するように前記段部から突出する外周面を有し、前記本体に対する相対回転位置を変更可能に前記凹部に収容されるバックアップリングと、
前記本体に対する前記バックアップリングの相対回転位置を固定するための固定手段と、
前記バックアップリングを覆うように前記本体に重ね合わされ、前記本体とで刻印駒を挾持し得るカバーと、
このカバーを前記本体に対して締結するための締結手段と
を具えたことを特徴とする刻印ヘッド。
【請求項7】
前記バックアップリングの外周面に表面硬化処理が施されていることを特徴とする請求項6に記載の刻印ヘッド。
【請求項8】
前記固定手段は、
複数本のボルトと、
前記本体に形成されて前記ボルトの軸部がそれぞれ貫通する複数個の貫通孔と、
前記バックアップリングに形成されて前記ボルトの軸部がそれぞれねじ込まれる複数の雌ねじ部と
を含み、前記貫通孔が周方向に沿った長孔であることを特徴とする請求項6または請求項7に記載の刻印ヘッド。
【請求項9】
前記締結手段は、
複数本のボルトと、
前記カバーに形成されて前記ボルトの軸部がそれぞれ貫通する複数個の貫通孔と、
前記バックアップリングに形成されて前記ボルトの軸部がそれぞれ貫通する複数個の貫通孔と、
前記本体に形成されて前記ボルトの軸部がそれぞれねじ込まれる複数の雌ねじ部と
を含み、前記バックアップリングに形成される複数個の貫通孔が周方向に沿った長孔であることを特徴とする請求項6から請求項8の何れかに記載の刻印ヘッド。
【請求項10】
複数ユニットの前記溝列が前記1ユニットの溝列を構成する複数の放射状溝の配列間隔よりも広い間隔をあけて前記本体の外周壁に形成されていることを特徴とする請求項6から請求項9の何れかに記載の刻印ヘッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種商品の包装体の一部に製造データーなどに関する情報を刻印するための刻印装置およびその刻印ヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
各種商品の包装体の一部に製造場所や製造日時などの製造データーに関する情報を記録することが行われている。例えば、ティシュペーパーを積層状態で収容するティシュカートンには、その蓋板部分の一部に製造データーに関する情報がアルファベットとアラビア数字との組み合わせにて刻印されている。
【0003】
このような板紙に対して刻印を行うための従来の刻印装置の主要部の断面構造を
図7に示す。すなわち、刻印装置は、外周面1から刻印駒2の先端が突出する刻印ヘッド3と、この刻印ヘッド3と平行に配される受けローラー4とを有する。そして、受けローラー4と被加工対象物である板紙5の搬送速度に同期して駆動回転する刻印ヘッド3との間に板紙5を通過させ、板紙5の所定位置に刻印駒2の配列に対応した刻印を施すようにしている。刻印駒2は、刻印ヘッド3のカバー6を外すことによって、刻印ヘッド3の本体7に形成された溝8に対し交換可能である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
図7に示した従来の刻印装置の刻印ヘッド3においては、刻印時の反力が刻印駒2を収容するための刻印ヘッド3に形成された溝8の壁面9に繰り返し作用し、この溝8の壁面9が次第に摩耗する。結果として、刻印駒2自体の交換に加え、ある程度の摩耗が進行した時点で刻印ヘッド3を廃棄し、新たな刻印ヘッド3を使用する必要があり、ランニングコストが嵩んでしまう欠点を有する。
【0005】
本発明の目的は、従来よりも使用寿命を長くし得る刻印装置およびその刻印ヘッドを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の形態は、外周面から刻印駒の先端が突出する刻印ヘッドと、この刻印ヘッドと平行に配される受けローラーとを含み、この受けローラーと駆動回転する前記刻印ヘッドとの間に被加工対象物を通過させ、被加工対象物に刻印を施す刻印装置であって、前記刻印ヘッドは、外周壁およびこの外周壁に隣接してその径方向内側に位置し、刻印駒の基端部を収容する段部ならびにこの段部に隣接してさらにその径方向内側に位置する凹部を有する本体と、この本体の前記外周壁に形成され、その周方向に沿って一定間隔で放射状に配列する複数本の放射状溝からなり、個々の放射状溝が刻印駒の先端部をそれぞれ収容する少なくとも1ユニットの溝列と、刻印駒の基端面が当接するように前記段部から突出する外周面を有し、前記本体に対する相対回転位置を変更可能に前記凹部に収容されるバックアップリングと、前記本体に対する前記バックアップリングの相対回転位置を固定するための固定手段と、前記バックアップリングを覆うように前記本体に重ね合わされ、前記本体とで刻印駒を挾持し得るカバーと、このカバーを前記本体に対して固定するための締結手段とを具えたことを特徴とするものである。
【0007】
また、本発明の第2の形態は、外周壁およびこの外周壁に隣接してその径方向内側に位置し、刻印駒の基端部を収容する段部ならびにこの段部に隣接してさらにその径方向内側に位置する凹部を有する本体と、この本体の前記外周壁に形成され、その周方向に沿って一定間隔で放射状に配列する複数本の放射状溝からなり、個々の放射状溝が刻印駒の先端部をそれぞれ収容する少なくとも1ユニットの溝列と、刻印駒の基端面が当接するように前記段部から突出する外周面を有し、前記本体に対する相対回転位置を変更可能に前記凹部に収容されるバックアップリングと、前記本体に対する前記バックアップリングの相対回転位置を固定するための固定手段と、前記バックアップリングを覆うように前記本体に重ね合わされ、前記本体とで刻印駒を挾持し得るカバーと、このカバーを前記本体に対して締結するための締結手段とを具えたことを特徴とする刻印ヘッドにある。
【0008】
本発明においては、刻印ヘッドの本体に収容されたバックアップリングの外周面に刻印駒の基端面が当接する結果、バックアップリングの外周面が刻印時の反力によって次第に摩耗することとなる。この場合、本体に対するバックアップリングの相対回転位置を変更するだけで、バックアップリングの摩耗していない新たな外周面を刻印駒の基端面に当接させることができる。しかも、刻印駒の交換に加えて交換が必要となるのは刻印ヘッドの本体ではなく、バックアップリングのみとなる。
【0009】
本発明の第1の形態による刻印装置または第2の形態による刻印ヘッドにおいて、バックアップリングの外周面に表面硬化処理を施すことができる。より具体的には、高周波焼入れや火炎焼入れあるいは電解焼入れなどの表面焼入れおよびショットピーニングまたはショットブラストならびに放電硬化などの物理的方法以外に、浸炭や窒化または浸硫などの化学的方法を使用するバックアップリングの材質などに応じて採用し得る。この他、バックアップリングの外周面にステライトなどの特殊合金を溶着させて表面硬化層を形成する方法も有効である。
【0010】
固定手段が複数本のボルトと、本体に形成されてボルトの軸部がそれぞれ貫通する複数個の貫通孔と、バックアップリングに形成されて前記ボルトの軸部がそれぞれねじ込まれる複数の雌ねじ部とを含み、貫通孔が周方向に沿った長孔であってよい。この場合、貫通孔および雌ねじ部を溝列の数に応じて配することが有効である。
【0011】
締結手段が複数本のボルトと、カバーに形成されてボルトの軸部がそれぞれ貫通する複数個の貫通孔と、バックアップリングに形成されてボルトの軸部がそれぞれ貫通する複数個の貫通孔と、本体に形成されてボルトの軸部がそれぞれねじ込まれる複数の雌ねじ部とを含み、バックアップリングに形成される複数個の貫通孔が周方向に沿った長孔であってよい。
【0012】
1ユニットの溝列を構成する複数の放射状溝の配列間隔よりも広い間隔をあけて複数ユニットの溝列を本体の外周壁に形成することが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によると、バックアップリングの外周面が刻印時の反力によって摩耗した場合、本体に対してバックアップリングを相対回転し、摩耗していない新たな外周面を刻印駒の基端面に当接させることにより、繰り返し使用することができる。また、摩耗による交換が必要になった場合であっても、刻印駒の交換に加えてバックアップリングのみを交換するだけで他の部品を継続的に反復使用することができ、従来のものよりも著しく経済的である。
【0014】
バックアップリングの外周面に表面硬化処理を施した場合、バックアップリングの交換寿命を大きく延ばすことができる。
【0015】
本体に形成された固定手段の貫通孔が周方向に沿った長孔の場合、固定手段のボルトを緩めるだけで本体に対するバックアップリングの相対回転位置を簡単に変更することができる。
【0016】
バックアップリングに形成した締結手段の貫通孔が周方向に沿った長孔の場合、締結手段のボルトを緩めるだけで本体に対するバックアップリングの相対回転位置を容易に変更することができる。
【0017】
1ユニットの溝列を構成する複数の放射状溝の配列間隔よりも広い間隔をあけて複数ユニットの溝列を本体の外周壁に形成した場合、溝列のユニット数以上、バックアップリングを交換することなく繰り返し使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明をティシュカートンの製造ラインに適用した一実施形態の外観を表す立体投影図である。
【
図2】
図1に示した実施形態の外観を模式的に表す立体投影図である。
【
図3】
図1に示した実施形態における刻印ヘッドの部分の外観を表す立体投影図である。
【
図4】
図3に示した刻印ヘッドを反対側から見た分解図である。
【
図5】刻印ヘッドおよび受けローラーの断面構造を表す断面図である。
【
図6】
図5中のVI−VI矢視に沿った断面図である。
【
図7】従来の刻印装置における主要部分の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明による刻印装置をティシュカートンに対して適用した一実施形態について、
図1〜
図6を参照しながら詳細に説明するが、本発明はこのような実施形態のみに限らず、その精神に帰属する他の任意の技術に応用することが可能である。
【0020】
本発明の対象となるティシュカートンの製造ラインの一部を抽出して表す
図1およびその概略構成を
図2にそれぞれ示す。本実施形態における刻印装置10は、図示しないティシュ束をティシュカートン50に挿入してからティシュカートン50を封止するまでの間の製造ラインの途中に配される。図示の製造ラインには一端側の蓋板50aが封止され、他端側の上下の蓋板50bが水平に保持された状態のティシュカートン50が一定間隔で搬送される。
【0021】
この製造ラインの側方に配される刻印装置10は、外周面11aから刻印駒の先端が突出する刻印ヘッド11と、この刻印ヘッド11と平行に配される受けローラー12とを有する。この刻印装置10は、受けローラー12とティシュカートン50の搬送速度に同期して駆動回転する刻印ヘッド11との間に被加工対象物であるティシュカートン50の上蓋板50bを通過させ、この上蓋板50bに刻印を施すようになっている。
【0022】
刻印装置10の刻印ヘッド11の部分の外観を
図3に示し、これを反対側から分解状態で
図4に示し、刻印ヘッド11および受けローラー12の断面構造を
図5に示し、そのVI−VI矢視に沿った断面形状を
図6に示す。すなわち、本実施形態における刻印ヘッド11は、本体13と、バックアップリング14と、固定手段30と、バックアップリング14を覆うように本体13に重ね合わされるカバー15と、締結手段40とを具えている。
【0023】
本体13は、外周壁16と、この外周壁16に隣接してその径方向内側に位置し、刻印駒17の基端部を収容する環状の段部18と、この段部18に隣接してさらにその径方向内側に位置する環状の凹部19とを有する。この本体13の外周壁16には、その周方向に沿って一定間隔pで放射状に配列して刻印駒17の先端部をそれぞれ収容する複数本の放射状溝20aからなる複数ユニットの溝列20が形成されている。本実施形態では各ユニットの溝列20が9本の放射状溝20aを具えており、隣接するユニットの溝列20の間隔Wを1ユニットの溝列20を構成する放射状溝20aの配列間隔pよりも広くすることが好ましい。本実施例では、隣接するユニットの溝列20の間隔Wを放射状溝20aの配列間隔pのほぼ2倍の間隔に設定しているが、これに限定されない。しかしながら、バックアップリング14の摩耗による交換周期をできるだけ長くするため、可能な限り多数ユニットの溝列20を本体13の外周壁16に形成することが有効である。刻印ヘッド11の外周面11aの周長は、製造ライン上のティシュカートン50の配列間隔に対してほぼ等しく設定され、1ユニットの溝列20にのみ刻印駒17を収容して刻印作業を行うようになっている。つまり、本実施形態では9桁の文字列がティシュカートン50の上蓋板50bに刻印される。
【0024】
バックアップリング14は、刻印駒17の基端面17aが当接するように本体13の段部18から突出する外周面14aを有し、本体13に対する相対回転位置を変更可能に、つまり本体13に対して回転し得るように凹部19に収容される。刻印駒17の基端面17aが当接するこのバックアップリング14の外周面14aには、耐摩耗性を高めるための表面硬化処理が施されている。
【0025】
本体13に対するバックアップリング14の相対回転位置を固定するための固定手段30は、複数本、本実施形態では4本のボルト31と、複数個の貫通孔32と、複数の雌ねじ部33とを具えている。本体13に形成された貫通孔32は、ボルト31の軸部31aがそれぞれ貫通し、バックアップリング14に形成された雌ねじ部33には、ボルト31の軸部31aがそれぞれねじ込まれる。これらは、刻印ヘッド11の回転軸線を中心として90度間隔にて形成されている。本実施形態における貫通孔32は、周方向に沿った長孔であり、1ユニットの溝列20を構成する放射状溝20aの配列間隔pの少なくとも1/2程度、バックアップリング14を本体13に対して回動させることができるように設定することが好ましい。これにより、刻印作業に伴う反力を受けて発生する摩耗によってバックアップリング14の外周面14aに形成される一定間隔pの窪みの間の摩耗していない部分を刻印駒17の基端面17aに当接させ、刻印作業を継続させることができる。
【0026】
カバー15は、バックアップリング14を覆うように本体13に重ね合わされ、本体13とで刻印駒17を挾持し得るようになっている。
【0027】
カバー15を本体13に対して締結するための締結手段40は、複数本、本実施形態では4本のボルト41と、複数個の貫通孔42,43と、複数の雌ねじ部44とを具えている。カバー15に形成された貫通孔42およびバックアップリング14に形成された貫通孔43は、それぞれボルト41の軸部41aが貫通し、本体13に形成された雌ねじ部44には、これらボルト41の軸部41aがそれぞれねじ込まれる。これらも固定手段30と同様に、刻印ヘッド11の回転軸線を中心として90度間隔にて形成されているが、先の固定手段30に対して45度だけ位相をずらして配されている。バックアップリング14に形成される本実施形態における貫通孔42もまた、先の固定手段30と同様に周方向に沿った長孔である。これらの長孔は、1ユニットの溝列20を構成する放射状溝20aの配列間隔pの少なくとも1/2程度、バックアップリング14を本体13に対して回動させることができるように設定されている。これにより、固定手段30および締結手段40のボルト31,41を共に抜き外すことなく、本体13に対するバックアップリング14のわずかな回転、すなわち放射状溝20aの配列間隔pの1/2程度の回転を行うことができる。
【0028】
軸受21を介して回転自在に保持された受けローラー12は、その外周面に硬質ゴム製のリング部材22が設けられ、より明確な刻印がティシュカートン50の上蓋板50bに形成されるように配慮している。
【0029】
従って、最初の溝列20に装着した刻印駒17によってバックアップリング14の外周面14aの一部がある程度摩耗したら、固定手段30および締結手段40のボルト31,41をそれぞれ緩める。そして、固定手段30のボルト31の頭部31bを掴んでバックアップリング14を放射状溝20aの配列間隔pの1/2だけ本体13に対して回転し、摩耗していないバックアップリング14の外周面14aを刻印駒17の基端面17aに当接させる。次いで、固定手段30および締結手段40のボルト31,41をそれぞれ締め付けた後、刻印作業を再開する。この状態にてバックアップリング14の外周面14aがある程度摩耗した場合、今度は別なユニットの溝列20に刻印駒17を取り付け、この溝列20に取り付けた刻印駒17によって刻印作業を再開する。このようにして、本実施形態ではバックアップリング14の外周面14aに対して刻印駒17の基端面17aを12回異なる位置に当接させることができ、バックアップリング14の交換周期を極めて長期化させることができる。
【0030】
上述した実施形態では6ユニットの溝列20を外周壁16に持つ本体13を有する刻印ヘッド11について説明したが、1ユニットの溝列20のみを本体13の外周壁16に形成したものであってもよい。この場合、バックアップリング14の全周を有効利用できるように、1ユニットの溝列20の周長にほぼ対応させてバックアップリング14の回転位置を変更できるようにしておくことが特に有効である。より具体的には、上述した実施形態の場合、60度毎にバックアップリング14の回転位置を変更できるように、固定手段30および締結手段40の構成を設定すればよい。
【0031】
なお、本発明はその特許請求の範囲に記載された事項のみから解釈されるべきものであり、上述した実施形態においても、本発明の概念に包含されるあらゆる変更や修正が記載した事項以外に可能である。つまり、上述した実施形態におけるすべての事項は、本発明を限定するためのものではなく、本発明とは直接的に関係のないあらゆる構成を含め、その用途や目的などに応じて任意に変更し得るものである。
【符号の説明】
【0032】
10 刻印装置
11 刻印ヘッド
11a 外周面
12 受けローラー
13 本体
14 バックアップリング
14a 外周面
15 カバー
16 外周壁
17 刻印駒
17a 基端面
18 段部
19 凹部
20a 放射状溝
20 溝列
21 軸受
22 リング部材
30 固定手段
31 ボルト
31a ボルトの軸部
31b ボルトの頭部
32 貫通孔
33 雌ねじ部
40 締結手段
41 ボルト
41a ボルトの軸部
42,43 貫通孔
44 雌ねじ部
50 ティシュカートン
50a,50b 蓋板
p 配列間隔
W 溝列の間隔