(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記種子覆土部材(59)を収納する種子覆土部材収納部(1500)を設け、前記スイッチ(1410)の操作に合わせて前記種子覆土部材(59)は種子覆土部材収納部(1500)に出入りする構成としたことを特徴とする、請求項1に記載の播種機。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照しながら、本発明における実施の形態について詳細に説明する。
【0021】
はじめに、
図1および2を参照しながら、本実施の形態の作業車両の構成および動作について具体的に説明する。
【0022】
ここに、
図1は本発明における実施の形態の作業車両の左側面図であり、
図2は本発明における実施の形態の作業車両の直播装置47近傍の縦断面図である。
【0023】
本実施の形態の作業車両は、播種機であり、より具体的には、乗用の四輪駆動走行可能な直播機であり、作業機としての直播装置47が走行車体2の後部に装着されている。直播装置47は、昇降可能な昇降リンク装置3を介してメインフレーム15の後側に連結されている。昇降リンク装置3の後端の縦リンク43には、直播装置47の中央部がローリング軸(図示省略)の周りに回動可能に連結されている。走行車体2の後部の上側には、施肥装置5の本体部分が設けられている。
【0024】
走行車体2は、駆動輪である、左右一対の前輪10および左右一対の後輪11を備える。走行車体2の前部には、トランスミッションケース12が配置されている。トランスミッションケース12の左右には、左右一対の前輪ファイナルケース13が設けられている。前輪ファイナルケース13の変向可能な前輪支持部から外向きに突出する前輪車軸には、前輪10が取付けられている。
【0025】
トランスミッションケース12の背面部には、メインフレーム15の前端部が固着されている。メインフレーム15の後端の左右中央部には、左右一対の後輪ギヤケース18が後輪ローリング軸を支点にしてローリング可能に支持されている。後輪ギヤケース18から外向きに突出する後輪車軸には、後輪11が取付けられている。
【0026】
原動機であるエンジン20は、メインフレーム15の上に搭載されている。エンジン20の回転動力が、第一ベルト伝動装置21および第二ベルト伝動装置23を介してトランスミッションケース12に伝達される。トランスミッションケース12に伝達された回転動力は、トランスミッションケース12の内部のトランスミッションによって変速された後に、走行動力と外部取出動力とに分離される。そして、一部の走行動力は前輪ファイナルケース13に伝達されて前輪10を駆動し、残りの走行動力は後輪ギヤケース18に伝達されて後輪11を駆動する。外部取出動力は、走行車体2の後部に設けられたクラッチケース25に伝達され、施肥伝動機構28によって施肥装置5へ伝動される。
【0027】
施肥装置5は、肥料貯留タンク60に貯留されている肥料を肥料繰出部61によって一定量ずつ繰り出し、繰り出された肥料を施肥ホース62でセンターフロート55および左右一対のサイドフロート56の左右両側に取付けられた施肥ガイド63まで導き、導かれた肥料を施肥ガイド63の前側に設けられた種子作溝器64によって形成された播種条の側部近傍に形成された肥料溝の内部に吐出する。
【0028】
なお、肥料溝は、肥料の効能がより効果的に発揮されるように、播種条から少し離れて形成される。
【0029】
肥料貯留タンク60の底部には、エアチャンバー69が設けられている。モーター(図示省略)によって駆動されるブロアによってエンジンマフラーの周りから吸引される温風は、吸引ダクトから左右方向に長いエアチャンバー69に吹き込まれ、肥料を温めて乾燥させ、施肥ホース62内に吹き込まれ、施肥ホース62の内部の肥料を施肥ガイド63へ強制的に移送する。吸引ダクト内には高分子吸収剤などの乾燥剤が封入されており、温風の水分が除去され、肥料の乾燥が促進される。
【0030】
エンジン20の上部は、エンジンカバー30によって覆われている。エンジンカバー30の上には、座席31が設けられている。座席31の前方には、各種の操作機構を内蔵するフロントパネル32が設けられている。フロントパネル32の上方には、前輪10を操向操作するためのハンドル34が設けられている。エンジンカバー30およびフロントパネル32の下端の左右両側は、水平なフロアステップ35である。
【0031】
昇降リンク装置3は、平行リンク構成をもち、上リンク40および左右一対の下リンク41を有する。上リンク40および下リンク41の基部側は、メインフレーム15の後端部に設けられたリンクベースフレーム42に回動可能に取付けられている。そして、上リンク40および下リンク41の先端側には、縦リンク43が連結されている。メインフレーム15に固着された支持部材と、上リンク40と一体的に形成されたスイングアーム45の先端部と、の間には、昇降油圧シリンダ46が設けられている。昇降油圧シリンダ46が油圧で伸縮させられると、上リンク40が上下方向に回動し、直播装置47がほぼ一定の姿勢で昇降させられる。
【0032】
直播装置47は、上部の種子ホッパー48から種籾を繰り出す繰出ロール49、繰出ロール49を筒状に覆う繰出ガイド51、および繰出ガイド51から繰出されて落下する種籾を風で乱れないように囲む放出筒53を有する。
【0033】
種子ブラケット52には、円柱状の繰出ロール49が横架されている。繰出ロール49の外周面には、繰出穴50が形成されている。
【0034】
繰出ガイド51の種籾取込口51aの側には、スクレーパブラシ79が設けられたブラシ取付体57が、種子ブラケット52に種子ホッパー48で挟んで取付けられている。スクレーパブラシ79は、繰出ロール49の外周面を掃き均す。
【0035】
直播装置47の下部には、センターフロート55およびサイドフロート56が設けられている。走行車体2がセンターフロート55およびサイドフロート56を圃場の泥面に接地させられた状態で進行すると、センターフロート55およびサイドフロート56が泥面を整地しながら滑走し、種籾が整地跡に直播装置47により播かれる。
【0036】
センターフロート55およびサイドフロート56は、前端側が圃場の表土面の凹凸に応じて上下動するように回動可能に取付けられている。作業時には、センターフロート55の前部の上下動が迎角センサー24により検出され、昇降油圧シリンダ46を制御するための油圧バルブが検出結果に応じて切り替えられ、直播装置47が昇降させられることにより、種籾の播種深さが常に一定に維持される。
【0037】
センターフロート55の前方にあるセンターローター27bは、サイドフロート56の前方にある左右一対のサイドローター27aより前方に配置されている。したがって、サイドローター27aのサイドローター駆動軸への動力は、後輪ギヤケース18の内部の整地変速装置72などを介して伝達される。そして、センターローター27bのセンターローター駆動軸への動力は、動力がサイドローター27aのサイドローター駆動軸の走行車体2の内側の端部からそれぞれ伝達される左右一対のチェーンケース73の内部のチェーン(図示省略)を介して伝達される。
【0038】
センターフロート55およびサイドフロート56の両側には、左右一対の種子作溝器64、および種子作溝器64によって形成された圃場の溝を埋める左右一対の種子覆土板59が設けられている。
【0039】
種子作溝器64は、センターフロート55およびサイドフロート56に前後方向にスライド可能に取付けられており、直播装置47の上昇に伴って前にスライドする。したがって、走行車体2のバランスが良化する。
【0040】
左右一対の覆土板ワイヤ71は、制御装置4が硬軟センサー87からの圃場の硬軟信号に基づいて制御する覆土板モーター9のオンオフに応じて左右一対の種子覆土板アーム75を揺動させる。そして、種子覆土板アーム75の先端の種子覆土板59が、左右方向に揺動する。種子覆土板59が揺動すると、種子作溝器64が形成した種子溝に播種された種籾が覆土される。すなわち、オフ状態であった覆土板モーター9がオン状態にされると、種子覆土板アーム75の基部が覆土板ワイヤ71を介して牽引され、種子覆土板アーム75に連結されている種子覆土板59が揺動する。
【0041】
つぎに、
図3(a)および(b)を主として参照しながら、本実施の形態の作業車両の構成および動作についてより具体的に説明する。
【0042】
ここに、
図3(a)および(b)は、本発明における実施の形態の作業車両のセンターフロート55近傍の模式的な平面図および背面図である。
【0043】
なお、センターフロート55に関連する構成について説明を行うが、サイドフロート56に関連する構成についても同様である。
【0044】
また、後に詳述されるように、種子覆土板59は種子覆土板収納部1500に収納される場合があるが、理解を容易にするために、
図3(a)および(b)の左側には種子覆土板59が種子覆土板収納部1500に収納された覆土板非作用姿勢が図示されており、
図3(a)および(b)の右側には、種子覆土板59が種子覆土板収納部1500に収納されていない覆土板作用姿勢が図示されている。
【0045】
さて、本実施の形態においては、上述されたように、圃場に形成された種子溝に入り込んだ種子に対して覆土が行われるのみならず、圃場に形成された肥料溝に入り込んだ肥料に対しても覆土が行われる。
【0046】
より具体的に説明すると、つぎの通りである。
【0047】
すなわち、調節機構1400は、制御装置4、覆土板モーター9、覆土板ワイヤ71および土壌移動防止板モーター1710などを有する手段である。
【0048】
左右一対の肥料作溝器1100は、圃場に供給された肥料が入り込む肥料溝を、圃場に形成する手段である。左右一対の肥料覆土板1200は、圃場に形成された肥料溝に入り込んだ肥料に対して覆土を行う、姿勢が調節可能な手段である。
【0049】
左右一対の連結ロッド1300は、種子覆土板59と肥料覆土板1200とが連動するように、種子覆土板59と肥料覆土板1200とを連結する手段である。
【0050】
調節機構1400は、検出された土壌の硬さに応じて、種子覆土板59の姿勢を調節する。
【0051】
なお、調節機構1400は、本実施の形態においては、種子覆土板59の姿勢を調節するが、肥料覆土板1200の姿勢を調節してもよい。
【0052】
種子に対しての覆土が行われるだけではなく、肥料に対しての覆土も十分に行われるので、潅水が行われたときに種子および肥料が流されにくく、収穫量が安定する。
【0053】
もちろん、圃場の表面に露出した種子が鳥獣によって食べられてしまうことも、抑制される。
【0054】
そして、制御装置4は、土壌がより硬いほど覆土がより確実に行われるように、上下方向および左右方向における覆土板姿勢の調節を自動的に行うので、作業者の負担は増大せず、作業能率が低下してしまう恐れはない。
【0055】
さらに、アクチュエーターとしての覆土板モーター9は連結ロッド1300を利用して種子覆土板59および肥料覆土板1200を連動させ、肥料覆土板1200のための追加的なモーターは不必要であるので、部品点数の増大が抑制される。
【0056】
溝切器1600は、排水溝を、圃場に形成する手段である。土壌移動防止板1700は、種子覆土板59と溝切器1600との間に設けられ、土壌の移動を防止する、姿勢が調節可能な手段である。
【0057】
調節機構1400は、検出された土壌の硬さに応じて、土壌移動防止板1700の姿勢を調節する。
【0058】
土壌移動防止板1700の姿勢の調節は、土壌移動防止板モーター1710による駆動力を利用して行われる。
【0059】
移動しやすい柔らかい土壌においては、土壌移動防止板1700が圃場に接触するように、土壌移動防止板1700の姿勢が調節される。すると、土壌がフロート側に移動しにくくなるので、種子の発芽率の低下を惹起する過剰な覆土が抑制される。
【0060】
移動しにくい硬い土壌においては、土壌移動防止板1700が圃場に接触しないように、土壌移動防止板1700の姿勢が調節される。すると、土壌がフロート側に移動しやすくなるので、形成された排水溝の埋め戻しが抑制される。
【0061】
かくして、種子および肥料に対しての覆土が行われながら、排水溝がたとえば四条ごとに圃場に形成される。
【0062】
直播装置47と施肥装置5との間の距離は、所定値以上であることが望ましい。
【0063】
ブロアによってエンジンマフラーの周りから吸引される温風は、施肥ホース62の内部の肥料を施肥ガイド63へ強制的に移送するときに、圃場の表面から土および水を吹き上げることがある。施肥装置5の肥料排出口および肥料作溝器1100が直播装置47の種子排出口および種子作溝器64より前方に配置されており、それら間の水平方向の間隔が十分に確保されていると、直播装置47の種子排出口近傍の繰出漏斗146および繰出ロール49への土および水の付着の発生が抑制される。すると、コーティング剤として鉄、モリブデンまたは過酸化カルシウムなどを利用してコーティングが行われたコーティング籾などの種子についても、漏斗詰まりおよびロール詰まりが抑制される。
【0064】
ところで、移動しやすい柔らかい土壌においては、覆土の必要性は小さくなる。
【0065】
そこで、覆土板姿勢が特に上下方向において精密に調節されるように、覆土板泥押面の水平面からの傾き角度が変更可能であることが望ましい。
【0066】
たとえば、調節機構1400は、検出された土壌の硬さが所定レベルを超えない場合には、少なくとも種子覆土板59が圃場に接触しないように、種子覆土板59の姿勢を調節してもよい。
【0067】
そして、コーティング籾などの種子については、鳥獣によって食べられてしまう恐れが少なく、発芽の困難性が惹起されないように潅水量を抑制する必要があるので、覆土は多くの場合においてむしろ不必要である。
【0068】
そこで、不必要な覆土動作の実行が防止されるように、覆土板非作用姿勢が覆土板姿勢の一つとして選択可能であることが望ましい。
【0069】
たとえば、調節機構1400は、作業者の指示に応じて、検出された土壌の硬さにかかわらず、少なくとも種子覆土板59が圃場に接触しないように、種子覆土板59の姿勢を調節してもよい。
【0070】
より具体的には、調節機構1400は、作業者の指示に応じて、検出された土壌の硬さにかかわらず、種子覆土板59を種子覆土板収納部1500に収納してもよい。
【0071】
種子覆土板収納部1500に収納された種子覆土板59は種子および肥料に接触することはないので、不必要な覆土動作の実行が防止されるのみならず、種子覆土板59との接触に伴う、望ましくない種子および肥料の移動が発生しない。
【0072】
つぎに、
図4および5を主として参照しながら、本実施の形態の作業車両の構成および動作についてさらにより具体的に説明する。
【0073】
ここに、
図4は本発明における実施の形態の作業車両の種子覆土板59および肥料覆土板1200近傍の拡大平面図であり、
図5は本発明における実施の形態の作業車両の種子覆土板59および肥料覆土板1200近傍の拡大左側面図である。
【0074】
なお、
図4および5には、これから詳述される種子覆土板59が種子覆土板収納部1500に収納されていない覆土板作用姿勢が図示されている。
【0075】
本実施の形態においては、上述されたように、種子覆土板59は、スイッチ1410の押し下げによる作業者の指示に応じて、検出された土壌の硬さにかかわらず、センターフロート回動支点軸取付部1800を介して走行車体2に取付けられたセンターフロート55の下面側にある種子覆土板収納部1500に収納される。
【0076】
より具体的に説明すると、つぎの通りである。
【0077】
すなわち、覆土板モーター9によって一端が牽引される覆土板ワイヤ71の他端は、種子覆土板アーム連結ピン1420を利用して、回動可能に種子覆土板アーム75に連結されている。
【0078】
覆土板ワイヤ71は、直接的に種子覆土板59に連結されていてもよいが、種子覆土板59よりも上方の種子覆土板アーム75に連結されているので、部材間の干渉が発生しにくく、覆土板ワイヤ71への土および水の付着の発生が抑制される。
【0079】
つぎに、種子覆土板アーム75、種子覆土板回動支点軸1310および種子覆土板59は、溶接などを利用して、一体的に連結されている。
【0080】
種子覆土板アーム75はセンターフロート55の上面側にあり、種子覆土板回動支点軸1310は、センターフロート55に対して上下動可能および回動可能に、センターフロート55に設けられた上下方向の貫通孔に挿通されており、種子覆土板59はセンターフロート55の下面側にある。
【0081】
後に詳述されるように、トルク・スプリングである種子覆土板スプリング1312は、種子覆土板アーム75とセンターフロート55の上面側との間において、種子覆土板回動支点軸1310に外装されており、種子覆土板59が種子覆土板収納部1500に収納された覆土板非作用姿勢が実現される。
【0082】
つぎに、連結ロッド1300の一端は、種子覆土板連結ピン1311を利用して、回動可能に種子覆土板アーム75に連結されており、連結ロッド1300の他端は、肥料覆土板連結ピン1321を利用して、上下動可能および回動可能に肥料覆土板1200に連結されている。
【0083】
種子覆土板アーム75と一体的な種子覆土板連結ピン1311は、連結ロッド1300の一端側に設けられた上下方向の穴に遊嵌されており、肥料覆土板1200と一体的な肥料覆土板連結ピン1321は、連結ロッド1300の他端側に設けられた上下方向の貫通孔に挿通されている。
【0084】
そして、肥料覆土板1200は、肥料覆土板回動支点軸1320を利用して、回動可能にセンターフロート55に連結されている。
【0085】
肥料覆土板1200と一体的な肥料覆土板回動支点軸1320は、センターフロート55の上面側に設けられた上下方向の穴に遊嵌されている。
【0086】
ここで、種子覆土板59が、スイッチ1410の押し下げによる作業者の指示に応じて種子覆土板収納部1500に収納される場合について説明を行う。
【0087】
このような場合には、検出された土壌の硬さにかかわらず、覆土板モーター9による覆土板ワイヤ71の牽引は行われない。
【0088】
このとき、上端が種子覆土板アーム75に固着され、下端がセンターフロート55の上面側に固着された種子覆土板スプリング1312の状態は、巻きについての隙間があり、ほぼ長さが自然長である状態である(
図3(a)および(b)の左側の状態)。
【0089】
つまり、一体的に連結されている、種子覆土板アーム75、種子覆土板回動支点軸1310および種子覆土板59は、種子覆土板スプリング1312の巻きについての隙間によって上方に持ち上げられるとともに、種子覆土板スプリング1312の巻き方向についての付勢力によってセンターフロート55の外側に向かって引き戻されている。
【0090】
かくして、種子覆土板59の非作用姿勢が、実現される。
【0091】
一方、覆土板モーター9による覆土板ワイヤ71の牽引が行われと、一体的に連結されている、種子覆土板アーム75、種子覆土板回動支点軸1310および種子覆土板59は、種子覆土板スプリング1312の巻き方向についての付勢力に抗してセンターフロート55の内側に向かって引き込まれる。
【0092】
そして、種子覆土板スプリング1312の巻きについての隙間は小さくなるので、種子覆土板アーム75、種子覆土板回動支点軸1310および種子覆土板59は、下方に押し下げられる(
図3(a)および(b)の右側の状態)。
【0093】
かくして、種子覆土板59の作用姿勢が、実現される。
【0094】
もちろん、覆土板モーター9による覆土板ワイヤ71の牽引力が小さくなると、種子覆土板スプリング1312はリターンスプリングとしての機能を発揮するので、種子覆土板アーム75、種子覆土板回動支点軸1310および種子覆土板59は、上方に持ち上げられるとともに、センターフロート55の外側に向かって引き戻される。
【0095】
このような種子覆土板59の上下方向の高さの変化は、センターフロート55の厚みにほぼ等しい3〜5cm程度であり、種子覆土板スプリング1312の巻きについての隙間を利用して十分に達成される。
【0096】
水平軸の周りの回動による単純な上下方向の移動に比べるとかなり複雑な、左右方向の移動および上下方向の移動が同時に行われる動作が、種子覆土板スプリング1312を利用する比較的に簡素な構成によって実現されている。
【0097】
以上においては、種子覆土板59の非作用姿勢および作用姿勢について詳細に説明を行った。
【0098】
なお、連結ロッド1300が種子覆土板59と肥料覆土板1200とを連結するので、肥料覆土板1200については、両覆土板の非作用状態および作用状態が並立するように、左右方向の移動が追従的に実行される。
【0099】
もちろん、種子覆土板スプリング1312を利用するスプリング機構と類似する構成を採用することにより、肥料覆土板1200についても非作用姿勢および作用姿勢を同様に実現することができる。
【0100】
ただし、連結ロッド1300は十分な剛性を有するので、そのような構成は必須ではない。
【0101】
そして、たとえば、連結ロッド1300の代わりにワイヤまたはケーブルが用いられる構成も考えられ、そのような構成においては、肥料覆土板1200についても、上述されたスプリング機構を利用することにより、左右方向の移動および上下方向の移動が同時に行われる動作が実現される。
【0102】
なお、直播装置47は本発明の播種装置の一例であり、施肥装置5は本発明の施肥装置の一例である。また、種子作溝器64は本発明の種子溝形成部材の一例であり、肥料作溝器1100は本発明の肥料溝形成部材の一例である。また、種子覆土板59は本発明の種子覆土部材の一例であり、肥料覆土板1200は本発明の肥料覆土部材の一例である。
【0103】
また、連結ロッド1300は、本発明の連結部材の一例である。
【0104】
また、硬軟センサー87は、本発明の検出部材の一例である。
【0105】
調節機構1400は、本発明の覆土部材調節装置および本発明の土壌移動防止部材調節装置を含む手段の一例である。
【0106】
また、種子覆土板収納部1500は、本発明の種子覆土部材収納部の一例である。
【0107】
また、溝切器1600は、本発明の排水溝形成部材の一例である。
【0108】
また、土壌移動防止板1700は、本発明の土壌移動防止部材の一例である。
【0109】
以下においては、
図6〜12を主として参照しながら、本発明における実施の形態についてさらに説明する。
【0110】
(A)コーティング籾の播種においては、種子作溝器64がガイド部とともにセンターフロート55から取外されてもよい。
【0111】
図6(a)および(b)に示されているように、センターフロート55の種子作溝器64が取付けられていた箇所においては、開口部100が出現する。
【0112】
ここに、
図6(a)および(b)は、本発明における実施の形態の作業車両のセンターフロート55の模式的な平面図(その一および二)である。
【0113】
走行車体2の左右方向についての開口部100の幅は、走行車体2の前後方向について、一定であってもよいが(
図6(a)参照)、前方から後方に向かって大きくなってもよい(
図6(b)参照)。
【0114】
より具体的に説明すると、つぎの通りである。
【0115】
すなわち、開口部100の内側周縁には、種子作溝器64を取付けるための取付フランジ101が形成されている。
【0116】
そのため、種子作溝器64がセンターフロート55から取外されている場合には、播種された種籾が取付フランジ101に載ってしまうことがある。
【0117】
もちろん、走行車体2は矢印Xで示された前進方向に向かって走行しているので、取付フランジ101に載った大部分の種籾は走行振動などのために取付フランジ101から自然に落下してゆく。
【0118】
しかしながら、開口部100の幅が一定であると(
図6(a)参照)、種籾が、走行車体2の前進に伴う慣性力などのために、取付フランジ101に載ったままで前方から後方に向かって落下せずに移動していくことがある。
【0119】
一方、開口部100の幅が前方から後方に向かって大きくなっていると(
図6(b)参照)、種籾は、取付フランジ101に載ったままで前方から後方に向かって移動しようとすると、取付フランジ101から速やかに落下するので、望ましい。
【0120】
なお、センターフロート55の構成について説明を行ったが、サイドフロート56の構成についても同様である。
【0121】
(B)サイドローター27aの取付けは、上下方向の回動を行うための機構、および吊下げを行うための機構、の二つの機構を利用して行われてもよい。
【0122】
図7に示されているように、前者の上下方向の回動を行うための機構の構成要素は、たとえば、上下回動支点軸201、保持部材202、および突出フレーム203である。
【0123】
ここに、
図7は、本発明における実施の形態の作業車両のサイドローター27a近傍の模式的な左側面図である。
【0124】
上下回動支点軸201を保持する保持部材202のサイズは比較的に小さいが、保持部材202が一端に接続され、直播装置47のメインフレームが他端に接続された突出フレーム203は数箇所に設けられていてもよい。
【0125】
数箇所に設けられた突出フレーム203は、何れも矢印Xで示された前進方向に向かって水平に突出している。
【0126】
突出フレーム203が角パイプを利用して設けられている構成は、廉価であり、少量生産に有利である。
【0127】
なお、サイドローター27aの構成について説明を行ったが、センターローター27bの構成についても同様である。
【0128】
(C)座席31は、作業者が走行車体2の後方での作業を行いやすいように、180度ずつ回転可能であってもよい。
【0129】
図8に示されているように、資材置台300が走行車体2の左側および右側にそれぞれ設けられている構成においては、資材置台300が、座席31との相対的な位置関係が実質的に保たれるように、そのような座席31の回転に伴って移動されることが望ましい。
【0130】
ここに、
図8は、本発明における実施の形態の作業車両の座席31近傍の模式的な平面図である。
【0131】
もちろん、走行車体2が矢印Xで示された前進方向に向かって走行している場合には、走行車体2の走行速度が、作業者が走行車体2の後方での作業をより行いやすいように、後方への座席31の回転に伴って低減されてもよい。
【0132】
なお、本実施の形態の作業車両が、播種機ではなく、自動直進が可能な田植機などの苗移植機である場合には、資材置台300は走行車体2の後方に設けられた苗載せ台に補給されるべき予備苗用の苗枠であってもよい。
【0133】
(D)収穫量が多いことが特に重要視される飼料米の播種においては、播種が千鳥状に行われてもよい。
【0134】
図9(a)および(b)に示されているように、繰出ロール49の外周面に形成されている多数の繰出穴50が、たとえば、繰出ロール49の回転方向に対して斜めになるように配置される。
【0135】
ここに、
図9(a)および(b)は、本発明における実施の形態の作業車両の繰出ロール49の外周面展開図(その一および二)である。
【0136】
条播が行われるが、多数の繰出穴50の位置が両矢印Yで示された繰出ロール49の軸方向について連続しないので、生育した苗の株間は点播が行われた場合と同様に十分に確保される。
【0137】
したがって、苗の生育状況は良好となり、収穫量が増大する。
【0138】
もちろん、飼料米は倒伏しやすいので、繰出ロール49の回転方向についての隣接条間播種ピッチPは大きくなり過ぎないことが望ましい。
【0139】
そして、繰出ロール49の外周面に形成されている多数の繰出穴50は、繰出ロール49の回転方向について、連続的に配置されていてもよいが(
図9(a)参照)、不連続的に配置されていてもよい(
図9(b)参照)。
【0140】
繰出穴50が不連続的に配置されていると(
図9(b)参照)、播種ラインにおける途切れが生じ、生育した苗の株間の風通しが良好となる。
【0141】
もちろん、前述の通り倒伏しやすい飼料米の播種においては、隣接条間播種ピッチPがゼロとされ、繰出ロール49の外周面には両矢印Yで示された繰出ロール49の軸方向に長い溝状の繰出穴50が形成されていてもよい。
【0142】
図10(a)および(b)に示されているように、このような溝状の繰出穴50が形成されている構成においては、繰出穴50よりも浅くコーティング籾は入り込めないコーティング剤除去溝400が、コーティング籾から剥離したコーティング剤に起因する繰出ロール49のロール詰まりが抑制されるように、隣接する繰出穴50の間に形成されていることが望ましい。
【0143】
ここに、
図10(a)および(b)は、本発明における実施の形態の作業車両の繰出ロール49の外周面展開図(その三および四)である。
【0144】
コーティング剤除去溝400が設けられている構成は、両矢印Yで示された繰出ロール49の軸方向について連続する筋状の播種に伴って発生しやすい、コーティング籾から剥離したコーティング剤の確実な排出に有利である。
【0145】
(E)施肥ガイド63の肥料排出口は、施肥深さが同じ条において変化するように、分岐されていてもよい。
【0146】
図11に示されているように、仕切部500が、たとえば、仕切部500の右側における条右側の施肥深さが仕切部500の左側における条左側の通常の施肥深さよりも大きくなるように、施肥ガイド63の肥料排出口に配置される。
【0147】
ここに、
図11は、本発明における実施の形態の作業車両の施肥ガイド63の肥料排出口近傍の模式的な背面図である。
【0148】
もちろん、肥料作溝器1100は、施肥深さについて、条右側が条左側よりも深くなるような、作溝に適した形状を有することが望ましい。
【0149】
そして、分岐高さを規定する仕切部500の上端は、より深い側の条右側の施肥量が、施肥ガイド63の上下長さの違いにより生じる気圧および搬送風の流速の差などにより、条左側の施肥量と比べて大きくなり過ぎないように、水平面内に含まれていることが望ましい。
【0150】
つまり、施肥ガイド63の上端部から排出口までの上下長さが異なると、排出口から圃場面または水面までの距離が異なるので、搬送風の流速および排出時の流れる方向が異なることがあるとともに、施肥ガイド63の内部の気圧も異なることがある。そして、もしも仕切部500が施肥ガイド63の内部に設けられていないと、施肥量の偏りが落下中に生じる可能性がある。そこで、気圧、ならびに搬送風の流速および流れる方向の差が生じにくい位置から仕切部500を設けることが、望ましい。
【0151】
なお、肥料作溝器1100の下端には、細い肥料溝が深い位置に形成されるように、針金などが取付けられていてもよい。
【0152】
そのような細い肥料溝を通っての土壌における水の移動が促進され、肥料のイオン化が活発になるので、播種深さが大きい場合にも肥料が無駄になりにくい。
【0153】
また、
図12に示されているように、肥料作溝器1100の下端は、鋭角状に尖っていてもよい。
【0154】
ここに、
図12は、本発明における実施の形態の作業車両の肥料作溝器1100の模式的な斜視図である。
【0155】
走行車体2は矢印Xで示された前進方向に向かって走行し、浅い位置での施肥量は、肥料作溝器1100の形状に応じて、深い位置での施肥量に比べて大きくなる。
【0156】
苗の根の位置が浅い生育の初期段階で消費される浅い位置での肥料は、完全に消費されずに余ってしまっても、段々と土中に浸透していき、苗の根の位置が深くなる生育の中期段階以降で有効に消費される。
【0157】
そして、余った肥料は、圃場に張った水の対流によって余った肥料が圃場中に拡散することにより、有効に消費される。こうした対流により流される肥料は圃場の深い箇所に集まりやすいので、他の場所と比較して深い場所に植え付けられた苗が肥料不足により生育不良を起こすことが防止される。
【0158】
したがって、全ての肥料は、時間経過に伴ってほぼ完全に無駄なく消費される。
【0159】
このように、同じ条における施肥深さが変化させられる構成は、効率のよい肥料の作用が促進されるので、追肥回数の低減に有利である。