(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1、2のダンパ装置は、蓋体(開閉板、バッフル)を駆動するモータおよび駆動機構を備えており、これらを通気路の外部に配置しているため、ダンパ装置が大型化するという問題点がある。一方、これらの機構を通気路内に配置した場合には、通気路内の気流が妨げられるおそれがある。
【0007】
以上の問題点に鑑みて、本発明の課題は、小型化に有利で、且つ、蓋体を開閉する機構が流路に及ぼす影響が少ないダンパ装置を提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明のダンパ装置は、
流体通路の端部に設けられた開口に面して配置された蓋体と、
当該蓋体を前記流体通路の軸線方向に進退移動させる蓋体駆動装置を有し、
当該蓋体駆動装置は、
前記蓋体に形成され前記軸線方向に延びるネジ穴に螺合されるネジ部材と、
前記流体通路に設置された軸流羽根と前記軸線方向に重なる位置に前記ネジ部材を支持している支持体と、
前記ネジ部材を回転させる駆動部を備え、
前記ネジ穴の内周
面には螺旋状の溝部が形成され、
前記ネジ部材の外周面には前記溝部と噛み合う螺旋状の突条部が形成され、
当該駆動部は、前記ネジ部材の内部もしくは当該ネジ部材と前記軸線方向に重なる位置に配置されて
おり、
前記ネジ部材の外周面、および、前記ネジ穴の内周面に、前記ネジ部材と前記蓋体の相対回転を規制する度当り部が形成されており、
前記度当り部は、
前記溝部の前記軸線方向の一端側に形成されたネジ穴側度当り面と、
前記突条部の前記軸線方向の一端側に形成されたネジ部材側度当り面であり、
前記ネジ部材側度当り面およびネジ穴側度当り面は、前記軸線方向に延びていることを特徴としている。
【0009】
本発明では、このように、蓋体を駆動するネジ部材および駆動部を軸流羽根と軸線方向に重なる位置に配置しているため、開口の外周側にこれらの配置スペースを確保する必要がなく、ダンパ装置の外形を開口の外形に近づけることができる。従って、ダンパ装置の小型化に有利である。また、ネジ部材および駆動部が流路に与える影響が少なく、流体の流れを妨げるおそれが少ない。
更に、ネジ部材と蓋体の相対回転を規制する度当たり部が形成されており、蓋体の可動範囲を規制できるため、蓋体がネジ部材から脱落するのを防止できる。また、駆動部を収納するネジ部材の径が大きく、ネジ穴の径も大きいため、ネジ部材の回転中心から離れた位置に度当り部を設けることができる。よって、度当り部にかかる力を小さくすることができ、ネジ(突条部および溝部)の噛み込みが発生しにくい。加えて、度当り部は、溝部の軸線方向の一端側に形成されたネジ部材側度当り面と、突条部の軸線方向の一端側に形成されたネジ穴側度当り面であり、ネジ部材側度当り面およびネジ穴側度当り面は、軸線方向に延びているため、度当り面の寸法分だけネジ穴の軸線方向の長さを長くすることができる。従って、ネジ穴に対するネジ部材の傾きを抑制でき、蓋体の傾きを抑制できる。
【0010】
本発明において、前記駆動部は、前記ネジ部材の内部に配置されていることが望ましい。このようにすると、ネジ部材および駆動部の軸線方向の配置スペースを小さくできるため、ダンパ装置の軸線方向の寸法を小さくできる。従って、ダンパ装置の小型化に有利である。
【0011】
また、本発明において、前記駆動部は、駆動源であるモータおよびギアユニットを備え、前記モータは、前記駆動部の前記軸線方向の端部に配置されていることが望ましい。このようにすると、駆動部からの配線取り出しが容易である。また、モータとしてステッピングモータを用いた場合には、蓋体の位置を検出するセンサ等を用いることなく蓋体の開閉位置を制御することが可能である。
【0012】
本発明において、前記ネジ部材は、前記軸線方向回りに回転する前記軸流羽根と同軸に配置されていることが望ましい。このようにすると、軸流羽根の軸部分と重なる位置にネジ部材および駆動部を配置できる。従って、ネジ部材および駆動部が流路に与える影響がより少なく、流体の流れを妨げるおそれがより少ない。
【0013】
また、本発明において、前記支持体は、前記開口の縁から前記蓋体側に延びる複数の支持フレームを備え、前記蓋体が前記開口から離れた開位置に移動したとき、隣接する前記支持フレームの間に前記軸線方向と直交する方向に開口する隙間が形成されることが望ましい。このようにすると、蓋体を開位置に移動させたとき、流体を流路と直交する方向に流出させることができる。
【0014】
このとき、前記複数の支持フレームのそれぞれは、前記軸流羽根を回転可能に支持する支持フレームと前記軸線方向に重なるように配置されていることが望ましい。このようにすると、支持フレームが流路に与える影響が少なく、流体の流れを妨げるおそれが少ない。
【0015】
また、前記支持体は、前記蓋体に向けて前記軸線方向に延びるガイド突起を備え、前記蓋体には、前記ガイド突起を案内するガイド部が形成され、前記ガイド突起は、前記複数の支持フレームのいずれかと前記軸線方向に重なることが望ましい。このようにすると、蓋体が回り止めされた状態となり、蓋体がネジ部材と共回りするのを防止できる。また、回り止め部材(ガイド突起)が流路に与える影響が少なく、流体の流れを妨げるおそれが少ない。
【0016】
この場合に、前記ガイド突起および前記ガイド部は、前記ネジ部材を中心とする複数の角度位置に設けられ、前記蓋体における前記ガイド部の角度位置と、前記ネジ穴の前記軸線方向の端部における前記溝部の角度位置が重ならないように構成されていることが望ましい。このようにすると、蓋体が開位置のとき、ガイド突起およびガイド部と、溝部および突条部が異なる角度位置で嵌まり合う構成になる。従って、蓋体の傾きを抑制できる。
【0017】
ここで、前記蓋体駆動装置は、前記駆動部を収納するモータケースを備え、当該モータケースは、第1ケースおよび第2ケースを前記軸線方向に接合して形成され、前記モータケースにおける前記第1ケースと当該第2ケースとの接合部が前記ネジ部材によって覆われていることが望ましい。このようにすると、接合部から駆動部側に流体が入り込むのを防止でき、湿気などによって駆動部に不具合が発生するのを防止できる。
【0018】
また、本発明において、前記ネジ穴の内周面と、前記ネジ部材の外周面は、前記溝部および前記突条部を除いた部位が径方向に当接することが望ましい。このようにすると、ネジ部材に対する蓋体の傾きを抑制できる。
【0020】
この場合に、駆動源としてステッピングモータを用いていると、度当り部に当接して停止する際のモータのトルクを小さくすることができるので、より噛み込みを発生しにくくすることができる。
【0022】
この場合に、前記溝部における一方の側面と他方の側面における前記軸線方向に対向する部位が、前記軸線方向に対向する面を持たない形状に切り欠かれていることが望ましい。このようにすると、ネジ穴の形状をネジ穴の一端側と他端側に2分割した金型で形成できるため、蓋体を成形する金型の形状を単純にすることができる。従って、蓋体の製造が容易である。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、蓋体を駆動するネジ部材および駆動部を軸流羽根と重なる位置に配置しているため、開口の外周側にこれらの配置スペースを確保する必要がなく、ダンパ装置の外形を開口の外形に近づけることができる。従って、ダンパ装置の小型化に有利である。また、ネジ部材および駆動部が流路に与える影響が少なく、流体の流れを妨げるおそれが少ない。
更に、ネジ部材と蓋体の相対回転を規制する度当たり部が形成されており、蓋体の可動範囲を規制できるため、蓋体がネジ部材から脱落するのを防止できる。また、駆動部を収納するネジ部材の径が大きく、ネジ穴の径も大きいため、ネジ部材の回転中心から離れた位置に度当り部を設けることができる。よって、度当り部にかかる力を小さくすることができ、ネジ(突条部および溝部)の噛み込みが発生しにくい。加えて、度当り部は、溝部の軸線方向の一端側に形成されたネジ部材側度当り面と、突条部の軸線方向の一端側に形成されたネジ穴側度当り面であり、ネジ部材側度当り面およびネジ穴側度当り面は、軸線方向に延びているため、度当り面の寸法分だけネジ穴の軸線方向の長さを長くすることができる。従って、ネジ穴に対するネジ部材の傾きを抑制でき、蓋体の傾きを抑制できる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に、図面を参照して、本発明を適用したダンパ装置の実施の形態を説明する。
図1はダンパ装置およびファンユニットの斜視図であり、
図1(a)は蓋体が閉位置にある状態の斜視図、
図1(b)は蓋体が開位置にある状態の斜視図である。また、
図2はダンパ装置およびファンユニットの断面図であり、
図2(a)は蓋体が閉位置にある状態(
図1(a)のA1−A1断面図)、
図2(b)は蓋体が閉位置にある状態(
図1(b)のA2−A2断面図)である。更に、
図3はダンパ装置およびファンユニットの分解斜視図であり、
図4は
図3のB−B断面斜視図である。
【0026】
本形態のダンパ装置1は、冷却空気等の流体が流れるダクト100(
図2参照)の一端に取り付けられるファンユニット101と一体に構成されている。ファンユニット101は、ダクト100の端部に取り付けられる枠体102と、枠体102に回転可能に支持された軸流羽根103と、軸流羽根103を回転させるファンモータユニット107を備えている。ファンモータユニット107は、円筒形のモータケースおよびその内部に収納されたファンモータを備えている。枠体102には円形の開口104が形成されている。なお、
図2、
図4では、ファンモータユニット107の内部構造については図示を省略している。また、
図1、
図3、
図4では、軸流羽根103については図示を省略している。
【0027】
ダンパ装置1は、開口104に面して配置された蓋体2と、蓋体2をダクト100の中心軸線L方向に進退移動させる蓋体駆動装置3を備えている。蓋体2は、蓋体駆動装置3によって、
図1(a)に示す閉位置2Aから、
図1(b)に示す開位置2Bまでの範囲を進退移動させられる。ダクト100内の流体通路100a(
図2参照)は、ファンユニット101の開口104、および、ダンパ装置1の支持体60に設けられた後述する開口63を介して外部に連通する。開口104および開口63は、ダクト100内の流体通路100aと同軸に形成されており、開口104および開口63の中心を通り開口104および開口63と垂直な中心軸線は、流体通路100aの中心軸線Lと一致している。本明細書において、中心軸線Lに沿った方向が流体通路100aおよびダンパ装置1の軸線方向である。そして、蓋体2は、流体通路100aの端部に設けられた開口104および開口63に面して配置されている。なお、便宜上、開口104から流体通路100aの中心軸線Lに沿ってダクト100の外部に向かう方向を蓋体2の開方向L1とし、開方向L1と逆向きの方向を蓋体2の閉方向L2とする。
【0028】
図3に示すように、ファンユニット101の枠体102は、円形の開口104が形成された外枠105と、外枠105から開口104の中心に向けて放射状に延びる4本の支持フレーム106を備えている。支持フレーム106によって、開口104の中央にファンモータユニット107が支持されている。4本の支持フレーム106は、開口104の中心を基準として等角度間隔で配置されている。外枠105の外形は4隅が面取りされた正方形であり、4本の支持フレーム106は、外枠105の4隅から所定角度だけずれた角度位置に設けられている。各支持フレーム106は、外枠105から中心軸線Lに沿って開方向L1に延びる縦フレーム106aと、縦フレーム106aの開方向L1側の端部から径方向内側に延びる横フレーム106bを備えている。横フレーム106bは、ファンモータユニット107の外周面に接続されている。ファンモータユニット107における閉方向L2側の端部には、軸流羽根103が回転可能に取り付けられている。ファンモータユニット107および軸流羽根103は、開口104の中央に同軸に配置されており、ファンモータユニット107および軸流羽根103の中心軸線は、流体通路100aの中心軸線Lと一致している。軸流羽根103は、ファンモータユニット107内に収納されたファンモータの出力回転に基づき、中心軸線L回りに回転する。
【0029】
図1、
図3に示すように、蓋体2は、正方形の4隅を円弧状に面取りした形状の平面部21と、平面部21の外周縁から閉方向L2に延びる周壁部22を備えている。平面部21の中央には、中心軸線L方向に延びる円形のネジ穴23が形成されている。ネジ穴23は、枠体102の開口104および軸流羽根103と同軸に形成されている。平面部21には、ネジ穴23を囲んで開方向L1に突出する環状壁24が設けられている。ネジ穴23の内周面には、螺旋状の溝部25が2本形成されている。2本の溝部25、25は、ネジ穴23の中心軸線を基準として対称に形成されている。
【0030】
蓋体駆動装置3は、ネジ穴23に螺合されるネジ部材30と、ネジ部材30を回転させる駆動部40と、駆動部40を収納するモータケース50と、ネジ部材30およびモータケース50を支持する支持体60を備えている。ネジ部材30は有底筒状に形成されており、中心軸線L方向に延びる円筒部31と、円筒部31の開方向L1側の端部を閉鎖する底部32を備えている。円筒部31の外周面31aには、螺旋状の突条部33が2本形成されている。2本の突条部33、33は、円筒部31の中心軸線を基準として対称に形成されている。また、ネジ部材30の底部32には、開方向L1側の面の中央に円形突出部34が形成されている。円形突出部34の裏側には、
図4に示すように、円形凹部35が形成されている。円形凹部35の中央には、閉方向L2側に突出する係合突部36が形成され、円形凹部35の内周面と係合突部36の外周面の間の隙間が環状の凹部となっている。係合突部36の外周面には、中心軸線L方向に延びる複数の係合溝36aが周方向に等角度間隔で形成されている。
【0031】
モータケース50は、
図3に示すように、有底筒状の第1ケース51と筒状の第2ケース52を中心軸線L方向に接合して構成されている。モータケース50の外径は、ネジ部材30の円筒部31の内径よりも小さく形成されている。第1ケース51は、中心軸線L方向に延びる円筒部53と、円筒部53の開方向L1側の端部を封鎖する底部54を備えており、底部54の中央に円形開口55が形成されている。
図2に示すように、モータケース50は、ネジ部材30の円筒部31内に閉方向L2側から挿入されており、閉方向L2側の端部を除き、大部分がネジ部材30内に収納されている。駆動部40はモータケース50内に配置されるため、モータケース50および駆動部40は、大部分がネジ部材30の内部に配置され、ネジ部材30の閉方向L2側に出た部分も、ネジ部材30と中心軸線L方向に重なる位置に配置されている。このように、ネジ部材30内に収納されたモータケース50の内部に駆動部40を配置したことにより、蓋体駆動装置3の中心軸線L方向の寸法が小さく、小型化されている。モータケース50は、ネジ部材30の底部32に形成された円形凹部35と円形開口55が中心軸線L方向に重なると共に、第1ケース51と第2ケース52の接合部56が円筒部31によって外周側から覆われた状態になっている。また、後述するように、ネジ部材30は、駆動部40によって中心軸線L周りに回転させられ、これに伴って蓋体2がネジ送りされて開方向L1あるいは閉方向L2に移動するが、ネジ部材30の内周面とモータケース50の外周面との隙間が狭いため、回転に伴うネジ部材30の径方向への振れがモータケース50によって防止される構造となっている。
【0032】
支持体60は、ファンユニット101の枠体102と中心軸線L方向に重なる形状をしている。支持体60は、枠体102の外枠105と中心軸線L方向に重なる形状をした外枠61と、外枠61から内周側に延びて外枠61とモータケース50を繋いでいる4本の支持フレーム62を備えている。外枠61は、外枠105を開方向L1側から覆うように配置されている。支持フレーム62は、外枠61から開方向L1に向けて中心軸線L方向に延びる縦フレーム62aと、縦フレーム62aの開方向L1側の端部から径方向内側に延びる横フレーム62bを備えている。横フレーム62bは、モータケース50における第2ケース52の外周面に接続されている。モータケース50は、支持体60により、軸流羽根103およびファンモータユニット107と同軸となる位置に保持されている。また、ネジ部材30は、モータケース50を開方向L1側から覆う状態に装着されるため、モータケース50を介して、支持体60によって軸流羽根103およびファンモータユニット107と同軸となる位置にネジ部材30が保持される。
【0033】
4本の支持フレーム62は、枠体102に設けられた4本の支持フレーム106と同一の角度位置に形成されており、横フレーム62bと横フレーム106bが中心軸線L方向に重なり、且つ、縦フレーム62aと縦フレーム106aが径方向に重なるように配置されている。支持体60における外枠61の中央には、枠体102における外枠105の開口104と同一径の円形の開口63が形成されている。開口63の内周面には、枠体102の縦フレーム106aと中心軸線L方向に重なる部位を縦フレーム106aが嵌まる形状に切り欠いた切り欠き部63aが形成されている。また、支持体60の縦フレーム62aは、その幅寸法(周方向の幅)が切り欠き部63aの幅よりも太く、縦フレーム62aには、切り欠き部63aから開方向L1側に延びる切り欠き部62cが形成されている。支持体60の外枠61と枠体102の外枠105とを当接させると、切り欠き部63aおよび切り欠き部62cに縦フレーム106aが嵌合される。これにより、支持体60が枠体102に対して中心軸線L回りに相対回転しないように組み付けられる。このとき、モータケース50の閉方向L2側の端部が、ファンモータユニット107の開方向L1側の端面に対向している。モータケース50は、ファンモータユニット107の開方向L1側の端面によって閉方向L2側の端部が封鎖されて密閉状態となるか、あるいは、ファンモータユニット107の開方向L1側の端面とモータケース50の閉方向L2側の端部との間に僅かな隙間が形成された状態になっている。
【0034】
また、4本の支持フレーム62のうち、開口63の中心を挟んで対向する2本には、縦フレーム62aと横フレーム62bとの接続部から開方向L1側に延びるガイド突起64が設けられている。ガイド突起64は、中心軸線Lに対して垂直な面で切断した場合の断面形状がT字型となっている。すなわち、ガイド突起64は、T字の横棒部分を形成している第1突起64aおよび第2突起64bと、T字の横棒部分の中央から径方向内側に延びている第3突起64cを備えている。ここで、蓋体2の平面部21には、ガイド突起64と中心軸線L方向に重なる位置にT字型のガイド穴26が形成されている。また、
図4に示すように、蓋体2の裏側には、ガイド穴26におけるT字の横棒の先端部分を囲む位置から、閉方向L2側に延びるガイド部27a、27bが形成されている。
【0035】
蓋体2は、ガイド部27a、27bによって形成された対向するガイド溝にガイド突起64の第1突起64a、第2突起64bが挿入され、且つ、モータケース50に装着されたネジ部材30がネジ穴23に挿入された状態に取り付けられている。このとき、ネジ穴23の内周面に形成された螺旋状の溝部25と、ネジ部材30の外周面に形成された螺旋状の突条部33が嵌合され、ネジ部材30がネジ穴23に螺合された状態が形成されている。溝部25は雌ネジを構成しており、突条部33は雄ネジを構成している。蓋体2は、ガイド突起64がガイド部27a、27bにスライド可能に装着されたことによって、支持体60に対する中心軸線L回りの相対回転が阻止されている。すなわち、ガイド突起64およびガイド部27a、27bによって、蓋体2の回り止め部が構成されている。このため、ネジ部材30が駆動部40によって中心軸線L回りに回転させられると、溝部25(雌ネジ)および突条部33(雄ネジ)からなるネジ送り機構によって蓋体2がネジ送りされて、中心軸線Lに沿って開方向L1側あるいは閉方向L2側に移動する。
【0036】
図5は、ネジ部材30および駆動部40の断面斜視図である。
図5では、ネジ部材30と駆動部40の間に配置されたモータケース50の図示を省略しており、また、モータケース50内に設けられた支持フレーム49の一部についても図示を省略している。
図2、
図5に示すように、駆動部40は、ネジ部材30と同軸に配置された駆動部材41を備えている。駆動部材41の開方向L1側の端部には、開方向L1側に突出する環状突部42が形成されている。環状突部42の内周側には、上述したネジ部材30の係合突部36と係合する係合凹部43が形成されている。係合凹部43の内周面には、係合突部36の外周面に形成された係合溝36aと噛み合う複数の係合突起43aが中心軸線L方向に延びている。係合凹部43に係合突部36が挿入されると、係合溝36aが係合突起43aに嵌合して、駆動部材41とネジ部材30とが相対回転不能に組み付けられる。従って、ネジ部材30と駆動部材41が一体に回転する。ここで、係合凹部43の底面中央には固定孔43bが形成されている。また、固定孔43bと対向する係合突部36の中央部には、ネジ部材30の底部32を中心軸線L方向に貫通する固定孔36bの一端が開口しており、固定孔36bの他端は円形突出部34の中央に開口している。駆動部材41とネジ部材30を組み付けた状態で、固定孔36b、43bには固定ネジ37が取り付けられる。
【0037】
駆動部材41は、環状突部42に対して閉方向L2側の部位が、外周面に歯溝(不図示)が形成された歯車部44となっている。駆動部40は、同軸に配置されたロータ45およびステータ46と、ロータ45の出力軸に取り付けられた出力歯車45aの回転に基づいて駆動部材41を回転させるギアユニット47を備えている。ロータ45は、中心軸線Lと平行に延びるロータ本体部45bおよびその外周面に装着されたロータマグネット45c等を備えており、中心軸線Lと平行な回転軸線回りに回転可能に保持されている。ステータ46は、ロータマグネット45cを囲んで環状に配置された駆動コイル46aと、駆動コイル46aを搭載した環状のステータコア46bを備えている。駆動コイル46aから引き出された巻線の端部は、ステータ46の径方向外側に配置された回路基板48に接続されている。ステータ46は、モータケース50内に設けられた支持フレーム49を介して、モータケース50に固定されている。ロータ45およびステータ46は、駆動部40の駆動源であるステッピングモータを構成している。
【0038】
ギアユニット47は、出力歯車45aと駆動部材41との間に配置された第1ギア47a、第2ギア47b、第3ギア47cを備えている。各ギアの両端は、モータケース50内に設けられた軸受部(不図示)によって回転可能に支持されている。また、各ギアは、一体に回転する大径歯車部および小径歯車部を備えており、大径歯車部に伝達された回転を、小径歯車部から次のギアの大径歯車部に伝達している。出力歯車45aの回転は、第1ギア47a、第2ギア47b、第3ギア47cの順に伝達され、噛み合う歯車の歯数比に応じた減速比で減速させられる。第3ギア47cは、駆動部材41の歯車部44と噛み合っている。なお、
図5、
図6において、第3ギア47cと歯車部44の歯溝は図示を省略している。
【0039】
駆動部40は、このように、中心軸線L方向の一端側、すなわち、閉方向L2側の端部にステッピングモータを構成するロータ45およびステータ46が配置され、中心軸線L方向の他端側、すなわち、開方向L1側の端部に駆動部材41が配置され、ステッピングモータと駆動部材41との間にギアユニット47が配置されている。また、駆動部40におけるステッピングモータが配置された側の端部には、ステータ46の径方向外側に、回路基板48が配置されている。本形態では、このような配置により、ステッピングモータからの配線を、駆動部40の中心軸線L方向の一方の端部から容易に取り出すことができる。加えて、上述したように、駆動部40を収納するモータケース50の一端がファンモータユニット107の開方向L1側の端面に面しているため、駆動部40からの配線と、ファンモータユニット107からの配線とを1箇所からまとめて取り出すことができる。そして、取り出した配線をまとめてファンユニット101の外側まで延ばすことができる。
【0040】
ここで、駆動部40から引き出した配線と、ファンモータユニット107から取り出した配線は、1つの束にまとめられるか、あるいは、ユニット毎の束にまとめられた状態で、流路中央部から流路を跨いでファンユニット101の外側に引き出されるが、このとき、配線の束を支持体60の横フレーム62bに沿わせて引き出すことが望ましい。例えば、横フレーム62bに形成した配線溝に配線を収納したり、あるいは、結束バンド等によって横フレーム62bに配線を固定する。このようにすると、流路に配線がむき出しにならないため、配線が外力によって破損するのを防止できる。
【0041】
上述したように、蓋体2に形成されたネジ穴23およびネジ部材30は、ロータ45およびステータ46によって構成されるステッピングモータの回転に基づいて蓋体2を中心軸線Lに沿って進退移動させるネジ送り機構を構成している。ここで、
図1、
図3に示すように、ネジ部材30の開方向L1側の端部には、ネジ部材30の外周面31aから径方向に突出する度当り部38が形成されている。度当り部38は、周方向を向いた側面を備えており、この側面が中心軸線Lと平行に延びる度当り面38a(ネジ部材側度当り面)となっている。度当り部38は、突条部33の開方向L1側の端部と一体に形成されている。度当り面38aは、突条部33における開方向L1側を向いた側面33aに接続されている。
【0042】
一方、
図3、
図4に示すように、ネジ穴23の内周面には、蓋体2が開位置2Bに到達したときに度当り部38と周方向に当接する度当り部28が形成されている。度当り部28は、ネジ穴23の開方向L1側の端部において、溝部25に隣接する楔型の部分(すなわち、環状壁24の上端面24aと溝部25の開方向L1側の溝側面25aの間の楔型の部分)の先端を切り欠いた切り欠き部であり、周方向を向いた切り欠き面を備えている。この切り欠き面は、中心軸線Lと平行に延びる度当り面28a(ネジ穴側度当り面)となっている。
【0043】
ダンパ装置1は、ファンユニット101のファンモータが駆動して軸流羽根103が回転するとき、駆動部40のステッピングモータが駆動して、蓋体2を開方向L1に移動させる。すなわち、
図1(a)の状態から、ネジ部材30を時計回り方向CWに回転させる。これにより、突条部33の開方向L1側を向いた側面33aによって蓋体2が開方向L1側に押圧移動させられる。蓋体2が開位置2Bに到達したとき、
図1(b)に示すように、度当り面38aが度当り面28aに当接して、ネジ部材30の時計回り方向CWへの更なる回転が規制される。これにより、蓋体2の開方向L1への移動が開位置2Bで止まる。また、
図1(b)の状態から、ネジ部材30を反時計回り方向CCWに回転させると、蓋体2が閉方向L2側に移動し、外枠61に当接した閉位置2Aで移動が止まる。蓋体2の移動が開位置2Bあるいは閉位置2Aで止まるとき、駆動部40のステッピングモータを脱調させてからステッピングモータの駆動を停止させる。
【0044】
このように、蓋体2が開位置2Bにおいて度当りによって位置決めされていると、蓋体2がネジ部材30から脱落しない。また、駆動部40のギアユニット47のバックラッシュが少ない。また、蓋体2とネジ部材30とのガタつきも少ない。従って、流出する流体による蓋体2の振動を抑制でき、ノイズを抑制できる。
【0045】
本形態では、駆動部40をモータケース50に収納してネジ部材30の内部に配置しているため、ネジ部材30の外径が大きく、これに応じてネジ穴23の内径も大きい。このため、ネジ部材30の回転中心から離れた位置に度当り部38、28を設けることができる。従って、度当り部38、28が当接したときに度当り面38a、28aにかかる力を小さくすることができる。これにより、ネジ送り機構のネジ部分である突条部33および溝部25の噛み込みが発生しにくい構造となっている。更に、本形態では、駆動部40の駆動源としてステッピングモータを用いているため、度当り面38a、28aが当接して停止する際のステッピングモータのトルクを小さくすることができる。よって、より噛み込みが発生しにくい構成となっている。
【0046】
ここで、ネジ穴23を囲む環状壁24の上端面には、溝部25の中心軸線L方向の端部を構成する円弧状の切り欠き部24bが形成されている。切り欠き部24bは、ネジ穴23の中心を基準として対称な2箇所に形成されている。本形態では、切り欠き部24bの角度範囲(すなわち、ネジ穴23の中心軸線L方向の端部における溝部25の角度位置)が、蓋体2の平面部21におけるガイド穴26の角度位置と重ならないように構成されている。このような配置では、蓋体2を開位置2Bに移動させたとき、蓋体2に対するガイド突起64の係合位置と、蓋体2に対する突条部33の係合位置が周方向に重ならず、2本のガイド突起64と2本の突条部33によって、異なる4箇所の角度位置で蓋体2が支持される。このように、多くの角度位置で蓋体2を支持することにより、開位置2Bにおける蓋体2の傾きを抑制できる。なお、本形態では、突条部33の条数が2であるが、3以上であってもよい。3以上にすれば、より多くの角度位置で蓋体2を支持できる。
【0047】
また、本形態では、
図3、
図4に示すように、ネジ穴23の内周面における閉方向L2側の端部には、度当り部28と同様に、溝部25に隣接する楔型の部分を中心軸線Lと平行に切り欠いた切り欠き部29が形成されている。
図6は、ネジ穴23の内周面を示す説明図(ネジ穴23の断面図)である。この図に示すように、溝部25の開方向L1側の端部に度当たり部28が形成され、且つ、閉方向L2側の端部に切り欠き部29が形成されたことによって、溝部25は、開方向L1側の溝側面25aと、閉方向L2側の溝側面25bにおける中心軸線L方向に対向していた部分が全て切り欠かれて除去された状態になっている。このように、ネジ穴23の内周面において、溝側面25aと溝側面25bにおける中心軸線L方向に対向していた部位を、中心軸線L方向に対向する面を持たない形状に切り欠いた場合、中心軸線L方向に2分割された金型を用いて、ネジ穴23の内周面の形状を成形できる。従って、蓋体2の製造が容易である。
【0048】
ネジ穴23の内周面23aは、溝部25、度当たり部28および切り欠き部29を除いた部位が、ネジ部材30の外周面31aにおける突条部33を除いた部分と径方向に当接している。より具体的には、内周面23aと外周面31aの間のクリアランスが0.05〜0.1mm程度に設定されている。このように、内周面23aと外周面31aの間のクリアランスを小さくすることにより、ネジ部材30に対する蓋体2の傾きが抑制される。加えて、本形態では、度当り部28および切り欠き部29を形成したことによって、ネジ穴23の中心軸線L方向の寸法La(
図6参照)が、ネジ送り機構による蓋体2の閉位置2Aから開位置2Bまでの進退移動に必要な寸法Lbよりも大きくなっている。すなわち、度当り部28および切り欠き部29が形成されたことにより、寸法La=Lb+Lc+Ld(Lc:度当り部28の中心軸線L方向の寸法、Ld:切り欠き部29の中心軸線L方向の寸法)となる。このように、ネジ穴23の内周面23aの高さ(中心軸線L方向の寸法La)が大きいと、ネジ部材30の外周面31aに対するネジ穴23の内周面23aの当接長さが大きくなる。従って、ネジ部材30に対する蓋体2の傾きを抑制するのに有利である。
【0049】
以上のように、本形態のダンパ装置1は、流体通路100aを備えるダクト100の端部に取り付けられたファンユニット101と一体に構成されており、流体通路100aの開口104に面して配置された蓋体2を除くダンパ装置1の各部が、ファンユニット101と中心軸線L方向に重なるように構成されている。具体的には、ダンパ装置1は、蓋体2を中心軸線L方向に進退移動させる蓋体駆動装置3の駆動部40と、駆動部40を収納するモータケース50と、駆動部40によって回転させられるネジ部材30が、軸流羽根103と中心軸線L方向に重なる範囲に設けられている。従って、開口104の外周側にネジ部材30、駆動部40、およびモータケース50の配置スペースを確保する必要がなく、ダンパ装置1の外形を開口104の外形に近づけることができる。よって、ダンパ装置1の小型化に有利である。また、ネジ部材30、駆動部40およびモータケース50が流路に与える影響が少なく、流体の流れを妨げるおそれが少ない。
【0050】
特に、本形態では、ネジ部材30、駆動部40、およびモータケース50が、軸流羽根103と同軸に配置されており、これらの部材が、軸流羽根103の中心部分およびファンモータユニット107と中心軸線L方向に重なる範囲に配置されている。従って、これらを開口104の外部に配置するスペースを確保する必要がない構成でありながら、流路に与える影響が少なく、流体の流れを妨げるおそれが少ない構造となっている。
【0051】
また、本形態では、ネジ部材30、駆動部40、およびモータケース50を支持する支持体60の支持フレーム62が、ファンユニット101の軸流羽根103を支持する枠体102の支持フレーム106と中心軸線L方向に重なるように構成されている。従って、支持体60が流体の流れを妨げるおそれが少なく、流体の流れを妨げるおそれが更に少ない。
【0052】
また、支持体60は、4本の支持フレーム62によって蓋体駆動装置3を支持しており、蓋体2を開位置2Bに移動させたとき、隣接する支持フレーム62の間に、中心軸線Lと直交する方向に開口する隙間S(
図1(b)参照)が形成される。従って、蓋体2を開位置2Bに移動させたとき、ダンパ装置1の側面から、流体を流体通路100aと直交する方向に流出させることができる。また、隙間Sは、中心軸線Lを中心として、全周方向に開口しており、流体を全周方向に流すことができる。このように、流体を周方向に均等に流すことにより、ファンユニット101の配置方向によって流体が流れる際の抵抗に差が生じることがなく、流体の吸引力あるいは排出力に差が生じない。
【0053】
更に、本形態では、蓋体2にガイド部27a、27bが形成され、ガイド部27a、27bと共に蓋体2の回り止め部を構成するガイド突起64が支持体60に設けられ、ガイド突起64は、支持フレーム62と中心軸線L方向に重なるように配置されている。従って、ガイド突起64によって蓋体2がネジ部材30と共回りするのを防止できると共に、ガイド突起64によって蓋体2の傾きを抑制できる。また、ガイド突起64が流路に与える影響が少なく、流体の流れを妨げるおそれが少ない。
【0054】
また、本形態では、駆動部40を収納するモータケース50は、第1ケース51と第2ケース52の接合部56が円筒部31によって外周側から覆われた状態になっているため、接合部56から駆動部40側に流体が入り込むのを防止できる。モータケース50は、閉方向L2側の端部が開口になっているが、この開口は、ファンユニット101のファンモータユニット107に覆われている。従って、湿気などがモータケース50に入り込みにくく、湿気などによって駆動部40に不具合が発生するのを防止できる。
【0055】
なお、本形態は、ネジ部材30の外周面31aに雄ネジ部としての突条部33を形成し、ネジ穴23の内周面23aに雌ネジ部としての溝部25を形成しているが、ネジ部材30の外周面31aに雌ネジ部を形成し、ネジ穴23の内周面23aに雄ネジ部を形成してもよい。
【0056】
また、本形態は、流体が流れ出すダクト100の端部にダンパ装置1を取り付ける形態であったが、流体の流れが逆向きであっても同様の効果が得られる。
【0057】
(他の形態)
本形態は、冷却機等に設けられた冷却空気等の流体が流れるダクト100の一端に取り付けられるファンユニット101と一体に構成されるダンパ装置1に本発明を適用したものであったが、各種の流体(液体あるいは気体)が流れる流体通路の開口に取り付けることができる。例えば、換気口に取り付けるファンユニットと一体に取り付けることもできる。