特許第6113005号(P6113005)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6113005
(24)【登録日】2017年3月24日
(45)【発行日】2017年4月12日
(54)【発明の名称】新規なシリル化金属錯体
(51)【国際特許分類】
   C07F 19/00 20060101AFI20170403BHJP
   C09K 11/06 20060101ALI20170403BHJP
   H01L 51/50 20060101ALI20170403BHJP
   C07F 15/00 20060101ALN20170403BHJP
   C07F 7/10 20060101ALN20170403BHJP
【FI】
   C07F19/00
   C09K11/06 660
   H05B33/14 B
   !C07F15/00 ECSP
   !C07F7/10 S
【請求項の数】12
【外国語出願】
【全頁数】75
(21)【出願番号】特願2013-142403(P2013-142403)
(22)【出願日】2013年7月8日
(65)【公開番号】特開2014-24841(P2014-24841A)
(43)【公開日】2014年2月6日
【審査請求日】2016年1月8日
(31)【優先権主張番号】13/544,622
(32)【優先日】2012年7月9日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】503055897
【氏名又は名称】ユニバーサル ディスプレイ コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】スコット・ビアーズ
(72)【発明者】
【氏名】チュアンジュン・シャ
(72)【発明者】
【氏名】スマン・レイェク
(72)【発明者】
【氏名】ハーヴェイ・ウェント
【審査官】 緒形 友美
(56)【参考文献】
【文献】 特表2008−525366(JP,A)
【文献】 特開2005−327526(JP,A)
【文献】 特開2006−019543(JP,A)
【文献】 韓国公開特許第10−2011−0111691(KR,A)
【文献】 特開2009−191066(JP,A)
【文献】 Zhou, Guijiang,Chemistry - An Asian Journal,2008年,3(10),1830-1841
【文献】 Jung, Sung Ouk,Organic Electronics,2009年,10(6),1066-1073
【文献】 Zhou, Guijiang,Advanced Functional Materials ,2008年,18(3),499-511
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07F 19/00
C09K 11/06
H01L 51/50
C07F 7/10
C07F 15/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式:
【化1】
式中
、R、R、及びRはそれぞれ独立に、モノ、ジ、トリ、又はテトラ置換、あるいは非置換を表し;
又はRのうち少なくとも一つがSiRを表し、R及びRのいずれもケイ素を含まず、
SiRを表さないR及びR、並びに、R、R、R、及びRのそれぞれは独立に、水素、重水素アルキル、シクロアルキル、及びアリールからなる群から選択され
、R、及びRのうち少なくとも一つはアリールであり、これはさらに置換されていてもよく
m=1かつn=2である。)
で表される化合物。
【請求項2】
、R、R、及びRのうち少なくとも一つが重水素化又は部分的に重水素化されている、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
、R、及びRは、アリールであり、これはさらに置換されていてもよい、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
がアルキル又はシクロアルキルであり、R及びRがアリールであり、これらはさらに置換されていてもよい、請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
及びRがアルキル又はシクロアルキルであり、Rがアリールであり、これらはさらに置換されていてもよい、請求項1に記載の化合物。
【請求項6】
、R、及びRがそれぞれ独立に、メチル、エチル、プロピル、1−メチルエチル、ブチル、1−メチルプロピル、2−メチルプロピル、ペンチル、1−メチルブチル、2−メチルブチル、3−メチルブチル、1,1−ジメチルプロピル、1,2−ジメチルプロピル、2,2−ジメチルプロピル、シクロペンチル、シクロへキシル、フェニル、2,6−ジメチルフェニル、2,4,6−トリメチルフェニル、及び2,6−ジイソプロピルフェニルからなる群から選択され、但し、R、R、及びRの少なくとも一つが、フェニル、2,6−ジメチルフェニル、2,4,6−トリメチルフェニル、又は2,6−ジイソプロピルフェニルを表す、請求項1に記載の化合物。
【請求項7】
、R、及びRがフェニルである、請求項1に記載の化合物。
【請求項8】
がメチルであり、R及びRがフェニルである、請求項1に記載の化合物。
【請求項9】
及びRがメチルであり、Rがフェニルである、請求項1に記載の化合物。
【請求項10】
以下のものからなる群から選択される、請求項1に記載の化合物。
【化2】
【化3】
【化4】
【化5】
【化6】
【請求項11】
ノード;
カソード;及び
前記アノードとカソードの間に配置された有機層を含み、前記有機層が、請求項1〜10のいずれか一項に記載の化合物を含む、有機発光デバイス
【請求項12】
請求項11に記載の有機発光デバイスを含む消費者製品であって、フラットパネルディスプレイ、コンピュータのモニタ、医療モニター、テレビ、広告板、室内もしくは屋外の照明灯および/または信号灯、ヘッドアップディスプレイ、完全に透明なディスプレイ、フレキシブルディスプレイ、レーザープリンタ、電話機、携帯電話、携帯情報端末、ラップトップコンピュータ、デジタルカメラ、カムコーダ、ビューファインダー、マイクロディスプレイ、乗り物、大面積壁面、劇場またはスタジアムのスクリーン、及び標識からなる群から選択される消費者製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
特許請求の範囲に記載した発明は、共同の大学・企業研究契約に関わる1つ以上の以下の団体:ミシガン大学評議員会、プリンストン大学、サザン・カリフォルニア大学、及びユニバーサル・ディスプレイ・コーポレーションにより、1つ以上の団体によって、1つ以上の団体のために、及び/又は1つ以上の団体と関係して行われた。上記契約は、特許請求の範囲に記載された発明がなされた日及びそれ以前に発効しており、特許請求の範囲に記載された発明は、前記契約の範囲内で行われた活動の結果としてなされた。
【0002】
本発明は、OLEDデバイスに用いるために適した、シリル基置換を含む新規な金属錯体に関する。
【背景技術】
【0003】
有機物質を用いるオプトエレクトロニクスデバイスは、多くの理由によりますます望ましいものとなってきている。そのようなデバイスを作るために用いられる多くの物質はかなり安価であり、そのため有機オプトエレクトロニクスデバイスは、無機デバイスに対してコスト上の優位性について潜在力をもっている。加えて、有機物質固有の特性、例えばそれらの柔軟性は、それらを柔軟な基材上への製作などの特定用途に非常に適したものにしうる。有機オプトエレクトロニクスデバイスの例には、有機発光デバイス(OLED)、有機光トランジスタ、有機光電池、及び有機光検出器が含まれる。OLEDについては、有機物質は、従来の物質に対して性能上優位性をもちうる。例えば、有機発光層が発光する波長は、一般に、適切なドーパントで容易に調節することができる。
【0004】
OLEDは、そのデバイスを横切って電圧を印加した場合に光を発する薄い有機膜(有機フィルム)を用いる。OLEDは、フラットパネルディスプレイ、照明、及びバックライトなどの用途で用いるためのますます興味ある技術となってきている。いくつかのOLEDの物質と構成が、米国特許第5,844,363号明細書、同6,303,238号明細書、及び同5,707,745号明細書に記載されており、これらの明細書はその全体を参照により本明細書に援用する。
【0005】
燐光発光分子の一つの用途はフルカラーディスプレイである。そのようなディスプレイのための工業規格は、「飽和」色といわれる特定の色を発光するように適合された画素(ピクセル)を要求している。特に、これらの規格は、飽和の赤、緑、及び青の画素を必要としている。色はCIE座標を用いて測定でき、CIE座標は当分野で周知である。
【0006】
緑色発光分子の一例は、Ir(ppy)と表されるトリス(2-フェニルピリジン)イリジウムであり、これは以下の構造を有する。
【化1】
【0007】
この式及び本明細書の後の図で、窒素から金属(ここではIr)への供与結合は直線で表す。
【0008】
本明細書で用いるように、「有機」の用語は、有機オプトエレクトロニクスデバイスを製作するために用いることができるポリマー物質並びに小分子有機物質を包含する。「小分子(small molecule)」とは、ポリマーではない任意の有機物質をいい、「小分子」は、実際は非常に大きくてもよい。小分子はいくつかの状況では繰り返し単位を含んでもよい。例えば、置換基として長鎖アルキル基を用いることは、分子を「小分子」の群から排除しない。小分子は、例えばポリマー主鎖上のペンダント基として、あるいは主鎖の一部として、ポリマー中に組み込まれてもよい。小分子は、コア残基上に作り上げられた一連の化学的殻からなるデンドリマーのコア残基として働くこともできる。デンドリマーのコア残基は、蛍光性又は燐光性小分子発光体であることができる。デンドリマーは「小分子」であることができ、OLEDの分野で現在用いられている全てのデンドリマーは小分子であると考えられる。
【0009】
本明細書で用いるように「トップ」は、基材から最も遠くを意味する一方で、「ボトム」は基材に最も近いことを意味する。第一の層が第二の層の「上に配置される」と記載した場合は、第一の層は基材から、より遠くに配置される。第一の層が第二の層と「接触している」と特定されていない限り、第一の層と第二の層との間に別な層があってよい。例えば、カソードとアノードとの間に様々な有機層があったとしても、カソードはアノードの「上に配置される」と記載できる。
【0010】
本明細書で用いるように、「溶液処理(加工)可能」とは、溶液もしくは懸濁液の形態で、液体媒体中に溶解され、分散され、又は液体媒体中で輸送され、及び/又は液体媒体から堆積されうることを意味する。
【0011】
配位子が発光物質の光活性特性に直接寄与していると考えられる場合は、その配位子は「光活性」ということができる。配位子が発光物質の光活性特性に寄与していないと考えられる場合は、配位子は「補助」ということができるが、補助配位子は光活性配位子の特性を変えうる。
【0012】
本明細書で用いるように、かつ当業者によって一般に理解されているように、第一の「最高被占分子軌道」(HOMO)又は「最低空分子軌道」(LUMO)のエネルギー準位は、その第一のエネルギー準位が真空のエネルギー準位により近い場合には、第二のHOMO又はLUMOよりも「大きい」あるいは「高い」。イオン化ポテンシャル(IP)は真空準位に対して負のエネルギーとして測定されるので、より高いHOMOエネルギー準位は、より小さな絶対値をもつIPに対応する(より小さな負のIP)。同様に、より高いLUMOエネルギー準位は、より小さな絶対値をもつ電子親和力(EA)に対応する(より小さな負のEA)。上(トップ)に真空準位をもつ従来のエネルギー準位図の上では、物質のLUMOエネルギー準位はその同じ物質のHOMOエネルギー準位よりも高い。「より高い」HOMO又はLUMOエネルギー準位は、「より低い」HOMO又はLUMOエネルギー準位よりも、そのような図のトップのより近くに現れる。
【0013】
本明細書で用いるように、また当業者によって一般に理解されるように、第一の仕事関数は、その第一の仕事関数がより高い絶対値を有する場合には、第二の仕事関数よりも「大きい」あるいは「高い」。仕事関数は通常、真空準位に対して負の値として測定されるので、このことは「より高い」仕事関数は、より負であることを意味する。上(トップ)に真空準位をもつ従来のエネルギー準位図の上では、「より高い」仕事関数は真空準位から下向きの方向へさらに離れて図示される。したがって、HOMO及びLUMOエネルギー準位の定義は、仕事関数とは異なる慣例に従う。
【0014】
OLEDについてのさらなる詳細及び上述した定義は、米国特許第7,279,704号明細書に見ることができ、その全体を参照により本明細書に援用する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】米国特許第5,844,363号明細書
【特許文献2】米国特許第6,303,238号明細書
【特許文献3】米国特許第5,707,745号明細書
【特許文献4】米国特許第7,279,704号明細書
【非特許文献】
【0016】
【非特許文献1】Baldoら,“Highly Efficient Phosphorescent Emission from Organic Electroluminescent Devices”, Nature, vol. 395, 151-154, 1998
【非特許文献2】Baldoら,“Very high-efficiency green organic light-emitting devices based on electrophosphorescence”, Appl. Phys. Lett., vol. 75, No. 3, 4-6 (1999)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0017】
[本発明のまとめ]
式M(L(Lからなる化合物を提供する。配位子Lは下記式:
【化2】
を有する第一の配位子である。
【0018】
配位子Lは下記式:
【化3】
を有する第二の配位子である。
はLと異なる。A、B、C、及びDはそれぞれ独立に、5又は6員の炭素環又はヘテロ環であり、Z、Z、Z、及びZはそれぞれ独立に、C又はNからなる群から選択される。R、R、R、及びRはそれぞれ独立に、モノ、ジ、トリ、又はテトラ置換、あるいは非置換を表し、任意の2つの隣接する置換基は任意選択で場合により一緒に結合されて環を形成していてもよく、その環はさらに置換されていてもよい。R、R、R、及びRのうち少なくとも一つはSiRであり、式中、R、R、及びRのうち少なくとも一つはアリール又はヘテロアリールであり、これはさらに置換されていてもよい。
【0019】
、R、R、R、R、R、及びRのそれぞれは独立に、水素、重水素、ハライド、アルキル、シクロアルキル、ヘテロアルキル、アリールアルキル、アルコキシ、アリールオキシ、アミン、シリル、アルケニル、シクロアルケニル、ヘテロアルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、アシル、カルボニル、カルボン酸、エステル、ニトリル、イソニトリル、スルファニル、スルフィニル、スルホニル、ホスフィノ及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0020】
Mは金属であり、mは少なくとも1の整数であり、nは少なくとも1の整数であり、m+nは金属Mに結合することができる配位子の最大数である。L及びLのそれぞれは、任意選択で場合により互いに連結して、四座又は六座配位子を構成してもよい。
【0021】
一つの側面では、Lは下記式:
【化4】
を有する。
【0022】
一つの側面では、Lは下記式:
【化5】
を有する。
【0023】
一つの側面では、MはIrである。
【0024】
一つの側面では、上記化合物は下記式:
【化6】
を有する。
【0025】
一つの側面では、m=1かつn=2であり、R又はRのうち少なくとも一つはSiRを有し、R及びRのいずれもケイ素を含まない。
【0026】
一つの側面では、R、R、R、及びRのうち少なくとも一つは重水素化又は部分的に重水素化されている。
【0027】
一つの側面では、R、R、及びRは、アリール又はヘテロアリールであり、これはさらに置換されていてもよい。
【0028】
一つの側面では、Rはアルキル又はシクロアルキルであり、R及びRはアリール又はヘテロアリールであり、これらはさらに置換されていてもよい。
【0029】
一つの側面では、R及びRはアルキル又はシクロアルキルであり、Rはアリール又はヘテロアリールであり、これらはさらに置換されていてもよい。
【0030】
一つの側面では、R、R、及びRはそれぞれ独立に、メチル、エチル、プロピル、1−メチルエチル、ブチル、1−メチルプロピル、2−メチルプロピル、ペンチル、1−メチルブチル、2−メチルブチル、3−メチルブチル、1,1−ジメチルプロピル、1,2−ジメチルプロピル、2,2−ジメチルプロピル、シクロペンチル、シクロへキシル、フェニル、2,6−ジメチルフェニル、2,4,6−トリメチルフェニル、及び2,6−ジイソプロピルフェニルからなる群から選択される。
【0031】
一つの側面では、R、R、及びRはフェニルである。
【0032】
一つの側面では、Rはメチルであり、R及びRはフェニルである。
【0033】
一つの側面では、R及びRはメチルであり、Rはフェニルである。
【0034】
一つの側面では、上記化合物は、化合物1〜化合物36からなる群から選択される。
【0035】
一つの側面では、第一のデバイスを提供する。第一のデバイスは、第一の有機発光デバイスを含み、さらに、アノード、カソード、及びそのアノードとカソードの間に配置された有機層を含み、その有機層は式M(L(Lを有する化合物を含む。配位子Lは下記式:
【化7】
を有する第一の配位子である。
【0036】
配位子Lは下記式:
【化8】
を有する第二の配位子である。
【0037】
はLと異なる。A、B、C、及びDはそれぞれ独立に5又は6員の炭素環又はヘテロ環であり、Z、Z、Z、及びZはそれぞれ独立にC及びNからなる群から選択される。R、R、R、及びRはそれぞれ独立に、モノ、ジ、トリ、又はテトラ置換、あるいは非置換を表し、任意の2つの隣接する置換基は任意選択により一緒に結合して環を形成してもいてもよく、環はさらに置換されていてもよい。R、R、R、及びRのうち少なくとも一つはSiRであり、R、R、及びRのうち少なくとも一つはアリール又はヘテロアリールであり、これはさらに置換されていてもよい。
【0038】
、R、R、R、R、R、及びRのそれぞれは独立に、水素、重水素、ハライド、アルキル、シクロアルキル、ヘテロアルキル、アリールアルキル、アルコキシ、アリールオキシ、アミン、シリル、アルケニル、シクロアルケニル、ヘテロアルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、アシル、カルボニル、カルボン酸、エステル、ニトリル、イソニトリル、スルファニル、スルフィニル、スルホニル、ホスフィノ及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0039】
Mは金属であり、mは少なくとも1の整数であり、nは少なくとも1の整数であり、m+nは金属Mに結合することができる配位子の最大数である。L及びLのそれぞれは、任意選択で場合により互いに連結して、四座又は六座配位子を構成してもよい。
【0040】
一つの側面では、第一のデバイスは消費者製品である。
【0041】
一つの側面では、第一のデバイスは有機発光デバイスである。
【0042】
一つの側面では、第一のデバイスは発光パネルを含む。
【0043】
一つの側面では、上記有機層は発光層であり、上記化合物は発光ドーパントである。
【0044】
一つの側面では、上記有機層は発光層であり、上記化合物は非発光ドーパントである。
【0045】
一つの側面では、上記有機層はさらにホストを含む。
【0046】
一つの側面では、ホストは、ベンゾ縮合チオフェン又はベンゾ縮合フランを含むトリフェニレンを含み、ホスト中のいずれかの置換基は、C2n+1、OC2n+1、OAr、N(C2n+1、N(Ar)(Ar)、CH=CH−C2n+1、C≡C−C2n+1、Ar、Ar−Ar、C2n−Arからなる群から独立に選択される非縮合置換基であるか、非置換であり、式中、nは1〜10であり、Ar及びArは独立に、ベンゼン、ビフェニル、ナフタレン、トリフェニレン、カルバゾール、及びそれらのヘテロ芳香族類似体からなる群から選択される。
【0047】
一つの側面では、ホストは以下のものからなる群から選択される。
【0048】
【化9】
【化10】
及びそれらの組み合わせ。
【0049】
一つの側面では、ホストは金属錯体を含む。
【図面の簡単な説明】
【0050】
図1図1は有機発光デバイスを示す。
図2図2は、別個の電子輸送層をもたない倒置型有機発光デバイスを示す。
図3図3は、式Iの例示化合物を示す。
【発明を実施するための形態】
【0051】
[詳細な説明]
一般に、OLEDは、アノードとカソードとの間に配置され且つそれらと電気的に接続された少なくとも1つの有機層を含む。電流が流された場合、有機層(1又は複数)にアノードは正孔を注入し、カソードは電子を注入する。注入された正孔と電子はそれぞれ反対に帯電した電極に向かって移動する。電子と正孔が同じ分子上に局在する場合、励起エネルギー状態を有する局在化された電子−正孔対である「励起子」が形成される。励起子が発光機構によって緩和するときに光が発せられる。いくつかの場合には、励起子はエキシマー又はエキシプレックス上に局在化されうる。非放射機構、例えば、熱緩和も起こりうるが、通常は好ましくないと考えられる。
【0052】
初期のOLEDは、一重項状態から光を発する(「蛍光」)発光性分子を用いており、例えば、米国特許第4,769,292号明細書(この全体を参照により援用する)に記載されているとおりである。蛍光発光は、一般に、10ナノ秒よりも短いタイムフレームで起こる。
【0053】
より最近、三重項状態から光を発する(「燐光」)発光物質を有するOLEDが実証されている。Baldoら,“Highly Efficient Phosphorescent Emission from Organic Electroluminescent Devices”, Nature, vol. 395, 151-154, 1998 (“Baldo-I”);
及び、Baldoら,“Very high-efficiency green organic light-emitting devices based on electrophosphorescence”, Appl. Phys. Lett., vol. 75, No. 3, 4-6 (1999) (“Baldo-II”)、これらを参照により全体を援用する。燐光は、米国特許第7,279,704号明細書の第5〜6欄に、より詳細に記載されており、これを参照により援用する。
【0054】
図1は有機発光デバイス100を示している。この図は、必ずしも一定の縮尺で描かれていない。デバイス100は、基板110、アノード115、正孔注入層120、正孔輸送層125、電子阻止層130、発光層135、正孔阻止層140、電子輸送層145、電子注入層150、保護層155、カソード160、及びバリア層170を含みうる。カソード160は、第一導電層162および第二導電層164を有する複合カソードである。デバイス100は、記載した層を順次、堆積させることによって作製できる。これらの様々な層の特性及び機能、並びに例示物質は、米国特許第7,279,704号明細書の第6〜10欄により詳細に記載されており、これを参照により援用する。
【0055】
これらの層のそれぞれについてのより多くの例が得られる。例えば、可撓性且つ透明な基材−アノードの組み合わせが米国特許第5,844,363号明細書に開示されており、参照により全体を援用する。p型ドープ正孔輸送層の例は、50:1のモル比で、F−TCNQでドープしたm−MTDATAであり、これは米国特許出願公開第2003/0230980号公報に開示されているとおりであり、その全体を参照により援用する。発光物質及びホスト物質の例は、Thompsonらの米国特許第6,303,238号明細書に開示されており、その全体を参照により援用する。n型ドープ電子輸送層の例は、1:1のモル比でLiでドープされたBPhenであり、これは米国特許出願公開第2003/0230980号公報に開示されているとおりであり、その全体を参照により援用する。米国特許第5,703,436号明細書及び同5,707,745号明細書(これらはその全体を参照により援用する)は、上に重ねられた透明な電気導電性のスパッタリングによって堆積されたITO層を有するMg:Agなどの金属の薄層を有する複合カソードを含めたカソードの例を開示している。阻止層の理論と使用は、米国特許第6,097,147号明細書及び米国特許出願公開第2003/0230980号公報に、より詳細に記載されており、その全体を参照により援用する。注入層の例は、米国特許出願公開第2004/0174116号公報に提供されており、その全体を参照により援用する。保護層の記載は米国特許出願公開第2004/0174116号公報にみられ、その全体を参照により援用する。
【0056】
図2は倒置型(inverted)OLED200を示している。このデバイスは、基板210、カソード215、発光層220、正孔輸送層225、およびアノード230を含む。デバイス200は記載した層を順に堆積させることによって製造できる。最も一般的なOLEDの構成はアノードの上方に配置されたカソードを有し、デバイス200はアノード230の下方に配置されたカソード215を有するので、デバイス200を「倒置型」OLEDとよぶことができる。デバイス100に関して記載したものと同様の物質を、デバイス200の対応する層に使用できる。図2は、デバイス100の構造からどのようにいくつかの層を省けるかの1つの例を提供している。
【0057】
図1および2に例示されている簡単な層状構造は非限定的な例として与えられており、本発明の実施形態は多様なその他の構造と関連して使用できることが理解される。記載されている具体的な物質および構造は事実上例示であり、その他の物質および構造も使用できる。設計、性能、およびコスト要因に基づいて、実用的なOLEDは様々なやり方で上記の記載された様々な層を組み合わせることによって実現でき、あるいは、いくつかの層は完全に省くことができる。具体的に記載されていない他の層を含むこともできる。具体的に記載したもの以外の物質を用いてもよい。本明細書に記載されている例の多くは単一の物質を含むものとして様々な層を記載しているが、物質の組合せ(例えばホストおよびドーパントの混合物、または、より一般的には混合物)を用いてもよいことが理解される。また、層は様々な副層(sublayer)を有してもよい。本明細書において様々な層に与えられている名称は、厳格に限定することを意図するものではない。例えば、デバイス200において、正孔輸送層225は正孔を輸送し且つ発光層220に正孔を注入するので、正孔輸送層として、あるいは正孔注入層として説明されうる。一実施形態において、OLEDは、カソードとアノードとの間に配置された「有機層」を有するものとして説明できる。この有機層は単一の層を含むか、または、例えば図1および2に関連して記載したように様々な有機物質の複数の層をさらに含むことができる。
【0058】
具体的には説明していない構造および物質、例えばFriendらの米国特許第5,247,190号(これはその全体を参照により援用する)に開示されているようなポリマー物質で構成されるOLED(PLED)、も使用することができる。さらなる例として、単一の有機層を有するOLEDを使用できる。OLEDは、例えば、Forrestらの米国特許第5,707,745号(これはその全体を参照により援用する)に記載されているように積み重ねられてもよい。OLEDの構造は、図1および2に示されている簡単な層状構造から逸脱していてもよい。例えば、基板は、光取出し(out-coupling)を向上させるために、Forrestらの米国特許第6,091,195号(これはその全体を参照により援用する)に記載されているメサ構造、および/またはBulovicらの米国特許第5,834,893号(これはその全体を参照により援用する)に記載されているピット構造などの、角度の付いた反射表面を含みうる。
【0059】
特に断らないかぎり、様々な実施形態の層のいずれも、何らかの適切な方法によって堆積されうる。有機層については、好ましい方法には、熱蒸着(thermal evaporation)、インクジェット(例えば、米国特許第6,013,982号および米国特許第6,087,196号(これらはその全体を参照により援用する)に記載されている)、有機気相成長(organic vapor phase deposition、OVPD)(例えば、Forrestらの米国特許第6,337,102号(その全体を参照により援用する)に記載されている)、ならびに有機気相ジェットプリンティング(organic vapor jet printing、OVJP)による堆積(例えば、米国特許出願第10/233,470号(これはその全体を参照により援用する)に記載されている)が含まれる。他の適切な堆積方法には、スピンコーティングおよびその他の溶液に基づく方法が含まれる。溶液に基づく方法は、好ましくは、窒素または不活性雰囲気中で実施される。その他の層については、好ましい方法には熱蒸着が含まれる。好ましいパターニング方法には、マスクを通しての蒸着、圧接(cold welding)(例えば、米国特許第6,294,398号および米国特許第6,468,819号(これらはその全体を参照により援用する)に記載されている)、ならびにインクジェットおよびOVJDなどの堆積方法のいくつかに関連するパターニングが含まれる。その他の方法も用いることができる。堆積される物質は、それらを特定の堆積方法に適合させるために改変されてもよい。例えば、分枝した又は分枝していない、好ましくは少なくとも3個の炭素を含むアルキルおよびアリール基などの置換基が、溶液加工性を高めるために、小分子に用いることができる。20個又はそれより多い炭素を有する置換基を用いてもよく、3〜20炭素が好ましい範囲である。非対称構造を有する物質は対称構造を有するものよりも良好な溶液加工性を有しうるが、これは、非対称物質はより小さな再結晶化傾向を有しうるからである。デンドリマー置換基は、小分子が溶液加工を受ける能力を高めるために用いることができる。
【0060】
本発明の態様にしたがって作製したデバイスは、任意選択により、さらにバリア層を含んでいてもよい。バリア層の一つの目的は、湿気、蒸気、及び/又は気体などを含む環境中の有害なものへの、障害を引き起こす曝露から保護することである。バリア層は、基板、電極の、上、下、又は隣、あるいは端部を含めたデバイスの任意のその他の部分の上に堆積させることができる。バリア層は、単層又は複数層からなることができる。バリア層は様々な公知の化学蒸着法によって形成させることができ、単一相を有する組成物並びに複数相を有する組成物を含むことができる。任意の好適な物質又は複数の物質の組み合わせをバリア層のために用いることができる。バリア層は、無機又は有機化合物あるいはその両方を含むことができる。好ましいバリア層は、米国特許第7,968,146号明細書、PCT出願番号PCT/US2007/023098号及びPCT/US2009/042829号に記載されているように、ポリマー物質と非ポリマー物質の混合物を含み、これらの文献はその全体を参照により本明細書に援用する。「混合物」と考えられるためには、バリア層を構成する前述のポリマー及び非ポリマー物質は、同じ反応条件下で及び/又は同時に堆積させられるべきである。ポリマー物質と非ポリマー物質の質量比は、95:5〜5:95の範囲内であってよい。ポリマー物質と非ポリマー物質は、同じ前駆体物質から作ってもよい。一つの例では、ポリマー物質と非ポリマー物質の混合物は、本質的に高分子シリコン及び無機シリコンのみからなる。
【0061】
本発明の実施形態により製造されたデバイスは多様な消費者製品に組み込むことができ、これらの製品には、フラットパネルディスプレイ、コンピュータのモニタ、医療モニター、テレビ、広告板、室内もしくは屋外の照明灯および/または信号灯、ヘッドアップディスプレイ、完全に透明な(fully transparent)ディスプレイ、フレキシブルディスプレイ、レーザープリンタ、電話機、携帯電話、携帯情報端末(personal digital assistant、PDA)、ラップトップコンピュータ、デジタルカメラ、カムコーダ、ビューファインダー、マイクロディスプレイ、乗り物、大面積壁面(large area wall)、劇場またはスタジアムのスクリーン、あるいは標識が含まれる。パッシブマトリクスおよびアクティブマトリクスを含めて、様々な制御機構を用いて、本発明にしたがって製造されたデバイスを制御できる。デバイスの多くは、18℃から30℃、より好ましくは室温(20〜25℃)などの、人にとって快適な温度範囲において使用することが意図されている。
【0062】
本明細書に記載した物質及び構造は、OLED以外のデバイスにおける用途を有しうる。例えば、その他のオプトエレクトロニクスデバイス、例えば、有機太陽電池及び有機光検出器は、これらの物質及び構造を用いることができる。より一般には、有機デバイス、例えば、有機トランジスタは、これらの物質及び構造を用いることができる。
【0063】
ハロ、ハロゲン、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリールアルキル、ヘテロ環基、アリール、芳香族基、及びヘテロアリールの用語は、当分野で公知であり、米国特許第7,279,704号明細書の第31〜32欄で定義されており、これを参照により援用する。
【0064】
式M(L(Lからなる化合物を提供する。配位子Lは下記式:
【化11】
を有する第一の配位子である。
【0065】
配位子Lは下記式:
【化12】
を有する第二の配位子である。
はLと異なる。A、B、C、及びDはそれぞれ独立に、5又は6員の炭素環又はヘテロ環であり、Z、Z、Z、及びZはそれぞれ独立に、C及びNからなる群から選択される。R、R、R、及びRはそれぞれ独立に、モノ、ジ、トリ、又はテトラ置換、あるいは非置換を表し、任意の2つの隣接する置換基は任意選択で場合により一緒に結合されて環を形成していてもよく、その環はさらに置換されていてもよい。R、R、R、及びRのうち少なくとも一つはSiRであり、式中、R、R、及びRのうち少なくとも一つはアリール又はヘテロアリールであり、これはさらに置換されていてもよい。
【0066】
、R、R、R、R、R、及びRのそれぞれは独立に、水素、重水素、ハライド、アルキル、シクロアルキル、ヘテロアルキル、アリールアルキル、アルコキシ、アリールオキシ、アミン、シリル、アルケニル、シクロアルケニル、ヘテロアルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、アシル、カルボニル、カルボン酸、エステル、ニトリル、イソニトリル、スルファニル、スルフィニル、スルホニル、ホスフィノ及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0067】
Mは金属であり、mは少なくとも1の整数であり、nは少なくとも1の整数であり、m+nは金属Mに結合することができる配位子の最大数である。L及びLのそれぞれは、任意選択で場合により互いに連結して、四座又は六座配位子を構成してもよい。
【0068】
式Iのシリル基は、少なくとも一つのアリール置換基を有する。シリル基上のアリール置換は、式Iの化合物を用いた場合に、その化合物の量子収率とOLEDの作動寿命を向上させる。アリール置換の嵩高さは、固体状態におけるこの化合物の積み重なり(スタッキング)を防止し、これが消光を低減する。
【0069】
以下に説明するように、式Iの化合物を用いて作られたデバイスは、向上した寿命を示した。化合物A〜Dは比較化合物として用いた。それらは全て、様々な位置にトリイソプロピルシリル置換基を有する。トリイソプロピルシリル基は、トリメチルシリル基と比較して顕著に高い化学安定性を有し、それは少なくともこの理由のために選択した。
【0070】
一つの態様では、Lは下記式:
【化13】
を有する。
【0071】
一つの態様では、Lは下記式:
【化14】
を有する。
【0072】
一つの態様では、MはIrである。
【0073】
一つの態様では、上記化合物は下記式:
【化15】
を有する。
【0074】
一つの態様では、m=1かつn=2であり、R又はRのうち少なくとも一つがSiRを有し、R及びRのいずれもケイ素を含まない。
【0075】
一つの態様では、R、R、R、及びRのうち少なくとも一つは重水素化又は部分的に重水素化されている。
【0076】
一つの態様では、R、R、及びRは、アリール又はヘテロアリールであり、これはさらに置換されていてもよい。
【0077】
一つの態様では、Rはアルキル又はシクロアルキルであり、R及びRはアリール又はヘテロアリールであり、これらはさらに置換されていてもよい。
【0078】
一つの態様では、R及びRはアルキル又はシクロアルキルであり、Rはアリール又はヘテロアリールであり、これらはさらに置換されていてもよい。
【0079】
いくつかの態様では、上記シリル基はアルキル及びアリール置換の両方を含む。混合した置換基を有するシリル基が色の調整を可能にすると考えられ、なぜならアリール基のアルキル基での置き換えが青色シフト(ブルーシフト)をもたらしうるからである。さらに、アリール置換は、錯体に良好な安定性をもたらすと考えられる。さらに、ケイ素上でのアルキル及びアリール置換の混合は式Iの化合物の昇華温度を低下させることができ、それらの化合物を、真空熱蒸着によるOLEDの製造のためにさらに適したものにしうる。
【0080】
一つの態様では、R、R、及びRはそれぞれ独立に、メチル、エチル、プロピル、1−メチルエチル、ブチル、1−メチルプロピル、2−メチルプロピル、ペンチル、1−メチルブチル、2−メチルブチル、3−メチルブチル、1,1−ジメチルプロピル、1,2−ジメチルプロピル、2,2−ジメチルプロピル、シクロペンチル、シクロへキシル、フェニル、2,6−ジメチルフェニル、2,4,6−トリメチルフェニル、及び2,6−ジイソプロピルフェニルからなる群から選択される。
【0081】
一つの態様では、R、R、及びRはフェニルである。
【0082】
一つの態様では、Rはメチルであり、R及びRはフェニルである。
【0083】
一つの態様では、R及びRはメチルであり、Rはフェニルである。
【0084】
一つの態様では、上記化合物は、以下のものからなる群から選択される。
【0085】
【化16】
【0086】
【化17】
【0087】
【化18】
【0088】
【化19】
【0089】
【化20】
【0090】
一つの態様では、第一のデバイスを提供する。第一のデバイスは、第一の有機発光デバイスを含み、さらに、アノード、カソード、及びそのアノードとカソードの間に配置された有機層を含み、その有機層は式M(L(Lを有する化合物を含む。配位子Lは下記式:
【化21】
を有する第一の配位子である。
【0091】
配位子Lは下記式:
【化22】
を有する第二の配位子である。
【0092】
はLと異なる。A、B、C、及びDはそれぞれ独立に5又は6員の炭素環又はヘテロ環であり、Z、Z、Z、及びZはそれぞれ独立にC及びNからなる群から選択される。R、R、R、及びRはそれぞれ独立に、モノ、ジ、トリ、又はテトラ置換、あるいは非置換を表し、任意の2つの隣接する置換基は任意選択により一緒に結合して環を形成してもいてもよく、環はさらに置換されていてもよい。R、R、R、及びRのうち少なくとも一つはSiRであり、R、R、及びRのうち少なくとも一つはアリール又はヘテロアリールであり、これはさらに置換されていてもよい。
【0093】
、R、R、R、R、R、及びRのそれぞれは独立に、水素、重水素、ハライド、アルキル、シクロアルキル、ヘテロアルキル、アリールアルキル、アルコキシ、アリールオキシ、アミン、シリル、アルケニル、シクロアルケニル、ヘテロアルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、アシル、カルボニル、カルボン酸、エステル、ニトリル、イソニトリル、スルファニル、スルフィニル、スルホニル、ホスフィノ及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0094】
Mは金属であり、mは少なくとも1の整数であり、nは少なくとも1の整数であり、m+nは金属Mに結合することができる配位子の最大数である。L及びLのそれぞれは、任意選択で場合により互いに連結して、四座又は六座配位子を構成してもよい。
【0095】
一つの態様では、第一のデバイスは消費者製品である。
【0096】
一つの態様では、第一のデバイスは有機発光デバイスである。
【0097】
一つの態様では、第一のデバイスは発光パネルを含む。
【0098】
一つの態様では、上記有機層は発光層であり、上記化合物は発光ドーパントである。
【0099】
一つの態様では、上記有機層は発光層であり、上記化合物は非発光ドーパントである。
【0100】
一つの態様では、上記有機層はさらにホストを含む。
【0101】
一つの態様では、ホストは、ベンゾ縮合チオフェン又はベンゾ縮合フランを含むトリフェニレンを含み、ホスト中のいずれかの置換基は、C2n+1、OC2n+1、OAr、N(C2n+1、N(Ar)(Ar)、CH=CH−C2n+1、C≡C−C2n+1、Ar、Ar−Ar、C2n−Arからなる群から独立に選択される非縮合置換基であるか、非置換であり、式中、nは1〜10であり、Ar及びArは独立に、ベンゼン、ビフェニル、ナフタレン、トリフェニレン、カルバゾール、及びそれらのヘテロ芳香族類似体からなる群から選択される。
【0102】
一つの態様では、ホストは以下のものからなる群から選択される。
【0103】
【化23】
及びそれらの組み合わせ。
【0104】
一つの態様では、ホストは金属錯体を含む。
【0105】
〔デバイス例〕
全ての例示デバイスは高真空(<10−7Torr)熱蒸着によって作製した。アノード電極は1200Åのインジウム錫オキシド(ITO)である。カソードは、10ÅのLiFとそれに続く1,000ÅのAlからなる。全てのデバイスは作製後直ちに窒素グローブボックス(<1ppmのHO及びO)中にてエポキシ樹脂で封じたガラス蓋で密封し、吸湿剤をそのパッケージ内に組み込んだ。
【0106】
デバイス例の有機積層体は以下のものからなる。ITO表面から順に、正孔注入層(HIL)として100Åの化合物E;正孔輸送層(HTL)として300Åの4,4′−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(α−NPD);発光層(EML)として、10〜15質量%のイリジウムリン光化合物を用いて、ホストとしての化合物Fにドープした本発明の化合物(300Å);阻止層(BL)としての50Åの化合物F;ETLとして450ÅのAlq(トリス−8−ヒドロキシキノリンアルミニウム)。化合物A〜Dを用いた比較例を、化合物A〜DをEML中の発光体として用いたことを除いて、上記デバイス例と同様に作製した。
【0107】
これらのデバイスからの、デバイスの結果とデータは表1及び2にまとめてある。本明細書で用いる場合、NPD、Alq、化合物E、及び化合物Fは以下の構造を有する。
【0108】
【化24】
【0109】
【表1】
【0110】
【表2】
【0111】
表2には、デバイスの性能をまとめてある。作動電圧(V)、発光効率(LE)、外部量子効率(EQE)、及び電力効率(PE)を1000nitsにおいて測定し、寿命(LT80%)は、40mA/cmの一定の電流密度のもとで、その初期輝度(L)の80%までそのデバイスが低下するのに要した時間として定義した。
【0112】
比較化合物A〜Dは、様々な位置にトリイソプロピルシリル置換を有する。本発明の化合物は、そのシリル置換基に結合した少なくとも一つのアリール基を有する。トリアルキルシリル置換に対するアリール−シリル置換の利点は、表2中に上で示したデバイスデータから非常に明らかである。最初の比較は、比較例1(化合物A)対本発明の例1(化合物1)である。化合物Bは昇華時に分解し、そのためデバイスを作ることができなかった。最も明らかな予期せぬ結果は、化合物1及び2の黄色い色と、著しいデバイス寿命差である。化合物1及び2は、ディスプレイ及び照明の両方に有用な黄色リン光発光体の新しい群に相当する。
【0113】
上の最初の比較を続けると、化合物1は、FWHM(半値全幅)で測定して、化合物Aと同程度の発光の幅広さを有する(74nm対72nm)。両方とも同じ電圧(5.2V)を必要とするが、化合物1は全てのカテゴリーにおいて化合物Aよりも効率的なデバイスを作り出している:それぞれ、LE(71.5cd/A対55cd/A)、EQE(19.7%対14.2%)、及びPE(43.1lm/W対33.4lm/W)。化合物1の初期輝度(21,716nits)は化合物A(17,608nits)よりも高く、それとともに化合物1のLT80%は355時間であり、これに対して化合物Aは2時間だった。
【0114】
化合物3(例3)及び化合物4(例4)と化合物C(比較例2)を比べる。化合物3及び4は両方とも518nmにλmaxを示すのに対して、化合物Cについては520nmにλmaxを示す。化合物3及び4のそれぞれの発光の幅広さ76nm及び74nmは、化合物Cの74nmと同程度である。化合物3及び4の電圧(6.9V、6.8V)は、化合物Cの電圧(7.1V)よりもわずかに低い。化合物3及び4は、化合物Cを含むデバイスと比較して、全てのカテゴリーにおいて優れた効率をもつデバイスをうみだす:LE(31.2、37.2cd/A対27.9cd/A)、EQE(8.8%、10.5%、対7.8%)、PE(14.3、17.1lm/W対12.4lm/W)。化合物3及び4の初期輝度(10,387、12,390nits)はそれぞれ化合物Cの初期輝度(10,271nits)よりも高い。化合物Cの25.4時間と比較して、化合物3及び4のLT80%はそれぞれ172及び234時間であった。
【0115】
最後の比較は、化合物5(例5)と化合物D(比較例3)との間である。発光の幅広さは同程度である(74nm対72nm)。化合物5に対する電圧は、化合物Dに対する電圧よりも低い(7.3V対8.1V)。化合物5は、化合物Dを用いて作ったデバイスに対して比較した全てのカテゴリーにおいて優れた効率をもつデバイスをうみだしている:LE(35.1対22.4cd/A)、EQE(9.6対6.1%)、PE(15.1対8.7lm/W)。化合物5の初期輝度は、化合物Dの初期輝度を大きく上回る(11,294対8494nits)。最後に、化合物5のLT80%は377時間であり、一方、化合物Dのそれは3時間である。その他の直接比較は、比較例2(化合物C)対本発明の例3(化合物3)及び4(化合物4)であり、最後に、比較例3(化合物D)対本発明の例5(化合物5)である。
【0116】
表から分かるとおり、式Iの全ての化合物は、比較化合物よりも少ない電圧しか必要としない。さらに、本発明の化合物は、例外なしに、LE、EQE、PEを含めた全てのカテゴリーにおいてより効率的なデバイスをうみだした。本発明の化合物の初期輝度は、全ての観測した場合において比較化合物の初期輝度を上回った。最後に、そしておそらく全ての中で最も顕著なことは、比較化合物と本発明の化合物の間のLT80%値の差である。LT80%値のこの差は、6.8倍(例3対比較例2)から177倍を超える(例1対比較例1)範囲である。
【0117】
[その他の物質との組み合わせ]
有機発光デバイス中の特定の層に有用として本明細書に記載した物質は、そのデバイス中に存在するその他の広範囲にわたる物質と組み合わせて用いることができる。例えば、本明細書に開示した発光ドーパントは、存在してもよい広い範囲のホスト、輸送層、阻止層、注入層、電極、及びその他の層と組み合わせて用いることができる。以下に記載乃至言及した物質は、本明細書に記載した化合物と組み合わせて有用でありうる物質の非限定例であり、当業者は組み合わせて有用でありうるその他の物質を特定するために文献を容易に参考にすることができる。
【0118】
〔HIL/HTL〕
【0119】
本発明に用いられる正孔注入/輸送物質は特に限定されず、その化合物が通常、正孔注入/輸送物質として用いられる限り任意の化合物を用いることができる。この物質の例には以下のものが含まれるがそれらに限定されない:
フタロシアニン又はポルフィリン誘導体;芳香族アミン誘導体;インドロカルバゾール誘導体;フルオロ炭化水素を含むポリマー;導電性ドーパントを伴うポリマー;導電性ポリマー、例えば、PEDOT/PSS;ホスホン酸及びシラン誘導体などの化合物から誘導される自己組織化モノマー;金属酸化物誘導体、例えば、MoO;p型半導体有機化合物、例えば、1,4,5,8,9,12−ヘキサアザトリフェニレンヘキサカルボニトリル;金属錯体、及び架橋性化合物。
【0120】
HIL又はHTLに用いられる芳香族アミン誘導体の例には以下の構造のものが含まれるがそれらに限定されない。
【化25】
【0121】
Ar〜Arのそれぞれは、芳香族炭化水素環式化合物からなる群、例えば、ベンゼン、ビフェニル、トリフェニル、トリフェニレン、ナフタレン、アントラセン、フェナレン、フェナントレン、フルオレン、ピレン、クリセン、ペリレン、アズレン;芳香族ヘテロ環化合物からなる群、例えば、ジベンゾチオフェン、ジベンゾフラン、ジベンゾセレノフェン、フラン、チオフェン、ベンゾフラン、ベンゾチオフェン、ベンゾセレノフェン、カルバゾール、インドロカルバゾール、ピリジルインドール、ピロロジピリジン、ピラゾール、イミダゾール、トリアゾール、オキサゾール、チアゾール、オキサジアゾール、オキサトリアゾール、ジオキサゾール、チアジアゾール、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、トリアジン、オキサジン、オキサチアジン、オキサジアジン、インドール、ベンゾイミダゾール、インダゾール、インドキサジン、ベンゾオキサゾール、ベンゾイソオキサゾール、ベンゾチアゾール、キノリン、イソキノリン、シンノリン、キナゾリン、キノキサリン、ナフチリジン、フタラジン、プテリジン、キサンテン、アクリジン、フェナジン、フェノチアジン、フェノキサジン、ベンゾフロピリジン、フロジピリジン、ベンゾチエノピリジン、チエノジピリジン、ベンゾセレノフェノピリジン、及びセレノフェノジピリジン;及び、前記の芳香族炭化水素環式基及び前記の芳香族ヘテロ環式基から選択された同じ種類又は異なる種類の基である2〜10の環状構造単位からなり、互いに直接又は少なくとも1つの酸素原子、窒素原子、硫黄原子、ケイ素原子、リン原子、ホウ素原子、鎖構造単位、及び脂肪族環式基を介して結合された基、から選択される。式中、各Arは、水素、重水素、ハライド、アルキル、シクロアルキル、ヘテロアルキル、アリールアルキル、アルコキシ、アリールオキシ、アミノ、シリル、アルケニル、シクロアルケニル、ヘテロアルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、アシル、カルボニル、カルボン酸、エステル、ニトリル、イソニトリル、スルファニル、スルフィニル、スルホニル、ホスフィノ、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される置換基でさらに置換されている。
【0122】
一つの側面では、Ar〜Arは以下のものからなる群から独立に選択される。
【化26】
【0123】
kは1〜20の整数であり;X〜XはC(CHも含めて)又はNであり;Arは上で定義したものと同じ基を有する。
【0124】
HIL又はHTLに用いる金属錯体の例には以下の一般式のものが含まれるがそれらに限定されない。
【化27】
【0125】
Mは40より大きな原子量を有する金属であり;(Y−Y)は二座配位子であり、Y及びYは独立に、C、N、O、P、及びSから選択され;Lは補助配位子であり;mは1からその金属に結合しうる配位子の最大数までの整数値であり;m+nはその金属に結合しうる配位子の最大数である。
【0126】
一つの側面では、(Y−Y)は2−フェニルピリジン誘導体である。
【0127】
別の側面では、(Y−Y)はカルベン配位子である。
【0128】
別の側面では、Mは、Ir、Pt、Os、及びZnから選択される。
【0129】
さらなる側面では、この金属錯体は、溶液中でFc/Fcカップルに対して約0.6V未満の最小酸化電位を有する。
【0130】
〔ホスト〕
【0131】
本発明の有機ELデバイスの発光層は、発光物質として少なくとも金属錯体を含むことが好ましく、その金属錯体をドーパント物質として用いるホスト物質を含んでいてもよい。ホスト物質の例は特に限定されず、ホストの三重項エネルギーがドーパントの三重項エネルギーよりも大きい限り、任意の金属錯体又は有機化合物を用いることができる。後に示す表はさまざまな色を発光するデバイスに対して好ましいホスト物質を分類しているが、上記の三重項の基準を満たす限り、任意のドーパントとともに用いることができる。
【0132】
ホストとして用いられる金属錯体の例は、以下の一般式を有することが好ましい。
【化28】
【0133】
Mは金属であり;(Y−Y)は二座配位子であって、Y及びYは独立にC、N、O、P、及びSから選択され;Lは補助配位子であり;mは1からその金属に結合しうる配位子の最大数までの整数値であり;且つ、m+nはその金属に結合しうる配位子の最大数である。
【0134】
一つの側面では、金属錯体は、
【化29】
である。
【0135】
(O−N)は二座配位子であり、金属をO及びN原子に配位させている。
【0136】
別の側面では、MはIr及びPtから選択される。
【0137】
さらなる側面では、(Y−Y)はカルベン配位子である。
【0138】
ホストとして用いられる有機化合物の例は、以下のものからなる群から選択される:芳香族炭化水素環状化合物、例えば、ベンゼン、ビフェニル、トリフェニル、トリフェニレン、ナフタレン、アントラセン、フェナレン、フェナントレン、フルオレン、ピレン、クリセン、ペリレン、アズレン;芳香族ヘテロ環状化合物からなる群、例えば、ジベンゾチオフェン、ジベンゾフラン、ジベンゾセレノフェン、フラン、チオフェン、ベンゾフラン、ベンゾチオフェン、ベンゾセレノフェン、カルバゾール、インドロカルバゾール、ピリジルインドール、ピロロジピリジン、ピラゾール、イミダゾール、トリアゾール、オキサゾール、チアゾール、オキサジアゾール、オキサトリアゾール、ジオキサゾール、チアジアゾール、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、トリアジン、オキサジン、オキサチアジン、オキサジアジン、インドール、ベンゾイミダゾール、インダゾール、インドキサジン、ベンゾオキサゾール、ベンゾイソキサゾール、ベンゾチアゾール、キノリン、イソキノリン、シンノリン、キナゾリン、キノキサリン、ナフチリジン、フタラジン、プテリジン、キサンテン、アクリジン、フェナジン、フェノチアジン、フェノキサジン、ベンゾフロピリジン、フロジピリジン、ベンゾチエノピリジン、チエノジピリジン、ベンゾセレノフェノピリジン、及びセレノフェノジピリジン;並びに、前記の芳香族炭化水素環状基及び前記の芳香族ヘテロ環状基から選択される同じか又は異なる種類の基であり、且つ酸素原子、窒素原子、硫黄原子、ケイ素原子、リン原子、ホウ素原子、鎖構造単位、及び脂肪族環状基のうちの少なくとも1つを介して又は直接、互いに結合されている2〜10の環状構造単位からなる群。ここで各基は、水素、重水素、ハライド、アルキル、シクロアルキル、ヘテロアルキル、アリールアルキル、アルコキシ、アリールオキシ、アミノ、シリル、アルケニル、シクロアルケニル、ヘテロアルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、アシル、カルボニル、カルボン酸、エステル、ニトリル、イソニトリル、スルファニル、スルフィニル、スルホニル、ホスフィノ、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される置換基でさらに置換されている。
【0139】
一つの側面では、ホスト化合物はその分子内に以下の基のうちの少なくとも1つを含む:
【化30】
【0140】
〜Rは独立に、水素、重水素、ハライド、アルキル、シクロアルキル、ヘテロアルキル、アリールアルキル、アルコキシ、アリールオキシ、アミノ、シリル、アルケニル、シクロアルケニル、ヘテロアルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、アシル、カルボニル、カルボン酸、エステル、ニトリル、イソニトリル、スルファニル、スルフィニル、スルホニル、ホスフィノ、及びそれらの組み合わせからなる群から選択され、それがアリール又はヘテロアリールである場合には、それは上述したAr類と同様の定義を有する。
【0141】
kは0〜20の整数である。
【0142】
〜XはC(CHも含めて)又はNから選択される。Z及びZはNR、O、又はSから選択される。
【0143】
〔HBL〕
【0144】
正孔阻止層(HBL)は、発光層を離れる正孔及び/又は励起子の数を減らすために用いることができる。デバイスにおけるそのような阻止層の存在は、阻止層をもたない類似のデバイスと比較して実質的に高い効率をもたらしうる。また、阻止層は、OLEDの所望の領域に発光を閉じ込めるために用いることもできる。
【0145】
一つの側面では、HBLに用いられる化合物は、上述したホストとして用いられるものと同じ分子又は同じ官能基を含む。
【0146】
別の側面では、HBLに用いられる化合物は、その分子中に以下の基のうち少なくとも1つを含む:
【化31】
【0147】
kは0〜20の整数であり;Lは補助配位子であり、mは1〜3の整数である。
【0148】
〔ETL〕
【0149】
電子輸送層(ETL)は、電子を輸送できる物質を含むことができる。電子輸送層はその本来的性質(非ドープ)であるか、あるいはドープされていてもよい。ドーピングは導電性を高めるために用いることができる。ETL物質の例は特に限定されず、それらが電子を輸送するために通常用いられる限り、任意の金属錯体又は有機化合物を用いることができる。
【0150】
一つの側面では、ETLに用いる化合物は、その分子内に以下の基のうち少なくとも1つを含む。
【化32】
【0151】
は、水素、重水素、ハライド、アルキル、シクロアルキル、ヘテロアルキル、アリールアルキル、アルコキシ、アリールオキシ、アミノ、シリル、アルケニル、シクロアルケニル、ヘテロアルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、アシル、カルボニル、カルボン酸、エステル、ニトリル、イソニトリル、スルファニル、スルフィニル、スルホニル、ホスフィノ、及びそれらの組み合わせからなる群から選択され、それがアリール又はヘテロアリールである場合には、それは上述したAr類と同様の定義を有する。
【0152】
Ar〜Arは上述したAr類と同様の定義を有する。
【0153】
kは0〜20の整数である。
【0154】
〜XはC(CHも含めて)又はNから選択される。
【0155】
別の側面では、ETLに用いられる金属錯体には以下の一般式のものが含まれるがこれらには限定されない。
【化33】
【0156】
(O−N)又は(N−N)は二座配位子であり、金属をO,N、又はN,N原子に配位させ;Lは補助配位子であり;mは、1からその金属に結合できる配位子の最大数までの整数値である。
【0157】
OLEDデバイスの各層に用いられる任意の上述した化合物においては、その水素原子は部分的に又は完全に重水素化されていることができる。したがって、任意の具体的に示した置換基、例えば、メチル、フェニル、ピリジルなど(これらに限定されないが)は、それらの重水素化されていない、部分的に重水素化された、及び完全に重水素化されたものを包含する。同様に、置換基の群、例えば、アルキル、アリール、シクロアルキル、ヘテロアリールなど(これらに限定されないが)も、それらの重水素化されていない、部分的に重水素化された、及び完全に重水素化されたものを包含する。
【0158】
本明細書に開示した物質に加えて、及び/又はそれと組み合わせて、多くの正孔注入物質、正孔輸送物質、ホスト物質、ドーパント物質、励起子/正孔阻止層物質、電子輸送及び電子注入物質をOLEDに用いてもよい。本明細書に開示した物質と組み合わせてOLEDに用いてもよい物質の非限定的な例を以下の表3に列挙している。表3には、非限定的な物質群、各群についての化合物の非限定的な例、及びその物質を開示している参考文献を挙げている。
【0159】
【表3】
【0160】
【表4】
【0161】
【表5】
【0162】
【表6】
【0163】
【表7】
【0164】
【表8】
【0165】
【表9】
【0166】
【表10】
【0167】
【表11】
【0168】
【表12】
【0169】
【表13】
【0170】
【表14】
【0171】
【表15】
【0172】
【表16】
【0173】
【表17】
【0174】
【表18】
【0175】
【表19】
【0176】
【表20】
【0177】
【表21】
【0178】
【表22】
【0179】
【表23】
【0180】
【表24】
【0181】
【表25】
【0182】
【表26】
【0183】
【表27】
【実施例】
【0184】
本明細書を通して用いる化学の略号は以下のとおりである:Cyはシクロへキシルであり、dbaはジベンジリデンアセトンであり、EtOAcは酢酸エチルであり、DMEはジメトキシエタンであり、dppeは1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタンであり、dppfは1,1′−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセンであり、THFはテトラヒドロフランであり、DCMはジクロロメタンであり、S−Phosはジシクロへキシル(2′,6′−ジメトキシ−[1,1′−ビフェニル]−2−イル)ホスフィンである。
【0185】
〔化合物Aの合成〕
【0186】
5−ブロモ−2−フェニルピリジンの調製
【化34】
【0187】
5−ブロモ−2−ヨードピリジン(15 g, 52.8 mmol)、フェニルボロン酸(6.44 g, 52.8 mmol)、Pd(PPh(0.611 g, 0.528 mmol)、及び炭酸カリウム(83 g, 598 mmol)を、4:1のDME及び水(260 mL)の溶液に添加した。その反応混合物を窒素ガスで30分間脱ガスし、不活性雰囲気中で18時間還流させながら撹拌した。反応混合物を冷やし、水に注ぎ、食塩水と酢酸エチルの間に分配した。有機層を一緒にあわせ、MgSO上で乾燥させ、有機溶媒を減圧下で除去した。粗生成物を、溶出液として5〜15%DCM/ヘキサンを用いるシリカゲル上でのカラムクロマトグラフィーによって精製して、5−ブロモ−2−フェニルピリジン(4.18 g, 33.8%)を白色固体として得た。
【0188】
2−フェニル−5−(トリイソプロピルシリル)ピリジンの調製
【化35】
【0189】
THF(200 mL)中に5−ブロモ−2−フェニルピリジン(3.21 g, 13.71 mmol)を溶かした。これを−78℃に冷やした。その冷やした溶液に、ヘキサン中の2.5Mのn−BuLiを1.88mL、滴下により添加した。TLCによって、リチウム−ハロゲン交換の完了について、反応を観察した。完全なリチウム化の後、THF(15 mL)中に溶かしたクロロトリイソプロピルシラン(2.185 mL, 16.46 mmol)をその反応媒体にゆっくり添加した。反応温度を−78℃にさらに45分間保ち、次にそれを常温まで温まるようにさせておき、さらに48時間撹拌した。未精製反応混合物を飽和塩化アンモニウム溶液で失活させ、食塩水と酢酸エチルの間に分配させた。水層を集め、酢酸エチルで再度洗った。有機層を一緒にあわせ、MgSO上で乾燥させ、溶媒を減圧下で除去した。その淡黄色固体を、溶出液としてヘキサン中1〜4%酢酸エチルを用いてシリカゲル上でのカラムクロマトグラフィーによって精製して、2−フェニル−5−(トリイソプロピルシリル)ピリジン(2.3 g, 54%)を得た。
【0190】
化合物Aの調製
【化36】
【0191】
イリジウム錯体(1.77 g, 2.48 mmol)及び2−フェニル−5−(トリイソプロピルシリル)ピリジン(2.32 g, 7.45 mmol)をエタノール(165 mL)に添加し、窒素ガスをバブリングさせてそのスラリーを脱ガスした。その反応混合物を24時間、加熱還流させた。その反応混合物を常温まで冷やし、セライト(登録商標)の詰め物を通して濾過し、沈殿物をジクロロメタンに再溶解した。その未精製物質を、2:1(v/v)のDCM/ヘキサンを用いるカラムクロマトグラフィーによって精製した。最終化合物を昇華後単離して、所望する生成物(1.03 g, 42%)を得た。
【0192】
〔化合物Bの合成〕
【0193】
4−ブロモ−2−フェニルピリジンの調製
【化37】
【0194】
500mLの丸底フラスコに、DME(100 mL)中の2,4−ジブロモピリジン(9.90 g, 41.8 mmol)、フェニルボロン酸(5.10 g, 41.8 mmol)、及び炭酸カリウム(11.55 g, 84 mmol)を仕込んだ。その反応混合物を水(40 mL)で希釈した。これを30分間脱ガスし、Pd(PPh(0.483 g, 0.418 mmol)を添加し、その反応混合物を22時間、還流させながら撹拌した。その混合物を食塩水及び酢酸エチルで希釈した。有機層を水で洗い、乾燥させ、セライト(登録商標)上に吸着させ、ヘキサン中0〜5%の酢酸エチルで溶出させる400gのカラム上でクロマトグラフィーにかけて、所望の生成物(5.30 g, 54%)を透明な無色オイルとして得た。
【0195】
2−フェニル−4−(トリイソプロピルシリル)ピリジンの調製
【化38】
【0196】
4−ブロモ−2−フェニルピリジン(4.25 g, 18.16 mmol)をTHF(200 mL)中に溶かし、−78℃に冷やした。n−ブチルリチウム(7.99 mL, 19.97 mmol)をその反応混合物に滴下により添加して、これをさらに30分間、−78℃で撹拌した。クロロトリイソプロピルシラン(3.62 mL, 27.2 mmol)をその反応混合物にゆっくり添加し、これを撹拌して室温まで温めた。未精製反応混合物を食塩水と酢酸エチルの間で分配させた。有機層を集め、MgSO上で乾燥させ、有機溶媒を減圧下で除去した。粗生成物を、シリカゲル上で、溶出液として1〜5%酢酸エチル/ヘキサンを用いるカラムクロマトグラフィーによって精製して、標題化合物(3.9 g, 69%)を得た。
【0197】
化合物Bの調製
【化39】
【0198】
2−フェニル−4−(トリ−イソプロピルシリル)ピリジン(3.93 g, 12.61 mmol)及び上記イリジウム錯体(3 g, 4.20 mmol)をエタノール(120 mL)に添加し、窒素ガスで脱ガスした。その反応混合物を窒素下で18時間還流させた。粗生成物を、セライト(登録商標)の詰め物を通して濾過し、エタノールで洗った。残った黄色残留物をDCMに溶かした。有機溶媒を減圧下で除去した。その黄色残留物を、シリカゲル上で、溶出液として2:1(v/v)のジクロロメタン/ヘキサンを用いるカラムクロマトグラフィーによって精製して、化合物B(1.7 g, 50%)を黄色固体として得た。
【0199】
〔化合物Cの合成〕
【0200】
2−(3−ブロモフェニル)ピリジンの合成
【化40】
【0201】
2−ブロモピリジン(12.05 mL, 127 mmol)、3−ブロモフェニルボロン酸(25.4 g, 127 mmol)、及び炭酸カリウム(52.5 g, 380 mmol)を、トルエン及び水の9:1混合物(600 mL)に添加した。その反応混合物を窒素ガスで15分間脱ガスし、Pd(PPh(1.463 g, 1,266 mmol)を添加した。その反応混合物をさらに30分間脱ガスし、その後窒素ガス下で18時間加熱し還流させた。未精製反応混合物を室温まで冷やし、セライト(登録商標)の詰め物を通して濾過し、濾液を食塩水と酢酸エチルの間で分配させた。有機層を集め、MgSO上で乾燥させ、有機溶媒を減圧下で除去した。粗生成物を、1〜4%酢酸エチル/ヘキサンを用いてシリカゲル上でのカラムクロマトグラフィーによって精製した。2−(3−ブロモフェニル)ピリジン(10 g, 33.7%)を無色オイルとして単離した。
【0202】
2−(3−(トリ−イソプロピルシリル)フェニル)ピリジンの合成
【化41】
【0203】
2−(3−ブロモフェニル)ピリジン(7.46 g, 31.9 mmol)を、500mLの三ツ口丸底フラスコ中でTHF(300 mL)に溶かした。この系を脱気して窒素で満たすことを3回行い、次に窒素下に保った。そのフラスコをドライアイス/アセトン浴中に置き、−60℃より低くまで冷やした。2.5Mのn−ブチルリチウム(14.0 mL, 35.1 mmol)を添加した。その溶液は淡黄色から暗緑色溶液に変わった。1時間後、クロロトリイソプロピルシラン(10.91 mL, 51.0 mmol)をシリンジで小分けにして添加し、同時に反応温度を−60℃より低く保ち、その後そのドライアイス浴を取り除いた。その反応物が常温まで温まるようにさせておいた。3時間後、その反応混合物を水で失活させ、次に食塩水と酢酸エチルの間で分配した。水性部分を酢酸エチルで2回抽出した。一緒にした有機層を食塩水で一度洗い、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濾過し、溶媒蒸発させて橙色オイルを得た。粗生成物をセライト(登録商標)上に吸着させ、ヘキサン中1〜5%の酢酸エチルの移動層を用いるクロマトグラフィーによって精製して、標題化合物(4.3 g, 43.3%)を黄色オイルとして得た。
【0204】
化合物Cの調製
【化42】
【0205】
2−(3−(トリイソプロピルシリル)フェニル)ピリジン(7.19 g, 23.08 mmol)、上記イリジウム錯体(5.49 g, 7.69 mmol)、及びエタノール(150 mL)を250mL一口丸底フラスコ中で一緒にした。その懸濁液を夜通し加熱して激しく還流させた。その反応物を室温まで冷やし、次に焼結フィルターロート中のセライト(登録商標)の詰め物を用いて濾別して明るい黄色の固体を得た。その固体をエタノールでよく洗った。粗生成物を、そのセライト(登録商標)をDCMで洗うことによって回収し、次に黄色固体になるまで濾液を蒸発させた。その固体を、1:1(v/v)のヘキサン:ジクロロメタンで溶出させるシリカゲルカラム上で精製した。所望の画分を一緒にし、蒸発させて化合物C(3.35 g, 53.7%)を黄色固体として得た。
【0206】
〔化合物Dの合成〕
【0207】
2−(4−ブロモフェニル)ピリジンの合成
【化43】
【0208】
500mLの二口フラスコに(4−ブロモフェニル)ボロン酸(10.17 g, 50.6 mmol)を添加した。その反応混合物をDME(125 mL)で希釈した。2−ヨードピリジン(5.38 mL, 50.6 mmol)及び炭酸ナトリウム(10.73 g, 101 mmol)を添加し、次に水(50 mL)を添加した。この混合物を窒素で15分間脱ガスし、Pd(PPh(0.59 g, 0.506 mmol)を添加した。その反応物を18時間還流させながら撹拌し、冷やした。DME(50 mL)及び水(40 mL)をその反応混合物に添加した。得られた混合物を再度窒素で脱ガスし、追加のPd(PPh(0.59 g, 0.506 mmol)と2.5gの追加のボロン酸を添加した。これを再加熱し、夜通し還流させながら撹拌した。粗生成物を酢酸エチル及び水で希釈した。有機層を濃縮し、ヘキサン中2〜5%酢酸エチルで溶出させる400グラムのカラム上でクロマトグラフィーにかけて、所望する生成物(7.9 g, 67%)を白色固体として得た。
【0209】
2−(4−トリイソプロピルシリル)フェニル)ピリジンの合成
【化44】
【0210】
2−(4−ブロモフェニル)ピリジン(4.78 g, 20.42 mmol)を500mLの三ツ口丸底フラスコに入れ、窒素雰囲気下でTHF(200 mL)に溶かした。そのフラスコをドライアイス/アセトン浴中に置き、−60℃より低くまで冷やした。2.5Mのn−ブチルリチウム(9.39 mL, 23.48 mmol)を、セプタムを通してシリンジで少しずつ添加し、同時に反応温度を−60℃より低く保った。30分後、クロロトリイソプロピルシラン(5.24 mL, 24.50 mmol)を少しずつシリンジから速やかに添加し、反応温度は−60℃より低く保った。その反応物を3時間にわたって室温まで温まるようにさせておいた。その反応混合物を水で失活させ、次に食塩水及び酢酸エチルを入れた分液ロートに移した。水性部分を酢酸エチルで2回抽出した。一緒にした有機層を飽和食塩水で一度洗った。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、蒸発させて8.5gの粗生成物を橙色オイルとして得た。その粗生成物をセライト(登録商標)上に吸着させ、ヘキサン中2〜5%酢酸エチルを用いてシリカ上で精製した。クーゲルロールでの真空蒸留によって、標題化合物を黄色固体(2.42 g, 38%)として得た。
【0211】
化合物Dの調製
【化45】
【0212】
上記イリジウム錯体(2.29 g, 3.21 mmol)、2−(4−(トリイソプロピルシリル)フェニル)ピリジン(3.0 g, 9.63 mmol)、及びエタノール(70 mL)を、250mLの一口丸底フラスコ中で混合した。その懸濁液を、窒素下で24時間、加熱して激しく還流させた。その反応物を室温まで冷やし、次に焼結フィルターロート中のセライト(登録商標)の詰め物を使用して濾過した。その固体をエタノールで良く洗った。フィルターケーキを次にジクロロメタンで別のフラスコ中へ洗い出し、濾液を蒸発させて明るい黄色固体(1.46 g)を得た。その粗生成物をセライト(登録商標)上に吸着させ、75/25、次に50/50のヘキサン/ジクロロメタン(v/v)溶媒系を使用してシリカゲル上で精製して明るい黄色固体を得た(0.88 g, 47.4%)。
【0213】
〔化合物1の合成〕
【0214】
2−フェニル−5−(トリフェニルシリル)ピリジンの調製
【化46】
【0215】
5−ブロモ−3−フェニルピリジン(3.0 g, 12.8 mmol)をTHF(200 mL)に溶かした。この溶液をつぎに−78℃に冷やした。その冷やした溶液に、ヘキサン中2.5Mのn−BuLi(1.88mL)を滴下により添加した。完全なリチウム−ハロゲン交換の後、THF(15 mL)に溶かしたクロロトリフェニルシラン(4.53 g, 15.38 mmol)をその反応媒体にゆっくり添加した。その反応混合物を−78℃にさらに45分間保ち、その後それを常温まで温まるようにしておいた。2時間後、未精製反応混合物を飽和塩化アンモニウム溶液で失活させ、食塩水と酢酸エチルの間に分配させた。水層を集め、酢酸エチルで再洗浄した。一緒にした有機層をMgSO上で乾燥させ、溶媒を減圧下で除去した。粗生成物を、溶出液としてヘキサン中1〜4%の酢酸エチルを用いてシリカゲル上でのカラムクロマトグラフィーによって精製して、2−フェニル−5−(トリフェニルシリル)ピリジン(3.17 g, 60%)を白色固体として得た。
【0216】
化合物1の調製
【化47】
【0217】
上記イリジウム錯体(2.186 g, 3.06 mmol)及び2−フェニル−5−(トリフェニルシリル)ピリジン(3.8 g, 9.19 mmol)をエタノール(56 mL)中で混合し、窒素下で18時間加熱還流させた。その反応混合物を室温に冷やし、セライト(登録商標)の詰め物を通して濾過した。固体残留物を集め、セライト(登録商標)上にコーティングし、溶媒としてDCMを用いてシリカゲルの詰め物を通して、1.87gの粗生成物を得た。この生成物を、ヘキサン−ジクロロメタンの2:1混合物(v/v)を用いてシリカゲル上でクロマトグラフィーにかけ、さらに昇華させて、化合物1(0.85 g, 30.3%)を得た。
【0218】
〔化合物2の合成〕
【0219】
2−フェニル−4−(トリフェニルシリル)ピリジンの合成
【化48】
【0220】
500mLの二口フラスコに4−ブロモ−2−フェニルピリジン(5.12 g, 21.87 mmol)を仕込んだ。そのフラスコ中の気体を脱気し、窒素を充填した。その反応混合物をTHF(200 mL)で希釈し、これをドライアイス/アセトン浴中においた。次に、n−ブチルリチウム(9.62 mL, 24.06 mmol)を添加し、その反応物を30分間撹拌し、次にTHF(20 mL)中に溶かしたクロロトリフェニルシラン(7.74 g, 26.2 mmol)を添加し、その浴を取り除いた。2時間後、その反応物を水で失活させ、酢酸エチル及び水で希釈した。有機層を食塩水、次に水で洗い、乾燥させた。生成物を、ヘキサン中5〜10%酢酸エチルで溶出させる400gカラム上でクロマトグラフィーにかけて、生成物を白色固体(6.64 g, 73%)として得た。
【0221】
化合物2の調製
【化49】
【0222】
500mLの丸底フラスコ中に、エタノール(100 mL)中の2−フェニル−4−(トリフェニルシリル)ピリジン(6.40 g, 15.47 mmol)及び上記イリジウム錯体(3.68 g, 5.16 mmol)を入れた。これを20時間還流させながら撹拌した。その反応混合物を濾過し、ヘキサン及びエタノールで洗った。次に、濾過ロートを別の濾過フラスコ上に置き、粗生成物とセライト(登録商標)をDCMで洗った。濾液を蒸発させて3.65gの粗生成物を得た。粗生成物を、1:1(v/v)のDCM−ヘキサンで溶出させる3×150gのシリカゲルカラム上でクロマトグラフィーにかけて、2.64gの生成物を得た。この生成物をアセトニトリル(200 mL)中に懸濁させ、13時間還流させながら撹拌した。その混合生成物を次に冷やし、濾過して2.2gを得た。これを315℃で昇華させて1.68gの化合物2を得た。
【0223】
〔化合物3の合成〕
【0224】
2−(3−(トリフェニルシリル)フェニル)ピリジンの調製
【化50】
【0225】
2−(3−ブロモフェニル)ピリジン(5 g, 21.36 mmol)をTHF(214 mL)に溶かし、−78℃に冷やした。n−ブチルリチウム(ヘキサン中の2.5 M溶液, 9.40 mL, 23.50 mmol)をその冷やした反応混合物にゆっくり添加し、完全に添加した後、これをさらに30分間、冷たい浴中で撹拌した。THF(30 mL)中に溶かしたクロロトリフェニルシラン(7.56 g, 25.6 mmol)をその反応混合物にゆっくり添加し、これを次に室温まで昇温するようにさせておき、さらに18時間撹拌した。その反応混合物を飽和NHCl溶液で失活させた。その反応混合物を食塩水と酢酸エチルの間に分配させた。有機層を一緒にし、MgSO上で乾燥させ、溶媒を減圧下で除去した。灰白色の粗生成物を、2〜8%酢酸エチル/ヘキサンを溶出液として用いるシリカゲル上でのカラムクロマトグラフィーによって精製した。単離した油状物質をヘキサン/DCMから再結晶して、2−(3−(トリフェニルシリル)フェニル)ピリジン(6.91 g, 78%)を白色結晶性固体として得た。
【0226】
化合物3の調製
【化51】
【0227】
上記イリジウム錯体(3.74 g, 5.24 mmol)及び2−(3−(トリフェニルシリル)フェニル)ピリジン(6.5 g, 15.72 mmol)をエタノール(150 mL)に添加し、30分間窒素ガスをバブリングさせることによって脱ガスした。反応混合物を窒素下で18時間還流させた。冷却した反応混合物を、セライト(登録商標)の詰め物を通して濾過した。集めた固体をエタノール、次にヘキサンで洗った。沈殿物をDCM中に溶かした。有機溶媒を減圧下で除去して淡黄色固体を得て、これを7:3(v/v)のDCM:ヘキサンを用いるカラムクロマトグラフィーによってさらに精製した。化合物3(2 g, 41.8%)を、昇華によってさらに精製した後で明るい黄色固体として単離した。
【0228】
〔化合物4の合成〕
【0229】
2−(3−(メチルジフェニルシリル)フェニル)ピリジンの合成
【化52】
【0230】
2−(3−ブロモフェニル)ピリジン(3 g, 12.82 mmol)を無水THF(250 mL)に添加し、−78℃に冷やした。クロロ(メチル)ジフェニルシラン(4.24 mL, 19.22 mmol)をその溶液に滴下により添加し、室温になるようにさせておき18時間撹拌した。その反応混合物を飽和塩化アンモニウム溶液で失活させた。粗生成物を食塩水及び酢酸エチルの間に分配させた。有機層を一緒にし、乾燥させ、溶媒を減圧下で除去した。単離した生成物を、1〜5%酢酸エチル/ヘキサンを溶出液として用いるシリカゲルカラムクロマトグラフィーによって精製した。単離した物質を蒸留によってさらに精製して、2−(3−(メチルジフェニルシリル)フェニル)ピリジン(3.9 g, 69%)を得た。
【0231】
化合物4の調製
【化53】
【0232】
上記イリジウム錯体(2.234 g, 3.13 mmol)及び2−(3−(メチルジフェニルシリル)フェニル)ピリジン(3.3 g, 9.39 mmol)を、エタノール及びメタノールの1:1混合物に添加し、30分間窒素ガスをバブリングさせることによって脱ガスした。その反応混合物18時間加熱還流させ、その時間の後、反応混合物を冷やし、セライト(登録商標)の詰め物を通して濾過した。残留物をエタノール、次にヘキサンで洗い、次にジクロロメタンに溶かした。有機溶媒を減圧下で除去し、粗生成物を、溶出液として7:3(v/v)のDCM:ヘキサンを用いるシリカゲルカラムクロマトグラフィーによって精製して、所望の生成物(0.97 g, 51%)を昇華後に単離した。
【0233】
〔化合物5の合成〕
【0234】
2−(4−(トリフェニルシリル)フェニル)ピリジンの合成
【化54】
【0235】
2−(4−ブロモフェニル)ピリジン(3.0 g, 12.82 mmol)を250mLの三ツ口フラスコに添加した。これを脱気し、窒素を充填して戻した。反応混合物をTHF(120 mL)で希釈し、そのフラスコをドライアイス/アセトン浴中に置いた。n−ブチルリチウム(5.64 mL, 14.10 mmol)を添加し、溶液が淡黄色から緑に変わり、沈殿物が形成された。クロロトリフェニルシラン(4.53 g, 15.4 mmol)を窒素下で別のフラスコに入れ、THF(15 mL)に溶かした。30分後、そのクロロトリフェニルシランを添加し、ドライアイス浴を取り除いた。反応物を常温まで撹拌し、淡黄色透明溶液になった。2時間後、反応混合物を食塩水及び酢酸エチルで希釈した。有機層を水で洗い、乾燥させ、セライト(登録商標)上に吸着させた。ヘキサン中5〜10%酢酸エチルで溶出させる200gカラム上でのクロマトグラフィーにより所望する生成物を白色固体として得た(4.1 g, 77%)。
【0236】
化合物5の調製
【化55】
【0237】
上記イリジウム錯体(2.301 g, 3.22 mmol)及び2−(4−(トリフェニルシリル)フェニル)ピリジン(4.0 g, 9.67 mmol)を250mLの三ツ口フラスコに添加した。その反応混合物をエタノール(100 mL)で希釈し、その反応物を20時間還流しながら撹拌した。その反応混合物を、次にセライト(登録商標)を通して濾過し、ヘキサン、次にメタノールで洗った。濾過ロートを次に別のフラスコ上に置き、濾過ケーキをジクロロメタンで洗った。未精製黄色固体になるまで濾液を蒸発させ、これを1:1(v/v)のDCM:ヘキサンの移動相を用いてシリカゲル上でのクロマトグラフィーによって精製して、1.8gの生成物を得て、これを昇華して純粋な化合物5(1.32 g, 63%)を得た。
【0238】
〔化合物6の調製〕
【化56】
【0239】
5−(メチルジフェニルシリル)−2−フェニルピリジンの合成
5−ブロモ−2−フェニルピリジン(5 g, 21.36 mmol)を220mLのTHFに溶かし、−78℃に冷やした。BuLi(9.4 mL, 2.5M)をその反応混合物に滴下して添加し、完全なハロゲン−リチウム交換するまで−78℃で撹拌し、これはGCによって観察した。反応温度を−78℃に保ちながら、15mLのTHF中に溶かしたクロロ(メチル)ジフェニルシラン(5.82 mL, 27.8 mmol)をゆっくり添加し、その反応混合物をさらに18時間、撹拌を続けた。反応混合物を数滴の飽和NHCl溶液で失活させ、その後、食塩水と酢酸エチルの間に分配させた。有機層を一緒にし、無水MgSO上で乾燥させ、溶媒を減圧下で蒸発させて茶色のオイルを得た。粗生成物を、溶出液として5〜7%酢酸エチル/ヘキサンを用いるシリカゲル上でのカラムクロマトグラフィーによって精製した。5−(メチルジフェニルシリル)−2−フェニルピリジン(4.8 g, 64%)を無色オイルとして単離した。
【0240】
【化57】
【0241】
化合物6の合成
Irppyトリフラート中間体(3.22 g, 4.51 mmol)及び5−(メチルジフェニルシリル)−2−フェニルピリジン(4.76 g, 13.54 mmol)を90mLのエタノールに添加し、30分間脱ガスした。反応混合物を24時間加熱還流させ、次に冷やした。黄色沈殿物を集め、水、次にヘキサンで洗い、最後に真空オーブン中50℃で乾燥させた。未精製物質を、溶出液として30〜70%DCM及びヘキサンを用いてシリカゲル上でのクロマトグラフィーにかけて、化合物6(1.4 g, 36%収率)を得た。
【0242】
〔化合物11の調製〕
【化58】
【0243】
5−ブロモ−4−メチル−2−フェニルピリジンの合成
2,5−ジブロモ−4−メチルピリジン(15 g, 59.8 mmol)、フェニルボロン酸(6.63 g, 54.3 mmol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(1.256 g, 1.087 mmol)、及び炭酸カリウム(47.7 g, 345 mmol)を260mLの1:1のジメトキシエタン及び水に添加した。反応混合物を、バブリングさせた窒素ガスによって30分間脱ガスさせ、窒素下で4時間還流させた。室温に冷やした後、反応混合物を食塩水に注ぎ、酢酸エチルで抽出した。有機層を一緒にし、無水MgSO上で乾燥させ、溶媒を減圧下で除去した。粗生成物を、シリカゲル上で、溶出液として1〜3%酢酸エチル/ヘキサンを用いるカラムクロマトグラフィーによって精製した。5−ブロモ−4−メチル−2−フェニルピリジン(11.30 g, 93%)を単離した。
【0244】
【化59】
【0245】
5−(ジメチル(フェニル)シリル)−4−メチル−2−フェニルピリジンの合成
5−ブロモ−4−メチル−2−フェニルピリジン(6.14 g, 24.75 mmol)を200mLの無水THFに溶かし、−78℃に冷やした。クロロジメチル(フェニル)シラン(6.23 ml, 37.1 mmol)を30mLのTHFに溶かし、先の反応混合物に滴下により添加した。反応混合物を室温まで18時間にわたって撹拌した。反応混合物を飽和NHCl溶液で失活させ、酢酸エチルで抽出した。一緒に合わせた有機層を無水MgSO上で乾燥させ、溶媒を蒸発させて粗生成物を得た。溶出液として1〜5%酢酸エチル/ヘキサンを用いるクロマトグラフィーの後、5−(ジメチル(フェニル)シリル)−4−メチル−2−フェニルピリジン(5.01 g, 66.7%)を白色固体として単離した。
【0246】
【化60】
【0247】
化合物11の合成
5−(ジメチル(フェニル)シリル)−4−メチル−2−フェニルピリジン(5 g, 16.48 mmol)及びIrppyトリフラート中間体(2.94 g, 4.12 mmol)を150mLのエタノールに添加し、30分間脱ガスした。反応混合物を18時間、加熱し還流させた。未精製反応混合物を、セライト(登録商標)の詰め物を通して濾過した。集めた沈殿物をエタノール、次いでヘキサンで洗い、最後にDCMに再度溶かした。黄色いDCM溶液から溶媒を除去して、3.5gの未精製黄色物質を得た。粗生成物を、溶出液として1:1から7:3のDCM/ヘキサンを用いるシリカゲル上でのカラムクロマトグラフィーによって精製して、2.3gの純粋な物質を得た。
【0248】
化合物37の調製
【化61】
【0249】
2−(3−(ジメチル(フェニル)シリル)フェニル)ピリジンの合成
2−(3−ブロモフェニル)ピリジン(4.41 g, 18.84 mmol)を220mLのTHFに溶かし、−78℃に冷やした。その反応混合物に9.4mLの2.5M BuLIを滴下により添加し、完全なハロゲン−リチウム交換が起こるまで−78℃で撹拌した。この時点で、15mLのTHFに溶かしたクロロジメチル(フェニル)シラン(3.79 mL, 22.61 mmol)をその反応混合物に添加し、それを夜通しで室温まで温まるようにした。反応混合物を飽和NHCl溶液で失活させ、酢酸エチルで抽出した。有機相を一緒にし、無水MgSO上で乾燥させ、溶媒を減圧下で除去した。油状物を、5〜10%酢酸エチル/ヘキサンを用いるシリカゲル上でのカラムクロマトグラフィーによって精製して、2−(3−(ジメチル(フェニル)シリル)フェニル)ピリジン(4.37 g, 15.10 mmol, 80%収率)を得た。
【0250】
【化62】
【0251】
化合物37の合成
2−(3−(ジメチル(フェニル)シリル)フェニル)ピリジン(4 g, 13.82 mmol)及びIrppyトリフラート中間体(3.29 g, 4.61 mmol)を150mLのエタノールに溶かし、30分間脱ガスした。反応混合物を窒素ガス下で18時間加熱還流させた。室温に冷やして、黄色沈殿物を濾別し、ヘキサンで洗った。未精製物質をヘキサン中30〜70%DCMを用いてシリカゲル上でのカラムクロマトグラフィーによって精製して、1gの所望する生成物を得た。
【0252】
本明細書に記載した様々な態様は例示の目的であり、本発明の範囲を限定することを意図していないことが理解される。例えば、本明細書に記載した多くの物質及び構造は、本発明の精神から離れることなく、その他の物質及び構造で置き換えることができる。特許請求の範囲に記載した本発明は、したがって、本明細書に記載した具体的な例及び好ましい態様からの変形を含むことができ、それは当業者には明らかである。本発明が何故機能するのかについての様々な理論は限定することを意図していないことが理解される。
図1
図2
図3