特許第6112977号(P6112977)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6112977ロッドレンズアレイ及びイメージセンサー
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6112977
(24)【登録日】2017年3月24日
(45)【発行日】2017年4月12日
(54)【発明の名称】ロッドレンズアレイ及びイメージセンサー
(51)【国際特許分類】
   G02B 3/00 20060101AFI20170403BHJP
   H04N 1/10 20060101ALI20170403BHJP
   H04N 1/107 20060101ALI20170403BHJP
【FI】
   G02B3/00 B
   G02B3/00 A
   H04N1/10
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-117347(P2013-117347)
(22)【出願日】2013年6月3日
(65)【公開番号】特開2014-235348(P2014-235348A)
(43)【公開日】2014年12月15日
【審査請求日】2016年5月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000231589
【氏名又は名称】ニスカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098589
【弁理士】
【氏名又は名称】西山 善章
(74)【代理人】
【識別番号】100098062
【弁理士】
【氏名又は名称】梅田 明彦
(74)【代理人】
【識別番号】100131196
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 武信
(72)【発明者】
【氏名】加賀美 有一
(72)【発明者】
【氏名】荻野 浩二
【審査官】 関口 英樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開平01−017017(JP,A)
【文献】 特開平07−198979(JP,A)
【文献】 特開昭57−027214(JP,A)
【文献】 特表2013−541722(JP,A)
【文献】 特開2003−322759(JP,A)
【文献】 米国特許第4208088(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 1/00− 1/08
G02B 3/00− 3/14
H04N 1/04− 1/203
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
屈折率がその中心軸から外周に向けて連続的に低下する屈折率分布を有する複数の柱状のロッドレンズを、それらの中心軸を平行にして少なくとも1列に配列したロッドレンズアレイであって、
前記各ロッドレンズが、それぞれ光軸方向に沿って入射側端部領域の中心屈折率と出射側端部領域の中心屈折率とが等しく、かつ中間領域の中心屈折率が前記両端部領域の中心屈折率より高くなる屈折率の分布特性を有するロッドレンズアレイ。
【請求項2】
請求項1に記載のロッドレンズアレイと、前記ロッドレンズアレイの各ロッドレンズにより結像される画像を受光する受光センサーとを備えるイメージセンサー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イメージスキャナー等の様々な光学デバイスにおいてイメージセンサーに使用されるロッドレンズアレイ、及びこれを組み込んだイメージセンサーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ファクシミリ、複写機、イメージスキャナー、プリンター等の光学デバイスには、原稿の画像を光学的に読み取って電気信号に変換するために、等倍結像光学系の密着型イメージセンサー(CIS)が広く使用されている。密着型イメージセンサーは、2枚の基板の間に多数の円柱状のロッドレンズを、それらの中心軸を互いに平行にして1列又は2列以上に配列したロッドレンズアレイを備える(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
ロッドレンズは、その中心軸から外周に向けて屈折率が連続的に低くなる屈折率分布を持つように設計される。ロッドレンズは当初、ロッド状のガラス材料を紡糸成形し、イオン交換処理又は陽イオンの熱相互交換により屈折率分布を付与して製造されるガラス製レンズが主流であった(例えば、特許文献2を参照)。
【0004】
現在は、比較的低コストで、屈折率分布を精密に制御できるプラスチック製ロッドレンズが多く採用されている(例えば、特許文献3を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012−244344号公報
【特許文献2】特開平10−139472号公報
【特許文献3】特開2012−78750号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
基本的に、上記光学デバイスには小型化の強い要求があり、同様に密着型イメージセンサーも、原稿等の被写体と像との距離即ち結像距離を短くして小型化を図ることが要求されている。他方、密着型イメージセンサーは、原稿の浮き等によって原稿面とロッドレンズとの距離が多少変動しても鮮明な画像を読み取れるように、ロッドレンズの焦点深度をできるだけ深く設定することが必要である。
【0007】
図5は、正立等倍結像系における従来のロッドレンズの結像を模式的に示している。同図において、ロッドレンズ1は、半径r0一定、レンズ長Z0の円柱状レンズで、その入射端及び出射端に平坦に研磨された入射面2及び出射面3を有する。ロッドレンズ1は、その屈折率が中心軸における屈折率N1から半径方向に向けて連続的に低下している。原稿面4上の点像P0から出た光は、ロッドレンズ1の入射面2から入射して、該ロッドレンズ内を光軸方向に一定の周期で蛇行して進み、出射面3から出射して、受光素子の受光面5上に点像I0を結像する。ここで、点像P0と入射面2との距離即ち作動距離L0は、点像I0と出射面3との距離に等しい。
【0008】
ロッドレンズ1の焦点深度は、開口数に反比例し、開口数は、中心の屈折率N1、屈折率分布定数、及びレンズ半径r0に比例する。従って、中心の屈折率N1及び屈折率分布定数が一定の場合、焦点深度を深くするためには、レンズ半径r0を小さくしなければならない。しかし、レンズ半径r0を小さくすると、ロッドレンズアレイの作製上取り扱いや加工が難しくなるだけでなく、ロッドレンズ1の明るさが開口数の2乗に比例して急激に低下するため、画像の読み取り性能が低下する虞がある。
【0009】
また、ロッドレンズ1の作動距離L0は、レンズ長Z0に対し正接に変化し、中心の屈折率N1及び屈折率分布定数の平方に反比例する。そのため、中心の屈折率N1及びレンズ半径r0を一定にして、屈折率分布定数を小さくすると、レンズ長Z0が一定の場合、作動距離L0が長くなる。その結果、ロッドレンズ1の共役長(物像間距離=Z0+2L0)が長くなり、光学系全体の長さが長くなるので、ロッドレンズアレイ及びこれを備えたイメージセンサーの小型化を図ることはできない。そこで、レンズ長Z0を短くして、作動距離L0を長くしないようにすると、ロッドレンズ1の視野半径が小さくなる。そのため、周期的な光量むらを発生させる虞があるので、好ましくない。
【0010】
そこで、本発明は、上述した従来の問題点に鑑みてなされてもので、その目的は、密着型イメージセンサーにおいて、画像の読み取り性能を低下させることなく、焦点深度を深く設定しながら、光学系の全長をより短くできるロッドレンズアレイを提供することにある。
【0011】
更に、本発明の目的は、そのようなロッドレンズアレイを備えることによって、より一層の小型化を実現し得る密着型イメージセンサーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明によれば、屈折率がその中心軸から外周に向けて連続的に低下する屈折率分布を有する複数の柱状のロッドレンズを、それらの中心軸を平行にして少なくとも1列に配列したロッドレンズアレイであって、前記各ロッドレンズが、それぞれ光軸方向に沿って入射側端部領域の中心屈折率と出射側端部領域の中心屈折率とが等しく、かつ中間領域の中心屈折率が前記両端部領域の中心屈折率より高くなる屈折率の分布特性を有するロッドレンズアレイが提供される。
【0013】
このようにロッドレンズの光軸方向に屈折率分布を付与することによって、光が中間領域では両端部領域よりも短い周期で蛇行して進むことになるので、光路長が実質的に長くなり、屈折率が光軸方向に一定である従来のロッドレンズに比して、ロッドレンズの光軸方向のレンズ長を短くすることができる。従って、焦点深度を深く設定しながら、画像の読み取り性能を低下させることなく、光学系の全長を従来より短くすることができる。
【0014】
また、本発明によれば、上述した本発明のロッドレンズアレイと、前記ロッドレンズアレイの各ロッドレンズにより結像される画像を受光する受光センサーとを備えるイメージセンサーが提供される。これにより、焦点深度が深く、優れた画像の読み取り性能を有する密着型イメージセンサーの小型化を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、本発明のイメージセンサーを搭載したイメージスキャナーの概略斜視図である。
図2図2は、本発明のイメージセンサーを模式的に示す分解斜視図である。
図3図3は、本発明のロッドレンズアレイを模式的に示す一部破砕斜視図である。
図4図4は、本発明によるロッドレンズの結像を説明する図である。
図5図5は、従来のロッドレンズの結像を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、添付図面を参照しつつ、本発明の好適な実施態様について詳細に説明する。
【0017】
図1は、本発明による好適な本実施態様のイメージセンサーを搭載したイメージスキャナーの概略斜視図である。本実施例のイメージスキャナー10は、フラットベッド方式の画像読取装置であり、概ね矩形箱型の本体部11と、前記本体部にその一端で図示しないヒンジにより開閉自在に取り付けられたプラテンカバー12とを備える。
【0018】
本体部11は、その上面に固定された大型矩形の透明ガラス板からなるプラテンガラス13と、本発明による密着型イメージセンサーユニット14とを備える。プラテンガラス13の上には、読み取り対象の原稿がその原稿面を下向きにして載置され、プラテンカバー12を閉じて、その内面に設けた押圧部材12aによって、前記原稿面をプラテンガラス上面に密接させる。
【0019】
イメージセンサーユニット14は、プラテンガラス13の直ぐ下側に配置され、その入射面が前記プラテンガラスの下面に密接するように、保持部材15によって保持されている。前記原稿の読み取り時、前記イメージセンサーユニットは、駆動モーター16によりワイヤー17等を介して駆動され、スライドシャフト18に沿って原稿の読取方向即ち副走査方向に移動する。
【0020】
図2は、本実施態様のイメージセンサーユニット14の基本的な構成を模式的に示している。イメージセンサーユニット14は、光源19と、本発明によるロッドレンズアレイ20と、受光センサー21とを備える。受光センサー21は、センサー基板22上に実装された多数の光電変換素子23を有する。ロッドレンズアレイ20は、その下端の出射面を前記光電変換素子に整合させて、受光センサー21に一体に装着されている。光源19から照射された光は、原稿24の原稿面で反射されてロッドレンズアレイ20上端の入射面に入射し、前記出射面から出射されて光電変換素子23に結像する。
【0021】
図3は、本実施態様のロッドレンズアレイ20の構成を模式的に示している。ロッドレンズアレイ20は、多数のロッドレンズ25を2枚の基板26,27とスペーサー28,29との間に、前記各ロッドレンズの中心軸が互いに平行となるように配列した1つのロッドレンズ列を備える。本実施態様の線走査用ロッドレンズアレイ20において、前記ロッドレンズ列は、イメージセンサーユニット14の主走査方向に沿って配列される。ロッドレンズ25と基板26,27及びスペーサー28,29との隙間は、例えば熱硬化性の黒色シリコン樹脂30が充填され、それにより前記ロッドレンズを接着固定している。
【0022】
本実施態様において、隣接するロッドレンズ同士25は互いに密接するように配置されているが、別の実施例では、一定の隙間を空けて配置することもできる。また、前記ロッドレンズ列は、2列又はそれ以上の複数列に配列することもできる。
【0023】
ロッドレンズ25は、中心軸即ち光軸に沿って半径r1の一様な円形断面を有し、前記光軸に直交する両端面を平坦に研磨した円柱状レンズである。各ロッドレンズ25は、その屈折率が中心軸から外周に向けて連続的に低下する屈折率分布を有する。更に、本実施態様のロッドレンズ25は、その屈折率が光軸方向に沿って連続的に変化する屈折率の分布特性を有する。
【0024】
図4に示すように、ロッドレンズ25は、光軸方向に沿って入射側の端部領域X1と出射側の端部領域X2とが、中心軸の屈折率即ち中心屈折率が互いにN1で等しい同じ屈折率分布Q1を有する。これに対し、それらの間の中間領域X3は、中心屈折率N2がN1より大きく、入射側及び出射側端部領域X1、X2とは異なる屈折率分布Q2を有するように設計されている。これにより、原稿面24a上の点像P1から反射された光は、ロッドレンズ25の入射面25aから入射側端部領域X1を屈折率分布Q1に従って蛇行して進み、中間領域X3に入ると、光は屈折率分布Q2に従って蛇行して進む。更に、出射側端部領域X2を最初の屈折率分布Q1に従って蛇行して進み、出射面25bから出射して光電変換素子23の受光面23aに点像I1を結像する。
【0025】
光軸方向の屈折率分布は、入射側及び出射側端部領域X1、X2と中間領域X3との間で屈折率が漸次変化するように設定することができる。別の実施例では、屈折率が入射側及び出射側端部領域X1、X2と中間領域X3との間で急峻に変化するように設定することができる。また、中間領域X3において、屈折率が光軸方向に沿って連続的に変化するように設定することができる。その場合、最大となる中心屈折率N2が、必ずしもロッドレンズ25の光軸方向中央位置でなくてもよい。
【0026】
上述したように光軸方向の屈折率分布を付与することによって、入射側端部領域X1及び出射側端部領域X2を光軸方向に蛇行する光の周期は等しい。これに対し、中間領域X3を光軸方向に蛇行する光の周期は、入射側及び出射側端部領域X1、X2よりも短くなる。ここで、点像P1と入射面25aとの距離即ち作動距離L1は、点像I1と出射面25bとの距離に等しい。
【0027】
これを図5の従来のロッドレンズ1と比較する。両ロッドレンズ1,25は、そのレンズ半径r0、r1が同一で、焦点深度が同じである、即ち作動距離L0、L1が等しいと仮定する。本発明のロッドレンズ25は、中間領域X3の長さが、従来のロッドレンズ1の対応する中間領域よりも短くなるので、その分、レンズ長Z1が従来のロッドレンズ1のレンズ長Z0よりも短くなる。その結果、ロッドレンズ25は、同じ焦点深度を維持しつつ、その共役長(=Z+2L1)が従来のロッドレンズ1よりも短くなるので、ロッドレンズアレイ20及びイメージセンサー14の小型化を図ることができる。また、レンズ半径が同一であるから、画像の読み取り性能が低下する虞は無い。
【0028】
ロッドレンズ25は、従来技術を利用して製造することができる。例えば、ゲルマニウムドープ石英ガラス材料で製造する場合、屈折率分布を付与するために照射する紫外光の強度を光軸方向に沿って変化させることによって、光軸方向に異なる屈折率分布を付与しえることが知られている。また、プラスチック材料の場合、高分子材料に照射するレーザ光の集光領域を調節することによって、光軸方向に屈折率を変化させ得ることが知られている。
【0029】
また、上記実施態様では、ロッドレンズを一様な円形断面の円柱状に形成したが、軸線方向に沿って断面の大きさや形状を変化させることもできる。また、本発明のロッドレンズは、例えば多角形や十字形など、円形以外の様々な断面形状に形成することができる。
【0030】
以上、本発明を好適な実施態様に関連して説明したが、本発明は上記実施態様に限定されるものでなく、その技術的範囲において、様々な変更又は変形を加えて実施し得ることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0031】
10 イメージスキャナー
11 本体部
12 プラテンカバー
14 イメージセンサーユニット
19 光源
20 ロッドレンズアレイ
21 受光センサー
22 センサー基板
23 光電変換素子
24a 原稿面
25 ロッドレンズ
26、27 基板
28、29 スペーサー
図1
図2
図3
図4
図5