特許第6112858号(P6112858)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6112858-非水電解質二次電池 図000006
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6112858
(24)【登録日】2017年3月24日
(45)【発行日】2017年4月12日
(54)【発明の名称】非水電解質二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/0567 20100101AFI20170403BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20170403BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20170403BHJP
   H01M 4/525 20100101ALI20170403BHJP
   H01M 4/505 20100101ALI20170403BHJP
【FI】
   H01M10/0567
   H01M10/052
   H01M4/36 C
   H01M4/36 E
   H01M4/525
   H01M4/505
【請求項の数】6
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2012-281090(P2012-281090)
(22)【出願日】2012年12月25日
(65)【公開番号】特開2014-127256(P2014-127256A)
(43)【公開日】2014年7月7日
【審査請求日】2015年9月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005810
【氏名又は名称】日立マクセル株式会社
(72)【発明者】
【氏名】関谷 智仁
(72)【発明者】
【氏名】三谷 勝哉
(72)【発明者】
【氏名】河野 聡
(72)【発明者】
【氏名】大桃 義智
(72)【発明者】
【氏名】山田 將之
【審査官】 赤樫 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2007/142121(WO,A1)
【文献】 特開2007−214090(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/136589(WO,A1)
【文献】 特開2005−085635(JP,A)
【文献】 特開2001−155730(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/05−10/0587
H01M 4/00− 4/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極と、負極と、非水電解質およびセパレータとを有し、
非水電解質にはフッ素含有電解質塩と一般式(1)で表わされるホスホノアセテート類化合物を含むものを使用し、
正極は、正極活物質を有し、
正極活物質は、
一般式(2)で表されたリチウムコバルト複合酸化物にジルコニウムを含む酸化物が結晶表面に存在するジルコニウム含有リチウムコバルト複合酸化物(A)を含み、"
ジルコニウム含有リチウムコバルト複合酸化物(A)のジルコニウム(Zr)の含有量は、一般式(2)で表されたリチウムコバルト複合酸化物のコバルト(Co)に対するモル比(Zr/Co)で0.0001以上0.001以下の範囲内であることを特徴とする非水電解質二次電池。
一般式(1)中、Rおよび、それぞれ独立して、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1〜12のアルキル基、アルケニル基又はアルキニル基を示し、はハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1〜12のアルキニル基を示す。nは0〜6の整数を示す。
LiCo1−s・・・(2)
(一般式(2)中、Mは、Fe,V,Cr,Ti,Mg,Al,B,Ca,Baから選ばれた少なくとも一種の元素である。s、tは、0≦s≦0.03、0.05≦t≦1.15の範囲内である。)
【請求項2】
前記ホスホノアセテート類化合物は、2ープロピニル ジエチルホスホノアセテートである請求項1に記載の非水電解質二次電池。
【請求項3】
ジルコニウム含有リチウムコバルト複合酸化物(A)は、全ての正極活物質に対して50質量%以上含む、請求項に記載の非水電解質二次電池。
【請求項4】
正極活物質は更に一般式(3)で表されたリチウムコバルト複合酸化物(B)を含む、請求項1〜3いずれかに記載の非水電解質二次電池。
LiCo1−y・・・(3)
(一般式(3)中、Aは、Mg,Alから選ばれた少なくとも一種の元素を含む。z、yは、各々0.05≦z≦1.15、0≦y≦0.03の範囲内である。)
【請求項5】
ジルコニウム含有リチウムコバルト複合酸化物(A)は平均粒子径が10〜35μmである請求項1に記載の非水電解質二次電池。
【請求項6】
正極活物質は、更に一般式(4)で表わされたリチウム含有複合酸化物(C)を含む請求項1〜5のいずれかに記載の非水電解質二次電池。
Li1+aNi1−b−c−dCobMncM1dO2・・・(4)
(一般式(4)中、M1はMg、Al、Ti、Fe、Cu、Zn、Ga、Ge、Zr、Nb、Mo、Sn、W、B、P、BaおよびBiよりなる群から選択される少なくとも1種の元素であり、−0.15≦a≦0.15、0.005≦b≦0.4、0.005≦c≦0.4、0≦d≦0.03、およびb+c+d≦0.7である。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サイクル特性の良好な非水電解質二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話、ノート型パソコンなどの携帯型電子機器の発達や、電気自動車の実用化などに伴って、小型軽量でかつ高容量の非水電解質二次電池が必要とされるようになってきた。
【0003】
そして、非水電解質二次電池には、その適用機器の広がりなどに伴って、高容量化と共に各種の電池特性を向上させることが求められている。
【0004】
こうした非水電解質二次電池の電池特性の向上を達成する一手段として、非水電解質二次電池の有する非水電解質に各種の添加剤を適用することが知られている。例えば、特許文献1には特定の組成の異なる2種類の正極活物質を混合し、サイクル特性、低温重負荷特性について改善出来ることが記載されている。
【0005】
また、特許文献2には、特定構造の有機リン化合物を添加した非水電解質を用いることで、高温下での電気化学特性を高め得ることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−214090号公報
【特許文献2】国際公開第2012/14270号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、リチウムは水分と激しく反応することから、リチウム二次電池において、その優れた特性および信頼性を確保するためには、できるだけ水分を電池内から排除することが理想的ではある。しかし、電池内の水分を完全にゼロにすることは難しく、水分が不可避的に混入していると、フッ素含有電解質塩(例えば、LiPF等)と水分とが反応してフッ化水素(HF)が発生することが知られている。
【0008】
フッ化水素は、正極活物質からコバルト等の金属元素を溶出させ、電池の充放電サイクル特性の低下の原因となることがある。更に、フッ化水素は、電池を高温環境下で貯蔵した場合の電池膨れの原因となることも分かっている。
【0009】
一方、電池を高温環境下で貯蔵した場合に負極活物質と電解質とが反応し、負極活物質を分解すると同時にガスが発生し、負極の劣化と電池膨れとが同時に起こる場合がある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
正極と、負極と、非水電解質およびセパレータとを有し、
非水電解質にはフッ素含有電解質塩と一般式(1)で表わされるホスホノアセテート類化合物を含むものを使用し、
正極は、正極活物質を有し、
正極活物質は、
一般式(2)で表されたリチウムコバルト複合酸化物にジルコニウムを含む酸化物が結晶表面に存在するジルコニウム含有リチウムコバルト複合酸化物(A)を含み、
ジルコニウム含有リチウムコバルト複合酸化物(A)のジルコニウム(Zr)の含有量は、一般式(2)で表されたリチウムコバルト複合酸化物のコバルト(Co)に対するモル比(Zr/Co)で0.0001以上0.01以下の範囲内であることを特徴とする非水電解質二次電池を提供する。
【0011】
【化1】
【0012】
一般式(1)中、R、RおよびRは、それぞれ独立して、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1〜12のアルキル基、アルケニル基又はアルキニル基を示し、nは0〜6の整数を示す。
LiCo1−s ・・・(2)

(一般式(2)中、Mは、Fe,V,Cr,Ti,Mg,Al,B,Ca,Baから選ばれた少なくとも一種の元素である。s、tは、0≦s≦0.03、0.05≦t≦1.15の範囲内である。)
【発明の効果】
【0013】
この発明によれば、厚み変化が少なく、電池寿命が長い電池を提供することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の非水電解質二次電池の一例を模式的に示す図で、(a)はその平面図、(b)はその部分縦断面図である。
図2図1に示す非水電解質二次電池の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の非水電解質二次電池では、正極活物質にリチウムコバルト複合酸化物にジルコニウムを含む酸化物が結晶表面に存在するジルコニウム含有リチウムコバルト複合酸化物(A)を含み、且つ非水電解質に一般式(1)で表わされるホスホノアセテート類化合物を含む構成を採用する。
【0016】
ジルコニウムを含む酸化物がリチウムコバルト複合酸化物の結晶表面に存在していると、フッ化水素がジルコニウムを含む酸化物に吸着され、フッ化水素由来の電池膨れや正極活物質の劣化を防ぎ、電池厚みの変化を小さくしてサイクル特性を向上させることができる。
【0017】
また、ホスホノアセテート類化合物は、負極表面に被膜を形成し電池の高温貯蔵時に負極と電解質溶媒とが反応するのを防いで、ガス発生による膨れや負極活物質の劣化を防ぎ、電池厚みの変化を小さくしてサイクル特性を向上させることが出来る。
【0018】
ところで、電池のサイクル特性を評価するには特定の充放電条件でサイクルを繰り返すサイクル試験が一般的である。電池のサイクル試験中は、サイクルを重ねるにつれて電池容量が少しずつ低下していくが、ある時電池容量の低下率が大きくなり、その後も低下率が徐々に大きくなってしまう現象が発生する。
【0019】
電池のサイクル特性の低下はさまざまな要因に起因するが、正負極の劣化に起因するところが大きい。
【0020】
正極の劣化に着目して正極活物質の安定性を高くしてもある程度のサイクル特性向上効果は見込めるし、また負極においても然りである。しかし、当然ながら電池は正極と負極とで充放電を行うので、例えば正極の劣化を防止しても、負極の劣化が進めば正極はさほど劣化していなくても、電池容量の低下率が大きくなることがあるし、逆に負極の劣化だけを防止して正極の劣化がさほど進んでいなくても電池容量の低下率が大きくなったりする。
【0021】
本発明においては、正極と負極の劣化を同時に防いでバランスを取ることで、電池の厚み変化が小さく、サイクル中、電池容量の低下率が大きくなる現象が出来るだけ遅く出来るので電池寿命が各段に長くなる効果を得ることが出来る。
【0022】
〔正極〕
本発明の非水電解質二次電池に係る正極には、例えば、正極活物質、バインダおよび導電助剤などを含む正極合剤層を、集電体の片面または両面に有する構造のものが使用できる。
【0023】
<正極活物質>
[正極活物質]
本発明の非水電解質二次電池の正極に用いる正極活物質は、一般式(2)で表されたリチウムコバルト複合酸化物にジルコニウムを含む酸化物が結晶表面に存在するジルコニウム含有リチウムコバルト複合酸化物(A)を含んでいる。
LiCo1−s ・・・(2)
(一般式(2)中、Mは、Fe,V,Cr,Ti,Mg,Al,B,Ca,Baから選ばれた少なくとも一種の元素である。s、tは、0≦s≦0.03、0.05≦t≦1.15の範囲内である。)

ジルコニウム含有リチウムコバルト複合酸化物(A)中のジルコニウム(Zr)の含有量は、一般式(2)で表されたリチウムコバルト複合酸化物のコバルト(Co)に対するモル比(Zr/Co)で0.0001以上0.01以下の範囲内であることが好ましい。なお、ジルコニウムを含む酸化物は、例えば酸化ジルコニウムまたはジルコン酸リチウム、ジルコニウムや他の金属元素を含む酸化物などが挙げられる。ジルコニウムを含む酸化物は、一般式(2)で表されたリチウムコバルト複合酸化物の結晶表面に粒子状で存在している。ジルコニウムを含む酸化物の一部は一般式(2)で表されたリチウムコバルト複合酸化物に固溶していてもよく、また、一般式(2)で表されたリチウムコバルト複合酸化物の粒子の表面に存在していてもよい。
【0024】
結晶表面に存在するジルコニウム含有化合物の粒子は、0.05〜3.0μm程の大きさであり、これはSEM写真などで目視で確認出来る。
【0025】
本発明は、上記のジルコニウム含有リチウムコバルト複合酸化物(A)を含有することにより、正極活物質からコバルトの溶出を防ぎ、正極の劣化を防ぐことが出来る。
【0026】
その理由は定かではないが、電池内に不可避的に混入する水分とフッ素含有電解質塩とが反応し、フッ化水素が発生しても、ジルコニウムを含む酸化物がフッ化水素を吸着することで、正極活物質からコバルトの溶出を防ぎ、正極の劣化を防ぐことが出来るのではないかと考えられる。
【0027】
また、一般式(2)中の元素Mがジルコニウム含有リチウムコバルト複合酸化物(A)の安定性等に寄与し、ジルコニウム含有リチウムコバルト複合酸化物(A)が十分な容量を得るには0≦s≦0.03の範囲が好ましい。
【0028】
特にAlとMgは、リチウムコバルト複合酸化物の結晶構造を安定化させることができる。
【0029】
ジルコニウム含有リチウムコバルト複合酸化物(A)の平均粒子径は10〜35μmが好ましい。この範囲であれば安定性が高いため、高温貯蔵した場合でも正極活物質の劣化を防止できる。また、ジルコニウムが表面に存在していても、一般式(2)で表わされるリチウムコバルト複合酸化物の粒子表面全体に対してジルコニウムが占める体積割合が小さいので、容量低下を引き起こすことなくフッ化水素吸着効果を得ることが出来る。
【0030】
正極活物質は、一般式(3)で表されたリチウムコバルト複合酸化物(B)を含んでいても良い。
LiCo1-yy・・・(3)
(一般式(3)中、Aは、Mg,Alから選ばれた少なくとも一種の元素を含む。z、yは、各々0.05≦z≦1.15、0≦y≦0.05の範囲内である。)

リチウムコバルト複合酸化物(B)はの平均粒子径は2〜10μmが好ましい。ジルコニウム含有リチウムコバルト複合酸化物(A)よりも小さい粒子であれば、正極合剤層中の正極活物質の充填性が高くなり、正極合剤密度が向上する。結晶構造安定化に寄与するMgおよび/またはAlを含むことで、サイズが小さくても安定性が高く、高温貯蔵時も劣化しない。
【0031】
正極活物質は、一般式(4)で表わされたリチウム含有複合酸化物(C)を含んでいても良い。
【0032】
Li1+aNi1−b−c−dCoMn ・・・(4)

一般式(4)中、MはMg、Al、Ti、Fe、Cu、Zn、Ga、Ge、Zr、Nb、Mo、Sn、W、B、P、BaおよびBiよりなる群から選択される少なくとも1種の元素であり、−0.15≦a≦0.15、0.005≦b≦0.4、0.005≦c≦0.4、0≦d≦0.03、およびb+c+d≦0.7である。
【0033】
リチウム含有複合酸化物(C)は、より容量が大きいことから、正極活物質中に含むと電池容量を高めることが出来る。
【0034】
リチウム含有複合酸化物(C)の平均粒子径は、2〜35μmが使用出来るが、正極合剤層中の正極活物質の充填性を高くする観点から、(A)の平均粒子径<(C)の平均粒子径<(B)の平均粒子径の関係を満たすのが好ましい。
【0035】
ジルコニウム含有リチウムコバルト複合酸化物(A)は、全ての正極活物質に対して50質量%以上含むことが好ましい。この範囲であると、フッ化水素が発生しても、吸着が十分に行える為である。そして更に、リチウムコバルト複合酸化物(B)とジルコニウム含有リチウムコバルト複合酸化物(A)とを併用する場合、s<yであることが好ましい。リチウムコバルト複合酸化物(B)は粒子径が小さいため、元素Aの含有量が多いとより安定するが、その分電池容量が減る恐れがある。しかしながら、ジルコニウム含有リチウムコバルト複合酸化物(A)は比較的粒子径が大きくもともとの安定性が高いために元素Mの量は少なくて良く、その分電池容量が減る心配が無い。従って、リチウムコバルト複合酸化物(B)の安定性向上による電池の安全性も向上し、正極活物質中50質量%以上を占めるジルコニウム含有リチウムコバルト複合酸化物(A)によって電池容量を高めることが出来る。
【0036】
正極活物質をジルコニウム含有リチウムコバルト複合酸化物(A)とリチウムコバルト複合酸化物(B)で構成する場合、質量比で50:50〜95:5の混合割合が好ましい。また、正極活物質をジルコニウム含有リチウムコバルト複合酸化物(A)とリチウム含有複合酸化物(C)とで構成する場合は、質量比で50:50〜95:5の混合割合が好ましい。これらの範囲であると正極合剤密度を高くすることが出来る。またこの範囲であると、フッ化水素が発生しても、吸着が十分に行える為である
また、ジルコニウム含有リチウムコバルト複合酸化物(A)とリチウムコバルト複合酸化物(B)とリチウム含有複合酸化物(C)で正極活物質を構成する場合は、それぞれ50〜90質量%、5〜20質量%、5〜40質量%で混合することが好ましい。
【0037】
この範囲であると正極合剤密度を高くすることが出来、またこの範囲であるとフッ化水素が発生しても吸着が十分に行える為である。
【0038】
本明細書でいう正極活物質の平均粒子径は、レーザー散乱粒度分布計(例えば、日機装社製「マイクロトラックHRA」)を用い、測定対象物を溶解しない媒体に分散させて測定した体積基準の積算分率50%における粒子直径の値であるD50%を意味している。
【0039】
正極合剤層に係るバインダには、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、カルボキシメチルセルロース(CMC)などが好適に用いられる。また、正極合剤層に係る導電助剤としては、例えば、天然黒鉛(鱗片状黒鉛など)、人造黒鉛などの黒鉛(黒鉛質炭素材料);アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラックなどのカ−ボンブラック;炭素繊維;などの炭素材料などが挙げられる。
【0040】
正極は、例えば、正極活物質、バインダおよび導電助剤などを、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)などの溶剤に分散させたペースト状やスラリー状の正極合剤含有組成物を調製し(ただし、バインダは溶剤に溶解していてもよい)、これを集電体の片面または両面に塗布し、乾燥した後に、必要に応じてカレンダー処理を施す工程を経て製造される。ただし、正極は、前記の製造方法で製造されたものに限定される訳ではなく、他の方法で製造したものであってもよい。
【0041】
また、正極には、必要に応じて、非水電解質二次電池内の他の部材と電気的に接続するためのリード体を、常法に従って形成してもよい。
【0042】
正極合剤層の厚みは、例えば、集電体の片面あたり10〜100μmであることが好ましい。また、正極合剤層の組成としては、例えば、正極活物質の量が60〜95質量%であることが好ましく、バインダの量が1〜15質量%であることが好ましく、導電助剤の量が3〜20質量%であることが好ましい。
【0043】
正極の集電体は、従来から知られている非水電解質二次電池の正極に使用されているものと同様のものが使用でき、例えば、厚みが10〜30μmのアルミニウム箔が好ましい。
【0044】
非水電解質二次電池に係る負極には、例えば、負極活物質およびバインダ、更には必要に応じて導電助剤を含有する負極合剤からなる負極合剤層を、集電体の片面または両面に有する構造のものが使用できる。
【0045】
負極活物質としては、例えば、黒鉛、熱分解炭素類、コークス類、ガラス状炭素類、有機高分子化合物の焼成体、メソカーボンマイクロビーズ、炭素繊維、活性炭、リチウムと合金化可能な金属(Si、Snなど)またはその合金、酸化物などが挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を用いることができる。
【0046】
例えば電池の高容量化を図るには、前記の負極活物質の中でもSiとOとを構成元素に含む材料(ただし、Siに対するOの原子比xは、0.5≦x≦1.5である。以下、当該材料を「SiO」という)を用いることが出来る。
【0047】
SiOは、Siの微結晶または非晶質相を含んでいてもよく、この場合、SiとOの原子比は、Siの微結晶または非晶質相のSiを含めた比率となる。すなわち、SiOには、非晶質のSiOマトリックス中に、Si(例えば、微結晶Si)が分散した構造のものが含まれ、この非晶質のSiOと、その中に分散しているSiを合わせて、前記の原子比xが0.5≦x≦1.5を満足していればよい。例えば、非晶質のSiOマトリックス中に、Siが分散した構造で、SiOとSiのモル比が1:1の材料の場合、x=1であるので、構造式としてはSiOで表記される。このような構造の材料の場合、例えば、X線回折分析では、Si(微結晶Si)の存在に起因するピークが観察されない場合もあるが、透過型電子顕微鏡で観察すると、微細なSiの存在が確認できる。
【0048】
そして、SiOは、炭素材料と複合化した複合体であることが好ましく、例えば、SiOの表面が炭素材料で被覆されていることが望ましい。前記の通り、SiOは導電性が乏しいため、これを負極活物質として用いる際には、良好な電池特性確保の観点から、導電性材料(導電助剤)を使用し、負極内におけるSiOと導電性材料との混合・分散を良好にして、優れた導電ネットワークを形成する必要がある。SiOを炭素材料と複合化した複合体であれば、例えば、単にSiOと炭素材料などの導電性材料とを混合して得られた材料を用いた場合よりも、負極における導電ネットワークが良好に形成される。
【0049】
SiOと炭素材料との複合体としては、前記のように、SiOの表面を炭素材料で被覆したものの他、SiOと炭素材料との造粒体などが挙げられる。
【0050】
また、前記の、SiOの表面を炭素材料で被覆した複合体を、更に導電性材料(炭素材料など)と複合化して用いることで、負極において更に良好な導電ネットワークの形成が可能となるため、より高容量で、より電池特性(例えば、充放電サイクル特性)に優れた非水電解質二次電池の実現が可能となる。炭素材料で被覆されたSiOと炭素材料との複合体としては、例えば、炭素材料で被覆されたSiOと炭素材料との混合物を更に造粒した造粒体などが挙げられる。
【0051】
また、表面が炭素材料で被覆されたSiOとしては、SiOとそれよりも比抵抗値が小さい炭素材料との複合体(例えば造粒体)の表面が、更に炭素材料で被覆されてなるものも、好ましく用いることができる。前記造粒体内部でSiOと炭素材料とが分散した状態であると、より良好な導電ネットワークを形成できるため、SiOを負極活物質として含有する負極を有する非水電解質二次電池において、重負荷放電特性などの電池特性を更に向上させることができる。
【0052】
SiOとの複合体の形成に用い得る前記炭素材料としては、例えば、低結晶性炭素、カーボンナノチューブ、気相成長炭素繊維などの炭素材料が好ましいものとして挙げられる。
【0053】
前記炭素材料の詳細としては、繊維状またはコイル状の炭素材料、カーボンブラック(アセチレンブラック、ケッチェンブラックを含む)、人造黒鉛、易黒鉛化炭素および難黒鉛化炭素よりなる群から選ばれる少なくとも1種の材料が好ましい。繊維状またはコイル状の炭素材料は、導電ネットワークを形成し易く、かつ表面積の大きい点において好ましい。カーボンブラック(アセチレンブラック,ケッチェンブラックを含む)、易黒鉛化炭素および難黒鉛化炭素は、高い電気伝導性、高い保液性を有しており、さらに、SiO粒子が膨張収縮しても、その粒子との接触を保持し易い性質を有している点において好ましい。
【0054】
また、黒鉛を負極活物質としてSiOと共に使用することが好ましいが、この黒鉛をSiOと炭素材料との複合体に係る炭素材料として使用することもできる。黒鉛も、カーボンブラックなどと同様に、高い電気伝導性、高い保液性を有しており、さらに、SiO粒子が膨張収縮しても、その粒子との接触を保持し易い性質を有しているため、SiOとの複合体形成に好ましく使用することができる。
【0055】
前記例示の炭素材料の中でも、SiOとの複合体が造粒体である場合に用いるものとしては、繊維状の炭素材料が特に好ましい。繊維状の炭素材料は、その形状が細い糸状であり柔軟性が高いために電池の充放電に伴うSiOの膨張収縮に追従でき、また、嵩密度が大きいために、SiO粒子と多くの接合点を持つことができるからである。繊維状の炭素としては、例えば、ポリアクリロニトリル(PAN)系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維、気相成長炭素繊維、カーボンナノチューブなどが挙げられ、これらの何れを用いてもよい。
【0056】
なお、繊維状の炭素材料は、例えば、気相法にてSiO粒子の表面に形成することもできる。
【0057】
SiOの比抵抗値が、通常、10〜10kΩcmであるのに対して、前記例示の炭素材料の比抵抗値は、通常、10−5〜10kΩcmである。
【0058】
また、SiOと炭素材料との複合体は、粒子表面の炭素材料被覆層を覆う材料層(難黒鉛化炭素を含む材料層)を更に有していてもよい。
【0059】
負極にSiOと炭素材料との複合体を使用する場合、SiOと炭素材料との比率は、炭素材料との複合化による作用を良好に発揮させる観点から、SiO:100質量部に対して、炭素材料が、5質量部以上であることが好ましく、10質量部以上であることがより好ましい。また、前記複合体において、SiOと複合化する炭素材料の比率が多すぎると、負極合剤層中のSiO量の低下に繋がり、高容量化の効果が小さくなる虞があることから、SiO:100質量部に対して、炭素材料は、50質量部以下であることが好ましく、40質量部以下であることがより好ましい。
【0060】
前記のSiOと炭素材料との複合体は、例えば下記の方法によって得ることができる。
【0061】
まず、SiOを複合化する場合の作製方法について説明する。SiOが分散媒に分散した分散液を用意し、それを噴霧し乾燥して、複数の粒子を含む複合粒子を作製する。分散媒としては、例えば、エタノールなどを用いることができる。分散液の噴霧は、通常、50〜300℃の雰囲気内で行うことが適当である。前記の方法以外にも、振動型や遊星型のボールミルやロッドミルなどを用いた機械的な方法による造粒方法においても、同様の複合粒子を作製することができる。
【0062】
なお、SiOと、SiOよりも比抵抗値の小さい炭素材料との造粒体を作製する場合には、SiOが分散媒に分散した分散液中に前記炭素材料を添加し、この分散液を用いて、SiOを複合化する場合と同様の手法によって複合粒子(造粒体)とすればよい。また、前記と同様の機械的な方法による造粒方法によっても、SiOと炭素材料との造粒体を作製することができる。
【0063】
次に、SiO粒子(SiO複合粒子、またはSiOと炭素材料との造粒体)の表面を炭素材料で被覆して複合体とする場合には、例えば、SiO粒子と炭化水素系ガスとを気相中にて加熱して、炭化水素系ガスの熱分解により生じた炭素を、粒子の表面上に堆積させる。このように、気相成長(CVD)法によれば、炭化水素系ガスが複合粒子の隅々にまで行き渡り、粒子の表面や表面の空孔内に、導電性を有する炭素材料を含む薄くて均一な皮膜(炭素材料被覆層)を形成できることから、少量の炭素材料によってSiO粒子に均一性よく導電性を付与できる。
【0064】
炭素材料で被覆されたSiOの製造において、気相成長(CVD)法の処理温度(雰囲気温度)については、炭化水素系ガスの種類によっても異なるが、通常、600〜1200℃が適当であり、中でも、700℃以上であることが好ましく、800℃以上であることが更に好ましい。処理温度が高い方が不純物の残存が少なく、かつ導電性の高い炭素を含む被覆層を形成できるからである。
【0065】
炭化水素系ガスの液体ソースとしては、トルエン、ベンゼン、キシレン、メシチレンなどを用いることができるが、取り扱い易いトルエンが特に好ましい。これらを気化させる(例えば、窒素ガスでバブリングする)ことにより炭化水素系ガスを得ることができる。また、メタンガスやアセチレンガスなどを用いることもできる。
【0066】
また、気相成長(CVD)法にてSiO粒子(SiO複合粒子、またはSiOと炭素材料との造粒体)の表面を炭素材料で覆った後に、石油系ピッチ、石炭系のピッチ、熱硬化性樹脂、およびナフタレンスルホン酸塩とアルデヒド類との縮合物よりなる群から選択される少なくとも1種の有機化合物を、炭素材料を含む被覆層に付着させた後、前記有機化合物が付着した粒子を焼成してもよい。
【0067】
具体的には、炭素材料で被覆されたSiO粒子(SiO複合粒子、またはSiOと炭素材料との造粒体)と、前記有機化合物とが分散媒に分散した分散液を用意し、この分散液を噴霧し乾燥して、有機化合物によって被覆された粒子を形成し、その有機化合物によって被覆された粒子を焼成する。
【0068】
前記ピッチとしては等方性ピッチを、熱硬化性樹脂としてはフェノール樹脂、フラン樹脂、フルフラール樹脂などを用いることができる。ナフタレンスルホン酸塩とアルデヒド類との縮合物としては、ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物を用いることができる。
【0069】
炭素材料で被覆されたSiO粒子と前記有機化合物とを分散させるための分散媒としては、例えば、水、アルコール類(エタノールなど)を用いることができる。分散液の噴霧は、通常、50〜300℃の雰囲気内で行うことが適当である。焼成温度は、通常、600〜1200℃が適当であるが、中でも700℃以上が好ましく、800℃以上であることが更に好ましい。処理温度が高い方が不純物の残存が少なく、かつ導電性の高い良質な炭素材料を含む被覆層を形成できるからである。ただし、処理温度はSiOの融点以下であることを要する。
【0070】
負極活物質にSiOを使用する場合には、更に黒鉛も負極活物質として使用することが好ましい。黒鉛を使用して負極活物質中のSiOの比率を下げることで、SiOの減量による高容量化効果の低下を可及的に抑制しつつ、電池の充放電に伴う負極(負極合剤層)の体積変化を抑えて、かかる体積変化によって生じ得る電池特性の低下を抑制することが可能となる。
【0071】
SiOと共に負極活物質として使用する黒鉛としては、例えば、鱗片状黒鉛などの天然黒鉛;熱分解炭素類、メソフェーズカーボンマイクロビーズ(MCMB)、炭素繊維などの易黒鉛化炭素を2800℃以上で黒鉛化処理した人造黒鉛;などが挙げられる。
【0072】
なお、負極においては、SiOを使用することによる高容量化の効果を良好に確保する観点から、負極活物質中におけるSiOの含有量は、0.01質量%以上であることが好ましく、3質量%以上であることがより好ましい。また、充放電に伴う負極の体積変化による問題をより良好に回避する観点から、負極活物質中におけるSiOの含有量は、30質量%以下であることが好ましく、20質量%以下であることがより好ましい。
【0073】
また、負極のバインダおよび導電助剤には、正極に使用し得るものとして先に例示したものと同じものが使用できる。
【0074】
負極は、例えば、負極活物質およびバインダ、更には必要に応じて使用される導電助剤を、NMPや水などの溶剤に分散させたペースト状やスラリー状の負極合剤含有組成物を調製し(ただし、バインダは溶剤に溶解していてもよい)、これを集電体の片面または両面に塗布し、乾燥した後に、必要に応じてカレンダー処理を施す工程を経て製造される。ただし、負極は、前記の製造方法で製造されたものに限定される訳ではなく、他の方法で製造したものであってもよい。
【0075】
また、負極には、必要に応じて、非水電解質二次電池内の他の部材と電気的に接続するためのリード体を、常法に従って形成してもよい。
【0076】
負極合剤層の厚みは、例えば、集電体の片面あたり10〜100μmであることが好ましい。また、負極合剤層の組成としては、例えば、負極活物質を80.0〜99.8質量%とし、バインダを0.1〜10質量%とすることが好ましい。更に、負極合剤層に導電助剤を含有させる場合には、負極合剤層における導電助剤の量を0.1〜10質量%とすることが好ましい。
【0077】
負極の集電体としては、銅製やニッケル製の箔、パンチングメタル、網、エキスパンドメタルなどを用い得るが、通常、銅箔が用いられる。この負極集電体は、高エネルギー密度の電池を得るために負極全体の厚みを薄くする場合、厚みの上限は30μmであることが好ましく、機械的強度を確保するために下限は5μmであることが望ましい。
【0078】
(セパレータ)
本発明の非水電解質二次電池に係るセパレータとしては、強度が十分で、かつ非水電解質を多く保持できるものがよく、厚さが5〜50μmで開口率が30〜70%の、ポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)などのポリオレフィン製の微多孔膜を用いることができる。セパレータを構成する微多孔膜は、例えば、PEのみを使用したものやPPのみを使用したものであってもよく、エチレン−プロピレン共重合体を含んでいてもよく、また、PE製の微多孔膜とPP製の微多孔膜との積層体であってもよい。
【0079】
また、非水電解質二次電池に係るセパレータには、融点が140℃以下の樹脂を主体とした多孔質層(a)と、融点が150℃以上の樹脂または耐熱温度が150℃以上の無機フィラーを主体として含む多孔質層(b)とから構成された積層型のセパレータを使用することができる。ここで、「融点」とはJIS K 7121の規定に準じて、示差走査熱量計(DSC)を用いて測定される融解温度を意味し、「耐熱温度が150℃以上」とは、少なくとも150℃において軟化などの変形が見られないことを意味している。
【0080】
前記積層型のセパレータに係る多孔質層(a)は、主にシャットダウン機能を確保するためのものであり、非水電解質二次電池が多孔質層(a)の主体となる成分である樹脂の融点以上に達したときには、多孔質層(a)に係る樹脂が溶融してセパレータの空孔を塞ぎ、電気化学反応の進行を抑制するシャットダウンを生じる。
【0081】
多孔質層(a)の主成分となる融点が140℃以下の樹脂としては、例えばPEが挙げられ、その形態としては、非水電解質二次電池に用いられる微多孔膜や、不織布などの基材にPEの粒子を塗布したものが挙げられる。ここで、多孔質層(a)の全構成成分中において、主体となる融点が140℃以下の樹脂の体積は、50体積%以上であり、70体積%以上であることがより好ましい。多孔質層(a)を前記PEの微多孔膜で形成する場合は100体積%となる。
【0082】
前記積層型のセパレータに係る多孔質層(b)は、非水電解質二次電池の内部温度が上昇した際にも正極と負極との直接の接触による短絡を防止する機能を備えたものであり、融点が150℃以上の樹脂または耐熱温度が150℃以上の無機フィラーによって、その機能を確保している。すなわち、電池が高温となった場合には、喩え多孔質層(a)が収縮しても、収縮し難い多孔質層(b)によって、セパレータが熱収縮した場合に発生し得る正負極の直接の接触による短絡を防止することがでる。また、この耐熱性の多孔質層(b)がセパレータの骨格として作用するため、多孔質層(a)の熱収縮、すなわちセパレータ全体の熱収縮自体も抑制できる。
【0083】
多孔質層(b)を融点が150℃以上の樹脂を主体として形成する場合、その形態としては、例えば、融点が150℃以上の樹脂で形成された微多孔膜(例えば前述のPP製の電池用微多孔膜)を多孔質層(a)に積層させる形態、融点が150℃以上の樹脂の微粒子を含む多孔質層(b)形成用の組成物(塗液)を多孔質層(a)に塗布して、融点が150℃以上の樹脂の微粒子を含む多孔質層(b)を積層させる塗布積層型の形態が挙げられる。
【0084】
融点が150℃以上の樹脂の微粒子を構成する樹脂としては、架橋ポリメタクリル酸メチル、架橋ポリスチレン、架橋ポリジビニルベンゼン、スチレン−ジビニルベンゼン共重合体架橋物、ポリイミド、メラミン樹脂、フェノール樹脂、ベンゾグアナミン−ホルムアルデヒド縮合物などの各種架橋高分子;PP、ポリスルフォン、ポリエーテルスルフォン、ポリフェニレンスルフィド、PTFE、ポリアクリロニトリル、アラミド、ポリアセタールなどの耐熱性高分子;が挙げられる。
【0085】
融点が150℃以上の樹脂の微粒子の粒径は、本発明の非水電解質二次電池に用いる正極活物質と同じ方法で測定される平均粒子径D50%で、例えば、0.01μm以上であることが好ましく、0.1μm以上であることがより好ましく、また、10μm以下であることが好ましく、2μm以下であることがより好ましい。
【0086】
前記融点が150℃以上の樹脂の微粒子の量は、多孔質層(b)に主体として含まれるものであるため、多孔質層(b)の構成成分の全体積(空孔部分を除く全体積)中、50体積%以上であり、70体積%以上であることが好ましく、80体積%以上であることがより好ましく、90体積%以上であることが更に好ましい。
【0087】
多孔質層(b)を耐熱温度が150℃以上の無機フィラーを主体として形成する場合には、耐熱温度が150℃以上の無機フィラーを含む多孔質層(b)形成用の組成物(塗液)を多孔質層(a)に塗布して、耐熱温度が150℃以上の無機フィラーを含む多孔質層(b)を積層させる塗布積層型の形態が挙げられる。
【0088】
多孔質層(b)に係る無機フィラーは、耐熱温度が150℃以上で、非水電解質二次電池の有する非水電解質に対して安定であり、更に非水電解質二次電池の作動電圧範囲において酸化還元され難い電気化学的に安定なものであればよいが、分散などの点から微粒子であることが好ましく、また、アルミナ、シリカ、ベーマイトが好ましい。アルミナ、シリカ、ベーマイトは、耐酸化性が高く、粒径や形状を所望の数値などに調整することが可能であるため、多孔質層(b)の空孔率を精度よく制御することが容易となる。なお、耐熱温度が150℃以上の無機フィラーは、例えば前記例示のものを1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、耐熱温度が150℃以上の無機フィラーと、前記の融点が150℃以上の樹脂の微粒子とを併用しても差し支えない。
【0089】
多孔質層(b)に係る耐熱温度が150℃以上の無機フィラーの形状については特に制限はなく、略球状(真球状を含む)、略楕円体状(楕円体状を含む)、板状などの各種形状のものを使用できる。
【0090】
また、多孔質層(b)に係る耐熱温度が150℃以上の無機フィラーの平均粒子径(板状フィラーおよび他形状フィラーの平均粒子径。以下同じ。)は、小さすぎるとイオンの透過性が低下することから、0.3μm以上であることが好ましく、0.5μm以上であることがより好ましい。また、耐熱温度が150℃以上の無機フィラーが大きすぎると、電気特性が劣化しやすくなることから、その平均粒子径は、5μm以下であることが好ましく、2μm以下であることがより好ましい。本明細書でいう耐熱温度が150℃以上の無機フィラーの平均粒子径は、負極活物質の平均粒子径と同じ方法で求められる平均粒子径(D50%)である。
【0091】
多孔質層(b)における耐熱温度が150℃以上の無機フィラーは、多孔質層(b)に主体として含まれるものであるため、多孔質層(b)における量は、多孔質層(b)の構成成分の全体積(空孔部分を除く全体積)中、50体積%以上であり、70体積%以上であることが好ましく、80体積%以上であることがより好ましく、90体積%以上であることが更に好ましい。多孔質層(b)中の無機フィラーを前記のように高含有量とすることで、非水電解質二次電池が高温となった際にも、セパレータ全体の熱収縮を良好に抑制することができ、正極と負極との直接の接触による短絡の発生をより良好に抑制することができる。
【0092】
なお、耐熱温度が150℃以上の無機フィラーと融点が150℃以上の樹脂の微粒子とを併用する場合には、これらの両者が合わさって多孔質層(b)の主体をなしていればよく、具体的には、これらの合計量を、多孔質層(b)の構成成分の全体積(空孔部分を除く全体積)中、50体積%以上とすればよく、また、70体積%以上とすることが好ましく、80体積%以上とすることがより好ましく、90体積%以上とすることが更に好ましい。これにより、多孔質層(b)中の無機フィラーを前記のように高含有量とした場合と同様の効果を確保することができる。
【0093】
多孔質層(b)には、融点が150℃以上の樹脂の微粒子同士または耐熱温度が150℃以上の無機フィラー同士を結着したり、多孔質層(b)と多孔質層(a)との一体化したりするなどのために、有機バインダを含有させることが好ましい。有機バインダとしては、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA、酢酸ビニル由来の構造単位が20〜35モル%のもの)、エチレン−エチルアクリレート共重合体などのエチレン−アクリル酸共重合体、フッ素系ゴム、SBR、CMC、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルブチラール(PVB)、ポリビニルピロリドン(PVP)、架橋アクリル樹脂、ポリウレタン、エポキシ樹脂などが挙げられるが、特に、150℃以上の耐熱温度を有する耐熱性のバインダが好ましく用いられる。有機バインダは、前記例示のものを1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0094】
前記例示の有機バインダの中でも、EVA、エチレン−アクリル酸共重合体、フッ素系ゴム、SBRなどの柔軟性の高いバインダが好ましい。このような柔軟性の高い有機バインダの具体例としては、三井デュポンポリケミカル社の「エバフレックスシリーズ(EVA)」、日本ユニカー社のEVA、三井デュポンポリケミカル社の「エバフレックス−EEAシリーズ(エチレン−アクリル酸共重合体)」、日本ユニカー社のEEA、ダイキン工業社の「ダイエルラテックスシリーズ(フッ素ゴム)」、JSR社の「TRD−2001(SBR)」、日本ゼオン社の「BM−400B(SBR)」などが挙げられる。
【0095】
前記の有機バインダを多孔質層(b)に使用する場合には、後述する多孔質層(b)形成用の組成物の溶媒に溶解させるか、または分散させたエマルジョンの形態で用いればよい。
【0096】
前記塗布積層型のセパレータは、例えば、融点が150℃以上の樹脂の微粒子または耐熱温度が150℃以上の無機フィラーなどを含有する多孔質層(b)形成用組成物(スラリーなどの液状組成物など)を、多孔質層(a)を構成するための微多孔膜の表面に塗布し、所定の温度に乾燥して多孔質層(b)を形成することにより製造することができる。
【0097】
多孔質層(b)形成用組成物は、融点が150℃以上の樹脂の微粒子または耐熱温度が150℃以上の無機フィラーの他、必要に応じて有機バインダなどを含有し、これらを溶媒(分散媒を含む。以下同じ。)に分散させたものである。なお、有機バインダについては溶媒に溶解させることもできる。多孔質層(b)形成用組成物に用いられる溶媒は、無機フィラーなどを均一に分散でき、また、有機バインダを均一に溶解または分散できるものであればよいが、例えば、トルエンなどの芳香族炭化水素、テトラヒドロフランなどのフラン類、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類など、一般的な有機溶媒が好適に用いられる。なお、これらの溶媒に、界面張力を制御する目的で、アルコール(エチレングリコール、プロピレングリコールなど)、または、モノメチルアセテートなどの各種プロピレンオキサイド系グリコールエーテルなどを適宜添加してもよい。また、有機バインダが水溶性である場合、エマルジョンとして使用する場合などでは、水を溶媒としてもよく、この際にもアルコール類(メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、エチレングリコールなど)を適宜加えて界面張力を制御することもできる。
【0098】
多孔質層(b)形成用組成物は、融点が150℃以上の樹脂の微粒子または耐熱温度が150℃以上の無機フィラー、および有機バインダなどを含む固形分含量を、例えば10〜80質量%とすることが好ましい。
【0099】
前記積層型のセパレータにおいて、多孔質層(a)と多孔質層(b)とは、それぞれ1層ずつである必要はなく、複数の層がセパレータ中にあってもよい。例えば、多孔質層(b)の両面に多孔質層(a)を配置した構成としたり、多孔質層(a)の両面に多孔質層(b)を配置した構成としてもよい。ただし、層数を増やすことで、セパレータの厚みを増やして電池の内部抵抗の増加やエネルギー密度の低下を招く虞があるので、層数を多くしすぎるのは好ましくなく、前記積層型のセパレータ中の多孔質層(a)と多孔質層(b)との合計層数は5層以下であることが好ましい。
【0100】
非水電解質二次電池に係るセパレータ(ポリオレフィン製の微多孔膜からなるセパレータや、前記積層型のセパレータ)の厚みは、10〜30μmであることがより好ましい。
【0101】
また、前記積層型のセパレータにおいては、多孔質層(b)の厚み〔セパレータが多孔質層(b)を複数有する場合は、その総厚み〕は、多孔質層(b)による前記の各作用をより有効に発揮させる観点から、3μm以上であることが好ましい。ただし、多孔質層(b)が厚すぎると、電池のエネルギー密度の低下を引き起こすなどの虞があることから、多孔質層(b)の厚みは、8μm以下であることが好ましい。
【0102】
更に、前記積層型のセパレータにおいては、多孔質層(a)の厚み〔セパレータが多孔質層(I)を複数有する場合は、その総厚み。以下同じ。〕は、多孔質層(a)の使用による前記作用(特にシャットダウン作用)をより有効に発揮させる観点から、6μm以上であることが好ましく、10μm以上であることがより好ましい。ただし、多孔質層(a)が厚すぎると、電池のエネルギー密度の低下を引き起こす虞があることに加えて、多孔質層(a)が熱収縮しようとする力が大きくなり、セパレータ全体の熱収縮を抑える作用が小さくなる虞がある。そのため、多孔質層(a)の厚みは、25μm以下であることが好ましく、20μm以下であることがより好ましく、14μm以下であることが更に好ましい。
【0103】
セパレータ全体の空孔率としては、電解液の保液量を確保してイオン透過性を良好にするために、乾燥した状態で、30%以上であることが好ましい。一方、セパレータ強度の確保と内部短絡の防止の観点から、セパレータの空孔率は、乾燥した状態で、70%以下であることが好ましい。セパレータの空孔率:P(%)は、セパレータの厚み、面積あたりの質量、構成成分の密度から、下記(5)式を用いて各成分iについての総和を求めることにより計算できる。
【0104】
P ={1−(m/t)/(Σa・ρ)}×100 (5)
ここで、前記式中、a:全体の質量を1としたときの成分iの比率、ρ:成分iの密度(g/cm)、m:セパレータの単位面積あたりの質量(g/cm)、t:セパレータの厚み(cm)、である。
【0105】
また、前記積層型のセパレータの場合、前記(5)式において、mを多孔質層(a)の単位面積あたりの質量(g/cm)とし、tを多孔質層(a)の厚み(cm)とすることで、前記(5)式を用いて多孔質層(a)の空孔率:P(%)を求めることもできる。この方法により求められる多孔質層(a)の空孔率は、30〜70%であることが好ましい。
【0106】
更に、前記積層型のセパレータの場合、前記(5)式において、mを多孔質層(b)の単位面積あたりの質量(g/cm)とし、tを多孔質層(b)の厚み(cm)とすることで、前記(5)式を用いて多孔質層(b)の空孔率:P(%)を求めることもできる。この方法により求められる多孔質層(b)の空孔率は、20〜60%であることが好ましい。
【0107】
前記セパレータとしては、機械的な強度の高いものが好ましく、例えば突き刺し強度が3N以上であることが好ましい。前述した通り、負極活物質は、充放電時の体積膨張収縮が大きく、充放電サイクルを重ねることで、負極全体の伸縮によって、対面させたセパレータにも機械的なダメージが加わることになる。セパレータの突き刺し強度が3N以上であれば、良好な機械的強度が確保され、セパレータの受ける機械的ダメージを緩和することができる。
【0108】
突き刺し強度が3N以上のセパレータとしては、前述した積層型のセパレータが挙げられ、特に、融点が140℃以下の樹脂を主体とした多孔質層(a)に、耐熱温度が150℃以上の無機フィラーを主体として含む多孔質層(b)を積層したセパレータが好適である。それは、前記無機フィラーの機械的強度が高いため、多孔質層(a)の機械的強度を補って、セパレータ全体の機械的強度を高めることができるからであると考えられる。
【0109】
前記突き刺し強度は以下の方法で測定できる。直径2インチの穴があいた板上にセパレータをしわやたわみのないように固定し、先端の直径が1.0mmの半円球状の金属ピンを、120mm/minの速度で測定試料に降下させて、セパレータに穴があく時の力を5回測定する。そして、前記5回の測定値のうち最大値と最小値とを除く3回の測定について平均値を求め、これをセパレータの突き刺し強度とする。
〔非水電解質〕
本発明の非水電解質二次電池は、フッ素含有電解質塩と一般式(1)で表わされるホスホノアセテート類化合物を含むものを使用する。
【0110】
【化2】
【0111】
上記一般式(1)中、R、RおよびRは、それぞれ独立して、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1〜12のアルキル基、アルケニル基又はアルキニル基を示し、nは0〜6の整数を示す。
【0112】
前記ホスホノアセテート類化合物は、例えば以下の化合物を挙げることができる。
【0113】
<前記一般式(1)においてn=0の化合物>
トリメチル ホスホノフォルメート、メチル ジエチルホスホノフォルメート、メチル ジプロピルホスホノフォルメート、メチル ジブチルホスホノフォルメート、トリエチル ホスホノフォルメート、エチル ジメチルホスホノフォルメート、エチル ジプロピルホスホノフォルメート、エチル ジブチルホスホノフォルメート、トリプロピル ホスホノフォルメート、プロピル ジメチルホスホノフォルメート、プロピル ジエチルホスホノフォルメート、プロピル ジブチルホスホノフォルメート、トリブチル ホスホノフォルメート、ブチル ジメチルホスホノフォルメート、ブチル ジエチルホスホノフォルメート、ブチル ジプロピルホスホノフォルメート、メチル ビス(2,2,2−トリフルオロエチル)ホスホノフォルメート、エチル ビス(2,2,2−トリフルオロエチル)ホスホノフォルメート、プロピル ビス(2,2,2−トリフルオロエチル)ホスホノフォルメート、ブチル ビス(2,2,2−トリフルオロエチル)ホスホノフォルメート等。
【0114】
<前記一般式(1)においてn=1の化合物>
トリメチル ホスホノアセテート、メチル ジエチルホスホノアセテート、メチル ジプロピルホスホノアセテート、メチル ジブチルホスホノアセテート、トリエチル ホスホノアセテート、エチル ジメチルホスホノアセテート、エチル ジプロピルホスホノアセテート、エチル ジブチルホスホノアセテート、トリプロピル ホスホノアセテート、プロピル ジメチルホスホノアセテート、プロピル ジエチルホスホノアセテート、プロピル ジブチルホスホノアセテート、トリブチル ホスホノアセテート、ブチル ジメチルホスホノアセテート、ブチル ジエチルホスホノアセテート、ブチル ジプロピルホスホノアセテート、メチル ビス(2,2,2−トリフルオロエチル)ホスホノアセテート、エチル ビス(2,2,2−トリフルオロエチル)ホスホノアセテート、プロピル ビス(2,2,2−トリフルオロエチル)ホスホノアセテート、ブチル ビス(2,2,2−トリフルオロエチル)ホスホノアセテート、アリル ジメチルホスホノアセテート、アリル ジエチルホスホノアセテート、2−プロピニル ジメチルホスホノアセテート、2−プロピニル ジエチルホスホノアセテート等。
【0115】
<前記一般式(1)においてn=2の化合物>
トリメチル 3−ホスホノプロピオネート、メチル 3−(ジエチルホスホノ)プロピオネート、メチル 3−(ジプロピルホスホノ)プロピオネート、メチル 3−(ジブチルホスホノ)プロピオネート、トリエチル 3−ホスホノプロピオネート、エチル 3−(ジメチルホスホノ)プロピオネート、エチル 3−(ジプロピルホスホノ)プロピオネート、エチル 3−(ジブチルホスホノ)プロピオネート、トリプロピル 3−ホスホノプロピオネート、プロピル 3−(ジメチルホスホノ)プロピオネート、プロピル 3−(ジエチルホスホノ)プロピオネート、プロピル 3−(ジブチルホスホノ)プロピオネート、トリブチル 3−ホスホノプロピオネート、ブチル 3−(ジメチルホスホノ)プロピオネート、ブチル 3−(ジエチルホスホノ)プロピオネート、ブチル 3−(ジプロピルホスホノ)プロピオネート、メチル 3−(ビス(2,2,2−トリフルオロエチル)ホスホノ)プロピオネート、エチル 3−(ビス(2,2,2−トリフルオロエチル)ホスホノ)プロピオネート、プロピル 3−(ビス(2,2,2−トリフルオロエチル)ホスホノ)プロピオネート、ブチル 3−(ビス(2,2,2−トリフルオロエチル)ホスホノ)プロピオネート等。
【0116】
<前記一般式(1)においてn=3の化合物>
トリメチル 4−ホスホノブチレート、メチル 4−(ジエチルホスホノ)ブチレート、メチル 4−(ジプロピルホスホノ)ブチレート、メチル 4−(ジブチルホスホノ)ブチレート、トリエチル 4−ホスホノブチレート、エチル 4−(ジメチルホスホノ)ブチレート、エチル 4−(ジプロピルホスホノ)ブチレート、エチル 4−(ジブチルホスホノ)ブチレート、トリプロピル 4−ホスホノブチレート、プロピル 4−(ジメチルホスホノ)ブチレート、プロピル 4−(ジエチルホスホノ)ブチレート、プロピル ジブチルホスホノ)ブチレート、トリブチル 4−ホスホノブチレート、ブチル 4−(ジメチルホスホノ)ブチレート、ブチル 4−(ジエチルホスホノ)ブチレート、ブチル 4−(ジプロピルホスホノ)ブチレート等。
【0117】
前記例示のホスホノアセテート類化合物の中でも、エチルジエチルホスホノアセテート(EDPA)、2−プロピニル(ジエチルホスホノ)アセテート(PDEA)が特に好ましい。
【0118】
一般式(1)で表わされるホスホノアセテート類化合物は、負極表面に被膜を形成し電池の高温貯蔵時に負極と電解質溶媒とが反応するのを防いでガス発生による膨れや負極活物質の劣化を防ぎ、電池厚みの変化を小さくしてサイクル特性を向上させることが出来る。
【0119】
上記観点から、非水電解質二次電池に使用する非水電解質における前記一般式(1)で表されるホスホノアセテート類化合物の含有量が0.1質量%以上5質量%以下であることが好ましい。更に好ましくは0.5質量%以上2.5質量%以下である。
【0120】
また、上述したジルコニウム含有リチウムコバルト複合酸化物(A)が全ての正極活物質に対して50質量%以上含む、又はコバルト(Co)に対するモル比(Zr/Co)で0.0001以上0.01以下の範囲内である時、更にホスホノアセテート類化合物がこの範囲で含有する非水電解質を使用すると、より一層バランスよく正極と負極での劣化を防ぐことが出来るので、サイクル中電池容量の低下率が大きくなる現象をより遅く出来るので、好ましい。
【0121】
また、非水電解質には、ハロゲン置換された環状カーボネートも含有するものを使用しても良い。ハロゲン置換された環状カーボネートも、負極に作用して、電解質溶媒と反応するのを抑制する作用を有している。ハロゲン元素で置換された環状カーボネートの中でも、4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン(FEC)が特に好ましい。
【0122】
非水電解質二次電池に使用する非水電解質におけるハロゲン置換された環状カーボネートの含有量は、その使用による効果をより良好に確保する観点から、0.1質量%以上であることが好ましく、0.5質量%以上であることがより好ましい。ただし、非水電解質中のハロゲン置換された環状カーボネートの含有量が多すぎると、貯蔵特性の向上効果が小さくなる虞がある。よって、非水電解質二次電池に使用する非水電解質におけるハロゲン置換された環状カーボネートの含有量は、10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましい。
【0123】
更に、非水電解質には、ビニレンカーボネート(VC)も含有するものを使用することが好ましい。VCは、負極(特に負極活物質として炭素材料を使用した負極)に作用して、負極と非水電解質成分との反応を抑制する作用を有している。よって、VCも含有する非水電解質を使用することで、より充放電サイクル特性の良好な非水電解質二次電池とすることができる。
【0124】
非水電解質二次電池に使用する非水電解質におけるVCの含有量は、その使用による効果をより良好に確保する観点から、0.1質量%以上であることが好ましく、1.0質量%以上であることがより好ましい。ただし、非水電解質中のVCの含有量が多すぎると、貯蔵特性の向上効果が小さくなる虞がある。よって、非水電解質二次電池に使用する非水電解質におけるVCの含有量は、10質量%以下であることが好ましく、4.0質量%以下であることがより好ましい。
【0125】
非水電解質に用いるリチウム塩としては、フッ素含有電解質塩である。例えば、LiPF、LiBF、LiAsF、LiSbFなどの無機リチウム塩、LiCFSO、LiCFCO、Li(SO、LiN(CFSO、LiC(CFSO、LiC2n+1SO(n≧2)、LiN(RfOSO〔ここでRfはフルオロアルキル基〕などの有機リチウム塩などが、挙げられる。これらのフッ素含有電解質塩は、電池内に不可避的に混入した水分と反応することでフッ化水素が発生し、上述のような課題が生じている。
【0126】
このリチウム塩の非水電解質中の濃度としては、0.5〜1.5mol/lとすることが好ましく、0.9〜1.25mol/lとすることがより好ましい。
【0127】
非水電解質に用いる有機溶媒としては、前記のリチウム塩を溶解し、電池として使用される電圧範囲で分解などの副反応を起こさないものであれば特に限定されない。例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネートなどの環状カーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルエチルカーボネートなどの鎖状カーボネート;プロピオン酸メチルなどの鎖状エステル;γ−ブチロラクトンなどの環状エステル;ジメトキシエタン、ジエチルエーテル、1,3−ジオキソラン、ジグライム、トリグライム、テトラグライムなどの鎖状エーテル;1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフランなどの環状エーテル;アセトニトリル、プロピオニトリル、メトキシプロピオニトリルなどのニトリル類;エチレングリコールサルファイトなどの亜硫酸エステル類;などが挙げられ、これらは2種以上混合して用いることもできる。なお、より良好な特性の電池とするためには、エチレンカーボネートと鎖状カーボネートの混合溶媒など、高い導電率を得ることができる組み合わせで用いることが望ましい。
【0128】
また、非水電解質二次電池に使用する非水電解質には、充放電サイクル特性の更なる改善や、高温貯蔵性や過充電防止などの安全性を向上させる目的で、無水酸、スルホン酸エステル、スクシノニトリル、アジポニトリル等のジニトリル、1,3−プロパンサルトン、ジフェニルジスルフィド、シクロヘキシルベンゼン、ビフェニル、フルオロベンゼン、t−ブチルベンゼン、1,3-ジオキサンなどの添加剤(これらの誘導体も含む)を適宜加えることもできる。
【0129】
更に、非水電解質二次電池の非水電解質には、前記の非水電解質に、ポリマーなどの公知のゲル化剤を添加してゲル化したもの(ゲル状電解質)を用いることもできる。
【実施例】
【0130】
(実施例1)
<正極の作成>
一般式LiCo1-Sにおいてt=1.03、s=0.01(Mg)となり、ジルコニウム(Zr)の含有量が、コバルト(Co)に対するモル比(Zr/Co)で0.0005となるように市販の炭酸リチウム、酸化コバルト、酸化ジルコニウム、炭酸マグネシウムを混合して、これらを大気中で焼成し、粉末状のジルコニウム含有リチウムコバルト複合酸化物を作製した。この実施例でのジルコニウム含有リチウムコバルト複合酸化物(A)は、Li1.03Co0.99Mg0.01で表されるリチウムコバルト複合酸化物に酸化ジルコニウムが結晶表面に存在しているもので、平均粒子径が20μmであった。
【0131】
そして、リチウムコバルト複合酸化物(B)であるLi1.04Co0.98Al0.01Mg0.01(平均粒子径5μm)とを、質量比で(A):(B)=85:15となる配合比で混合した正極活物質の混合物を作成した。
【0132】
上術の正極活物質の混合物100質量部と、バインダであるPVDFを10質量%の濃度で含むNMP溶液20質量部と、導電助剤である人造黒鉛1質量部およびケッチェンブラック1質量部とを、二軸混練機を用いて混練し、更にNMPを加えて粘度を調節して、正極合剤含有ペーストを調製した。
【0133】
前記正極合剤含有ペーストを、厚みが15μmのアルミニウム箔(正極集電体)の両面に塗布した後、120℃で12時間の真空乾燥を行って、アルミニウム箔の両面に正極合剤層を形成した。その後、プレス処理を行って、正極合剤層の厚さおよび密度を調節し、アルミニウム箔の露出部にニッケル製のリード体を溶接して、長さ375mm、幅43mmの帯状の正極を作製した。得られた正極における正極合剤層は、片面あたりの厚みが55μmであった。
<負極の作製>
黒鉛:97.5質量部と、バインダであるSBR:1.5質量部と、増粘剤であるCMC:1質量部とに、水を加えて混合し、負極合剤含有ペーストを調製した。
【0134】
前記負極合剤含有ペーストを、厚みが8μmの銅箔(負極集電体)の両面に塗布した後、120℃で12時間の真空乾燥を行って、銅箔の両面に負極合剤層を形成した。その後、プレス処理を行って、負極合剤層の厚さおよび密度を調節し、銅箔の露出部にニッケル製のリード体を溶接して、長さ380mm、幅44mmの帯状の負極を作製した。得られた負極における負極合剤層は、片面あたりの厚みが65μmであった。
<非水電解質の調製>
エチレンカーボネート(EC)とメチルエチルカーボネート(MEC)とジエチルカーボネート(DEC)との容積比2:3:1の混合溶媒に、LiPFを1mol/Lの濃度で溶解させ、更に、2−プロピニル ジエチルホスホノアセテート、1,3−ジオキサン、VCおよびFECを、それぞれ1質量%となる量で添加して、非水電解液を調製した。
<セパレータの作製>
平均粒子径が3μmのベーマイト二次凝集体5kgに、イオン交換水5kgと、分散剤(水系ポリカルボン酸アンモニウム塩、固形分濃度40質量%)0.5kgとを加え、内容積20L、転回数40回/分のボールミルで10時間解砕処理をして分散液を調製した。処理後の分散液の一部を120℃で真空乾燥し、走査型電子顕微鏡(SEM)で観察したところ、ベーマイトの形状はほぼ板状であった。また、処理後のベーマイトの平均粒子径は1μmであった。
【0135】
前記分散液500gに、増粘剤としてキサンタンガムを0.5g、バインダとして樹脂バインダーディスパージョン(変性ポリブチルアクリレート、固形分含量45質量%)を17g加え、スリーワンモーターで3時間攪拌して均一なスラリー〔多孔質層(b)形成用スラリー、固形分比率50質量%〕を調製した。
【0136】
リチウムイオン二次電池用PE製微多孔質セパレータ〔多孔質層(a):厚み12μm、空孔率40%、平均孔径0.08μm、PEの融点135℃〕の片面にコロナ放電処理(放電量40W・min/m)を施し、この処理面に多孔質層(b)形成用スラリーをマイクログラビアコーターによって塗布し、乾燥して厚みが4μmの多孔質層(b)を形成して、セパレータを得た。このセパレータにおける多孔質層(b)の単位面積あたりの質量は5.5g/mで、ベーマイトの体積含有率は95体積%であり、空孔率は45%であった。
<電池の組み立て>
前記帯状の正極を、上記のセパレータを介して前記帯状の負極に重ね、渦巻状に巻回した後、扁平状になるように加圧して扁平状巻回構造の電極巻回体とし、この電極巻回体をポリプロピレン製の絶縁テープで固定した。次に、外寸が厚さ4.0mm、幅34mm、高さ50mmのアルミニウム合金製の角形の電池ケースに前記電極巻回体を挿入し、リード体の溶接を行うとともに、アルミニウム合金製の蓋板を電池ケースの開口端部に溶接した。その後、蓋板に設けた注入口から前記非水電解質を注入し、1時間静置した後注入口を封止して、図1に示す構造で、図2に示す外観の非水電解質二次電池を得た。
【0137】
ここで図1および図2に示す電池について説明すると、図1の(a)は平面図、(b)はその部分断面図であって、図1(b)に示すように、正極1と負極2はセパレータ3を介して渦巻状に巻回した後、扁平状になるように加圧して扁平状の巻回電極体6として、角形(角筒形)の電池ケース4に非水電解質と共に収容されている。ただし、図1では、煩雑化を避けるため、正極1や負極2の作製にあたって使用した集電体としての金属箔や非水電解質などは図示していない。
【0138】
電池ケース4はアルミニウム合金製で電池の外装体を構成するものであり、この電池ケース4は正極端子を兼ねている。そして、電池ケース4の底部にはPEシートからなる絶縁体5が配置され、正極1、負極2およびセパレータ3からなる扁平状巻回電極体6からは、正極1および負極2のそれぞれ一端に接続された正極リード体7と負極リード体8が引き出されている。また、電池ケース4の開口部を封口するアルミニウム合金製の封口用蓋板9にはポリプロピレン製の絶縁パッキング10を介してステンレス鋼製の端子11が取り付けられ、この端子11には絶縁体12を介してステンレス鋼製のリード板13が取り付けられている。
【0139】
そして、この蓋板9は電池ケース4の開口部に挿入され、両者の接合部を溶接することによって、電池ケース4の開口部が封口され、電池内部が密閉されている。また、図1の電池では、蓋板9に非水電解液注入口14が設けられており、この非水電解液注入口14には、封止部材が挿入された状態で、例えばレーザー溶接などにより溶接封止されて、電池の密閉性が確保されている(従って、図1および図2の電池では、実際には、非水電解液注入口14は、非水電解液注入口と封止部材であるが、説明を容易にするために、非水電解液注入口14として示している)。更に、蓋板9には、電池の温度が上昇した際に内部のガスを外部に排出する機構として、開裂ベント15が設けられている。
【0140】
この実施例1の電池では、正極リード体7を蓋板9に直接溶接することによって外装缶5と蓋板9とが正極端子として機能し、負極リード体8をリード板13に溶接し、そのリード板13を介して負極リード体8と端子11とを導通させることによって端子11が負極端子として機能するようになっているが、電池ケース4の材質などによっては、その正負が逆になる場合もある。
【0141】
図2は前記図1に示す電池の外観を模式的に示す斜視図であり、この図2は前記電池が角形電池であることを示すことを目的として図示されたものであって、この図1では電池を概略的に示しており、電池の構成部材のうち特定のものしか図示していない。また、図1においても、電極体の内周側の部分は断面にしていない。
(実施例2)
<非水電解質の調製>
エチレンカーボネート(EC)とメチルエチルカーボネート(MEC)とジエチルカーボネート(DEC)との容積比2:3:1の混合溶媒に、LiPFを1mol/Lの濃度で溶解させ、更に、2−プロピニル ジエチルホスホノアセテートを0.1質量%、1,3−ジオキサン、VCおよびFECを、それぞれ1質量%となる量で添加して、非水電解液を調製した。
【0142】
電池の組み立てに用いる非水電解質を上記のように変更した以外は、実施例1と同様にして非時電解質二次電池を作成した。
(実施例3)
<非水電解質の調製>
エチレンカーボネート(EC)とメチルエチルカーボネート(MEC)とジエチルカーボネート(DEC)との容積比2:3:1の混合溶媒に、LiPFを1mol/Lの濃度で溶解させ、更に、2−プロピニル ジエチルホスホノアセテートを5質量%、1,3−ジオキサン、VCおよびFECを、それぞれ1質量%となる量で添加して、非水電解液を調製した。
【0143】
電池の組み立てに用いる非水電解質を上記のように変更した以外は、実施例1と同様にして非時電解質二次電池を作成した。
(実施例4)
<非水電解質の調製>
エチレンカーボネート(EC)とメチルエチルカーボネート(MEC)とジエチルカーボネート(DEC)との容積比2:3:1の混合溶媒に、LiPFを1mol/Lの濃度で溶解させ、更に、2−プロピニル ジエチルホスホノアセテートを3質量%、1,3−ジオキサン、VCおよびFECを、それぞれ1質量%となる量で添加して、非水電解液を調製した。
【0144】
電池の組み立てに用いる非水電解質を上記のように変更した以外は、実施例1と同様にして非時電解質二次電池を作成した。
(実施例5)
一般式LiCo1-Sにおいてt=1.03、s=0.01(Mg)となり、ジルコニウム(Zr)の含有量が、コバルト(Co)に対するモル比(Zr/Co)で0.0001となるように市販の炭酸リチウム、酸化コバルト、酸化ジルコニウム、炭酸マグネシウムを混合して、これらを大気中で焼成し、粉末状のジルコニウム含有リチウムコバルト複合酸化物を作製した。この実施例でのジルコニウム含有リチウムコバルト複合酸化物(A)は、Li1.03Co0.99Mg0.01で表されるリチウムコバルト複合酸化物に酸化ジルコニウムが結晶表面に存在しているもので、平均粒子径が20μmであった。
【0145】
ジルコニウム含有リチウムコバルト複合酸化物(A)を上記のように作成した以外は、実施例1と同様にして非水電解質二次電池を作成した。

(実施例6)
一般式LiCo1-Sにおいてt=1.03、s=0.01(Mg)となり、ジルコニウム(Zr)の含有量が、コバルト(Co)に対するモル比(Zr/Co)で0.001となるように市販の炭酸リチウム、酸化コバルト、酸化ジルコニウム、炭酸マグネシウムを混合して、これらを大気中で焼成し、粉末状のジルコニウム含有リチウムコバルト複合酸化物を作製した。この実施例でのジルコニウム含有リチウムコバルト複合酸化物(A)は、Li1.03Co0.99Mg0.01で表されるリチウムコバルト複合酸化物に酸化ジルコニウムが結晶表面に存在しているもので、平均粒子径が20μmであった。
【0146】
ジルコニウム含有リチウムコバルト複合酸化物(A)を上記のように作成した以外は、実施例1と同様にして非水電解質二次電池を作成した。
(実施例7)
硫酸ニッケル、硫酸コバルト、硫酸マンガンおよび硫酸マグネシウムを、それぞれ、3.78mol/dm、0.25mol/dm、0.08mol/dm、0.08mol/dmの濃度で含有する混合水溶液を調製した。次に水酸化ナトリウムの添加によってpHを約12に調整したアンモニア水を反応容器に入れ、これを強攪拌しながら、この中に、前記混合水溶液と、25質量%濃度のアンモニア水とを、それぞれ、23cm/分、6.6cm/分の割合で、定量ポンプを用いて滴下して、NiとCoとMnとMgとの共沈化合物(球状の共沈化合物)を合成した。なお、この際、反応液の温度は50℃に保持し、また、反応液のpHが12付近に維持されるように、3mol/dm濃度の水酸化ナトリウム水溶液の滴下も同時に行い、更に窒素ガスを1dm/分の流量でバブリングした。
【0147】
前記の共沈化合物を水洗、濾過および乾燥させて、水酸化物を得た。この水酸化物と、LiOH・HOと、BaSOとAl(OH)とを、モル比で、モル比で、1:1:0.01:0.01になるようにエタノール中に分散させてスラリー状とした後、遊星型ボールミルで40分間混合し、室温で乾燥させて得られた混合物を得た。次いで、前記混合物をアルミナ製のるつぼに入れ、2dm/分のドライエアーフロー中で600℃まで加熱し、その温度で2時間保持して予備加熱を行い、更に900℃に昇温して12時間焼成することにより、リチウム含有複合酸化物(C)を合成した。
【0148】
得られたリチウム含有複合酸化物(C)を水で洗浄した後、大気中(酸素濃度が約20vol%)で、700℃で12時間熱処理し、その後乳鉢で粉砕して粉体とした。粉砕後のリチウム含有複合酸化物は、デシケーター中で保存した。
【0149】
前記リチウム含有複合酸化物(C)について、その組成分析を、ICP(InductiveCoupled Plasma)法を用いて以下のように行った。まず、前記リチウム含有複合酸化物を0.2g採取して100mL容器に入れた。その後、純水5mL、王水2mL、純水10mLを順に加えて加熱溶解し、冷却後、さらに25倍に希釈してICP(JARRELASH社製「ICP−757」)にて組成を分析した(検量線法)。得られた結果から、前記リチウム含有複合酸化物の組成を導出したところ、Li1.0Ni0.89Co0.05Mn0.02Mg0.02Ba0.01Al0.01で表される組成であることが判明した。
【0150】
正極活物質を、実施例1で作成したジルコニウム含有リチウムコバルト複合酸化物(A)とリチウムコバルト複合酸化物(B)と上記のリチウム含有複合酸化物(C)とを、質量比で(A):(B):(C)=65:15:20となる配合比で混合した正極活物質の混合物を作成した。
【0151】
上述の正極活物質の混合物を用いた以外は、実施例1と同様にして非水電解質二次電池を作成した。

(比較例1)
<非水電解質の調製>
エチレンカーボネート(EC)とメチルエチルカーボネート(MEC)とジエチルカーボネート(DEC)との容積比2:3:1の混合溶媒に、LiPFを1mol/Lの濃度で溶解させ、更に、1,3−ジオキサン、VCおよびFECを、それぞれ1質量%となる量で添加して、非水電解液を調製した。
【0152】
電池の組み立てに用いる非水電解質を上記のように変更した以外は、実施例1と同様にして非時電解質二次電池を作成した。
(比較例2)
ジルコニウム含有リチウムコバルト複合酸化物(A)を、Li1.03Co0.99Mg0.01に変更した以外は、実施例1と同様にして非水電解質二次電池を作成した。
(比較例3)
<非水電解質の調製>
エチレンカーボネート(EC)とメチルエチルカーボネート(MEC)とジエチルカーボネート(DEC)との容積比2:3:1の混合溶媒に、LiPFを1mol/Lの濃度で溶解させ、更に、1,3−ジオキサン、VCおよびFECを、それぞれ1質量%となる量で添加して、非水電解液を調製した。
【0153】
電池の組み立てに用いる非水電解質を上記のように変更した以外は、比較例2と同様にして非時電解質二次電池を作成した。
<初期容量測定>
実施例および比較例の各非水電解質二次電池について、1.0Cの電流値で4.35Vまで定電流充電を行い、続いて4.35Vの電圧で定電圧充電を行った。なお、定電流充電と定電圧充電の総充電時間は2.5時間とした。その後、0.2Cの電流値で3.0Vまで放電を行い、初期容量を測定した。
<充放電サイクル特性評価>
実施例および比較例の各非水電解質二次電池(前記の各評価を行った物とは別の電池)について、初期容量測定時と同じ条件で定電流充電および定電圧充電を行い、続いて1.0Cの電流値で3.0Vまで放電を行う一連の操作を1サイクルとして、初期容量に対して放電容量が50%になるまで繰り返し、容量50%サイクル数を求めた。
【0154】
そして、200サイクル経過時の各電池の放電容量を初期容量で除した値を百分率で表して、200サイクル容量維持率を求めた。
【0155】
なお、前記の充放電サイクル特性評価は、室温(25℃)の環境下と、45℃の環境下とで評価を行った。
<高温貯蔵特性評価>
実施例および比較例の各非水電解質二次電池(前記の各評価を行った物とは別の電池)について、初期容量測定時と同じ条件で定電流充電および定電圧充電を行った後に、85℃の環境下で4時間貯蔵し、貯蔵前後での電池の厚み変化(膨れ量)を求めた。
【0156】
【表1】
【0157】
尚、今回は全て同じ構成の負極について検証を行ったが、例えば、負極活物質として公知のSiOが炭素材料と複合化した複合体と黒鉛とを併用することも出来る。この場合、電池容量が向上するため、好ましい。負極活物質としてSiOが炭素材料と複合化した複合体と黒鉛とを併用した場合でも、本発明のホスホノアセテート類化合物が被膜を形成することが確認できており、実施例と同様の効果が期待できる。
図1
図2