(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記接触部材は、前記経路の上方に吊るされており、下端が前記基板に接触すると、前記下端が前記第1のステージの移動方向に変位するように弾性変形する請求項5に記載の基板製造装置。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に説明する実施例による基板製造装置は、ノズルヘッドと、ノズルヘッドに対して処理対象物を相対的に移動させる移動装置とを有する基板製造装置に適用される。特に、
製造工程で変形することがある基板(例えばプリント基板)を処理対象物とする基板製造装置に適用される。この基板製造装置は、ノズルヘッドから液滴を吐出させることにより、基板の表面に液滴を着弾させる。
【0013】
液滴の着弾点の位置精度を許容範囲内に収めるために、ノズルヘッドと処理対象物との間隔が適切な値に設定される。位置精度を高めるためには、ノズルヘッドと処理対象物との間隔を狭くすることが好ましい。その反面、間隔を狭くしすぎると、ノズルヘッドの処理対象物とが接触する危険性が高まる。
【0014】
処理対象物が保持される保持面を高さの基準としたとき、ノズルヘッドの下端よりも低い位置に接触部材を用意し、この接触部材を処理対象物の移動経路上に配置すれば、処理対象物がノズルヘッドに接触する前に、接触部材に接触する。以下の実施例においては、処理対象物と接触部材との接触を契機として、処理対象物がノズルヘッドに接触することを回避することが可能である。
【0015】
[実施例1]
図1に、実施例1による基板製造装置の平面図を示す。水平面をxy面とし、鉛直上方をz軸の正の方向とするxyz直交座標系を定義する。実施例1による基板製造装置は、第1の処理系20Aと第2の処理系20Bとを有する。
【0016】
以下、第1の処理系20Aの構造について説明する。第1のy方向リニアガイド21Aに案内されて、第1の中間テーブル22Aがy方向に移動する。第1の中間テーブル22Aに第1のx方向リニアガイド23Aが取り付けられている。第1のステージ25Aが、第1のx方向リニアガイド23Aに案内されてx方向に移動する。第1のステージ25Aは、第1のy方向リニアガイド21Aのストロークの範囲内でy方向に移動すると共に、第1のx方向リニアガイド23Aのストロークの範囲内でx方向に移動する。第1のステージ25Aの上面に基板35が保持される。基板35は、例えば真空チャックにより、第1のステージ25Aの上面に固定される。第1の移動機構26Aが、第1の中間テーブル22A及び第1のステージ25Aを、それぞれy方向及びx方向に移動させる。制御装置30が第1の移動機構26Aを制御する。
【0017】
第2の処理系20Bは、x軸に垂直な仮想平面に関して、第1の処理系20Aと面対称の構造を有する。すなわち、第2の処理系20Bは、第2のy方向リニアガイド21B、第2の中間テーブル22B、第2のx方向リニアガイド23B、第2のステージ25B、及び第2の移動機構26Bを含む。第2の移動機構26Bは、制御装置30によって制御される。
【0018】
第1の中間テーブル22Aと第2の中間テーブル22Bとは、x方向に相互に隔てられた平行な経路に沿って移動する。第1のステージ25Aがx方向に関して定位置に配置されているとき、第1のステージ25A及び第1の中間テーブル22Aは、第2の中間テーブル22Bと接触することなく、y方向にすれ違うことができる。同様に、第2のステージ25Bが定位置に配置されているとき、第2のステージ25B及び第2の中間テーブル22Bは、第1の中間テーブル22Aと接触することなく、y方向にすれ違うことができる。
図1においては、第1のステージ25A及び第2のステージ25Bが、共に定位置に配置された状態を示している。
【0019】
第1のステージ25Aがy方向に関して受け渡し位置に配置され、x方向に関して定位置に配置されているとき(
図1の状態)、第1のステージ25Aと基板搬送装置(図示せず)との間で基板35の受け渡しが行われる。同様に、第2のステージ25Bがy方向に関して受け渡し位置に配置され、x方向に関して定位置に配置されているとき(
図1の状
態)、第2のステージ25Bと基板搬送装置(図示せず)との間で基板35の受け渡しが行われる。
【0020】
第1のステージ25Aが定位置に配置されているときの、第1のステージ25Aの経路の上方に、第1の撮像装置31Aが配置されている。同様に、第2のステージ25Bが定位置に配置されているときの、第2のステージ25Bの経路の上方に、第2の撮像装置31Bが配置されている。
【0021】
図2に、第1のステージ25Aが第1の撮像装置31Aの下方に配置された状態を示す。第1の撮像装置31Aは、その下方に配置された基板35に形成されているアライメントマークを撮像する。第2の撮像装置31Bは、第2のステージ25Bに保持されている基板35に形成されたアライメントマークを撮像する。
【0022】
図3に、第1のステージ25Aがx方向に関して処理位置に配置された状態の平面図を示す。処理位置は、x方向に関して、第1のステージ25Aの定位置と第2のステージ25Bの定位置との中間に位置する。第1のステージ25Aは、定位置と処理位置との間で、x方向に移動可能である。第2のステージ25Bも、同様に、第2のステージ25Bの定位置と処理位置との間でx方向に移動可能である。第1のステージ25Aの処理位置と、第2のステージ25Bの処理位置とは、x方向に関して同じ位置に画定される。
【0023】
第1のステージ25Aが処理位置に配置されているときの、第1のステージ25Aの経路の上方に、接触検出装置40及びノズルヘッド50が配置されている。第1のステージ25Aは、受け渡し位置から、x方向に関して定位置に配置された状態で第1の撮像装置31Aの下方を通過した後、x方向に関して処理位置に配置された状態で、接触検出装置40の下方を通過し、ノズルヘッド50の下方に進入する。
【0024】
図4に、第1のステージ25Aがノズルヘッド50の下方に配置された状態を示す。ノズルヘッド50は、その下方に配置された基板35に向けて、薄膜材料の液滴を吐出する。第1のステージ25Aをy方向に移動させながら、ノズルヘッド50から薄膜材料の液滴を吐出することにより、基板35に薄膜パターンが形成される。
【0025】
図5に、第2のステージ25Bが、x方向に関して処理位置に配置されて、接触検出装置40の下方に配置された状態を示す。
【0026】
接触検出装置40は、第1のステージ25Aに保持された基板35と、第2のステージ25Bに保持された基板35とに対して、共通に使用される。ノズルヘッド50も、第1のステージ25Aに保持された基板35への薄膜パターンの形成と、第2のステージ25Bに保持された基板35への薄膜パターンの形成とに共通に使用される。
【0027】
図6に、接触検出装置40及び第1のステージ25Aの正面図を示す。定盤37の上に、第1のy方向リニアガイド21A及び第2のy方向リニアガイド21Bが固定されている。第1の中間テーブル22Aが第1のy方向リニアガイド21Aに、y方向に移動可能に支持されている。第1の中間テーブル22Aの上に、第1のx方向リニアガイド23Aが固定されている。第1のステージ25Aが、第1のx方向リニアガイド23Aに、x方向に移動可能に支持されている。第1のステージ25Aの上面に基板35が保持される。
図6では、第1のステージ25Aが処理位置に配置されている状態を示している。
【0028】
接触検出装置40が、処理位置に配置された第1のステージ25Aの上方に、門形フレーム38(支持部材)により支持されている。門形フレーム38は、第1のy方向リニアガイド21Aにより画定される第1のステージ25Aの経路と、第2のy方向リニアガイ
ド21Bにより画定される第2のステージ25Bの経路とを跨ぐように配置されている。
【0029】
図7に、第1のステージ25A、接触検出装置40、及びノズルヘッド50の側面図を示す。定盤37の上に、第1のy方向リニアガイド21Aが固定されている。第1の中間テーブル22Aが、第1のy方向リニアガイド21Aに案内されてy方向に移動する。第1の中間テーブル22Aに第1のx方向リニアガイド23Aが固定されている。第1のステージ25Aが、第1のx方向リニアガイド23Aに案内されてx方向に移動する。第1のステージ25Aの経路の上方に接触検出装置40及びノズルヘッド50が配置されている。
【0030】
昇降機構45が接触検出装置40を昇降させる。他の昇降機構55が、ノズルヘッド50を昇降させる。なお、1つの昇降機構で、接触検出装置40及びノズルヘッド50の両方を昇降させる構成としてもよい。
【0031】
接触検出装置40から制御装置30に、接触検知信号が送られる。第1の移動機構26Aが、制御装置30からの指示を受けて、第1の中間テーブル22A及び第1のステージ25Aを移動させる。
【0032】
図8に、第1のステージ25A、接触検出装置40、及びノズルヘッド50の、より詳細な側面図を示す。第1のステージ25Aの経路の上方に、接触部材41が吊るされている。接触部材41は、例えば板状の外形を有し、y方向に垂直な姿勢で静止している。接触部材41は、その上端において、x方向に平行な回転軸42を介して昇降機構45(
図7)に揺動可能に支持されている。
【0033】
仮止め機構44が、接触部材41を、y方向に対して垂直な姿勢で、すなわち接触部材41の下端が最も低い位置に配置される姿勢で、仮止めする。接触部材41の下端に、接触検出装置40からノズルヘッド50に向かう向きの力が加わると、接触部材41は、仮止め機構44によって仮止めされた状態から解放され、下端がノズルヘッド50に向かって変位するように振れる(姿勢を変化させる)。一例として、接触部材41が磁性材料で形成され、仮止め機構44が永久磁石で構成される。仮止め機構44と接触部材41との間に働く磁気力により、接触部材41の姿勢が仮止めされる。
【0034】
センサ43が、接触部材41の姿勢の変化を検出し、検出結果を制御装置30に送信する。センサ43として、例えば接触式変位センサを用いることができる。
【0035】
第1のステージ25Aの移動方向(y方向)に関して、ノズルヘッド50の前方と後方とに、それぞれ防御板51が配置されている。防御板51は、ノズルヘッド50に対して相対位置が固定されている。第1のステージ25Aの上面を高さの基準としたとき、仮止めされた状態の接触部材41の下端までの高さをH1、防御板51の下端までの高さをH2、ノズルヘッド50の底面までの高さをH3とする。これらの高さの大小関係は、H1≦H2≦H3である。
【0036】
高さH1は、処理対象である基板35を第1のステージ25Aに保持したときの基板35の上面までの高さより高い。このため、反り等の無い正常な基板35は、接触部材41及び防御板51の下方を通過して、ノズルヘッド50の下方に進入する。
【0037】
図9に、基板35の縁が上方に反り、第1のステージ25Aの上面から浮き上がっている場合の第1のステージ25A、接触検出装置40、及びノズルヘッド50の側面図を示す。第1のステージ25Aの上面から、基板35の浮き上がった部分の上端までの高さが、接触部材41の下端の高さH1より高い場合について説明する。第1のステージ25A
をノズルヘッド50に向かって移動させると、基板35の縁が接触部材41の下端に接触する。第1のステージ25Aをさらにノズルヘッド50に向かって移動させると、接触部材41の下端がノズルヘッド50の方向に押されて、接触部材41が傾く。センサ43が、接触部材41の姿勢の変化を検知すると、センサ43から制御装置30に、接触検知信号が送信される。
【0038】
制御装置30は、センサ43からの接触検知信号を受信すると、第1のステージ25Aがノズルヘッド50の下方に進入しないように、第1の移動機構26Aを制御する。例えば、制御装置30は、第1のステージ25Aを停止させる。このように、基板35が、高さの許容値(実施例1においては高さH1)よりも高い部分を含んでいる場合には、第1のステージ25Aがノズルヘッド50の下方に進入しない。基板35がノズルヘッド50の下方まで到達しないため、基板35の浮き上がり部分がノズルヘッド50に接触することによるノズルヘッド50の損傷を防止することができる。
【0039】
仮止め機構44は、基板35が損傷を受けない程度の弱い力で、接触部材41を仮止めしている。このため、基板35が接触部材41に接触したとしても、基板35は損傷を受けない。第1のステージ25Aが停止した場合、オペレータは、基板35の浮き上がり部分を粘着テープ等で第1のステージ25Aの上面に密着させて、浮き上がりを解消する。その後、薄膜形成処理を続行させることができる。
【0040】
図10を参照して、接触検出装置40の不具合により、基板35が接触部材41の下端に接触しても、接触検知信号が制御装置30に送信されなかった場合について説明する。第1のステージ25Aの上面から基板35の浮き上がり部分の上端までの高さが、防御板51の下端の高さH2より高い場合、基板35の浮き上がり部分が防御板51の下端に接触する。防御板51の剛性は、基板35の剛性に比べて十分大きい。このため、第1のステージ25Aがノズルヘッド50に向かって移動すると、基板35は防御板51から受ける力によって塑性変形する。防御板51は、ノズルヘッド50の底面の高さH3を超える部分を含む基板35が、ノズルヘッド50の下方に進入することを防止する。
【0041】
塑性変形した基板35は廃棄処分となるが、基板35よりも高価なノズルヘッド50の損傷を防止することができる。第1のステージ25Aがノズルヘッド50の下方を通過した後、y方向に逆向きに移動するときにも、ノズルヘッド50の損傷を回避するために、y方向に関して、ノズルヘッド50の両側に防御板51を取り付けておくことが好ましい。また、接触検出装置40(
図7)も、ノズルヘッド50の両側に取り付けてもよい。
【0042】
縁が反っている基板35の廃棄処分を少なくなくするために、接触部材41の下端の高さH1を、防御板51の下端の高さH2(
図8)より低くすることが好ましい。ノズルヘッド50の損傷を防止するために、高さH1及び高さH2を、ノズルヘッド50の底面の高さH3(
図8)より低くすることが好ましい。防御板51の下端の高さH2とノズルヘッド50の底面の高さH3とは、両者の相対位置を固定する際に調整される。接触部材41の下端の高さH1と、防御板51の下端の高さH2とは、昇降機構45、55(
図7)を動作させることにより調整される。なお、接触検出装置40及びノズルヘッド50を、1つの昇降装置で昇降させる構成とする場合には、接触部材41の下端の高さH1と、防御板51の下端の高さH2とは、両者を昇降装置に取り付ける際に、調整される。
【0043】
ノズルヘッド50の底面の高さH3は、液滴の着弾点の目標とする位置精度に応じて設定される。高い位置精度が求められる場合には、高さH3を低くしなければならない。高さH3が低くなると、防御板51の高さH2、及び接触部材41の高さH1も、高さH3に応じて低くなる。
【0044】
図8〜
図10では、第1のステージ25Aに保持された基板35の処理手順について説明したが、第2のステージ25B(
図1)に保持された基板35の処理手順も、第1のステージ25Aに保持された基板35の処理手順と同様である。
【0045】
実施例1では、第1の処理系20Aと第2の処理系20Bとの2つの処理系を含む基板製造装置を例に取り上げたが、実施例1による接触検出装置40(
図7)は、1つの処理系を有する基板製造装置にも適用することができる。例えば、第1の処理系20A(
図1)のみを有する基板製造装置においては、第1のステージ25Aが、直接第1のy方向リニアガイド21Aに案内されてy方向に移動する構成とすればよい。
【0046】
[実施例2]
図11を参照して、実施例2による基板製造装置について説明する。以下、実施例1との相違点について説明し、同一の構成については説明を省略する。
【0047】
図11に、実施例2による基板製造装置の接触検出装置40、ノズルヘッド50、及び第1のステージ25Aの側面図を示す。実施例2では、接触部材41が弾性材料、例えばゴムで形成されている。基板35の浮き上がり部分が接触部材41の下端に接触すると、接触部材41が弾性変形する。接触部材41が弾性変形したことがセンサ43で検知されると、接触検知信号が制御装置30に送信される。
【0048】
接触部材41に外力が加わっていないとき、接触部材41は、その復元力によって中立位置に静止する。このため、実施例1の仮止め機構44(
図8)は不要である。
【0049】
実施例2においても、実施例1と同様に、ノズルヘッド50の損傷を回避することができる。また、反りが生じている基板35の損傷を防止することができる。
【0050】
図1及び
図6に示したように、上記実施例1及び実施例2による基板製造装置では、第1のステージ25Aの経路と第2のステージ25Bの経路とが、x方向に相互に隔てられて配置される。ノズルヘッド50(
図1)は、第1のステージ25Aを含む第1の処理系20Aと、第2のステージ25Bを含む第2の処理系20Bとで、共用される。このため、一方の処理系で、ノズルヘッド50を用いた薄膜パターンの形成を行なってときに、他方の処理系で、基板の受け渡しや、アライメントマークの撮像等を行うことができる。
【0051】
レーザ光線を用いてステージ上の基板の高さを検出する構成を採用する場合、レーザ光源及び受光素子を、ステージの経路上に配置することは困難である。レーザ光源及び受光素子は、レーザ光線の光軸の高さから上方及び下方にはみ出しているため、レーザ光源及び受光素子をステージの経路上に配置すると、レーザ光源及び受光素子自体がステージと接触してしまうためである。
【0052】
実施例1及び実施例2のように、2系統の処理系を有する基板製造装置において、レーザ光線を用いて、ステージ上の基板の高さを検出する場合には、
図6に示した第1の処理系20Aの経路及び第2の処理系20Bの経路よりも外側に、レーザ光源及び受光素子を配置しなければならない。このため、レーザ光線の光路長が長くなってしまう。光路長が長くなると、基板の高さの検出精度が低下する。
【0053】
実施例1及び実施例2においては、門形フレーム38(
図6)が、第1の処理系20Aの経路と第2の処理系20Bの経路との両方を跨ぐように配置されている。接触部材41(
図8、
図11)の下端よりも低い位置には、接触検出装置40の他の部品が配置されていない。このため、接触検出装置40を第1のステージ25A及び第2のステージ25Bの経路と重なる位置に配置しても、接触検出装置40は、第1のステージ25A及び第2
のステージ25Bと接触することはない。接触検出装置40は、第1のステージ25A及び第2のステージ25Bの移動を妨げることなく、高精度に、許容値を超えた高さの基板35を検出することができる。
【0054】
以上実施例に沿って本発明を説明したが、本発明はこれらに制限されるものではない。例えば、種々の変更、改良、組み合わせ等が可能なことは当業者に自明であろう。