(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
交流電源(1)に対して設置点(P)において、系統連系リアクトル(4)を介して負荷(2)と並列に接続され、前記系統連系リアクトルに補償電流(Ia)を流す並列形アクティブフィルタ(6)を制御する制御装置(71)であって、
前記並列形アクティブフィルタが出力する電圧(Vr)の指令値たる電圧指令値(Vid,Viq)に基づいて、前記並列形アクティブフィルタ(6)を駆動制御する信号(G)を生成する駆動信号生成回路(720)と、
前記設置点と前記系統連系リアクトルとの間の部位の電圧(Vi,Vc)に対してゲイン(K1)での増幅を伴った微分値を、前記補償電流(Ia)と前記負荷(2)に流れる負荷電流(Io)とに基づいて得られる値(ido,iqo)から減じて、前記電圧指令値(Vid,Viq)を得る減算器(718,719)と
を備える、並列形アクティブフィルタの制御装置。
交流電源(1)に対して設置点(P)において負荷(2)と並列に接続され、前記設置点へ補償電流(Ia)を流す並列形アクティブフィルタ(6)を制御する制御装置(72)であって、
前記並列形アクティブフィルタが出力する電圧(Vr)の指令値たる電圧指令値(Vid,Viq)に基づいて、前記並列形アクティブフィルタ(6)を駆動制御する信号を生成する駆動信号生成回路(720)と、
前記負荷(2)に流れる負荷電流(Io)から前記補償電流(Ia)を差し引いた値(Isd,Isq)に対してゲイン(K2)での増幅を伴った二階微分値を、前記補償電流と前記負荷電流(Io)とに基づいて得られる値(ido,iqo)から減じて、前記電圧指令値(Vid,Viq)を得る減算器(718,719)と
を備える、並列形アクティブフィルタの制御装置。
【発明を実施するための形態】
【0022】
第1の実施の形態.
図1は第1の実施の形態にかかる制御装置71、制御装置71の制御対象たる並列形アクティブフィルタ6、及びその周辺とを示すブロック図である。
【0023】
三相の交流電源1は電源電流Isを出力する。並列形アクティブフィルタ6は交流電源1に対し、三相の系統連系リアクトル4を介して、負荷2と並列に接続される。並列形アクティブフィルタ6は系統連系リアクトル4に三相の補償電流Iaを出力する。系統連系リアクトル4には補償電流Iaが流れることにより三相の電圧Vaが発生する。また、並列形アクティブフィルタ6が補償電流Iaを出力する際には三相の電圧Vrを系統連系リアクトル4に印加する。
【0024】
ここでは補償電流Iaについて並列形アクティブフィルタ6から交流電源1へ向かう方向を正にとっている。よって交流電源1から流れる三相の電源電流Isと補償電流Iaの和が負荷2へと入力する三相の負荷電流Ioであるとして説明する。
【0025】
交流電源1の電源インピーダンスをリアクトル3として示した。リアクトル3には電源電流Isが流れることにより三相の電圧Vbが発生する。リアクトル3が無視できるときに交流電源1が出力する三相の電圧Vsを導入すると、リアクトル3の負荷2側の三相の電圧Viは、電圧Vsから電圧Vbを差し引いた電圧として把握される。つまり交流電源1が実質的に出力するのは電圧Vsではなく、電圧Viである。電圧Vrは電圧Vi,Vaの和として把握される。
【0026】
なお、リアクトル3の負荷2側は、負荷2と、系統連系リアクトル4を介して並列形アクティブフィルタ6とが接続されることから、設置点Pとして示した。よって電圧Viは、以降、設置点電圧Viと称することがある。これに対して、電圧Vsを、以降、電源電圧Vsと称することがある。
【0027】
なお、
図1では交流電源1、リアクトル3、系統連系リアクトル4を三相分纏めて一相として表現しているので設置点Pも一つの点として示されているが、実際には相毎に一つずつ存在し、合計3個存在する。
【0028】
並列形アクティブフィルタ6は例えばインバータ61とコンデンサ62とを備える。インバータ61は補償電流Iaを入出力することにより、コンデンサ62を直流電圧Vdcに充放電する。
【0029】
例えばインバータ61は電圧形インバータであり、3つの電流経路がコンデンサ62に対して並列に接続され、各々の電流経路において二つのスイッチング素子が設けられる。
【0030】
制御装置71は変圧器701、位相検出器702、dq変換器703,706,711、ハイパスフィルタ704,705、減算器707,712,713,718,719、比例積分制御器708,714,715、加算器709、微分器716a,717a、及び駆動信号生成回路720を有している。
【0031】
変圧器701は三相の設置点電圧Vi、より詳細にはそれらの相間電圧を検出し、これを位相検出器702に与える。位相検出器702は設置点電圧Viの位相ωtを検出し、これをdq変換器703,711に伝える。
【0032】
dq変換器703は検出された負荷電流Ioを三相/二相変換する。d軸及びq軸は位相検出器702で検出された位相と同期して回転する回転座標系である。
【0033】
この際、負荷電流Ioは三相であるので、そのうちの二相分の負荷電流ir,itが検出されれば負荷電流Ioのd軸成分及びq軸成分を得ることができる。
図1ではそのように二相分の負荷電流ir,itが検出される場合を例示している。
【0034】
dq変換器711は検出された補償電流Iaを三相/二相変換してd軸電流id、q軸電流iqを得る。この際、補償電流Iaも三相であるので、そのうちの二相分が検出されればd軸電流id、q軸電流iqを得ることができる。
図1ではそのように二相分の電流が検出される場合を例示している。
【0035】
ハイパスフィルタ704,705はそれぞれ、負荷電流Ioのd軸成分及びq軸成分の直流成分を除去する。
【0036】
負荷電流Ioのうち、位相ωtと同期する成分は、d軸成分、q軸成分のいずれにおいても直流分として現れる。つまり負荷電流Ioに高調波成分が無ければd軸成分、q軸成分は直流となる。よって上記ハイパスフィルタ704,705は、負荷電流Ioのd軸成分、q軸成分のうち、高調波成分のみを出力する。
【0037】
補償電流Iaのd軸電流id、q軸電流iqは、位相のずれなく負荷電流Ioの高調波成分と一致すれば、負荷電流Ioの高調波成分を負担することになり、電源電流Isには高調波成分が発生しない。従ってハイパスフィルタ704,705は、後述するd軸における修正を無視すれば、補償電流Iaのd軸電流id、q軸電流iqの指令値を出力すると言える。
【0038】
さて、q軸電流iqの指令値iq*はハイパスフィルタ705から得ることができる。また、q軸電流iqの指令値iq*についてハイパスフィルタ705を用いることなく、その直流成分も補償するように構成することで、基本波力率を改善することができる。
【0039】
他方、d軸電流idの指令値id*はハイパスフィルタ704の出力に対して直流電圧Vdcの変動に対応するための修正が行われる。具体的には下記のように修正される。
【0040】
減算器707はコンデンサ62が支える直流電圧Vdcとその指令値Vdc*との偏差を求める。比例積分制御器708は減算器707から得られた偏差に比例積分制御を行って修正値を求める。当該修正値はハイパスフィルタ704の出力と加算器709によって加算される。これにより、直流電圧Vdcの変動の影響が小さな指令値id*が、加算器709から得られる。
【0041】
減算器712,713は、それぞれ偏差Δid,Δiqを出力する。偏差Δidはd軸電流idを指令値id*から差し引いて求められる。偏差Δiqはq軸電流iqを指令値iq*から差し引いて求められる。
【0042】
比例積分制御器714,715は、それぞれ偏差Δid,Δiqに対して比例積分制御を行って比例演算結果たる値ido,iqoを出力する。
【0043】
減算器718は、微分器716aの出力を値idoから差し引いて電圧指令値Vidを出力する。減算器719は、微分器717aの出力を値iqoから差し引いて電圧指令値Viqを出力する。
【0044】
dq変換器706は、設置点電圧Viを、より詳細にはその相間電圧の二つを入力し、これらを三相/二相変換してd軸成分及びq軸成分を、それぞれ微分器716a,717aに出力する。微分器716a,717aは上述の相間電圧のd軸成分及びq軸成分に対して、いずれもゲインK
1での増幅を伴った微分処理を行って出力する。
【0045】
指令値id*,iq*は、例えばここでは交流電源1が供給する設置点電圧Viは三相電圧なので、定常状態においては設置点電圧Viの周期の1/6倍の周期を有して設置点電圧Viと同期する。
【0046】
駆動信号生成回路720は、電圧指令値Vid,Viqに基づいて並列形アクティブフィルタ6を駆動制御する駆動信号Gを生成する。かかる機能を有する駆動信号生成回路720の構成は周知であるので、ここでの説明は省略する。
【0047】
本実施の形態での例示では、負荷2はインバータ23と、インバータ23で制御されて冷媒(不図示)を圧縮する圧縮機24とを含む空気調和機である。負荷2は更に、インバータ23へと直流電源を供給するためにコンバータ21及びコンバータ21とインバータ23との間で並列に接続して設けられるローパスフィルタ22も含んでいる。
【0048】
ローパスフィルタ22はリアクトル221とコンデンサ222によってチョークインプット型のフィルタとして実現される。具体的にはコンデンサ222は、コンバータ21とインバータ23との間の直流リンクにおいてインバータ23と並列に接続されている。またリアクトル221はコンデンサ222よりもコンバータ21側において直流リンクの一方の直流母線に直列に接続して設けられている。
【0049】
従来の公知の並列形アクティブフィルタでは、実質的にはdq変換器706及び微分器716a,717aは設けられていなかった。実施の形態の詳細な説明に入る前に、微分器716a,717aの不在による不都合についてまず説明する。これは例えば
図1においてゲインK
1が0の場合に相当する。
【0050】
図2乃至
図4はいずれも、ゲインK
1が0の場合の諸量の波形を示すグラフである。いずれも上から第1段目に電源電流Isを、第2段目に負荷電流Ioを、第3段目に補償電流Iaを、それぞれ示している。横軸には時間を採用した。
【0051】
図2及び
図3は、いずれも電源インピーダンスが小さく、リアクトル3として表されたインダクタンス成分L
bが10μHである場合を示す。
【0052】
図2は負荷2に平滑回路付き変換器が採用される場合を示す。つまりローパスフィルタ22は平滑回路として機能する。リアクトル221のインダクタンスL
iを1000μH、コンデンサ222の静電容量C
iを2000μFと設定した。
【0053】
図3は負荷2に電解コンデンサレスインバータが採用される場合を示し、リアクトル221のインダクタンスL
iを300μH、コンデンサ222の静電容量C
iを40μFと設定した。
【0054】
負荷2に電解コンデンサレスインバータを採用することにより、負荷2を小型化できる。しかも、電解コンデンサレスインバータに採用される公知の制御によって、高調波電流の有効成分を抑制すれば、並列形アクティブフィルタ6が補償すべき電力容量の低減のみならず、並列形アクティブフィルタ6のコンデンサ62の静電容量をも低減できる。これにより、装置全体で大幅な小型化、コストダウンが図られる。
【0055】
図2と
図3とを比較すると、平滑回路付き変換器が採用される場合は、ローパスフィルタ22が平滑回路として機能することを反映し、電解コンデンサレスインバータが採用される場合よりも、負荷電流Ioの脈動が大きい。電解コンデンサレスインバータでは負荷電流Ioの脈動を小さくすることで、並列形アクティブフィルタ6の補償に必要な電力容量を小さくできる。電源電流Isにおける高調波低減の観点からは平滑回路付き変換器、電解コンデンサレスインバータのいずれを採用しても大きな相違はない。
【0056】
図4は負荷2に電解コンデンサレスインバータが採用される場合を示し、
図3に示された場合と同様に、リアクトル221のインダクタンス値を300μH、コンデンサ222の静電容量を40μFと設定した。但し、インダクタンス成分L
bを230μHとした。これは高調波電流についてのJIS規格JISC61000−3−2において設定される高調波電流の測定条件に鑑みた値である。
【0057】
図3と比較して、
図4に示される諸量は非常に大きく脈動していることがわかる。かかる脈動は電源インピーダンスを含めたローパスフィルタ22の共振によるものと考えられる。リアクトル3はコンバータ21を介してリアクトル221に直列に接続されるからである。
【0058】
かかる脈動は当然、望ましくない。つまり、負荷2に電解コンデンサレスインバータが採用される場合には、電源インピーダンスを考慮すれば、従来のアクティブフィルタの制御方法のみでは諸量の脈動を抑制することが容易ではない。
【0059】
より具体的にこれを説明するため、
図5に、インダクタンス成分L
bを230μHとした場合の、並列形アクティブフィルタが出力する電圧Vrに対する、設置点電圧Viの伝達関数G
a(s)を示す。平滑回路付き変換器及び電解コンデンサレスインバータの伝達関数G
a(s)をそれぞれグラフG1,G2で示した。上述の諸量を用いて計算すれば、電解コンデンサレスインバータの共振周波数はL
b=0μHのときに1350
Hz程度であ
り(不図示)、L
b=230μHのときには1150
Hz程度となり、
平滑回路付き変換器を採用した場合と比較して減衰係数も小さいことが看取される。
【0060】
より詳細にこの現象を考察する。
図6は
図1に示された構成から、微分器716a,717a、減算器718,719、dq変換器706を除去した構成の等価回路を示す。
図7は
図6の等価回路から導かれるブロック線図である。但し、系統連系リアクトル4のインダクタンスL
a、インバータ23のインピーダンスZ
i(
図6及び後述の式では抵抗成分R
iとして把握している)を導入した。ブロック10は交流電源1から見たブロック線図を示す。またブロック70は微分器716a,717a、減算器718,719、dq変換器706を除去した制御装置71に対応する。ブロック70の中のハイパスフィルタを示すブロック(図中で「HPF」と表記)は、
図1のハイパスフィルタ704,705に相当し、伝達関数G
c(s)を示すブロックは
図1の比例積分制御器714,715に相当する。また
図1の電圧指令値Vid,Viqに基づいて正常にインバータ61が動作するとして、電圧Vrは電圧指令値Vid,Viqに相当する。
【0061】
図7から、伝達関数G
a(s)は式(1)で表される。但し、共振角周波数ω
0及び減衰係数ζ
0を併記した。
【0063】
図5や式(1)から看取されるように、並列形アクティブフィルタ6の制御では、負荷2のローパスフィルタ22に基づいた共振点および反共振点が存在する。この共振現象はローパスフィルタ22、系統連系リアクトル4だけでなく、リアクトル3として示される電源インピーダンスにも依存する。
【0064】
図8は、本実施の形態で採用される制御装置71を採用した構成を示すブロック線図である。伝達関数G
c(s)を示すブロックは
図1の比例積分制御器714,715に相当するので、当該ブロックから出力される電圧は
図1の値ido,iqoに相当する。よって伝達関数G
c(s)を示すブロックから出力されるのは電圧Vrとしてではなく、電圧Vroとして示した。換言すれば
図7のブロック線図は、
図8のブロック線図においてK
1=0である場合に相当し、電圧VrはK
1=0の場合に電圧Vroと等しい。
【0065】
そして
図7で示された構成と比較して、設置点電圧ViをゲインK
1で増幅して微分した値を減算することにより、電圧Vroを補正して電圧Vrを得ている。当該微分を行う微分ブロック(図中「K
1s」と表記)は、
図1の微分器716a,717aに対応する。また、当該減算は
図1の減算器718,719での減算に対応する。
【0066】
これにより、伝達関数G
a(s)は式(2)で表される。但し、共振角周波数ω
1及び減衰係数ζ
1を併記した。K
1=0であれば、ω
1=ω
0,ζ
1=ζ
0である。
【0068】
図9は、
図4と同様に、インダクタンスL
iを300μH、静電容量C
iを40μF、インダクタンス成分L
bを230μHとした場合の伝達関数G
a(s)を示すグラフである。但し、グラフG
4は
図7のブロック線図に対応し、従来の技術での伝達関数G
a(s)を示す。グラフG
3は
図8のブロック線図に対応し、設置点電圧ViをゲインK
1での増幅を伴って微分した場合の伝達関数G
a(s)を示す。
【0069】
ゲインK
1を所定の値に設定することで、減衰係数ζ
1を高めることができる。グラフG6は、減衰係数ζ
1が0.3となるようにゲインK
1を設定した場合を示している。このようにして、並列形アクティブフィルタ6はローパスフィルタ22の共振に対して安定した補償特性とすることができる。
【0070】
図10は
図9のグラフG6を得るように設定されたゲインK
1を採用した場合の諸量を示すグラフである。
図2〜
図4と同様に、上から第1段目に電源電流Isを、第2段目に負荷電流Ioを、第3段目に補償電流Iaを、それぞれ示している。横軸には時間を採用した。このように、本実施の形態によれば、電源電流Isから高調波成分を効果的に除去することができ、正弦波状の電流波形が得られる。
【0071】
但し、ゲインK
1は、減衰係数ζ
1を適切な値に設定することが望まれる。
図11は減衰係数ζ
1が0.03となるようにゲインK
1を設定した場合の諸量を示すグラフである。
図2〜
図4と同様に、上から第1段目に電源電流Isを、第2段目に負荷電流Ioを、第3段目に補償電流Iaを、それぞれ示している。横軸には時間を採用した。
図11に示された波形は、
図10に示された波形と比較して、共振の影響が残っていることがわかる。しかしながら、本実施の形態のように、設置点電圧ViをゲインK
1の増幅を伴って微分して並列形アクティブフィルタ6が系統連系リアクトル4へ出力する電圧Vrに対して負帰還を掛けることにより、ゲインK
1を設定するという自由度が高められ、かつゲインK
1の設定如何によって適切に電源電流Isから高調波成分を効果的に除去することができる。
【0072】
第2の実施の形態.
図12は電源電流Isに基づいて電圧Vrに対して負帰還を掛ける技術を示すブロック線図である。
図7のブロック線図に対し、ゲインK
2での増幅を伴った二階微分(
図12において「K
2s
2」と表記されたブロックで実行される)を行った結果(二階微分値)を電圧Vroから減じて、電圧Vrを得ている点で異なっている。
図7のブロック線図は
図12においてK
2=0である場合に相当し、そこにおいて示された電圧Vrは、
図12のブロック線図における電圧Vroと等しい。
【0073】
これにより、伝達関数G
a(s)は式(3)で表される。但し、共振角周波数ω
2及び減衰係数ζ
2を併記した。
【0075】
式(3)においてK
1=K
2/L
bとおけば、式(2)が得られる。また、ω
2=ω
1,ζ
2=ζ
1が成立する。これは、電源電圧Vsから設置点電圧Viを差し引いて電圧Vbが求められること、及び電圧Vbは電源電流Isの微分値とインダクタンス成分L
bとの積であることからの当然の帰結である。
【0076】
このように、
図12のブロック線図は
図8のブロック線図と等価である。しかしながらこれを実現するための構成において、電源電流Isを直接に測定するには新たな電流センサの追加が必要となる。そこで、Is=Io−Iaの関係を用いて、新たな電流センサの追加を必要とせずに、
図12のブロック線図を実現する。
【0077】
図13は第2の実施の形態にかかる制御装置72と、制御装置72の制御対象たる並列形アクティブフィルタ6及びその周辺とを示すブロック図である。
図12でも制御装置72がブロック線図として示されている。
【0078】
第1の実施の形態にかかる制御装置71と比較して、制御装置72は微分器716a,717aに代えて微分器716b,717bを有し、更に減算器710を有している。
【0079】
減算器710は、負荷電流Ioから補償電流Iaを相毎に減じ、その結果(これは電源電流Isの推定値と把握することもできる)をdq変換器706へ出力する。但し三相平衡が得られることを想定して、当該減算は二相分で足りる。dq変換器706は第1の実施の形態と同様に三相/二相変換を行い、そのd軸成分及びq軸成分を、それぞれ微分器716b,717bに与える。
【0080】
微分器716b,717bは
図12において「K
2s
2」と表記されたブロックに対応し、ゲインK
2での増幅を伴った二階微分を行う。
【0081】
このような構成により、制御装置72は
図12のブロック線図を実現することができる。
【0082】
上述のように、K
1=K
2/L
bの関係のもと、式(2)、(3)は等価であり、従って制御装置72の機能は制御装置71の機能と等価である。よって第2の実施の形態においてもゲインK
2を設定する自由度が存在し、第1の実施の形態と同じ効果を得ることができる。
【0083】
第3の実施の形態.
系統連系リアクトル4は、インバータ61のスイッチングに伴うキャリア電流による損失を抑えるため、ダスト系、アモルファス、フェライトなどの、高周波用の鉄心が一般的に用いられている。
【0084】
このような高周波用鉄心は、平滑回路付き変換器におけるローパスフィルタ22のリアクトル221に採用される珪素鋼板とは異なり、直流電流に対する飽和が顕著となる。
【0085】
図14は系統連系リアクトル4の直流重畳特性を例示するグラフであり、横軸には補償電流Iaをとり、縦軸にはインダクタンスL
aをとった。かかる直流重畳特性からは、補償電流Iaが0A近傍で得られるインダクタンスL
aの値に比べて、15A近傍で得られるインダクタンスL
aの値は、30%程度にまで低下する。
【0086】
よって、補償電流Iaの大きさに関わらずゲインK
1を一定とした場合、式(1)からもわかるように減衰係数ζ
1が増大することになる。
【0087】
図15は補償電流Iaと、ゲインK
1及び減衰係数ζ
1との関係を示したものであり、
図14で示された直流重畳特性に基づいている。左縦軸にはゲインK
1を、右縦軸には減衰係数ζ
1を、それぞれとっている。ゲインK
1を一定値2×10
-4とした場合、補償電流Iaの増加に伴って減衰係数ζ
1は0.2から0.4へと2倍に増加する。
【0088】
従って、ゲインK
1を一定とした場合には、補償電流Iaが小さいときには共振を抑制するための減衰効果が不十分だったり、補償電流Iaが大きいときには過減衰が生じて並列形アクティブフィルタ6の動作が不安定になったりする恐れがある。
【0089】
図16は、
図10と同じ諸元を採用するものの、減衰係数ζ
1は
図10で示された場合の二倍(ζ
1=0.6)である場合の諸量を示すグラフである。
図10と同様に、上から第1段目に電源電流Isを、第2段目に負荷電流Ioを、第3段目に補償電流Iaを、それぞれ示している。このような減衰係数ζ
1の選定は過減衰の発生を招来し、電源電流Isを歪ませてしまうことになる。
【0090】
そこで、補償電流Iaの値に応じてゲインK
1を設定することで、補償電流Iaの値によらずに減衰係数ζ
1を一定に保つことが、共振を抑制する制御が安定する観点で望ましい。
【0091】
図17は、
図15と同様に、補償電流Iaと、ゲインK
1及び減衰係数ζ
1との関係を示したものであり、
図14で示された直流重畳特性に基づいている。左縦軸にはゲインK
1を、右縦軸には減衰係数ζ
1を、それぞれとっている。但し補償電流Iaの値に応じてゲインK
1を調整することで、補償電流Iaの値によらずに減衰係数ζ
1が一定に保たれる。
【0092】
このようなゲインK
1の調整は、具体的には
図1に示された構成において、補償電流Iaのd軸成分たるd軸電流id、q軸成分たるq軸電流iqに基づいて、それぞれ微分器716a,717aがゲインK
1を調整すればよい。
【0093】
図18はかかるゲインK
1の調整を実現するブロック図であり、設置点電圧Viの相間電圧のd軸成分Vsdとq軸成分Vsqが、それぞれ微分器716a,717aに入力する。微分器716a,717aはいずれも補償電流Iaの実効値Iarに基づいて、それぞれゲインK
1を調節する。
【0094】
上述のようなゲインK
1の設定は、ゲインK
2の設定においても採用されることが望ましいのは明白である。
【0095】
図19はかかるゲインK
2の調整を実現するブロック図であり、電源電流Is(より正確には減算器710から得られた電源電流Isの推定値)のd軸成分Isdとq軸成分Isqが、それぞれ微分器716b,717bに入力する。微分器716b,717bはいずれも補償電流Iaの実効値Iarに基づいて、それぞれゲインK
2を調節する。
【0096】
第4の実施の形態.
図20は、本実施の形態を説明する回路図であり、
図1に示された構成のうち、設置点P近傍を示している。本実施の形態では、補償電流Iaのリプルを除去する観点から、系統連系リアクトル4はキャリアフィルタ9を介して設置点Pに接続される。
図21は
図20に示された構成の等価回路を示す。
【0097】
キャリアフィルタ9は、リアクトル91とコンデンサ92によってローパスフィルタとして実現される。具体的にはコンデンサ92は三相分がY結線され、それぞれのコンデンサ92が、各相毎のリアクトル91を介して設置点Pに接続される。
【0098】
なお、リアクトル91のインダクタンスL
f、コンデンサ92の静電容量C
fを導入し、リアクトル91を設置点Pへ流れる電流Id、コンデンサ92へ流れる電流Ic、コンデンサ92が支持する電圧Vcをも導入した。電圧Vcも設置点電圧Viも、系統連系リアクトル4の交流電源1との間の部位における電圧として把握できる。
【0099】
並列形アクティブフィルタ6に基づいて設けられるインバータ61のスイッチング周波数は、負荷2に設けられるインバータ23のスイッチング周波数の3倍以上に選定される。同様の観点で、キャリアフィルタ9の共振周波数は、ローパスフィルタ22の共振周波数の3倍以上に選定される。
【0100】
よって例えばインバータ23のスイッチング周波数が5kHz程度であると、インバータ61のスイッチング周波数は15〜20kHz程度に設定され、ローパスフィルタ22の共振周波数は1.1kHz程度に設定され、キャリアフィルタ9の共振周波数は4kHz以上に設定される。
【0101】
図22は、リアクトル3のインダクタンス成分L
bを230μHとし、負荷2に電解コンデンサレスインバータを採用した場合の、並列形アクティブフィルタ6が出力する電圧Vrに対する設置点電圧Viの伝達関数G
a(s)を示すグラフである。グラフG5はキャリアフィルタ9を設けない場合の伝達特性を、グラフG6はキャリアフィルタ9を設けた場合の伝達特性を、それぞれ示す。ここではローパスフィルタ22の共振周波数f
a及びキャリアフィルタ9の共振周波数f
bは、それぞれ1.1kHz及び4.5kHzに設定される。
【0102】
図23は
図21の等価回路から導かれるブロック線図である。ここでは第1の実施の形態とは異なり、設置点電圧Viと共に、電圧VcをゲインK
1での増幅を伴って微分した負帰還を採用している。電圧Vcに基づいたかかる負帰還は、具体的にはコンデンサ92の三相分の電圧を取得し、これらを設置点電圧Viと同様に、dq変換器による三相/二相変換し、微分器716a,717aと同じ機能を有するブロックにて処理し、処理された二つの値を減算器718,719においてそれぞれ値ido,iqoから減算すればよいことは明白である。
図23ではこのような負帰還を採用する制御装置をブロック73で示した。但し、設置点電圧Viに基づいて負帰還を行う経路を破線で示した。
【0103】
以下、電圧Vcに基づく負帰還の影響を見る。つまり一旦は、設置点電圧Viによる負帰還を無視して考察する。なお簡素化のために、キャリアフィルタ9の共振周波数f
bでは、インバータ23のインピーダンスZ
iの逆数(1/Z
i)を非常に小さいとして無視する。
【0104】
電圧Vrに対する電圧Vcの伝達関数G
b(s)を式(4)に示す。上述のように、伝達関数G
b(s)には設置点電圧Viによる負帰還は考慮されていない。式(4)では共振角周波数ω
3及び減衰係数ζ
3を併記した。
【0106】
式(4)から、設置点電圧Viの代わりに電圧Vcを用い、これをゲインK
1での増幅を伴って微分した負帰還を採用しても共振が抑制できることがわかる。
【0107】
つまり設置点電圧Viと電圧Vcとの少なくともいずれか一方にゲインK
1での増幅を伴って微分した負帰還を採用することにより、上述の共振を抑制できる。
【0108】
但し、減衰係数ζ
3は、キャリアフィルタ9の備えるコンデンサ92の静電容量Cfの影響により、減衰係数ζ
1よりも大きくなる傾向にある。例えばK
1=2×10
-4、C
i=40μF、L
i=350μH、R
i=100Ω、L
a=300μH、L
b=230μH、L
f=100μH、C
f=9μFとすると、式(2),(4)からそれぞれζ
1=0.31,ζ
3=1.39と求まり、ζ
3=4.5ζ
1となる。
【0109】
図24は、補償電流Iaと、ゲインK
1及び減衰係数ζ
1,ζ
3との関係を示すグラフであり、減衰係数ζ
1については
図15のそれと一致する。
図24からも理解されるように、減衰係数ζ
3は減衰係数ζ
1よりも、補償電流Iaの増大に対して増大する傾斜が高くなる。つまりキャリアフィルタ9を設けることにより、第1の実施の形態と比較して、過減衰となりやすい。
【0110】
よって本実施の形態では、第3の実施の形態で示されたような、補償電流Iaの値に応じてゲインK
1を設定することが、補償電流Iaの値によらずに減衰係数ζ
3を一定に保ち、ひいては共振を抑制する制御が安定する観点で望ましい。
【0111】
図25は、
図24と同様に、補償電流Iaと、ゲインK
1及び減衰係数ζ
1,ζ
3との関係を示すグラフである。補償電流Iaの値に応じてゲインK
1を調整することで、補償電流Iaの値によらずに減衰係数ζ
1,ζ
3が一定に保たれる。
【0112】
さて、
図22に示されるように、設置点電圧Viと共に、電圧VcをゲインK
1での増幅を伴って微分した負帰還を採用することができる。この場合、式(2)の伝達関数G
a(s)と、式(4)の伝達関数G
b(s)の両方を考慮する必要がある。
【0113】
具体的には、上述のように減衰係数ζ
3は減衰係数ζ
1の数倍となるので、減衰係数ζ
3を小さく制限すべくゲインK
1を設定すると、減衰係数ζ
1が小さくなりすぎ、電解コンデンサレスインバータを負荷2に採用した場合にローパスフィルタ22の共振を抑制することが不十分となることも考えられる。
【0114】
しかしそのような場合でも、電解コンデンサレスインバータの制御自体で、共振を抑制するゲインを高く設定することが可能なので、並列形アクティブフィルタ6と電解コンデンサレスインバータの双方で共振抑制制御を協調し、AC/AC変換器全体での安定化を図ることができる。
【0115】
あるいは、ゲインK
1を補償電流Iaの周波数に依存して修正することも望ましい。
図26はゲインK
1の周波数特性を示すグラフである。同図において共振周波数f
1,f
3はそれぞれω
1/2π,ω
3/2πに等しい。ゲインK
1は一次遅れ要素の特性を持つ関数K
1(s)=K/(1+sT)や、ローパスフィルタの特性を持つ関数K
1(s)=ω
c/(s+ω
c)とする。同図においてカットオフ周波数f
cはω
c/2πに等しい。
【0116】
またゲインK
1が増大すると減衰係数ζ
1,ζ
3のいずれも増大する。よって通常はω
1<ω
3となるので、ω
1<ω
c<ω
3と選定することにより、高い共振角周波数ω
3に対応する減衰係数ζ
3を小さくしつつ、低い共振角周波数ω
1に対応する減衰係数ζ
1を大きくすることができる。これは共振を抑制する制御が安定する観点で望ましい。
【0117】
上記の制御装置71,72はマイクロコンピュータと記憶装置を含んで構成される。マイクロコンピュータは、プログラムに記述された各処理ステップ(換言すれば手順)を実行する。上記記憶装置は、例えばROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、書き換え可能な不揮発性メモリ(EPROM(Erasable Programmable ROM)等)、ハードディスク装置などの各種記憶装置の一つ又は複数で構成可能である。当該記憶装置は、各種の情報やデータ等を格納し、またマイクロコンピュータが実行するプログラムを格納し、また、プログラムを実行するための作業領域を提供する。なお、マイクロコンピュータは、プログラムに記述された各処理ステップに対応する各種手段として機能するとも把握でき、あるいは、各処理ステップに対応する各種機能を実現するとも把握できる。また、制御装置71,72はこれに限らず、制御装置71,72によって実行される各種手順、あるいは実現される各種手段又は各種機能の一部又は全部をハードウェアで実現しても構わない。