(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6112873
(24)【登録日】2017年3月24日
(45)【発行日】2017年4月12日
(54)【発明の名称】ナノ繊維材料及びマイクロ繊維材料を製造するための複合紡糸ノズル
(51)【国際特許分類】
D01D 4/02 20060101AFI20170403BHJP
D01D 5/30 20060101ALI20170403BHJP
【FI】
D01D4/02
D01D5/30 Z
【請求項の数】2
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-8268(P2013-8268)
(22)【出願日】2013年1月21日
(65)【公開番号】特開2013-147786(P2013-147786A)
(43)【公開日】2013年8月1日
【審査請求日】2015年12月3日
(31)【優先権主張番号】PV2012-33
(32)【優先日】2012年1月19日
(33)【優先権主張国】CZ
(73)【特許権者】
【識別番号】507211897
【氏名又は名称】コンティプロ アクチオヴァ スポレチノスト
(74)【代理人】
【識別番号】110002398
【氏名又は名称】特許業務法人小倉特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100081695
【弁理士】
【氏名又は名称】小倉 正明
(72)【発明者】
【氏名】ポコルニー,マレク
(72)【発明者】
【氏名】スコヴァー,ラダ
(72)【発明者】
【氏名】レビーツェク,イリー
(72)【発明者】
【氏名】ヴェレブニー,ヴラディミル
【審査官】
加賀 直人
(56)【参考文献】
【文献】
特開2011−168928(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D01D 4/02
D01D 5/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナノ繊維又はマイクロ繊維を製造するための複合紡糸ノズルであって,前記複合紡糸ノズルが,薄肉電極(1)と,前記薄肉電極(1)の第1の壁に隣接する第1の非導電体(2)とを備え,前記第1の非導電体(2)が,前記薄肉電極(1)と対向し,かつ,並列の溝(5)が形成された壁を有し,前記溝(5)が前記複合紡糸ノズルの遠位端(6)へ延び,かつ,紡糸混合物の供給源に接続された近位端を有し,
前記薄肉電極(1)の第2の壁に隣接し,かつ,前記複合紡糸ノズルの前記遠位端(6)へ空気を向ける第2の非導電体(4)を更に備え,
前記薄肉電極(1)は,表面に前記溝(5)を設けた円筒形の前記第1の非導電体(2)を内部に収容した円筒状外殻の形状を有し,前記第1の非導電体(2)の外面が前記円筒状外殻の内面に隣接し,空気を前記複合紡糸ノズルの前記遠位端(6)へ向けるための前記第2の非導電体(4)が円筒状外殻として形成され,前記薄肉電極(1)は非導電材料から成る円筒状ケーシング(10)内に収容され,前記円筒状ケーシング(10)及び前記第2の非導電体(4)は,空気を前記複合紡糸ノズルの前記遠位端(6)へ向けるために,前記円筒状ケーシング(10)と前記第2の非導電体(4)との間に,同軸の内部空間(3)を画定することを特徴とするナノ繊維又はマイクロ繊維を製造するための複合紡糸ノズル。
【請求項2】
非導電材料から成る前記円筒状ケーシング(10)の遠位端が,前記薄肉電極(1)の遠位端の高さよりも下に位置することを特徴とする請求項1記載のナノ繊維又はマイクロ繊維を製造するための複合紡糸ノズル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,高圧電源の電位点の一つに接続され,かつ,高分子混合物を分配する装置に分配チャネルによって連結され,適切な形状の高分子混合物の近傍に空気流を通過させる複合ノズルを備えた,ナノ繊維材料又はマイクロ繊維材料を製造する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ナノ繊維材料又はマイクロ繊維材料を製造するために使用される静電紡糸方法(エレクトロスピニング方法)は,反対の電位点に接続された2つの電極の使用に基づく。これらの電極の一方は高分子溶液を分配し,かつ,該高分子溶液を曲率半径の小さい湾曲した形状に成形する。強電場によって誘起された力の作用によって,いわゆるテイラーコーン(Taylor cone)が形成され,それと同時に繊維が生成され,後者は静電力によって他方の電極,すなわち,逆極性を有する対向電極に引き付けられ,飛翔している繊維を捕獲する。繊維は捕獲された後,前記対向電極の表面に連続層を連続的に形成し,この層はランダムに配置された小径(一般に数十ナノメートルから数マイクロメートルの範囲)の繊維から成る。強電場における繊維の製造を実際に可能なものとするために,高分子溶液自体の物理的及び化学的特性と,環境の影響及び電極の形状に関して数多くの条件を満たす必要がある。
【0003】
静電紡糸方法では,静電力の作用下で,個々の繊維が高分子混合物の表面から形成される。液体又は粘性溶液は内部凝集力及び毛細管力の影響を受ける。毛細管力は表面張力に依存し,かつ,各液体の表面の要素の大きさに対し正比例の関係で依存し,かつ,その曲率半径に対し反比例の関係で依存する。曲率半径が減少した場合,液体の内力(とりわけ液体の表面層に作用するもの)の上昇に伴い,液体又は粘性の高分子混合物の内部の圧力が上昇する。こうした曲率半径の減少は,例えば毛細管上昇効果又は毛細管下降効果が生じる細い毛細管内で発生する。上記効果(特に毛細管下降効果)は,紡糸処理自体を開始する前に高分子混合物の形状を適合させるために使用されることが好ましい。テイラーコーンの生成と,処理した高分子の噴射とを可能にするために,外部静電力は凝集力及び毛細管力を上回る必要がある。テイラーコーンの生成は,適切に形成されたノズルによって達成される高分子混合物の表面曲率により,主に補助される(表面曲率の減少により,毛細管力が増加し,液滴の内側の圧力を増加させ,液滴の表面層を破壊するように作用し,液滴自体の破壊を生じさせる)。この点において,処理された高分子混合物が押し込まれる細い毛細管の使用は,静電紡糸処理のために最も有益である。次にこの混合物は毛細管のオリフィスの周辺の領域において非常に小さい液滴に形成される。この混合物は,高分子混合物の自由に形成される液滴(より大きな曲率半径を有する)において作用するものよりも,弱い静電力の作用のもとで前方に噴射される(かつ,好ましくない紡糸特性を備える高分子混合物が処理される場合,処理自体を開始させることが可能となる)。したがって,紡糸ノズルの必要不可欠かつ最も一般的に適用される原理は,ノズル内に強制的に押し込められる高分子混合物の連続する分配と共に,細い中空ニードルを含む。上記の理由により,複数の異なるタイプの紡糸ノズルが開発されてきた。この点に関して,以下の基本的な構成が実施可能である。
【0004】
まず,紡糸ノズルとして使用される細い毛細管ニードルが周知である。おそらく,このタイプのノズルは実験室条件におけるナノ繊維及びマイクロ繊維の製造に関する限り,最も広く利用されるものである。主な利点は,処理された高分子混合物を分配し,テイラーコーンの生成を促進する極小径の液滴の形状並びに,続いて製造する繊維の形状に形成することが簡易かつ比較的容易であることを含む(これはまた,局所的に作用する静電力が倍増し,それにより繊維の製造を容易にするニードルの先端で生じる静電場の著しい勾配によっても補助される)。毛細管ノズルは実験装置において頻繁に使用されるが,産業生産のニーズに対して十分に効率的ではない。類似する解決手段は1900年発行の特許文献1及び1902年発行の特許文献2に開示され,これらは液分布に関するものであり,それらの処理は,現代の静電紡糸方法を基礎とするものに等しい原理に基づく。
【0005】
別の公知の紡糸ノズルは,置換可能な毛細管ニードルから成る。この毛細管ニードルは,被覆層を形成する繊維の適用中に対向電極の広い領域を被覆するために,水平方向へ移動する(プリントヘッドの動きに類似する)。しかしながら,原則として,この実施形態は前述のタイプに基づく。このニードルは繊維材料の生産量を増加することができるが,その総合的な生産性は,なお非常に低い。
【0006】
更に,マニホールドノズルが周知である。例えば特許文献3〜5の特許出願に開示されているように,このようなノズルも上記の第1のタイプのものに基づき,個々の毛細管ニードルがこれに対応する紡糸処理の生産性を高めるために,より大量にグループ化される。こうしたマニホールドノズルの主な短所は,紡糸溶液の不均一な分配と,ノズルが汚れやすく(詰まる),後の困難な清掃が必要であり保守全体がより困難なものになることに関する問題である。
【0007】
別の公知の紡糸ノズルは同軸ノズルである。細い二重の毛細管同軸ノズルは異なるタイプの2つの高分子混合物を供給する。したがって,最終繊維は異なる材料から成るコア及びシースを有する。
【0008】
ニードルレスの紡糸電極も当該技術分野において周知である。このような電極は,静電場によって誘起された力によって高分子混合物を繊維に転換するため,後者の自由表面又は薄層の自然な波紋(湾曲)を利用する。このタイプのノズルでは,より高いレベルの処理生産力が予想される。これは,テイラーコーンが自由表面の複数の場所で同時に生じるという仮定に基づく。しかしながら,上記仮定は未だ実験的に証明されていない。更に,このようなシステムの適用は,狭い範囲の容易に紡糸可能な高分子に限定される。主な短所は,溶液の成分が自然蒸発と物理的及び化学的パラメータの無制御な変化とを受ける開放された環境条件のもとで紡糸処理が実施されるため,後者の処理中の溶液の特性が変化することであり,これは大量生産にとって致命的である。
【0009】
こうした場合に,テイラーコーンの形成は,高分子混合物の自由表面に直接生じる。或いは,テイラーコーンは,紡糸電極のより小さな領域における自然な形状である,より大きな液滴から形成される。上記全てのニードルレス(又は無噴射)紡糸システムは,1934年発行の特許文献6及び1936年発行の特許文献7に基づくことは疑う余地がなく,これらの特許は,ナノ繊維及びマイクロ繊維を調製するために使用される現代の静電法の基礎ともなっている。例えば,このようなノズルは,高分子混合物で充填され,回転シリンダが部分的に浸されたカップとして形成される。シリンダが回転することで高分子混合物の外面を濡らし,反対側にテイラーコーンを形成する。このようにして,繊維の形成が可能となる。より最近の特許文献,例えば特許文献8〜11は,同じ動作原理を有する極めて類似する無噴射の構成を記載している。こうしたニードルレス回転ノズルの主な短所は,紡糸処理中の高分子混合物のパラメータが変化することである。これは,カップの内側及びシリンダの広範な表面上で紡糸中の混合物の要素の連続する表面反応及び蒸発が生じるためである。したがって,紡糸中の混合物が処理中に著しい変化を受ける(特に,密度,粘度,化学成分等に関して)。このため,適用される繊維の特性も変化する。このような特性(繊維の直径,化学成分及び形態)の変化はいかなる制御方法によっても影響を受けない。多くの場合,紡糸処理は数分後に自然に止まり,紡糸中の混合物の全体積を取り替える必要がある。したがって,不完全に処理された紡糸混合物の成分が全く不明であり,この紡糸混合物の再利用が不可能であるため,生産が非効率で,かつ,費用が嵩む。別の短所は,本願出願人によって実施された,静電場の分布の数値シミュレーションから生じる。この短所は,テイラーコーンが生じる活性表面が(毛細管ノズルの使用と比較して)比較的大きいことである。著しく小さい勾配がニードルレスノズルの表面にあり,その外部静電力は,紡糸処理を開始するのに十分な強さではない。この技術は紡糸が困難な材料を処理するために使用することができない。
【0010】
このカテゴリーは,いわゆるフラッディング電極(flooding electrode)と呼ばれるものも含み,高分子混合物が凸体上を流れる領域,或いは高分子混合物が溢れる領域に繊維を形成することができる(特許文献12)。しかしながら後者の方法は,大量の高分子混合物を消費し,再利用の適切な実現性を提供しない。導電体の凸面上に電場の十分な勾配がなく,紡糸が困難な高分子混合物の処理を全く不可能なものにする。
【0011】
ある特殊なグループでは,より効率的な方法でテイラーコーンの形成を補助し,かつ紡糸処理の開始及び進行を補助する他の原理を用いる紡糸機構を含む。これは特に,従来技術によってナノ繊維又はマイクロ繊維に転換することができない混合物にとって望ましい。特許文献13〜15,並びに,ジ,ゴシュら(Ji,Ghosh et al)(2006年),メデイロス,グレンら(Medeiros,Glenn
et al)(2009年)若しくはラーソン,スプレッツら(Larsen,Spretz et al)(2004年)に記載の通り,静電力の効果は,毛細管ノズルの近傍で流れる空気の接線成分によって更に補助され得る。このような温風ノズルは,予熱空気が吹き付けられる周辺での細い毛細管ニードルの使用と併用される。空気流によって生成される接線力は高分子溶液の表面に作用し,これによりテイラーコーンの形成及び繊維の形成を補助する。したがって,この温風ノズルは,紡糸が困難な高分子混合物の処理に使用される。後者の構成の利点は,空気流の温度が,例えば高分子の放射状組織(polymeric ray)(繊維)の急速な凝固を積極的に補助できるように制御されることである。これが上記の原理が非常に望ましいことの理由である。更に,予熱空気は堆積チャンバ内の気候条件に好ましい影響を与え,よって,高分子混合物に含まれる溶媒の蒸発を加速する。高分子溶液の物理的及び化学的特性に関し,後者の技術は毒性溶液又は界面活性剤の頻繁な使用を必要としない。それにも関わらず,この技術の主な短所は,上記と同様,紡糸処理の効率が低く,かつ,毛細管ノズルの保守及び清掃が複雑なことである。上記全ての技術的解決策の更なる短所は,ノズルの複雑な形状設計にある。細いノズルは導電材料によって包囲されており,該導電材料は,原理上,強い静電力の作用を受けることが特に望ましいノズルのオリフィス周辺に生成された静電場の勾配を実質的に抑制する。このような静電力の減少は,空気流によって生成される力の付加的な作用にも関わらず,紡糸処理の開始を妨げる。別の短所は,金属ノズルに予熱空気を直接接触させることに関し,ここでは,熱伝導によって高分子混合物を加熱し,場合によっては凝固させる。そして,凝固された混合物が,ノズルのオリフィスの内側に堆積し,これを詰まらせ,後続の処理の中断を引き起こす。
【0012】
別の公知の紡糸ノズルはバブルノズルである。バブルノズルは2つの同軸チューブから構成されており,内側部分は空気を吹き付け,外側部分は高分子溶液の投与し,この高分子溶液は空気流の作用によって肉薄の泡に形成される。こうした肉薄の泡の形成は,特許文献16に記載の通り,処理の開始及びその後の繊維の形成に寄与する。
【0013】
最後に,上記複数のタイプを組み合わせることも周知である。例示的な態様は,特許文献17に記載の通り,螺旋状の回転ワイヤを備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】米国特許第0705691号公報
【特許文献2】米国特許第0692631号公報
【特許文献3】国際公開第2007035011(A1)号公報
【特許文献4】国際公開第2004016839(A1)号公報
【特許文献5】国際公開第2007061160(A1)号公報
【特許文献6】米国特許第1975504号公報
【特許文献7】米国特許第2048651号公報
【特許文献8】欧州特許出願公開第1409775(A1)号公報
【特許文献9】国際公開第2005024101(A1)号公報
【特許文献10】国際公開第2009156822号公報
【特許文献11】米国特許出願公開第2008150197(A1)号公報
【特許文献12】チェコ特許出願公開第2009−0425A3号公報
【特許文献13】国際公開第2005033381号公報
【特許文献14】国際公開第2010143916(A2)号公報
【特許文献15】国際公開第2010144980(A1)号公報
【特許文献16】国際公開第2009042128号公報
【特許文献17】国際公開第2010043002(A1)号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明の目的は,静電紡糸方法において使用可能で,かつナノ繊維材料又はマイクロ繊維材料の製造のために使用可能な複合ノズルの新規な設計解を呈示することである。本発明による紡糸ノズルは,当該技術分野で周知のノズルの短所を除去する。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的は,ナノ繊維又はマイクロ繊維を製造するための複合紡糸ノズルであって,前記複合紡糸ノズルが,薄肉電極と,前記薄肉電極の第1の壁に隣接する第1の非導電体とを備え,前記第1の非導電体が,前記薄肉電極と対向し,かつ,並列(an array of)の溝が形成された壁を有し,前記溝が前記複合紡糸ノズルの遠位端へ延びる複合紡糸ノズルにより,大方達成される。前記溝は,その近位端が,紡糸混合物の供給源に接続される。集電極が,複合紡糸ノズルの遠位端から所定の距離を有する場所に配置されており,電圧源は前記集電極と前記薄肉電極との間に配線される。
【0017】
本願の好適な実施形態において,前記複合紡糸ノズルは,前記薄肉電極の第2の壁に隣接し,かつ,前記複合紡糸ノズルの近位端から遠位端へ空気を向ける第2の非導電体を更に備える。
【0018】
本発明の別の好適な実施形態において,前記薄肉電極は,表面に溝を設けた円筒形の前記第1の非導電体を内部に収容した円筒状外殻の形状を有し,一方,気体媒質を前記複合紡糸ノズルの近位端から遠位端へ向けるための前記第2の非導電体が円筒状外殻として形成される。前記薄肉電極は,非導電材料から成る円筒状ケーシングに収容される。非導電材料から成る前記円筒状ケーシングと前記第2の非導電体との間には,同軸の内部空間があり,後者は空気を複合紡糸ノズルの遠位端へ向けるように配置される。
【0019】
本実施形態は,非導電材料から成る前記円筒状ケーシングの遠位端が,前記薄肉電極の遠位端の高さよりも下に位置する場合に特に有利である。
【0020】
本発明の別の好適な実施形態において,前記薄肉電極,前記第1の非導電体及び前記第2の非導電体は板状の形状を有し,前記薄肉電極の前記第1の壁は前記第1の非導電体に隣接し,前記薄肉電極に隣接する後者の表面は前記薄肉電極の前記遠位端へ延びる前記溝を設ける。薄肉電極の第2の壁に対向して第2の非導電体が配置され,該第2の非導電体と薄肉電極との間に,空気を複合紡糸ノズルの遠位端へ向けるための空間を画定する。
【0021】
本発明によるナノ繊維材料又はマイクロ繊維材料を製造するための複合紡糸ノズルの更に別の好適な実施形態において,前記ノズルは第3及び第4の非導電体を備え,前記薄肉電極,前記第1,第2,第3及び第4の非導電体は,それぞれ板状の形状を有する。前記薄肉電極の前記第2の壁は,前記第3の非導電体の第1の壁に隣接し,前記薄肉電極に隣接する後者の表面は,近接する(proximal)前記薄肉電極の前記遠位端へ延びる溝を備える。前記第2の非導電体は前記第1の非導電体の前記第2の壁に対向して配置され,前記第2の非導電体と前記第1の非導電体との間に,空気を前記複合紡糸ノズルの前記遠位端へ向ける空間を画定する。前記第4の非導電体は,前記第3の非導電体の第2の壁に対向して配置され,前記第4の非導電体と前記第3の非導電体との間に,空気を前記複合紡糸ノズルの前記遠位端へ向ける空間を画定する。
【0022】
本発明を,添付図面を参照して更に詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明による一端直線型複合紡糸ノズルの斜視断面図
【
図3】本発明による両端直線型複合紡糸ノズルの斜視断面図
【
図5】本発明による複合紡糸ノズルの円筒状の装置を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明による一端直線型複合紡糸ノズルの例示的な実施形態を
図1及び
図2に示す。本実施形態において,薄板の形状を有する薄肉電極1の第1の壁は第1の非導電体2の第1の壁に隣接し,前記第1の非導電体2は同じく板状の形状を有する。第2の板状の非導電体4が,薄肉電極1の第2の壁に対向し,かつこれと平行に配置されており,前記第2の壁は内部空間3によって前記第2の非導電体4から分離される。薄肉電極1は高圧電源(図示せず)に接続される。第1の非導電体2は,互いに実質的に平行で,近接する直線型複合ノズルの遠位端6へ延びる並列の溝5を備える。複合ノズルの遠位端6は,直線型複合ノズルの一端であり,この周辺で高分子溶液がノズル内に供給された後に紡がれる端部を意味する。この例示的な実施形態において,溝5の断面積の寸法は1×2mmである。しかし,紡がれる高分子溶液の特性に依って他の寸法も考えられる。内部空間3は空気を供給し,空気流を直線型複合ノズルの遠位端6へ向ける。集電極(図示せず)は,複合紡糸ノズルの遠位端6から所定の距離を有する場所に配置され,高電圧源(これも図示せず)が集電極と薄肉電極1との間に連結される。
【0025】
ノズルが動作すると,高分子溶液は,溝5により複合ノズルの遠位端6に向かって押出される。続いて,高分子溶液が導電性の薄肉電極1の縁に到達した後,該高分子溶液は小液滴又は曲率半径の小さい連続する薄層に形成される。毛細管力は表面張力に依存し,各液体の表面の要素の大きさに対して正比例の関係で依存し,かつ,その曲率半径に対して反比例の関係で依存するため,小液滴は紡糸処理においてマイクロ繊維又はナノ繊維の製造のために理想的な源である。薄肉電極1の遠位端で生成された静電場の著しい勾配は,液滴の抽出を誘導し,高分子溶液から繊維を形成する。次に,この液滴は集電極に向かって移動し,後者は本実施形態において0電圧を有する。この液滴の移動は,直線型複合ノズルの遠位端6に向けられる空気流によっても補助される。同時に形成されるマイクロ繊維又はナノ繊維の数は,溝5の数に略等しい。よって,繊維の数は実用的な実現可能性に関してのみ制限される。本発明による一端直線型複合紡糸ノズルの使用は,安定した成分特性及び品質特性を有するマイクロ繊維又はナノ繊維の製造における効率性を高める。このことは,高分子溶液が,液滴が直線型複合ノズルの遠位端で形成される前に周囲空気に接触せずに,液滴の発生直後にマイクロ繊維又はナノ繊維を形成するため,一端直線型複合ノズルが,処理される高分子溶液を周囲環境の悪影響から保護するという事実による。したがって,高分子溶液の個々の構成要素の蒸発が防止され,マイクロ繊維又はナノ繊維の構造のばらつきが生じない。別の利点は,直線型複合ノズルの個々の部品を簡単に分解することができ,露出した溝5を有する第1の非導電体2の平坦な表面と,薄肉電極1の表面とを清掃しやすくしたため,直線型複合ノズルの保守及び清掃が容易であることに関する。
【0026】
本発明による両端直線型複合紡糸ノズルの例示的な実施形態を
図3及び
図4に示す。薄肉電極1の第1の壁は薄板の形状を有し,第1の非導電体2の第1の壁に隣接する。第2の非導電体4が,第1の非導電体2の第2の壁と対向し,かつこれと平行して配置され,前記第2の壁は内部空間3によって前記第2の非導電体4から分離される。第1の非導電体2の第1の壁は,互いに実質的に平行で,近接する直線型複合ノズルの遠位端6へ延びる並列の溝5を備える。薄肉電極1の第2の壁は第3の非導電体7の第1の壁に隣接する。第4の非導電体8が,第3の非導電体7の第2の壁と対向し,かつこれと平行して配置されており,前記第2の壁は内部空間3によって前記第4の非導電体8から分離されている。第3の非導電体7の第1の壁は,互いに実質的に平行で,近接する直線型複合ノズルの遠位端6へ延びる並列の溝5を備える。薄肉電極1は高圧電源(図示せず)に接続される。集電極(図示せず)は,複合紡糸ノズルの遠位端6から所定の距離を有する場所に配置され,高電圧源(これも図示せず)が集電極と薄肉電極1との間に連結される。例示的な本実施形態において,第1の非導電体2,第2の非導電体4,第3の非導電体7及び第4の非導電体8も板状である。
【0027】
動作において,本発明による両端直線型複合ノズルの機能は,本発明による一端直線型複合ノズルのものと類似している。ここでも,高分子溶液は,溝5を通して複合ノズルの遠位端6に向かって押出される。続いて,導電性の薄肉電極1の縁に到達した後,高分子溶液は混合され,小液滴又は曲率半径の小さい連続する薄層に形成される。薄肉電極1の遠位端6で生じた静電場の著しい勾配は液滴の抽出を誘導し,高分子溶液から繊維を形成する。次に,この液滴は集電極に向かって移動し,後者は例示的な本実施形態において0電圧を有する。本実施形態において,溝5の数は2倍に増加し,これにより紡糸処理の効率が上がる。このことは改良のための新しい可能性を作ることもできる。
図3及び
図4に示す本発明の例示的な実施形態において,第1の非導電体2の表面及び第3の非導電体7の表面に形成された溝5は,互いに直接対向して配置される。この場合,第1の非導電体2の表面に形成された溝5と,第3の非導電体7の表面に形成された溝5は,異なる液体混合物を供給するために使用することができる。反応混合物の調製が,その後の紡糸処理の開始の直前に先立って行われ得る。これにより,紡糸処理中の混合物の望ましくない反応を防ぐことができる。内部空間3は,空気を供給し,空気流を直線型複合ノズルの遠位端6へ向ける。
【0028】
ここでも,同時に形成されるマイクロ繊維又はナノ繊維の数は,溝5の数に略等しい。よって,繊維の数は実用的な実現可能性に関してのみ制限される。本発明による両端直線型複合紡糸ノズルの使用は,本発明による一端直線型複合紡糸ノズルと同様に,安定した成分特性及び品質特性を有するマイクロ繊維又はナノ繊維の製造における効率性を高める。高分子溶液は,液滴が直線型複合ノズルの遠位端で形成される前に周囲空気に接触せず,液滴の発生直後にマイクロ繊維又はナノ繊維を形成するため,一端直線型複合ノズル及び両端直線型複合ノズルの双方は,処理される高分子溶液を周囲環境の悪影響から保護する。したがって,高分子溶液の個々の構成要素の蒸発が防止され,マイクロ繊維又はナノ繊維の構造のばらつきが生じない。別の利点は,直線型複合ノズルの個々の部品を簡単に分解することができ,露出した溝5を有する第1の非導電体2及び第3の非導電体7の平坦な表面と,薄肉電極1の表面とを清掃しやすくしたため,直線型複合ノズルの保守及び清掃が容易であることに関する。
【0029】
本発明による円筒型複合紡糸ノズルの例示的な一実施形態を
図5に示す。本紡糸ノズルは,円筒状の薄肉電極1を備え,該薄肉電極1は,近位端に向かってシャンクの中を徐々に通過し,非導電材料から成る中空シリンダ10内部に収容される。円筒状の薄肉電極1は,外面に並列の溝を有する立体シリンダによって形成された第1の非導電体2を収容し,前記溝は,円筒型複合紡糸ノズルの遠位端6へ延びる。第1の非導電体2の近位端部は,第1の非導電体2を包囲するリングの形状を有し,かつ全ての溝5の近位の開口及び高分子溶液用の供給ラインの開口の双方を受容する供給チャネル11を備える。集電極9は複合紡糸ノズルの遠位端6から所定の距離を有する場所に配置され,高電圧源(図示せず)は集電極と薄肉電極1との間に連結される。円筒型複合紡糸ノズルは保持カップ12内に埋設される。薄肉電極1の近位端13は,薄肉電極1の高電圧源ラインを収容するためのチャネル15を設けたノズルホルダ14を担持する。
【0030】
本発明による紡糸ノズルの上記全ての実施形態に関して,電圧,すなわち,薄肉電極1と集電極9との電位差は,本発明による複合紡糸ノズルの機能にとって薄肉電極1自体の個別の電位よりも重要であることが明らかになる。
【0031】
動作において,本発明による円筒型複合紡糸ノズルの機能は,本発明による前記直線型複合ノズルのものと類似する。高分子溶液は,供給チャネル11から複合ノズルの遠位端6に向かって溝5を通して押出される。続いて,高分子溶液が導電性の薄肉電極1の縁に到達した後,前記高分子溶液は混合され,小液滴又は曲率半径の小さい連続する薄層に形成される。薄肉電極1の遠位端6で生じた静電場の著しい勾配は,液滴の抽出を誘導し,高分子溶液から繊維を形成する。次に,この液滴は集電極に向かって移動し,後者は円筒型複合紡糸ノズルの遠位端6に対向して配置され,かつ例示的な本実施形態において0電圧を有する。この液滴の移動は,内部空間3を通して直線型複合ノズルの遠位端6に向けられる空気流によっても補助される。同時に形成されるマイクロ繊維又はナノ繊維の数は,溝5の数と略等しい。したがって,繊維の数は実用的な実現可能性に関してのみ制限される。本発明による円筒型直線型複合紡糸ノズルの使用は,安定した成分特性及び品質特性を有するマイクロ繊維及びナノ繊維の製造における効率性を高める。このことは,高分子溶液は,液滴が直線型複合ノズルの遠位端で形成される前に周囲空気に接触せず,液滴の発生直後にマイクロ繊維又はナノ繊維を形成するため,円筒型複合ノズルが処理される高分子溶液を周囲環境の悪影響から保護するという事実による。したがって,高分子溶液の個々の構成要素の蒸発が防止され,マイクロ繊維又はナノ繊維の構造のばらつきが生じない。別の利点は,個々の部品を簡単に分解することができ,露出した溝5を有する第1の非導電体2の平坦な表面と,薄肉電極1の表面とを清掃しやすくしたため,円筒型複合ノズルの保守及び清掃が容易であることに関する。
【0032】
本発明による上記全ての実施形態による複合紡糸ノズルは,ナノ繊維又はマイクロ繊維に容易に転換できる様々なタイプの合成高分子及び天然高分子から繊維を形成することができる。薄肉電極1を使用することで,本発明による複合紡糸ノズルは静電場の勾配力を倍増させ,それにより,より強い力を高分子溶液に作用させることができる。そして,このことは繊維の形成を極めて容易にする。高分子溶液の表面に作用する付加的な接線力は,繊維,特に紡糸が困難な高分子から製造される繊維の形成を促進する。本発明による紡糸ノズルは総合的な生産性を高める。これは,静電紡糸方法によるナノ繊維又はマイクロ繊維の工業生産における使用に適している。同時に,複合ノズル内部で高分子溶液を分配するためのチャネルの領域において,詰まりが生じるリスクを最小限にし,複数のノズルを使用しても後の清掃を容易にする。高分子混合物は,紡糸処理自体の前に高温に曝されない。更に,前記混合物は密閉空間内で処理され,これにより紡糸処理の開始前に高分子溶液の物理的及び化学的特性の変化が生じることを防ぐ。
【0033】
これは,ノズルの構造上の配置によって達成され,本発明による複合紡糸ノズルの近傍における空気流線及び静電力線の分布を実証するために実施された数値シミュレーションの結果に基づく。上記結果は,合成高分子及び天然高分子の双方に関して多くの紡糸実験によって検証され,後者は紡糸が困難である。本発明によるノズルの設計は,ノズルに関して当該技術分野において周知である既存の問題点,すなわち,静電場の不適切な分布,ノズルの頻繁な詰まり及び清掃の困難性,低生産性及び紡糸処理中の高分子混合物の特性のばらつきを解消する。本発明による複合紡糸ノズルは,高分子混合物の分配及び形成の最適な方法,高電圧を受ける際の静電力線の好適な分布,並びに空気流線の好適な分布を実現する。したがって,ノズルに供給される空気の影響を最小限にすることができる。
【0034】
高分子混合物は,金属製の薄肉電極1と,隣接する第1の非導電体2,又は,場合によっては隣接する第3の非導電体7との間に形成された細い溝5を通して分配される。高分子混合物は,押出される際に,導電性の薄肉電極1の縁で自然に小液滴に形成される。高分子混合物のこのような初期形成は,テイラーコーンの生成のために好ましく,かつ,後続する紡糸処理自体の開始のためにも好ましい条件を作る。高分子混合物は,上記方法で調製された後,閉鎖空間内にとどまる。よって,高分子混合物の成分の蒸発による該高分子混合物の物理的及び化学的パラメータの望ましくない変化を効果的に防ぐことができる。本発明による複合紡糸ノズルの別の利点は,ノズルの全ての部品には,手の届かない細長い孔(毛細管チューブ等)が無いため,これらの部品の清掃が非常に容易であることである。複合紡糸ノズルの設計自体も,ノズルを非常に容易に分解することができ,大きな部品も容易に洗浄することができるように作製されている。
【0035】
薄肉電極1が,強静電場を生じる高電位に接続される場合,その静電場の最も強い勾配は薄肉電極1の小さな領域,すなわち,高分子溶液の液滴が形成されている薄肉電極1の遠位端における地点に対応する領域で生じる。静電場のこうした著しい勾配力は,テイラーコーンの形成と,後続する紡糸処理の開始のために不可欠である。複合紡糸ノズルの設計は,とりわけ,比類のない高い生産性と共に,清掃が容易であること,紡糸処理中に詰まりが生じるリスクが極僅かであることを含む,いくつかの明白な利点を有する細い毛細管ノズルに基づくことが好ましい。
【0036】
本発明に関して記載した装置の別の利点は,複合紡糸ノズルの効率が高いことにあり,これは,例えば,紡糸処理中の高分子溶液のパラメータの変化,詰まり,その後の複雑な清掃などの従来技術の短所を伴うことなしには,公知のタイプのいずれの紡糸ノズルによっても達成することはできない。こうした高い効率は,一端直線型又は両端直線型複合ノズルの平坦な表面上,又は円筒型複合紡糸ノズルの湾曲面上の分配チャネルの増加によって,更には,テイラーコーン及び後に繊維自体が形成される多くの小液滴の生成によって達成される。
【0037】
更に,複合紡糸ノズルの上記全ての実施形態は,温度の上昇により紡がれる高分子溶液の特性に影響を与えることなく,テイラーコーンの生成及びその後の繊維の形成を接線力によって補助する付加的な空気流動部品を利用する。空気の流量は,紡がれる高分子溶液の体積を増加するように制御され,よって,全処理の生産性を向上する。その他,実行できる温度制御は,個々の繊維が形成される箇所と,堆積チャンバの全体の内部との双方の環境状態に好ましい影響を与える。よって,空気の特性に関する物理量,例えば流量及び温度は,ナノ繊維材料及びマイクロ繊維材料の望ましい形態学的特性を得ることを目的として処理を制御することができる調整されたパラメータである。
【実施例1】
【0038】
本発明の好適な実施形態において,静電紡糸方法を実施するための一端複合ノズルは,
図1及び
図2に示すように,3つの平行な板状の部品を備える。厚さ5mmの第1の非導電体2は,高電圧源の電位に接続された薄肉電極1と密接に接触している。この電極の壁は厚さ1mmである。第1の非導電体2は,薄肉電極1に隣接する表面上に,高分子混合物を分配する1×2mmの寸法を有する溝5を設ける。高分子混合物は,溝5によって薄肉電極1の縁に向かって供給され,ここで,この高分子混合物は混合され,小液滴又は曲率半径の小さい連続する薄層に形成される。第2の非導電体4は,薄肉電極1の第2の壁から8mmの距離に位置しており,それにより,空気流を供給することができる内部空間3を画定する。
【実施例2】
【0039】
本発明の別の好適な実施形態において,静電紡糸方法を実施するための両端複合ノズルは,以下の順序で配置される5つの平行な板状の部品,すなわち,第2の非導電体4,第1の非導電体2,薄肉電極1,第3の非導電体7,及び第4の非導電体8を備える。したがって,中間部品は薄肉電極1であり,該薄肉電極1は厚さ1mm,高さ50mm,長さ100mmを有する板によって形成され,高電圧源の電位に接続される。薄肉電極1の表面の両端は,厚さ5mmの板で形成された第1の非導電体2及び厚さ5mmの板で形成された第3の非導電体7に密接に隣接する。第1非導電体2及び第3の非導電体7は,薄肉電極1に隣接するそれらの表面上に,2つの異なる液体混合物を分配する1×2mmの寸法を有する溝5を設ける。各混合物は,対応する溝5によって,両端直線型複合ノズルの遠位端6の中央に位置する薄肉電極1の縁に向かって供給され,そこで前記混合物が混合され,小液滴又は曲率半径の小さい連続する薄層に形成される。第2の非導電体4は,第1の非導電体2から8mmの長手方向距離に位置し,これら2つの非導電体の間に空気を供給し,該空気を複合紡糸ノズルの遠位端6へ流すように向ける内部空間3を形成する。同様に,第4の非導電体8は,第3の非導電体7から8mmの長手方向距離に位置し,これら2つの非導電体の間に空気を供給し,該空気を複合紡糸ノズルの遠位端6へ流すように向ける内部空間3を形成する。
【実施例3】
【0040】
本発明の更に別の好適な実施形態において,複合紡糸ノズルは,薄肉の中空シリンダの形状である薄肉電極1を備え,該薄肉電極1は直径50mm及び肉厚1mmである。前記シリンダの壁の内側は,立体シリンダの形状を有する第1の非導電体2に隣接する。前記立体シリンダの表面は,16本の1×2mmの寸法を有する溝5を備え,該溝5は,高分子混合物を供給する。高分子混合物は,第1の非導電体2を包囲する供給チャネル11を通して貯蔵タンクから溝5内に供給され,続いて前記溝及び後者の下流に配置されるオリフィスを通して薄肉電極1の縁に向かって押出され,その後,ここで混合物が小液滴に形成される。高分子混合物の流量は,10〜10,000μL/分の範囲である。同じく中空シリンダの形状を有する第2の非導電体4は,薄肉電極1から外方に所定の距離で固定される。この例示的な実施形態において,薄肉電極1と第2の非導電体4との間の8mmの距離は,20〜100℃の温度と,0〜1000L/分の流量の予熱空気の流れを供給する内部空間3を画定する。内部空間3は,電気絶縁特性及び断熱特性を有する非導電性中空シリンダ10を収容する。したがって,電場の勾配をよりよく集中,増強させ,熱が空気流から薄肉電極1を通して高分子混合物に伝導することを防ぎ,更に,電場のエンベロープの外周が余剰の高分子混合物を保持するように適切に成形される。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明は,静電紡糸方法によるナノ繊維又はマイクロ繊維から成る材料等の繊維材料の実験室での調製及び工業生産のために特に有用である。
【符号の説明】
【0042】
1.薄肉電極
2.第1の非導電体
3.内部空間
4.第2の非導電体
5.溝
6.遠位端
7.第3の非導電体
8.第4の非導電体
9.集電極
10.中空シリンダ
11.供給チャネル
12.保持カップ
13.近位端
14.ノズルホルダ
15.チャネル