(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6112658
(24)【登録日】2017年3月24日
(45)【発行日】2017年4月12日
(54)【発明の名称】穴上の銅厚が厚い構造を特徴とする回路基板とその製造方法
(51)【国際特許分類】
H05K 3/42 20060101AFI20170403BHJP
H05K 1/11 20060101ALI20170403BHJP
【FI】
H05K3/42 620B
H05K1/11 H
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-74230(P2013-74230)
(22)【出願日】2013年3月29日
(65)【公開番号】特開2014-199855(P2014-199855A)
(43)【公開日】2014年10月23日
【審査請求日】2015年3月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】593215380
【氏名又は名称】株式会社伸光製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100123869
【弁理士】
【氏名又は名称】押田 良隆
(72)【発明者】
【氏名】太田 守彦
(72)【発明者】
【氏名】小田 聡
【審査官】
吉澤 秀明
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2008/0314622(US,A1)
【文献】
特開平06−260756(JP,A)
【文献】
特開平09−321434(JP,A)
【文献】
特開2001−291956(JP,A)
【文献】
特開2005−322832(JP,A)
【文献】
特開平01−299093(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 3/42
H05K 1/11
H05K 3/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スルーホール直上面の導通層厚が、前記スルーホール外周の導通層厚より厚い構造を有する回路基板の製造方法であって、
下記(1)〜(5)の工程を順に含むことを特徴とする回路基板の製造方法。
記
(1)銅張積層板にスルーホールを設けてスルーホール付き銅張積層板を形成する工程。
(2)前記スルーホール付き銅張積層板の表面に銅めっき層を付与して、前記スルーホールの側壁に銅めっき層を設けて前記スルーホール付き銅張積層板の両面を導通する導通スルーホールを備える導通スルーホール付き銅張積層板を形成する工程。
(3)前記導通スルーホール内に充填材を充填して非貫通導通スルーホールを形成する工程。
(4)前記非貫通導通スルーホール内の充填材表層にレーザービームを照射して前記表層の一部を除去することにより、非貫通導通スルーホール付き銅張積層板の前記非貫通導通スルーホール表面を凹形状部とする工程。
(5)前記非貫通導通スルーホール表面を凹形状部とされた銅張積層板の両面に銅めっき層を付与して、前記凹形状部を平坦にする工程。
【請求項2】
スルーホール内に備えられる充填層の直上面に設けられる導通層が、前記スルーホール外周に備わる導通層の厚みより大きな厚みを有し、
前記充填層の直上面に設けられる導通層が、一層の銅めっき層を介して前記充填層の直下面に設けられる導通層と導通することを特徴とする回路基板。
【請求項3】
請求項1記載の回路基板の製造方法により形成されたスルーホール内に備えられる充填層の直上面に設けられる導通層が、前記スルーホールの外周に備わる導通層の厚みより大きな厚みを有し、且つ前記充填層の直上面に設けられる導通層が、一層の銅めっき層を介して前記充填層の直下面に設けられる導通層と導通することを特徴とする回路基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は回路基板の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年のICチップは、高速化、高集積化が進み、回路基板内異層間接続に使用される回路基板のスルーホールのような穴上をもICチップと回路基板の接続部に使用する要求が出てきている。
【0003】
この回路基板の穴上をICチップとの接続に使用する為には、穴を塞ぎ、その上に導通層を付与する必要があるが、ICチップと回路基板の接続方法にワイヤボンディング法を用いる場合、従来穴上の導通層が一定以上の厚みがないと、ボンディングワイヤーと導通層の接続部において、「接続剥がれ」が起こりやすい。
一方、穴上の導通層を厚くするために銅めっきを厚く施すと、穴上以外の部分も銅めっきの層が厚くなり、その結果、高密度回路形成が難しくなるという不具合を生じる。
【0004】
上記状態を、従来の製造方法を示す
図2を参照して説明する(特許文献1、2参照)。
図2は、従来の回路基板の製造方法を示す断面模式図による工程フロー図で、
図2aは使用する銅張積層板の断面図、
図2bはスルーホール付き銅張積層板の断面図、
図2cは銅めっきにより表裏導通した銅張積層板の断面図、
図2dは充填材により非貫通導通スルーホールを形成した状態の銅張積層板の断面図、
図2eは非貫通導通スルーホール上を含む表裏面に銅めっき層を設けた銅張積層板の断面図、
図2fは作製した回路基板の断面図である。
図2において、1は基材、2は銅箔、3はスルーホール、3aは貫通導通スルーホール、3bは充填材により埋設された非貫通導通スルーホール、4、6は銅めっき層、5は充填材、10は銅張積層板、11は貫通スルーホール付き銅張積層板、20は回路基板である。
【0005】
まず、回路基板の製造に際しては、
図2aに示す様な基材1に銅箔2を張り付けた銅張積層板10を使用する。
ここで、厚み0.2mmの基材1に厚み12μmの銅箔2を張り付けた銅張積層板10を使用したが、基材1、銅箔2の厚みに制限はない。
【0006】
次に、
図2bに示す様に、銅張積層板10に穴をあけスルーホール3を形成する。穴開け加工方法は特に限定されないが、NCドリリングマシンなどが用いられる。また、穴の形状は丸穴に限らず、楕円穴、四角穴、異形穴など、目的に合わせて選択されている。
スルーホールの形成後、
図2cに示す様に、穴開け加工が実施されたスルーホール付き銅張積層板11の全面または必要な箇所に銅めっきを実施して銅めっき層4を設け、スルーホール(
図2b、符号3)に表裏導通を付与した貫通導通スルーホール3aを形成する。
【0007】
次に、
図2dに示す様に、充填材5を埋設することで貫通導通スルーホール3aの内部を完全に充填した非貫通導通スルーホール3bを形成する。
この充填作業は下記の条件を満たす樹脂を充填材にして印刷法、ローラー法、カーテンコーター法、ディップ法など、各種工法で行う事が可能である。
充填材は充填作業時には粘性を持ち、熱、UV、光等により硬化する性質を有していれば、使用する樹脂の種類に制約は無く、エポキシ系、メラニン系、アクリル系等が選択可能であるが、高耐熱性、高剛性を持つ樹脂がより望ましい。
なお、非貫通導通スルーホール3bからはみ出した充填材5は、研磨して、銅めっき層4と同一な平坦面にする。
【0008】
次に
図2eに示す様に、全面または必要な箇所に銅めっきを実施して銅めっき層6を設ける。
銅めっき層6の厚みは任意に設定されるが、ワイヤーボンド剥がれが起こりにくい厚みが必要で、少なくとも25μm以上である。
この場合銅箔2と銅めっき層4、6を合わせた厚みは、62μm以上となっている。
【0009】
次に
図2fに示す様に、「穴あけ」、「銅めっき加工等」が実施された銅張積層板10の銅箔2、銅めっき層4、6の不要な箇所を、露光、エッチングにより除去することにより所定の回路基板20が作製される。
外層の銅めっき層6の表面には、必要に応じてレジスト膜を必要な箇所に被覆する事が可能であり、必要に応じて金、銀、ニッケル等の他の金属めっきを行うことも可能である。
【0010】
以上のように、従来の方法では穴上に導通を付与する為の銅めっきが薄い場合、穴内充填材の硬度不足等により穴上部にワイヤーボンド実装が難しい為、銅めっき層は25μm以上の厚みを必要としていた。
一方、このように銅めっき層を厚く設けると、穴上以外の部分まで銅めっき層が厚くなる結果、銅箔、銅めっき層を合わせた導通層の厚みが厚くなってしまい、回路幅、回路間隔が80μm以下の高密度回路形成が難しくなる。この為、従来の方法では接続剥がれ防止のために穴上の導通層を厚くすることと、高密度回路形成の両者を同時に成立させることが課題となっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2002−76613号公報
【特許文献2】特開2002−57441号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
そこで、このような状況の中、本発明ではスルーホールのような穴上の導通層を厚くすることと、高密度回路形成の両者を同時に図り、穴上以外の銅めっき層を厚くすることなく、穴上の導通層のみが厚い構造を持った回路基板の製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の第1の発明は、スルーホール直上面の導通層厚が、前記スルーホール外周の導通層厚より厚い構造を有する回路基板の製造方法であって、(1)銅張積層板にスルーホールを設けてスルーホール付き銅張積層板を形成する工程、(2)前記スルーホール付き銅張積層板の表面に銅めっき層を付与して、前記スルーホールの側壁に銅めっき層を設けて前記スルーホール付き銅張積層板の両面を導通する導通スルーホールを備える導通スルーホール付き銅張積層板を形成する工程、(3)前記導通スルーホール内に充填材を充填して非貫通導通スルーホールを形成する工程、(4)前記非貫通導通スルーホール内の充填材表層にレーザービームを照射して前記表層の一部を除去することにより
、非貫通導通スルーホール付き銅張積層板の前記非貫通導通スルーホール表面を凹形状部とする工程、(5)前記非貫通導通スルーホール表面を凹形状部とされた銅張積層板の両面に銅めっき層を付与して、前記凹形状部を平坦にする工程の以上(1)〜(5)の工程を順に含むことを特徴とする回路基板の製造方法である。
【0014】
本発明の第2の発明は、スルーホール
内に備えられる充填層の直上面に設けられる導通層が、そのスルーホール外周に備わる導通層の厚みより大きな厚みを有
し、
前記充填層の直上面に設けられる導通層が、一層の銅めっき層を介して前記充填層の直下面に設けられる導通層と導通することを特徴とする回路基板である。
【0015】
本発明の第3の発明は、第1の発明に記載の回路基板の製造方法により形成され
たスルーホール
内に備えられる充填層の直上面に設けられる導通層が、前記スルーホール
の外周に備わる導通層の厚みより大きな厚みを有
し、且つ前記充填層の直上面に設けられる導通層が、一層の銅めっき層を介して前記充填層の直下面に設けられる導通層と導通することを特徴とする回路基板である。
【発明の効果】
【0016】
本発明の回路基板の製造方法によれば、穴上以外の部分の導通層厚を厚くすること無く、穴上の導通層のみを厚くすることができ、穴上以外の銅めっき層を厚くすることなく、穴上の導通層のみが厚い構造を持った回路基板を容易に提供できる。
さらに、レーザービームよる充填材の除去深さを深くする事により、表面の導通層厚を変えることなく、穴上の導通層厚を25μm以上の厚みにすることが可能である。
従って、ワイヤーボンド剥がれの防止と高密度回路形成を同時に図ることが可能である、工業上顕著な効果を奏するものである。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の実施形態を説明する断面模式図による製造フロー図である。
【
図2】従来の配線基板の断面模式図による製造フロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について図及び具体的寸法を参照して説明する。
図1は、本発明に係る回路基板の製造方法を示す断面模式図による製造フロー図である。
図1Aは銅張積層板、
図1Bはスルーホール付き銅張積層板の断面図、
図1Cは銅めっきにより表裏導通した銅張積層板の断面図、
図1Dは充填材により非貫通導通スルーホールを形成した状態の銅張積層板の断面図、
図1Eは非貫通導通スルーホール表層の充填材をレーザービーム21で除去する際の断面図、
図1Fは、凹形状充填材部5aを設けた銅張積層板、
図1Gは非貫通導通スルーホール上を含む表裏面に銅めっき層を設けた銅張積層板の断面図、
図1Hは作製した本発明に係る回路基板の断面図である。
図1において、1は基材、2は銅箔、3はスルーホール、3aは貫通導通スルーホール、4、6は銅めっき層、5は充填材、5aは凹形状充填材部、6aはスルーホール直上の銅めっき層(スルーホール直上部の導通層でもある)、6bはスルーホール外周部の銅めっき層、10は銅張積層板、11は貫通スルーホール付き銅張積層板、21はレーザービームである。
【0019】
まず、従来と同様、
図1Aに示す様に、基材1に銅箔2を張り付けた銅張積層板10を使用する。
ここで、より詳細に説明するために、具体的な材料の寸法、例えば基材1、銅箔2、銅めっきなどの厚みを交えて以下に述べる。
先ず、厚み0.2mmの基材1に厚み12μmの銅箔を張り付けた銅張積層板10を使用した。
【0020】
次に
図1B示す様に、銅張積層板に穴を開けスルーホール3を形成して、貫通スルーホール付き銅張積層板11を作製する。
この穴開け加工方法は、特に限定されないが、NCドリリングマシンなどを用いて行われる。また、穴の形状は丸穴に限らず、楕円穴、四角穴、異形穴など、目的に合わせて選択すればよい。
【0021】
次に
図1Cに示す様に、穴開け加工を実施して作製した貫通スルーホール付き銅張積層板11の全面または必要な箇所に、銅めっきを実施して銅めっき層4を設け、
図1Bのスルーホール3に表裏導通を付与した貫通導通スルーホール3aを形成する。
【0022】
次に
図1Dに示す様に、
図1Cの貫通導通スルーホール3aを充填材5により完全に充填して非貫通導通スルーホール3bを形成して非貫通導通スルーホール付き銅張積層板12を作製する。
この充填作業は、下記の条件を満たす樹脂を充填材に用い、印刷法、ローラー法、カーテンコーター法、ディップ法など、各種工法で行う事が可能である。
充填材は充填作業時には粘性を持ち、熱、UV、光等により硬化する性質を備えていればよく、樹脂の種類に制約は無く、エポキシ系、メラニン系、アクリル系等が選択可能であるが、高耐熱性、高剛性を持つ樹脂がより望ましい。
なお、非貫通導通スルーホール3bから、はみ出した充填材5は、研磨して銅めっき4と同一な平坦面にする。
【0023】
その後、導通層厚を薄くするため、銅めっき層4にハーフエッチング処理を行い、ハーフエッチングにより突起となった充填材は、物理研磨により除去する。
【0024】
次に
図1E、
図1Fに示す様に、充填材5の表面にレーザービーム21を照射して(
図1E)充填材5の表層の一部を除去して凹形状充填材部5aを形成(
図1F)する。
使用するレーザービームは、充填材は除去可能だが銅めっき部には影響を与えにくい性質をもつものが望ましく、一例としては波長9.2μmの炭酸ガスレーザーがある。
充填材除去深さは、実装強度等の必要に応じて任意に調整可能であるが、銅めっき層6で平坦化が可能な深さである必要がある(
図1G参照。)。また、レーザービーム21により除去された充填材5の表面は、銅めっき層6で平坦化が可能であれば凹凸があっても良い。具体的には、40μm程度の深さである。
【0025】
次に
図1Gに示した様に、全面または必要な箇所に銅めっきを実施して銅めっき層6を設ける。
銅めっき層6は、レーザービームにより除去された凹形状充填材部5aの凹みを、銅めっきにより平坦にできる性質を持つものを用いる。
その銅めっき層6の厚みは、レーザービーム21により除去された充填材5の凹部を平坦に出来る厚みが必要になる。具体的には25μm程度である。
【0026】
次に
図1Hに示す様に、「穴あけ」、「レーザービーム」、「銅めっき加工等」が実施された非貫通導通スルーホール付き銅張積層板12の銅箔2、銅めっき層4、6の不要な箇所を、露光、エッチングにより除去してスルーホール直上の導通層である銅めっき層6aがスルーホール外周の導通層(スルーホール外周部の銅めっき層6b、銅めっき層4及び銅箔2を加えた厚みを有する。)より厚い構造の回路基板20を作製する。
なお、外層である銅めっき6a、6bの表面には、必要に応じてレジスト膜を必要な箇所に被覆する事が可能であり、必要に応じて金、銀、ニッケル等の他の金属めっきを設けても良い。
【実施例】
【0027】
以下、実施例を用いて本発明をより詳細に説明する。
図1の本発明の製造方法、及び
図2に示す従来の製造方法を用いて、同じスルーホール直上の導通層の厚みを持つ配線回路を作製して、スルーホール直上の導通層の厚みとその外周の導通層の厚みの比較を行った。
【0028】
なお、実施例1は、工程(3)における「ハーフエッチングと物理研磨」により表層を25μm削除して配線回路表面の導通層の厚みが薄くなるようにした場合で、実施例2は5μm削除として、配線回路表面の導通層の厚みを実施例1より必要とする場合である。
その結果を、表1に示す。なお、配線基板の作製における個々の要素技術(エッチング、銅めっき、物理研磨)は、表2の条件で行った。
【0029】
【表1】
【0030】
【表2】
【0031】
表1、2から明らかなように、本発明の製造方法による回路基板は、スルーホール直上の導通層の厚みを回路基板表面の導通層の厚みより厚くすることができ、スルーホール直上の導通層にワイヤボンディングした際に、その接続部の剥がれ不具合を大きく減少させる。
【符号の説明】
【0032】
1 基材
2 銅箔
3 スルーホール
3a 貫通導通スルーホール
3b 非貫通導通スルーホール
4 銅めっき層
5 充填材
5a 凹形状充填材部
6 銅めっき層
6a 銅めっき層(スルーホール直上部)
6b 銅めっき層(スルーホール外周部)
10 銅張積層板
11 貫通スルーホール付き銅張積層板
12 非貫通導通スルーホール付き銅張積層板
20 回路基板
21 レーザービーム