【実施例】
【0046】
・サンプル作製
メタ燐酸リチウム、メタ燐酸アルミニウム、酸化チタンの3つの原料について、その混合比を変更することにより、上記組成式のα,β(x=0.5)を調整して各種サンプルを作製した。
【0047】
粉末状のメタ燐酸リチウムの組成比が1.35または1.50または1.65、粉末状のメタ燐酸アルミニウムの組成比が0.5、粉末状の酸化チタンの組成比が1.5となるよう原料混合物を調合した。これらの混合粉末に、溶媒としてイソプロピルアルコールを加えてスラリーとし、φ10mmのジルコニアボールを用いて回転ミルにより20時間粉砕混合した。
【0048】
その後、スラリーを乾燥し、仮焼温度750℃、保持時間2時間として仮焼した。仮焼後に得られた粉末を乳鉢で解砕し、さらにφ3mmのジルコニアボールを用いて回転ミルにより96時間粉砕した。この仮焼粉末に対してパラフィンワックスを5質量%混合した後、1ton/cm
2プレスにて圧粉体とした。
【0049】
この圧粉体を焼成温度840℃、保持時間2時間で焼成し、直径約12mmの円板状である固体電解質の焼結体を得た。
作製した各サンプルのα,βについては、表1に示す通りである。
【0050】
ここで、得られたサンプルについてICP分析を行った結果、固体電解質の主たる構成元素について、焼成後の組成比は原料調合時点の金属元素組成比と分析誤差の範囲内で一致することを確認した。なお、酸素の組成比については、焼成条件等により若干変動する場合がある。また、X線回折(XRD)測定により得られた結果から、NaSICON型の結晶構造を有することを確認した。
【0051】
・サンプル評価方法
(相対密度測定)
得られた各サンプルを研磨により900μmの厚さに加工し、直径(表2点、裏2点の平均値)、厚み(5点の平均値)および重量を測定し、各サンプルの密度D(g/cm
3)を算出した。
【0052】
LiTi
2(PO
4)
3の理論密度である2.948g/cm
3を基準とし、各サンプルについて相対密度Dr(%)=D×100/2.948を算出した。
【0053】
(比誘電率測定および誘電正接測定)
得られた各サンプルを、研磨により800μmの厚さに加工し、その表裏に集電体として直径10mmのAuをスパッタで形成した。次いでインピーダンス測定器(Solartron社製、SI1260型)を用いて、周波数0.01Hz〜1MHz、実効電圧0.5Vの交流電圧を印加し、インピーダンスZの実数部Z′および虚数部Z″を測定した。なお、Z=Z′−jZ″であり、jは虚数単位である。
【0054】
測定した実数部Z′および虚数部Z″から静電容量Cp(F)を算出し、さらに比誘電率ε
rを算出した。
【0055】
まず静電容量Cpは、Cp=Z″/(2πf(Z′
2+Z″
2))(fは、周波数)により算出した。また、比誘電率εrは、式Cp=ε
0ε
r×S/d(ε
0は真空の誘電率、Sは電極面積、dは固体電解質の厚み)が周波数の全域にわたって成立するとみなし、ε
r=Cp×d/(ε
0×S)として算出した。
【0056】
また、誘電正接(tanδ)は、上記測定により得られた実数部Z′および虚数部Z″に基づいて、tanδ=−Z′/Z″により算出した。
【0057】
表1には、各サンプルの組成を示すαおよびβと、評価結果のうち相対密度(%)および比誘電率(測定周波数0.01Hz)について示す。
【0058】
【表1】
【0059】
相対密度については90%以上、比誘電率については、1.0×10
7であれば、好ましい特性であるとする。サンプルNo.3は、化学量論的組成の状態であり(α=1.50、β=3.00)、相対密度が60.9%、比誘電率が0.07×10
7といずれも低いものであった。
【0060】
相対密度について、たとえば、(α,β)=(1.50,2.95)のサンプルNo.2の相対密度は60.6%と非常に低い値であった。なお、このサンプルNo.2の焼成温度を1150℃まで上昇させても、相対密度は85.6%であり、大幅な相対密度の向上は認められなかった。これに対し、たとえば、(α,β)=(1.65,3.15)のサンプルNo.7の相対密度は97.5%と緻密化していた。
【0061】
また比誘電率について、(α,β)=(1.50,2.95)のサンプルNo.2の0.01Hzにおける比誘電率は0.1×10
7と低い値であるのに対し、(α,β)=(1.65,3.15)のサンプルNo.7の比誘電率は6.1×10
7と、大きな値を示した。
【0062】
また、サンプルNo.2およびサンプルNo.7について、固体電解質断面の走査型電子顕微鏡(SEM)写真を撮影した。
図1は、固体電解質(サンプルNo.7)の断面SEM写真を示し、
図2は、固体電解質(サンプルNo.2)の断面SEM写真を示す。サンプルNo.2では、固体電解質の焼結体全体にわたって空隙が存在し、多孔質体のような状態であった。これに対してサンプルNo.7は、固体電解質の焼結体全体が緻密化されていることがわかった。
【0063】
表1から、上記組成式において、x=0.5のとき、αおよびβは、それぞれ1.61≦α≦1.80であり、3.01≦β≦3.60であることが好ましいことがわかる。
【0064】
さらにサンプルNo.2の焼結体を研磨して厚みを50μmに薄くして表裏に直径10mmのAu集電体をスパッタで形成したところ、表裏の集電体間で短絡し、絶縁抵抗値は10Ω以下であった。断面SEM写真からもわかるように、サンプルNo.2は空隙を多く有するので、この空隙に集電体材料が入り込み、固体電解質が薄い場合は、集電体が固体電解質の内部で短絡してしまう。
【0065】
サンプルNo.7の固体電解質の焼結体を研磨して、厚みが619μm、330μm、124μm、42μmの4種類の薄型化サンプルを作製した。これらの薄型化サンプルの表裏に直径10mmのAu集電体をスパッタで形成したところ、全ての薄型化サンプルにおいて、絶縁抵抗値が1MΩ以上であり、表裏の集電体間での短絡は発生しなかった。断面SEM写真からもわかるように、サンプルNo.7は緻密化されており、空隙を有していないので、薄型化しても集電体材料が固体電解質内に入り込むことがなく、表裏の集電体間で短絡することはない。
【0066】
4つの薄型化サンプルについて、上記と同様にしてインピーダンス、誘電正接、静電容量を測定した。
【0067】
図3は、4つの薄型化サンプルのコールコールプロットを示す。横軸はインピーダンスの実数部Z′(Ω)を示し、縦軸はインピーダンスの虚数部−Z″(Ω)を示す。
図3に示すコールコールプロットからは、厚みを小さくするに従い、結晶粒子内の抵抗値を示す円弧が小さくなる傾向が見られた。
【0068】
図4は、4つの薄型化サンプルの誘電正接を示すグラフである。横軸は測定周波数(Hz)を示し、縦軸は誘電正接tanδ(−)を示す。
図4に示すグラフからは、厚みを小さくするに従い、10kHz付近に見られる主ピークが減少し、電気エネルギーの損失が抑制される傾向が見られた。
【0069】
図5は、4つの薄型化サンプルの静電容量Cpを示すグラフである。横軸は測定周波数(Hz)を示し、縦軸は静電容量Cp(F)を示す。
図5に示すグラフからは、厚みを小さくするに従い、高周波側での容量値が増加し、低周波側での容量値が減少する傾向が見られた。
【0070】
薄型化に伴う高周波側での容量値の増加は、厚みが薄くなるに従って、固体電解質内の電界強度が増加し、表面電荷密度が増大したことによるものと思われる。また薄型化に伴う低周波側での容量値の減少は、厚みが薄くなるに従って、集電体と固体電解質の界面で容量を生じさせるリチウムイオンの実質的な量が減少したためと思われる。
【0071】
図6は、固体電解質の厚みと静電容量の周波数依存性との関係を示すグラフである。横軸は固体電解質の厚み(m)の対数を示し、縦軸は静電容量の周波数依存性(−)の対数を示す。ここで、周波数依存性とは、測定周波数が1Hzの静電容量値Cpに対する測定周波数が10kHzの静電容量値Cpの比(静電容量の変化率)であり、この対数値がゼロに近いほど周波数による静電容量の差が小さい、すなわち静電容量の周波数依存性が平坦化されているといえる。
【0072】
図6に示すように、固体電解質の厚みと静電容量の周波数依存性との関係は、厚みが小さくなるにつれて静電容量の周波数依存性が直線的にゼロに近づき、両対数グラフにおいて、直線近似で良好に表せる結果であった。このような結果から、固体電解質の厚みを小さくすることにより、電源周波数に対して静電容量の分散が小さく、周波数変動に対して安定なコンデンサを提供できることがわかった。また、固体電解質の厚みを10μm以下とすることにより、周波数依存性をアルミ電解コンデンサと同等のレベル(周波数依存性の対数値が−0.1程度)にできる。
【0073】
以上の結果から、固体電解質の厚みを薄くするほど、結晶粒子内の抵抗が小さくなり、電気エネルギーの損失が抑えられ、静電容量の周波数依存性が平坦化するため、コンデンサとして好適であることがわかった。