(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記フィルタ装着面と当接する前記フィルタの面には、断面が円形状のガスケットが設けられている、請求項1〜3のいずれか1項に記載の交換型エアフィルタユニット。
前記フィルタは、HEPAフィルタと、前記HEPAフィルタより気体の流れ方向の上流側に設けられ、前記気体中の粒子の一部を捕集するプレフィルタと、を有する請求項1〜4のいずれか1項に記載の交換型エアフィルタユニット。
【背景技術】
【0002】
従来より、病院や製薬工場等の施設では、施設内の排気すべき気体に含まれる有害な粉塵を取り除くエアフィルタユニットが用いられる。このエアフィルタユニットは、作業者が使用済みエアフィルタを安全に交換するために、有害物質を取り込んだエアフィルタをビニールバッグに安全に密封して交換することができる密封交換型エアフィルタユニットとなっている。
【0003】
密封交換型エアフィルタユニットにおいて、フィルタチャンバ(フィルタケーシング)内にフィルタ支持フレームを固定しなくてもよく、フィルタの下面に補助金具を取り付ける必要もなく、フィルタの上面をフィルタチャンバの天井面に押し付けることのできるフィルタ装着機構の技術が知られている(特許文献1)。
当該フィルタ装着機構は、フィルタチャンバ内にフィルタを出し入れ自在に保持するフィルタ支持案内機構を備える。このフィルタ支持案内機構は、その底面にフィルタの挿入方向に対して左右長手のコ字状部材間に圧縮自在にばねを挟持した部材が前後2本取り付けられている。このフィルタ支持案内機構と共にフィルタを上昇させフィルタチャンバの天井面に設けたフィルタ装着面にフィルタの上面を押接するように、上記フィルタチャンバの内底面に回動軸を横設する。この回動軸に対して、連結棒を介して逆方向に回動するように連結された従動軸を設ける。回動軸とこの従動軸に偏心カムを各2個取り付け、この偏心カムのカム面にコ字状部材の底面が当接するようにフィルタ支持案内機構は載置されている。
【0004】
また、密封交換型エアフィルタにおいて安全にフィルタ交換が可能なフィルタ交換方法も知られている(特許文献2)。
具体的には、まず、密封交換型フィルタユニットのケーシングの開閉蓋を開け、収納室に収納されている袋を引き出し広げ、使用済みのフィルタを、この袋内に直接フィルタに触れることなく収納する。次に、上記袋の口縁と収納されたフィルタの間の部分で袋をヒートシールした後、そのヒートシール部で袋を切断し、使用済みフィルタ入り袋を除去する。この後、内部に新しいフィルタを入れて用意した袋の口縁を交換口外周に気密に着脱自在に取り付けるとともに、先にヒートシール切断されて口縁に残る古い袋残部を口縁から取り外して新しい袋の空間余地部に入れて、この袋を内部のフィルタと袋残部との間をヒートシールする。この後、ヒートシール部切断して上記空間余地部を分離除去した後、袋ごとフィルタをケーシング内の所定の位置に押し込み、さらに、この袋を畳んで収納室内に収納して、上記開閉蓋を閉じる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上述の公知のフィルタ装着機構は、フィルタ支持案内機構を備えるため、構造が複雑となり、使用される部材点数が多くなって重量が重くなり、設置作業に悪影響を与える。また、回動軸がフィルタチャンバの壁面から外部に延びているため、この回動軸周りの隙間から有害な粉塵のリークを防ぐために、コーキング目止め処理の作業が増えること、フィルタチャンバの壁の構成が複雑になることが問題として生じる。更に、目止め処理が不十分であると有害な粉塵がリークする虞がある。
【0007】
また、上述の密封交換型エアフィルタにおけるフィルタ交換方法では、フィルタを交換するための交換口のポートに交換用の袋が取り付けられ、このポートと当接して、フィルタチャンバの内部空間を隔離する扉がフィルタチャンバに設けられている。したがって、粉塵のリーク防止は、上記扉の上記ポートへの当接によって行われることに限定されている。このリーク防止のみでは、フィルタにより集めた有害な粉塵が外部へ漏れ出ることを十分に防げない虞がある。
【0008】
また、フィルタチャンバの内部空間に、フィルタがフィルタ装着面と当接するように上方に移動し支持するためのねじ式ジャッキをフィルタ取
付具に用いることも考えられる。しかし、ねじ式ジャッキを用いた場合、ねじ式ジャッキのため、フィルタを上方に移動し支持するには、ねじ式ジャッキの回転操作を何回も行わねばならない。特に、フィルタの安全な交換を行うために上記袋を用いる場合、回転操作は上記袋を介して行わなければならず、頻繁な回転操作により袋がねじれて袋に穴が開く場合もある。一方、ねじ式ジャッキの回動軸をフィルタチャンバの外側に延長した場合、回動軸の周りのフィルタチャンバの隙間をコーキング目止め処理をするものの、十分な目止めができず僅かな隙間から有害な粉塵が外部へ漏れ出易くなる虞がある。
また、ねじ式ジャッキをフィルタの両側の2箇所に設けた場合、2つのねじ式ジャッキを用いて、フィルタの上面の向きを一定に維持しつつフィルタの上面をフィルタ装着面にぴったりと当接させることは難しい。その理由は、ねじの巻きが不足すると、フィルタの上面の密閉不足により有害な粉塵のリークの虞があり、一方、ねじの巻きが過剰になるとフィルタを破損する虞がある、からである。また、ねじ式ジャッキを用いると、フィルタ装着機構が大きくなり重量も重くなる。
このため、密閉交換型エアフィルタユニットでは、従来に比べてフィルタをより安全に迅速に交換することが求められる。
【0009】
そこで、本発明は、交換型エアフィルタユニットにおいて、フィルタを安全かつ迅速に交換することができる交換型エアフィルタユニット、特に、軽量化が可能で、コンパクトな装置構成の交換型エアフィルタユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様は、交換型エアフィルタユニットである。当該ユニットは、
フィルタケーシングと、
前記フィルタケーシングの内部空間に設けられたフィルタと、
前記フィルタケーシングから前記フィルタを取り出すことのできる、前記フィルタケーシングに設けられた開口と、
前記フィルタケーシングの2つの内壁面に
設けられた、前記フィルタを支持する支持フレームと、
前記フィルタを、前記フィルタケーシングの内壁面に設けられたフィルタ装着面に当接させて支持固定する、前記フィルタケーシングの内壁面に取り付けられた少なくとも2つのフィルタ取
付具と、
前記開口の周りに設けられ、前記内部空間を、前記フィルタケーシングの外部と隔離する隔離用バッグと、を備える。
前記フィルタ取付具は、把持レバーと前記把持レバーの起倒に連動して前進あるいは後退する押さえ支持棒とを備えるクランプ部と、
前記把持レバーの起倒により、前記押さえ支持棒の軸線上に固定された支軸に対して、前記軸線上で移動可能な移動軸を移動させることにより、前記押さえ支持棒を前進あるいは後退させるカム機構と、を有し、
前記フィルタを新品フィルタに交換するとき、前記フィルタ装着面に当接した前記フィルタを前記開口の位置に移動させるために、さらに、前記新品フィルタを前記開口の位置から前記フィルタ装着面に当接させるために、
前記隔離用バッグを介した前記把持レバー
の起倒
の操作により前記押さえ支持棒を前進あるいは後退させる
ように構成されている。
【0011】
前記フィルタ取付具は、前記フィルタケーシングの前記開口を有する内壁面の両側の内壁面に取り付けられており、前記フィルタ取付具のそれぞれは、前記支持フレームに設けられた貫通孔を貫通するガイド棒を、前記クランプ部の両側に少なくとも2つ備えている、ことが好ましい。
【0012】
また、前記交換型エアフィルタユニットは、 フィルタケーシングと、
前記フィルタケーシングの内部空間に設けられたフィルタと、
前記フィルタケーシングから前記フィルタを取り出すことのできる、前記フィルタケーシングに設けられた開口と、
前記フィルタケーシングの2つの内壁面には、前記フィルタを支持する支持フレームと、
前記フィルタを、前記フィルタケーシングの内壁面に設けられたフィルタ装着面に当接させて支持固定する、前記フィルタケーシングの内壁面に取り付けられた少なくとも2つのフィルタ取付具と、を備え、
前記フィルタ取付具は、把持レバーと前記把持レバーの起倒に連動して前進あるいは後退する押さえ支持棒とを備えるクランプ部を有し、
前記フィルタを新品フィルタに交換するとき、前記フィルタ装着面に当接した前記フィルタを前記開口の位置に移動させるために、さらに、前記新品フィルタを前記開口の位置から前記フィルタ装着面に当接させるために、前記把持レバーを起倒して前記押さえ支持棒を前進あるいは後退させるように、前記フィルタ取付具は構成され、
前記フィルタケーシングは、さらに、前記開口の周縁の外側を覆うように前記フィルタケーシングの外壁面から立設し、前記開口の周縁の外側方向に折れ曲がった面を有する板状の立設部材と、前記立設部材の前記面と面状に固定される固定面を有し、前記立設部材の前記面と前記固定面とが固定されることにより前記開口を閉じる開口蓋と、を有する。
【0013】
前記フィルタ装着面と当接する前記フィルタの面には、断面が円形状のガスケットが設けられている、ことが好ましい。
【0014】
前記フィルタには、粒子除去フィルタとしてプレフィルタ、中性能フィルタ、高性能フィルタ(準HEPAフィルタ、HEPAフィルタ、ULPAフィルタ、超ULPAフィルタ)が使用可能である。さらに、ガス除去フィルタとして、酸性ガス除去フィルタ、アルカリ性ガス除去フィルタ、及び有機性ガス除去フィルタが前記フィルタに使用可能である。
特に、病院や製薬工場等の施設で使用される場合、前記フィルタは、HEPAフィルタと、前記HEPAフィルタより気体の流れ方向の上流側に設けられ、前記気体中の粒子の一部を捕集するプレフィルタと、を有することが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
上述の交換型エアフィルタユニットによれば、フィルタを安全かつ迅速に交換することができる。さらに、軽量化が可能で、コンパクトな装置構成とすることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】(a),(b)は、本実施形態の密閉交換型エアフィルタユニットの正面図と断面図である。
【
図2】(a)は、本実施形態に用いる一例のクランプ部を説明する図であり、(b)は、クランプ部の機構を説明する線図であり、(c)は、本実施形態に用いるガイド棒の一例を説明する図であり、(d)は、本実施形態に用いるガスケットを説明する図である。
【
図3】本実施形態に用いられるフィルタの構成を示す図である。
【
図4】本実施形態の開口周りの構成を説明する図である。
【
図5】本実施形態に用いるガイド棒の他の例を説明する図である。
【
図6A】本実施形態の密閉交換型エアフィルタユニットにおけるエアフィルタの交換の第1のステップを説明する図である。
【
図6B】本実施形態の密閉交換型エアフィルタユニットにおけるエアフィルタの交換の第2のステップを説明する図である。
【
図6C】本実施形態の密閉交換型エアフィルタユニットにおけるエアフィルタの交換の第3のステップを説明する図である。
【
図6D】本実施形態の密閉交換型エアフィルタユニットにおけるエアフィルタの交換の第4のステップを説明する図である。
【
図6E】本実施形態の密閉交換型エアフィルタユニットにおけるエアフィルタの交換の第5のステップを説明する図である。
【
図6F】本実施形態の密閉交換型エアフィルタユニットにおけるエアフィルタの交換の第6のステップを説明する図である。
【
図6G】本実施形態の密閉交換型エアフィルタユニットにおけるエアフィルタの交換の第7のステップを説明する図である。
【
図6H】本実施形態の密閉交換型エアフィルタユニットにおけるエアフィルタの交換の第8のステップを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の交換型エアフィルタユニットについて詳細に説明する。
【0018】
(交換型エアフィルタユニット)
図1(a),(b)は、本実施形態の密閉交換型エアフィルタユニット(以降、単にユニットという)1の正面図と断面図である。
図1(b)は、
図1(a)中のX−X’線に沿って切断した断面図である。
ユニット1は、フィルタケーシング2と、フィルタ3と、支持フレーム4と、フィルタ取
付具5を備える。さらに、フィルタケーシング2の壁面には、開口2aが設けられている。ユニット1では、フィルタケーシング2内にフィルタ3を備え、フィルタ3の外側にビニールバッグを畳んで収納する収納空間を備える。この収納空間の外側に、開口2aと開口蓋が設けられる。開口2aの周縁には、ビニールバッグの口縁を気密に、着脱自在に取り付けるとともに、ビニールバッグが収納空間に畳んで収納される。
【0019】
フィルタケーシング(以降、単にケーシングという)2は、ステンレス板を組み合わせて箱状を成し、排気する気体を導入して(
図1(a),(b)ではユニット1の上方から導入して)、気体中の粉塵等をフィルタ3で除去して、外部に排出する(
図1(a),(b)ではユニット1の側方から排出)。
フィルタ3は、ケーシング2の内部空間に設けられている。フィルタ3は、例えば、HEPAフィルタ(粒子径が0.3μmの粒子に対して99.97%以上の粒子捕集率を持ち、かつ初期の圧力損失が245Pa以下である性能を持つエアフィルタ)とHEPAフィルタに比べて粒子捕集率が劣り、気体中の粒子の一部を捕集するプレフィルタを備えることが好ましい。HEPAフィルタ及びプレフィルタは図示されないフィルタ枠体に収納される。フィルタ枠体には、HEPAフィルタに対して気体流れの上流側にプレフィルタが設けられる。
【0020】
開口2aは、ケーシング2の正面の壁面に設けられている。開口2aは、開口蓋8(
図1(b)参照)により閉じられる。
図1(a)では、開口2aを覆う開口蓋8はケーシング2の内部の詳細を示すために図示されていない。開口2aは、ケーシング2からフィルタ3を取り出すことのできる程度の大きさを有する。
【0021】
支持フレーム4は、フィルタ3を載せ、フィルタ3の底面から支持する部材である。支持フレーム4は、ケーシング2の2つの内壁面に設けられている。具体的には、開口2aの空けられた壁面を正面とすると、正面からみて両側の側面の壁面に支持フレーム4は設けられている。より具体的には、支持フレーム3は、後述するフィルタ取付具5の押さえ支持棒により下方から支持されている。フィルタ取付具5は、上記側面に板材7を通して固定されている。したがって、フィルタ取付具5に設けられた押さえ支持棒の前進あるいは後退により支持フレーム4は図中の上下方向に昇降する。
フィルタ取付具5は、クランプ部10とガイド棒12を備える。クランプ部10については後述する。
【0022】
ガイド棒12は、フィルタ取付具5の両側の壁面(開口2aを有する内壁面の両側の内壁面)に2つ取り付けられ、ケーシング2の側面に固定されている板材7に固定されている。支持フレーム4を昇降させるとき、支持フレーム4を下方から支えるフィルタ取付具5の支持面が小さいことから、支持フレーム4の配置が水平を維持することができるように、ガイド棒12は、フィルタ3を水平に昇降するために機能する。
【0023】
フィルタ取付具5のクランプ部10は、把持レバー10aと把持レバー10aの起倒に連動して前進あるいは後退する押さえ支持棒10bとを備える。
図2(a)は、本実施形態に用いる一例のクランプ部10を説明する図であり、
図2(b)は、クランプ部10の機構を説明する線図である。
図2(a)に示すように、把持レバー10aを矢印の方向に倒す(点線から実線に倒す)ことにより、押さえ支持棒10bが前進する。このため、フィルタ3を載せた支持フレーム4を上方に移動させることができる。
図2(b)に示す線図からわかるように、把持レバー10aを倒すことにより支軸10cの周りに把持レバー10aは回動する。このとき、把持レバー10aの途中の横方向に位置する移動軸10dは、把持レバー10aを倒すことにより図中の右方向に移動する。この移動軸10dの移動により、移動軸10dと同じ軸に軸支されている第1カム10eと第2カム10fの成す角が広がる。第1カム10eの一方の端は移動軸10gとなっており、第2カム10fの一方の端は支軸10hとなっている。これにより、第1カム10eと第2カム10fが一直線に広がることにより、移動軸10gの上方に位置する押さえ支持棒10bを上方に前進させる。
【0024】
同様に、把持レバー10aを
図2(a)中の実線の位置から矢印と反対の方向に起こす場合、
図2(b)に示す矢印と逆方向に各部分及び各軸は移動し回転する。これにより、移動軸10gの上方に位置する押さえ支持棒10bを下方に後退させる。
このようなクランプ部10の押さえ支持棒10bの前進あるいは後退の移動量はクランプ部10の各部分の寸法により定まる。したがって、本実施形態のフィルタ取付具5は、押さえ支持棒10bが最も前進したとき、フィルタ3がフィルタ装着面14に当接するように、フィルタ取付具5は、ケーシング2の高さ方向の位置に取り付けられている。このようなクランプ部10は、例示すると、角田興業社製横押し型トグルクランプKC−51B−M(5/B中)が挙げられる。クランプ部10の機構は、
図2(b)に示すような機構に限定されない。把持レバー10aを倒れた状態から引き上げることにより、押さえ支持棒10bが前進する機構であってもよい。
【0025】
したがって、フィルタ3を新品フィルタに交換するとき、フィルタ装着面14に当接したフィルタ3を開口2aの位置に移動させるために、さらに、新品フィルタを開口2aの位置からフィルタ装着面14に当接させるために、把持レバー10aを起倒して押さえ支持棒10bを前進あるいは後退させる。
【0026】
図2(c)は、ガイド棒12を説明する図である。ガイド棒12は、
図1(b)に示すように、クランプ部10を挟んで両側に2つ設けられている。2つのガイド棒12はそれぞれ、フィルタ3を載せた支持フレーム4を貫通している。このため、支持フレーム4は、ガイド棒12に沿って上下に昇降する。ガイド棒12は、クランプ部10を挟んで両側に
設けられているので、支持フレーム4の昇降時、支持フレーム4を水平に維持することができる。
【0027】
図2(d)は、本実施形態に用いるガスケットを説明する図である。ガスケット16は、フィルタを収納する枠体3aとフィルタ装着面14を構成する天井部材18との間の気体の流れを阻止する部材であり、クロロプレン系ゴム材料により構成されている。ガスケット16は、
図2(d)に示すように断面が円形状のガスケット、すなわちかまぼこ型形状のガスケットが用いられることが好ましい。断面が円形状のガスケット16を用いることにより、従来用いていた平板状のガスケットに比べてフィルタ装着面14との圧着面積が小さくなる。このため、従来圧着面積が大きいことにより問題となっていたガスケットの残渣の天井部材18へのこびり付きを防止することができる。このこびり付きが残存すると気体のリークにつながり、フィルタとしての機能が低下するため好ましくない。また、こびり付きを剥がすのに時間と労力を要する。断面が円形状のガスケット16を用いることで、フィルタ装着面14にガスケット14が圧着しても圧着面積が広くないため、残渣がフィルタ装着面14に残ることは少ない。
【0028】
図3は、本実施形態に用いるフィルタの構成を示す図である。
図3に示されるように、フィルタ3は、HEPAフィルタ3bと、HEPAフィルタ3bより気体の流れ方向の上流側に設けられ、気体中の粒子の一部を捕集するプレフィルタ3cと、を有することが好ましい。従来は、プレフィルタとHEPAフィルタを別々のユニットに設け、別々に交換していた。しかし、このような装置では、ケーシングが大型化していた。この点から、HEPAフィルタ3bとプレフィルタ3cを同じフィルタ3内に収納する構成とすることが好ましい。プレフィルタ3cとHEPAフィルタ3bとの間に間隔を設けているが、必須ではない。使用されるプレフィルタとHEPAフィルタは、特に限定されず、公知の物が用いられる。例えばプレフィルタ3cにはガラス長繊維をカール状にしたマット状物等が用いられ、HEPAフィルタ3bには、ガラス繊維紙をプリーツしセパレータで間隔を保持したセパレータタイプのHEPAフィルタが用いられる。
【0029】
図4は、本実施形態の開口周りの構成を説明する図である。開口2aは、ケーシング2から立設した管状の開口ポート20によって形成されている。開口ポート20の外周側壁には、弾性Oリング2c,2d,2eがビニールバッグ24を開口ポート20の外周側壁との間に挟むように配置されている。弾性Oリング2eは、ビニールバッグ24の端部に設けられてビニールバッグ24と一体化されている。ビニールバッグ24は、折り畳まれて
図1(b)に示す収納空間S(
図1(b)参照)に収納されている。ビニールバッグ24は、後述するようにフィルタ3を新品フィルタと交換するときフィルタ3を直接触れることなく、密封状態で交換するために用いられる。ビニールバッグ24は、公知の材料と製法により作製されるものであればよく、限定されない。
【0030】
また、ケーシング2は、さらに、開口2aの周縁の外側を覆うようにケーシング2の外壁面から立設し、開口2aの周縁の外側方向にアングル状に折れ曲がった面26を有する板状の立設部材28を有する。さらにケーシング2は、立設部材28の面26と面状に固定されるアングル状に曲がった固定面30を有する開口蓋8を有する。立設部材28の面26と固定面30とは部材32を介して面状に固定される。立設部材28の面26と固定面30とは、ボルト31a及びナット31bを用いて部材32を介して面状に固定される。このような固定は、開口2aの周縁の外側に複数個所、例えば16箇所で行われる。したがって、開口2aは、ビニールバッグ24で覆われてケーシング2の内部空間と隔離され、さらに、開口蓋8により、開口2aは外部空間から隔離されている。したがって、ケーシング2の内部空間は、ニ重に隔離されている。このように二重の隔離構造とするのは、開口2aを開口蓋8で直接塞いでケーシング2の内部空間を隔離すると、開口2aの先端と開口蓋8との接触によりビニールバッグ24が損傷し易くなるばかりでなく、開口2aと開口蓋8との当接部分が、開口2aの先端の細い領域となり、ケーシング2の内部空間から有害な粉塵がリークし易くなる。また、ビニールバッグ24の口縁が外部空間に位置する場合は、紫外線を受けて劣化し易くなる。このため、本実施形態のように、立設部材28の面26と当接面30とは、ボルト30及びナット31を用いて面状に固定されるとともに、開口2aの構造を二重隔離構造として、有害な粉塵のリーク防止を高め、かつビニールバッグ24を紫外線から保護することが好ましい。
【0031】
なお、本実施形態のケーシング2は、ステンレス板等の板材を組み合わせて構成されたものである。板材同士を固定する場合、リーク防止の信頼性の観点から、板材を全溶接するが、点溶接を行うこともできる。その場合、点溶接以外の部分は、コーキング材で目止めを行うとよい。このように点溶接を行うことにより、ケーシング2の重量を低減することができる。
本実施形態におけるガイド棒12は、
図2(c)に示すように、支持フレーム4に設けられた貫通孔を貫通する棒であるが、
図5に示すように支持フレーム4に固定された中空パイプ34を貫通させた棒であってもよい。
【0032】
(フィルタ交換方法)
フィルタ3は、有害な粉塵等を収集しているので、作業者はフィルタ3を密閉した状態で交換作業をする必要がある。以下、このフィルタ3の密閉状態を維持したままフィルタを交換する方法を説明する。
【0033】
まず、
図6Aに示すように、開口蓋8を開け、
図6Bに示すように、ケーシング2内の収納空間に畳まれているビニールバッグ24を引き出して広げ、
図6Cに示すように、使用済みのフィルタ3を取り外して、フィルタ3に直接触れることなく、ビニールバッグ24内にフィルタ3を取り込む。フィルタ3を取り外すとき、フィルタ取付具5のクランプ部10の把持レバー10aを引き起こすことにより、フィルタ3を開口2aの位置に下降させ、下降したフィルタ3を支持フレーム4から降ろしてビニールバッグ24の中に取り込む。把持レバー10aの引き起こし、フィルタ3の支持フレーム4からの降ろし作業は、作業者がビニールバッグ24の外側から手作業により行う。
【0034】
次に、
図6Cに示すように、ビニールバッグ24の先端側の口縁24aと収納されたフレーム3の間の部分24bでビニールバッグ24をヒートシールする。この後、
図6Dに示すように、ヒートシールした部分24bでビニールバッグ24を切断する。これにより、フィルタ3を密封した使用済みのフィルタ3を取り除く。このとき、ケーシング2側に取り残されたビールバッグ24の残部24cはヒートシールにより口が塞がれているので、ケーシング2の内部空間は閉ざされた状態を維持する。したがって、この場合においてもケーシング2の内部空間に残留する有毒な微粒子等は外部に漏れ出ない。
【0035】
次に、
図6Eに示すように、新品のフィルタ3’を底部に収納したビニールバッグ24’を用意し、
図6Fに示すように、ビニールバッグ24’の口縁24a’が残部24cを覆うように、Oリング2e’を端部に設けたビニールバッグ24’を残部24cの上から重ねて開口2aの周縁に被せる。
このとき、
図6Fに示すように、開口2aに設けられ、残部24cを挟んで保持する弾性Oリング2c,2dから残部24cを外しながら、同時に、Oリング2e’を端部に設けた新たなビニールバッグ24’の口縁24a’を弾性Oリング2c,2dに挟ませる。こうして、ビニールバッグ24’を、ケーシング2の内部空間を閉ざした状態で、開口2aの装着することができる。このような残部24cの開口2aからの取り外しと、ビニールバッグ24’の装着は、作業者の手作業により行われる。
【0036】
この後、
図6Gに示すように、開口2aから取り外された残部24cは、ビニールバッグ24’の底部に設けられたポケット部24b’に取り込み、ポケット部24b’とビニールバッグ24’の接続部分がヒートシールされた後、この部分が切断される。これにより、残部24cは、ポケット部24b’に収納され密封された状態でビニールバッグ24’から除去される。ビニールバッグ24’は、ポケット部24b’との間の接続部分がヒートシールされ、この接続部分が切断されるので、残ったビニールバッグ24’の本体は、穴は開いていない。この状態で、
図6Hに示されるように、ビニールバッグ24’内にあるフィルタ3’は、ビニールバッグ24’の外側から、ケーシング2内の支持フレーム4に載せられる。フィルタ3’が載せられた支持フレーム4を、フィルタ取付具5のクランプ部10の把持レバー10aを倒して上昇させ、フィルタ3’をフィルタ装着面14に当接させて固定する。この後、ビニールバッグ24’は、折り畳まれて収納空間内に収納される。最後に開口蓋8を閉じる。
【0037】
このように、フィルタ交換時においても、ビニールバッグ24及びビニールバッグ24’を用いてケーシング2の内部空間を外部と遮断した状態でフィルタを取り替えることができる。したがって、フィルタ3を安全に交換することができる。このとき、フィルタ3をフィルタ装着面14に当接させて装着するとき、作業者はビニールバッグ24,24’を介して装着するので、作業者の手作業は簡単であることが好ましい。従来のような回動軸を回す操作やジャッキを用いたときの回転操作では、ビニールバッグ24,24’が損傷し易い。このため、フィルタの装着の際、把持レバー10aのように起倒する単純な操作であることが有効である。したがって、フィルタ3を迅速に交換することができる。
【0038】
本実施形態のフィルタ取付具5は、ケーシング2の開口2aを有する内壁面の両側の内壁面に取り付けられており、フィルタ取付具5のそれぞれは、支持フレーム4に設けられた貫通孔を貫通するガイド棒12を、クランプ部10の両側に少なくとも2つ備えているので、支持フレーム4を常に水平に維持することができ、フィルタ3をフィルタ装着面14に傾斜させることなくケーシング2に装着することができる。
【0039】
さらに、本実施形態のケーシング2では、開口2aの周縁の外側を覆うようにケーシング2の外壁面から立設し、開口2aの周縁の外側方向に折れ曲がった面を有する板状の立設部材28と、立設部材28の面26と面状に固定されるアングル状に曲がった固定面30を有し、立設部材28の面26と固定面30とが固定されることにより開口2aを閉じる開口蓋8がケーシングに設けられる。すなわち、開口2aは、二重の隔離構造となっている。このため、開口2aを開口蓋8で直接塞いでケーシング2の内部空間を隔離する場合に比べて、開口2aの先端と開口蓋8との接触によりビニールバッグ24の損傷を抑制できる。さらに、ケーシング2の内部空間から有害な粉塵がリークするのを防止する。また、ビニールバッグ24の口縁が外部空間に露出していないので、紫外線による劣化を防止する。
【0040】
また、本実施形態では、フィルタ装着面14と当接するフィルタ3の面には、断面が円形状のガスケット16が設けられている。このため、フィルタ装着面14には、ガスケット16の残渣が付着し難く、残渣の付着に起因する気体のリークが抑制できる。
【0041】
交換するフィルタ3は、HEPAフィルタと、このHEPAフィルタより気体の流れ方向の上流側に設けられ、気体中の粒子の一部を捕集するプレフィルタとを有して構成される。このため、従来のように、HEPAフィルタとプレフィルタを別々のケーシングに配置した場合に比べてユニット1を小型にすることができ、さらに、重量も低減できる。すなわち、ユニット1は、軽量化が可能でコンパクトな装置構成である。
【0042】
以上、本発明の交換型エアフィルタユニットについて詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良や変更をしてもよいのはもちろんである。