(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6112834
(24)【登録日】2017年3月24日
(45)【発行日】2017年4月12日
(54)【発明の名称】車両用変速装置
(51)【国際特許分類】
F16H 3/093 20060101AFI20170403BHJP
F16H 3/58 20060101ALI20170403BHJP
B60K 6/48 20071001ALI20170403BHJP
B60K 6/36 20071001ALI20170403BHJP
B60K 6/387 20071001ALI20170403BHJP
B60K 6/405 20071001ALI20170403BHJP
B60K 6/26 20071001ALI20170403BHJP
B60K 6/365 20071001ALI20170403BHJP
【FI】
F16H3/093ZHV
F16H3/58
B60K6/48
B60K6/36
B60K6/387
B60K6/405
B60K6/26
B60K6/365
【請求項の数】18
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-256055(P2012-256055)
(22)【出願日】2012年11月22日
(65)【公開番号】特開2014-1843(P2014-1843A)
(43)【公開日】2014年1月9日
【審査請求日】2015年9月3日
(31)【優先権主張番号】10-2012-0065142
(32)【優先日】2012年6月18日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】591251636
【氏名又は名称】現代自動車株式会社
【氏名又は名称原語表記】HYUNDAI MOTOR COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】110000051
【氏名又は名称】特許業務法人共生国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】李 承 鎬
(72)【発明者】
【氏名】朴 鍾 述
(72)【発明者】
【氏名】趙 炯 旭
【審査官】
高吉 統久
(56)【参考文献】
【文献】
独国特許出願公開第102010046766(DE,A1)
【文献】
特開2009−144904(JP,A)
【文献】
特開2011−089624(JP,A)
【文献】
特開2009−067092(JP,A)
【文献】
特開2002−204504(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 6/26
B60K 6/36
B60K 6/365
B60K 6/387
B60K 6/405
B60K 6/48
B60L 11/14
B60W 10/00−10/02
B60W 10/06−10/10
B60W 10/18
B60W 10/26−20/00
F16H 3/093
F16H 3/58
F16H 3/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータまたはゼネレータとして作動する電気補助駆動ユニット、
第1、第2、第3回転要素を有する遊星ギヤセットを含み、前記第1回転要素が前記電気補助駆動ユニットと連結され、前記第2回転要素がエンジンと連結され、前記第3回転要素が出力要素として作動するトルク変換手段、
前記第3回転要素と選択的に連結され、その外周面に第1、第2入力ギヤが固定的に配置される第1入力軸と、前記第1入力軸と回転干渉なしに同軸上に配置されており、その前端部が前記第2回転要素と選択的に連結され、その後端部外周面に第3、第4、第5、第6入力ギヤが固定的に配置される第2入力軸と、からなる入力手段、
前記トルク変換手段の動力を選択的に前記第2入力軸に伝達する第1クラッチと、前記トルク変換手段の動力を選択的に前記第1入力軸に伝達する第2クラッチと、からなる可変連結手段、
前記トルク変換手段の前記第1、第2、第3回転要素のうち2個の回転要素を選択的に連結して直結の状態になるようにする直結手段、および、
前記第1、第2入力軸と平行に配置される第1出力軸と前記第1出力軸上に配置された第1、第2シンクロナイザ機構とを含み前記第1、第2シンクロナイザ機構の選択的な作動により4個の速度を出力する第1変速出力機構と、前記第1、第2入力軸と平行に配置される第2出力軸と前記第2出力軸上に配置された第3、第4シンクロナイザ機構とを含み前記第3、第4シンクロナイザ機構の選択的な作動により他の4個の速度を出力する第2変速出力機構と、からなる変速出力手段、
を含むことを特徴とする車両用変速装置。
【請求項2】
前記第2入力軸と平行に配置される後進軸上に配置されて、前記第1、第2入力軸上のいずれか一つの入力ギヤと前記シンクロナイザ機構のうちのいずれか一つに構成された後進ギヤとの間に噛合するアイドルギヤからなる後進変速手段をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の車両用変速装置。
【請求項3】
前記電気補助駆動ユニットは、
前記トルク変換手段の前記第1回転要素と連結されるロータ、および
前記ロータを囲み変速機ハウジングに固定されるステータ、
を含むことを特徴とする請求項1に記載の車両用変速装置。
【請求項4】
前記トルク変換手段は、サンギヤからなる前記第1回転要素と、リングギヤからなる前記第2回転要素と、遊星キャリアからなる前記第3回転要素と、を保有するシングルピニオン遊星ギヤセットで構成されたことを特徴とする請求項1に記載の車両用変速装置。
【請求項5】
前記トルク変換手段は、サンギヤからなる前記第1回転要素と、遊星キャリアからなる前記第2回転要素と、リングギヤからなる前記第3回転要素とを保有するダブルピニオン遊星ギヤセットで構成されたことを特徴とする請求項1に記載の車両用変速装置。
【請求項6】
前記第1クラッチは、前記トルク変換手段の前記第2回転要素と前記入力手段の前記第2入力軸との間に配置され、前記第2クラッチは、前記トルク変換手段の前記第3回転要素と前記入力手段の前記第1入力軸との間に配置されたことを特徴とする請求項1に記載の車両用変速装置。
【請求項7】
前記直結手段は、第3クラッチであり、
前記第3クラッチは、エンジンの出力軸と第1回転要素との間に配置されることを特徴とする請求項1に記載の車両用変速装置。
【請求項8】
前記直結手段は、第3クラッチであり、
前記第3クラッチは、前記第1回転要素と前記第3回転要素との間に配置されたことを特徴とする請求項1に記載の車両用変速装置。
【請求項9】
前記直結手段は、第3クラッチであり、
前記第3クラッチは、前記第2回転要素と前記第3回転要素との間に配置されたことを特徴とする請求項1に記載の車両用変速装置。
【請求項10】
前記第1入力軸は、前記第1、第3シンクロナイザ機構により後進および偶数変速段を実現することができるように構成されたことを特徴とする請求項1に記載の車両用変速装置。
【請求項11】
前記第2入力軸は、前記第2、第4シンクロナイザ機構により奇数変速段を実現することができるように構成されたことを特徴とする請求項1に記載の車両用変速装置。
【請求項12】
前記第1入力軸上の前記第1、第2入力ギヤは、前側から後側へ前記第1入力ギヤおよび前記第2入力ギヤの順序に配置され、
前記第2入力軸上の前記第3、第4、第5、第6入力ギヤは、前側から後側へ前記第3入力ギヤ、前記第4入力ギヤ、前記第5入力ギヤおよび前記第6入力ギヤの順序に配置されたことを特徴とする請求項1に記載の車両用変速装置。
【請求項13】
前記第1、第2変速出力機構は、第1、第2、第3、第4、第5、第6、第7速ギヤおよび後進ギヤを含むことを特徴とする請求項1に記載の車両用変速装置。
【請求項14】
前記第1シンクロナイザ機構は、前記第1入力ギヤと噛合する前記第2速ギヤと、前記第2入力ギヤと噛合する前記第6速ギヤとを含むことを特徴とする請求項13に記載の車両用変速装置。
【請求項15】
前記第2シンクロナイザ機構は、前記第4入力ギヤと噛合する前記第1速ギヤと、第6入力ギヤと噛合する前記第3速ギヤとを含むことを特徴とする請求項13に記載の車両用変速装置。
【請求項16】
前記第3シンクロナイザ機構は、前記第1入力ギヤと噛合する前後進ギヤと、前記第2入力ギヤと噛合する前記第4速ギヤとを含むことを特徴とする請求項13に記載の車両用変速装置。
【請求項17】
前記第4シンクロナイザ機構は、前記第3入力ギヤと噛合する前記第5速ギヤと、前記第5入力ギヤと噛合する前記第7速ギヤとを含むことを特徴とする請求項13に記載の車両用変速装置。
【請求項18】
前記アイドルギヤは、前記第1入力ギヤと噛合する大径ギヤと、前記第3シンクロナイザ機構の前記後進ギヤと噛合する小径ギヤとからなることを特徴とする請求項2に記載の車両用変速装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用変速装置に係り、より詳しくは、ダブルクラッチ変速装置に電気補助駆動手段とトルク変換手段を追加してスムーズな発進および変速を実現し、燃費および加速性能を向上させることができる車両用変速装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両における環境配慮型技術は、未来の自動車産業の生存がかかった核心技術であって、自動車メーカーは環境および燃費規制を達成するための環境配慮型自動車の開発に総力を傾けている。
未来型自動車技術としては、電気エネルギーを利用する電気自動車(Electric Vehicle)、ハイブリッド電気自動車(Hybrid Electric Vehicle)、効率と利便性を向上させたダブルクラッチ変速機(Double Clutch Transmission:以下、DCTと略す)を例に挙げることができる。
【0003】
また、自動車メーカーでは、各国の排気ガス規制を満足させ、燃費性能の向上のために、動力伝達系統の効率の向上を図っており、動力伝達系統の効率の向上のために、アイドルストップISG(Idle Stop And Go:以下、ISGと略す)装置や、回生制動(Regenerative Braking)装置などの技術を実用化するために努力している。
ISG装置は、車両の停止時にはエンジンを停止させ、出発時にはエンジンを始動させる技術であり、回生制動装置は、車両の制動時、摩擦による制動の代わりに車両の運動エネルギーを利用する発電機を駆動させ、この時発生する電気エネルギーをバッテリに貯蔵して車両の駆動時に再使用する技術である。
【0004】
そして、ハイブリッド電気自動車は、2つ以上のエネルギー源(Power Source)を使用する自動車であって、2つ以上のエネルギー源は様々な方式で組合せられる。通常、ハイブリッド電気自動車は、化石燃料を使用するガソリンエンジンまたはディーゼルエンジンと、電気エネルギーによって駆動されるモータ/ゼネレータ(Motor/Generator:以下、MGと略すことがある)が混成(Hybrid)される。
また、ハイブリッド電気自動車に適用できる変速機として、DCT(ダブルクラッチ変速機)を一例として挙げることができる。DCTは、手動変速機構造に2つのクラッチを適用することで効率を高め、利便性を向上させる(特許文献1〜4参照)。
【0005】
つまり、DCTは、2つのクラッチを用いて奇数段および偶数段を交互に作動させて変速を行う変速機であって、奇数段および偶数段を交互に作動させるメカニズムは、既存の手動変速機(Manual Transmission:MTと略す)および自動化手動変速機(Automated Manual Transmission:AMTと略す)が有する変速時のトルク断絶感を改善することができる。
しかし、DCTは、発進時にクラッチスリップによるクラッチ焼損およびエネルギー損失が大きく、登坂発進時にクラッチスリップによる後方スライディングが過度に発生するという安全上の問題があり、クラッチ熱容量の問題から変速時間を短く制御しなければならないため、自動変速機に比べて変速衝撃が大きいという問題を抱えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−070188号公報
【特許文献2】特開2010−195378号公報
【特許文献3】特表2009−511328号公報
【特許文献4】特表2008−516827号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記の問題を解決するためになされたものであって、その目的とするところは、スムーズな発進および変速を実現し、燃費を向上させ、加速性能を向上できるようにした車両用変速装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するためになされた本発明の車両用変速装置は、モータまたはゼネレータとして作動する電気補助駆動ユニット、第1、第2、第3回転要素を有する遊星ギヤセットを含み、第1回転要素が電気補助駆動ユニットと連結され、第2回転要素がエンジンと連結され、第3回転要素が出力要素として作動するトルク変換手段、第3回転要素と選択的に連結され、その外周面に第1、第2入力ギヤが固定的に配置される第1入力軸と、第1入力軸と回転干渉なしに同軸上に配置されており、その前端部が第2回転要素と選択的に連結され、その後端部外周面に第3、第4、第5、第6入力ギヤが固定的に配置される第2入力軸と、からなる入力手段、トルク変換手段の動力を選択的に第2入力軸に伝達する第1クラッチと、トルク変換手段の動力を選択的に第1入力軸に伝達する第2クラッチと、からなる可変連結手段、トルク変換手段の第1、第2、第3回転要素のうち2個の回転要素を選択的に連結して直結の状態になるようにする直結手段、および、第1、第2入力軸と平行に配置される第1出力軸と第1出力軸上に配置された第1、第2シンクロナイザ機構とを含み第1、第2シンクロナイザ機構の選択的な作動により4個の速度を出力する第1変速出力機構と、第1、第2入力軸と平行に配置される第2出力軸と第2出力軸上に配置された第3、第4シンクロナイザ機構とを含み第3、第4シンクロナイザ機構の選択的な作動により他の4個の速度を出力する第2変速出力機構と、からなる変速出力手段、を含むことを特徴とする。
【0009】
変速装置は、第2入力軸と平行に配置される後進軸上に配置されて、第1、第2入力軸上のいずれか一つの入力ギヤとシンクロナイザ機構のうちのいずれか一つに構成された後進ギヤとの間に噛合するアイドルギヤからなる後進変速手段をさらに含むことを特徴とする。
電気補助駆動ユニットは、トルク変換手段の第1回転要素と連結されるロータ、および、ロータを囲み変速機ハウジングに固定されるステータ、を含むことを特徴とする。
【0010】
一つまたは複数の実施形態において、トルク変換手段は、サンギヤからなる第1回転要素と、リングギヤからなる第2回転要素と、遊星キャリアからなる第3回転要素とを保有するシングルピニオン遊星ギヤセットで構成されたことを特徴とする。
一つまたは複数の実施形態において、トルク変換手段は、サンギヤからなる第1回転要素と、遊星キャリアからなる第2回転要素と、リングギヤからなる第3回転要素とを保有するダブルピニオン遊星ギヤセットで構成されたことを特徴とする。
第1クラッチは、トルク変換手段の第2回転要素と入力手段の第2入力軸との間に配置され、第2クラッチは、トルク変換手段の第3回転要素と入力手段の第1入力軸との間に配置されたことを特徴とする。
一つまたは複数の実施形態において、前記直結手段は、第3クラッチであり、前記第3クラッチは、エンジンの出力軸と第1回転要素との間に配置されることを特徴とする
一つまたは複数の実施形態において、直結手段は、第3クラッチであり
、第3クラッチは、第1回転要素と第3回転要素との間に配置されたことを特徴とする。
一つまたは複数の実施形態において、第3クラッチは、第2回転要素と第3回転要素との間に配置されたことを特徴とする。
【0011】
第1入力軸は、第1、第3シンクロナイザ機構により後進および偶数変速段を実現することができるように構成されたことを特徴とする。
第2入力軸は、第2、第4シンクロナイザ機構により奇数変速段を実現することができるように構成されたことを特徴とする。
第1入力軸上の第1、第2入力ギヤは、前側から後側へ第1入力ギヤおよび第2入力ギヤの順序に配置され、第2入力軸上の第3、第4、第5、第6入力ギヤは、前側から後側へ第3入力ギヤ、第4入力ギヤ、第5入力ギヤおよび第6入力ギヤの順序に配置されることを特徴とする。
第1、第2変速出力機構は、第1、第2、第3、第4、第5、第6、第7速ギヤおよび後進ギヤを含むことを特徴とする。
【0012】
第1シンクロナイザ機構は、第1入力ギヤと噛合する第2速ギヤと、第2入力ギヤと噛合する第6速ギヤとを含むことを特徴とする。
第2シンクロナイザ機構は、第4入力ギヤと噛合する第1速ギヤと、第6入力ギヤと噛合する第3速ギヤとを含むことを特徴とする。
第3シンクロナイザ機構は、第1入力ギヤと噛合する後進ギヤと、第2入力ギヤと噛合する第4速ギヤとを含むことを特徴とする。
第4シンクロナイザ機構は、第3入力ギヤと噛合する第5速ギヤと、第5入力ギヤと噛合する第7速ギヤとを含むことを特徴とする。
アイドルギヤは、第1入力ギヤと噛合する大径ギヤと、第3シンクロナイザ機構の後進ギヤと噛合する小径ギヤとからなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の車両用変速装置によれば、ダブルクラッチ変速装置に電気補助駆動手段のモータ/ゼネレータとトルク変換手段の遊星ギヤセットを追加して発進と変速を行うことにより、スムーズな発進および変速を実現することができる。
そして、クラッチのスリップを最少化し、減速時に回生制動を行うことにより、燃費を向上させることができる。
また、加速時に電気補助駆動手段のモータ/ゼネレータのトルクの補助を行うことにより、加速性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の第1実施形態による車両用変速装置の構成図である。
【
図2】本発明の第1実施形態による車両用変速装置の変速作動表である。
【
図3】本発明の第2実施形態による車両用変速装置の構成図である。
【
図4】本発明の第3実施形態による車両用変速装置の構成図である。
【
図5】本発明の第4実施形態による車両用変速装置の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の好適な実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明の第1実施形態による車両用変速装置の構成図である。
図1に示したとおり、本発明の第1実施形態による変速装置は、電気補助駆動ユニット(Electric Supplementary Drive Unit2と、トルク変換手段PGと、入力手段8、10と、可変連結手段CL1、CL2と、直結手段CL3と、変速出力手段OUT1、OUT2と、後進変速手段IDと、を含んで構成される。
電気補助駆動ユニットは、一般電気自動車に使用されるモータ/ゼネレータ2であり、モータ/ゼネレータ2は、ロータ4とステータ6からなり、モータおよびゼネレータの機能を同時に行うことができる。
ロータ4は、トルク変換手段PGのいずれか1つの回転要素と連結され、ステータ6は、変速機ハウジングHに固定される。
【0016】
トルク変換手段は、遊星ギヤセットPGからなり、本発明の第1実施形態では、3個の回転要素を有するシングルピニオン遊星ギヤセットPGがトルク変換手段として用いられる。
3個の回転要素は、サンギヤSからなる第1回転要素N1と、リングギヤRからなる第2回転要素N2と、遊星キャリアPCからなる第3回転要素N3とを含んで構成される。
第1回転要素N1は、ロータ4と連結され、ロータ4の回転力を受けたり、ロータ4に回転力を伝達する。
第2回転要素N2は、動力源であるエンジンENGの出力軸OSに直接連結され、入力要素として作動する。
第3回転要素N3は、変速出力手段に動力を伝達する出力要素としてのみ作動する。
【0017】
入力手段は、第1入力軸8と第2入力軸10とを含んで構成される。
第1入力軸8は、中空軸からなっており、その前端部がトルク変換手段の第3回転要素N3と選択的に連結される。第2入力軸10は、第1入力軸8の内部に第1入力軸8と回転干渉なしに挿入されている。第2入力軸10の前端部は、トルク変換手段の第2回転要素N2と選択的に連結される。
第1入力軸8には、第1、第2入力ギヤG1、G2が互いに所定の間隔をおいて配置される。
第2入力軸10には、第3、第4、第5、第6入力ギヤG3、G4、G5、G6が相互所定の間隔をおいて配置される。第3、第4、第5、第6入力ギヤG3、G4、G5、G6は、第1入力軸8を貫通した第2入力軸10の後側部分に位置し、前側から後側へ第3、第4、第5、第6入力ギヤG3、G4、G5、G6の順に配置される。
【0018】
第1、第2、第3、第4、第5、第6入力ギヤG1、G2、G3、G4、G5、G6は、各変速段でそれぞれ作動する入力ギヤであって、第1入力ギヤG1は、第2速および後進で作動する入力ギヤであり、第2入力ギヤG2は、第4速および第6速で作動する入力ギヤであり、第3入力ギヤG3は、第5速で作動する入力ギヤであり、第4入力ギヤG4は、第1速で作動する入力ギヤであり、第5入力ギヤG5は、第7速で作動する入力ギヤであり、第6入力ギヤG6は、第3速で作動する入力ギヤである。
つまり、第1入力軸8には、偶数変速段のための入力ギヤが配置され、第2入力軸10には、奇数変速段のための入力ギヤが配置される。
可変連結手段は、第1クラッチCL1と、第2クラッチCL2とを含んで構成される。
【0019】
第1クラッチCL1は、第2入力軸10と第2回転要素N2との間に配置されて、トルク変換手段の動力を選択的に第2入力軸10に伝達する。
第2クラッチCL2は、第1入力軸8と第3回転要素N3との間に配置されてトルク変換手段の動力を選択的に第1入力軸8に伝達する。
直結手段は、第3クラッチCL3からなり、エンジンENGの出力軸OSと第1回転要素N1を選択的に連結する。
つまり、直結手段である第3クラッチCL3は、トルク変換手段の第1回転要素N1と第2回転要素N2を選択的に連結する。したがって、第3クラッチCL3が作動すれば第1、第2回転要素N1、N2が一体に回転して、遊星ギヤセットPGが直結の状態となる。
可変連結手段と直結手段を形成する第1、第2、第3クラッチCL1、CL2、CL3は通常の流体多板クラッチからなり、油圧制御システム(図示せず)によりその作動が制御される。
【0020】
各入力ギヤから動力を受けて変速を行い、変速された動力を出力する変速出力手段は、第1、第2入力軸8、10と一定の間隔をおいて平行に配置される第1、第2変速出力機構OUT1、OUT2を含んで構成される。
第1変速出力機構OUT1は、第1、第2入力軸8、10と一定の間隔をおいて平行に配置される第1出力軸12と、第2速ギヤD2および第6速ギヤD6を備え、第1出力軸12上に配置される第1シンクロナイザ機構SL1と、第1速ギヤD1および第3速ギヤD3を備え、第1出力軸12上に配置される第2シンクロナイザ機構SL2とを含んで構成される。
第1シンクロナイザ機構SL1を形成する第2速ギヤD2は第1入力ギヤG1と噛合し、第6速ギヤD6は第2入力ギヤG2と噛合する。
【0021】
第2シンクロナイザ機構SL2を形成する第1速ギヤD1は、第4入力ギヤG4と噛合し、第3速ギヤD3は、第6入力ギヤG6と噛合する。
そして、第1変速出力機構OUT1を介して変速された回転動力は、第1出力軸12の前端部または後端部に装着されている第1出力ギヤ(図示せず)を介して公知のデファレンシャル機構に伝達される。
第2変速出力機構OUT2は、第1、第2入力軸8、10と所定の間隔をおいて平行に配置される第2出力軸14と、後進ギヤRGおよび第4速ギヤD4を備え、第2出力軸14上に配置される第3シンクロナイザ機構SL3と、第5速ギヤD5および第7速ギヤD7を備え、第2出力軸14上に配置される第4シンクロナイザ機構SL4とを含んで構成される。
【0022】
第3シンクロナイザ機構SL3を形成する後進ギヤRGは、後進変速手段のアイドルギヤIDと噛合し、第4速ギヤD4は第2入力ギヤG2と噛合する。
第4シンクロナイザ機構SL4を形成する第5速ギヤD5は、第3入力ギヤG3と噛合し、第7速ギヤD7は第5入力ギヤG5と噛合する。
そして、第2変速出力機構OUT2を介して変速された回転動力は、第2出力軸14の前端部または後端部に装着されている第2出力ギヤ(図示せず)を介して公知のデファレンシャル機構に伝達される。
【0023】
後進変速手段は、アイドルギヤIDを含む。アイドルギヤIDは、後進軸16と、後進軸16上に配置される大径ギヤ18および小径ギヤ20とを含む。
後進軸16は、第1、第2出力軸12、14と平行に配置され、アイドルギヤIDの大径ギヤ18は第1入力ギヤG1と噛合し、小径ギヤ20は後進ギヤRGと噛合する。
これによって後進変速が行われると、第1入力ギヤG1の回転動力はアイドルギヤIDを介して後進ギヤRGに伝達され、変速された回転動力は第2出力軸14の第2出力ギヤを介して公知のデファレンシャル機構に伝達される。この過程で逆回転速度が出力される。
第1、第2、第3、第4シンクロナイザ機構SL1、SL2、SL3、SL4は、当業者によく知られているため、これに関する詳細な説明は省略する。また、第1、第2、第3、第4シンクロナイザ機構SL1、SL2、SL3、SL4にそれぞれ適用されるスリーブSLE1、SLE2、SLE3、SLE4は、当業者によく知られているように、別途のアクチュエータ(図示せず)により作動し、アクチュエータは、トランスミッション制御ユニットにより制御される。
【0024】
図2は、本発明の実施形態による変速装置の変速作動表である。
図2に示したとおり、第1クラッチCL1は、奇数変速段で作動し、第2クラッチCL2は、後進変速段(REV)と充電時、そして偶数変速段で作動し、第1、第2、第3、第4シンクロナイザ機構SL1、SL2、SL3、SL4の各スリーブSLE1、SLE2、SLE3、SLE4は、選択的に該当変速段のギヤD1、D2、D3、D4、D5、D6、D7、RGと作動的に連結され、変速が行われる。
【0025】
[中立]
中立(Neutral:Nと略すことがある)状態では、第1シンクロナイザ機構SL1のスリーブSLE1を介して第1出力軸12と第2速ギヤD2とを作動的に連結させるか、いかなるシンクロナイザ機構も作動させない。
中立(N)状態において、第1出力軸12と第2速ギヤD2とを作動的に連結させるのは、前進1速への変速をせずに、前進2速で発進が行われるようにするためである。
そして、中立(N)状態において、充電時には、第3クラッチCL3を作動させ、トルク変換手段が直結状態とする。この場合、エンジンの回転動力はロータ4に伝達され、効果的な充電が行われる。
【0026】
[後進]
後進(REVERSE:REVまたはRevと略すことがある)状態において、発進時には、第3シンクロナイザ機構SL3のスリーブSLE3を介して第2出力軸14と後進ギヤRGを作動的に連結し、第2クラッチCL2を作動させて発進制御を行う。その後、第3クラッチCL3の作動で後進(REV)への変速が完了する。
[前進1速]
前進状態(D range)において、発進時には、第1シンクロナイザ機構SL1のスリーブSLE1を介して第1出力軸12と第2速ギヤD2とを作動的に連結させ、第2クラッチCL2の作動で発進が行なわれる。
このような発進過程において、第2シンクロナイザ機構SL2のスリーブSLE2を介して第1出力軸12と第1速ギヤD1とを作動的に連結させた後、第1クラッチCL1を作動させると、前進1速への変速が完了する。
【0027】
[前進2速]
前進2速では、前進1速状態で作動していた第1クラッチCL1を解除し、第2シンクロナイザ機構SL2のスリーブSLE2を中立位置に移動するように制御した後、第3クラッチCL3を作動させると、前進2速への変速が完了する。
[前進3速]
前進3速では、前進2速状態で作動していた第3クラッチCL3を解除し、第2シンクロナイザ機構SL2のスリーブSLE2を介して第1出力軸12と第3速ギヤD3とを作動的に連結させた後、第1クラッチCL1を作動させると、前進3速への変速が完了する。
この時、第1シンクロナイザ機構SL1のスリーブSLE1を介して第1出力軸12と第2速ギヤD2とが作動的に連結されているが、変速には何ら影響を与えない。
【0028】
[前進4速]
前進4速では、前進3速状態で作動していた第1クラッチCL1を解除し、第1シンクロナイザ機構SL1のスリーブSLE1と第2シンクロナイザ機構SL2のスリーブSLE2とを中立位置に移動するように制御した後、第3シンクロナイザ機構SL3のスリーブSLE3を介して第2出力軸14と第4速ギヤD4とを作動的に連結し、第3クラッチCL3を作動させると、前進4速への変速が完了する。
[前進5速]
前進5速では、前進4速状態で作動していた第3クラッチCL3を解除し、第4シンクロナイザ機構SL4のスリーブSLE4を介して第2出力軸14と第5速ギヤD5とを作動的に連結させた後、第1クラッチCL1を作動させると、前進5速への変速が完了する。
この時、第3シンクロナイザ機構SL3のスリーブSLE3を介して第2出力軸14と第4速ギヤD4とが作動的に連結されているが、変速には何ら影響を与えない。
【0029】
[前進6速]
前進6速では、前進5速状態で作動していた第1クラッチCL1の作動を解除し、第3シンクロナイザ機構SL3のスリーブSLE3と第4シンクロナイザ機構SL4のスリーブSLE4とを中立位置に移動するように制御した後、第1シンクロナイザ機構SL1のスリーブSLE1を介して第1出力軸12と第6速ギヤD6とを作動的に連結し、第3クラッチCL3を作動させると、前進6速への変速が完了する。
[前進7速]
前進7速では、前進6速状態で作動していた第3クラッチCL3の作動を解除し、第4シンクロナイザ機構SL4のスリーブSLE4を介して第2出力軸14と第7速ギヤD7とを作動的に連結させた後、第1クラッチCL1を作動させると、前進7速への変速が完了する。
この時、第1シンクロナイザ機構SL1のスリーブSLE1を介して第1出力軸12と第6速ギヤD6とが作動的に連結されているが、変速には何ら影響を与えない。
【0030】
そして、第3クラッチCL3が作動しない状態で電気補助駆動ユニットであるモータ/ゼネレータ2が駆動すると、モータ/ゼネレータ2とエンジンENGの回転速度に応じて、トルク変換手段はトルクを変換させて出力する。
また、前進変速段および後進変速段で車両が走行する時、電気補助駆動ユニットのモータ/ゼネレータ2が作動すると、回生制動が可能になる。
【0031】
本発明の実施形態によれば、電気補助駆動手段であるモータ/ゼネレータとトルク変換手段である遊星ギヤセットを利用して発進と変速が行われるようにすることによって、スムーズな発進と変速を実現することができる。
そして、クラッチのスリップを最少化し、減速時に回生制動が行われることによって、燃費を向上させることができる。
また、加速時に電気補助駆動手段であるモータ/ゼネレータからトルク補助が行われることによって、加速性能を向上させることができる。
【0032】
図3は、本発明の第2実施形態による車両用変速装置の構成図である。
図3に示したとおり、本発明の第2実施形態による車両用変速装置では、トルク変換手段である遊星ギヤセットPGを直結させるための第3クラッチCL3を第1回転要素N1と第3回転要素N3との間に配置した。
したがって、本発明の第2実施形態は、第1実施形態と比較して、第3クラッチCL3の位置が異なるだけで、他の構成と作用効果は同一であるため、詳細な説明は省略する。
【0033】
図4は、本発明の第3実施形態による車両用変速装置の構成図である。
図4に示したとおり、本発明の第3実施形態による車両用変速装置では、トルク変換手段である遊星ギヤセットPGを直結させるための第3クラッチCL3を第2回転要素N2と第3回転要素N3との間に配置した。
したがって、本発明の第3実施形態は、第1実施形態と比較して、第3クラッチCL3の位置が異なるだけで、他の構成および作用効果は同一であるため、詳細な説明は省略する。
【0034】
図5は、本発明の第4実施形態による車両用変速装置の構成図である。
図5に示したとおり、本発明の第4実施形態による車両用変速装置では、トルク変換手段である遊星ギヤセットPGをダブルピニオン遊星ギヤセットで構成した。
これによって、サンギヤSが第1回転要素N1として設定され、遊星キャリアPCが第2回転要素N2として設定され、リングギヤRが第3回転要素N3として設定される。
【0035】
したがって、本発明の第4実施形態は、第1実施形態と比較して、トルク変換手段である遊星ギヤセットPGがダブルピニオン遊星ギヤセットである点が異なるだけで、他の構成および作用効果は同一であるため、詳細な説明は省略する。
【0036】
本発明の実施形態によると、電気補助駆動手段であるモータ/ゼネレータとトルク変換手段である遊星ギヤセットを利用して発進と変速が行われるようにすることによって、スムーズな発進と変速を実現することができる。
そして、クラッチのスリップを最少化し、減速に時回生制動が行われることによって、燃費を向上させることができる。
また、加速時に電気補助駆動手段であるモータ/ゼネレータからトルク補助が行われることによって、加速性能を向上させることができる。
【0037】
以上、本発明に関する好ましい実施例を説明したが、本発明の範囲は特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって解釈されなければならない。また、この技術分野で通常の知識を有する者なら、本発明の技術的範囲内で多くの修正と変形ができることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0038】
2…電気補助駆動ユニット、モータ/ゼネレータ(MG)
4…ロータ
6…ステータ
8…第1入力軸(入力手段)
10…第2入力軸(入力手段)
12…第1出力軸
14…第2出力軸
16…後進軸
18:大径ギヤ
20:小径ギヤ
CL…クラッチ
CL1,CL2:第1クラッチ、第2クラッチ(可変連結手段)
CL3:第3クラッチ(直結手段)
D:前進(Drive)
D1、D2、D3、D4、D5、D6、D7…第1、第2、第3、第4、第5、第6、第7速ギヤ
ENG:エンジン
G1、G2、G3、G4、G5、G6…第1、第2、第3、第4、第5、第6入力ギヤ
H:変速機ハウジング
ID…アイドルギヤ(後進変速手段)
N:中立(Neutral)
N1,N2,N3:第1、第2、第3回転要素
OS…(エンジンの)出力軸
OUT1,OUT2:第1、第2変速出力機構(変速出力手段)
PC:遊星キャリヤ(N3:第3回転要素:出力手段)
PG:(シングルピニオン)遊星ギヤセット(トルク変換手段)
R:リングギヤ(N2:第2回転要素:出力手段)
Rev,REV:後進(Reverse)
RG:後進ギヤ
S:サンギヤ(N1:第1回転要素)
SL1、SL2、SL3、SL4…第1、第2、第3、第4シンクロナイザ機構
SLE1、SLE2、SLE3、SLE4:第1、第2、第3、第4シンクロナイザ機構のスリーブ