特許第6112340号(P6112340)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6112340
(24)【登録日】2017年3月24日
(45)【発行日】2017年4月12日
(54)【発明の名称】携帯用電源
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/6554 20140101AFI20170403BHJP
   H01M 10/6561 20140101ALI20170403BHJP
   H01M 10/658 20140101ALI20170403BHJP
   H01M 2/10 20060101ALI20170403BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20170403BHJP
   H01M 2/20 20060101ALI20170403BHJP
   H01M 2/34 20060101ALI20170403BHJP
   H01M 2/02 20060101ALI20170403BHJP
   B25F 5/00 20060101ALN20170403BHJP
【FI】
   H01M10/6554
   H01M10/6561
   H01M10/658
   H01M2/10 U
   H02J7/00 302C
   H01M2/10 B
   H01M2/20 A
   H01M2/34 A
   H01M2/02 L
   !B25F5/00 H
【請求項の数】11
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-288242(P2012-288242)
(22)【出願日】2012年12月28日
(65)【公開番号】特開2014-130759(P2014-130759A)
(43)【公開日】2014年7月10日
【審査請求日】2015年8月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005094
【氏名又は名称】日立工機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094983
【弁理士】
【氏名又は名称】北澤 一浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095946
【弁理士】
【氏名又は名称】小泉 伸
(74)【代理人】
【識別番号】100099829
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 朗子
(72)【発明者】
【氏名】喜嶋 裕司
(72)【発明者】
【氏名】若田部 直人
(72)【発明者】
【氏名】吉成 拓家
【審査官】 木村 貴俊
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−055680(JP,A)
【文献】 特開2000−058016(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/069404(WO,A1)
【文献】 特開2012−181941(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/176261(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25F1/00−5/02
H01M2/00−2/10
2/20−2/34
10/52−10/667
H02J7/00−7/12
7/34−7/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の二次電池セルが第一の方向に直列に接続されてなるセルユニットを3つ以上の複数備え、前記複数のセルユニットが前記第一の方向に垂直な第二の方向に並んで配置されてなる電池組と、
前記複数のセルユニットのうち少なくとも一つに対し前記第二の方向における上流側に配置され、前記電池組を制御する基板と、
前記複数のセルユニットを並列に接続し、かつ、前記複数のセルユニットの各々と前記基板とを電気的に接続する並列接続部と、
前記電池組、前記基板、及び、前記並列接続部を収容するケース部と、
前記ケース部に取り付けられた背負部を有し、
前記並列接続部は複数の電流経路を有し、前記複数の電流経路の各々は、前記複数のセルユニットのうち対応するセルユニットと前記基板とを接続し、前記複数の電流経路の長さは略等しいことを特徴とする携帯用電源。
【請求項2】
前記並列接続部は、複数のセルユニット接続部と、基板接続部とを備え、
前記複数のセルユニット接続部の各々は、前記複数のセルユニットのうち少なくとも2つの前記セルユニットを並列接続し、
前記基板接続部は、前記複数のセルユニット接続部と前記基板とを電気的に接続することを特徴とする請求項1に記載の携帯用電源。
【請求項3】
前記複数のセルユニット接続部は、
少なくとも2つのセルユニットを並列接続する複数の導電性板を備え、
前記基板接続部は複数のリード線を備え、
前記複数のリード線の各々は、前記複数の導電性板のうち対応する導電性板と前記基板とを接続し、
前記複数の導電性板の抵抗値は互いに等しく、かつ、複数の前記複数のリード線の抵抗値は互いに等しいことを特徴とする請求項2に記載の携帯用電源。
【請求項4】
前記並列接続部は、前記セルユニットと前記基板とを接続する正極側の電流経路の抵抗値と、負極側の電流経路の抵抗値の和が、前記少なくとも2つのセルユニットにおいて等しいことを特徴とするとする請求項1に記載の携帯用電源。
【請求項5】
前記電池組と前記基板との間に、回路を遮断するスイッチ、又はヒューズの少なくとも一方を有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の携帯用電源。
【請求項6】
前記基板は、前記複数のセルユニットからの電力の供給と切断とを切替えるスイッチング素子をさらに有し、
前記スイッチング素子と、前記電池組との間には、断熱部材が設けられていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の携帯用電源。
【請求項7】
前記複数のセルユニットは、前記ケース部の上部に収容された第1のセルユニットと、前記第1のセルユニットよりも下部の前記ケース部に収容された第2のセルユニットとにより構成され、
前記並列接続部は、前記第1のセルユニットと前記基板とを接続する電流経路全体の抵抗値が、前記第2のセルユニットに接続されるリード線の抵抗値よりも大きいことを特徴とする請求項1に記載の携帯用電源。
【請求項8】
前記複数のセルユニットは3つのセルユニットを有し、
前記複数のセルユニットは、前記ケース部内部の端部に載置された第1のセルユニットと、前記ケース部内部の他端に載置された第2のセルユニットと、前記第1のセルユニットと第2のセルユニットの間に載置された第3のセルユニットにより構成され、
前記並列接続部は、前記第3のセルユニットと前記基板とを接続する電流経路全体の抵抗値が、前記第1及び第2のセルユニットと前記基板とを接続する電流経路全体の抵抗値よりも大きいことを特徴とする請求項1に記載の携帯用電源。
【請求項9】
熱拡散部材をさらに有し、前記熱拡散部材は前記電池組の周囲の少なくとも一部分に設けられていることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の携帯用電源。
【請求項10】
前記熱拡散部材は、前記電池組の側面に設けられていることを特徴とする請求項9に記載の携帯用電源。
【請求項11】
前記ケース部は、前記背負部よりも熱伝導率の高い材料で形成されており、前記熱拡散部材は前記ケース部と熱的に接触し、前記ケース部に熱を伝達することを特徴とする請求項9又は10に記載の携帯用電源。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次電池を搭載し、電動工具に電力を供給する背負式電源に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、モータ等を動力とする電動の工具においては、交流の商用電源や、直流の定電圧電源等を接続して用いる工具のみならず、二次電池を装着可能な電動工具が広く用いられている。二次電池を用いた電動工具、いわゆるコードレス電動工具においては、電動工具の種類・用途の拡大により、電池容量の大容量化の需要が高まっており、工具本体に直接装着する方式の電池パックのみならず、二次電池を収容し、腰に装着可能なバッテリーホルスターが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平7−3983号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、作業者の腰に装着可能なバッテリーホルスターでは、装着可能な二次電池数に限界があり、電動工具等の携帯用電源としては、背負式等、上記バッテリーホルスターよりもさらに大容量の携帯用電源の実用化が望まれている。
【0005】
この場合、背負式等の大容量電源には、大容量とするため、複数の二次電池(例えば、リチウムイオン二次電池)からなる電池ユニットが複数列、並列に配列され収容される。また、大電流の出力が要求される当該技術分野においては、内部抵抗による二次電池の発熱を軽減するため、内部抵抗が低い二次電池を使用することが要求される。
【0006】
上記構成により、背負い式等の大容量電源は、従来の小容量の電池パックと比較して、電池ユニット毎に温度のバラつきが生じるおそれがある。また、背負式等の大容量電源では、大電流を出力することや長時間の連続使用が想定されるため、二次電池の発熱量も大きくなる。そのため、大容量電源を構成する各々の電池ユニットの特性の若干の差が、使用に伴い拡大する傾向にある。
【0007】
さらに、当該技術分野においては、充電または放電時に温度が上昇する特性からなる二次電池が採用されている。二次電池は、一般に温度が高いほど電池内部の活性化が進むため出力電流が増加する傾向にあり、放電時に温度が上昇する二次電池においては、温度と出力電流が正の相関関係を有している。そのため、ひとたび二次電池の間で温度差が生じるとその差が広がる場合がある。
【0008】
このような二次電池の温度のバラつきにより、電池ユニットの寿命もバラつくことになる。そして、大容量電源の蓄電能力は、発熱が著しく最も短寿命となった二次電池を有する電池ユニットによって制限されることになる。
【0009】
従って、大容量電源を構成する二次電池の温度のバラつきは、電源の多セル化、又は、大容量化に伴って深刻になる問題であり、電動工具に電力を供給する大容量の携帯用電源を実用化するにあたって十分な対応を行うことが求められる。
【0010】
本発明は、斯かる実情に鑑み、二次電池の温度分布が均一になる背負式電源を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明は、複数の二次電池セルを備えた電池組と、前記電池組を制御する基板と、前記電池組と前記基板との間に設けられた熱均一化手段と、前記電池組、前記基板、及び、前記熱均一化手段を収容するケース部と、前記ケース部に取り付けられた背負部を有することを特徴とする背負式電源を提供している。
また、本発明は、複数の二次電池セルが第一の方向に直列に接続されてなるセルユニットを3つ以上の複数備え、前記複数のセルユニットが前記第一の方向に垂直な第二の方向に並んで配置されてなる電池組と、前記複数のセルユニットのうち少なくとも一つに対し前記第二の方向における上流側に配置され、前記電池組を制御する基板と、前記複数のセルユニットを並列に接続し、かつ、前記複数のセルユニットの各々と前記基板とを電気的に接続する並列接続部と、前記電池組、前記基板、及び、前記並列接続部を収容するケース部と、前記ケース部に取り付けられた背負部を有し、前記並列接続部は複数の電流経路を有し、前記複数の電流経路の各々は、前記複数のセルユニットのうち対応するセルユニットと前記基板とを接続し、前記複数の電流経路の長さは略等しいことを特徴とする携帯用電源を提供している。
【0012】
かかる構成によれば、二次電池セルの温度分布を均一に近づけることが可能になり、結果として、背負式電源の能力をより長期間担保することができる。
【0013】
前記電池組は、複数の二次電池セルからなる複数のセルユニットを有し、前記熱均一化手段は、各セルユニットを電気的に並列接続する並列接続部を有し、前記並列接続部は、各々の前記セルユニットと前記基板とを接続する電流経路全体の抵抗値が、前記少なくとも2つのセルユニットにおいて等しいことが好ましい。かかる構成によれば、各セルユニットから出力される電流量を等しくすることが可能になり、各セルユニットの発熱量を均一に近づけることができる。
また、前記並列接続部は、複数のセルユニット接続部と、基板接続部とを備え、前記複数のセルユニット接続部の各々は、前記複数のセルユニットのうち少なくとも2つの前記セルユニットを並列接続し、前記基板接続部は、前記複数のセルユニット接続部と前記基板とを電気的に接続することが好ましい。
【0014】
前記並列接続部は、少なくとも2つのセルユニットを並列接続する複数の導電性板と、前記複数の導電性板と前記基板とを接続する複数のリード線とを有し、前記複数の導電性板の抵抗値が等しく、かつ、前記複数のリード線の抵抗値が等しいことが好ましい。かかる構成によれば、各セルユニットから出力される電流量を等しくすることが可能になり、各セルユニットの発熱量を均一に近づけることができる。
また、前記複数のセルユニット接続部は、少なくとも2つのセルユニットを並列接続する複数の導電性板を備え、前記基板接続部は複数のリード線を備え、前記複数のリード線の各々は、前記複数の導電性板のうち対応する導電性板と前記基板とを接続し、前記複数の導電性板の抵抗値は互いに等しく、かつ、複数の前記複数のリード線の抵抗値は互いに等しいことが好ましい。
【0015】
前記並列接続部は、前記セルユニットと前記基板とを接続する正極側の電流経路の抵抗値と、負極側の電流経路の抵抗値の和が、前記少なくとも2つのセルユニットにおいて等しいことが好ましい。かかる構成によれば、少なくとも2つのセルユニットの温度を均一に近づけることができる。
前記電池組と前記基板との間に、回路を遮断するスイッチ、又はヒューズの少なくとも一方を有することが好ましい。
前記基板は、複数のセルユニットからの電力の供給と切断とを切替えるスイッチング素子をさらに有し、前記スイッチング素子と、前記電池組との間には、前記熱均一化手段として断熱部材が設けられていることが好ましい。かかる構成によれば、スイッチング素子から発生した熱が電池組に移動することを抑制できるため、二次電池セルの温度分布を均一に近づけることができる。
前記基板は、前記複数のセルユニットからの電力の供給と切断とを切替えるスイッチング素子をさらに有し、前記スイッチング素子と、前記電池組との間には、断熱部材が設けられていることが好ましい。
【0016】
前記複数のセルユニットは、少なくとも第1のセルユニットと、第2のセルユニットとにより構成され、前記基板は、前記第1のセルユニットと、前記第2のセルユニットとの間に設けられることが好ましい。かかる構成によれば、簡易な構成で、セルユニットを略同一の抵抗値を有する導電性部材で接続することが可能になる。また、基板の放熱効果を利用して、各二次電池セルの温度分布を均一に近づけることが可能になる。
【0017】
前記基板は、少なくとも2つの基板から構成されており、前記少なくとも2つの基板の各々が前記セルユニットの側面に設けられることが好ましい。かかる構成によれば、前記少なくとも2つの基板の放熱効果を利用して、各二次電池セルの温度分布を均一に近づけることが可能になる。
【0018】
前記電池組は、複数の二次電池セルからなる複数のセルユニットを有し、前記熱均一化手段は、各セルユニットを電気的に並列接続する並列接続部を有し、前記複数のセルユニットは、前記ケース部の上部に収容された第1のセルユニットと、前記第1のセルユニットよりも下部の前記ケース部に収容された第2のセルユニットとにより構成され、前記並列接続部は、前記第1のセルユニットと前記基板とを接続する電流経路全体の抵抗値が、前記第2のセルユニットに接続されるリード線の抵抗値よりも大きいことが好ましい。かかる構成によれば、各セルユニットの発熱量をリード線の抵抗値で調整することが可能になり、二次電池セルの温度分布をより一層均一に近づけることが可能になる。
また、前記複数のセルユニットは、前記ケース部の上部に収容された第1のセルユニットと、前記第1のセルユニットよりも下部の前記ケース部に収容された第2のセルユニットとにより構成され、前記並列接続部は、前記第1のセルユニットと前記基板とを接続する電流経路全体の抵抗値が、前記第2のセルユニットに接続されるリード線の抵抗値よりも大きいことが好ましい。
前記電池組は、複数の二次電池セルからなる少なくとも3つのセルユニットを有し、前記熱均一化手段は、各セルユニットを電気的に並列接続する並列接続部を有し、前記複数のセルユニットは、前記ケース部内部の端部に載置された第1のセルユニットと、前記ケース部内部の他端に載置された第2のセルユニットと、前記第1のセルユニットと第2のセルユニットの間に載置された第3のセルユニットにより構成され、前記並列接続部は、前記第3のセルユニットと前記基板とを接続する電流経路全体の抵抗値が、前記第1及び第2のセルユニットと前記基板とを接続する電流経路全体の抵抗値よりも大きいことが好ましい。かかる構成によれば、3つのセルユニットの温度分布を均一に近づけることが可能になる。
また、前記複数のセルユニットは3つのセルユニットを有し、前記複数のセルユニットは、前記ケース部内部の端部に載置された第1のセルユニットと、前記ケース部内部の他端に載置された第2のセルユニットと、前記第1のセルユニットと第2のセルユニットの間に載置された第3のセルユニットにより構成され、前記並列接続部は、前記第3のセルユニットと前記基板とを接続する電流経路全体の抵抗値が、前記第1及び第2のセルユニットと前記基板とを接続する電流経路全体の抵抗値よりも大きいことが好ましい。
前記熱均一化手段は熱拡散部材を有し、前記熱拡散部材は前記電池組の周囲の少なくとも一部分に設けられていることが好ましい。前記熱拡散部材は、前記電池組の側面に設けられていることが好ましい。かかる構成によれば、電池組の温度分布を均一に近づけることが可能になる。
また、熱拡散部材をさらに有し、前記熱拡散部材は前記電池組の周囲の少なくとも一部分に設けられていることが好ましい。
前記ケース部は、前記背負部よりも熱伝導率の高い材料で形成されており、前記熱拡散部材は前記ケース部と熱的に接触し、前記ケース部に熱を伝達することが好ましい。かかる構成によれば、ケース部を用いて電池組の温度分布を均一に近づけることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の背負式電源によれば、電源に搭載された多数の二次電池セルの温度分布の偏りを軽減することが可能になり、電動工具に電力を供給する背負式電源の能力を長く担保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本実施の形態の背負式電源の外観を示す斜視図。
図2】本実施の形態のケース部の内部の構造を示す正面図。
図3】本実施の形態のケース部の右端部の内部の構造を示す側面図。
図4】本実施の形態のケース部の左端部の内部の構造を示す側面図。
図5】変形例の背負式電源の左端部のケース部の内部の構造を示す正面図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態を、添付図面を参照して説明する。図1は本実施形態の背負式電源の概観を例示したものであり、細部の構成については省略している。
【0022】
図1に示すように、本実施の形態による背負式電源1は、内部に収容された複数の電池セル51(図2参照。)を収容したケース部12を背負部13にて背負った状態で、電源ケーブル32を介して接続された電動の工具(農業や庭、街頭等の屋外で用いるチェーンソー、ブロア、刈払い機、芝刈り機等の小型作業器具を含む。)に電力を供給するものである。本実施の形態では、図1に例示するように、背負式電源の下部に接続されたコネクタ31、電源ケーブル32、及び、アダプタ33を介して穿孔、又はネジ締めに用いられる工具2A、2B等に接続される。図2に示すように、背負式電源1は、ボックス形状を有するケース部12と、背負部13と、操作スイッチ14とを備えている。
【0023】
背負部13は、背負子、及び、肩ベルトを有しており、ユーザは、肩ベルトを肩にかけることにより背負式電源1を背負う。
【0024】
ケース部12は、電動工具と共に作業を行うに十分な強度を有するハードケース材料が好適であり、少なくとも、前記内部空間部が非導電性の材料により形成されている。このような材料としては、表面をコーティング等により絶縁処理した金属や、非導電性の樹脂等が好適である。なお、内部において、二次電池等を保持する構造がハード材料であれば、ケース部12の外装自体はソフト材料(繊維状の材料からなる布等。)により構成されていてもよい。
【0025】
図2に示すように、本実施の形態において、ケース部12内には、一例として、合計80個のリチウムイオン二次電池セル(以下、電池セル)51が備えられている。詳細には、ケース部12内において、左右方向に直列接続された10個の電池セル51が上下方向2列の並列に接続された合計20個の電池セル51から構成されたセルユニット52(上から順に52A〜52D)を4ユニット備えている。各セルユニット52は、左右方向に延びており、複数のセルユニット52は上下方向に配列されている。本実施形態において例示した電池セルは合計80個あり、それぞれの電池セル51は定格3.6ボルトのリチウムイオン二次電池セル51であり、全体として定格36ボルトの電源となる。
【0026】
ケース部12にはメインスイッチ59が設けられている。メインスイッチ59は、セルユニット52から定格電圧の異なる工具2A、2Bなどへの電力供給経路の一部にあり、外部への出力を遮断可能な素子である。
基板60は、一例として、本実施の形態では、セルユニット52Aの上部に実装されており、背負式電源1全体の制御回路や各セルユニット52の過放電・過充電を監視し、充放電の制御をするための回路が搭載されている。基板60は、FET61A、61Bを有しており、FET61A、61Bは、制御回路、または、過放電、過充電を監視するための回路において用いられる。本実施の形態では、一例として、FET61A、61Bは、各セルユニット52が過放電、過充電のときに放電、充電を停止する遮断素子として用いられる。また、基板60の下面(セルユニット52に対向する面)における、FET61A、61Bの設けられた場所には断熱部材として、断熱シート65が設けられている。断熱シート65のサイズは、前後左右方向等、電池セル51と接する部位において少なくともFET61A、61Bよりも大きい。尚、基板60上には2つのFET61A、61Bが設けられている例を示したが、FETの数は必ずしも2つに限定されない。その場合にも、各FETより前後左右方向等において、電池セル51との熱的離間が十分となるサイズの断熱シート65が基板60に設けられる。図2の例では、FET61A、61Bに対してまとめて一枚の断熱シート65を設けたが、個別に保護シート65を設けてもよい。なお、本発明における「断熱」とは、“熱の伝達を低減する”程度の意味であり、FETと電池セル51との間の熱の移動を妨げるために意図的に挿入され得る任意の材料が採用可能である。一例を挙げれば、断熱シート65を構成する材料は、熱伝導率の低い樹脂材料や多孔性材料等が好適である。
【0027】
それぞれのセルユニット52の各電池セル51の端部には、金属プレート56が設けられている。これら金属プレート56は、一つのセルユニットが、電池セル51を上下方向に2並列、左右方向に直列に10本に並んだ構成となるよう接続するものである。
【0028】
図2、3に示すように、セルユニット52の右端側には略直線形状の2枚の金属プレート571(571A、571B)と2本のリード線581(581A、581B)とが設けられている。また、図2、4に示すように、セルユニット52の左端側には略直線形状の2枚の金属プレート572(572A、572B)と、2本のリード線582(582A、582B)とが設けられている。2本のリード線581の長さは互いに略等しく、2本のリード線582の長さも互いに等しい。従って、2本のリード線581の抵抗値は互いに等しく、2本のリード線582の抵抗値も互いに等しい。
【0029】
図2に示すように、金属プレート571Aは、セルユニット52A、52Bのプラス側端子を並列接続し、金属プレート571Bは、セルユニット52C、52Dのプラス側端子を並列接続している。また、リード線581A、581Bの一端は、それぞれ金属プレート571A、571Bの上下方向における中央部分に接続され、他端は、基板60の一端子に一点で接続される。これにより、金属プレート571A、571Bが並列接続される。
【0030】
金属プレート572Aは、セルユニット52A、52Bのマイナス側端子を並列接続し、金属プレート572Bは、セルユニット52C、52Dのマイナス側端子を並列接続している。また、リード線582A、582Bの一端は、それぞれ金属プレート572A、572Bの上下方向における中央部分に接続され、他端は、スイッチ59の一端子に一点で接続される。これにより、金属プレート572A、572Bが並列接続される。従って、4つのセルユニット52が並列接続される。
【0031】
本実施の形態では、各セルユニット52と本体側の2つの接続点(本実施の形態では、リード線581A及び581Bが接続される基板60上の一端子と、リード線582A、582Bが接続されるスイッチ59の一端子)の間の抵抗(以下、配線抵抗とよぶ)が、各ポイントにおける接触抵抗を含めすべてのセルユニットにおいて均等になるように、金属プレート571,572、及び、2本のリード線581,582の抵抗値を互いに等しく設定している。ここで、“互いに等しく”とは、接続点間の抵抗値の差が完全にゼロでなくともよく、例えば、電池セル51や電池セルユニット52の内部抵抗値より十分小さい値であり、電池セルの温度上昇のバラつきに実質的に影響を与えない程度の差であれば許容可能である。尚、本実施の形態では、一例として、約20mΩ程度の内部抵抗を有する電池セル51を採用している。また、本実施の形態は一つの好適な例示にすぎず、各セルユニットから制御基板等の本体側の接続点までの各々の経路抵抗値が均等となる構成であれば、金属プレート571,572と、リード線581,582は同一の抵抗値でなくともよく、経路中に遮断用のスイッチ59やヒューズ等を介する場合は、遮断用スイッチ59等を含めた経路全体の合成抵抗が、各々のユニットにおいて均等であればよく、各ユニットにおいて経路が共通する部分、例えば、遮断用のスイッチ59から制御基板まで等については、一つの配線で配線を共通化してもよい。
【0032】
背負式電源1は大容量の電源であり、出力される電流値も大きくなる。本実施の形態では、一例として、各セルユニット52から5A程度の大電流が出力されることを想定している。このような大電流が流れるため、各セルユニット52からの発熱量の増加に伴い、セルユニット52の温度のバラつきも大きくなることが懸念される。また、配線の経路長の差により配線抵抗に違いが生じると、各セルユニットからの出力電流に差が生じ、結果として、セルユニットの発熱量のバラつきが大きくなる。
【0033】
例えば、比較例として、4つのセルユニット52のプラス側端子、および、マイナス側端子をそれぞれ一枚の金属プレートで並列接続し、金属プレートの上端又は下端部で本体側の2つの接続点と接続した場合には、4つのセルユニット52の配線抵抗を等しくすることができない。このような場合には、接続点に近いセルユニットと、接続点から遠いセルユニットとの間で、一例として200mΩ程度もの配線抵抗の差が生じる。また、上述したように、リチウムイオン電池からなる電池セル51は内部抵抗が小さく、本実施の形態で採用する電池セルは、20mΩ程度の内部抵抗を有している。
【0034】
したがって、これらの大電流・低内部抵抗の系においては、配線抵抗の寄与を無視することができず、かかる配線抵抗の違いにより、比較例の場合には、電池セルユニット52の温度差が10〜20℃程度生じる可能性がある。これに対して、本実施の形態では、金属プレート571、572をそれぞれ2つに分割し、長さの等しい2本のリード線581、及び、長さの等しい2本のリード線582によって、4つのセルユニット52を並列接続している。このため、各セルユニット52の配線抵抗が等しくなる。そのため、各セルユニット52から出力される電流も等しくなり、各セルユニット52の発熱量を均等にすることができる。
【0035】
また、本実施の形態では、基板60の下面(セルユニット52に対向する面)における、FET61A、61Bの設けられた場所には断熱シート65が設けられている。基板60において、FET61A、61Bは主たる発熱源である。従って、断熱シート65を設けることにより、FET61A、61Bから発生した熱がセルユニット52側に移動するのを防止することができる。これにより、FET61A、61Bに近接するセルユニット52A、詳細には、セルユニット52A内の電池セル51であって、FET61A、61Bに隣接する電池セル51の温度が上昇するのを防ぐことができる。
【0036】
本発明による背負式電源は上述した実施の形態に限定されず、特許請求の範囲に記載した範囲で種々の変形や改良が可能である。
【0037】
例えば、上記の実施の形態において、金属プレート571、572がそれぞれ2枚ずつ設けられていたが金属プレート571、572の数は2枚に限定されない。例えば、金属プレート571、572を、各セルユニットと同数、本実施の形態の例では、それぞれ4枚ずつ用意し、各金属プレート571、572を対応する1つのセルユニット52に接続し、各金属プレート571、572から4本のリード線581,582で接続してもよい。この場合にも、4本のリード線581の長さ(抵抗値)は等しく、4本のリード線582の長さ(抵抗値)は等しい。また、金属プレート571,572を上記比較例と同様にそれぞれ1枚でセルユニット間を接続(各セルユニット共通の1枚)し、一方の金属プレートは下端にて1本のリード線と接続し、他方の金属プレートは上端にて1本のリード線と接続する構成としてもよい。この場合、正極側と負極側各々の経路長はセルユニットごとに異なるが、正極側と負極側の経路長の和、すなわち、本体側の接続点から見たトータルの配線抵抗は、各セルユニットを通じて均等となる。
【0038】
上記の実施の形態では、基板60がセルユニット52Aの上部に設けられていたが、基板60を設ける位置は、該上部に限定されるものではない。例えば、セルユニット52Bとセルユニット52Cとの間、即ち、4つのセルユニット52の中間部分に設けてもよい。この場合には、基板60の下面だけでなく、FET61A、61Bの上面を覆うように断熱シートを設けてもよい。かかる構成によれば、金属プレート571と、基板60とを接続するリード線581の長さを等しくしながら、短くすることができる。また、スイッチ59も、その上下方向の位置がセルユニット52Bとセルユニット52Cとの間に近接するように配置されていてもよい。このような構成によればリード線582の長さを等しくしながら、より一層短くすることができる。尚、セルユニット52Bとセルユニット52Cとの間に基板60を設ける以外に、別のセルユニット52の間に基板を設けるようにしてもよく、ケース部の前後方向に、セルユニット52の電池タブ(電極)として用いる金属プレート56とケース部との間に設けてもよい。この場合にも、セルユニット52Aの上部に基板60を設ける場合より、リード線581の長さを短くすることができる。
【0039】
また、基板60を複数に分割し、セルユニット52の周囲に配置する構成としてもよい。例えば、基板60を2つに分割し、セルユニット52の前側と後側(図2における手前側と奥側)や、左右、上下などにそれぞれ配置してもよい。かかる構成によれば、を利用して、セルユニット52から発せられる熱、および、FET61A、61Bより発せられる熱を分散し、均一化させることができる。尚、基板60の分割数は2つ以上であってもよい。
【0040】
上記の実施の形態ではリード線581、582の長さを等しくして、配線抵抗を均一にすることで各セルユニット52の発熱を均一になるようにした。一方、セルユニット52を構成する電池セル51やセルユニットの数が増加し、電池セルの密集度が増加すると、各々の二次電池の発熱によって、二次電池が密集した部分、すなわち、ケース部の中央部に位置するセル51の温度が左右方向、及び上下方向の端部に位置するセル51の温度より高くなる傾向が著しくなる。また、各セル51から生じた熱は、ケース部12の上部に上昇するため上部に配置されたセルユニット52(たとえば、52A)は、下部のセルユニット52(たとえば52D)よりも高くなる傾向にある。このように、配線抵抗とは異なる理由により、セルユニットに温度の偏りが生じる場合には、セルユニットの温度の偏りを是正するように、配線抵抗が異なるよう、異なる経路長の配線とする構成としてもよい。
【0041】
例えば、配線長を均等にした構成では、上側のセルユニット52Aの温度が上昇する場合にあっては、上側の金属プレート571A、572Aに接続されるリード線581A、582Aの配線の長さを下側の金属プレート571B、572Bに接続されるリード線581B、582Bの配線の長さより長くしてもよい。これにより、リード線581A、582Aの抵抗が、リード線581B、582Bの抵抗より大きくなり、リード線581A、582Aに流れる電流が減少する。そのため、上側のセルユニット52A、52B、及び、リード線581A、582Aの発熱量が、それぞれ、下側のセルユニット52C、52D、及び、リード線581B、582Bの発熱量より少なくなる。
【0042】
同様に、上記の4本のリード線581、及び、4本のリード線582を用いる変形例を利用して、リード線581、リード線582の長さを上側(セルユニット52Aに接続される側)から下側に向かって順に短くしていき、セルユニット52の配線抵抗が上側から下側のセルユニットに向かって順に小さくなるようにしてもよい。また、配線抵抗を変化させるために、リード線581、582の長さを変化させるのではなく、配線材料を変化させてもよく、別途バランス抵抗素子を挿入してもよい。尚、どのセルユニット52の温度が上昇しやすいかは、セルユニット52の数や、ケース部12の構造によって変化しうる。従って、リード線581、582の抵抗値は上から順に変化する関係に限定されず、上述した中央部のセルユニットの温度が上昇する場合であれば、中央部に位置するセルユニットの経路抵抗値を大きくする等、発熱が多いセルユニット52に対応するリード線581、582の抵抗値を相対的に大きくする構成であればよい。
【0043】
また、特定の電池セル51、または、基板60(FET61A、61B等)から発生した熱を他の電池セルやセルユニット52全体に拡散するように、電池セル51やセルユニット51の全体、または、その一部分や基板60を放熱材、例えば、熱伝導シートなどの熱拡散部材で覆ってもよい。これにより、温度の上昇しやすい位置に設けられた電池セル51の温度上昇を緩和させることが可能になり、また、基板60等から発生した熱をセルユニット52全体に拡散させることで、セルユニット52全体の温度を均一化することができる。熱拡散部材は、電池セル51やセルユニット51等の電池組の周囲を取り囲むように、電池セル51の側面の少なくとも一部分を覆う構成とすることが好ましい。
【0044】
また、ケース部12の全体、または、少なくとも、セルユニット52や基板60と近接する部位を熱伝導性の高い材料、例えば金属などで構成し、セルユニット52や基板60の熱をケース部12に伝導させるようにしてもよい。この際、セルユニット52や基板60とケース部12とを直接接触させてもよいし、上述した熱拡散部材を介して接触させてもよい。あるいは、ケース部12の内部に熱伝導性の高い金属製などのシャーシを設け、かかるシャーシにセルユニット52の熱を伝導させるようにしてもよい。この際にも、直接セルユニット52とシャーシとを直接接触させてもよいし、上述した熱拡散部材を介して接触させてもよい。また、これらのケース部12やシャーシ等との接触は、熱の伝達の実質的な妨げとならない程度の厚さの絶縁性の部材(絶縁シートや樹脂等)を介して接触する構造であってもよい。
【0045】
また、図5に示すようにセルユニット52の配列方向を90度回転させて、各セルユニット52が上下方向に延び、左右方向に配列するようにしてもよい。この場合には、基板60は、一例として、左端のセルユニット52の左側に設けられる。かかる構成によれば、セルユニット52間に形成された空間70が空気の流路となる。そのためセルユニット52によって熱せられた空気が空間70を通って上部に移動しやすくなり、セルユニット52から発生した熱を効率よく放熱し、特定のセルユニット52が過剰に熱せられることを抑制することができる。なお、該構成における基板60の位置は、上記実施形態と同様に、セルユニット52の左側のみならず、上端,下端等任意の場所に配置できる。また、上述した熱拡散部材を設ける場合は、空気の流路を妨げない配置にすることが好適である。
【符号の説明】
【0046】
1 背負式電源
12 ケース部
13 背負部
52 セルユニット
571、572 金属プレート
581、582 リード線
60 基板
図1
図2
図3
図4
図5