【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記特許文献に記載の連れ回り防止工具では、使用に際して、3組のネジ機構を構成する各基端ボルトの先端部をソケット外周面へ接当させ、各先端ボルトの先端部をプロテクター内周面へ接当させる作業が必要で、使用後においては、逆の作業により取り外す必要があり、使用に際して作業性が悪いという問題があった。
また、各基端ボルトのソケット外周面への接当による摩擦力と各先端ボルトのプロテクター内周面への接当による摩擦力のみでソケットの連れ回りを防止するものであるから、例えば、ソケットからプラグを取り外す場合、ソケットに対してプラグが錆び付いていると、摩擦力により十分に対抗することができず、ソケットが一緒に回転してしまう可能性も高い。
それ以上に、ソケットの外周部に各先端ボルトの先端部を接当させるためのプロテクター内周面またはそれに相当する他物の存在が不可欠であり、例えば、ソケットの外周部に多数の配管類が存在するような状況下での狭所では使用不可能となり、この点に改良の余地があった。
【0005】
本発明は、このような従来の問題点に着目したもので、その目的は、筒状部材の外周部にプロテクターなどが存在しないような狭所においても使用可能で、しかも、作業性がよく、筒状部材の連れ回りを確実に防止することのできる連れ回り防止工具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための本発明は、管に螺着された筒状部材と、当該筒状部材に対して同心状に螺装される螺着部材を対象とし、前記筒状部材に対する前記螺着部材の装脱時に前記筒状部材の連れ回りを防止する連れ回り防止工具であって、
その特徴構成は、前記筒状部材の外周に外嵌する外嵌部材が、その内周面に前記筒状部材の外周面から径方向外方に突設された突起に嵌合する嵌合部を備え、かつ、前記筒状部材の径方向に開閉自在な一対の外嵌部材片により構成されるとともに、前記筒状部材への外嵌状態で前記一対の外嵌部材片を連結して固定する固定手段を備え、前記外嵌部材に連設の握り部材が、前記筒状部材の軸心方向に延出されている点にある。
【0007】
上記特徴構成によれば、管に螺着された筒状部材の外周に外嵌する外嵌部材が、その内周面に筒状部材の外周面から径方向外方に突設された突起に嵌合する嵌合部を備え、かつ、筒状部材の径方向に開閉自在な一対の外嵌部材片により構成されて、筒状部材への外嵌状態で一対の外嵌部材片を連結して固定する固定手段を備えているので、一対の外嵌部材片を開いた状態で、その内周面の嵌合部が筒状部材の外周面から突設された突起に嵌合するようにセットし、固定手段によって一対の外嵌部材片を連結固定するだけの比較的簡単な作業により、たとえ狭所内であっても、筒状部材に対して一対の外嵌部材片からなる外嵌部材を外嵌固定することができる。
特に、筒状部材に外嵌する外嵌部材が、筒状部材の径方向に開閉自在な一対の外嵌部材片により構成されるので、外嵌部材を外嵌するべき筒状部材よりも螺着部材側に、当該筒状部材よりも大きな径を有する部材、例えば、螺着部材がバルブの開閉つまみ等のような筒状部材よりも大きな径を有する部材の場合や、筒状部材に回転操作具が設けられていて、当該回転操作具が径方向の外方へ突出しているような場合であっても、外嵌部材を構成する一対の外嵌部材片を開状態にして筒状部材に外嵌することにより、筒状部材の所望箇所に外嵌部材を確実に外嵌固定することができる。
そして、その外嵌部材に連設の握り部材が、筒状部材の軸心方向に延出されているので、当該握り部材が螺着部材側へ延出するように配置し、例えば、一方の手(左手)で握り部材の遊端部側を握って筒状部材の回転を阻止した状態で、他方の手(右手)で回転操作具を操作して螺着部材を回転操作することにより、筒状部材の連れ回りを確実に防止して螺着部材を回転操作することができる。
その結果、本発明の連れ回り防止工具によれば、筒状部材の外周部にプロテクターなどが存在しないような狭所においても使用可能で、しかも、作業性がよく、筒状部材の連れ回りを確実に防止することができる。
【0008】
本発明による連れ回り防止工具の更なる特徴構成は、前記一対の外嵌部材片が、前記筒状部材の軸心に沿う枢支軸により開閉自在に枢着され、前記筒状部材の軸心方向視において、当該筒状部材の軸心を中心として径方向における前記枢支軸の反対側に前記固定手段が設けられている点にある。
【0009】
上記特徴構成によれば、一対の外嵌部材片が、筒状部材の軸心に沿う枢支軸により開閉自在に枢着されているので、一対の外嵌部材片からなる外嵌部材の筒状部材への外嵌固定作業や取り外し作業がより一層簡単となり、しかも、前記固定手段が、筒状部材の軸心方向視において、当該筒状部材の軸心を中心として径方向における枢支軸の反対側に設けられているので、外嵌部材の筒状部材への外嵌固定は強固なものとなり、筒状部材の連れ回りをより確実に防止することができる。
【0010】
本発明による連れ回り防止工具の更なる特徴構成は、前記固定手段が、前記一対の外嵌部材片にそれぞれ設けられた貫通孔と、それら両貫通孔にわたって挿脱自在なピン部材からなる点にある。
【0011】
上記特徴構成によれば、固定手段が、一対の外嵌部材片にそれぞれ設けられた貫通孔と、それら両貫通孔にわたって挿脱自在なピン部材からなるので、両貫通孔へのピン部材の挿脱による簡単な作業で、筒状部材に対する外嵌部材の外嵌固定作業や取り外し作業を行うことができる。
【0012】
本発明による連れ回り防止工具の更なる特徴構成は、前記ピン部材が、軸方向においてピン外径が縮小するテーパー状ピン部材である点にある。
【0013】
上記特徴構成によれば、両貫通孔に挿脱するピン部材が、軸方向においてピン外径が縮小するテーパー状ピン部材であるから、両貫通孔にわたってテーパー状ピン部材を挿入する際、先鋭な方から挿入することで両貫通孔への挿入を容易に行うことができ、筒状部材の外径に寸法誤差等があり、外嵌部材の内周面にぴったりと収まらない場合でも、テーパー部分が貫通孔内面と接触することにより確実に固定できる。また、筒状部材の外周面に泥や錆などが付着していても、テーパー状ピン部材を強力に押し込むことにより、泥や錆などを押し潰して両貫通孔の軸心を一致させることができ、外嵌部材の筒状部材への外嵌固定を確実に行うことができる。
【0014】
本発明による連れ回り防止工具の更なる特徴構成は、前記突起が前記筒状部材の外周面に複数個設けられ、当該複数個の突起に嵌合可能な前記嵌合部が、前記外嵌部材の内周面に前記突起の個数以上設けられている点にある。
【0015】
上記特徴構成によれば、筒状部材の外周面から突設の突起が複数個設けられ、当該複数個の突起に嵌合可能な嵌合部が、外嵌部材の内周面に前記突起の個数以上設けられているので、筒状部材に対する外嵌部材の外嵌固定位置、言い換えると、握り部材の位置を選択することができ、たとえ筒状部材の外周部に障害物があっても、その障害物を避けて握り部材を所望の箇所に位置させることができる。
【0016】
本発明による連れ回り防止工具の更なる特徴構成は、前記握り部材が、前記筒状部材の軸心方向に延出するシャフト部材と、当該シャフト部材の遊端部側からシャフト部材に直交して延出する握り部からなる点にある。
【0017】
上記特徴構成によれば、握り部材が、筒状部材の軸心方向に延出するシャフト部材と、当該シャフト部材の遊端部側からシャフト部材に直交して延出する握り部からなるので、シャフト部材に直交する握り部を握ることで力が入れやすくなり、強い力で筒状部材の連れ回りを確実に防止することができる。
【0018】
本発明による連れ回り防止工具の更なる特徴構成は、前記外嵌部材と握り部材とが、互いに分離および連結自在に構成されている点にある。
【0019】
上記特徴構成によれば、外嵌部材と握り部材とを互いに分離することで、連れ回り防止工具の持ち運びや保管が容易となる。