特許第6112842号(P6112842)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6112842
(24)【登録日】2017年3月24日
(45)【発行日】2017年4月12日
(54)【発明の名称】管継手構造
(51)【国際特許分類】
   F16L 19/08 20060101AFI20170403BHJP
   F16J 15/10 20060101ALI20170403BHJP
【FI】
   F16L19/08
   F16J15/10 L
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-262698(P2012-262698)
(22)【出願日】2012年11月30日
(65)【公開番号】特開2014-109296(P2014-109296A)
(43)【公開日】2014年6月12日
【審査請求日】2015年11月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】390037774
【氏名又は名称】井上スダレ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080746
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 武嗣
(72)【発明者】
【氏名】井上 智史
【審査官】 青木 良憲
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−097563(JP,A)
【文献】 特開平10−185027(JP,A)
【文献】 特開平10−122460(JP,A)
【文献】 米国特許第5121949(US,A)
【文献】 実開昭59−136090(JP,U)
【文献】 特開平08−145251(JP,A)
【文献】 特開2014−111949(JP,A)
【文献】 特開2014−111975(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 19/08
F16J 15/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
雄ネジ付き継手本体(1)と、該継手本体(1)の雄ネジ(2)に螺着される袋ナット(3)と、を備え、樹脂管(4)を接続する管継手構造に於て、
上記継手本体(1)は、上記樹脂管(4)の端部(4A)に挿入される内挿筒部(5)を有し、該内挿筒部(5)の外周面に多重円環状の小突条(19)を有し、
上記袋ナット(3)の内部収納空間(10)に収納されると共に、外周面(8)に凹周溝(9)を有する円筒形状の圧縮変形用スリーブ(7)を備え、該圧縮変形用スリーブ(7)は、内周面が平滑円周面状に形成され、上記袋ナット(3)と上記継手本体(1)の雄ネジ(2)を螺着させる際に上記継手本体(1)と上記袋ナット(3)からアキシャル方向の圧縮力(F)を受けて、上記凹周溝(9)の幅寸法(W)を減少しつつ凹周溝底薄壁部(13)がラジアル内方向へ突出するように塑性変形して、上記内挿筒部(5)挿入されている上記樹脂管(4)の端部(4A)に、外周面(14)側から食い込んで抜止めすると共に、上記食い込みによって、上記樹脂管(4)の端部(4A)の内周面が、接続完了状態下で、上記内挿筒部(5)の外周面に圧接し、かつ、該内挿筒部(5)の外周面の上記小突条(19)が、上記樹脂管(4)の端部(4A)の内周面にラジアル内方から食い込むように構成されたことを特徴とする管継手構造。
【請求項2】
接続完了状態に於て、上記圧縮変形用スリーブ(7)の外端部(7A)にアキシャル方向の弾発力を付与する押しバネ(12)を、上記袋ナット(3)の上記内部収納空間(10)に有している請求項1記載の管継手構造。
【請求項3】
上記内挿筒部(5)は、外周面(11)にシール溝(22)を有し、該シール溝(22)に円環状シール材(23)を装着している請求項1又は2記載の管継手構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管継手構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、PE、PP又はPEX(架橋ポリエチレン)等から成る樹脂管を、C型締付リングを縮径させることによって締付けて接続する管継手が提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−168167号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の管継手は、C型締付リングにウォームホイールを一端に有する略接線方向のボルト部材とそれに螺合するナットとを設け、ウォームホイールに対して噛合するウォームを電動作業工具にて回転駆動させて、ナットとボルト部材と螺進して、締め付けることにより、締付リングを縮径させるように構成されていた。即ち、締め付け作業の際に、電動作業工具を必要とし、配管作業効率アップを阻害しているという欠点があった。また、部品点数が多く、複雑な形状の部品を必要とし、組立時に手間がかかるという欠点があった。
【0005】
そこで、本発明は、電動作業工具を使用しなければ締め付け作業を行えない為、配管作業効率アップを阻害している点、また、部品点数が多く、複雑な形状の部品を必要とし、組立時に手間がかかる等、上記の問題を回避するための管継手構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る管継手構造は、雄ネジ付き継手本体と、該継手本体の雄ネジに螺着される袋ナットと、を備え、樹脂管を接続する管継手構造に於て、上記継手本体は、上記樹脂管の端部に挿入される内挿筒部を有し、該内挿筒部の外周面に多重円環状の小突条を有し、 上記袋ナットの内部収納空間に収納されると共に、外周面に凹周溝を有する円筒形状の圧縮変形用スリーブを備え、該圧縮変形用スリーブは、内周面が平滑円周面状に形成され、上記袋ナットと上記継手本体の雄ネジを螺着させる際に上記継手本体と上記袋ナットからアキシャル方向の圧縮力を受けて、上記凹周溝の幅寸法を減少しつつ凹周溝底薄壁部がラジアル内方向へ突出するように塑性変形して、上記内挿筒部挿入されている上記樹脂管の端部に、外周面側から食い込んで抜止めすると共に、上記食い込みによって、上記樹脂管の端部の内周面が、接続完了状態下で、上記内挿筒部の外周面に圧接し、かつ、該内挿筒部の外周面の上記小突条が、上記樹脂管の端部の内周面にラジアル内方から食い込むように構成されたものである。
【0007】
また、接続完了状態に於て、上記圧縮変形用スリーブの外端部にアキシャル方向の弾発力を付与する押しバネを、上記袋ナットの上記内部収納空間に有しているものである。
また、上記内挿筒部は、外周面にシール溝を有し、該シール溝に円環状シール材を装着しているものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の管継手構造によれば、袋ナットを螺進するだけで、樹脂管の引抜けを強力に阻止でき、かつ、密封性を発揮する接続(配管)を迅速・容易に行い得る。電動作業工具を使用して締め付け作業を行う必要がなく、作業効率を向上できる。また、コンパクトで、かつ、部品点数が少なく、部品形状がシンプルであって、容易に組立てることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施の一形態のパイプ接続前の状態を示した断面正面図である。
図2】接続完了状態を示した断面正面図である。
図3】圧縮変形用スリーブを示す断面正面図であり、(A)は自由状態の断面正面図、(B)は自由状態の要部拡大断面正面図、(C)は接続完了状態の要部拡大断面正面図である。
図4】本発明の他の実施形態のパイプ接続前の状態を示した断面正面図である。
図5】接続完了状態を示した断面正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施の形態を示す図面に基づき本発明を詳説する。
図1に示すように、本発明の管継手構造は、雄ネジ付き継手本体1と、継手本体1の雄ネジ2に螺着される袋ナット3と、を備え、管継手6と樹脂管4を接続するように構成された管継手構造である。
継手本体1は、内挿筒部5を有し、樹脂管4の端部4Aに内挿筒部5が挿入され、雄ネジ2に袋ナット3を螺進して締め付けることで、樹脂管4と管継手6が接続される。
なお、配管接続完了状態では、樹脂管4と管継手6の内部に、空気や水等の流体が流れる。
【0011】
本発明の管継手構造は、圧縮変形用スリーブ7を有している。
圧縮変形用スリーブ7は、アルミニウムや銅等の金属、又は、プラスチックから成り、その外周面8に2本のU字状凹周溝9,9を有している(図3(A)参照)。凹周溝9は、ラジアル内方に底薄壁部13が薄肉に残留形成されるように設けられている。圧縮変形用スリーブ7は、袋ナット3の内部収納空間10に収納されている(図1図2参照)。
【0012】
継手本体1は、スリーブ7よりも大きな径の当接受け面17を有している。また、内挿筒部5は、外周面に多重円環状の小突条19を有している。
【0013】
圧縮変形用スリーブ7は、袋ナット3の雌ネジと継手本体1の雄ネジ2を螺着させる際に、図3(B)の自由状態から、図3(C)に示すように、継手本体1(の当接受け面17)と袋ナット3からアキシャル方向の圧縮力(締付力)Fを受けて、(U字状凹周溝9の幅寸法Wを次第に減少しつつ)凹周溝底薄壁部13がラジアル内方向へ塑性変形して、内挿筒部5に挿入されている樹脂管4の端部4Aに、外周面14側から食い込んで抜止めする。
【0014】
圧縮変形用スリーブ7は、凹周溝底薄壁部13を樹脂管4に食い込ませ、強力な耐引抜力を発揮し、樹脂管4の引抜けを防止している。また、圧縮変形用スリーブ7は、ラジアル方向の締付力によって、食い込みの際、樹脂管4の端部4Aを外周面14側から押圧して密封状態とする。図2図3(C)に示すように、樹脂管4は、ラジアル方向の締付力によって、内周面がラジアル内方向に塑性変形して、小突条部25,25を形成している。小突条部25,25は、接続完了状態下で、弾性変形しつつ内挿筒部5の外周面に圧接する。この際、膨出状となった小突条部25,25には、小突条19がラジアル内方から食い込み、樹脂管4と内挿筒部5の間を密封状態とし、かつ、引抜け方向への滑りを防止する。なお、凹周溝9は、塑性変形の際、側面15,15どうしが圧接して、その幅寸法Wがゼロとなっても良い(図示省略)。
【0015】
図2図3(C)に示すように、接続完了状態に於て、圧縮変形用スリーブ7の外端部7Aにアキシャル方向の弾発力を付与する押しバネ12を、袋ナット3の内部収納空間10に有している。
図例では、押しバネ12はコイルばねから成る。押しバネ12によってアキシャル方向の弾発力が圧縮変形用スリーブ7に付勢され続けることにより、接続完了後に、クリープによる応力緩和現象が生じた場合であっても、圧縮変形用スリーブ7は、樹脂管4の小変形に追従して凹周溝底薄壁部13がラジアル内方向に変形する。このようにして、接続完了の後、一定期間経過後に樹脂管4が小変形しても、樹脂管4の耐引抜力を保持し、かつ、密封性を維持している。
【0016】
また、圧縮変形用スリーブ7には、ステンレス等の硬質金属(又は硬質プラスチック)製の硬質カバー部材16が外嵌状に取り付けられている。
硬質カバー部材16は、袋ナット3と圧縮変形用スリーブ7の電蝕を防止すると共に、雄ネジ2に袋ナット3を螺着させる際に、袋ナット3への回転トルクが小さくとも作業工具にて回転が可能となる。また、袋ナット3の内周面に摺動して、圧縮変形用スリーブ7の回転を防止している。
この構成により、圧縮変形用スリーブ7が電蝕によって腐蝕されるのを防止でき、かつ、袋ナット3との摩擦を軽減できる。さらに、袋ナット3と圧縮変形用スリーブ7が共廻りするのを防止し、樹脂管4が捩じれるのを抑制できる。
【0017】
次に、本発明の他の実施形態について説明する。
図4図5では、内挿筒部5は、外周面11にシール溝22を有し、シール溝22に円環状シール材23を装着している。その他の構成は、上述の実施形態と同様である。
シール材23は、樹脂管4が内挿筒部5に挿入される際、樹脂管4の内周面に圧縮されて弾性変形する。さらに、圧縮変形用スリーブ7が、継手本体1と袋ナット3からアキシャル方向の圧縮力Fを受けて、凹周溝底薄壁部13がラジアル内方向へ塑性変形する際、樹脂管4の内周面によって、さらに潰され、シール材23が樹脂管4に圧接状態となる。即ち、内挿筒部5のシール溝22に、シール材23を設けたことにより、樹脂管4と内挿筒部5の間を確実に密封状態とすることができる。
【0018】
なお、本発明は、設計変更可能であって、例えば、硬質カバー部材16は、省略しても良い。また、押しバネ12は、皿ばねや板ばねを用いるも好ましい。
また、本発明に於て、樹脂管4とは、PE、PP又はPEX(架橋ポリエチレン)等のプラスチックから成るもの、あるいは、プラスチック管の内径側に金属管を内装した複合管を、包含するものとする。
なお、圧縮変形用スリーブ7のU字状凹周溝9の本数は、増減可能である。
【0019】
以上のように、本発明に係る管継手構造は、雄ネジ付き継手本体1と、継手本体1の雄ネジ2に螺着される袋ナット3と、を備え、樹脂管4を接続する管継手構造に於て、継手本体1は、樹脂管4の端部4Aに挿入される内挿筒部5を有し、袋ナット3の内部収納空間10に収納されると共に、外周面8に凹周溝9を有し、袋ナット3と継手本体1の雄ネジ2を螺着させる際に継手本体1と袋ナット3からアキシャル方向の圧縮力Fを受けて、凹周溝底薄壁部13がラジアル内方向へ塑性変形して、内挿筒部5に挿入されている樹脂管4の端部4Aに、外周面14側から食い込んで抜止めする圧縮変形用スリーブ7を有するので、袋ナット3を螺進するたけで、樹脂管4に対して強力な耐引抜力を発揮でき、かつ、密封性を発揮する接続(配管)を迅速・容易に行い得る。電動作業工具を使用して締め付け作業を行う必要がなく、作業効率を向上できる。また、コンパクトで、かつ、部品点数が少なく、部品形状がシンプルであって、容易に組立てることができる。
【0020】
また、接続完了状態に於て、圧縮変形用スリーブ7の外端部7Aにアキシャル方向の弾発力を付与する押しバネ12を、袋ナット3の内部収納空間10に有しているので、樹脂管4にクリープによる応力緩和現象が生じた場合であっても、圧縮変形用スリーブ7が、樹脂管4の小変形に追従してラジアル内方向に塑性変形して、樹脂管4の耐引抜力を保持でき、かつ、密封性を維持できる。従って、長期使用期間にわたって安定した接続状態を維持できる。
【0021】
また、内挿筒部5は、外周面11にシール溝22を有し、シール溝22に円環状シール材23を装着しているので、樹脂管4と内挿筒部5の間を確実に密封できる。
【符号の説明】
【0022】
1 継手本体
2 雄ネジ
3 袋ナット
4 樹脂管
4A 端部
5 内挿筒部
7 圧縮変形用スリーブ
7A 外端部
8 外周面
9 凹周溝
10 内部収納空間
11 外周面
12 押しバネ
13 凹周溝底薄壁部
14 外周面
19 小突条
22 シール溝
23 円環状シール材
F 圧縮力
W 幅寸法
図1
図2
図3
図4
図5