特許第6112956号(P6112956)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6112956
(24)【登録日】2017年3月24日
(45)【発行日】2017年4月12日
(54)【発明の名称】知恵の輪パズル
(51)【国際特許分類】
   A63F 9/08 20060101AFI20170403BHJP
【FI】
   A63F9/08 505
【請求項の数】6
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-94938(P2013-94938)
(22)【出願日】2013年4月30日
(65)【公開番号】特開2014-213113(P2014-213113A)
(43)【公開日】2014年11月17日
【審査請求日】2016年4月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】513107001
【氏名又は名称】花木 良
(74)【代理人】
【識別番号】100098969
【弁理士】
【氏名又は名称】矢野 正行
(72)【発明者】
【氏名】花木 良
【審査官】 宇佐田 健二
(56)【参考文献】
【文献】 特開平3−149074(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3109719(JP,U)
【文献】 実開昭53−66386(JP,U)
【文献】 特開2000−300831(JP,A)
【文献】 米国特許第4221386(US,A)
【文献】 米国特許第4497489(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63F 9/00,9/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
剛性材料製の閉じたリングと一端がこのリングに連なる剛性材料製の棒とで一本の支柱とするとき、支柱のリング内側に他のいずれかの支柱の棒が通され、各支柱の棒の他端が互いに連結された複数本の支柱と、軟質材料からなる閉じた輪状の紐とを備え、紐がいずれかの支柱の棒に掛けられた状態から外されることにより解く知恵の輪パズルにおいて、前記リング及び棒が、
前記リングとして機能し、外周面に1又は2以上の連結部を有するリング部品と、
直線状をなして前記棒の一部として機能し、両端面に連結部を有する直線部品と、
曲線状をなして前記棒の一部として機能し、両端面に前記直線部品の連結部と着脱自在に結合可能な連結部を有する曲線部品と、
複数の方向に分岐して前記棒のうち前記他端同士を連結する分岐点として機能し、分岐方向端面に前記直線部品又は曲線部品の連結部と着脱自在に結合可能な連結部を有する分岐部品と
で構成されることを特徴とする知恵の輪パズル。
【請求項2】
前記支柱の本数がnであって(nは2以上の正の整数)、m番目の支柱のリング内側に(m−1)番目の支柱の棒が通されている(mは2以上n以下の正の整数)請求項1に記載の知恵の輪パズル。
【請求項3】
前記各連結部は、凹部と凸部との対からなり、一つの部品の凹部と他の部品の凸部とを嵌合させることにより、当該部品同士を結合させる請求項1に記載の知恵の輪パズル。
【請求項4】
前記曲線部品は、平面視で1/4円弧の曲線状をなす請求項1に記載の知恵の輪パズル。
【請求項5】
前記分岐部品は、平面視でT字状又は十字状をなす請求項1に記載の知恵の輪パズル。
【請求項6】
前記軟質材料がゴムである請求項1に記載の知恵の輪パズル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、知恵の輪パズルに関し、特に「ザ チャイニーズ リングズ」として知られるパズルの改良に関する。
【背景技術】
【0002】
古来より「ザ チャイニーズ リングズ」と称されるパズルが知られている(非特許文献1)。このパズルは、一端に閉じた輪が付けられた棒からなる複数の支柱と、閉じた輪状の紐とで構成されている。そして、一つの支柱の輪に他のいずれかの支柱の棒が通され、各支柱の棒の他端が互いに固定され、紐がいずれかの支柱の棒に掛けられた状態から外されることにより、解くことを楽しむものである。
また、近年では、逆に前記棒を鎖に、紐を剛性材料に代えたり(特許文献1)、棒も紐も柔軟性材料からなるものとしたり(特許文献2)する構成が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3007624号公報
【特許文献2】特開2000−300831号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Proc. Amer. Math. Soc. 130 (2002), 893-902
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、古来の「ザ チャイニーズ リングズ」では、難易度に変化がなくて飽きが生じやすいし、与えられた形のものを解くため創造性がなく、携帯性や収納性にも劣る。一方、特許文献1や2で提案されたパズルは、携帯性や収納性を向上させてはいるものの、絡んでしまってパズル自体の解を考える前に絡み合いを解かなければならないし、また、全体の外観が不定形なので、紐を外す手順を考えにくいうえ、途中で絡んでしまったときに、元の状態に戻すことができない。従って、興味や意欲を早期に失ってしまう。
それ故、この発明の課題は、創造性、携帯性及び収納性に優れるとともに、興味や意欲を長期間もたせることのできる知恵の輪パズルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
その課題を解決するために、この発明の知恵の輪パズルは、
剛性材料製の閉じたリングと一端がこのリングに連なる剛性材料製の棒とで一本の支柱とするとき、支柱のリング内側に他のいずれかの支柱の棒が通され、各支柱の棒の他端が互いに連結された複数本の支柱と、軟質材料からなる閉じた輪状の紐とを備え、紐がいずれかの支柱の棒に掛けられた状態から外されることにより解くものである。
この発明によれば、紐の移動経路を規制する支柱が剛性材料製であるので、全体の外観が定形をなしており、支柱同士で絡むことがなく、分解しても元の形を再現しやすい。リングと棒とは、同じ剛性材料からなっていてもよいし、異なる剛性材料からなっていてもよい。
【0007】
更に、この発明の知恵の輪パズルは、前記リング及び棒が、
前記リングとして機能し、外周面に1又は2以上の連結部を有するリング部品と、
直線状をなして前記棒の一部として機能し、両端面に連結部を有する直線部品と、
曲線状をなして前記棒の一部として機能し、両端面に前記直線部品の連結部と着脱自在に結合可能な連結部を有する曲線部品と、
複数の方向に分岐して前記棒のうち前記他端同士を連結する分岐点として機能し、分岐方向端面に前記直線部品又は曲線部品の連結部と着脱自在に結合可能な連結部を有する分岐部品とで構成される。
【0008】
このように前記リング及び棒を部品に分解できるので、効率よく収納することができ携帯も容易である。また、部品の組み合わせ方によって難易度や全体の外観を異ならせることができるので、飽きが生じにくい。
例えば、前記支柱の本数がnであって(nは2以上の正の整数)、m番目の支柱のリング内側に(m−1)番目の支柱の棒が通されている(mは2以上n以下の正の整数)ときは、「ザ チャイニーズ リングズ」の再現となる。
【0009】
前記各連結部は、例えば凹部と凸部との対からなり、一つの部品の凹部と他の部品の凸部とを嵌合させることにより、当該部品同士を結合させるものである。凹凸嵌合による結合であるから、着脱が容易である。
前記曲線部品は、平面視で1/4円弧の曲線状をなすものであってよい。これにより直線部品と結合されて形成される棒の角部が丸みを帯びることとなり、パズル全体がおもちゃとしても安全になるからである。
前記分岐部品は、平面視でT字状又は十字状をなすものであってよい。T字状のときは三方向、十字状のときは四方向に分岐する分岐点として機能する。
前記軟質材料は、好ましくはゴムである。ゴム製であれば紐が長くても絡みにくいし、短くても必要に応じて伸ばせるからである。
【発明の効果】
【0010】
以上のように、この発明の知恵の輪パズルは、携帯性や収納性に優れるので、どこでも楽しむことができる。また、支柱同士で絡むことがないので、知恵の輪の仕組みを理解し、難易度や全体の外観を異ならせて、使用者が自ら新たな知恵の輪を創造し楽しむことができる。このため、興味や意欲を長期間もたせることができるうえ、教育基本法第二条の教育の目標にも挙げられる創造性を培うことも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施形態の知恵の輪パズルに用いられる各部品を示す斜視図である。
図2】各部品を組み合わせから得られる知恵の輪パズルを示す斜視図である。
図3】実施形態の知恵の輪パズルのうち、知恵の輪0の解法を示す図である。
図4】実施形態の知恵の輪パズルのうち、知恵の輪1の解法を示す図である。
図5】実施形態の知恵の輪パズルのうち、知恵の輪2の解法を示す図である。
図6】知恵の輪3のパズルを示す斜視図である。
図7】知恵の輪3の解法を示す斜視図である。
図8】知恵の輪パズルが解ける理由を説明する図である。
図9】複雑な知恵の輪パズルを示す斜視図である。
図10図9の知恵の輪パズルが解ける理由を説明する図である。
図11】実施形態の知恵の輪パズルを空間グラフに置き換えた図である。
図12】他の分岐部品を示す斜視図である。
図13】知恵の輪パズルが解ける理由を説明する別の図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、この発明の実施形態を図面とともに具体的に説明する。
図1に示すように、実施形態の知恵の輪パズルに用いられる各部品は、いずれもプラスチック、木、金属等の剛性材料からなり、断面が同形同大の正方形をなしているが、長方形、楕円形、円形などでもよい。リング部品1は、直線部品2が通過できる程度の空間を内側に有する平面視正方形の枠状をなし、一方の外周面とそれに隣接するもう一つの外周面の各中央部に凹部8a及び凸部8bからなる連結部8を有する。直線部品2は、一方向に長い直方体形状をなし、両端面に連結部を有する。曲線部品3は、平面視1/4円弧状をなし、円周方向の両端面に連結部を有する。分岐部品は3種類あって、第一の分岐部品4は、平面視T字状をなし、3方向の各端面に連結部を有する。第二の分岐部品5は、平面視十字状をなし、4方向の各端面に連結部を有する。第三の分岐部品6は、立方体形状をなし、各面に連結部を有する。
【0013】
図2に示すように、2個のリング部品1と、5個の直線部品2と、3個の曲線部品3とを結合し、途中でゴム製の紐7を掛けておくと、知恵の輪0となる。また、3個のリング部品1と、7個の直線部品2と、4個の曲線部品3と、1個の分岐部品4とを結合し、途中で紐7を掛けておくと、知恵の輪1となる。更にまた、4個のリング部品1と、12個の直線部品2と、5個の曲線部品3と、2個の分岐部品4とを結合し、途中で紐7を掛けておくと、知恵の輪2となる。
【0014】
これらの知恵の輪パズルは、いずれも「ザ チャイニーズ リングズ」を原型とするもので、互いに結合された直線部品2及び曲線部品3を一つの棒とみなし、リング部品1からなるリングと一端がこのリングに連なる棒とで一本の支柱とするとき、n本の支柱があって(nは2以上の正の整数)、m番目の支柱のリング内側に(m−1)番目の支柱の棒が通されている(mは2以上n以下の正の整数)構造を有する。従って、知恵の輪0、知恵の輪1、知恵の輪2の順に難易度が上がっていくが、それぞれ図3〜5に示すように必ず解くことができる。
【0015】
次に、知恵の輪2を分解し、直線部品2を7個、曲線部品3を3個減らして組み立て直すと、図6に示すように知恵の輪3となる。これも図7に示すように解くことができ、「ザ チャイニーズ リングズ」とは異なる趣を楽しむことができる。
【0016】
これらの知恵の輪パズルが解ける理由は、各部品が肉厚を有しない塑性変形可能な線材からなるものと考えると判る。即ち、知恵の輪1の場合、図8(a)に示すように2番目の支柱のリングから1番目の支柱を引き抜き、次いで3番目の支柱のリングから2番目の支柱を引き抜くことで、全ての支柱の拘束が解かれて紐を容易に外すことができる。
これに対して、図8(b)に示すようなものは、肉厚を有しない塑性変形可能な線材からなるものと考えても、決して紐を容易に外すことができるような形に変形されないので、紐を外すことができない。
【0017】
従って、図9に示すように、7個のリング部品1と、23個の直線部品2と、6個の曲線部品3と、5個の分岐部品4とからなる複雑な知恵の輪パズルであっても、図10に示すように必ず紐を外すことが可能である。
【0018】
以上の知恵の輪パズルは、数学としては位相幾何学分野の空間グラフと呼ばれ、図11に示すグラフに置き換えることができる。位置を変えるために辺を伸ばしたり、辺で構成された輪を辺にくぐらせたりする。そのような変形のために、直線部品2や曲線部品3が必要である。グラフは頂点と辺でできているため、図1のような部品があれば、グラフを構成することができる。分岐部品4、5、6は各々高々3本、4本、6本の辺しか出せないが、もっと多くの連結部を有する分岐部品を使えば、どんな空間グラフもこのような部品の組み合わせで構成される。例えば、図12の分岐部品9を使えば、14本の辺を出すこともできる。
そして、この発明の知恵の輪パズルでは、図13(a)に示すように異なる頂点と辺を辿ってもとに戻ってくるもの(サイクル)がない木構造のグラフにおいて、紐7をひっかけることで、ほどけないのではないかという思いにさせるため、リング部品1の存在が必要である。図13(b)に示すようにサイクルがあると、そのサイクルにひっかかった紐7は取れないため、知恵の輪としては成り立たないと考えられる。
【符号の説明】
【0019】
1 リング部品
2 直線部品
3 曲線部品
4、5、6 分岐部品
7 紐
8 連結部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13