(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6112415
(24)【登録日】2017年3月24日
(45)【発行日】2017年4月12日
(54)【発明の名称】ワイヤーハーネス
(51)【国際特許分類】
H02G 11/00 20060101AFI20170403BHJP
H01B 7/00 20060101ALI20170403BHJP
B60R 16/02 20060101ALI20170403BHJP
F16L 57/00 20060101ALI20170403BHJP
【FI】
H02G11/00 060
H01B7/00 301
B60R16/02 620C
B60R16/02 623U
F16L57/00 A
【請求項の数】2
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2013-185003(P2013-185003)
(22)【出願日】2013年9月6日
(65)【公開番号】特開2015-53799(P2015-53799A)
(43)【公開日】2015年3月19日
【審査請求日】2015年11月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】特許業務法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】水野 芳正
(72)【発明者】
【氏名】大森 康雄
(72)【発明者】
【氏名】平井 宏樹
(72)【発明者】
【氏名】田端 正明
(72)【発明者】
【氏名】上里 学
【審査官】
石坂 知樹
(56)【参考文献】
【文献】
特開2013−013183(JP,A)
【文献】
特開2013−128369(JP,A)
【文献】
特開平08−190815(JP,A)
【文献】
特開2006−127790(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 11/00
B60R 16/02
F16L 57/00
H01B 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数本の電線を束ねて構成され、屈曲部位を変位させるような不定経路で配索される可撓性を有する導電路と、
モールド成形により前記導電路に固着され、前記導電路の長さ方向に間隔を空けて数珠繋ぎ状に配された光硬化性樹脂製の複数の駒部材とを備え、
前記屈曲部位では、前記複数の駒部材が互いに当接することで前記導電路の屈曲変形を規制するようになっていることを特徴とするワイヤーハーネス。
【請求項2】
前記駒部材が、紫外線硬化性樹脂からなっていることを特徴とする請求項1記載のワイヤーハーネス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイヤーハーネスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、自動車のスライドドアへの給電手段として用いられるワイヤーハーネスが開示されている。ワイヤーハーネスは、複数本の電線を束ねて構成した導電路を備えており、導電路は屈曲部位を変位させるような不定経路で配索されている。導電路の屈曲部位は、スライドドアの開閉に伴って変位するのであるが、屈曲部位の曲率半径が小さくなり過ぎると、電線を構成する導体が断線する等の不具合が懸念される。そこで、角筒状の複数の駒部材を相対変位可能に且つ数珠繋ぎ状に連結し、連結した複数の駒部材を導電路に外嵌するように沿わせている。導電路の屈曲部位では、駒部材同士が当接することにより、導電路の最小曲率半径を規定するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013−128369号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のワイヤーハーネスの製造は、複数の駒部部材を成形した後に、駒部材を数珠繋ぎ状に連結する工程と、連結した駒部材を導電路に沿わせる工程とが必要であり、製造工数が多い。
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、製造工数を少なくすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のワイヤーハーネスは、
複数本の電線を束ねて構成され、屈曲部位を変位させるように不定経路で配索される可撓性を有する導電路と、
モールド成形により前記導電路に
固着され、前記導電路の長さ方向に間隔を空けて数珠繋ぎ状に配された光硬化性樹脂製の複数の駒部材とを
備え、
前記屈曲部位では、前記複数の駒部材が互いに当接することで前記導電路の屈曲変形を規制するようになっているところに特徴を有する。
【発明の効果】
【0006】
導電路の屈曲部位では、駒部材同士が当接すると、それ以上の導電路の曲げ動作が阻止され、ワイヤーハーネスの配索経路の最小曲率半径が規定される。光硬化性樹脂からなる駒部材は、モールド成形すれば導電路と一体化されるから、駒部材の成形工程の後は、駒部材同士を連結する工程も、駒部材を導電路に沿わせる工程も不要である。よって、製造工数が少なくて済む。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(1)本発明は、前記駒部材が、紫外線硬化性樹脂からなっていてもよい。この構成によれば、可視光線に比べて光エネルギーの密度が高い紫外線により、光硬化性樹脂を短時間で効果的に硬化させることができる。
【0009】
<実施例1>
以下、本発明を具体化した実施例1を
図1〜
図3を参照して説明する。本実施例1のワイヤーハーネスWは、自動車20に適用したものであり、ボディ21に設けたボディ側コネクタ(図示省略)と、ボディ21の側面の開口部22を開閉するスライドドア24に設けたドア側コネクタ(図示省略)との間に配索されている。ワイヤーハーネスWの配索経路のうち開口部22に設けたボディ側ブラケット23とスライドドア24に設けたドア側ブラケット25との間では、配索経路(ワイヤーハーネスW)がスライドドア24の開閉動作に伴って変形する。つまり、
図1において実線と想像線で示すとともに
図2に示すように、スライドドア24の開閉に伴い、ワイヤーハーネスWは、屈曲部位Bの位置が変位するとともに、屈曲部位Bの曲率半径が変化するような不定経路で配索されている。
【0010】
ワイヤーハーネスWは、1本の導電路10と、屈曲部位BにおけるワイヤーハーネスW(導電路10)の最小曲率半径を規定するための複数の駒部材15とを備えて構成されている。
図3に示すように、導電路10は、複数本の被覆電線11(請求項に記載の電線)を束ねて構成されたものである。被覆電線11は、導体12の外周を絶縁被覆13で全周に亘って包囲した周知形態のものである。導体12は、銅製の複数本の素線(図示省略)を撚り合わせた可撓性を有する撚り線からなる。絶縁被覆13は、可撓性を有する合成樹脂材料からなる。したがって、導電路10は、屈曲変形が可能となっている。
【0011】
複数の駒部材15は、導電路10のうちボディ側ブラケット23とドア側ブラケット25との間の領域に対し、配索方向(ワイヤーハーネスW及び導電路10の長さ方向)に所定の間隔を空けて数珠繋ぎ状に固着されている。
図3に示すように、駒部材15は、導電路10を全周に亘って包囲している。また、導電路10の長さ方向と直角な駒部材15の断面形状は、略方形である。全ての駒部材15の断面形状と断面の外周寸法は、同一である。また、導電路10の長さ方向における長さ寸法も、全ての駒部材15において同一である。
【0012】
駒部材15は、光硬化性樹脂からなる。光硬化性樹脂は、モノマーとオリゴマーと光重合開始剤(光開始剤)と各種添加剤から構成されている。光硬化性樹脂は、液体の状態で光が照射されると、光エネルギーにより硬化する。添加剤としては、硬化後に、被覆電線11に要求される所定の硬度と剛性が得られるような材料が選定されている。また、光硬化性樹脂としては、大きく分けて紫外線硬化性樹脂と可視光線硬化性樹脂があるが、本実施例1では駒部材15の材料として紫外線硬化性樹脂が用いられている。駒部材15の材料として紫外線硬化性樹脂を用いる理由は、次の通りである。光硬化性樹脂の硬化時間は、受ける光エネルギーの密度が高いほど短い。そして、紫外線は、可視光線に比べて光エネルギーの密度が高い。したがって、駒部材15の製造効率を高めるために、可視光線硬化性樹脂よりも硬化時間の短い紫外線硬化性樹脂を用いた。
【0013】
ワイヤーハーネスWは、導電路10を製造した後、光硬化工程(モールド工程)を行うことによって製造される。光硬化工程では、駒部材15を成形するための1つのキャビティが形成されたモールド型(図示省略)が用いられる。モールド成形の際には、導電路10をモールド型に対し長さ方向に位置決めしてセットし、次に、モールド型内に液体状の光硬化性樹脂(紫外線硬化性樹脂)を注入する。その後、モールド型内の液状光硬化性樹脂に紫外線が照射される。
【0014】
紫外線の照射により光硬化性樹脂が硬化し、1つの駒部材15が導電路10の外周に固着された状態でモールド成形される。この後、導電路10をモールド型から外し、導電路10を、長さ方向に移動させることにより再度位置決めしてモールド型にセットする。この後、上記と同様に、液体状の光硬化性樹脂を、モールド型に注入して紫外線の照射により硬化させる。上記のモールド成形を駒部材15の数と同じ回数繰り返すことにより、ワイヤーハーネスWが製造される。
【0015】
尚、モールド型としては、複数のキャビティが形成されたものを用いることもできる。この場合、光硬化工程を駒部材15の個数よりも少ない回数で済ますことができる。即ち、キャビティの数が駒部材15の個数と同数であれば、光硬化工程は1回で済む。キャビティの数が駒部材15の個数より少なければ、光硬化工程は駒部材15の数より少ない回数で済む。
【0016】
本実施例1ワイヤーハーネスWは、複数本の被覆電線11を束ねて構成され、屈曲部位Bを変位させるような不定経路で配索される可撓性を有する導電路10と、モールド成形により導電路10に数珠繋ぎ状に設けられ、屈曲部位Bでは互いに当接することで導電路10の屈曲変形を規制する光硬化性樹脂製の複数の駒部材15とを備えている。この構成によれば、導電路10の屈曲部位Bでは、駒部材15同士が当接することにより、それ以上の導電路10の曲げ動作が阻止される。これにより、ワイヤーハーネスW(導電路10)の配索経路の最小曲率半径が規定される。
【0017】
本実施例1のワイヤーハーネスWは、光硬化性樹脂からなる駒部材15が、モールド成形によって導電路10と一体化されている。したがって、駒部材15を成形する工程と、駒部材15を導電路10に一体化させる工程が、同時に行われる。したがって、駒部材15の成形工程の後は、駒部材15同士を連結する工程も、駒部材15を導電路10に沿わせる工程も不要である。よって、製造工数が少なくて済んでいる。
【0018】
<他の実施例>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施例に限定されるものではなく、例えば次のような実施例も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)上記実施例1では、駒部材の材料を紫外線硬化性樹脂としたが、駒部材の材料は可視光硬化性樹脂であってもよい。
(2)上記実施例1では、全ての駒部材を同一形状、同一寸法としたが、形状や寸法の異なる複数種類の駒部材を並べた形態としてもよい。
(3)上記実施例1では、駒部材の断面形状を方形としたが、駒部材の断面形状は、方形以外の形状であってもよい。
(4)上記実施例では、ワイヤーハーネスを自動車のスライドドアに適用した例を説明したが、本発明のワイヤーハーネスは、スライドドア以外にも適用することができる。
【符号の説明】
【0019】
W…ワイヤーハーネス
B…屈曲部位
10…導電路
11…被覆電線(電線)
15…駒部材