(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記手動プランジャは、第1の押出シリンダー部に挿入される第1の作動部と第2の押出シリンダー部に挿入される第2の作動部とを備えた二股構造を有しており、該手動プランジャの動作により、前記基材ペーストと硬化材ペーストとが同時に前記混練押出ノズル内に供給される請求項1に記載の方法。
前記第1の押出シリンダーと第2の押出シリンダー部とは、軸方向長さが同一となるように設計されており、前記基材ペーストと硬化材ペーストとを一定の容積比で前記混練押出ノズルに供給する請求項2に記載の方法。
前記手動プランジャはトリガに連動しており、該トリガを引くことにより、該手動プランジャを作動させて、前記基材ペーストと硬化材ペーストとを前記混練押出ノズルに供給する請求項3に記載の方法。
基材ペーストが充填されている第1の押出シリンダー部と硬化剤ペーストが充填されている第2の押出シリンダー部とを備え且つこれらのシリンダー部が並列に配置されているシリンダーカートリッジと、第1の押出シリンダー部及び第2の押出シリンダー部のそれぞれに嵌め込まれ且つシリンダー内部をスライドし得るように設けられている蓋体チップと、第1の押出シリンダー部の先端吐出部と第2の押出シリンダー部の先端吐出部とを閉じるように着脱自在に設けられているキャップとからなり、
前記硬化材ペーストは、(A)硫酸カルシウム、(B)HLBが2.0〜6.0であるポリグリセリン脂肪酸エステル及び(C)難水溶性分散媒を含んでおり、
前記基材ペーストは、(D)アルギン酸塩及び(E)水を含んでいることを特徴とするアルジネート硬化組成物調製用キット。
さらに、第1の押出シリンダー部の先端吐出部と第2の押出シリンダー部の先端吐出部とに連通するように装着可能な混練押出ノズルを備えている請求項8に記載のアルジネート硬化組成物調製用キット。
【背景技術】
【0002】
アルギン酸塩と硫酸カルシウムとの水性媒体下でのゲル化反応により硬化物を形成するアルジネート硬化性組成物は、歯科用印象材としての用途に広く使用されており(特許文献1〜4参照)、最近では、家畜用乳頭パックの用途にも使用されている(特許文献5参照)。
【0003】
歯科用印象材としての用途では、歯列を模した印象用トレーに、印象材としてアルジネート硬化性組成物を盛り付ける。次に、口腔内の歯牙を包み込むように、この印象材を盛り付けたトレーを歯牙に押し付ける。そして、印象材が硬化した後に、このアルジネート印象材とトレーとを一体として歯牙から外して、口腔外に撤去する。このようにして形成された印象材の硬化物(口腔内の歯牙の表面が転写されている)を支台歯の型として、石膏製等の模型を作製する。そして、その模型を元に補綴物を作製し、作製された補綴物を支台歯に装着するわけである。
一方、家畜用乳頭パックは、家畜の乳房炎の感染予防に使用されるものであり、アルジネート硬化性組成物を牛等の家畜の乳頭に塗布し硬化皮膜を形成することにより、乳房炎に感染し易い乾乳期(dry period)の一定期間、乳頭を保護するというものである。これにより、乳頭からの菌の侵入を防止し、乳房炎への感染を予防するというものである。
【0004】
上述したアルジネート硬化性組成物は、その保存形態によって、粉末タイプとペーストタイプとに分類される。
粉末タイプのアルジネート硬化性組成物は、水を除いた固形分を粉末状として保存しておき、使用時に水を混練するというものである。一方、ペーストタイプは、アルギン酸塩と水とを主成分とするペースト(基材ペースト)と硬化材である硫酸カルシウムゲル化反応剤を主成分とするペースト(硬化材ペースト)とに分けて保存しておき、使用時に、これら2種のペーストを混練するペーストタイプである。
【0005】
一般に、粉末タイプのアルジネート印象材では、混練作業に際して、手作業による熟練の技が要求される。これに対して、ペーストタイプのアルジネート印象材は、基材ペーストと硬化材ペーストとを混練する専用の混練装置を用いることにより、容易に混練作業の自動化・省力化が図れる。このため、近年では、粉末タイプに代わってペーストタイプのアルジネート硬化性組成物が普及しつつある。
【0006】
このようなペーストタイプのアルジネート硬化性組成物は、通常、アルギン酸塩を含む基材ペーストと硫酸カルシウムを含む硬化材ペーストとが、それぞれ、アルミパックなどの包装容器に別個に密封保存された形態で、歯科医師や歯科衛生士或いは畜産農家などの利用者に提供される。ここで、混練作業に際しては、基材ペーストの包装容器の開口部を混練装置の基材ペースト注入口に連結し、かつ、硬化材ペーストの包装容器の開口部を混練装置の硬化材ペースト注入口に連結する。そしてこの状態で、各々の包装容器から混練装置内へと供給された2種類のペーストが、混練装置内で自動的に混練された後、混練物が、混練装置外へと排出される。これにより、利用者は、混練物(硬化性組成物)を得ることができる(例えば、特許文献1及び特許文献2)。それゆえ、このような混練処理を行う際に、包装容器内のペーストを、混練装置内へとスムーズに供給できるように、包装容器内のペーストは、均一に分散され、且つ、適度な流動性を有している必要がある。
【0007】
特に、硬化材ペーストは、石膏(硫酸カルシウム)などの大量の粉末成分を溶剤に分散させてペースト化したものであり、粉末成分の分散性が重要である。分散性が不十分だと、粉材と液材の分離を生じ、印象性能への悪影響を生じてしまう。また、製造直後の段階では粉成分が十分分散されていても、ペーストの粘度が低い場合には、保管中に粉成分が沈降分離を生じてしまい、保存安定性上の問題を生じてしまう。粉成分の沈降分離を抑制する為には、ペーストの粘度を高くする事が対策として考えられるが、ペーストの粘度を高くすると、混練装置からペーストを吐出する事ができなくなってしまう。このように、従来技術では、ペーストの保存安定性(粉成分の沈降分離抑制)と、ペーストの流動性(混練装置からの吐出性)の両立はなされておらず、粘度が高い状態においても、流動性が確保された硬化材ペーストの開発が強く求められていた。
【0008】
界面活性剤を硬化材ペーストに配合する技術は公知であり、例えば、特許文献3及び4では基材ペーストとの混和性を良好にする観点から、硬化材ペーストに界面活性剤、具体的にはデカグリセリントリオレイン酸エステル等を配合する技術が実施例として開示されている。
しかしながら、ペーストタイプのアルジネート硬化性組成物では、硬化材ペーストに界面活性剤を配合することにより、基材ペーストの混和性が高められているとしても、硫酸カルシウム等の粉成分の沈降分離が抑制され、保存安定性が高められているものは、高粘性であり、その流動性が乏しく、基材ペーストとの混練作業が極めて困難になるという問題があり、界面活性剤が使用されている特許文献3及び4で提案されている硬化材ペーストも例外ではない。
【0009】
このような問題を解決するために、例えば、特許文献6には、自動ペースト混練装置が提案されている。即ち、このような自動ペースト混練装置は、電動ポンプ等を備えており、硬化材ペースト及び基材ペーストの混合部への押し出し及び混練を電動で強制的に行うことにより、高粘性の硬化材ペーストが使用されていたとしても、基材ペーストとの混練を効果的に行うことが可能となるのであり、この種の装置は実用に供されている。
【0010】
しかしながら、電動式の混練装置では、持ち運びが不便であったり、これを使用するためには電源が必要であるという欠点がある。
例えば、現在の日本では高齢化社会からさらなる超高齢化社会を迎えるに際して、歯科分野では、外来診療が減少し、在宅(訪問)治療が増加していく傾向にある。このような在宅治療には、上記のような電動式の混練装置は、持ち運びや電源の確保などの点で適していない。
また、家畜用乳頭パックの点でも、電動式の混練装置は適していない。家畜がいる畜舎内で使用されるため、電源の確保が難しかったり、或いは湿気やホコリなど、環境上の点で装置の故障が生じ易くなるためである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明においては、硬化材ペーストと基材ペーストとを手動で混練してアルジネート硬化性組成物を調製するが、以下に述べる硬化材ペーストと基材ペーストとを使用することが、両者を手動で混練するために必須不可欠である。
【0025】
<硬化材ペースト>
本発明において使用する硬化材ペーストは、硫酸カルシウム(A)、ポリグリセリン脂肪酸エステル(B)及び難水溶性分散媒(C)を必須成分として含み、さらに必要に応じて配合される他の配合剤を含む。
以下、硬化材ペーストに配合される各成分について説明する。
【0026】
(A)硫酸カルシウム;
硫酸カルシウムは、硬化材ペースト中の主成分であり、ゲル化反応剤とも呼ばれる成分である。即ち、この成分は、後述する基材ペースト中のアルギン酸塩と水の存在下で反応して硬化物を形成する。
硫酸カルシウムとしては、2水塩、半水塩、無水塩等が知られているが、本発明においては、これらの何れも使用することができ、2種以上を組み合わせて使用することもできる。
【0027】
硬化材ペースト中の硫酸カルシウムの配合量は、特に制限されないが、後述する基材ペーストと混練する際には、例えば、基材ペースト中のアルギン酸塩(A)100質量部当り、無水塩換算での硫酸カルシウムが10〜2000質量部、特に100〜1000質量部の量となるように、硬化材ペーストが使用される。
【0028】
(B)ポリグリセリン脂肪酸エステル;
本発明において、ポリグリセリン脂肪酸エステル(B)は、この硬化材ペーストにチキソトロピー性を付与するためのノニオン系界面活性剤であり、特にHLB(親水親油バランス)が2.0〜6.0の範囲にあるものが選択的に使用される。例えば、アニオン系やカチオン系の界面活性剤、或いはHLBが、上記範囲外のノニオン系界面活性剤を使用した場合には、目的とする高いチキソトロピー性は発現しない。
また、上記の範囲のHLBを有するポリグリセリン脂肪酸エステル(B)が使用された硬化材ペーストでは、基材ペーストとの混練物から得られる硬化物の過硬化を抑制し、皮膜形成能を高めることができるという利点も有している。即ち、硬化材ペーストと後述する基材ペースト(アルギン酸塩の水性ペースト)との混練物中での難水溶性分散媒(C)の流動が円滑になるために、硫酸カルシウム(A)とアルギン酸塩(D)との硬化が、混練物全体にわたって均一に進行するために、局部的な硬化が防止され、結果として過硬化が抑制されるものと思われる。
【0029】
本発明において、HLB値は下記の数式で表わされるGriffin法(W.C.Griffin,J.Soc.Cosmists.,Chemists.,1,311(1949))により計算した値である。
HLB=20×(親水基部分の分子量)/(界面活性剤の分子量)
【0030】
ポリグリセリン脂肪酸エステルは、ポリグリセリンの1又は2以上の水酸基を脂肪酸でエステル化したものである。ポリグリセリン脂肪酸エステルのHLBは、グリセリンの量体数、エステル化された水酸基の数、構成脂肪酸の種類により総合的に決まるものである。一般的には、グリセリンの量体数が多くなるほど、HLBは大きくなり、エステル化された水酸基の数が多いほど、また、構成脂肪酸の炭素数が多いほどHLBは小さくなる傾向がある。
【0031】
本発明では、HLBが2.0〜6.0であれば、ポリグリセリン脂肪酸エステルの構成脂肪酸としては特に限定されるものではなく、飽和脂肪酸であっても、不飽和脂肪酸であっても良い。一般に、構成脂肪酸は炭素数15〜22のもの、具体的には、ペンタデシル酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、オレイン酸、ノナデカン酸、ツベルクロステアリン酸、アラキジン酸、エイカ酸、ベヘン酸等が好ましく、このうち硬化材ペーストへの分散性の観点から、炭素数16〜20のものがより好ましく、さらには炭素数18のステアリン酸、オレイン酸が最も好ましい。
また、ポリグリセリン脂肪酸エステルを構成するポリグリセリンは、HLBが上記範囲内である限りにおいて、2量体〜12量体のもの、すなわちジグリセリン、トリグリセリン、テトラグリセリン、ペンタグリセリン、ヘキサグリセリン、ヘプタグリセリン、オクタグリセリン、ノナグリセリン、デカグリセリン、ウンデカグリセリン、ドデカグリセリンが好ましく、中でも、硬化材ペーストへの分散性の観点から、8量体〜10量体のオクタグリセリン、ノナグリセリン、デカグリセリンがより好ましい。
また、ポリグリセリン中のエステル化された水酸基の数については、グリセリンの量体数にもよるが、所望のHLBにするために適宜選択され、一般的には、1置換〜8置換体が用いられる。
【0032】
HLBが2.0〜6.0であるポリグリセリン脂肪酸エステルの具体例としては、これに限定されるものではないが、以下のものを挙げることができ、これらのポリグリセリン脂肪酸エステルは、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
ペンタグリセリンモノペンタデシル酸エステル
ペンタグリセリンモノパルミチン酸エステル
トリグリセリンモノマルガリン酸エステル
ジグリセリンモノステアリン酸エステル
ジグリセリンモノオレイン酸エステル
ジグリセリンモノイソステアリン酸エステル
テトラグリセリンモノステアリン酸エステル
テトラグリセリンモノオレイン酸エステル
ヘキサグリセリントリステアリン酸エステル
デカグリセリンペンタステアリン酸エステル
デカグリセリンペンタイソステアリン酸エステル
デカグリセリンペンタオレイン酸エステル
デカグリセリンペンタノナデカン酸エステル
デカグリセリン酸トリエイカ酸エステル
デカグリセリルトリベヘン酸エステル
【0033】
上記したポリグリセリン脂肪酸エステルの中でも、硬化材ペースト中の固形分(粉成分)の分散性の観点から、HLB=3.0〜4.0の範囲にあるもの、例えば、デカグリセリンペンタステアリン酸エステル(HLB=3.5)、デカグリセリンペンタイソステアリン酸エステル(HLB=3.5)、デカグリセリンペンタオレイン酸エステル(HLB=3.5)が好適である。
【0034】
ポリグリセリン脂肪酸エステルの配合量は、特に限定されないが、特に高いチキソトロピー性を発現させるためには、(A)硫酸カルシウム(無水塩換算)100質量部当り、1〜50質量部、特に5〜20質量部の範囲が好ましい。
【0035】
(C)難水溶性有機分散媒;
難水溶性分散媒は、硫酸カルシウム(A)を含む固形分(粉材)のペースト化に用いられる。この場合、硫酸カルシウム(A)は水と反応して硬化(ゲル化)する。したがって、保存中での硫酸カルシウムの硬化を防止し、長期にわたっての保存安定性を高めるために、この分散媒は含水し難い難水溶性のもの、例えば、20℃の水100gに対する溶解度が5g以下であることが必要である。この溶解度は、0.4mg以下が好ましい。
また、家畜用乳頭パックの用途で用いる場合、難水溶性分散媒は、乳頭にゲル状パックを形成した後、乳頭口から浸み出す乳中のカルシウムイオンにより、乳頭口と接触するアルギン酸塩の架橋が進行し過ぎて過硬化してしまうのを防止することができる。これは家畜用乳頭パック組成物の練和物が硬化する際に、該難水溶性分散媒が相分離してゲル化物の表面に染み出し、疎水膜が形成されるためと考えられる。すなわち、斯様にして乳頭パックの無い表面に難水溶性分散媒からなる疎水膜が形成されると、乳頭口から乳液が浸出してもこれが該疎水膜に阻まれて、乳頭パックの内表面に接触し難くなる。この結果、この部分における、乳液中のカルシウムイオンによる過硬化の発生が抑制されるものと考えられる。
【0036】
このような難水溶性の有機分散媒としては、水の存在下での硫酸カルシウムとアルギン酸塩との反応による硬化を阻害せずに硫酸カルシウム粉末をペースト化し得るような流動性を有するものであれば特に制限されないが、一般的には、炭化水素化合物、脂肪族アルコール、環式アルコール、脂肪酸、脂肪酸塩、脂肪酸塩エステル、疎水性重合体等が好適に使用される。これらの難水溶性有機分散媒は、1種単独でもよいし、2種以上の組み合わせでもよい。
以下、これら各種の難水溶性分散媒の好適な例を示す。
【0037】
炭化水素化合物としては、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン、トリデカン、テトラデカン、ペンタデカン、ケロシン、2,7−ジメチルオクタン、1−オクテン等の脂肪族鎖状炭化水素、シクロヘプタン、シクロノナン等の脂環式炭化水素化合物、液状飽和炭化水素の混合物である流動パラフィン等が挙げられる。
【0038】
脂肪族アルコールとしては、1−ヘキサノール、1−オクタノール等の飽和脂肪族アルコール、シトロネロール、オレイルアルコール等の不飽和脂肪族アルコールが挙げられる。
環式アルコールとしては、ベンジルアルコール、メタ−クレゾール等が挙げられる。
【0039】
脂肪酸としては、ヘキサン酸、オクタン酸等の飽和脂肪酸、オレイン酸、リノール酸等の不飽和脂肪酸を挙げることができる。
脂肪酸エステルとしては、オクタン酸エチル、フタル酸ブチル、オレイン酸グリセリド;オリーブ油、ごま油等の植物油;肝油、鯨油等の動物脂;などが挙げられる。
【0040】
疎水性重合体としては、ポリシロキサン(いわゆるシリコーンオイル)等が挙げられる。このようなポリシロキサンとしては、ポリジメチルシロキサン、ポリメチルフェニルシロキサン、ポリメチルハイドロジェンシロキサン、ポリフェニルハイドロジェンシロキサン等が代表的である。
【0041】
本発明において、上述した難水溶性分散媒として特に好適なものは、調製されるアルジネート硬化性組成物の用途によって多少異なる。
例えば印象材、特に歯科用印象材としての用途に用いる場合には、製造コスト、生体に対する為害性、歯牙の印象を採取する際の味覚への影響等の観点から、上記で列挙した難水溶性分散媒の中でも、炭化水素化合物または疎水性重合体を用いることが好ましく、流動パラフィンまたはシリコーンオイルを用いることが最も好適である。
また、家畜用乳頭パックなどの用途に用いる場合には、前述した過硬化の抑制効果をより長期間発揮させる観点から、上記で列挙した分散媒の中でも沸点が高いものが好ましく、1気圧での沸点が100℃以上、特に150〜600℃のもの、例えば、オクタン、ノナン、デカン、1−ヘキサノール、オレイン酸グリセリド、流動パラフィン、シリコーンオイル等が好ましく、さらに、製造コスト、家畜に対する安全性等を考慮すれば、炭化水素化合物及び疎水性重合体が好ましく、流動パラフィン及びシリコーンオイルが最も好ましい。
【0042】
難水溶性分散媒の配合量は特に制限されるものではないが、一般的に、硫酸カルシウム(無水塩)100質量部当り、10〜200質量部、特に20〜100質量部の範囲内が好ましい。
【0043】
上記の(A)〜(C)の各成分を含む硬化材ペーストは、高いチキソトロピー性を示し、例えば静置時には1000ポイズを超える高い粘度を有しており、包装容器中に長期にわたって密封保存された場合においてもペースト中の固形分(硫酸カルシウム)の沈降分離を有効に抑制でき、また、この硬化材ペーストに高い負荷がかかった時には、粘度が大きく減少し、高い流動性を示す。
例えば、上述した各成分の種類や配合量等を適宜選択することにより、硬化材ペーストは、下記式(1);
TI=η
A/η
B (1)
式中、η
Aは、コーンプレート型粘度計を用いて、せん断速度0.1/sで測定した粘
度(25℃)であり、
η
Bは、コーンプレート型粘度計を用いて、せん断速度1.0/sで測定した粘
度(25℃)である、
で定義されるチキソトロピー指数TIを1.5以上、特に、1.8以上、最も好ましくは2.0以上に調整される。
【0044】
<基材ペースト>
上述した硬化材ペーストと混練されて硬化性組成物を形成する基材ペーストは、アルギン酸塩(D)及び水(E)を必須成分として含む。
【0045】
(D)アルギン酸塩;
既に述べたように、アルギン酸塩は、前述した硬化材ペースト中の硫酸カルシウム(A)と水の存在下で反応して硬化物を形成する成分であり、それ自体公知のもの、例えば、
i)アルギン酸ナトリウム、アルギン酸カリウム等のアルギン酸アルカリ金属塩、
ii)アルギン酸アンモニウム、アルギン酸トリエタノールアミン等のアルギン酸アンモ
ニウム塩、
などを使用することができる。
これらのアルギン酸塩の中でも、入手容易性、取扱い容易性、硬化物の物性等の観点から、アルギン酸アルカリ金属塩を用いることが好ましい。また、アルギン酸塩は、2種類以上を混合して用いることもできる。
また、アルギン酸塩の分子量は特に限定されないが、一般的には、アルギン酸塩を1重量%含む水溶液の粘度が50cps〜100cps(23℃)の範囲内となる分子量が好ましい。
【0046】
(E)水;
水は、硫酸カルシウム(A)とアルギン酸塩(D)との硬化反応(ゲル化)に必要な成分であり、水道水、イオン交換水、蒸留水等が使用される。
水の使用量は、アルギン酸塩100質量部当り、100〜4000質量部、特に500〜2000質量部の範囲内とするのがよい。
【0047】
このような基材ペーストは、硬化材ペースト中の硫酸カルシウム(A)と基材ペースト中のアルギン酸塩(D)との無水塩換算での質量比(A/D)が、10/100乃至2000/100、特に100/100乃至1000/100の範囲となるように、硬化材ペーストと混練されて使用される。
【0048】
<その他の配合剤>
本発明においては、前述した高いチキソトロピー性を損なわない範囲で、硬化材ペースト及び基材ペーストの何れにも、その用途や要求特性に応じて、種々の添加剤を配合することができる。
【0049】
このような添加剤として代表的なものとしてマスキング剤がある。
マスキング剤は、特に上述した硬化材ペーストと基材ペーストとの混練物からなるアルジネート硬化性組成物を歯科用印象材に適用する場合に使用されるものであり、この印象材(アルジネート硬化性組成物)を患者の口腔内に挿入したとき、患者に与える不快感を抑制するために使用されるものである。
即ち、口腔内に挿入される印象材には、前述したポリグリセリン脂肪酸エステル(B)が含有されている為、これが口腔内に挿入されると、患者が独特の味(苦味、渋み)を感じる場合がある。このような独特の味をマスキング剤によって緩和することにより、患者に与える不快感を抑制するわけである。
【0050】
このようなマスキング剤としては、例えば、アスパルテーム、スクラロース、ソーマチン、ステビア、マルチトール、エリスリトール、キシリトール、ソルビトール、パラチノース、及びトレハロース等の甘味料や、ラフィノース、メレジトース、スタキオース、シクロデキストリン類(α-シクロデキストリン,β−シクロデキストリン,γ−シクロデキストリン等)等のオリゴ糖などが挙げられる。中でも、ポリグリセリン脂肪酸エステルの苦味の緩和と抗齲蝕性との点で、ステビア、キシリトール、トレハロース等の糖類が好ましい。
【0051】
また、上記の糖類の中でもトレハロース等の二糖類を使用した場合には、上記マスキング効果に加え、印象精度が向上し且つ印象採得後の硬化体の耐乾燥性も向上するという利点がある。即ち、トレハロースはアルギン酸と類似の骨格を有しており且つ親水性が高いため、印象材硬化物の分子鎖内空間に水を保有した状態で入り込む。この結果、分子鎖凝集による硬化体の収縮が抑制され、また、乾燥による水分の揮散もトレハロースにより有効に抑制され、耐乾燥性の向上がもたらされ、乾燥による硬化体の変形も有効に防止され、かくして高い印象精度を保持することができる。
【0052】
マスキング剤の配合量は、特に限定されないが、マスキング効果(苦味や渋みを緩和する効果)を良好に発揮させるためには、ポリグリセリン脂肪酸エステル(A)100質量部に対して、0.5質量部以上配合することが好ましい。また、マスキング剤は、一定量以上加えても特に問題にはならないが、マスキング効果は飽和する。そのため、マスキング剤はポリグリセリン脂肪酸エステル100質量部に対して、0.5〜500質量部の範囲で使用することが好ましく、1〜50質量部の範囲で使用することがより好ましい。
また、トレハロースを使用し、その印象精度向上効果や耐乾燥性向上硬化を重視する場合には、トレハロースの使用量は、アルギン酸塩100質量部当り、100〜2000質量部、特に400〜1200質量部の量で使用する範囲内であること好ましい。
【0053】
さらに、上記で例示したマスキング剤の中に例示されている還元性を示さない糖類(非還元糖)は、水分を保有した状態で硬化体の分子鎖内空間に入り込むため、硬化物に弾性を付与し、しかも、水分の乾燥も抑制される為、硬化体の弾性を、例えば乳頭パックに要求される程度の期間にわたって維持することができる。従って、このような非還元糖の使用は、乳頭パックの用途にも極めて有効であり、感染予防すべき程度の期間、乳頭に良好に密着する乳頭パック(硬化皮膜)を形成することができる。
【0054】
尚、還元性を示さない糖(非還元糖)とは、アルカリ性水溶液中で、銀や銅等の重金属イオンに対して還元作用を示さない性質を意味する。即ち、還元性を有する糖類は、重金属イオンに対する還元作用を利用したトレンス試薬、ベネジクト試薬あるいはフェーリング試薬によって検出されるが、非還元糖は、これら試薬で検出できない。例えば、前述したマスキング剤の中では、オリゴ糖や二糖類(例えばトレハロースやスクロース)などが該当する。特に、トレハロースは、乳頭パックの用途にも最適である。
このような乳頭パックの用途に好適な非還元糖の使用量は、アルギン酸塩100質量部当り、100〜2000質量部、特に400〜1200質量部の量で使用する範囲内であること好ましい。
【0055】
上述したマスキング剤や非還元糖は、硬化材ペースト及び基材ペーストのどちらか一方、或いは双方に配合してもよいが、水に対する溶解性の観点から基材ペーストに配合する方が好ましい。
【0056】
さらに、マスキング剤や非還元糖以外の他の添加剤としては、ゲル化調整剤や充填剤を挙げることができる。
これら添加剤は、硬化材ペーストおよび基材ペーストのいずれか一方、または、双方に適宜添加することができる。しかしながら、これらの中で充填剤は、基材ペーストおよび硬化材ペーストの双方に添加することが好ましく、ゲル化調整剤は、硬化材ペーストに添加されることが好ましい。
【0057】
ゲル化調整剤は、アルギン酸塩とゲル化剤との反応速度(硬化速度)を調節(遅延)させることができる。このため、歯科用印象材の用途では、硬化材ペーストと基材ペーストとの混練物であるアルジネート硬化性組成物(印象材)を調製してから口腔内での印象採取までに要する作業時間を確保し得るように、硬化時間を調整することができる。また、乳頭パックの用途では、家畜の乳頭に塗布するまでの作業時間を確保し得るように、硬化時間を調整することができる。
【0058】
ゲル化調整剤としては、公知のゲル化調整剤を制限なく使用することができる。例えば、代表的なゲル化調整剤は、
a)リン酸三ナトリウム、リン酸三カリウム、ピロリン酸ナトリウム、トリポリリン
酸ナトリウム等のアルカリ金属を含むリン酸塩、
b)蓚酸ナトリウム、蓚酸カリウム等のアルカリ金属を含む蓚酸塩、
c)炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリ金属を含む炭酸塩、
などであり、こえらは、1種単独或いは2種類以上の組み合わせで使用される。
【0059】
ゲル化調整剤の配合量は、他の配合成分や要求される硬化時間等に応じて適宜選択できるが、一般的には、アルギン酸塩100質量部当り、1〜30質量部、特に3〜15質量部の範囲内がより好ましい。ゲル化調整剤の配合量を上記範囲内とすることにより、硬化体(印象型や乳頭パック)形成までの作業時間に略対応させて硬化時間を調整することが容易となり、しかも硬化不良を有効に防止することができる。
【0060】
また、充填剤は、硬化物の物性を調整するために使用される。
このような充填剤としては、珪藻土、タルク等の粘度鉱物が代表的であるが、シリカ、アルミナ等の酸化物も用いることができる。充填剤の配合量は特に制限されるものではないが、アルギン酸塩100質量部当り50〜2000質量部の範囲内が好ましく、100〜1000質量部の範囲内がより好ましい。
【0061】
また、印象材の用途において、硬化体の強度調節、印象採取時や石膏模型製造時の石膏模型の表面荒れを防ぐ観点からは、フッ化チタンカリウム、ケイフッ化カリウム等の無機フッ素化合物や、酸化マグネシウム、酸化亜鉛等の金属酸化物、アミノ酸/ホルムアルデヒド縮合体等のアミノ酸化合物を使用することができる。また、これらの添加剤は、乳頭パックの用途においても、硬化体の強度調節のために使用することができる。
このような添加剤も、基材ペースト及び硬化材ペーストの何れにも配合することができる。
【0062】
また、硬化材ペーストと基材ペーストとを混合・練和した際、粘度の変化速度の制御を容易とするために、不飽和カルボン酸重合体を配合することが好ましい。また、香料、着色料、pH調整剤、抗菌剤、防腐剤等から選択されるいずれか1種または複数種の添加剤を必要に応じて配合することができる。
さらに、上記の添加剤以外にも、香料、着色料、抗菌剤、防腐剤、pH調整剤等を適宜配合することができる。
これらの添加剤もまた、硬化材ペースト及び基材ペーストの何れにも配合することができる。
【0063】
上述した硬化材ペースト及び基材ペーストは、それぞれ、ペースト製造に利用できる公知の攪拌混合機を用いて製造することができる。このような撹拌混合機としては、例えば、ボールミルのような回転容器型混合混練機;リボンミキサー、コニーダー、インターナルミキサー、スクリューニーダー、ヘンシェルミキサー、万能ミキサー、レーディゲミキサー、バタフライミキサー等の水平軸または垂直軸を有する固定容器型の混合混練機;を利用することができる。
【0064】
<アルジネート硬化性組成物の調製>
本発明において、上述した硬化材ペーストと基材ペーストとは手動で混練されるが、かかる混練は使用直前に行われ、混練により調製されたアルジネート硬化性組成物が硬化するまでの所定時間内に所定の部位に施され、印象材や乳頭パックとしての用途に適用される。
【0065】
従って、上記の硬化材ペースト及び基材ペーストは、それぞれ別個の容器に収容され、アルジネート硬化性組成物調製用キットして販売され、使用されることとなる。
【0066】
例えば、上記の硬化材ペースト及び基材ペーストは、容器に収容されたままの状態で手動による混練に供するために、
図1に示される構造のシリンダーカートリッジが使用される。
即ち、
図1において、全体として10で示すシリンダーカートリッジは、前述した基材ペーストが充填される第1の押出シリンダー部1と、硬化材ペーストが充填される第2の押出シリンダー部3とからなり、これらシリンダー部1,3は、並列して一体に形成されている。
【0067】
上記のシリンダーカートリッジ10において、第1の押出シリンダー部1及び第2の押出シリンダー部3には、それぞれ、蓋体チップ1a,3aが嵌め込まれており、これらの蓋体チップ1a,3aは、第1の押出シリンダー部1及び第2の押出シリンダー部3の内部をスライドし得るように装着されている。また、第1の押出シリンダー部1及び第2の押出シリンダー部3の先端部分には、それぞれ、吐出口1b,3bが形成されており、これらの吐出口1b,3bは、着脱自在に設けられているキャップ5によって閉じられている。
即ち、キャップ5を取り外し、蓋体チップ1a,3aを内部に押し込むことにより、第1の押出シリンダー部1に充填された基材ペースト及び第2の押出シリンダー部3に充填された硬化材ペーストは、吐出口1b,3bから押し出されることとなる。
【0068】
図1から理解されるように、第1の押出シリンダー部1と第2の押出シリンダー部3とは、同じ高さh(軸方向長さ)に設定されており、それらの内径D1、D3は、基材ペーストと硬化材ペーストとの混合比(容積比)に応じた比率に設定されている。換言すると、蓋体チップ1a,3aを同時に且つ同じ量だけスライドさせると、常に、この容積比に相当する内径比(D1/D3)で基材ペーストと硬化材ペーストとが吐出口1b,3bから押し出されることとなる。従って、この容積比(D1/D3に相当)で基材ペーストと硬化材ペーストが混合されたときに、適正な組成のアルジネート硬化性組成物が調製されるように、基材ペースト及び硬化材ペーストの組成が設定されることとなる。
【0069】
尚、
図1の例では、基材ペーストが充填される第1の押出シリンダー部1の内径D1が、硬化材ペーストが充填される第2の押出シリンダー部3の内径D3よりも大きく設定されているが、硬化材ペースト中の硫酸カルシウム(A)の量や基材ペースト中のアルギン酸塩(D)の量によっては、第1の押出シリンダー部1の内径D1が、第2の押出シリンダー部3の内径D3よりも小さく設定されることもあるし、内径D1と内径D3とが同一に設定されることも可能である。
但し、一般的には、硬化材ペーストの比重は、基材ペーストの比重よりも高くなる為、基材ペーストが充填される第1の押出シリンダー部1の内径D1を、第2の押出シリンダー部3の内径D3よりも大きく設定しておくことが、基材ペーストと硬化材ペーストを効率良く混練する観点から好ましく、特に内径比(容積比)D1/D3を2.0〜5.0となる程度に設定し、これに応じて、基材ペーストや硬化材ペーストの組成を設定しておくことが好ましい。
【0070】
また、第1の押出シリンダー部1に充填されている基材ペーストと第2の押出シリンダー部3内に充填されている硬化材ペーストとの混練には、
図2に示す構造の混練押出ノズル20が使用される。
即ち、この混練押出ノズル20は、例えば特開2010−521384号等にも開示されている公知の構造を有するものであり、基台13と基台13の中心部分から直立している螺旋軸15とを備えており、さらに、螺旋軸15を覆うように細長い中空管17が設けられている。この中空管17は、その根元部分で基台13に嵌合固定されている。
一方、基台13には、2つの連通孔13a,13bが形成されており、この連通孔13a,13bは、それぞれ、押出シリンダー部1の吐出口1b及び押出シリンダー部3の吐出口3bに嵌め込まれ、これにより、押し出しシリンダー1,3の内部は、螺旋軸15が存在している中空管17の内部に連通することとなる。
【0071】
即ち、螺旋軸15が存在する中空管17の内部には、押出シリンダー部1の吐出口1bから基材ペーストが供給され、押出シリンダー部3の吐出口3bからは硬化材ペーストが供給され、この中空管17の内部で混練され、中空管17の先端からアルジネート硬化性組成物として押し出されることとなる。
【0072】
上記の説明から理解されるように、第1の押出シリンダー部1からの基材ペーストの押し出しは蓋体チップ1aのスライド移動により行われ、第2の押出シリンダー部3からの硬化材ペーストの押し出しは蓋体チップ3aのスライド移動により行われる。本発明においては、これら蓋体チップ1a,3aのスライド移動は、電力を使用せずに、手動で行うのであるが、蓋体チップ1a,3aのスライド移動は、完全に同期して行われ、その移動速度は同じでなければならない。
このために、本発明においては、基材ペーストと硬化材ペーストとの混練には、
図3に示す構造を有しており且つ手動で作動する二股プランジャ30が使用される。
【0073】
この二股プランジャ30は、プラスチック製であり、第1のシリンダー部1の内部に挿入されて蓋体チップ1aを押し込むための板状の第1のプランジャ部21と、第2のシリンダー部3の内部に挿入されて蓋体チップ3aを押し込むための板状の第2のプランジャ部23とを有しており、第1のプランジャ部21と第2のプランジャ部23とが連結されている基部25には、この二股プランジャ30のハンドリング性を高め且つ樹脂目付量を低減させるための開口27が形成されている。
また、第1のプランジャ部21及び第2のプランジャ部23の先端部には、それぞれ、蓋体チップ1a及び蓋体チップ3aに対応するように、ほぼ同型の押圧チップ21a,23aが形成されている。即ち、押圧チップ21a,23aが、それぞれ、押出シリンダー部1の蓋体チップ1a及び押出シリンダー部3の蓋体チップ3aに面接し、二股プランジャ30(第1のプランジャ部21及び第2のプランジャ部23)による蓋体チップ1a,3aの押圧を効率よく行うことができるようになっている。
【0074】
さらに、上記の第1のプランジャ部21と第2のプランジャ部23の一方側の面には、それぞれ、同一ピッチでラチェット爪29が形成されており、これにより、これらプランジャ部21,23による蓋体チップ1a,3aの押し込み量を一定に制御できるようになっている。
【0075】
このような二股プランジャ30は、例えば、特許第4916440号等によりそれ自体公知の手動ミキシングガンに装着され、かかるミキシングガンに前述したシリンダーカートリッジ10が装着された構造の手動押出混練器を使用し、第1のシリンダー部1に充填された基材ペーストと第2のシリンダー部3に充填された硬化材ペーストとの混練が行われる。
【0076】
図4には、手動ミキシングガン40に前述したシリンダーカートリッジ10が装着された手動押出混練器の概略側面図が示されている。
即ち、全体として50で示されている手動押出混練器が備えている手動ミキシングガン40には、その機枠41に、上述した二股プランジャ30がスライド可能に設けられていると共に、この二股プランジャ30に形成されているラチェット爪29と係合するギヤ(図示せず)を備え且つスプリングコイル(図示せず)により賦勢されたトリガ43が機枠41に枢着されている。
さらに、手動ミキシングガン40の機枠41には、キャップ5が外され、混練押出ノズル20が装着されたシリンダーカートリッジ10が装着されている。
【0077】
即ち、このような構造の手動押出混練器50では、手動ミキシングガン40のトリガ43を指で引くことにより、二股プランジャ30がトリガ43のワンショット分だけ移動し、第1のプランジャ部21が第1の押出シリンダー部1内に押し込まれ、蓋体チップ1aをシリンダー部1内に押し込むことにより、この内部に充填されている基材ペーストが吐出口1bから混練押出ノズル20内に吐出されると同時に、第2のプランジャ部23は第2の押出シリンダー部3内に押し込まれ、蓋体チップ3aがシリンダー部3内に押し込まれ、この内部に充填されている硬化材ペーストが吐出口3bから混練押出ノズル20内に吐出されることとなる。この場合、トリガ43のワンショットにより、蓋体チップ1aがシリンダー部1内に押し込まれる距離と蓋体チップ3aがシリンダー部3内に押し込まれる距離とは常に同じである。
従って、常に、一定の容積比(内径比D1/D3に相当)で基材ペーストと硬化材ペーストとは、混練押出ノズル20内に吐出され、この内部で混練されて、アルジネート硬化性組成物として、混練押出ノズル20の先端から所定の容器内に押し出され、得られた硬化性組成物は、硬化するまでの間に(一般的には1〜10分、特に2〜8分程度)、所定の部位に施され或いは型取りが行われることとなる。
例えば、押し出されたアルジネート硬化性組成物を印象材として用いる場合には、この混練物(アルジネート硬化性組成物)を専用のトレーに盛りつけ、トレーに盛りつけられた混練物を歯牙等の目的物に圧接することで該混練物に印象を採取する。その後、採取された印象を有する混練物が硬化し、この硬化物を基に石膏模型を作製する等の後工程が実施される。
一方、上記組成物を乳頭パックに適用する場合には、これを、浸漬法、刷毛塗り法、噴霧法などにより家畜の乳頭に塗布し、硬化させて硬化皮膜を形成すればよい。
これにより、牛やヤギ等の搾乳用家畜について、乳頭からの乳房炎などへの感染を有効に防止することができる。
【0078】
本発明では、前述した組成を有している結果として高いチキソトロピー性を有する硬化材ペーストが第2の押出シリンダー部3内に充填されているため、上記のような手動押出混練器50(手動ミキシングガン40)により手動で混練を行うことが可能となっている。
上記のような手動押出混練器50或いは手動ミキシングガン40は、電力を使用せず、ポンプのような重い装置も使用することなく、手動で作動できるため、携帯が容易であり、しかも電源のない場所でも使用することができる。さらには、電力を使用していないことから、環境の悪い場所で使用した場合にも故障などを生じる恐れはない。
従って、このような手動押出混練器50を使用して実行される本発明の方法は、歯科分野においては在宅での印象材の使用に適しており、さらに、乳頭パックとして、畜舎内での使用に適している。
【0079】
尚、上述した本発明を実施するにあたっては、基材ペーストや硬化材ペーストが充填されており且つキャップ5で封止されているシリンダーカートリッジ10及び必要により混練溶融押出ノズル20を、アルジネート硬化性組成物調製用キットとして販売し、シリンダーカートリッジ10が装着されるミキシングガン40は、別途に販売することが好適である。即ち、アルジネート硬化性組成物を使用する使用者は、ミキシングガンを一度購入しておけば、後は、アルジネート硬化性組成物調製用キットのみを購入することにより、本発明方法を実施することができる。
【実施例】
【0080】
本発明の優れた効果を、以下の実験例により説明する。
尚、以下の実験に用いたシリンダーカートリッジ等の仕様は次のとおりである。
第1のシリンダー部1;
高さh:110mm
内径D1:24mm
第2のシリンダー部3;
高さh:110mm
内径D3:12mm
第1のシリンダー部1と第2のシリンダー部3との容積比(D1/D3):4/1
混練押出ノズル20;
長さ:82mm
【0081】
また、以下の実験例において、実験Iは歯科用印象材についての評価であり、実験IIは家畜用乳頭パックについての評価である。
【0082】
<原料の略称>
後述する実験例に使用されている各種原料の略称は以下の通りである。
1.アルギン酸塩;
Alg−K:
アルギン酸カリウム
(1%水溶液粘度(20℃) 600mPa・sec)
Alg−Na:
アルギン酸ナトリウム
(1%水溶液粘度(20℃) 120mPa・sec)
【0083】
2.ポリグリセリン脂肪酸エステル;
HGSE:
ヘキサグリセリントリステアリン酸エステル(HLB=2.5)
DGSE:
デカグリセリンペンタステアリン酸エステル(HLB=3.5)
DGISE:
デカグリセリンペンタイソステアリン酸エステル(HLB=3.5)
DGOE:
デカグリセリンペンタオレイン酸エステル(HLB=3.5)
DIGMOE:
ジグリセリンモノオレイン酸エステル(HLB=5.5)
DGMRE:(比較)
デカグリセリンモノラウリン酸エステル(HLB=15.5)
DGTOE:(比較)
デカグリセリントリオレイン酸エステル(HLB=7.0)
DGTSE:(比較)
デカグリセリントリステアリン酸エステル(HLB=7.5)
【0084】
3.難水溶性分散媒;
流動パラフィン
粘度(20℃) 150mPa・sec
水への溶解度 < 0.001mg/L(殆ど溶解しない)
沸点 450℃(1気圧)
SO:
シリコーンオイル(ポリジメチルシロキサン)
粘度(20℃) 300mPa・sec
水への溶解度 < 0.001mg/L(殆ど溶解しない)
沸点 250℃(1気圧)
【0085】
4.非還元糖;
Cdex−α:
α−シクロデキストリン
Cdex−β:
β−シクロデキストリン
【0086】
5.その他;
P3Na:
リン酸三ナトリウム
FTK:
フッ化チタンカリウム
MT−10:
粒径0.02μmの非晶質シリカ(メチルトリクロロシラン処理物)
SG:
ステアリン酸グリセリル(HLB=3.0)
MSPG:
モノステアリン酸プロピレングリコール(HLB=3.5)
【0087】
<測定或いは評価方法>
以下の実験例で調製されたサンプルについての各種物性の測定或いは評価は、以下の方法により行った。
【0088】
(1)硬化材ペースト粘度;
ガラス製ビーカー(容量:300ml)に、調製後の硬化材ペースト(約240ml)を投入した後、このビーカーを、温度を25℃に設定したインキュベーター内に1時間程度放置した。
その後、インキュベーター内にて回転式粘度計(RION社製 ビスコテスター VT−04F)を用いて硬化材ペーストの粘度(初期粘度V、Poise)を測定した。
次に、調製した硬化材ペーストをアルミ製のペーストパックに充填し、ペースト取り出し口を下方に向けて直立させた状態で、温度を25℃に設定したインキュベーター内に保管した。所定の期間(1年後、2年後)が経過した時に、ペースト取り出し口から、硬化材ペーストを取り出し(約240ml)、上記と同様の方法にて、硬化材ペーストの粘度(保管後の粘度V1、V2、Poise)を測定した。
【0089】
(2)チキソトロピー指数TI;
コーンプレート型粘度計(BOHLIN社製CSレオメーター CVO120HR)に、調整後の硬化材ペーストを適量載せ、25℃で保持しながら粘度の測定を開始し、せん断速度0.1/sでの測定開始から60秒後の粘度(η
A)を測定した。次に、同様の方法で、せん断速度1.0/sでの測定開始から60秒後の粘度(η
B)を測定した。なお、粘度の測定条件は、コーンの直径が2cm、コーンの傾斜角度は1°とした。粘度を下記式(1)に代入し、チキソトロピー指数(TI)を算出した。
TI=η
A/η
B (1)
【0090】
(3)ペースト手動押出性;
前述したシリンダーカートリッジの第1のシリンダー部1に基材ペーストを、第2の押出シリンダー部3に硬化材ペーストをそれぞれ満杯に充填した。このシリンダーカートリッジを二股プランジャが装着されている(株)ミックスパック社製手動ミキシングガンに装着し、シリンダーカートリッジに装着されているキャップを取り外し、混練押出ノズルを装着した状態でミキシングガンのトリガを数回引いて、混練押出ノズル内にペーストが満たされる状態にした。次のワンショットで混練押出ノズルから吐出されるペースト量、及びトリガを引く際の抵抗により、手動押出性を評価した。
評価基準は、次のとおりである。
〇:ペーストの吐出量が1.0g以上であり、且つトリガを引くときの抵抗もほと
んどなかった。
△:ペーストの吐出量は1.0g以上であるが、トリガを引くときに若干抵抗を感
じた。
×:ペーストの吐出量は1.0gよりもかなり少なく、トリガを引くとき、抵抗が
大き過ぎて、完全にトリガを引くことができなかった。
【0091】
(4)印象精度(細線再現性);
上記のミキシングガンに装着されたシリンダーカートリッジ10に混練押出ノズルを装着して手動混練押出器とした。
ミキシングガン40のトリガを引いて混練押出ノズルから排出された基材ペーストと硬化材ペーストとの混練物(アルジネート硬化性組成物)について、JIST6513に記載された方法に準拠して細線再現性試験を行った。
すなわち、幅50μm及び幅20μmの細線が施された細線再現性試験用金型に印象材ペーストを盛り付け、35℃水中に6分放置後、印象材硬化体を撤去し、印象面に石膏を盛り付け、100%湿度中に1時間保持し、硬化した石膏の印象面に、幅50μm及び幅20μmの細線が再現されているかどうか顕微鏡を用いて観察し、以下に示す評価基準により評価した。
細線再現性評価基準;
◎:幅20μmの細線が途切れる事無く、再現されている。
○:幅50μmの細線が途切れる事無く、再現されている。
△:幅50μmの細線が確認されるが、ところどころ途切れている。
×:幅50μmの細線が確認できない。
【0092】
<実験I>
(実施例1)
硫酸カルシウム(A)として、25gの硫酸カルシウム無水塩(無水石膏)及び10gの硫酸カルシウム二水塩(二水石膏)、ポリグリセリン脂肪酸エステル(B)として、3.5gのHGSE、難水溶性分散媒(C)として、20gの流動パラフィンを量りとり、小型混練器(アイコー産業社製アイコーミキサー)を用いて1時間混練し、硬化材ペーストを調製した。
得られた硬化材ペーストに関して、粘度、チキソトロピー指数TIの評価を行った。
【0093】
また、アルギン酸塩(D)として、10gのAlg−K、水(E)として、180gの蒸留水を量りとり、小型混練器を用いて1時間攪拌し、基材ペーストを調製した。
この硬化材ペースト及び上記基材ペースト、前述した手動混練押出器を用いて、ペースト手動押出性、印象精度(細線再現性)の評価を行った。
【0094】
(実施例2〜11)
硬化材ペースト或いは基材ペーストの組成を、表1に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして硬化材ペースト、基材ペースト及び混練物を調製し、各種の測定を行った。
【0095】
(比較例1〜6)
硬化材ペーストの組成を、表2に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして硬化材ペースト、基材ペースト及び混練物を調製し、各種の測定を行った。
その結果を表3及び表4に示す。
【0096】
【表1】
【0097】
【表2】
【0098】
【表3】
【0099】
【表4】
【0100】
実施例1〜11の硬化材ペーストは、本発明の要件すべてを満足するものであるが、何れの硬化材ペーストにおいても、粘度が非常に高いにもかかわらず、ペーストのチキソトロピー性が高く(チキソトロピー指数が1.5以上)、良好なペースト手動押出性を有しており、手動押出混練器を用いて基材ペーストと混練する事で良好な印象精度を得る事でできた。
これに対して比較例1は、HLBが2.0〜6.0であるポリグリセリン脂肪酸エステルが配合されていない。このため、硬化材ペーストは十分なチキソトロピー性を得る事ができず、ペースト手動押出性が大幅に低下しており、吐出されるペーストは基材ペーストリッチとなっており、十分に硬化しない為、印象精度も大幅に低下している。
また、比較例2〜4の硬化材ペーストにはポリグリセリンエステルが配合されているが、何れもHLBが2.0〜6.0の範囲外である。このため、何れの場合においても、十分なチキソトロピー性を得る事ができず、ペースト手動押出性が大幅に低下しており、吐出されるペーストは基材ペーストリッチとなっており、十分に硬化しない為、印象精度も大幅に低下している。
比較例5〜6は、ポリグリセリン脂肪酸エステル以外の界面活性剤を用いた場合であるが、何れの場合においても、十分なチキソトロピー性を得る事ができず、ペースト手動押出性が大幅に低下しており、吐出されるペーストは基材ペーストリッチとなっており、十分に硬化しない為、印象精度も大幅に低下している。
【0101】
<実験II>
以下の実験は、本発明の硬化材ペーストから得られるアルジネート硬化性組成物を乳頭パックに適用したときの効果を示すために行われたものである。
この実験において、硬化材ペーストの粘度、チキソトロピー指数及び硬化性ペーストの手動押出性について、実験Iと同様に行い、その他の測定及び評価は、以下の方法により行った。
【0102】
(1)過硬化性評価(目視評価、寸法歪)
硬化材ペースト及び基材ペーストを、前述した手動混練押出器を用いて混練し、混合ペースト(硬化性組成物)を調製する。
この混合ペーストを、アクリル板上に載せたテフロン(登録商標)製モールドに充填し、さらに、充填された混合ペーストの上面にアクリル板を圧接し、クリップを用いて圧接したアクリル板を固定し、3分放置後、硬化物(ゲル化物)をモールドから撤去することにより、サンプル片(横:57mm、縦:19mm、高さ:3mm)を作製した。
サンプル片作製直後に、サンプル片の寸法(横、縦、高さ)を、測定顕微鏡(オリンパス社製「STM6」)を用いて計測し、サンプル片の初期体積(V1/mm
3)を算出した。
【0103】
次に、サンプル片を、乳液(搾りたての生牛乳)をしみ込ませた布で包みこみ、25℃インキュベーター内に保管後、1日経過後にサンプル片を取り出し、表面の状態を下記評価基準に従って目視評価した。
過硬化性目視評価基準;
○:しわやひび割れが全く見られず、初期の状態と見分けがつかない状態。
△:しわが確認でき、初期の状態と異なっている。
×:無数のしわが確認でき、ひび割れも確認され、明らかに初期の状態と異なってい
る。
【0104】
また、サンプル片の寸法(横、縦、高さ)を初期と同様の方法にて計測し、1日経過後の体積(V2/mm
3)を算出した。下記式により、寸法歪を算出した。
寸法歪(%)=(V1−V2)/V1×100
サンプル片を再び、乳液(搾りたての生牛乳)をしみ込ませた布で包みこみ、25℃インキュベーター内に保管し、1日経過毎に、同様の方法にて、過硬化性(目視評価、寸法歪)評価を行った。
【0105】
(実施例1)
アルギン酸塩(D)として100gのAlg−K、水(E)として1500gの蒸留水、非還元糖(F)として600gのトレハロース、その他成分として珪藻土295gを量りとり、小型混練器(アイコー産業社製アイコーミキサー)を用いて1時間練和し、基材ペーストを調製した。
一方、下記処方により各成分を、上記小型練和器を用いて1時間練和し、硬化材ペーストを調製した。
硬化材ペースト処方;
硫酸カルシウム(A):400gの無水石膏
ポリグリセリン脂肪酸エステル(B):40gのDGSE
難水溶性分散媒(C):200gの流動P1
その他の成分:
60gのMgO
40gのFTiK
40gのZnO
8gのP3Na
55gの珪藻土
30gのMT−10
【0106】
上記の硬化材ペースト及び基材ペーストを、前述した手動混練押出器を用いて混練し、乳頭パック用硬化性組成物を調製し、この硬化性組成物について、過硬化性評価を行った。
基材ペースト及び硬化材ペーストの組成については表5に示し、硬化材ペーストのチキソトロピー指数TI及び混練押出性、並びに硬化組成物の評価結果は表6に示した。
(実施例2〜6)
硬化材ペースト或いは基材ペーストの組成を、表5に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして硬化材ペースト、基材ペースト及び混練物を調製し、各種の測定を行った。その結果を表6に示す。
【0107】
【表5】
【0108】
【表6】
【0109】
本発明の硬化材ペーストを、前述した手動混練押出器を用いて基材ペーストと混練して得られるこれら実施例における乳頭パック用硬化性組成物では、カルシウムイオンを含む水溶液と接触した際の硬化体表面の過硬化が抑制されており、4日以上良好な状態が保たれていた。また、硬化体の弾性も、5日以上良好な状態が保たれていた。