(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記制御部は、前記一酸化炭素濃度センサにより検出される一酸化炭素濃度、一酸化炭素の投与時間及び一酸化炭素投与前に測定された生体情報に基づいて、投与される一酸化炭素濃度に対応した生体情報を予め推定し、この推定した生体情報と、前記生体情報取得センサからの生体情報との比較結果を用いて、警報及び前記患者への一酸化炭素投与を遮断する、
請求項1に記載の一酸化炭素投与システム。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0014】
まず、本実施の形態に係る一酸化炭素投与システムの構成について説明する。
【0015】
<一酸化炭素投与システムの構成>
図1は、本発明の一実施の形態に係る一酸化炭素投与システム10の構成を示す図である。
【0016】
患者に一酸化窒素を含む気体を吸入することにより肺高血圧緊急症を治療する従来の気体吸入療法では発ガン性が疑われる一酸化窒素を含んだ気体を使用していたが、本実施の形態の一酸化炭素投与システム10では、一酸化窒素に替えて、発ガン性の可能性を排除できる一酸化炭素を含んだ気体を使用する。
【0017】
一酸化炭素投与システム10は、酸素を出力する酸素供給部20と、一酸化炭素を出力する一酸化炭素供給部30と、一酸化炭素濃度センサ43を含むとともに、患者に投与する一酸化炭素を含む混合気を患者側に出力する一酸化炭素投与ユニット(以下、「投与ユニット」という)40と、患者接続部50と、投与ユニット40の動作を制御する制御ユニット60と、患者センサ(生体情報取得センサ)70と、環境一酸化炭素濃度センサ80とを備える。
【0018】
酸素供給部20は、混合部41に酸素を供給するものであり、ここでは、酸素発生源として酸素濃縮器を用いている。なお、酸素供給部20は、酸素ボンベなどを用いても良い。酸素供給部20は、酸素流量及び酸素濃度を検出する酸素センサ22を有し、混合部41に供給する酸素の情報、例えば、酸素流量、酸素濃度のパラメータを、酸素濃縮器IF信号としてコントローラ62に出力する。
【0019】
一酸化炭素供給部30は、混合部41に一酸化炭素を供給するものである。一酸化炭素供給部30は、例えば、一酸化炭素、または一酸化炭素混合のガスボンベ等を適用しても良い。一酸化炭素供給部30は、一酸化炭素が混合された混合ガス(便宜上、「一酸化炭素ガス」という)を混合部41に供給する。なお、一酸化炭素を含む混合ガスとしては、例えば、酸素、窒素、二酸化炭素等を混合したガス等としてもよい。一酸化炭素供給部30が出力する一酸化炭素ガス中の一酸化炭素の濃度は、例えば、500ppmとする。
【0020】
投与ユニット40は、酸素供給部20からの酸素と、一酸化炭素供給部30からの一酸化炭素を含む一酸化炭素ガスとを混合して、一酸化炭素濃度を調節して患者接続部50に混合気として出力する。
【0021】
投与ユニット40は、混合部41と、流量調整・遮断部42とを有し、更に、一酸化炭素濃度センサ43と、酸素濃度センサ44と、流量センサ45とを備える。
【0022】
混合部41は、二つの気体を混合して患者側に出力する。ここでは、混合部41は、酸素供給部20からの酸素と、一酸化炭素供給部30からの一酸化炭素ガス(一酸化炭素を含む混合ガス)と、を混合する。
【0023】
流量調整・遮断部42は、コントローラ62の指示により、一酸化炭素供給部30からの一酸化炭素ガスの流量の調整、遮断を行う。流量調整・遮断部42は、例えば、流量調整・遮断部42は、患者に投与する混合気の一酸化炭素の濃度を、0〜100ppmの範囲で濃度調整できるように流量調整したり、遮断したりする。なお、患者に投与する混合気中の一酸化炭素濃度は、50〜100ppmとするのが治療として適当とされている。例えば、特許文献1では、患者に投与する混合気の一酸化炭素の濃度は、0〜300ppmの範囲で調整できるようにしており、患者に投与する一酸化炭素の濃度は40〜100ppmとしている。また、流量調整・遮断部42は、コントローラ62からの指示により一酸化炭素の投与時間(例えば12時間)後に、一酸化炭素を遮断する。
【0024】
一酸化炭素濃度センサ43は、患者に投与する混合気中の一酸化炭素濃度を検出して、その検出データをコントローラ62に出力する。コントローラ62は、一酸化炭素濃度センサ43からの検出データを、設定された濃度と比較して、流量調整・遮断部42にフィードバックして、一酸化炭素濃度を調整する。
【0025】
この一酸化炭素濃度センサ43は、患者に供給する混合気の呼吸側の一酸化炭素濃度、つまり、患者に投与される直前の一酸化炭素濃度を検出する。
【0026】
酸素濃度センサ44は、患者に投与する混合気に含まれる酸素濃度を検出してコントローラ62に出力する。なお、この酸素濃度センサ44は、酸素供給部20の酸素センサ22で代用可能である。ここでは、酸素濃度センサ44が、患者に投与される直前の位置に設けられることで、患者に投与される酸素濃度を、より正確に測定して患者の安全を確保している。
【0027】
流量センサ45は、患者に投与する混合気の流量を検出してコントローラ62に出力する。一酸化炭素濃度センサ43、酸素濃度センサ44、および流量センサ45から検出された値から、患者への一酸化炭素および酸素の投与量を求めることができる。なお、一酸化炭素供給部30からの流量が十分に少ない場合、流量センサ45は酸素供給部20の酸素センサ22で代用可能である。これは、一酸化炭素供給部30からの流量が非常に少ないことにより、酸素センサ22から得られる酸素流量が、患者に投与される混合気の流量とほぼ同じであると見なせる為である。
【0028】
患者接続部50は、投与ユニット40から患者に出力される吸気回路の末端に設けられ、マスク、カニューラ等を有する。なお、吸気回路とは、酸素供給部20、一酸化炭素供給部30から患者まで混合気を運ぶ経路である。この患者接続部50は、マスク、カニューラ等を介して投与ユニット40は患者に接続される。
【0029】
患者センサ70(生体情報取得センサ)は、患者の状態(生体情報)を検出し、その検出データをコントローラ62に出力する。
【0030】
患者センサ70は、例えば、非侵襲の動脈血酸素飽和度(SPO
2)、一酸化炭素ヘモグロビン濃度(SPCO)等を取得するセンサである。ここでは、患者センサ70としてSPO
2を取得する非侵襲のSPO
2センサを用いており、患者センサ70は、取得したSPO
2とSPO
2の初期計測値からの差を用いて体内の一酸化炭素の濃度を算出できる。
【0031】
環境一酸化炭素濃度センサ80は、患者環境内、例えば、患者の居る室(例えば、病室内、施術室、寝室など)内の空気中の一酸化炭素濃度を検出するセンサであり、検出結果は、コントローラ62に出力される。例えば、環境一酸化炭素濃度センサ80は、患者の居る部屋の天井に設置され、有線或いは無線でコントローラ62に接続されている。
【0032】
コントローラ62は、一酸化炭素投与システム10の各構成要素を制御する。
【0033】
このコントローラ62は、CPU(Central Processing Unit)621、RAM(Random Access Memory)622、ROM(Read Only Memory)623、WORKRAM624等を備えている。CPU621は、処理内容に応じたプログラムをROM623から読み出してRAM622に展開し、展開したプログラムと協働し、WORKRAM624から読み出したデータを用いて、投与ユニット40の各構成要素(ブロック)の動作を制御する。なお、コントローラ62は、リアルタイムクロック等を用いたタイマ機能を有する。
【0034】
具体的に説明すると、コントローラ62には、酸素供給部20の酸素センサ22、一酸化炭素濃度センサ43、酸素濃度センサ44、流量センサ45、患者センサ70、環境一酸化炭素濃度センサ80からの検出信号が入力される。なお、これらの検出信号は、患者への一酸化炭素投与を開始した後は、所定タイミングでコントローラ62に入力される。また、コントローラ62には、設定パネル等を有する設定部66において、例えば、患者に処方された一酸化炭素濃度値の設定が行われた場合に、設定された一酸化炭素値が入力される。この設定部66を介した設定によって、コントローラ62に対して濃度の設定を行うことができる。また、コントローラ62は、設定部66を介して、患者への一酸化炭素の投与時間、非投与時間等の投与スケジュールが入力された場合、入力されたスケジュール情報をWORKRAM624に格納して、格納した情報を用いて一酸化炭素の投与時間、非投与時間の管理を行う。
【0035】
これらの入力に基づいて、コントローラ62は、流量調整・遮断部42、アラーム64を制御する。
【0036】
コントローラ62は、流量調整・遮断部42を介して、一酸化炭素供給部30からの一酸化炭素ガスの流量を調整し、混合気における一酸化炭素の濃度をコントローラ62が設定した濃度になるよう調整する。
【0037】
また、コントローラ62は、一酸化炭素濃度センサ43からの検出データ、患者センサ70からの検出データを単独及び組み合わせて、WORKRAM624のテーブルに格納された、投与する一酸化炭素濃度として予め設定された濃度から導き出される閾値と比較し、その結果を流量調整・遮断部42にフィードバックして制御する。このフィードバック制御によって、コントローラ62は、設定した濃度で患者に一酸化酸素が供給されるように一酸化炭素の流量を制御する。また、比較結果に応じて、コントローラ62は、警報を発生させたり、一酸化炭素の投与を遮断したりする。
【0038】
ここで、コントローラ62によって患者に一酸化炭素を投与する際において、流量調整・遮断部42、アラーム64を制御する際のパラメータとなる各センサによって検出される検出データについて説明する。
【0039】
図2は、コントローラ62に入力される一酸化炭素濃度センサ43により検出される値を示す図である。なお、患者に投与される一酸化炭素は、コントローラ62によって、一定時間t(例えば12時間)患者に投与した後で、一定時間t〜2t(例えば、12時間)、患者に投与しないように制御される。これらの一酸化炭素の投与時間及び非投与時間を横軸で示している。
【0040】
図2に示すように、一酸化炭素の投与中(「一酸化炭素投与時間」中)では、コントローラ62は、設定部66で入力された一酸化炭素濃度値(設定値D)に基づく調整範囲(調整領域)内で、流量調整・遮断部42を介して、患者に投与される一酸化炭素濃度(線L1で示す)の調整を行う。設定値D近傍の値を一酸化炭素濃度センサ43の不感領域としており、不感領域よりも絶対値が大きい領域を一酸化炭素濃度センサ43の調整領域として設定している。例えば、コントローラ62は、一酸化炭素濃度センサ43に対して、設定値Dを50ppmとした場合、50±5ppmを一酸化炭素濃度センサ43の不感領域として設定するともに、55〜60ppm、40〜45ppmを調整領域として設定する。
【0041】
この領域以上の領域を、警報が必要なアラーム領域とみなす。なお、一酸化炭素の投与時間の後(t〜2tまでの時間)は、一酸化炭素の非投与時間であり、検出される一酸化炭素濃度値は0になっている。
【0042】
図3は、患者センサ70により検出される生体情報である値(検出値)を有効曲線で示す図である。なお、横軸は、
図2と同様に、一酸化炭素の投与時間及び非投与時間を示している。
【0043】
図3の有効曲線L2は、コントローラ62によって、患者センサ70の初期計測値(初期値)、投与一酸化炭素濃度、一酸化炭素の投与時間に基づいて推定された患者のSPO
2値の変化を示す推定値である。この推定値は、一酸化炭素投与中に患者センサ70により検出されるであろう値である。
【0044】
図3に示すように、コントローラ62は、患者センサ(SPO
2センサ)70により検出される値については、警報が必要なアラーム領域を90%以下として閾値D2を設定し、算出された有効曲線の±2%を、有効に一酸化炭素が効果している範囲(一酸化炭素有効効果範囲)として設定としている。
【0045】
図3に示すように、一酸化炭素が好適に患者に投与されているとき(一酸化炭素の投与時間0〜t時間までの間)には、検出されるSPO
2は減少がみられる。また、一酸化炭素の投与が停止されているとき(一酸化炭素の非投与時間t〜2tの間、例えば、12時間後から24時間後までの間)には、上昇している。なお、警報が必要なアラーム領域は90%以下としたが、コントローラ62によって、有効曲線L2の推定値から、有効曲線L2の推定値との関連関数にして設定部66により設定される構成としても良い。その際、アラーム領域の閾値Dは、有効曲線L2が下がりこれに伴って一酸化炭素有効効果範囲が下がる場合でも、当該一酸化炭素有効効果範囲の下限値L22の底となるように設定される。例えば、検出されるSPO
2が一酸化炭素初期投与の初期段階では95%、有効曲線に従って94%、93%と下がっていく場合でも、90%を底の限界ライン(絶対的な警報値)として、90%を維持し、有効曲線がそれ以上に下がる場合でも、アラーム領域の閾値D2を下げないようにする。
【0046】
図4は、環境一酸化炭素濃度センサ80により検出される値を有効曲線で示す図である。なお、横軸は、
図2と同様に、一酸化炭素の投与時間及び非投与時間を示している。
【0047】
また、
図4に示す有効曲線L3は、コントローラ62によって、環境一酸化炭素濃度センサ80の初期計測値(初期値)F、投与一酸化炭素濃度、一酸化炭素の投与時間、患者の吸気回路における漏れ推定量に基づいて推定された、室内環境下の一酸化炭濃度の変化を示す推定値である。
【0048】
図4に示すように、コントローラ62は、環境一酸化炭素濃度センサ80に対して、閾値D3を設定して、この閾値D3以上の領域を、環境下において危険な一酸化炭素の濃度を警報するアラーム領域として設定する。この領域を超える場合に、コントローラ62は、流量調整・遮断部42及びアラーム64を制御して、警報と一酸化炭素の投与の遮断を行う。
【0049】
例えば、コントローラ62は、アラーム領域として所定の濃度が所定時間続いた場合に流量調整・遮断部42及びアラーム64を介して、警報及び一酸化炭素の遮断を行う。
【0050】
例えば、閾値D3を70ppmとし、アラーム領域の設定を濃度70ppm(1時間継続)以上とする。
【0051】
なお、環境一酸化炭素濃度は、例えば、患者の呼気回路からの漏れによって上昇する。また、アラーム領域は、コントローラ62より、漏れの予測値からアラーム領域を関連関数にして設定部66により設定される構成としても良い。
【0052】
アラーム64は、コントローラ62からの指示により動作して、患者、医者や看護師等の患者を監視する人、在宅においては患者の周囲の人や家族に対して一酸化炭素濃度の異常等を報知する。アラーム64としては、例えば、スピーカや、LED等のランプ等が用いられ、これらスピーカやランプの点灯、点滅などによって、一酸化炭素濃度異常等を警報する。また、アラーム64は、有線或いは無線によるリモートアラームを含む。
【0053】
設定部66は、患者に投与された一酸化炭素濃度値の設定を入力してコントローラ62に出力する。この設定部66は、例えば、設定パネルなどを備え、この設定パネルを介して、一酸化炭素濃度値の設定を行い、設定された値をコントローラ62に出力する。また、設定部66では、患者への一酸化炭素の投与時間、非投与時間等のスケジュールが入力できる。スケジュール情報と投与する一酸化炭素の濃度、アラームの閾値を関数にして設定できる。これらの設定は、コントローラ62に入力される。
【0054】
なお、一酸化炭素投与システム10における各構成要素の組み合わせとしては、投与ユニット40、制御ユニット60を一体にして、酸素供給部20に取り付ける構成としてもよい。この場合、酸素供給部20は酸素濃縮器であることが望ましい。また、一酸化炭素供給部30を投与ユニット40或いは制御ユニット60に一体的に設けてもよい。また、アラーム64等は別体としてコントローラ62に無線或いは有線で接続する構成として患者と離れた場所で警報するようにしてもよい。
【0055】
このように構成される一酸化炭素投与システム10の制御は、以下の3つのケースで制御される。
【0056】
<ケース1>
ケース1における一酸化炭素投与システム10の制御では、コントローラ62は、患者への一酸化炭素の投与中において、患者の吸気側に配置される一酸化炭素濃度センサ43を用いて、実際に患者に投与される一酸化炭素濃度を監視する。このケース1での制御は、一酸化炭素投与システム10において、環境一酸化炭素濃度センサ80を使用しない。
【0057】
コントローラ62は、一酸化炭素濃度センサ43及び患者センサ70のうち少なくとも一酸化炭素濃度センサ43を用いて、流量調整・遮断部42を制御することにより、患者に投与される混合気の一酸化炭素ガスの流量を調整するとともに、この一酸化炭素濃度を監視する。そして、監視する一酸化炭素濃度に基づいて、流量調整・遮断部42を制御して一酸化炭素の流量を調整することによって、患者に投与する一酸化炭素の濃度を調整したり、患者に投与される一酸化炭素を遮断したり、アラーム64を用いて、患者や医療従事者に警報を報知したりする。
【0058】
このケース1の制御について具体的に説明する。
【0059】
図5は、ケース1における一酸化炭素投与システム10の動作を示すフローチャートである。
【0060】
ステップS10では、設定部66に、投与一酸化炭素の濃度設定値と、一酸化炭素投与スケジュール(投与時間)とが入力されると、設定部66からの設定情報をコントローラ62は、WORKRAM624のテーブルに格納して、ステップS11に移行する。
【0061】
ステップS11では、コントローラ62は、患者センサ70を介して患者の生体情報の初期計測値、ここではSPO
2の初期計測値を計測して、WORKRAM624の初期計測値テーブルに格納して一酸化炭素投与中におけるSPO
2の有効投与曲線を発生させる。
【0062】
SPO
2の有効投与曲線は、実際に測定した生体情報(SPO
2)を、初期計測値テーブルの各初期計測値と比較して、対応するテーブルの初期計測値に対応付けられた有効投与曲線を読み出すことにより発生させることができる。また、SPO
2の有効投与曲線は、患者固有の情報(性別、身長体重等)およびあらかじめ定められた計算式や補正値等と、患者センサ70で計測した生体情報の初期計測値を用いることにより発生させることができる。コントローラ62はこの有効投与曲線に従ってSPO
2の値を監視し、一酸化炭素の投与を開始して、ステップS12に移行する。
【0063】
ステップS12では、コントローラ62は、一酸化炭素濃度センサ43により検出される一酸化炭素濃度の値と、調整領域の上限値とを比較して許容範囲にあるか否か判定する。具体的には、ステップS12では、コントローラ62は、一酸化炭素濃度センサ43により検出される一酸化炭素濃度の値が、一酸化炭素濃度センサ43での調整領域の上限値(例えば設定値50ppmで、調整領域50+10ppm)以上か否かを判定する。
【0064】
ステップS12において、検出した一酸化炭素濃度値が、
図2に示す調整領域の上限値を超えれば、ステップS13に移行し、不感領域の上限以下であれば、ステップS14に移行し、上側の調整領域内であれば、つまり、調整領域の上限値以下で、且つ、不感領域の上側の調整領域より大きい値であれば、ステップS15に移行する。
【0065】
ステップS13では、コントローラ62は、流量調整・遮断部42を介して一酸化炭素投与を遮断しつつ、アラーム64を介してアラームを発生(警報)して患者の周囲の人や患者等に報知して、ステップS17に移行する。ステップS17では、コントローラ62は、患者に酸素のみ投与する。
【0066】
ステップS14では、コントローラ62は、一酸化炭素濃度センサ43により検出される一酸化炭素濃度の値と、調整領域の下限値と比較して許容範囲にあるか否かを判定する。具体的には、ステップS14では、コントローラ62は、一酸化炭素濃度センサ43により検出される一酸化炭素濃度の値が、調整領域下限値(例えば、設定値D=50ppmで、調整領域50−10ppm)以下か否かを判定する。
【0067】
ステップS14において、検出した一酸化炭素濃度値が、
図2に示す不感領域の下側の調整領域内であればステップS15に移行し、調整領域の下限値以下、又は、不感領域内であれば、ステップS16に移行する。これら、ステップS12とステップS14の処理と、一酸化炭素濃度センサ43による検出値との関係を
図6に示す。コントローラ62は、
図6に示すように、ステップS12及びステップS14の処理において、一酸化炭素濃度センサ43により検出される一酸化炭素濃度の値を監視する。そして、この値が、一酸化炭素濃度センサ43における調整領域及び不感領域を用いて許容範囲にあるか、つまり異常濃度値であるか、初期設定流量調整を再調整するか、または、初期設定流量調整のまま続行するかを判定している。
【0068】
ステップS15では、コントローラ62は、一酸化炭素濃度センサ43の検出データに基づいて流量調整・遮断部42を制御して設定値に近づくよう(不感領域内に収まるよう)、一酸化炭素ガスの流量を再調整し、患者に投与される混合気中の一酸化炭素濃度を調整する。
【0069】
ステップS16では、コントローラ62は、患者センサ70により取得する生体情報(ここではSPO
2)が患者センサ70の有効曲線範囲(一酸化炭素有効効果範囲)の上限値以上かを判定する。ステップS16において、取得した生体情報が有効曲線範囲の上限値未満であれば、ステップS18に移行し、有効曲線範囲の上限値以上であれば、ステップS19に移行する。このステップS19への移行は、コントローラ62によって患者の体内に一酸化炭素が入っていないと判断している。
【0070】
ステップS18では、コントローラ62は、患者センサ70により取得する生体情報(ここではSPO
2)が患者センサ70の有効曲線範囲値の下限値以下かを判定する。
【0071】
ステップS18において取得した生体情報が、有効曲線範囲値の下限値より大きければ、ステップS21に移行し、有効曲線範囲値以下であれば、ステップS22に移行する。このステップS22への移行は、コントローラ62は、患者の体内に一酸化炭素が入りすぎている状態(投与されている一酸化炭素の濃度が異常濃度である状態)であると判断している。
【0072】
これらステップS16とステップS18では、具体的にコントローラ62は、SPO
2の値が有効に下がり(有効曲線範囲値内の数値を維持)、且つ、アラーム領域を超えないように監視する。
【0073】
ステップS19では、コントローラ62は、一酸化炭素濃度センサ43による一酸化炭素濃度が、一酸化炭素濃度センサ43の設定領域内か否かを判定し、設定領域内であればステップS15に移行し、範囲外(異常濃度)であれば、ステップS20に移行する。
【0074】
ステップS20では、コントローラ62は、流量調整・遮断部42を制御して一酸化炭素を遮断するとともに、アラーム64を制御して警報して、ステップS17に移行する。ステップS20における警報としては機器故障の旨を報知する。
【0075】
一方、ステップS21では、コントローラ62は、スケジューリングした時間、設定時間tが経過したか否かを判定し、経過していれば終了し、設定時間tが経過していなければ、ステップS23に移行する。
【0076】
ステップS22では、コントローラ62は、流量調整・遮断部42を制御して一酸化炭素を遮断するとともに、アラーム64を制御して警報してステップS17に移行し、酸素のみの投与を行う。このステップS22における警報としては患者状態の悪化の旨を報知する。
【0077】
ステップS23では、コントローラ62は、WORKRAM624に格納されたテーブルのうち、一酸化炭素濃度センサ43に対して設定された時間情報のテーブルを更新してステップS12に戻る。なお、ステップS23では、コントローラ62は、患者センサ70、環境一酸化炭素濃度センサ80の測定値と、初期計測値テーブルにある値と、現在の投与時間から各センサ70、80の有効曲線の内容を更新する。
【0078】
このケース1の制御によれば、一酸化炭素濃度センサ43を用いて混合気中の一酸化炭素濃度を測定し、流量調整・遮断部42を制御して、一酸化炭素ガスの流量を調整することにより患者に投与される混合気中の一酸化炭素の濃度を調整しているため、より安全に、且つ、正確に患者に一酸化炭素を投与できる。
【0079】
つまり、一酸化炭素濃度センサ43は患者の吸気時の一酸化濃度を検出するため、一酸化炭素濃度センサ43が異常濃度を検出した場合に一酸化炭素を遮断することによって、患者が異常濃度の一酸化炭素ガスを吸入する影響を最小限にすることが出来る。
【0080】
また、一酸化炭素濃度センサ43による検出値と、患者センサ70による検出値とを用いることによって、患者への吸気回路における一酸化炭素の漏れが検出可能である。
【0081】
すなわち、一酸化炭素濃度センサ43によって所定の一酸化炭素濃度値が検出されているにも関わらず、患者センサ70により測定される測定データに変化が見られない(SPO
2を検出する場合では、SPO
2値が有効曲線と異なり、下がらない)場合がある。
【0082】
この場合、一酸化炭素濃度センサ43よりも患者側の吸気回路に漏れがあると想定して、コントローラ62は、アラーム64を介して警報するとともに、流量調整・遮断部42を制御して混合部41への一酸化炭素ガスの投与を遮断する。
【0083】
これにより、患者に一酸化炭素を、患者の呼吸時に安全且つ好適に投与できるとともに、患者の周囲環境での一酸化炭素の漏れを防止して更に安全に治療を行うことができる。
【0084】
<ケース2>
ケース2における一酸化炭素投与システム10(
図1参照)の制御は、ケース1で使用した各構成要素に加えて、患者の周囲環境に配設された環境一酸化炭素濃度センサ80を用いて、患者の安全は勿論のこと、患者環境の安全を確保する。
【0085】
すなわち、ケース2では、コントローラ62は、一酸化炭素を患者に投与しているときに、ケース1における機能に加えて、環境一酸化炭素濃度センサ80により患者の周囲の一酸化炭素濃度を測定する機能を有する。また、環境一酸化炭素濃度センサ80が検出する一酸化炭素濃度の測定データに応じて、コントローラ62は、流量調整・遮断部42或いはアラーム64の制御を行う。
【0086】
コントローラ62は、
図4で示すように、環境一酸化炭素濃度センサ80に対して、アラーム領域(警報が必要な領域)を示す閾値D3を設定する。環境一酸化炭素濃度センサ80による検出値が閾値D3を超えるとアラーム領域の値であるとして、コントローラ62は、アラーム64を介して環境内における一酸化炭素の異常濃度の検出を警報する。加えて、流量調整・遮断部42を制御して、患者への一酸化炭素の投与を遮断する。これにより、患者及び周囲環境に居る人々が異常濃度の一酸化炭素ガスを吸入することを最小限にできる。また、一酸化炭素濃度の高い環境下での治療を防止できる。なお、ここでは、コントローラ62は、環境一酸化炭素センサ80に対するアラーム領域を示す閾値D3のみとして設定しているが、段階的に大きくなる値を閾値として設定すれば、閾値に応じた段階的な警報を行うことができる。
【0087】
これにより、患者の吸気回路において一酸化炭素が漏れている場合でも、環境一酸化炭素濃度センサ80によって患者環境(患者の居る部屋等)内での一酸化炭素濃度を確実に検出することができる。
【0088】
このような一酸化炭素投与システム10におけるケース2の動作を、
図5のケース1における一酸化炭素投与システム10の動作を示すフローチャートを参照して説明する。
【0089】
ケース2では、ケース1と同様に、まず、設定部66によって、流量調整・遮断部42への、患者に投与する一酸化炭素濃度の設定値等を設定(
図5のステップS10に相当)する。
【0090】
次いで、各センサの初期状態の計測処理及び投与開始処理(ステップS11に相当)で、患者センサ70による初期計測値の読み出し又は計測と、環境一酸化炭素濃度センサ80の初期計測値の読み出し又は計測とを行い、患者への一酸化炭素投与を開始する。ここでは、コントローラ62は、患者センサ70による初期計測値を用いた有効曲線(
図3参照)を算出するとともに、環境一酸化炭素濃度センサ80で用いられる有効曲線を算出する。つまり、コントローラ62は、一酸化炭素濃度の初期計測値と、投与一酸化炭素濃度と、一酸化炭素投与時間と、投与する一酸化炭素の漏れ推定量とによって、環境一酸化炭素濃度の変化を推定した有効曲線を算出する(
図4参照)。コントローラ62は、環境一酸化炭素濃度センサ80によって測定する。
【0091】
そして、ケース2の制御におけるコントローラ62は、患者に一酸化炭素を投与開始(ステップS11に相当)した後、ケース1の処理におけるステップS12、S14、S16、S18、S21、S23のうちいずれか2つの連続するステップ間において、環境一酸化炭素濃度センサ80を介して監視する環境一酸化炭素濃度の判定を行う。なお、この処理以外の処理は、ケース1と同様の処理を順次行うため説明は省略する。
【0092】
この環境一酸化炭素濃度の判定では、コントローラ62は、環境一酸化炭素濃度センサ80を介して検出される環境一酸化炭素濃度が、
図4に示すアラーム領域を規定する閾値D3以上であるか否かを判定する。
【0093】
環境一酸化炭素濃度の判定において、検出される環境一酸化炭素濃度がD3より小さければ、コントローラ62は、次のステップに移行して、ケース1と同様のステップの処理を順次行う。
【0094】
一方、環境一酸化炭素濃度の判定において、環境一酸化炭素濃度がD3以上であれば、環境一酸化炭素濃度が異常濃度であるとして、コントローラ62は、アラーム64及び流量調整・遮断部42を介して、患者の吸気回路の漏れを警報するとともに一酸化炭素投与の遮断を行う。
【0095】
なお、この一酸化炭素投与システム10において、以下のパターンにおいて、吸気回路の途中で一酸化炭素が漏れていると考えられる。
1)流量調整・遮断部42により設定濃度となるように一酸化炭素の流量が調整され、酸素センサ22からも酸素流量の情報が出力されている一方で、一酸化炭素濃度センサ43で一酸化炭素を検出できないパターン
2)一酸化炭素濃度センサ43が、患者に投与中の一酸化炭素濃度を検出しているが、患者センサ70により取得される生体情報が変化しないパターン
【0096】
このように一酸化炭素が患者の周囲環境に排出されるパターンは、上述したように、一酸化炭素濃度センサ43までの吸気回路での漏れパターンと、一酸化炭素濃度センサ43から患者側の吸気回路(マスクやカニューラなど)から一酸化炭素が異常に漏れている(通常使用のときよりも多く漏れている)漏れパターンとがあげられる。
【0097】
これらのパターンにおいて、コントローラ62が、環境一酸化炭素濃度センサ80を介して環境下における一酸化炭素濃度の上昇を測定できれば、一酸化炭素の漏れがあることを確実に認識できる。また、コントローラ62は、一酸化炭素濃度センサ43及び患者センサ70による検出値が調整範囲内であり、且つ、流量調整・遮断部42による一酸化炭素の流量を好適に調整している状態で、環境一酸化炭素濃度センサ80により一酸化炭素濃度の上昇を検出した場合、他の原因により一酸化炭素が漏洩したり発生したりしていることを想定できる。
【0098】
このようにケース2の制御により一酸化炭素投与システム10は、患者の居る室内の環境悪化、その兆候、或いは、機器の故障等を測定でき、治療に適した環境を提供して、一酸化炭素を患者に安全に且つ、好適に投与できる。
【0099】
なお、コントローラ62は、一酸化炭素濃度センサ43からの一酸化炭素濃度と、患者センサ70からの患者の生体情報とから、患者の環境周囲への一酸化炭素漏れを判定できる。この判定と、環境一酸化炭素濃度の判定とを用いてより正確な患者環境を測定できる。
【0100】
<ケース3>
このケース3における一酸化炭素投与システム10の制御は、ケース2(ケース1でもよい)と同様の各構成要素を用いる。
【0101】
ケース3における一酸化炭素投与システム10は、ケース2で使用した各構成要素による一酸化炭素投与の処理を、設定されるスケジュール情報に基づいて行う。
【0102】
スケジュール情報は、患者への一酸化炭素の投与時間、非投与時間等の投与スケジュールである。この投与スケジュールは、設定部66を介してコントローラ62に入力される。なお、コントローラ62では、スケジュール情報と、投与する一酸化炭素濃度と、アラームの閾値との関数にすることもできる。
【0103】
コントローラ62では、入力されたスケジュール情報をWORKRAM624に格納し、このスケジュール情報に基づいて一酸化炭素投与時間、非投与時間の時間管理を行う。つまり、コントローラ62によって、流量調整・遮断部42は、一酸化炭素投与時間後に一酸化炭素ガスを所定時間(
図2〜
図4のt〜2tの「一酸化炭素非投与時間」参照)遮断する。
【0104】
図7に示すように、ケース3におけるコントローラ62は、まずステップS31で、設定部66を介して、一酸化炭素投与時間及び非投与時間を含む投与スケジュールを設定し、投与する際の一酸化炭素濃度を設定する。なお、ステップS31は、
図5で示すステップS10の処理において設定されるスケジュールに加えて、一酸化炭素投与時間後に非投与時間を所定時間設定することと同様の処理である。
【0105】
ステップS32では、各センサの初期状態を計測(各センサの初期状態の計測処理)してステップS33に移行する。
【0106】
ステップS32では、コントローラ62は、患者センサ70を介して患者の生体情報の初期計測値、ここではSPO
2の初期値を計測して、WORKRAM624の初期計測値テーブルに格納して一酸化炭素投与中におけるSPO
2の有効投与曲線を発生させる。また、環境一酸化炭素濃度センサ80の初期値を計測して、一酸化炭素濃度の初期計測値と、投与一酸化炭素濃度と、一酸化炭素投与時間と、投与する一酸化炭素の漏れ推定量とによって、環境一酸化炭素濃度の変化を推定した有効曲線を算出する(
図4参照)。なお、この環境一酸化炭素濃度センサ80による初期計測値の検出によって、患者の居る周囲の一酸化炭素濃度の状態を測定できる。異常濃度であれば、コントローラ62は、アラーム64、流量調整・遮断部42を介して警報、一酸化炭素ガスを遮断し、一酸化炭素投与を中止する。
【0107】
ステップS33では、コントローラ62は、投与スケジュールに基づいて、設定された一酸化炭素投与時間(例えば、12時間)内において、ケース2と同様の制御で、各構成要素を制御して、患者に一酸化炭素を投与する。
【0108】
ステップS34では、投与スケジュールに基づいて、所定時間(例えば12時間)の後で、一酸化炭素を非投与して、一酸化炭素非投与時間処理を行う。
【0109】
具体的に、一酸化炭素非投与時間処理では、コントローラ62は、流量調整・遮断部42を制御して、一酸化炭素ガスを遮断しつつ、一酸化炭素濃度センサ43、患者センサ70、環境一酸化炭素濃度センサ80により検出される値に基づいて、警報する。
【0110】
一酸化炭素非投与時間中では、酸素供給部20の酸素のみが混合部41、一酸化炭素濃度センサ43、酸素濃度センサ44、流量センサ45を通り、患者接続部50を介して患者に供給される。
【0111】
この一酸化炭素非投与時間中では、コントローラ62は、一酸化炭素投与時間が経過した後も、環境一酸化炭素濃度測定を行う。
【0112】
環境一酸化炭素濃度測定では、コントローラ62は、環境一酸化炭素濃度センサ80を介して、環境一酸化炭素濃度が、環境一酸化炭素濃度センサ80の有効範囲値以上(アラーム領域にある値)であるか判定する。環境一酸化炭素濃度が有効範囲値以上である場合、つまり、環境一酸化炭素濃度がアラーム領域を超える場合、コントローラ62は、室内環境悪化、機器故障を警報する。また、一酸化炭素の遮断状態の確認を警報してもよい。
【0113】
有効範囲より小さい場合、コントローラ62は、一酸化炭素濃度センサ43を介して、一酸化炭素濃度が0であるかを判定する。一酸化炭素濃度が0でなければ、コントローラ62は、警報する。この場合、流量調整・遮断部42によって、流量が遮断されているにもかかわらず、一酸化炭素濃度センサが0にならなければ機器故障と診断できる。
【0114】
一酸化炭素濃度が0であれば、コントローラ62は、生体情報測定を行う。
【0115】
生体情報測定では、コントローラ62は、患者センサ70を介して、取得した生体情報(ここではSPO
2)が有効曲線範囲値以下かを判定する。有効曲線範囲値以下であれば、一酸化炭素濃度が存在する可能性があるため、コントローラ62は警報する。
【0116】
ケース3では、コントローラ62は、設定部66を介して設定された投与スケジュール(ここでは、非投与時間)が経過するまで、環境一酸化炭素濃度測定、一酸化炭素濃度0判定、生体情報測定を順に繰り返す。
【0117】
つまり、ケース3では、ケース1、2の制御において患者へ一酸化炭素を投与していた時間を投与時間(一酸化炭素投与時間)とし、この投与時間後の一定の時間を、患者への一酸化炭素濃度の投与を停止した非投与時間(一酸化炭素非投与時間)としている。これら一酸化炭素投与時間及び一酸化炭素非投与時間の各時間において、ケース3では、患者の状態の監視、患者環境の監視、患者吸気における一酸化炭素混入の有無の監視を行う。
【0118】
これにより、一酸化炭素を投与した後の患者が回復する時間であっても、完全に回復するまで、患者の状態の監視、患者環境の監視、患者吸気における一酸化炭素混入の有無の監視を行うことができる。