(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
添付の図面を参照しながら、限定的でない例示の実施形態に係る電子デバイスパターンの印刷装置(以下、「印刷装置100」という)を用いて、本発明の一実施形態を説明する。本実施形態は、以下に説明する印刷装置100以外でも、ローラ(例えばローラ転写胴)の表面に形成されたパターンを所定の表面(例えばワーク板)に転写するもの(装置、機器、ユニット、システムなど)であれば、いずれのものにも用いることができる。
【0015】
なお、以後の説明において、添付の全図面の記載の同一又は対応する装置、部品又は部材には、同一又は対応する参照符号を付し、重複する説明を省略する。また、図面は、特に説明しない限り、装置、部品若しくは部材間の限定的な関係を示すことを目的としない。したがって、具体的な相関関係は、以下の限定的でない実施形態に照らし、当業者により決定することができる。
【0016】
本発明の一実施形態に係る印刷装置100を用いて、下記に示す順序で本実施形態を説明する。
【0017】
1.印刷装置の構成
2.テーブル(保持部材)の構成
2−1 保持部材の例(2層の多孔質板)
2−2 保持部材の他の例(2層の多孔質板及び枠形状の多孔質体)
3.印刷装置の動作の例
[1.印刷装置の構成]
図1及び
図2を用いて、本実施形態に係る印刷装置100を説明する。ここで、
図1は、印刷装置100の一例を説明する概略外観図である。
図2は、印刷装置100の印刷方法を説明する説明図である。なお、
図1に示す印刷装置100は一例であり、本実施形態に係る印刷装置は
図1に示すものに限定されるものではない。
【0018】
図1において、X方向は、テーブル(後述するマスターテーブルTm、ワークテーブルTw)を移動させる方向である。Y方向は、X方向に直交する方向で、マスターテーブルTm等の幅方向である。Z方向は、鉛直方向(X方向とY方向に直交する方向)である。θ方向は、Z軸を中心とした回転方向である。
【0019】
印刷装置100は、ローラの表面の液膜を凸版で部分的に除去して反転パターンを形成し、その後反転パターンをワーク板に転写する方法(反転印刷法)を用いる装置である。すなわち、印刷装置100は、ローラの回転動作と凸版(マスター版)の直進動作とを同期させてローラの表面に反転パターンを形成し、ローラの回転動作とワーク板(被印刷体)の直進動作とを同期させてローラの表面の反転パターンを被印刷体に印刷(転写)する。
【0020】
印刷装置100は、例えば電子デバイスのパターン(プリンテッドエレクトロニクスデバイスなど)を製造するときに、印刷機として用いることができる。また、印刷装置100は、例えば半導体製造工程においてラインアンドスペース等のパターンを被印刷体(半導体基板)上に形成するときに用いられる、半導体製造装置として用いることができる。
【0021】
図1に示すように、印刷装置100は、ローラ支持部Bkpに回転可能に支持されたローラ(ローラ転写胴、転写ローラなど)Bkと、ローラBkの表面に液膜(例えばインク膜)を形成するインクコータIctと、を備える。また、印刷装置100は、反転パターンを形成する凸版Prを保持するマスターテーブル(第1のテーブル)Tmと、反転パターンが転写されるワーク板Pwを保持するワークテーブル(第2のテーブル)Twと、を備える。更に、印刷装置100は、マスターテーブルTm及びワークテーブルTwをローラBkの下方(図中のX方向)に夫々移動するガイド機構Gdと、ローラBkを回転する回転駆動部31Rと、を備える。なお、マスターテーブルTm及びワークテーブルTwは、ガイド機構Gdに脱着可能な構成であってもよい。
【0022】
図2(a)に示すように、印刷装置100は、本実施形態では、回転駆動部31Rを用いてローラBkを回転し、インクコータIctを用いてインクタンクItkの液体(インク)をローラBkの表面に供給する。具体的には、印刷装置100は、インクコータIctの先端とローラBkの表面とを所定の間隔に設定し、ローラBkを図中のRa方向に回転させて、ローラBkの表面の所望の領域に所望の膜厚で液体(インク)を供給する。このとき、印刷装置100は、ローラBkの表面に液膜PTaを形成する。
【0023】
次に、印刷装置100は、
図2(b)に示すように、ガイド機構Gdを用いて凸版PrをX方向に移動させ(図中のMb)、図中のRb方向に回転するローラBkの表面に凸版Prの凸部Praを順次接触させる。このとき、ローラBkの表面の液膜PTaは部分的に除去される。すなわち、印刷装置100は、ローラBkの表面に反転パターンPTbを形成する。
【0024】
次いで、印刷装置100は、
図2(c)に示すように、ガイド機構Gdを用いてワーク板PwをX方向に移動させ(図中のMc)、図中のRc方向に回転するローラBkの表面の反転パターンPTbとワーク板Pwの表面とを接触させる。このとき、ワーク板Pwの表面には、反転パターンPTbが転写される。すなわち、印刷装置100は、ワーク板Pw(被印刷体)の表面にパターンPTcを形成する。
【0025】
これにより、印刷装置100は、所望のパターン(PTc)を被印刷体(ワーク板Pwの表面)に印刷(転写)することができる。
【0026】
ローラBkは、反転パターンPTbをワーク板Pwに転写する回転体である。ローラBkは、凸版Prにより、ローラBkの表面に反転パターンPTbを形成される。
【0027】
ローラBkは、本実施形態では、ローラBkの外周にシリコーン製の撥水性ブランケットBks(
図2)が巻かれた円柱を用いる。また、ローラBkは、回転中心軸31r(
図2)に回転可能に支持されている。また、ローラBkは、回転駆動部31Rの駆動によって、回転中心軸31rを回転中心に回転される。なお、ローラBkは、ピニオン、クラッチ又は減速機(不図示)などを用いて、撥水性ブランケットBksを非連動に回転する構成であってもよい。
【0028】
凸版Prは、凹凸の表面形状を有する版(マスター板など)である。凸版Prは、本実施形態では、平板を用いる。また、凸版Prは、マスターテーブルTmに載置されている。更に、凸版Prは、ガイド機構Gdによって、X方向(
図2)に移動される。
【0029】
凸版Prは、ワーク板Pwに印刷されるパターンの反転パターンに対応する凸部Praをその表面に形成されている。また、凸版Prは、凸部PraをローラBkの表面に接触させることによって、ローラBkの表面の液膜(
図2のPTa)から部分的に液体(インク)を除去し、反転パターン(
図2のPTb)を形成する。
【0030】
ワーク板Pwは、パターンを形成される被印刷体である。ワーク板Pwは、本実施形態では、フィルム状又はシート状などの被印刷体を用いる。また、ワーク板Pwは、ワークテーブルTwに載置されている。更に、ワーク板Pwは、ガイド機構Gdによって、X方向(
図2)に移動される。
【0031】
ワーク板Pwは、ローラBkの表面に形成された反転パターン(
図2のPTb)が転写される。すなわち、ワーク板Pwは、所望のパターン(
図2のPTc)が印刷される。
【0032】
ガイド機構Gdは、マスターテーブルTmとワークテーブルTwとをローラBkの下方(
図1のX方向)に夫々移動する機構である。ガイド機構Gdは、本実施形態では、リニアガイドを用いる。なお、ガイド機構Gdは、マスターテーブルTm等を移動することができる公知の機構を用いてもよい。
【0033】
マスターテーブルTmは、凸版Prを載置され、凸版Prを固定するものである。マスターテーブルTmは、少なくとも2層の多孔質板を備える保持部材(後述する
図3(a)の10A、又は、
図3(b)の10B)を用いて、2層の多孔質板を介して凸版Prを吸引して固定する。また、マスターテーブルTmは、ガイド機構Gdによって、凸版Prを固定した状態で搬送方向(
図1のX方向)に移動される。マスターテーブルTmは、いわゆるポーラスチャック又は真空チャックを用いてもよい。
【0034】
なお、マスターテーブルTmは、載置された凸版PrをX方向、Y方向、Z方向及びθ方向に微動可能な機構(不図示)を組み込まれた構成であってもよい。これにより、マスターテーブルTmは、凸版Prの位置ズレを調整することができる。
【0035】
ワークテーブルTwは、ワーク板Pwを載置され、ワーク板Pwを固定するものである。ワークテーブルTwは、少なくとも2層の多孔質板を備える保持部材(後述する
図3(a)の10A、又は、
図3(b)の10B)を用いて、2層の多孔質板を介してワーク板Pwを吸引して固定する。また、ワークテーブルTwは、ガイド機構Gdによって、ワーク板Pwを固定した状態で搬送方向(
図1のX方向)に移動される。ワークテーブルTwは、いわゆるポーラスチャック又は真空チャックを用いてもよい。
【0036】
なお、ワークテーブルTwは、載置されたワーク板PwをX方向、Y方向、Z方向及びθ方向に微動可能な機構(不図示)を組み込まれた構成であってもよい。これにより、ワークテーブルTwは、ワーク板Pwの位置ズレを調整することができる。
【0037】
凸版Pr及びワーク板Pwを固定する保持部材の構成は、後述する[2.テーブル(保持部材)の構成]で説明する。
【0038】
[2.テーブル(保持部材)の構成]
図3乃至
図6を用いて、本実施形態に係るマスターテーブルTmの保持部材の構成及びワークテーブルTwの保持部材の構成を主に説明する。なお、マスターテーブルTmの保持部材とワークテーブルTwの保持部材とは同じ構成のものを用いるため、以下の説明ではワークテーブルTwの保持部材を説明し、マスターテーブルTmの保持部材の説明を省略する。
【0039】
ここで、
図3(a)は、本実施形態に係る印刷装置100の保持部材の例(10A)を説明する概略外観図である。
図3(b)は、本実施形態に係る印刷装置100の保持部材の他の例(10B)を説明する概略外観図である。
図4は、保持部材の例(10A)を説明する分解図である。
図5は、保持部材の他の例(10B)を説明する分解図である。
【0040】
図6(a)は、保持部材の一の多孔質板(例えば
図3(a)の11)の表面形状(表面粗さ)を示す概略等高線図である。
図6(b)は、保持部材の他の多孔質板(例えば
図3(a)の12)の表面形状(表面粗さ)を示す概略等高線図である。
【0041】
なお、本実施形態に係る保持部材(及び多孔質板)は、
図3乃至
図6に示すものに限定されるものではない。すなわち、本実施形態に係る保持部材の多孔質板は、印刷時の寸法精度及び印刷されるワーク板の仕様(形状、大きさ、重さなど)に応じて、適宜変更されうる。また、
図3(a)及び
図4では、2枚の多孔質板の例を示しているが、本実施形態に係る保持部材は、多孔質板の枚数を2枚に限定されるものではない。すなわち、本実施形態に係る保持部材は、3枚以上の多孔質板を積層して、ワーク板Pw又は凸版Pcを保持(又は固定)するものであってもよい。
【0042】
[2−1 保持部材の例(2層の多孔質板)]
図3(a)に示すように、ワークテーブルTwa及びマスターテーブルTmaは、保持部材10Aと枠部材20Aとを備える。
【0043】
図3(a)及び
図4に示すように、保持部材10Aは、2層の多孔質板として、第1の多孔質板(一の多孔質板)11と、第2の多孔質板(他の多孔質板)12とを備える。また、保持部材10Aは、
図4に示すように、第1の多孔質板11及び第2の多孔質板12を固定(保持)する枠部材20Aに積層して配置されている。また、第1の多孔質板11は、ワーク板Pwに接する側(外側)に配置されている。第2の多孔質板12は、第1の多孔質板11の内側に配置されている。なお、第1の多孔質板11と枠部材20Aは同一平面となるように配置されている。また、第1の多孔質板11及び第2の多孔質板12を枠部材20Aに配置した後に上面を研磨してもよい。
【0044】
図4に示すように、枠部材20Aは、バッファ部21aを形成する開口部と、開口部の内部の気体を給排気する給排気部22aとを備える。給排気部22aは、バッファ部21aの内部の気体を吸気する、又は、バッファ部21aの内部に気体を供給する配管系である。
【0045】
第1の多孔質板11及び第2の多孔質板12の孔径及び板厚は、印刷時のパターンの精度及び印刷されるワーク板の仕様(形状、大きさ、重さなど)に応じて、適宜変更されうる。また、第1の多孔質板11及び第2の多孔質板12の孔径及び板厚は、実験又は計算で予め定められる寸法を用いてもよい。更に、第1の多孔質板11及び第2の多孔質板12の孔径は、例えば0.01μmから10μmの範囲内のものとしてもよい。また、第1の多孔質板11及び第2の多孔質板12の板厚は、例えば1mmから0.01mmの範囲内のものとしてもよい。
【0046】
第1の多孔質板11は、例えばプラズマ溶射等により製造されるアルミナ多孔体で、板厚100から200μmのものを用いてもよい。第1の多孔質板11は、導電性の多孔質体を用いて、静電気の帯電による微粒子(例えばゴミ、ダスト、塵、埃)が付着することを防止するものであってもよい。また、第2の多孔質板12は、例えば#100程度の気孔を備えるポーラス板で、凸版Pc及びワーク板Pwの荷重に対する変形耐性のある板厚のものを用いてもよい。
【0047】
ワークテーブルTwaは、給排気部22aを用いてバッファ部21aの内部の気体を吸気(例えば真空引き)することによって、バッファ部21aの内部を減圧し、2層の多孔質板(11、12)を介して、ワークテーブルTwaに載置したワーク板Pwの全面を吸引して固定する。また、ワークテーブルTwaは、給排気部22aを用いてバッファ部21aの内部に気体を供給することによって、ワークテーブルTwaに載置したワーク板Pwの吸引(固定)を解除する。これにより、ワークテーブルTwaは、例えばフィルム状又はシート状などのワーク板Pwを固定する場合に、印刷時に、パターンが印刷されるワーク板Pwの中央部で、ワーク板Pwの位置が局所的にずれることを防止することができる。
【0048】
本実施形態に係る保持部材10Aは、2層の多孔質板において、ワーク板Pwに接する側の第1の多孔質板11の孔径を、第2の多孔質板12の孔径より小さくする。第1の多孔質板11の孔径を第2の多孔質板12の孔径より小さくした場合に、第1の多孔質板11の表面粗さは例えば
図6(a)となり、第2の多孔質板12の表面粗さは例えば
図6(b)となる。これにより、ワークテーブルTwa(印刷装置100)は、フィルム状又はシート状などのワーク板Pwを吸引(固定)する場合に、ワーク板Pwに接する側の第1の多孔質板11の孔径を小さくすることによって、多孔質体の表面の凹凸がワーク板Pwに浮き出ることを防止することができる。
【0049】
また、本実施形態に係る保持部材10Aは、2層の多孔質板において、ワーク板Pwに接する側の第1の多孔質板11の板厚を第2の多孔質板12の板厚より小さくする。これにより、ワークテーブルTwa(印刷装置100)は、フィルム状又はシート状などのワーク板Pwを吸引(固定)する場合に、第1の多孔質板11の孔径を小さくしたとしても板厚が比較的小さいため、通過する気体の流体の抵抗を低減することができる。さらに、板厚が比較的大きい第2の多孔質板12の平面度によってワーク板Pwの平面度を確保することができる。すなわち、ワークテーブルTwa(印刷装置100)は、第1の多孔質板11及び第2の多孔質板12を用いてワーク板Pwを吸引し、ワーク板Pwの平面度を維持することができるので、パターンの欠陥の発生を防止し、高精度の電子デバイスのパターンを形成することができる。
【0050】
更に、本実施形態に係る保持部材10Aは、2層の多孔質板において、ワーク板Pwに接する側の第1の多孔質板11の孔径を小さくすることによって、外部から保持部材10Aの表面に吸引(及び付着)される微粒子(ゴミなど)を防止することができる。また、本実施形態に係る保持部材10Aは、第1の多孔質板11の孔径を小さくすることによって、微粒子(ゴミなど)が内部から保持部材10Aの表面に排出されることを防止することができる。これにより、ワークテーブルTwa(印刷装置100)は、第1の多孔質板11とワーク板Pwとの間に微粒子(ゴミなど)などが挟まれることを防止することができるので、パターンの欠陥の発生を防止し、高精度の電子デバイスのパターンを形成することができる。
【0051】
なお、マスターテーブルTmaは、上記のワークテーブルTwaと同様に、第1の多孔質板11及び第2の多孔質板12を用いて凸版Prを吸引し、凸版Prの平面度を維持することができる。これにより、マスターテーブルTma(印刷装置100)は、高精度の電子デバイスのパターンの形成に用いる反転パターンを形成することができる。
【0052】
[2−2 保持部材の他の例(2層の多孔質板及び枠形状の多孔質体)]
図3(b)に示すように、ワークテーブルTwb及びマスターテーブルTmbは、保持部材10Bと枠部材20Bとを備える。
【0053】
図3(b)及び
図5に示すように、保持部材10Bは、2層の多孔質板(第1の多孔質板11、第2の多孔質板12)に加え、第3の多孔質板として枠形状の多孔質体13を更に備える。また、保持部材10Bは、
図5に示すように、(上記の[2−1 保持部材の例(2層の多孔質板)]と同様に)第1の多孔質板11及び第2の多孔質板12を固定(保持)する枠部材20Bに配置され、第1の多孔質板11がワーク板Pwに接する側(外側)に配置されている。なお、第1の多孔質板11、枠形状の多孔質体13、枠部材20Aは同一平面となるように配置されている。また、第1の多孔質板11、第2の多孔質板12、枠形状の多孔質体13を枠部材20Bに配置した後に上面を研磨してもよい。
【0054】
枠形状の多孔質体13は、2層の多孔質板(第1の多孔質板11、第2の多孔質板12)の外周に配置されている。枠形状の多孔質体13の孔径は、第1の多孔質板(一の多孔質板)11の孔径より大きい。ここで、枠形状の多孔質体13の孔径は、印刷されるワーク板の仕様(形状、大きさ、重さなど)に応じて、適宜変更されうる。また、枠形状の多孔質体13の孔径は、実験又は計算で予め定められる寸法を用いてもよい。
【0055】
図5に示すように、枠部材20Bは、枠形状の多孔質体13に対応する位置にバッファ部21bを形成する開口部と、開口部の内部の気体を給排気する給排気部22bとを更に備える。給排気部22bは、バッファ部21bの内部の気体を吸気する、又は、バッファ部21bの内部に気体を供給する配管系である。なお、
図5に示すように、枠部材20Bは、(上記の[2−1 保持部材の例(2層の多孔質板)]と同様に)バッファ部21aの内部の気体を給排気する給排気部22aを備える。
【0056】
ワークテーブルTwbは、給排気部22bを用いてバッファ部21bの内部の気体を吸気することによって、枠形状の多孔質体13を介して、ワークテーブルTwに載置したワーク板Pwの外縁を吸引して固定する。ここで、ワークテーブルTwbは、枠形状の多孔質体13の孔径が第1の多孔質板11の孔径より大きいため、上記[2−1 保持部材の例(2層の多孔質板)]の保持部材10Aよりも大きい吸引力でワーク板Pwを吸引(固定)することができる。また、ワークテーブルTwbは、枠形状の多孔質体13を用いて、大きい吸引力でワーク板Pwの外縁を吸引(固定)することができるので、上記[2−1 保持部材の例(2層の多孔質板)]の保持部材10Aよりも、印刷時にワーク板Pwが捲れ上がることを更に防止することができる。更に、ワークテーブルTwbは、給排気部22bを用いて、印刷終了後に、枠形状の多孔質体13のバッファ部21bに気体を供給することによって、枠形状の多孔質体13を経由して噴出する気体によりワーク板Pwの外縁を持ち上げることができ、ワーク板Pwを容易に取り外しすることができる。
【0057】
なお、マスターテーブルTmbは、上記のワークテーブルTwbと同様に、枠形状の多孔質体13を用いて凸版Prを吸引する。
【0058】
以上のとおり、本実施形態に係る印刷装置100(保持部材10A、10B)によれば、保持部材(10A又は10B)を用いて、被印刷体(ワーク板Pw)をテーブル(Tma若しくはTwa、又は、Tmb若しくはTwb)に固定することができる。本実施形態に係る印刷装置100(保持部材10A、10B)によれば、例えば機械式固定法などで固定することができないフィルム状又はシート状などの被印刷体を吸引して固定することができる。また、本実施形態に係る印刷装置100(保持部材10A、10B)によれば、保持部材(10A又は10B)を用いて、被印刷体の全面を吸引(固定)することができるので、フィルム状又はシート状などの被印刷体の外縁を挟んで固定する場合と比較して、パターンが印刷される被印刷体の中央部で被印刷体の位置が局所的にずれることを防止することができる。
【0059】
更に、本実施形態に係る印刷装置100(保持部材10A、10B)によれば、被印刷体に接する側の第1の多孔質板(11)の孔径を小さくすることによって、多孔質の表面の凹凸が被印刷体に浮き出ることを防止することができる。また、本実施形態に係る印刷装置100(保持部材10A、10B)によれば、被印刷体に接する側の第1の多孔質板(11)の孔径を小さくすることによって、保持部材(10A、10B)と被印刷体との間に挟まれる微粒子(ゴミなど)を低減することができる。
【0060】
すなわち、本実施形態に係る電子デバイスパターンの印刷装置100によれば、少なくとも2層の多孔質板を用いて被印刷体(ワーク板Pw)を固定し、且つ、被印刷体に接する側の多孔質板(11)の孔径を小さくすることによって、多孔質の表面の凹凸が被印刷体に浮き出ることに起因する印刷パターンの欠陥の発生を防止することができる。これにより、本実施形態に係る電子デバイスパターンの印刷装置100によれば、電子デバイスのパターンの印刷性を向上することができる。
【0061】
[3.印刷装置の動作の例]
図7を用いて、本発明の実施形態に係る印刷装置の動作(電子デバイスパターンの印刷方法)の例を説明する。ここで、
図7は、本実施形態に係る印刷装置100の動作の一例を説明するフローチャート図である。
図8は、印刷装置100の印刷結果(実験結果)の一例を説明する説明図である。
【0062】
本実施形態に係る印刷装置100は、前述の
図2で説明したとおり、ローラBkの表面の液膜を凸版Pcで部分的に除去して反転パターンPTbを形成し、その後、反転パターンPTbをワーク板Pwに転写する反転印刷法を用いる。以下に具体的に説明する。
【0063】
図7に示すように、印刷装置100(
図1)は、ステップS701において、印刷装置100に入力された情報に基づいて、印刷する動作を開始する。開始後、印刷装置100は、ステップS702に進む。
【0064】
ステップS702において、印刷装置100は、凸版保持ステップとして、凸版Pc(
図1)をマスターテーブルTmで保持(固定)する。次いで、ステップS703において、印刷装置100は、ワーク板保持ステップとして、ワーク板Pw(
図1)をワークテーブルTwで保持(固定)する。その後、印刷装置100は、ステップS704に進む。なお、凸版Pc及びワーク板Pwを固定する方法は、前述の[2.テーブル(保持部材)の構成]で説明した方法と同様のため、説明を省略する。
【0065】
ステップS704において、印刷装置100は、インクコータIctを用いて、ローラBkの表面に液膜(インク膜)PTaを形成する(
図2(a))。その後、印刷装置100は、ステップS705に進む。
【0066】
ステップS705において、印刷装置100は、反転パターン形成ステップとして、凸版Pcを保持(固定)したマスターテーブルTmをローラBkの下方に移動する。このとき、印刷装置100は、ローラBkの回転とマスターテーブルTmの移動とを同期させ、凸版Pcの凸部Pcaで液膜を部分的に除去し、ローラBkの表面に反転パターンPTbを形成する(
図2(b))。その後、印刷装置100は、ステップS706に進む。
【0067】
ステップS706において、印刷装置100は、パターン印刷ステップとして、ワーク板Pwを保持(固定)したワークテーブルTwをローラBkの下方に移動する。このとき、印刷装置100は、ローラBkの回転とワークテーブルTwの移動とを同期させ、ローラBkの表面の反転パターンPTbをワーク板Pwの表面に転写する(
図2(c))。すなわち、印刷装置100は、ワーク板Pwの表面に所望のパターンPTcを印刷(形成)する。その後、印刷装置100は、ステップS707に進む。
【0068】
ステップS707において、印刷装置100は、印刷動作を終了するか否かを判断する。印刷装置100は、例えば印刷装置100に入力された情報に基づいて、印刷動作を終了するか否かを判断することができる。印刷動作を終了すると判断した場合には、印刷装置100は、図中のENDに進み、印刷する動作を終了する。なお、印刷装置100は、印刷する動作を終了する場合に、ワーク板Pwを吸引して固定している状態のワークテーブルTwを後工程に移動することによって、ワーク板Pwを搬送してもよい。印刷動作を終了しないと判断した場合には、印刷装置100は、ステップS702に戻り、印刷する動作を繰り返す。
【0069】
(実験結果)
印刷装置100の効果を確認するため、被印刷体Tst1、Tst2及びTst3の表面にテスト印刷する実験を実施した。比較のため、被印刷体Tst1の表面粗さを小さくし、被印刷体Tst2の表面粗さを中程度とし、被印刷体Tst3の表面粗さを大きくした。被印刷体Tst1は例えば算術平均粗さRa(JIS B 0601−2001)0.1μmであり、被印刷体Tst2は例えば算術平均粗さRa0.5μmであり、被印刷体Tst3は例えば算術平均粗さRa5μmである。
【0070】
図8に、印刷装置100の印刷結果の一例を示す。
図8の行Ph1は、被印刷体(Tst1、Tst2、Tst3)の表面写真(印刷前)である。
図8の行Ph2は、被印刷体(Tst1、Tst2、Tst3)にライン状の印刷パターンを印刷した結果である。
図8の行Ph3は、被印刷体(Tst1、Tst2、Tst3)にドッド状の印刷パターンを印刷した結果である。
【0071】
図8に示すように、印刷装置100は、本実験では、比較的表面粗さが小さい被印刷体Tst1において、ライン状の印刷パターン及びドッド状の印刷パターンを精度よく印刷することができた。一方、印刷装置100は、比較的表面粗さが中程度の被印刷体Tst2において、ライン状の印刷パターン及びドッド状の印刷パターンの精度が低下した。更に、印刷装置100は、比較的表面粗さが大きい被印刷体Tst3において、ライン状の印刷パターン及びドッド状の印刷パターンを印刷することができなかった。
【0072】
すなわち、本実験により、反転印刷法を用いる場合には、印刷性(印刷されたパターンの寸法精度)が被印刷体の表面粗さに依存することを確認した。また、反転印刷法を用いる場合には、載置された被印刷体(例えばフィルム状の被印刷体)を固定(保持)する部材の表面形状に凹凸がある場合で、その凹凸が被印刷体に浮き出るときに、印刷性が低下することを確認した。
【0073】
本実施形態に係る印刷装置100は、少なくとも2層の多孔質板を用いて被印刷体(ワーク板Pw)を固定し、且つ、被印刷体に接する側の多孔質板(
図4、
図5の11)の孔径を小さくすることによって、多孔質の表面の凹凸が被印刷体に浮き出ることに起因する印刷パターンの欠陥の発生を防止することができる。また、本実施形態に係る印刷装置100は、少なくとも2層の多孔質板を用いて被印刷体を固定し、且つ、被印刷体に接する側の多孔質板の孔径を印刷精度(寸法精度)に対応して設定することによって、所望の寸法精度(印刷精度)で印刷パターンを印刷することができる。これにより、本実施形態に係る電子デバイスパターンの印刷装置100によれば、電子デバイスのパターンの印刷性及び生産性を向上することができる。
【0074】
なお、本実施形態に係る印刷装置100は、反転印刷法を用いた場合について説明したが、これにとらわれない。例えば、凸版印刷法、グラビア印刷法、シルクスクリーン印刷法を用いた際の被印刷体の固定に用いることができる。被印刷体としては、PCやPETなどの可撓性のプラスチック基板に対して好適に用いられるが、ガラス基板や半導体基板などの可撓性でない基板に用いても良い。
【0075】
以上、本発明の実施形態を参照しながら、本発明を説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されることなく、添付の特許請求の範囲に照らし、種々に変更又は変形することが可能である。