(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
複数の吐出口から記録媒体に向けてインクの微小液滴を吐出する吐出部と、前記記録媒体を所定の移動方向に前記吐出部に対して相対的に移動する移動機構と、前記吐出部と前記移動機構とを制御することにより、前記記録媒体に画像を記録する制御部と、撮像部と、前記複数の吐出口からのインクの吐出量の補正に利用される補正係数を記憶する記憶部とを備え、前記制御部による制御により、前記吐出部から吐出されたインクの微小液滴により前記記録媒体上に形成される複数のドットが、前記移動方向に垂直な方向であるドット配列方向、および、前記移動方向にそれぞれ沿って配列されることにより、インクジェット方式にて前記記録媒体上に画像を記録する画像記録装置において、前記補正係数を取得する補正係数取得方法であって、
a)前記移動機構により補正用媒体を前記移動方向に相対移動しつつ、前記吐出部により所定の目標濃度となるように前記補正用媒体に補正用パターンを記録する工程と、
b)前記補正用パターンを前記撮像部により撮像し、各吐出口に対応する位置における濃度の前記移動方向の平均値である濃度平均値を求め、前記濃度平均値と前記目標濃度との差に基づいて前記各吐出口の補正係数を決定する工程と、
を備え、
前記a)工程にて記録される前記補正用パターンが、前記ドット配列方向に隣接して並ぶ複数のパターンブロックを含み、
前記ドット配列方向に連続するN個(ただし、Nは3以上の奇数)毎の吐出口の集合である各単位吐出口群により、前記移動方向に延びる各パターンブロックが記録され、
前記各パターンブロックにおいて、複数の単位ドット列が前記移動方向に配列され、各単位ドット列が、前記補正用媒体上において前記ドット配列方向に並ぶN個のドット形成位置に形成された少なくとも1つのドットであり、
前記各パターンブロックが、対応する単位吐出口群のN個の吐出口からのインクの吐出および不吐出の状態のうち、少なくとも1つの吐出口からインクが吐出される全ての吐出状態に対応する(2N−1)種類の単位ドット列を含み、かつ、各種類の単位ドット列の数が同じであり、
前記複数のパターンブロックにおいて、前記移動方向の各位置に同種類の単位ドット列が前記ドット配列方向に並ぶことを特徴とする補正係数取得方法。
複数の吐出口から記録媒体に向けてインクの微小液滴を吐出する吐出部と、前記記録媒体を所定の移動方向に前記吐出部に対して相対的に移動する移動機構と、前記吐出部と前記移動機構とを制御することにより、前記記録媒体に画像を記録する制御部と、撮像部と、前記複数の吐出口からのインクの吐出量の補正に利用される補正係数を記憶する記憶部とを備え、前記制御部による制御により、前記吐出部から吐出されたインクの微小液滴により前記記録媒体上に形成される複数のドットが、前記移動方向に垂直な方向であるドット配列方向、および、前記移動方向にそれぞれ沿って配列されることにより、インクジェット方式にて前記記録媒体上に画像を記録する画像記録装置における画像記録方法であって、
a)前記複数の吐出口からのインクの吐出量の補正に利用される補正係数を決定する工程と、
b)前記補正係数を利用しつつ前記吐出部および前記移動機構を制御することにより、前記記録媒体に画像を記録する工程と、
を備え、
前記a)工程が、
a1)前記移動機構により補正用媒体を前記移動方向に相対移動しつつ、前記吐出部により所定の目標濃度となるように前記補正用媒体に補正用パターンを記録する工程と、
a2)前記補正用パターンを前記撮像部により撮像し、各吐出口に対応する位置における濃度の前記移動方向の平均値である濃度平均値を求め、前記濃度平均値と前記目標濃度との差に基づいて前記各吐出口の補正係数を決定する工程と、
を備え、
前記a1)工程にて記録される前記補正用パターンが、前記ドット配列方向に隣接して並ぶ複数のパターンブロックを含み、
前記ドット配列方向に連続するN個(ただし、Nは3以上の奇数)毎の吐出口の集合である各単位吐出口群により、前記移動方向に延びる各パターンブロックが記録され、
前記各パターンブロックにおいて、複数の単位ドット列が前記移動方向に配列され、各単位ドット列が、前記補正用媒体上において前記ドット配列方向に並ぶN個のドット形成位置に形成された少なくとも1つのドットであり、
前記各パターンブロックが、対応する単位吐出口群のN個の吐出口からのインクの吐出および不吐出の状態のうち、少なくとも1つの吐出口からインクが吐出される全ての吐出状態に対応する(2N−1)種類の単位ドット列を含み、かつ、各種類の単位ドット列の数が同じであり、
前記複数のパターンブロックにおいて、前記移動方向の各位置に同種類の単位ドット列が前記ドット配列方向に並ぶことを特徴とする画像記録方法。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1は、本発明の一の実施の形態に係る画像記録装置1の構成を示す図である。画像記録装置1は、複数の印刷用紙である記録媒体9上に、インクジェット方式にてカラー画像を順次記録する(すなわち、カラー印刷を行う)枚葉式の印刷装置である。記録媒体9は、紙には限定されず、例えば、プラスチックフィルム等であってもよい。
【0023】
図1に示すように、画像記録装置1は、複数の記録媒体9を
図1中の(+Y)方向に移動する移動機構2、移動機構2による搬送途上の記録媒体9に向けてインクの微小液滴を吐出する吐出ユニット3、移動機構2に記録媒体9を供給する供給部51、印刷終了後の記録媒体9を移動機構2から受け取る排出部52、記録媒体9を撮像する撮像部6、並びに、これらの機構を制御する制御ユニット4を備える。以下の説明では、記録媒体9が移動するY方向を「移動方向」という。吐出ユニット3および撮像部6は、移動機構2の上方(すなわち、(+Z)側)に配置され、図示省略のフレームに固定される。
【0024】
移動機構2は、複数のステージ21と、環状のガイド22と、ベルト駆動機構23とを備える。複数のステージ21は、それぞれが1枚のシート状の記録媒体9を吸着保持する。ガイド22は、複数のステージ21が接続されたベルトを内部に備え、複数のステージ21を案内する。ベルト駆動機構23は、ガイド22内のベルトを
図1中における反時計回りに移動させることにより、記録媒体9を保持するステージ21を吐出ユニット3および撮像部6の下方(すなわち、(−Z)側)において(+Y)方向に移動する。
【0025】
図2は吐出ユニット3を示す底面図である。吐出ユニット3はそれぞれが互いに異なる色のインクを吐出する複数(本実施の形態では、4個)の吐出部であるインクジェットヘッド31を備え、これらのインクジェットヘッド31は同様の構造を有する。複数のインクジェットヘッド31はY方向(すなわち、移動方向)に配列されて吐出ユニット3の取付部30に取り付けられる。
【0026】
図2中の最も(−Y)側のインクジェットヘッド31はK(ブラック)の色のインクを吐出し、Kのインクジェットヘッド31の(+Y)側のインクジェットヘッド31はC(シアン)の色のインクを吐出し、Cのインクジェットヘッド31の(+Y)側のインクジェットヘッド31はM(マゼンタ)の色のインクを吐出し、最も(+Y)側のインクジェットヘッド31はY(イエロー)の色のインクを吐出する。なお、吐出ユニット3では、ライトシアン、ライトマゼンタ、ホワイト等の他の色用のインクジェットヘッド等も設けられてよい。
【0027】
図3は、一のインクジェットヘッド31を示す底面図である。他のインクジェットヘッド31も、
図3と同様の構造を有する。
図3に示すように、インクジェットヘッド31は、それぞれが同様の構造を有する複数(本実施の形態では、6個)のヘッド32を備える。複数のヘッド32は、センターリブ311の(−Y)側および(+Y)側に交互に位置するようにY方向に垂直なX方向に配列される。換言すれば、複数のヘッド32は、いわゆる千鳥状にX方向に配列される。
【0028】
各ヘッド32は、X方向に沿って配列された複数の吐出口33を備える。複数のヘッド32は、全吐出口33がX方向に等ピッチにて配列されるように配置される。以下の説明では、X方向を「吐出口配列方向」ともいう。換言すれば、各インクジェットヘッド31は、移動方向に垂直な吐出口配列方向に、所定の配列ピッチにて配列された複数の吐出口33を備える。複数の吐出口33からは、吐出ユニット3の下方を通過する記録媒体9に向けてインクの微小液滴が吐出される。
【0029】
なお、吐出口配列方向は、必ずしも移動方向に垂直である必要はなく、移動方向に交差する方向であればよい。また、各ヘッド32では、複数の吐出口33は必ずしも直線状に配列される必要はなく、様々な態様にて配置された複数の吐出口33が、吐出口配列方向に関して等ピッチに並んでいればよい。例えば、複数の吐出口33は、吐出口配列方向に関して最も近接する各2つの吐出口33の間の距離が所定の配列ピッチに等しくなるように、略矩形の領域に分布して配置されてもよい。あるいは、複数のヘッド32が、Y方向の同じ位置にてX方向に配列され、各ヘッド32において、複数の吐出口33が、X方向およびY方向に対して傾斜する方向に配列されてもよい。
【0030】
図1に示す画像記録装置1では、X方向に関し、各インクジェットヘッド31が記録媒体9上の記録領域の全体に亘って設けられる。本実施の形態では、各インクジェットヘッド31は、記録媒体9のX方向の全体に亘って設けられる。そして、出力制御部411(
図4参照)により吐出ユニット3と移動機構2とが制御され、記録媒体9が吐出ユニット3に対して上記移動方向に相対的に移動するとともに、吐出ユニット3から記録媒体9に向けてインクの微小液滴が吐出される。出力制御部411による制御により、吐出ユニット3の各インクジェットヘッド31(
図2参照)から吐出されたインクの微小液滴により記録媒体9上に形成される複数のドットが、記録媒体9の移動方向であるY方向に垂直なX方向(以下、「ドット配列方向」ともいう。)、および、Y方向にそれぞれ沿って配列される。これにより、記録媒体9に画像が記録される。
【0031】
画像記録装置1では、記録媒体9が、吐出ユニット3の複数のインクジェットヘッド31に対向する位置を1回だけ通過することにより、記録媒体9への画像の記録が完了する。換言すれば、画像記録装置1では、吐出ユニット3の各インクジェットヘッド31が、記録媒体9上の各位置を1回だけ通過することにより画像の記録が行われるシングルパス印刷が行われる。
【0032】
撮像部6は、吐出ユニット3よりも記録媒体9の移動方向の下流側である(+Y)側に配置され、移動方向に垂直なX方向に関し、記録媒体9上の記録領域の全体に亘って設けられる。本実施の形態では、撮像部6は、記録媒体9のX方向の全体に亘って設けられる。そして、記録媒体9が、撮像部6に対向する位置を1回だけ通過することにより(すなわち、記録媒体9が、撮像部6に対して移動方向に1回だけ相対的に移動することにより)、記録媒体9の撮像が完了する。
【0033】
図4は、制御ユニット4の機能を示すブロック図である。
図4では、制御ユニット4に接続される画像記録装置1の構成の一部を併せて示す。制御ユニット4は、制御部41と、様々な情報を記憶する記憶部42とを備える。制御部41は、上述の出力制御部411、補正用パターン記録部413、補正用画像取得部414、および、補正係数取得部415を備える。記憶部42には、各インクジェットヘッド31の複数の吐出口33からのインクの吐出量の補正に利用される補正係数が記憶される。
【0034】
出力制御部411は、上述のように、移動機構2および吐出ユニット3を制御して記録媒体9に画像を記録する。このとき、出力制御部411では、記憶部42に記憶された複数の補正係数に基づいて、複数のインクジェットヘッド31からのインクの吐出量が補正される。これにより、記録媒体9上における筋ムラの発生が抑制される。
【0035】
次に、画像記録装置1における上記補正係数の取得の流れについて、
図5を参照しつつ説明する。以下の説明では、1つのインクジェットヘッド31に対する補正係数の取得について説明するが、他のインクジェットヘッド31に対する補正係数も同様の手順により取得される。
【0036】
画像記録装置1では、まず、
図4に示す補正用パターン記録部413により、移動機構2と吐出ユニット3とが制御され、移動機構2により補正用媒体が上記移動方向に相対移動しつつ、インクジェットヘッド31により
図6に示す補正用パターン95が補正用媒体94に記録される(ステップS11)。補正用媒体94は、好ましくは、記録媒体9と同様の媒体であり、本実施の形態では、記録媒体9と同様の印刷用紙である。補正用パターン95は、所定の目標濃度(例えば、100%濃度)となるように記録される。補正用パターン95は、例えば、およそ一様な濃度の略矩形状のチント画像である。実際には、補正用媒体94上には、後述するように複数の目標濃度にそれぞれ対応する複数の補正用パターンが記録されるが、ここでは、1つの補正用パターン95を利用し、当該補正用パターン95の目標濃度に対応する補正係数の取得について説明する。
【0037】
図7は、補正用パターン95の一部を拡大して示す平面図である。
図7では、補正用媒体94上に描画されるインクのドット96を黒丸にて示し、複数のドット96がそれぞれ描画される複数の描画位置97(すなわち、ドット形成位置)を破線の矩形にて囲む。黒丸が描かれていない描画位置97には、ドットは描画可能であるが、当該補正用パターン95では描画されていない。上述および以下に説明する
図7の描画形式は、
図8ないし
図11、
図13、
図15、
図18並びに
図19においても同様である。
【0038】
図7では、補正用媒体94上のどの描画位置97にドット96が形成されるかを明確にするために、補正用パターン95に含まれる各ドット96の直径を実際よりも小さく描いている。実際の補正用パターン95では、各ドット96は、当該ドット96の描画位置97から隣接する描画位置97まで広がり、隣接する描画位置97にもドット96が形成される場合は、隣接するドット96と合体する。
図7では、Y方向に並ぶ複数の描画位置97に対応する吐出口33、すなわち、当該複数の描画位置97に向けてインクの微小液滴を吐出する吐出口33を併せて描く。吐出口33は、複数の描画位置97の下方に白丸にて示す。
【0039】
補正用パターン記録部413により記録される補正用パターン95は、ドット配列方向であるX方向に隣接して並ぶ複数のパターンブロック951を含む。
図7では、5つのパターンブロック951をそれぞれ二点鎖線にて囲む。また、当該5つのパターンブロック951の(+X)側には、パターンブロック951の一部を描く。各パターンブロック951は、上述の移動方向であるY方向に延びる略帯状であり、各パターンブロック951は、X方向に連続する3個毎の吐出口33の集合である各単位吐出口群34により、補正用媒体94上に記録される。
図7では、各単位吐出口群34を二点鎖線にて囲む。各単位吐出口群34は、上述のようにX方向に連続する3個の吐出口33を含み、複数の単位吐出口群34はX方向に連続する。
【0040】
各パターンブロック951では、
図7中においてそれぞれを一点鎖線にて囲んで示す複数の単位ドット列952が、Y方向に配列される。各単位ドット列952は、補正用媒体94上においてX方向に隣接して並ぶ3個の描画位置97に形成された少なくとも1つのドット96である。換言すれば、各単位ドット列952は、X方向に隣接して並ぶ3個の描画位置97を含み、当該3個の描画位置97のうち1個以上の描画位置97にドット96が形成される。
【0041】
例えば、各パターンブロック951において、
図7中の最も(+Y)側に位置する単位ドット列952では、X方向に並ぶ3個の描画位置97のうち最も(+X)側の描画位置97のみにドット96が形成され、最も(−X)側および中央の描画位置97にはドット96は形成されない。各パターンブロック951において、(+Y)側から3番目に位置する単位ドット列952では、X方向に並ぶ3個の描画位置97のうち最も(+X)側および中央の描画位置97にドット96が形成され、最も(−X)側の描画位置97にはドット96は形成されない。各パターンブロック951において、最も(−Y)側に位置する単位ドット列952では、X方向に並ぶ3個の描画位置97の全てにドット96が形成される。
【0042】
各パターンブロック951は、(2
3−1)種類、すなわち、7種類の単位ドット列952を含む。当該7種類の単位ドット列952は、各パターンブロック951に対応する単位吐出口群34の3個の吐出口33(すなわち、各パターンブロック951の描画に使用される3個の吐出口33)からのインクの吐出および不吐出の状態のうち、少なくとも1つの吐出口33からのインクが吐出される全ての吐出状態に対応する。換言すれば、上記7種類の単位ドット列952は、X方向に並ぶ3個の描画位置97に1個以上のドット96が形成される場合の全種類のドット配列である。
【0043】
図7に示す例では、各パターンブロック951には、上記7種類の単位ドット列952が1つずつ含まれる。換言すれば、各パターンブロック951は、互いに種類が異なる7個の単位ドット列952を含む。単位ドット列952の種類とは、単位ドット列952に含まれる3個の描画位置97におけるドット96の配列の種類であり、具体的には、当該3個の描画位置97におけるドット96が形成される描画位置97とドット96が形成されない描画位置97との並び方の種類である。
【0044】
各パターンブロック951では、7個の単位ドット列952のそれぞれが、Y方向にて隣接する単位ドット列952から離間する。Y方向にて隣接する各2個の単位ドット列952間のY方向の距離は、各2個の単位ドット列952においてX方向の同じ位置に形成された2個のドット96が合体しない程度に大きい。なお、上記7種類の単位ドット列952について、各パターンブロック951に含まれる各種類の単位ドット列952の数は1には限定されず、同じであればよい。例えば、上記7種類の単位ドット列952がそれぞれ2個ずつ、各パターンブロック951に含まれていてもよい。
【0045】
各パターンブロック951において、Y方向におけるドット96の配列に注目すると、最も(−X)側の7個の描画位置97、中央の7個の描画位置97、および、最も(+X)側の7個の描画位置97はそれぞれ、4個のドット96を含む。最も(−X)側の7個の描画位置97では、4個のドット96が、(−Y)側においてY方向に連続する。中央の7個の描画位置97では、最も(+Y)側の描画位置97を除き、Y方向に連続する2個のドット96と、ドットが形成されないY方向に連続する2個の描画位置97とが、Y方向に交互に配置される。最も(+X)側の7個の描画位置97では、ドット96と、ドットが形成されない描画位置97とが、Y方向に1個ずつ交互に配置される。
【0046】
X方向に並ぶ複数のパターンブロック951では、Y方向の各位置において、同種類の単位ドット列952、すなわち、ドット96の配列が同じ単位ドット列952がX方向に並ぶ。補正用パターン95では、X方向における複数の単位吐出口群34にそれぞれ対応する位置に、
図8に示すように、複数のパターンブロック951がY方向に並べられる。
【0047】
図1に示す画像記録装置1では、補正用パターン95の記録が終了すると、移動機構2により、補正用媒体94が撮像部6の下方へと移動する。そして、
図4に示す補正用画像取得部414により移動機構2および撮像部6が制御されることにより、補正用媒体94が撮像部6の下方にて撮像部6に対して相対的に移動し、撮像部6による補正用パターン95の撮像が行われる(ステップS12)。これにより、補正用パターン95の画像である補正用パターン画像が取得される。
【0048】
次に、補正係数取得部415により、当該補正用パターン画像において、各吐出口33に対応する位置における濃度のY方向の平均値である濃度平均値が求められる。吐出口33に対応する位置における濃度平均値とは、当該吐出口33から吐出されたインクの微小液滴により複数のドット96が形成されたY方向に延びる領域を、Y方向に沿って連続的に撮像する際に撮像部6から出力される出力値の平均値を、濃度に変換した値である。そして、各吐出口33に対応する位置における濃度平均値と上述の目標濃度との差に基づいて、各吐出口33の補正係数が、補正係数取得部415により決定される(ステップS13)。
【0049】
補正係数は、例えば、吐出口33に対応する位置における濃度平均値が目標濃度よりも小さい場合、目標濃度と当該濃度平均値との差の絶対値である濃度誤差を目標濃度により除算し、除算結果を1に加算することにより求められる。また、上記濃度平均値が目標濃度よりも大きい場合、補正係数は、濃度誤差を目標濃度により除算し、除算結果を1から減算することにより求められる。
【0050】
ステップS13にて決定された補正係数は、記憶部42に格納される(ステップS14)。制御ユニット4では、補正用パターン記録部413、補正用画像取得部414、および、補正係数取得部415により、他のインクジェットヘッド31についても、複数のヘッド32の各吐出口33の補正係数が、上記と同様に決定されて記憶部42に格納される。
【0051】
画像記録装置1では、出力制御部411により、ステップS13にて決定された補正係数を利用しつつ吐出ユニット3および移動機構2が制御されることにより、記録媒体9に画像が記録される(ステップS15)。具体的には、記録媒体9に記録される画像の元画像データにおいて、各吐出口33に対応する画素の濃度が、補正係数を利用して変更され(例えば、元画像データの画素の濃度に補正係数が乗算され)、補正済データが生成される。そして、閾値マトリクス等を利用して補正済データから網点データが生成され、網点データに基づいて各吐出口33からのインクの吐出量を示す吐出データが生成され、当該吐出データに基づいてインクの吐出が行われる。すなわち、各吐出口33からのインク吐出量が補正係数を利用して補正される。なお、補正されるインク吐出量とは、吐出口33から1回に吐出されるインクの量であってもよく、記録媒体9の所定距離の移動の間に吐出口33からインクが吐出される回数(すなわち、所定距離間のインクの合計吐出量)であってもよい。
【0052】
以上に説明したように、画像記録装置1では、補正用パターン95が、X方向に隣接して並ぶ複数のパターンブロック951を含み、各パターンブロック951は、X方向に連続する3個毎の吐出口33の集合である各単位吐出口群34により記録される。各パターンブロック951は、対応する単位吐出口群34の3個の吐出口33からの全ての吐出状態(ただし、少なくとも1つの吐出口33からインクが吐出される状態)に対応する7種類の単位ドット列952を含み、かつ、各パターンブロック951における各種類の単位ドット列952の数は同じである。
【0053】
各パターンブロック951に対応する単位吐出口群34の3個の吐出口33のうち中央の吐出口33(以下、単に「中央の吐出口33」ともいう。)に注目すると、当該中央の吐出口33に対応する7個の描画位置97はそれぞれ、X方向の両側のドット96の存否状態が異なる。換言すれば、当該7個の描画位置97はそれぞれ、X方向の両側に隣接する描画位置97のドット96(ただし、X方向の両側の描画位置97にドット96が存在しない場合もある。)から互いに異なる影響を受ける。また、各パターンブロック951には、上述のドット96の存否状態の全種類が同数ずつ含まれる。
【0054】
このように、補正用パターン95では、各単位吐出口群34の中央の吐出口33について、X方向の両側に隣接する2個の吐出口33からのインクの吐出および不吐出の影響が、網羅的に、かつ、全ての吐出状態についておよそ均等に再現される。
【0055】
また、補正用パターン95では、X方向に並ぶ複数のパターンブロック951において、Y方向の各位置に同種類の単位ドット列952がX方向に並ぶ。したがって、
図9に示すように、複数の単位吐出口群34、および、複数のパターンブロック951を、
図7に示す状態から、吐出口33のX方向における配列ピッチに等しい距離だけ(+X)方向にずらして設定した場合であっても、各パターンブロック951の状態は上述と同様になる。すなわち、各パターンブロック951は、対応する単位吐出口群34の3個の吐出口33からの全ての吐出状態に対応する7種類の単位ドット列952を含み、かつ、各種類の単位ドット列952の数が同じである。
【0056】
また、
図10に示すように、複数の単位吐出口群34、および、複数のパターンブロック951を、
図7に示す状態から、吐出口33のX方向における配列ピッチの2倍に等しい距離だけ(+X)方向にずらして設定した場合であっても、各パターンブロック951の状態は上述と同様になる。すなわち、各パターンブロック951は、対応する単位吐出口群34の3個の吐出口33からの全ての吐出状態に対応する7種類の単位ドット列952を含み、かつ、各種類の単位ドット列952の数が同じである。
【0057】
したがって、補正用パターン95では、上記配列ピッチにてX方向に配列される複数の吐出口33のそれぞれについて、X方向の両側に隣接する2個の吐出口33からのインクの吐出および不吐出の影響が、網羅的に、かつ、全ての吐出状態についておよそ均等に再現される。そして、当該補正用パターン95から、各吐出口33に対応する描画位置97における濃度平均値が求められ、当該濃度平均値と目標濃度との差に基づいて各吐出口33の補正係数が決定される。
【0058】
ここで、複数の吐出口のそれぞれについて、隣接する吐出口からのインクの吐出および不吐出の影響を各吐出状態について個別に考慮し、複数の吐出状態にそれぞれ対応する複数の補正係数を求めると仮定すると、補正係数の取得、および、当該補正係数によるインクの吐出量の補正が複雑化してしまう。
【0059】
これに対し、画像記録装置1では、複数の吐出口33のそれぞれについて、X方向の両側に隣接する2個の吐出口33からのインクの吐出および不吐出の影響を、複数の吐出状態について総合的に考慮して1つの補正係数が取得される。このように、画像記録装置1では、複数の吐出口33からのインクの吐出量を補正するための補正係数を簡素な方法にて取得することができる。その結果、画像記録装置1において画像を記録する際に、インクの吐出量の補正を簡素化しつつ、コーヒーリング現象等に起因すると考えられる濃度ムラや筋ムラの発生を抑制することができる。画像記録装置1の構造は、画像の濃度ムラがインターレス印刷に比べて目立ちやすいシングルパス印刷が行われる画像記録装置に特に適している。
【0060】
補正用パターン95の各パターンブロック951では、上述のように、複数の単位ドット列952のそれぞれが、Y方向にて隣接する単位ドット列952から離間する。これにより、各単位ドット列952に含まれるドット96について、他の単位ドット列952に含まれるドット96による影響を防止することができる。その結果、複数の吐出口33のそれぞれについて、上記補正係数を精度良く取得することができる。
【0061】
上述の各単位吐出口群34は、必ずしも、X方向に連続する3個毎の吐出口33の集合である必要はなく、X方向に連続するN個(ただし、Nは3以上の奇数)毎の吐出口33の集合であればよい。この場合、各パターンブロック951は、対応する単位吐出口群34のN個の吐出口33からのインクの吐出および不吐出の状態のうち、少なくとも1つの吐出口33からインクが吐出される全ての吐出状態に対応する(2
N−1)種類の単位ドット列952を含む。また、各パターンブロック951に含まれる各種類の単位ドット列952の数は同じである。各パターンブロック951においてY方向に配列される(2
N−1)種類の単位ドット列952は、それぞれ、補正用媒体94上においてX方向に並ぶN個の描画位置97に形成された少なくとも1つのドット96である。
【0062】
図11は、Nが5である場合の補正用パターン95の一部を拡大して示す平面図である。
図11に示す例では、各単位吐出口群34は、X方向に連続する5個毎の吐出口33の集合である。各パターンブロック951は、31種類(すなわち、(2
5−1)種類)の単位ドット列952を含み、かつ、各パターンブロック951に含まれる各種類の単位ドット列952の数は同じである。また、各パターンブロック951においてY方向に配列される31種類の単位ドット列952はそれぞれ、補正用媒体94上においてX方向に並ぶ5個の描画位置97に形成された少なくとも1つのドット96である。
【0063】
各パターンブロック951において、Y方向におけるドット96の配列に注目すると、最も(−X)側の31個の描画位置97、(−X)側から2番目の31個の描画位置97、中央の31個の描画位置97、(+X)側から2番目の31個の描画位置97、および、最も(+X)側の31個の描画位置97はそれぞれ、16個のドット96を含む。
【0064】
最も(−X)側の31個の描画位置97では、16個のドット96が、(−Y)側においてY方向に連続する。(−X)側から2番目の31個の描画位置97では、(+Y)側の7個の描画位置97を除き、Y方向に連続する8個のドット96と、ドットが形成されないY方向に連続する8個の描画位置97とが、Y方向に交互に配置される。中央の31個の描画位置97では、(+Y)側の3個の描画位置97を除き、Y方向に連続する4個のドット96と、ドットが形成されないY方向に連続する4個の描画位置97とが、Y方向に交互に配置される。(+X)側から2番目の31個の描画位置97では、最も(+Y)側の描画位置97を除き、Y方向に連続する2個のドット96と、ドットが形成されないY方向に連続する2個の描画位置97とが、Y方向に交互に配置される。最も(+X)側の31個の描画位置97では、ドット96と、ドットが形成されない描画位置97とが、Y方向に1個ずつ交互に配置される。
【0065】
Nが5の場合の補正用パターン95では、X方向に配列される複数の吐出口33のそれぞれについて、(+X)側に隣接する2個の吐出口33、および、(−X)側にて隣接する2個の吐出口33からのインクの吐出および不吐出の影響が、網羅的に、かつ、全ての吐出状態についておよそ均等に再現される。そして、当該補正用パターン95から、各吐出口33に対応する描画位置97における濃度平均値が求められ、当該濃度平均値と目標濃度との差に基づいて各吐出口33の補正係数が決定される。これにより、Nが3の場合と同様に、複数の吐出口33からのインクの吐出量を補正するための補正係数を簡素な方法にて取得することができる。その結果、画像記録装置1において画像を記録する際に、インクの吐出量の補正を簡素化しつつ、濃度ムラや筋ムラの発生を抑制することができる。
【0066】
上述のように、実際の画像記録装置1では、補正用パターン記録部413により、移動機構2と吐出ユニット3とが制御され、移動機構2により補正用媒体94が上記移動方向に相対移動しつつ、複数の目標濃度にそれぞれ対応する複数の補正用パターンが補正用媒体94に記録される。例えば、補正用媒体94上では、
図12に示すように、複数の補正用パターン95,95a〜95eがY方向に配列される。補正用パターン95,95a〜95eはそれぞれ、所定の目標濃度となるように補正用媒体94に記録されたおよそ一様な濃度の略矩形状のチント画像である。
【0067】
図12に示す例では、最も(+Y)側に位置する補正用パターン95の目標濃度は、
図6に示す補正用パターン95に等しく、100%である。また、他の補正用パターン95a〜95eの目標濃度(すなわち、他の目標濃度)は、補正用パターン95の目標濃度よりも低い。補正用パターン95a〜95eのそれぞれの目標濃度は、例えば、80%、50%、30%、10%、5%である。各補正用パターンの目標濃度は様々に変更されてよい。
【0068】
図13は、目標濃度が80%である補正用パターン95aの一部を拡大して示す図である。補正用パターン95aは、
図7に示す補正用パターン95と同様に、ドット配列方向であるX方向に隣接して並ぶ複数のパターンブロック951を含む。補正用パターン95aの各パターンブロック951では、複数の単位ドット列952が移動方向であるY方向に配列される。
【0069】
図13では、上述のNが3である例を示す。すなわち、
図13に示す例では、
図7と同様に、各単位吐出口群34が3個毎の吐出口33の集合であり、単位ドット列952が、X方向に並ぶ3個の描画位置97に形成された少なくとも1つのドット96である。各パターンブロック951は、7種類(すなわち、(2
3−1)種類)の単位ドット列952を含む。各パターンブロック951に含まれる各種類の単位ドット列952の数は同じ(
図13では、1個)である。X方向に並ぶ複数のパターンブロック951では、Y方向の各位置に同種類の単位ドット列952がX方向に並ぶ。
【0070】
補正用パターン95aの各パターンブロック951では、7個の単位ドット列952のそれぞれが、Y方向にて隣接する単位ドット列952から離間する。補正用パターン95aの複数のパターンブロック951のそれぞれにおける 単位ドット列952間のY方向の距離は、
図7に示す補正用パターン95の複数のパターンブロック951のそれぞれにおける単位ドット列952間のY方向の距離よりも大きい。
【0071】
このように、
図13に示す補正用パターン95aでは、
図7に示す補正用パターン95に比べて、Y方向にて隣接する単位ドット列952間のY方向の距離を大きくすることにより、単位面積当たりに配置されるドット96の数が減少して濃度が低くなる。
図12に示す補正用パターン95b〜95eについても同様に、目標濃度が低くなるに従って、各補正用パターン95b〜95eの各パターンブロック951において、単位ドット列952間のY方向の距離が大きくなる。
【0072】
画像記録装置1では、補正係数取得部415により移動機構2および撮像部6が制御されることにより、補正用パターン95,95a〜95eが撮像される。続いて、各補正用パターン95,95a〜95eの補正用パターン画像において、各吐出口33に対応する位置における濃度平均値が求められる。そして、各補正用パターン95,95a〜95eについて、各吐出口33の位置における濃度平均値と目標濃度との差に基づいて、各補正用パターン95,95a〜95eの目標濃度に対応する各吐出口33の補正係数が決定される。これにより、複数の目標濃度にそれぞれ対応する複数の補正係数を、簡素な方法にて取得することができる。
【0073】
また、画像記録装置1における記録媒体9に対する画像記録では、画像の濃度が変化すると、吐出口33からのインクの吐出頻度も変化する。具体的には、記録される画像の濃度が低くなるに従って、吐出口33からのインクの吐出頻度が減少する。換言すれば、記録される画像の濃度が低くなるに従って、吐出口33からのインクの平均吐出間隔(すなわち、1回のインクの吐出から次のインクの吐出までの平均待機時間)が大きくなる。一方、画像記録装置1における補正用媒体94に対する補正用パターン95,95a〜95eの記録では、補正用パターンの目標濃度が低くなるに従って、上述のように単位ドット列952間のY方向の距離が大きくなるため、吐出口33からのインクの平均吐出間隔が大きくなる。このように、画像記録装置1では、補正用パターン95,95a〜95eを記録する際に、吐出口33からのインクの平均吐出間隔を、記録媒体9に対する画像記録の際の平均吐出間隔に近づけることができる。その結果、複数の目標濃度にそれぞれ対応する複数の補正係数を、高精度に取得することができる。
【0074】
図14は、補正用媒体94上に記録される補正用パターン95,95a〜95eの他の例を示す図である。
図14に示す例では、複数の補正用パターン95,95a〜95eは、Y方向に互いに離間しつつ配列される。複数の補正用パターン95,95a〜95eのそれぞれの間には、X方向に延びる略直線状の目印98が配置される。目印98は、最も(+Y)側の補正用パターン95の(+Y)側、および、最も(−Y)側の補正用パターン95eの(−Y)側にも配置される。複数の目印98は、吐出ユニット3から吐出されるインクの微小液滴により、補正用媒体94上に記録される。
【0075】
補正用媒体94上に設けられる複数の目印98は、複数の補正用パターン95,95a〜95eのY方向の端部をそれぞれ示す。画像記録装置1では、撮像部6により複数の補正用パターン95,95a〜95eを撮像する際に、複数の目印98も撮像される。そして、補正係数取得部415により、各吐出口33に対応する濃度平均値が求められる際に、複数の目印98が検出されることにより、目標濃度が異なる複数の補正用パターン95,95a〜95eのY方向の端部が容易に検出される。その結果、複数の目標濃度にそれぞれ対応する複数の補正係数を、容易かつ高精度に取得することができる。
【0076】
各目印98の形状は、X方向に延びる略直線状には限定されず、様々な形状であってよい。例えば、各目印98は、X方向に配列された複数の点であってもよい。目印98は、必ずしも、吐出ユニット3により補正用媒体94上に記録される必要はなく、他の画像記録装置等により、補正用媒体94上に予め記録されていてもよい。あるいは、複数の補正用パターン95,95a〜95eがY方向に互いに離間して配列されることにより、Y方向に隣接する各2つの補正用パターンの間の間隙である複数の空白領域が、複数の補正用パターン95,95a〜95eのY方向の端部をそれぞれ示す複数の目印98として利用されてもよい。
【0077】
図15は、
図7に示す補正用パターン95とは構成が異なる他の補正用パターン95fの一部を拡大して示す図である。
図15では、上述のNが3である例を示す。すなわち、
図15に示す例では、
図7と同様に、各単位吐出口群34が3個毎の吐出口33の集合であり、単位ドット列952が、X方向に並ぶ3個の描画位置97に形成された少なくとも1つのドット96である。
【0078】
補正用パターン95fでは、各パターンブロック951が、Y方向に並ぶ3個のサブブロック953を含む。
図15では、サブブロック953を実線にて囲む。また、各サブブロック953は、7種類の単位ドット列952を同数(この場合は、1個)含む。
【0079】
図16は、1つのパターンブロック951を示す図である。
図16に示すように、各サブブロック953では、単位吐出口群34の3個の吐出口33にそれぞれ対応する3種類の縦ドット群954が、X方向に並ぶとともにそれぞれY方向に延びる。
図16では、サブブロック953を細い実線にて囲み、縦ドット群954を太い実線にて囲む。各縦ドット群954は、補正用媒体94上においてY方向に隣接して並ぶ7個の描画位置97に形成された少なくとも1つのドット96である。換言すれば、各縦ドット群954は、Y方向に隣接して並ぶ7個の描画位置97を含み、当該7個の描画位置97のうち1個以上の描画位置97にドット96が形成される。
図16に示す例では、Y方向に延びる各縦ドット群954は、4つのドット96を含む。3種類の縦ドット群954のそれぞれにおけるY方向のドット配列は互いに異なる。
【0080】
各パターンブロック951では、3個の吐出口33にそれぞれ対応する位置に、上述の3種類の縦ドット群954がY方向に並ぶ。換言すれば、各パターンブロック951が記録される際には、各パターンブロック951に対応する3個の吐出口33のそれぞれにより、上述の3種類の縦ドット群954が記録される。これにより、単位吐出口群34に含まれる3個の吐出口33について、1つのパターンブロック951を記録する際の吐出動作を互いに同様とすることができる。その結果、複数の吐出口33について、各吐出口33の吐出動作の違いによる描画のばらつきを抑制し、複数の吐出口33からのインクの吐出量を補正するための補正係数を高精度に取得することができる。
【0081】
各パターンブロック951に含まれるサブブロック953の数は、3個には限定されない。各パターンブロック951に含まれるサブブロック953の数は、各単位吐出口群34に含まれる吐出口33の数の倍数に等しい。したがって、補正用パターン95fでは、サブブロック953の数は、例えば、6個であってもよい。この場合、各パターンブロック951では、3個の吐出口33にそれぞれ対応する位置に、上述の3種類の縦ドット群954が同数ずつ、すなわち、2個ずつY方向に並ぶ。
【0082】
各単位吐出口群34に含まれる吐出口33の数をN(ただし、Nは3以上の奇数)とすると、各パターンブロック951に含まれるサブブロック953の数は、Nの倍数に等しい。また、各サブブロック953は、(2
N−1)種類の単位ドット列952を同数含む。各サブブロック953では、単位吐出口群34のN個の吐出口33にそれぞれ対応するN種類の縦ドット群954がX方向に並ぶ。N種類の縦ドット群954はそれぞれY方向に延びる。N種類の縦ドット群954のそれぞれにおけるY方向のドット配列は互いに異なる。各パターンブロック951では、N個の吐出口33にそれぞれ対応する位置に、上記N種類の縦ドット群954が同数ずつY方向に並ぶ。これにより、上記と同様に、複数の吐出口33について、各吐出口33の吐出動作の違いによる描画のばらつきを抑制し、複数の吐出口33からのインクの吐出量を補正するための補正係数を高精度に取得することができる。
【0083】
上記説明では、各インクジェットヘッド31の各吐出口33から吐出されるインクの微小液滴のサイズが1種類であるものとして説明したが、画像記録装置1では、複数の吐出口33からそれぞれ吐出されるインクの微小液滴のサイズが切り替え可能なインクジェットヘッド31が吐出ユニット3に設けられてもよい。当該インクジェットヘッド31が利用されることにより、複数の吐出口33から吐出されるインクの微小液滴により記録媒体9および補正用媒体94上に記録されるドットのサイズが切り替え可能となる。
【0084】
以下、記録媒体9および補正用媒体94上に描画されるドットのサイズが、「大サイズ」、「中サイズ」、「小サイズ」の3種類の間で切り換え可能であるものとして説明する。大サイズのドットは、画像記録装置1において表現可能な最大サイズのドットであり、小サイズのドットは、画像記録装置1において表現可能な最小サイズのドットである。また、中サイズのドットは、大サイズのドットよりも小さく、小サイズのドットよりも大きいサイズのドットである。
【0085】
図17は、画像記録装置1により記録される画像の階調値とインクの吐出率との関係の一例を示す図である。
図17の縦軸は、一様な階調値の画像を画像記録装置1にて記録する場合のインクの吐出率を示し、横軸は当該画像の階調値を示している。上述の吐出率とは、記録媒体9または補正用媒体94上の単位領域においてインクのドットが付与可能な位置として定義されている描画位置97の個数を基準個数として、単位領域に対して一のインクジェットヘッド31から実際に吐出されて付与されるドットの個数の基準個数に対する割合を示す値である。
【0086】
図17では、大サイズのインクの微小液滴の吐出率を符号B1を付す実線にて示す。以下の説明では、大サイズ、中サイズおよび小サイズのインクの微小液滴の吐出率をそれぞれ「大ドットの吐出率」、「中ドットの吐出率」および「小ドットの吐出率」という。
図17では、大ドットの吐出率と中ドットの吐出率との和を、符号B2を付す一点鎖線にて示し、全サイズのインクの微小液滴の吐出率である合計吐出率を符号B3を付す破線にて示す。
【0087】
図17に示すように、画像の階調値が0から64まで増加するに従って、小ドットのみによる吐出率が、破線B3にて示すように線形に増加する。すなわち、階調値が0から64の範囲では、小サイズのドットのみにより画像が記録される。画像の階調値が64から128まで増加する際には、階調値の増加に従って、合計吐出率は破線B3にて示すように線形に増加し、中ドットの吐出率は一点鎖線B2にて示すように線形に増加する。破線B3と一点鎖線B2との差は、小ドットの吐出率に相当し、小ドットの吐出率は、階調値の増加に従って線形に減少する。したがって、階調値が64から128の範囲では、画像は、小サイズのドットおよび中サイズのドットにより記録され、階調値が増加するに従って、画像に含まれる小サイズのドットの割合は減少し、中サイズのドットの割合は増加する。
【0088】
画像の階調値が128から255まで増加する際には、階調値の増加に従って、合計吐出率は破線B3にて示すように100%まで線形に増加し、大ドットの吐出率と中ドットの吐出率との和は、一点鎖線B2にて示すように100%まで線形に増加する。また、大ドットの吐出率は、階調値の増加に従って、実線B1にて示すように0%から100%まで線形に増加する。破線B3と一点鎖線B2との差は、小ドットの吐出率に相当し、小ドットの吐出率は、階調値の増加に従って0%まで線形に減少する。一点鎖線B2と実線B1との差は、中ドットの吐出率に相当し、中ドットの吐出率は、階調値の増加に従って0%まで線形に減少する。したがって、階調値が128〜255の範囲では、画像は、小サイズのドット、中サイズのドットおよび大サイズのドットにより記録される。また、階調値が増加するに従って、画像に含まれる小サイズのドットおよび中サイズのドットの割合は減少し、大サイズのドットの割合は増加する。
【0089】
ドットのサイズが切り替え可能なインクジェットヘッド31を備える画像記録装置1では、補正用パターン記録部413により補正用媒体94に記録される補正用パターン95gは、
図18に示すように、第1の補正用パターン955、第2の補正用パターン956、および、第3の補正用パターン957を含む。第1の補正用パターン955は、小サイズのドット96aのみにより形成される。第2の補正用パターン956は、中サイズのドット96bのみにより形成される。第3の補正用パターン957は、大サイズのドット96cのみにより形成される。
【0090】
第1の補正用パターン955、第2の補正用パターン956、および、第3の補正用パターン957はそれぞれ、
図7および
図8に示す補正用パターン95と同様のドット配置を有する。具体的には、第1〜第3の補正用パターン955〜957はそれぞれ、X方向に隣接して並ぶ複数のパターンブロック951を含み、各パターンブロック951は、3個毎の吐出口33の集合である各単位吐出口群34により記録される。各パターンブロック951では、7種類の単位ドット列952がY方向に配列される。各パターンブロック951に含まれる各種類の単位ドット列952の数は同じ(
図18では、1個)である。X方向に並ぶ複数のパターンブロック951では、Y方向の各位置に同種類の単位ドット列952がX方向に並ぶ。
【0091】
画像記録装置1では、補正係数取得部415による制御により、第1の補正用パターン955が撮像されて各吐出口33に対応する位置における濃度平均値が求められ、当該濃度平均値と目標濃度との差に基づいて各吐出口33の第1の補正係数が決定される。また、第2の補正用パターン956が撮像されて各吐出口33に対応する位置における濃度平均値が求められ、当該濃度平均値と目標濃度との差に基づいて各吐出口33の第2の補正係数が決定される。さらに、第3の補正用パターン957が撮像されて各吐出口33に対応する位置における濃度平均値が求められ、当該濃度平均値と目標濃度との差に基づいて各吐出口33の第3の補正係数が決定される。換言すれば、補正係数取得部415により決定される補正係数は、第1の補正係数、第2の補正係数、および、第3の補正係数を含む。第1の補正係数、第2の補正係数、および、第3の補正係数はそれぞれ、小サイズのドット96a、中サイズのドット96b、および、大サイズのドット96cに対応する。
【0092】
このように、ドットのサイズが切り替え可能な画像記録装置1において、ドットのサイズに応じた(すなわち、吐出口33から吐出されるインクの微小液滴のサイズに応じた)適切な補正係数を、隣接する吐出口33からのインクの吐出および不吐出の影響を考慮しつつ簡素な方法にて取得することができる。
【0093】
記録媒体9に対する画像の記録の際には、各吐出口33の補正係数は、例えば、目標濃度、並びに、第1ないし第3の補正係数を利用して、以下のように決定される。まず、目標濃度に対応する
図17中の階調値において、小ドットの吐出率、中ドットの吐出率および大ドットの吐出率の合計吐出率に対するそれぞれの割合が求められる。例えば、目標濃度が80%の場合、
図17の階調値204における小ドットの吐出率、中ドットの吐出率、および、大ドットの吐出率の合計吐出率に対するそれぞれの割合は、約8%、約17%および約75%である。そして、第1の補正係数と合計吐出率に対する小ドットの吐出率の割合との積、第2の補正係数と合計吐出率に対する中ドットの吐出率の割合との積、および、第3の補正係数と合計吐出率に対する大ドットの吐出率の割合との積を合計することにより、上記目標濃度に対応する補正係数が求められる。当該補正係数を利用して画像を記録することにより、画像記録装置1における濃度ムラや筋ムラの発生を抑制することができる。なお、各吐出口33の補正係数は、第1ないし第3の補正係数を利用して他の様々な方法により決定されてよい。
【0094】
ドットのサイズが切り替え可能な画像記録装置1では、補正用パターン95gの各パターンブロック951を記録する単位吐出口群34は、必ずしも3個の吐出口33の集合である必要はなく、N個(ただし、Nは3以上の奇数)の吐出口33の集合であればよい。第1〜第3の補正用パターン955〜957では、各パターンブロック951において(2
N−1)種類の単位ドット列952がY方向に配列される。各パターンブロック951に含まれる各種類の単位ドット列952の数は同じである。X方向に並ぶ複数のパターンブロック951では、Y方向の各位置に同種類の単位ドット列952がX方向に並ぶ。この場合であっても、上記と同様に、ドットのサイズに応じた(すなわち、吐出口33から吐出されるインクの微小液滴のサイズに応じた)適切な補正係数を、隣接する吐出口33からのインクの吐出および不吐出の影響を考慮しつつ簡素な方法にて取得することができる。
【0095】
図19は、ドットのサイズが切り替え可能な画像記録装置1において、補正用媒体94に記録される他の好ましい補正用パターン95hの一部を拡大して示す図である。補正用パターン95hでは、X方向に並ぶ複数のパターンブロック951のそれぞれにおいて、補正用パターン95hの目標濃度に対応する所定の割合にて、小サイズのドット96a、中サイズのドット96b、および、大サイズのドット96cとが混在する。
【0096】
小サイズのドット96a、中サイズのドット96b、および、大サイズのドット96cをまとめて「ドット96」と呼ぶと、補正用パターン95hにおけるドット96の配置は、
図7および
図8に示す補正用パターン95と同様である。具体的には、各パターンブロック951は、3個毎の吐出口33の集合である各単位吐出口群34により記録される。各パターンブロック951では、7種類の単位ドット列952がY方向に配列される。各パターンブロック951に含まれる各種類の単位ドット列952の数は同じ(
図19では、1個)である。X方向に並ぶ複数のパターンブロック951では、Y方向の各位置に同種類の単位ドット列952がX方向に並ぶ。
【0097】
各パターンブロック951に含まれるドット96に対する小サイズのドット96a、中サイズのドット96b、および、大サイズのドット96cのそれぞれの割合は、補正用パターン95hの目標濃度に対応する
図17中の階調値における各サイズのドットの吐出率の合計吐出率に対する割合におよそ等しい。例えば、補正用パターン95hの目標濃度が80%の場合、
図17の階調値204における小ドットの吐出率、中ドットの吐出率、および、大ドットの吐出率の合計吐出率に対するそれぞれの割合は、上述のように、約8%、約17%および約75%である。したがって、各パターンブロック951には、1個の小サイズのドット96a、2個の中サイズのドット96b、および、9個の大サイズのドット96cが混在する。各パターンブロック951の12個のドット96のうち、いずれのドット96が小サイズ、中サイズまたは大サイズとされるかはランダムに決定される。
【0098】
画像記録装置1では、補正係数取得部415による制御により、補正用パターン95hが撮像されて各吐出口33に対応する位置における濃度平均値が求められ、当該濃度平均値と目標濃度との差に基づいて各吐出口33の補正係数が決定される。
【0099】
上述のように、補正用パターン95hでは、目標濃度に対応する所定の割合にて小サイズのドット96a、中サイズのドット96b、および、大サイズのドット96cが混在する。このため、各吐出口33からのインクにより形成されたドット96に対し、隣接する吐出口33からのインクにより形成されたドット96が与える影響を、記録媒体9に対する実際の画像記録とおよそ同様の条件にて考慮しつつ、補正係数を簡素な方法にて取得することができる。その結果、ドットのサイズが切り替え可能な画像記録装置1における濃度ムラや筋ムラの発生を、より一層抑制することができる。
【0100】
ドットのサイズが切り替え可能な画像記録装置1では、補正用パターン95hの各パターンブロック951を記録する単位吐出口群34は、必ずしも3個の吐出口33の集合である必要はなく、N個(ただし、Nは3以上の奇数)の吐出口33の集合であればよい。補正用パターン95hでは、各パターンブロック951において(2
N−1)種類の単位ドット列952がY方向に配列される。各パターンブロック951に含まれる各種類の単位ドット列952の数は同じである。X方向に並ぶ複数のパターンブロック951では、Y方向の各位置に同種類の単位ドット列952がX方向に並ぶ。この場合であっても、上記と同様に、各吐出口33からのインクにより形成されたドット96に対し、隣接する吐出口33からのインクにより形成されたドット96が与える影響を、記録媒体9に対する実際の画像記録とおよそ同様の条件にて考慮しつつ、補正係数を簡素な方法にて取得することができる。
【0101】
上述の画像記録装置1では、画像の階調値とインクの吐出率との関係は様々に変更されてよい。また、ドットのサイズは、必ずしも3種類のサイズの間で切り換え可能である必要はなく、2種類または4種類以上のサイズの間で切り換え可能であってもよい。すなわち、複数の吐出口33から吐出されるインクの微小液滴により記録されるドットのサイズは、少なくとも、第1のサイズと、当該第1のサイズよりも大きい第2のサイズとの間で切り換え可能であればよい。
【0102】
ドットのサイズが、上記第1のサイズと第2のサイズとの間で切り換え可能である場合、
図18に示す補正用パターン95gに対応する補正用パターンは、第1のサイズのドットのみにより形成される第1の補正用パターン、および、第2のサイズのドットのみにより形成される第2の補正用パターンを含む。また、補正係数取得部415により取得される補正係数は、第1のサイズのドットに対応する第1の補正係数、および、第2のサイズのドットに対応する第2の補正係数を含む。これにより、
図18に示す補正用パターン95gを利用して補正係数を取得する場合と同様に、ドットのサイズに応じた(すなわち、吐出口33から吐出されるインクの微小液滴のサイズに応じた)適切な補正係数を、隣接する吐出口33からのインクの吐出および不吐出の影響を考慮しつつ簡素な方法にて取得することができる。
【0103】
一方、
図19に示す補正用パターン95hに対応する補正用パターンでは、各パターンブロック951において、補正用パターンの目標濃度に対応する所定の割合にて第1のサイズのドットと第2のサイズのドットとが混在する。これにより、
図19に示す補正用パターン95hを利用して補正係数を取得する場合と同様に、各吐出口33からのインクにより形成されたドット96に対し、隣接する吐出口33からのインクにより形成されたドット96が与える影響を、記録媒体9に対する実際の画像記録とおよそ同様の条件にて考慮しつつ、補正係数を簡素な方法にて取得することができる。
【0104】
上述の画像記録装置1では、様々な変更が可能である。
【0105】
例えば、各パターンブロック951では、X方向に隣接して並ぶN個の描画位置97にドット96が形成されない単位空白列が、N種類の単位ドット列952と共にY方向に配列されてもよい。
【0106】
各パターンブロック951では、Y方向に隣接する各2個の単位ドット列952間のY方向の距離は、各2個の単位ドット列952においてX方向の同じ位置に形成された2個のドット96が合体する程度の距離であってもよい。これにより、Y方向に隣接するドット96の影響を考慮した補正係数を取得することができる。
【0107】
画像記録装置1では、各インクジェットヘッド31の全ての吐出口の補正係数が、上述の補正用パターンを利用して決定される必要はなく、一部の吐出口の補正係数は、他の方法により決定されてもよい。例えば、インクジェットヘッド31のX方向の両端部に位置する吐出口について、当該吐出口に対応する記録媒体9上の位置では、インクの凝集が他の位置に比べて生じやすいため、当該吐出口の補正係数は、インクの凝集による影響をより低減する他の方法にて決定されてもよい。あるいは、加工上の理由等によりインクの吐出を行わないことが予め決定されている吐出口が存在する場合、当該吐出口の不吐出による白抜けの発生を防止または低減するために、当該吐出口近傍の吐出口において、他の吐出口よりも大きいサイズのインクの微小液滴が吐出されることがある。このような場合、不吐出の吐出口近傍の吐出口について、他の方法により補正係数が決定されてもよい。
【0108】
画像記録装置1では、記録媒体9が吐出ユニット3に対してY方向に相対的に移動するのであれば、例えば、停止している記録媒体9の上方にて、吐出ユニット3が移動機構2によりY方向に移動してもよい。画像記録装置1の構造は、例えば、インターレス印刷を行う画像記録装置に適用されてもよく、また、長尺状のロール紙やプラスチックフィルム等に画像を記録する画像記録装置に適用されてもよい。
【0109】
上記実施の形態および各変形例における構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わされてよい。