特許第6112924号(P6112924)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6112924
(24)【登録日】2017年3月24日
(45)【発行日】2017年4月12日
(54)【発明の名称】開口部の防水装置
(51)【国際特許分類】
   E06B 5/00 20060101AFI20170403BHJP
【FI】
   E06B5/00 Z
【請求項の数】1
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-51969(P2013-51969)
(22)【出願日】2013年3月14日
(65)【公開番号】特開2014-177803(P2014-177803A)
(43)【公開日】2014年9月25日
【審査請求日】2015年12月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000239714
【氏名又は名称】文化シヤッター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089118
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 宏明
(72)【発明者】
【氏名】廣瀬 誠
(72)【発明者】
【氏名】松岡 由利子
(72)【発明者】
【氏名】中島 厚二
(72)【発明者】
【氏名】大井 勝
(72)【発明者】
【氏名】宮本 顕
【審査官】 兼丸 弘道
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−088791(JP,A)
【文献】 特開2009−191610(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06B 5/00
E04H 9/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造物の屋内側と屋外側とを連通し、かつ開閉体によって開閉される開口部に設置されるシートと、
前記シートが前記開閉体の鉛直方向下端側の所定部と、前記構造物のうち前記所定部に隣接する部分とを一体に覆うことで前記開口部の鉛直方向下端側を閉塞し、かつ前記シートの鉛直方向下端部が床面に沿って屋外側に向けて延在するように、前記シートを前記開閉体よりも屋外側に位置付けて、前記シートの幅方向の端を保持する保持部材と、
前記シートの上端部を前記開閉体に取り付ける取付部材と、を備え、
前記取付部材は、
前記シートの上端部に取り付けられるシート取付部と、前記開閉体に取り付けられる開閉体取付部と、前記シート取付部と前記開閉体取付部とを連結しかつ前記シート取付部と前記開閉体取付部との距離が水圧に応じて伸びることを許容する連結部と、を備え
前記取付部材は、粘着テープであり、
前記シート取付部は、前記シートの上端部に貼り付けられる前記粘着テープの一端部であり、
前記開閉体取付部は、前記開閉体に貼り付けられる前記粘着テープの他端部であり、
前記連結部は、粘着面同士が貼り付けられた前記粘着テープの中央部である
ことを特徴とする開口部の防水装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、開口部の防水装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、開閉体によって開閉される開口部からの浸水を抑制する技術が提案されている。例えば、特許文献1には、開閉体としてのシャッタの裏面には屈曲自在な防水シートが設けられていると共に、防水シートと対向するようにしてガイド部材にはシール部材が設けられ、シャッタに浸水しようとする氾濫水等の水圧がシャッタの表面に作用すると、防水シートがシール部材に圧接されるようになっている、浸水防止機能を備えたシャッタ装置の技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4459740号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述した特許文献1に示された技術では、開口部からの浸水を抑制することについて、なお改良の余地がある。例えば、シャッタとガイド部材との隙間以外の経路からも水が浸入する可能性がある。このために、シャッタの表面側に防水シートを保持部材により保持することが提案されている。この場合、防水シートの上端部が開閉体から外れてしまう、というなお改良の余地がある。例えば、増水時などの非常時に、水圧によって、防水シートが下方に引っ張られても、防水シートの上端部が開閉体から外れてしまうことを抑制できることが望まれている。
【0005】
本発明の目的は、防水シートの上端部が開閉体から外れてしまうことを抑制できる開口部の防水装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の開口部の防水装置は、構造物の屋内側と屋外側とを連通し、かつ開閉体によって開閉される開口部に設置されるシートと、前記シートが前記開閉体の鉛直方向下端側の所定部と、前記構造物のうち前記所定部に隣接する部分とを一体に覆うことで前記開口部の鉛直方向下端側を閉塞し、かつ前記シートの鉛直方向下端部が床面に沿って屋外側に向けて延在するように、前記シートを前記開閉体よりも屋外側に位置付けて、前記シートの幅方向の端を保持する保持部材と、前記シートの上端部を前記開閉体に取り付ける取付部材と、を備え、前記取付部材は、前記シートの上端部に取り付けられるシート取付部と、前記開閉体に取り付けられる開閉体取付部と、前記シート取付部と前記開閉体取付部とを連結しかつ前記シート取付部と前記開閉体取付部との距離が水圧に応じて伸びることを許容する連結部と、を備え、前記取付部材は、粘着テープであり、前記シート取付部は、前記シートの上端部に貼り付けられる前記粘着テープの一端部であり、前記開閉体取付部は、前記開閉体に貼り付けられる前記粘着テープの他端部であり、前記連結部は、粘着面同士が貼り付けられた前記粘着テープの中央部であることを特徴とする。
【0007】
上記開口部の防水装置では、シートの上端部を開閉体に取り付ける取付部材が、シート取付部と開閉体取付部とを連結しかつシート取付部と開閉体取付部との距離が伸びることを許容する連結部を備えているので、増水時の水圧などにより取付部材が引っ張られると、シート取付部と開閉体取付部との距離が伸びる。また、シート取付部及び開閉体取付部が粘着テープの両端部であり、連結部が粘着面同士が貼り付けられた粘着テープの中央部であるので、増水時の水圧などにより取付部材が引っ張られると、粘着テープの中央部の粘着面同士がシート取付部及び開閉体取付部に近い箇所から徐々にはがれる。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る開口部の防水装置は、シートの上端部が開閉体から外れてしまうことを抑制できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、本発明の実施形態に係る開口部の防水装置を示す斜視図である。
図2図2は、実施形態に係る開口部の防水装置により防水される開口部などを示す斜視図である。
図3図3は、図1中のIII−III線に沿う断面図である。
図4図4は、実施形態1に係る開口部の防水装置のシートが下方に引っ張られた状態を示す縦断面図である。
図5図5は、実施形態1の変形例に係る開口部の防水装置の要部の縦断面図である。
図6図6は、実施形態1の変形例に係る開口部の防水装置のシートが下方に引っ張られた状態を示す縦断面図である。
図7図7は、本発明の実施形態2に係る開口部の防水装置を示す斜視図である。
図8図8は、実施形態2に係る開口部の防水装置の取付部材を示す斜視図である。
図9図9は、実施形態2に係る開口部の防水装置の取付部材を示す他の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明の実施形態に係る開口部の防水装置につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記の実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるものあるいは実質的に同一のものが含まれる。
【0017】
[実施形態1]
図1から図4を参照して、実施形態1について説明する。実施形態1は、構造物の開口部を防水する開口部の防水装置に関する。図1は、本発明の実施形態1に係る開口部の防水装置を示す斜視図、図2は、実施形態1に係る開口部の防水装置により防水される開口部などを示す斜視図、図3は、図1中のIII−III線に沿う断面図、図4は、実施形態1に係る開口部の防水装置のシートが下方に引っ張られた状態を示す縦断面図である。
【0018】
建物等の構造物の外部開口部には、開閉体としての開閉扉が付けられることが多い。例えば、洪水時などに浸水すると商品が毀損されやすい店舗等の入口にもガラスなどで構成された開閉扉が付けられていることが多い。開閉扉には、扉間及び書く扉と開口部との間に隙間があるために、ゲリラ豪雨や洪水時には隙間を介した浸水によって店舗等の施設が被害に遭う可能性がある。
【0019】
浸水対策として、開閉扉の下部を防水板(パネル)に変更する方法も考えられるが、一般的に高額となりやすいため、ユーザーにとって受け入れにくい場合がある。
【0020】
実施形態1の開口部の防水装置1は、開閉扉の前にシートを設置して、簡易的にかつ安価に止水することを可能とする。シートは、開閉扉とその周囲の構造物とを一体に覆うことで、開閉扉と構造物との隙間を閉塞し、適切に止水することができる。よって、実施形態1の開口部の防水装置1によれば、水害による建物内部の被害を軽減することができる。
【0021】
図1に示す開口部の防水装置1は、構造物Sの開口部O(図2に示す)を閉塞し、屋外側から屋内側への水の浸入を抑制するものである。構造物Sは、例えば、工場、倉庫、車庫、店舗、家屋等の建築構造物であり、開口部Oを有している。開口部Oは、構造物Sの壁部等に形成されており、構造物Sの屋外側と屋内側とを連通している。
【0022】
屋内側、屋外側とは説明上分かりやすくするための便宜上の表現であって、屋外側とは、水が浸入する場合の上流側のことであり、屋内側とは、上流側から水が浸入する可能性がある側であり、本発明においては水が浸入してくるのを阻止や抑制したい側のことである。開閉扉や壁等とともに防水装置1を、例えば単なる道路の防水用仕切りとして使用したり、外部空間における門等の箇所に取り付ける等のように、家屋や部屋等の概念がない箇所に設けても良い。また、開口部Oは、前述の屋外側と屋内側とを連通するものとすることができる。本実施形態の開口部Oは、構造物Sの外殻をなす壁部3に形成されており、壁部3を貫通して構造物Sの屋外と屋内とを連通している。なお、これに限らず、開口部Oは、構造物Sの内部を仕切る壁部に形成されたものであってもよい。
【0023】
開閉扉4は、開口部Oを開閉する開閉体である。開閉扉4は、図2に示すように、開閉方向、本実施形態では左右水平方向に移動する一対の扉4a,4bを備えている。本実施形態では、構造物Sの開口部Oの周りの壁部3は、ガラスなどの透明叉は半透明の材料で構成されている。
【0024】
開閉扉4の一対の扉4a,4bは、図示しないガイドレールによって案内される。ガイドレールは、開口部Oの上下両端に設けられ、壁部3の表面である壁面3a,3bに平行である。なお、壁面3a,3bは、開口部Oの幅方向に互いに並べられて、互いの間に開口部Oを位置付ける。扉4a,4bの上下方向の両端部は、それぞれガイドレールの溝部に挿入されている。溝部は、開閉方向即ち左右水平方向に延在しており、扉4a,4bを開閉方向、即ち、左右方向に移動自在に案内する。また、本実施形態では、壁3及び扉4a,4bの下端部には、壁3及び扉4a,4bよりも厚い幅木5,7が設けられている。なお、本発明でいう床面とは、説明上分かりやすくするための便宜上の表現であって、通常の床面6のみならず、コンクリート面や地面等の開口部Oの下方に位置する面及び幅木5の表面5aを総称する。
【0025】
開閉扉4は、一対の扉4a,4bが互いに近付いて開口部Oを閉塞し、一対の扉4a,4bが互いに離間して開口部Oを開放する。扉4a,4bの移動は、手動でなされても、モータ等の駆動装置によって自動でなされてもよい。本実施形態の開閉扉4は、一対の扉4a,4b、ガイドレールなどを有する。
【0026】
図1に戻り、開口部の防水装置(以下、防水装置と呼ぶ)1は、シート10、保持部材20および粘着テープ30(取付部材に相当)を備える。シート10は、開口部Oに設置されるものであり、開口部Oの鉛直方向下端側の領域を閉塞することが可能な幅および長さを有している。シート10の形状は、例えば、矩形である。シート10は、遮水性を有しており、開口部Oの防水シートとして機能することができる。また、シート10は、可撓性を有しており、伸縮可能であってもよい。シート10の素材は、例えば、樹脂、ゴム、表面を樹脂などでコーティングした布とすることができる。シート10は、水圧による開閉扉4等の開閉体の変形に追従できる素材で構成されることが好ましい。
【0027】
シート10の幅は、開閉扉4の幅よりも大きい。また、シート10の幅は、開口部Oの幅、言い換えると壁面3aと壁面3bとの距離よりも大きいことが好ましい。シート10の鉛直方向の長さは、対応すべき水深に基づいて定められている。すなわち、開閉扉4の下端から鉛直方向上側に向けてどの範囲をシート10によって覆い防水するかに基づいてシート10の全長が定められている。以下の説明では、開閉扉4においてシート10によって覆われるべき部分を「所定部」(図1の符号51参照)と称する。所定部51は、開閉扉4の鉛直方向下端側の部分である。
【0028】
保持部材20は、シート10を開閉扉4よりも屋外側に位置付けて構造物Sに対して保持する。より詳しくは、保持部材20は、開閉扉4の所定部51と、構造物Sのうち所定部51に隣接する部分とを一体に覆うことで開口部Oの鉛直方向下端部を閉塞させるようにシート10を保持する。また、保持部材20は、シート10の鉛直方向下端部が幅木5の表面5a及び床面6に沿って屋外側に向けて延在するようにシート10の幅方向の両端を保持する。これにより、シート10は、開閉扉4が有する隙間や開閉扉4と構造物Sとの隙間を塞ぎ、屋内側への浸水を抑制することができる。なお、本明細書では、シート10の鉛直方向下端部であって、シート10が保持部材20によって保持された状態で床面6及び幅木5の表面5aに沿って延在する部分を、以下「シート下部13」と記載する。
【0029】
図1に示すように、保持部材20は、アルミニウム合金等で構成され、一対設けられている。保持部材20は、壁面3a,3bにそれぞれ取り付けられている。保持部材20は、断面C字形状のC字状部21と、C字状部21に連なった平板状部22とを備えている。保持部材20のC字状部21は、互いに対向する面にスリット21aが形成されている。平板状部22は、C字状部21のスリット21aの背面側に連なり、壁面3a,3bに取り付けられる。保持部材20は、鉛直方向に延在しており、開閉扉4の所定部51に対応する範囲に配置されている。すなわち、保持部材20は、開閉扉4の下端から所定部51の上端までの範囲に対応して配されている。なお、本発明では、保持部材20は、防水装置1の防水性能等の使用上の問題がないような実質的な意味で開閉扉4の所定部51に対応していればよく、例えば、保持部材20の上端は必ずしも所定部51の上端と一致せず、若干下側に位置していてもよい。
【0030】
また、シート10の幅方向の両端には、それぞれ心材11が配置されている。心材11は、軽量でかつ可撓性を有する素材、例えば樹脂素材で形成されている。心材11は、シート10の幅方向の両端の上端から所定部51の下端に対応する箇所、即ち、シート10の幅方向の両端のシート下部13を除く箇所に配置されている。心材11は、シート10の長さ方向(鉛直方向)に延在している。心材11は、断面矩形の平板形状であり、シート10の壁面3a,3b及び扉4a,4bに相対する面に設けられ、保持部材20のC字状部21に挿入可能である。保持部材20のC字状部21のスリット21aの幅は、シート10と心材11をあわせた厚みよりも小さいため、心材11がスリットを介してC字状部21から抜け出ることが規制される。なお、心材11は、断面矩形のものには限定されず、例えば、断面が多角形状や円形のものであってもよい。
【0031】
粘着テープ30は、シート10の上端部12を開閉扉4に取り付けるものであり、実施形態1では、複数設けられている。粘着テープ30は、シート10の幅方向に間隔をあけて配置されている。実施形態1では、粘着テープ30は、図3に示すように、一方の表面に粘着面31が形成されている。粘着テープ30の一端部30a(シート取付部に相当)は、粘着面31がシート10の上端部12の表面に貼り付けられて、シート10の上端部12に取り付けられる。粘着テープ30の他端部30b(開閉体取付部に相当)は、粘着面31が開閉扉4の扉4a,4bの表面に貼り付けられて、開閉扉4に取り付けられる。
【0032】
粘着テープ30の一端部30aと他端部30bとの間の中央部30c(連結部に相当)は、一端部30aと他端部30bとを連結し、かつ長手方向の中央で折られて粘着面31同士が貼り付けられている。中央部30cは、シート10に作用する水圧に応じて粘着テープ30が長手方向に引っ張られると、両端部30a,30bに近い箇所から粘着面31同士が徐々に剥がされる。粘着テープ30の中央部30cは、水圧に応じて粘着テープ30が長手方向に引っ張られて、両端部30a,30bに近い箇所から粘着面31同士が徐々に剥がされることで、一端部30aと他端部30bとの距離(粘着テープ30の表面に沿う方向の距離)が伸びることを許容する。なお、粘着テープ30の中央部30cは、シート10が開口部Oに設置された状態(シート10に作用する水圧が零の状態)では、粘着面31同士が貼り付けられて、完全に伸びていない。また、粘着テープ30の中央部30cは、粘着面31同士が完全に剥がされた状態よりも、一端部30aと他端部30bとの距離が伸びることを許容できない。このように、粘着テープ30の中央部30cは、粘着面31同士が貼り付けられた状態から完全に剥がされた状態の範囲内において、一端部30aと他端部30bとの距離が伸びることを許容できる。
【0033】
シート10を開口部Oに設置する場合、即ち、防水装置1を組み立てる場合、まず、保持部材20を壁面3a,3bに取り付ける。そして、シート10の幅方向の両端及び心材11を、保持部材20の上端からC字状部21内に挿入し、シート10の両端及び心材11を保持部材20の下端に向けてC字状部21内を移動する。そして、シート10の両端及び心材11が保持部材20のC字状部21に挟持され、シート10の心材11が設けられていないシート下部13を、保持部材20の下端と床面6との間を通して、床面6上に引き出し、幅木5の表面5a及び床面6に沿って屋外側に向けて延在される。
【0034】
すると、シート10の幅は、開口部Oの幅W(図2参照)よりも大きく、以下に示すような幅に設定している。すなわち、シート10の両端が保持部材20によって保持された状態で、シート10は、たるみを有している。つまり、保持部材20は、シート10がたるみを有した状態でシート10を保持し、シート10が保持部材20よりも開閉扉4側に向けて撓んで所定部51と接触することを許容する。従って、シート10が保持部材20によって保持された状態で、シート10を壁面3a,3bおよび開閉扉4の各扉4a,4bに沿わせ、壁面3a,3bおよび開閉扉4の各扉4a,4bと互いに接触した状態に設置することが可能である。なお、保持部材20に保持され、かつ水圧がかかる前の状態において、シート10が開閉扉4の各扉4a,4bおよび壁面3a、3bに密着可能な程度のたるみを有していることが好ましい。
【0035】
また、シート10の鉛直方向の長さは、開閉扉4の所定部51の鉛直方向の長さよりも長く、以下に示すような長さに設定している。すなわち、シート10が保持部材20によって保持された状態で、シート下部13を床面6上に垂らし、幅木5の表面5a及び床面6に沿わせることが可能である。シート10は、このシート下部13を幅木5の表面5a及び床面6に沿って屋外側に向けて延在させた状態で設置される。言い換えると、シート10は、シート下部13が幅木5の表面5a及び床面6と互いに対向し、かつ先端側へ向かうに従い開閉扉4から離間するように配置される。
【0036】
そして、図3に示すように、中央部30cの粘着面31同士が貼り付けられた粘着テープ30の一端部30aの粘着面31をシート10の上端部12に貼り付け、粘着テープ30の他端部30bの粘着面31を開閉扉4の扉4a,4bに貼り付ける。こうして、シート10が所定部51と壁面3a,3bの所定部51に隣接する部分とを一体に覆いかつシート下部13が幅木5の表面5a及び床面6に沿って屋外側に向けて延在した状態で、粘着テープ30によりシート10の上端部12を開閉扉4の扉4a,4bに固定することで、シート10を幅木5の表面5a及び床面6、構造物Sの壁面3a,3b及び開閉扉4の各扉4a,4bに向けて押圧する。粘着テープ30により、シート10が垂れ下がることが抑制され、シート10の上端部12を狙いとする水位の位置よりも上方に保持しておくことができる。こうして、防水装置1が組み立てられる。
【0037】
本実施形態の防水装置1では、洪水やゲリラ豪雨等によって屋外の水嵩が増すと、まずシート下部13が水に接する。水圧によってシート下部13は床面6に向けて押圧されて床面6に密着する。これにより、シート下部13と床面6との間から水が浸入することが抑制される。シート10は、水圧によって所定部51と、所定部51に隣接する床面6とを一体に覆うことができる。
【0038】
また、シート10において、開閉扉4の各扉4a,4bや壁面3a,3bを覆う部分は、水圧によって開閉扉4の各扉4a,4bや壁面3a,3bに向けて押圧される。これにより、シート10は、開閉扉4の所定部51と、所定部51に隣接する壁面3a,3bとを一体に覆うことができる。シート10は、水圧によって押圧されることにより、開閉扉4の各扉4a,4bや壁面3a,3b等に密着し、シート10と開閉扉4の各扉4a,4b、壁面3a,3bとの間に水が浸入することを抑制することができる。
【0039】
また、シート10は、水圧によって開閉扉4の各扉4a,4b間や各扉4a,4bと壁面3a,3bとの間の隙間を塞ぐことで、これらの隙間を介した屋内側への浸水を抑制することができる。シート10は、水圧によって開閉扉4の所定部51と、所定部51に隣接する幅木5の表面5a及び床面6との隙間を塞ぐことで、開閉扉4と床面6との隙間を介した屋内側への浸水を抑制することができる。
【0040】
シート10は、水圧によって開閉扉4の各扉4a,4b等に対して押圧されるため、水位が増加するに従い開閉扉4の各扉4a,4b等に対する密着性が増し、また各隙間を閉塞する閉塞性が増す。よって、シート10は、水位に応じて遮水性能が増し、適切に屋内側への浸水を抑制することができる。
【0041】
また、シート10は、予めたるみを有した状態で保持部材20によって保持されているため、水位の増加に応じて水圧によって速やかに開閉扉4の各扉4a,4bや壁面3a,3b等に密着することが可能である。また、たるみを有しているため、開閉扉4の各扉4a,4b間の隙間など、各部の隙間の形状に対応して適切に変形・屈曲し、各隙間を速やかにかつ適切に閉塞することができる。
【0042】
さらに、水位の増加により増加する水圧に応じて、シート10が下方に引っ張られて、シート10が下方に移動すると、図4に示すように、粘着テープ30の中央部30cの互いに貼り付けられた粘着面31が両端部30a,30bに近い箇所から徐々に剥がされて、粘着テープ30の中央部30cが一端部30aと他端部30bとの距離が伸びることを許容する。粘着テープ30は、中央部30cの互いに貼り付けられた粘着面31同士が全て剥がれるまで、一端部30aがシート10の上端部12から剥がれることが抑制されるとともに、他端部30bが開閉扉4の扉4a,4bから剥がれることが抑制される。
【0043】
本実施形態の防水装置1によれば、シート10の上端部12を開閉扉4の扉4a,4bに取り付ける粘着テープ30が、シート取付部としての一端部30aと、開閉体取付部としての他端部30bとを連結しかつ引っ張られると一端部30aと他端部30bとの距離が伸びることを許容する連結部としての中央部30cを備えている。このために、増水時の水圧などによりシート10が下方に引っ張られて、粘着テープ30の一端部30aが下方に引っ張られると、一端部30aと他端部30bとの距離が伸び、一端部30aがシート10の上端部12から剥がれることが抑制されるとともに、他端部30bが開閉扉4の扉4a,4bから剥がれることが抑制される。したがって、増水時にシート10が下方に引っ張られても、粘着テープ30が、シート10や開閉扉4から外れてしまうことを抑制でき、シート10の上端部12が開閉扉4の扉4a,4bから外れてしまうことを抑制できる。
【0044】
また、開口部の防水装置1では、粘着テープ30の中央部30cの粘着面31同士が貼り付けられているので、増水時の水圧などによりシート10を介して粘着テープ30が引っ張られると、中央部30cの粘着面31同士が両端部30a,30bに近い箇所から徐々にはがれて、一端部30aがシート10の上端部12に貼りついたままとなり、他端部30bが開閉扉4の扉4a,4bに貼りついたままとなる。
【0045】
[実施形態1の変形例]
実施形態1の変形例について説明する。図5は、実施形態1の変形例に係る開口部の防水装置の要部の縦断面図、図6は、実施形態1の変形例に係る開口部の防水装置のシートが下方に引っ張られた状態を示す縦断面図である。図5及び図6において、実施形態1と同一部分には、同一符号を付して説明を省略する。
【0046】
変形例の防水装置1−1では、図5に示すように、粘着テープ30の一端部30aの粘着面31がシート10の上端部12の扉4a,4bに対向する面に貼り付けられて、シート10の上端部12に粘着テープ30の一端部30aが取り付けられている。また、粘着テープ30の他端部30bの粘着面31が扉4a,4bのシート10の上端部12に対向する面に貼り付けられて、開閉扉4の扉4a,4bに粘着テープ30の他端部30bが取り付けられている。また、開閉扉4の中央部30cは、粘着面31の裏側の面同士が重ねられている。
【0047】
実施形態1の変形例の防水装置1−1では、水位の増加により増加する水圧に応じて、シート10が下方に引っ張られて、シート10が下方に移動すると、図6に示すように、粘着テープ30の他端部30bの粘着面31が中央部30cに近い箇所から開閉扉4の扉4a,4bから徐々に剥がされて、粘着テープ30の中央部30cが一端部30aと他端部30bとの距離が伸びることを許容する。粘着テープ30は、他端部30bの粘着面31が開閉扉4の扉4a,4bから全て剥がれるまで、シート10の上端部12が開閉扉4の扉4a,4bから外れることが抑制される。
【0048】
変形例の防水装置1−1によれば、実施形態1の防水構造1と同様に、増水時にシート10が下方に引っ張られても、粘着テープ30が、シート10や開閉扉4から外れてしまうことを抑制でき、シート10の上端部12が開閉扉4の扉4a,4bから外れてしまうことを抑制できる。
【0049】
[実施形態2]
実施形態2について説明する。図7は、本発明の実施形態2に係る開口部の防水装置を示す斜視図、図8は、実施形態2に係る開口部の防水装置の取付部材を示す斜視図、図9は、実施形態2に係る開口部の防水装置の取付部材を示す他の斜視図である。図7図9において、実施形態1と同一部分には、同一符号を付して説明を省略する。
【0050】
実施形態2に係る防水装置2では、シート10の上端部12を開閉扉4の扉4a,4bに取り付ける取付部材40は、図7図8及び図9に示すように、シート取付部41及び開閉体取付部42が合成樹脂で構成され、連結部43が弾性体としてのばねで構成されている。また、本発明では、連結部43は、ばねに限定されることなく、例えば、ゴムなどの弾性体で構成されても良い。なお、取付部材40の連結部43は、シート10が開口部Oに設置された状態(シート10に作用する水圧が零の状態)では、完全に伸びていない。また、取付部材40の連結部43は、完全に伸びた状態よりも、一端部30aと他端部30bとの距離が伸びることを許容できない。このように、取付部材40の連結部43は、設置された状態から完全に伸びた状態の範囲内において、シート取付部41と開閉体取付部42との距離が伸びることを許容できる。
【0051】
シート取付部41は、図8及び図9に示すように、円板状の円板部41aと、円板部41aの中央から立設した柱部41bとを一体に備えている。シート取付部41は、シート10の上端部12に取り付けられる補強シート14とともに円板部41aがシート10の上端部12に取り付けられる。
【0052】
開閉体取付部42は、図8及び図9に示すように、円板状の吸盤42aと、吸盤42aの中央から立設した柱部42bとを一体に備えている。吸盤42aは、開閉扉4の扉4a,4bの表面に貼り付いて、開閉扉4の扉4a,4bに取り付けられる。連結部43は、一端がシート取付部41の柱部41aに取り付けられ、他端が開閉体取付部42の柱部42aに取り付けられて、シート取付部41と開閉体取付部42とを連結している。連結部43は、伸びることで、シート取付部41と開閉体取付部42との距離が伸びることを許容する。
【0053】
取付部材40は、シート取付部41の円板部41aが補強シート14とともにシート10の上端部12に取り付けられ、開閉体取付部42の吸盤42aが開閉扉4の扉4a,4bに貼り付いて、シート10の上端部12を開閉扉4の扉4a,4bに取り付ける。
【0054】
実施形態2の防水装置2では、水位の増加により増加する水圧に応じて、シート10が下方に引っ張られて、シート10が下方に移動すると、連結部43が伸びて、シート取付部41と開閉体取付部42との距離が伸びる。さらに、シート10が下方に移動すると、開閉体取付部42の吸盤42aが開閉扉4の扉4a,4bに貼り付いたまま下方に移動する。こうして、取付部材40は、シート取付部41と開閉体取付部42との距離が伸びることを許容するとともに、開閉体取付部42が扉4a,4bに取り付けられたまま下方に移動することが許容されているので、シート10の上端部12が開閉扉4の扉4a,4bから外れることを抑制する。
【0055】
なお、実施形態1及び2、変形例では、防水装置1,1−1,2を組み立てる場合、壁面3a,3bに保持部材20を取り付けるようにしたが、本発明では、予め、壁面3a,3bに保持部材20を取り付けておいても良い。また、防水装置1,1−1,2を組み立てる時に壁面3a,3bに保持部材20を取り付ける場合には、予め壁面3a,3bの保持部材20を取り付ける位置に、保持部材20の位置を示す印(マーキングともいう)を設けても良い。
【0056】
また、実施形態1及び2、変形例では、開閉体として開閉扉4を示しているが、本発明では、開閉体として、複数のスラットを開閉方向に連接して形成されて昇降動作などの移動することで開口部Oを開閉するシャッターカーテンを用いても良い。また、実施形態1においても、連結部としてばねやゴムなどの弾性体を用いても良い。
【0057】
上記の各実施形態および変形例に開示された内容は、適宜組み合わせて実行することができる。
【符号の説明】
【0058】
1,1−1,2 開口部の防水装置
4 開閉扉(開閉体)
6 床面
10 シート
12 上端部
13 シート下部
20 保持部材
30 粘着テープ(取付部材)
30a 一端部(シート取付部)
30b 他端部(開閉体取付部)
30c 中央部(連結部)
31 粘着面
40 取付部材
41 シート取付部
42 開閉体取付部
42a 吸盤
43 連結部
51 所定部
O 開口部
S 構造物
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9