特許第6113004号(P6113004)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6113004ポリ(メタ)アクリレート系粘度指数向上剤、並びに該粘度指数向上剤を含有する潤滑油添加剤及び潤滑油組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6113004
(24)【登録日】2017年3月24日
(45)【発行日】2017年4月12日
(54)【発明の名称】ポリ(メタ)アクリレート系粘度指数向上剤、並びに該粘度指数向上剤を含有する潤滑油添加剤及び潤滑油組成物
(51)【国際特許分類】
   C10M 145/14 20060101AFI20170403BHJP
   C10N 30/02 20060101ALN20170403BHJP
   C10N 20/04 20060101ALN20170403BHJP
   C10N 30/00 20060101ALN20170403BHJP
   C10N 30/06 20060101ALN20170403BHJP
   C10N 40/04 20060101ALN20170403BHJP
【FI】
   C10M145/14
   C10N30:02
   C10N20:04
   C10N30:00 Z
   C10N30:06
   C10N40:04
【請求項の数】3
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2013-142021(P2013-142021)
(22)【出願日】2013年7月5日
(65)【公開番号】特開2015-13961(P2015-13961A)
(43)【公開日】2015年1月22日
【審査請求日】2015年9月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004444
【氏名又は名称】JXエネルギー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100169454
【弁理士】
【氏名又は名称】平野 裕之
(72)【発明者】
【氏名】田川 一生
(72)【発明者】
【氏名】高木 彰
(72)【発明者】
【氏名】上野 龍一
【審査官】 磯貝 香苗
(56)【参考文献】
【文献】 特表2008−518051(JP,A)
【文献】 特表2008−518052(JP,A)
【文献】 特開2012−041559(JP,A)
【文献】 特表2009−506179(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/161908(WO,A1)
【文献】 特開2009−173921(JP,A)
【文献】 特開2009−007562(JP,A)
【文献】 特表2009−534521(JP,A)
【文献】 国際公開第2006/009083(WO,A1)
【文献】 特開平09−048988(JP,A)
【文献】 特開2005−187736(JP,A)
【文献】 特表2009−536686(JP,A)
【文献】 特開2009−074068(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/076676(WO,A1)
【文献】 特表2004−513997(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0245068(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0244018(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0167970(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0118150(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10M 145/14
C10M 107/28
C10N 20/02
C10N 30/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コア部と、下記一般式(1)で表される構造単位を含む重合鎖であって、前記一般式(1)中のRがメチル基である構造単位を重合鎖に含まれる構造単位の全量を基準として15〜45質量%含み、かつ、Rが炭素数18以上のアルキル基である構造単位を重合鎖に含まれる構造単位の全量を基準として10質量%以上含む重合鎖からなり且つ該重合鎖の一端が前記コア部に結合しているアーム部の3つ以上と、を有し、
重量平均分子量Mwが100,000未満であり、重量平均分子量Mwと数平均分子量Mnとの比Mw/Mnが1.6以下である、ポリ(メタ)アクリレート系粘度指数向上剤。
【化1】

[式(1)中、Rは水素又はメチル基を示し、Rは炭素数1以上36以下のアルキル基を示す。]
【請求項2】
請求項1に記載のポリ(メタ)アクリレート系粘度指数向上剤を含有する潤滑油添加剤。
【請求項3】
潤滑油基油と、請求項1に記載のポリ(メタ)アクリレート系粘度指数向上剤と、を含有する潤滑油組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリ(メタ)アクリレート系粘度指数向上剤、並びに該粘度指数向上剤を含有する潤滑油添加剤及び潤滑油組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、潤滑油の分野では、省エネルギー性の観点から潤滑油の改良が検討されている。特に近年は、地球環境保護の気運が高まり、潤滑油に対する省エネルギー性改善効果の要求は一層強まっている。
【0003】
例えば、自動車の変速機に用いられるATF、MTF、CVTF等の潤滑油(「変速機用潤滑油」又は「駆動系油」とも呼ばれる。)の場合、省燃費性を改善する手段の一つとして、変速機用潤滑油を低粘度化して粘性抵抗を低減する方法が挙げられる。しかし、変速機用潤滑油を低粘度化すると、油漏れ、焼付きなどの別の問題が生じるおそれがある。
【0004】
そこで、省燃費性を改善する他の方法として、粘度指数向上剤を用いる方法がある。この方法は、粘度指数向上剤を用いることによって変速機用潤滑油の粘度指数を高くし、高温領域での粘度を維持しつつ、低温領域での粘度増加を抑制するものである。粘度指数向上剤については、これまで各種の粘度指数向上剤の使用が提案されているが、特にポリ(メタ)クリレート系粘度指数向上剤の使用が多く提案されている(例えば特許文献1〜7参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7−48421号公報
【特許文献2】特開平7−62372号公報
【特許文献3】特開平6−145258号公報
【特許文献4】特開平3−100099号公報
【特許文献5】特開2002−302687号公報
【特許文献6】特開2004−124080号公報
【特許文献7】特開2005−187736号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、省燃費性が悪化する原因の一つとして、駆動装置内にある歯車の動力伝達時の摩擦損失が挙げられる。したがって、高せん断条件下で粘性抵抗の低い潤滑油を実現できれば、摩擦損失を低減することができ、省燃費性をさらに向上させることができる。しかし、上述した従来の粘度指数向上剤は、高粘度指数化により高温領域及び低温領域の粘度特性の改善を図るものであり、摩擦損失低減効果の点では十分とはいえない。
【0007】
さらに、駆動系油はほとんど交換することがないため、省燃費の持続性が求められている。省燃費持続性には、粘度指数向上剤のせん断安定性が大きく影響するため、粘度指数向上剤としては、摩擦損失低減効果に加えてせん断安定性に優れることが望ましい。しかし、従来のポリ(メタ)アクリレート系粘度指数向上剤は、摩擦損失低減効果とせん断安定性との両立の点でも十分であるとはいえない。
【0008】
そこで、本発明は、十分な摩擦損失低減効果を潤滑油に付与することができ、せん断安定性に優れる粘度指数向上剤、並びに該粘度指数向上剤を含有する潤滑油添加剤及び潤滑油組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、鋭意検討した結果、特定の構造を有し、重量平均分子量、及び重量平均分子量Mwと数平均分子量Mnとの比Mw/Mnが特定の条件を満たすポリ(メタ)アクリレート系粘度指数向上剤が、摩擦損失低減効果を付与することができ、せん断安定性に優れることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明は、コア部と、下記一般式(1)で表される構造単位を含む重合鎖からなり且つ該重合鎖の一端がコア部に結合しているアーム部の3つ以上と、を有し、重量平均分子量Mwが100,000未満であり、重量平均分子量Mwと数平均分子量Mnとの比Mw/Mnが1.6以下である、ポリ(メタ)アクリレート系粘度指数向上剤を提供する。
【化1】

[式(1)中、Rは水素又はメチル基を示し、Rは炭素数1以上36以下のアルキル基を示す。]
【0011】
また、本発明は、上記ポリ(メタ)アクリレート系粘度指数向上剤を含有する潤滑油添加剤を提供する。
【0012】
また、本発明は、潤滑油基油と、上記ポリ(メタ)アクリレート系粘度指数向上剤を含有する潤滑油組成物を提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、十分な摩擦損失低減効果を潤滑油に付与することができ、せん断安定性に優れる粘度指数向上剤、並びに該粘度指数向上剤を含有する潤滑油添加剤及び潤滑油組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明するが、本発明は、以下の実施形態に何ら限定されるものではない。
【0015】
[第1実施形態:ポリ(メタ)アクリレート系粘度指数向上剤]
第1実施形態に係るポリ(メタ)アクリレート系粘度指数向上剤は、コア部と、下記一般式(1)で表される構造単位を含む重合鎖からなり且つ重合鎖の一端がコア部に結合しているアーム部の3つ以上と、を有する。該ポリ(メタ)アクリレート系粘度指数向上剤の重量平均分子量Mw(以下、場合により単に「Mw」という。)は100,000未満であり、重量平均分子量Mwと数平均分子量Mn(以下、場合により単に「Mw」という。)との比Mw/Mn(以下、場合により単に「Mw/Mn」という。)は1.6以下である。
【0016】
【化2】

[式(1)中、Rは水素又はメチル基を示し、Rは炭素数1以上36以下のアルキル基を示す。]
【0017】
は水素又はメチル基のいずれであってもよいが、好ましくはメチル基である。
【0018】
で示されるアルキル基の炭素数は、上記のとおり1以上36以下であり、取扱性及び製造容易性の観点から、1〜30であることが好ましく、1〜26であることがより好ましく、1〜22であることが更に好ましい。また、Rで示されるアルキル基は、直鎖状であっても、分岐状であってもよい。
【0019】
重合鎖に含まれる上記一般式(1)で表される構造単位が2以上の場合、R及びRは構造単位同士で同一でも異なっていてもよい。Rの異なる2種以上の構造単位が含まれる場合、粘度温度特性の観点から、Rがメチル基である構造単位が、重合鎖に含まれる構造単位の全量を基準として、10〜45質量%含まれることが好ましく、15〜45質量%含まれることがより好ましく、20〜45質量%含まれることが更に好ましい。また、省燃費特性の観点から、Rが炭素数18以上のアルキル基である構造単位が、重合鎖に含まれる構造単位の全量を基準として、10質量%以上含まれることが好ましく、15質量%以上含まれることがより好ましく、20質量%以上含まれることが更に好ましい。
【0020】
重合鎖は、上記一般式(1)で表される構造単位のみを含んでいてもよく、あるいは、上記一般式(1)で表される構造単位の他に、上記一般式(1)で表される構造単位以外の構造単位を更に含んでいてもよい。また、重合鎖の末端のうち、一端はコア部に結合しており、他端については結合する原子に特に制限はない。このような重合鎖の中でも、上記一般式(1)で表される構造単位のみを含んでおり、一端がコア部に結合し、他端が水素原子に結合している重合鎖、すなわち下記一般式(2)で表される重合鎖であることが好ましい。
【0021】
【化3】
【0022】
式(2)中、Rは水素又はメチル基を示し、Rは炭素数1以上36以下のアルキル基を示し、nはポリ(メタ)アクリレート系粘度指数向上剤のMw及びMw/Mnが上記の条件を満たすように選ばれる整数である。nは、例えば40〜450の整数である。また、*はコア部との結合手を示す。
【0023】
アーム部1つあたりの重量平均分子量Mwは、ポリ(メタ)アクリレート系粘度指数向上剤のMwが上記の条件を満たすように適宜選ばれるが、33,000以下であることが好ましく、30,000以下であることがより好ましく、27,000以下であることが更に好ましい。
【0024】
アーム部1つあたりの数平均分子量Mnは、ポリ(メタ)アクリレート系粘度指数向上剤のMw/Mnが上記の条件を満たすように適宜選ばれるが、2,000以上であることが好ましく、4,000以上であることがより好ましく、8,000以上であることが更に好ましい。
【0025】
ポリ(メタ)アクリレート系粘度指数向上剤の重量平均分子量Mwは、100,000未満であり、せん断安定性の観点から、90,000以下であることが好ましく、80,000以下であることがより好ましく、60,000以下であることが更に好ましい。Mwの下限は特に制限されないが、Mwは例えば10,000以上である。
【0026】
ポリ(メタ)アクリレート系粘度指数向上剤の重量平均分子量Mwは、100,000未満であり、せん断安定性の観点から、90,000以下であることが好ましく、80,000以下であることがより好ましく、60,000以下であることが更に好ましい。Mwの下限は特に制限されないが、Mwは例えば10,000以上である。
【0027】
ポリ(メタ)アクリレート系粘度指数向上剤の数平均分子量Mnは、Mw/Mnが上記の条件を満たすように適宜選択される。Mnは、省燃費特性の観点から、6,000以上であることが好ましく、10,000以上であることがより好ましく、12,500以上であることが更に好ましい。Mnの上限は特に制限されないが、Mnは例えば60,000以下である。
【0028】
なお、本発明でいう「重量平均分子量Mw」、「数平均分子量Mn」及び「重量平均分子量Mwと数平均分子量Mnとの比Mw/Mn」とは、GPC分析により得られるMw、Mn及びMw/Mn(ポリスチレン(標準試料)換算値)を意味する。ポリ(メタ)アクリレート系粘度指数向上剤のMw/Mn及びアーム部1つあたりのMw及びMnは、例えば以下のように測定することができる。
【0029】
溶剤としてテトラヒドロフランを使用し、希釈して試料濃度を2質量%とした溶液を調製する。その試料溶液を、GPC装置(Waters Alliance2695)を用いて分析を行う。溶剤の流速は1ml/min、分析可能分子量10,000から256,000のカラムを使用し、屈折率を検出器として分析を実施する。なお、分子量が明確なポリスチレン標準を用いてカラム保持時間と分子量との関係を求め、検量線を別途作成した上で、得られた保持時間から分子量を決定する。得られた分子量(MwとMn)と開始剤の官能基数で割ることでアームの分子量(MwとMn)を算出することができる。
【0030】
コア部は、アクリロイル基の炭素−炭素二重結合と反応する官能基を3つ以上有する化合物に由来するものである。アクリロイル基の炭素−炭素二重結合と反応する官能基を3つ以上有する化合物としては、例えば、1,1,1−トリス(2−ブロモイソブチルオキシメチレン)エタン、ペンタエリスリトールテトラキス(2−ブロモイソブチレート)、ジペンタエリスリトールヘキサキス(2−ブロモイソブチレート)が挙げられる。
【0031】
ポリ(メタ)アクリレート系粘度指数向上剤が有するアーム部の数は、上記官能基の数と対応する。アーム部の数、すなわち上記官能基の数は、せん断安定性の観点から、2〜12であることが好ましく、2〜8であることがより好ましく、3〜6であることが更に好ましい。
【0032】
本実施形態に係るポリ(メタ)アクリレート系粘度指数向上剤の製造方法としては、特に制限されないが、例えば、アルキル(メタ)アクリレート、開始剤及び溶媒を含む混合溶液に重合触媒を加え、アルキル(メタ)アクリレートを重合する方法が挙げられる。
【0033】
アルキル(メタ)アクリレートとしては、下記一般式(3)で表されるアルキル(メタ)アクリレートを用いることができる。
【0034】
【化4】
【0035】
式(3)中、Rは水素又はメチル基を示し、Rは炭素数1以上36以下のアルキル基を示す。
【0036】
はメチル基であることが好ましい。Rで示されるアルキル基の炭素数は、1〜30であることが好ましく、1〜26であることがより好ましく、1〜22であることが更に好ましい。
【0037】
アルキル(メタ)アクリレートとしては、上記一般式(3)で表されるアルキル(メタ)アクリレートの1種を単独で、又は2種以上を混合して用いることができるが、2種以上を混合して用いることが好ましい。2種以上を混合して用いる場合、Rがメチル基であるメチル(メタ)アクリレートの含有量が、アルキル(メタ)アクリレート全量基準で、5〜50質量%であることが好ましく、10〜45質量%であることがより好ましく、20〜45質量%であることが更に好ましい。また、Rが炭素数18以上のアルキル基であるアルキル(メタ)アクリレートの含有量が、アルキル(メタ)アクリレート全量基準で、10質量%以上であることが好ましく、20質量%以上であることがより好ましく、30質量%以上であることが更に好ましい。
【0038】
開始剤としては、アクリロイル基の炭素−炭素二重結合と反応する官能基を3つ以上有する化合物に由来するものを用いることができ、例えば、1,1,1−トリス(2−ブロモイソブチルオキシメチレン)エタン、ペンタエリスリトールテトラキス(2−ブロモイソブチレート)、ジペンタエリスリトールヘキサキス(2−ブロモイソブチレート)を用いることができる。
【0039】
溶媒としては、例えば、高度精製鉱油、アニソール、トルエンを用いることができる。好ましい溶媒としては、高度精製鉱油を例示することができる。
【0040】
重合触媒としては、例えば、臭化銅(II)、トリス(2−ピリジルメチル)アミン、アゾビスイソブチロニトリル、2−エチルヘキサン酸スズ(II)、トリス[2−(ジメチルアミノ)エチル]アミンを用いることができる。好ましい重合触媒としては、臭化銅(II)、トリス(2−ピリジルメチル)アミン、アゾビスイソブチロニトリル、2−エチルヘキサン酸スズ(II)を例示することができる。これらの重合触媒を1種単独で、又は2種以上を混合して用いてもよい。
【0041】
アルキル(メタ)アクリレートを重合する際の反応温度は、適宜選定することができる。好ましい反応温度としては、60〜100℃を例示することができる。反応温度を上記範囲内にすることで、得られるポリ(メタ)アクリレート系粘度指数向上剤のMw/Mnが1.6以下となりやすくなる。例えば、反応温度が60〜80℃であるとMw/Mnが1.0〜1.3となる傾向にあり、反応温度が80〜100℃であるとMw/Mnが1.3〜1.6となる傾向にある。
【0042】
反応時間は、原料であるアルキル(メタ)アクリレート、重合試薬、溶媒及び開始剤の種類及び使用量、反応温度等の反応条件、目的とするポリ(メタ)アクリレートのMw及びMw/Mnに応じて適宜選定することができる。好ましい反応時間としては、8〜16時間を例示することができる。
【0043】
アルキル(メタ)アクリレートの重合は、窒素雰囲気下で行うことが好ましい。
【0044】
[第2実施形態:潤滑油添加剤]
本発明の第2実施形態に係る潤滑油添加剤は、上記一般式(1)で表される構造単位を含む重合鎖を有し、重量平均分子量Mwが100,000未満であり、重量平均分子量Mwと数平均分子量Mnとの比Mw/Mnが1.6以下であるポリ(メタ)アクリレート系粘度指数向上剤を含有する。なお、本実施形態におけるポリ(メタ)アクリレート系粘度指数向上剤は、上記第1実施形態における粘度指数向上剤と同様であり、ここでは重複する説明を省略する。
【0045】
潤滑油添加剤は、上記のポリ(メタ)アクリレート系粘度指数向上剤のみからなるものであってもよく、あるいは、当該粘度指数向上剤と他の添加剤との混合物(すなわち添加剤組成物)であってもよい。潤滑油添加剤が当該粘度指数向上剤と他の添加剤との混合物である場合、これらの混合割合は特に制限されず、用途に応じて適宜選定することができる。
【0046】
他の添加剤としては、上記のポリ(メタ)アクリレート系粘度指数向上剤以外の粘度指数向上剤、酸化防止剤、摩耗防止剤(又は極圧剤)、腐食防止剤、防錆剤、粘度指数向上剤、流動点降下剤、抗乳化剤、金属不活性化剤、消泡剤、無灰摩擦調整剤等の添加剤等が挙げられる。これらの添加剤は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0047】
上記のポリ(メタ)アクリレート系粘度指数向上剤以外の粘度指数向上剤としては、上記のポリ(メタ)アクリレート系粘度指数向上剤以外のポリ(メタ)アクリレート系粘度指数向上剤、ポリイソブテン系粘度指数向上剤、エチレン−プロピレン共重合体系粘度指数向上剤、スチレン−ブタジエン水添共重合体系粘度指数向上剤などが挙げられる。
【0048】
酸化防止剤としては、フェノール系、アミン系等の無灰酸化防止剤、亜鉛系、銅系、モリブデン系等の金属系酸化防止剤が挙げられる。
【0049】
フェノール系酸化防止剤としては、例えば、4,4'−メチレンビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、4,4’−ビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、4,4'−ビス(2−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2'−メチレンビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2'−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4'−ブチリデンビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−イソプロピリデンビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−ノニルフェノール)、2,2'−イソブチリデンビス(4,6−ジメチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−シクロヘキシルフェノール)、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−エチルフェノール、2,4−ジメチル−6−tert−ブチルフェノール、2,6−ジ−tert−α−ジメチルアミノ−p−クレゾール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−(N,N−ジメチルアミノメチルフェノール)、4,4'−チオビス(2−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4'−チオビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2'−チオビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、ビス(3−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルベンジル)スルフィド、ビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)スルフィド、2,2'−チオ−ジエチレンビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、トリデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、ペンタエリスリチル−テトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクチル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、ステアリル3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、オクチル−3−(3−メチル−5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート等が挙げられる。これらは二種以上を混合して使用してもよい。
【0050】
アミン系酸化防止剤としては、例えば、芳香族アミン化合物、アルキルジフェニルアミン、アルキルナフチルアミン、フェニル−α−ナフチルアミン、アルキルフェニル−α−ナフチルアミン等の潤滑油用として一般に使用されている公知のアミン系酸化防止剤が挙げられる。
【0051】
腐食防止剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール系、トリルトリアゾール系、チアジアゾール系、又はイミダゾール系化合物等が挙げられる。
【0052】
防錆剤としては、例えば、石油スルホネート、アルキルベンゼンスルホネート、ジノニルナフタレンスルホネート、アルケニルコハク酸エステル、又は多価アルコールエステル等が挙げられる。
【0053】
金属不活性化剤としては、例えば、イミダゾリン、ピリミジン誘導体、アルキルチアジアゾール、メルカプトベンゾチアゾール、ベンゾトリアゾール又はその誘導体、1,3,4−チアジアゾールポリスルフィド、1,3,4−チアジアゾリル−2,5−ビスジアルキルジチオカーバメート、2−(アルキルジチオ)ベンゾイミダゾール、又はβ−(o−カルボキシベンジルチオ)プロピオンニトリル等が挙げられる。
【0054】
消泡剤としては、例えば、25℃における動粘度が1,000〜100,000mm/sのシリコーンオイル、アルケニルコハク酸誘導体、ポリヒドロキシ脂肪族アルコールと長鎖脂肪酸のエステル、メチルサリチレートとo−ヒドロキシベンジルアルコール等が挙げられる。
【0055】
無灰摩擦調整剤としては、潤滑油用の無灰摩擦調整剤として通常用いられる任意の化合物が使用可能であり、例えば、炭素数6〜30のアルキル基又はアルケニル基、特に炭素数6〜30の直鎖アルキル基又は直鎖アルケニル基を分子中に少なくとも1個有する、アミン化合物、脂肪酸エステル、脂肪酸アミド、脂肪酸、脂肪族アルコール、脂肪族エーテル等の無灰摩擦調整剤等が挙げられる。また特開2009−286831号公報に記載の窒素含有化合物及びその酸変性誘導体等、国際公開第2005/037967号パンフレットに例示されている各種無灰摩擦調整剤を用いることもできる。
【0056】
また、本実施形態に係る潤滑油添加剤は、溶剤を更に含有していてもよい。溶剤としては、高度精製鉱油、溶剤精製基油、合成油を用いることができる。これらの中でも、高度精製鉱油を用いることが好ましい。潤滑油添加剤が溶剤を含有する場合、溶剤の含有量は、潤滑油添加剤の全量を基準として、好ましくは5〜75質量%、より好ましくは30〜60質量%である。
【0057】
[第3実施形態:潤滑油組成物]
第3実施形態に係る潤滑油組成物は、潤滑油基油と、上記一般式(1)で表される構造単位を含む重合鎖を有し、重量平均分子量Mwが100,000未満であり、重量平均分子量Mwと数平均分子量Mnとの比Mw/Mnが1.6以下であるポリ(メタ)アクリレート系粘度指数向上剤と、を含有する。ここで、本実施形態に係る潤滑油組成物には、潤滑油基油と上記第2の実施形態に係る潤滑油添加剤とを含有する態様が包含される。本実施形態におけるポリ(メタ)アクリレート系粘度指数向上剤は上記第1実施形態及び第2実施形態におけるポリ(メタ)アクリレート系粘度指数向上剤と同様であり、また、潤滑油組成物に含まれ得るその他の添加剤及び溶剤は第2実施形態におけるその他の添加剤及び溶剤と同様であり、ここでは重複する説明を省略する。
【0058】
潤滑油基油としては、特に制限されず、通常の潤滑油に使用される潤滑油基油を使用できる。具体的には、鉱油系潤滑油基油、合成油系潤滑油基油又はこれらの中から選ばれる2種以上の潤滑油基油を任意の割合で混合した混合物等を使用できる。
【0059】
鉱油系潤滑油基油としては、例えば、原油を常圧蒸留して得られる常圧残油を減圧蒸留して得られた潤滑油留分を、溶剤脱れき、溶剤抽出、水素化分解、溶剤脱ろう、水素化精製等の処理を1つ以上行って精製したもの、あるいはワックス異性化鉱油、GTLワックス(ガストゥリキッドワックス)を異性化する手法で製造される基油等が挙げられる。
【0060】
合成油系潤滑油としては、例えば、ポリブテン又はその水素化物;1−オクテンオリゴマー、1−デセンオリゴマー等のポリ−α−オレフィン又はその水素化物;ジトリデシルグルタレート、ジ−2−エチルヘキシルアジペート、ジイソデシルアジペート、ジトリデシルアジペート、ジ−2−エチルヘキシルセバケート等のジエステル;トリメチロールプロパンカプリレート、トリメチロールプロパンペラルゴネート、ペンタエリスリトール−2−エチルヘキサノエート、ペンタエリスリトールペラルゴネート等のポリオールエステル;アルキルナフタレン、アルキルベンゼン等の芳香族系合成油又はこれらの混合物等が例示できる。
【0061】
潤滑油基油の100℃における動粘度は、好ましくは2.5〜10.0mm/s、より好ましくは3.0〜8.0mm/s、更に好ましくは3.5〜6.0mm/sである。また、潤滑油基油の粘度指数は、好ましくは90〜165、より好ましくは100〜155、更に好ましくは120〜150である。
【0062】
潤滑油基油のクロマト分析による飽和分は、第1実施形態に係るポリ(メタ)アクリレート系粘度指数向上剤等の添加剤の効果を発揮しやすくするため、好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上、更に好ましくは90%以上、最も好ましくは95%以上である。
【0063】
第1実施形態に係るポリ(メタ)アクリレート系粘度指数向上剤の含有量は、潤滑油組成物全量を基準として、好ましくは0.1〜20.0質量%、より好ましくは0.5〜15.0質量%、更に好ましくは1.0〜10.0質量%である。当該含有量が上記下限値以上であると、十分な添加効果を得られやすくなり、一方、当該含有量が上記上限値以下であると、せん断安定性が高くなり、燃費持続性が向上する。
【0064】
潤滑油組成物の100℃における動粘度は、好ましくは2.0〜16.3mm/s、より好ましくは2.5〜12.5mm/s、更に好ましくは3.0〜10.0mm/sである。100℃における動粘度が上記下限値以上であると、潤滑性を確保しやすくなり、一方、100℃における動粘度が上記上限値以下であると、より省燃費性が向上する。なお、本発明での100℃における動粘度は、JIS K−2283−1993に規定される100℃における動粘度を意味する。
【0065】
潤滑油組成物の粘度指数は、好ましくは130〜250、より好ましくは140〜240、更に好ましくは160〜230である。粘度指数が上記下限値以上であると、HTHS粘度を維持しながら、より省燃費性を向上させることができ、また低温粘度を低下させやすくなる。一方、粘度指数が上記上限値以下であると、低温流動性、添加剤の溶解性、及びシール材料との適合性を確保することができる。なお、本発明での粘度指数は、JIS K 2283−1993に規定される粘度指数を意味する。
【0066】
潤滑油組成物のせん断率は、好ましくは8%以下、より好ましくは5%以下、更に好ましくは2%以下である。せん断率が上記上限値以下であると、処方油をさらに低粘度化することが可能である。なお、本発明でのせん断率は、実機のギヤでのせん断安定性をシミュレートするためにKRLテーパーローラーベアリング(試験法:CEC L45−A−99)を用い、機械的せん断による方法で評価したせん断率を意味する。より詳細には、GroupIIの基油に粘度指数向上剤を2質量%になるように調製したものを、上記試験法に準拠し、120時間連続で運転する。そのときの、試験前後での100℃の動粘度の低下率(試験前後での動粘度との差を試験前の動粘度で割った値(%))をせん断率とする。
【0067】
以上説明した第1実施形態に係る粘度指数向上剤、第2実施形態に係る潤滑油添加剤、及び第3実施形態に係る潤滑油組成物は、内燃機関用潤滑油、駆動系潤滑油等の幅広い分野で使用することができるが、特に、駆動系潤滑油の分野において有用である。この場合の駆動装置は自動変速機(AT)、無段自動変速機(CVT)および有段変速機(TM)のいずれであってもよい。
【実施例】
【0068】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。
【0069】
[実施例1]
下記の条件(「合成条件1」とする)でポリ(メタ)アクリレート系粘度指数向上剤を合成した。
【0070】
錨型金属製攪拌翼(真空シール付)、ジムロート冷却器、窒素導入用3方コック及びサンプル導入口を装着した300mlの5口セパラブルフラスコに、メチルメタクリレート(式(3)中のR及びRが共にメチル基である化合物。以下「C1−MA」と表記する。)18g、ステアリルメタクリレート(式(3)中のRがメチル基、Rがステアリル基(炭素数18の直鎖アルキル基)である化合物。以下「C18−MA」と表記する。)42g、開始剤として3官能開始剤である1,1,1−トリス(2−ブロモイソブチロキシメチル)エタン(以下「X」と表記する。)0.18g、及び溶媒として高度精製鉱油(100℃の動粘度:4.2mm/s)117gを投入し、攪拌下で均一溶液とした。本溶液を氷浴にて0℃まで冷却し、ダイヤフラムポンプを用いて反応系の真空脱気/窒素パージを5回実施した。さらに、窒素フロー下でサンプル導入口より、重合触媒として臭化銅(II)0.004g及びトリス(2−ピリジルメチル)アミン0.005gをアニソール2.0gに溶解した錯体溶液と、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.056gとを投入した後、窒素雰囲気下にて溶液温度70℃にて12時間撹拌して重合を実施し、3つのアーム部を有するポリ(メタ)アクリレート系粘度指数向上剤を含有した溶液を得た。
【0071】
得られたポリ(メタ)アクリレート系粘度指数向上剤について、GPC分析により、重量平均分子量Mw及び数平均分子量Mnを測定した。その結果、重量平均分子量Mwは97,000、数平均分子量Mnは64,000、Mw/Mnは1.51であった。GPC分析の手順は以下のとおりである。
【0072】
溶剤としてテトラヒドロフランを使用し、希釈して試料濃度を2質量%とした溶液を調製した。その試料溶液を、GPC装置(Waters Alliance2695)を用いて分析を行った。溶剤の流速は1ml/min、分析可能分子量10,000から256,000のカラムを使用し、屈折率を検出器として分析を実施した。なお、分子量が明確なポリスチレン標準を用いてカラム保持時間と分子量との関係を求め、検量線を別途作成した上で、得られた保持時間から分子量を決定した。
【0073】
[実施例7]
下記の条件(「合成条件2」とする)でポリ(メタ)アクリレート系粘度指数向上剤を合成した。
【0074】
錨型金属製攪拌翼(真空シール付)、ジムロート冷却器、窒素導入用3方コック及びサンプル導入口を装着した300mlの5口セパラブルフラスコに、メチルメタクリレート(C1−MA)18g、ステアリルメタクリレート(C18−MA)42g、開始剤として3官能開始剤である1,1,1−トリス(2−ブロモイソブチロキシメチル)エタン(X)0.14g、及び溶媒として高度精製鉱油(100℃の動粘度:4.2mm/s)117gを投入し、攪拌下で均一溶液とした。本溶液を氷浴にて0℃まで冷却し、ダイヤフラムポンプを用いて反応系の真空脱気/窒素パージを5回実施した。さらに、窒素フロー下でサンプル導入口より、重合触媒として臭化銅(II)0.004g及びトリス(2−ピリジルメチル)アミン0.005gをアニソール2.0gに溶解した錯体溶液と、2−エチルヘキサン酸スズ(II)0.17gを高度精製鉱油(100℃の動粘度:4.2mm/s)3gに溶解した溶液とを投入した後、窒素雰囲気下にて溶液温度70℃にて12時間撹拌して重合を実施し、3つのアーム部を有するポリ(メタ)アクリレート系粘度指数向上剤を含有した溶液を得た。
【0075】
得られたポリ(メタ)アクリレート系粘度指数向上剤について、実施例1と同様にGPC分析を行った結果、重量平均分子量Mwは98,000、数平均分子量Mnは80,300、Mw/Mnは1.22であった。
【0076】
[比較例3]
下記の条件(「合成条件3」とする)でポリ(メタ)アクリレート系粘度指数向上剤を合成した。
【0077】
錨型金属製攪拌翼(真空シール付)、ジムロート冷却器、窒素導入用3方コック及びサンプル導入口を装着した300mlの5口セパラブルフラスコに、メチルメタクリレート(C1−MA)18g、ステアリルメタクリレート(C18−MA)42g、クミルジチオ安息香酸(CDTBA)0.65g、及び溶媒として高度精製鉱油(100℃の動粘度:4.2mm/s)60gを投入し、攪拌下で均一溶液とした。本溶液を氷浴にて0℃まで冷却し、ダイヤフラムポンプを用いて反応系の真空脱気/窒素パージを5回実施した。さらに、窒素フロー下でサンプル導入口より開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.06gを投入した後、窒素雰囲気下にて溶液温度90℃で12時間重合を実施し、ポリ(メタ)アクリレート系粘度指数向上剤を含有した溶液を得た。
【0078】
得られたポリ(メタ)アクリレート系粘度指数向上剤について、実施例1と同様にGPC分析を行った結果、重量平均分子量Mwは90,000、数平均分子量Mnは54,000、Mw/Mnは1.71であった。
【0079】
[比較例5]
下記の条件(「合成条件4」とする)でポリ(メタ)アクリレート系粘度指数向上剤を合成した。
【0080】
撹拌羽(真空シール付)、ジムロート冷却器、窒素導入用3方コック及びサンプル導入用滴下ロートを装着した300mlの4口の反応フラスコに、溶媒として高度精製鉱油30gを投入し、85℃の油浴内で窒素パージを実施しながら1時間撹拌した。サンプル導入用滴下ロートに、原料モノマーとしてメチルメタクリレート(C1−MA)12g及びステアリルメタクリレート(C18−MA)42g、開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.24gを混合した原料を投入し、この原料を120分かけて反応フラスコ内に滴下した。その後、窒素フロー下にて85℃で撹拌を保持して8時間重合を実施し、ポリ(メタ)アクリレート系粘度指数向上剤を含有した溶液を得た。その後、130℃、1mmHgで3時間真空蒸留を実施して、上記溶液から未反応モノマーを除去した。
【0081】
得られたポリ(メタ)アクリレート系粘度指数向上剤について、実施例1と同様にGPC分析を行った結果、重量平均分子量Mwは97,000、数平均分子量Mnは42,500、Mw/Mnは2.28であった。
【0082】
[実施例2〜6、8〜28、比較例1〜2、4、6]
原料の配合量を表1、3、5、7、9、11に示すとおりに変更し、それ以外は上記の合成条件1〜4のいずれかと同様にして、ポリ(メタ)アクリレート系粘度指数向上剤を合成した。なお、表中、Yは4官能開始剤であるペンタエリスリトールテトラキス(2−ブロモイソブチレート)、Zは6官能開始剤であるジペンタエリスリトールヘキサキス(2−ブロモイソブチレート)を表す。また、2EH−MAは、式(1)中のRがメチル基、Rが2−エチルヘキシル基(炭素数2の分岐を1つ有する、合計の炭素数8のアルキル基)である化合物、C12−MAは、式(3)中のRがメチル基、Rがドデシル基(炭素数12の直鎖アルキル基)である化合物それぞれを表す。得られたポリ(メタ)アクリレート系粘度指数向上剤のMw、Mn及びMw/Mnを表2、4、6、8、10、12に示す。
【0083】
<潤滑油組成物の調製>
実施例1〜28及び比較例1〜6でそれぞれ得られたポリ(メタ)アクリレート系粘度指数向上剤と、金属系(TBN300mgKOH/gのカルシウムスルホネート系)清浄剤、無灰分残剤(コハク酸イミド)、摩擦調整剤(オレイルアミド)、摩耗防止剤(リン酸)、酸化防止剤(ジフェニルアミン)、金属不活性化剤(チアジアゾール)、及び硫黄系添加剤(硫化エステル)を含む性能添加剤と、高度精製鉱油(GroupII基油、100℃における動粘度:3.3mm/s、VI:110)とを、表2、4、6、8、10、12に示す割合で配合し、潤滑油組成物を調製した。
【0084】
<潤滑油組成物の評価>
実施例1〜28及び比較例1〜6の各潤滑油組成物について、100℃における動粘度、粘度指数、及びせん断安定性を、それぞれ下記に準拠した方法により測定した。結果を表2、4、6、8、10に示す。
動粘度:JIS K−2283−1993
粘度指数:JIS K 2283−1993
【0085】
また、実施例1〜28及び比較例1〜6の各潤滑油組成物の摩擦特性を、二円筒転がりすべり摩擦試験機を用いて、一定荷重条件下での摩擦係数により評価した。具体的には、試験温度80℃、荷重142N、面圧0.48GPa、周速1.0m/s、すべり率5.1%の条件で、試験開始から10分間の摩擦係数を平均化した。結果を表2、4、6、8、10、12に示す。
【0086】
また、実施例1〜28及び比較例1〜6の各粘度指数向上剤を用いたときのせん断安定性を、実機のギヤでのせん断安定性をシミュレートするためにKRLテーパーローラーベアリング(試験法:CEC L45−A−99)を用い、機械的せん断による方法で評価した。より詳細には、GroupIIの基油に各粘度指数向上剤を2質量%になるように調製したものを、上記試験法に準拠し、120時間連続で運転した。そのときの、試験前後での100℃の動粘度の低下率(試験前後での動粘度との差を試験前の動粘度で割った値(%))をせん断率として評価した。
【0087】
【表1】
【0088】
【表2】
【0089】
【表3】
【0090】
【表4】
【0091】
【表5】
【0092】
【表6】
【0093】
【表7】
【0094】
【表8】
【0095】
【表9】
【0096】
【表10】
【0097】
【表11】
【0098】
【表12】