(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6113057
(24)【登録日】2017年3月24日
(45)【発行日】2017年4月12日
(54)【発明の名称】パネル体
(51)【国際特許分類】
E06B 3/70 20060101AFI20170403BHJP
【FI】
E06B3/70 Z
【請求項の数】1
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2013-233225(P2013-233225)
(22)【出願日】2013年11月11日
(65)【公開番号】特開2015-94103(P2015-94103A)
(43)【公開日】2015年5月18日
【審査請求日】2016年5月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000175560
【氏名又は名称】三協立山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090206
【弁理士】
【氏名又は名称】宮田 信道
(74)【代理人】
【識別番号】100168228
【弁理士】
【氏名又は名称】倉谷 達則
(72)【発明者】
【氏名】太田 早紀
(72)【発明者】
【氏名】殿山 美里
(72)【発明者】
【氏名】山田 幸太
(72)【発明者】
【氏名】倉持 敬太
(72)【発明者】
【氏名】森村 典子
【審査官】
津熊 哲朗
(56)【参考文献】
【文献】
特開2010−196357(JP,A)
【文献】
特開2006−009375(JP,A)
【文献】
特開平10−184210(JP,A)
【文献】
特開2012−172510(JP,A)
【文献】
特開2004−052271(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06B 3/54−3/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
板体と、透光性パネルと、キャップを備え、板体に複数の窓を形成してあり、各窓に、透光性パネルを嵌め込んであって、かつ板体の表裏両側からキャップを取り付けてあり、表裏のキャップは、同形状であって、中心からずれた位置に開口部を有しており、開口面積が外側に向けて広がっていることを特徴とするパネル体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、玄関ドアなどとして用いられるパネル体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、非特許文献1に示すように、複数の小窓を設けてあり、この小窓に嵌め込んだ透光性パネルを透過して光が取り込まれるドアがある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】「玄関ドア総合カタログ2013−2014(STJ0802B)」、三協立山株式会社、2013年9月、p.224
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のドアにおいては、防犯上の観点から、より小窓の透光性パネルを小さくすることが求められるとともに、奥行き感がある印象のものにしたいという要望があった。
【0005】
本発明は、上記事情を鑑みたものであり、窓の透光性パネルが小さく、かつ奥行き感があるパネル体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、板体と、透光性パネルと、キャップを備え、板体に複数の窓を形成してあり、各窓に、透光性パネルを嵌め込んであって、かつ板体の表裏両側からキャップを取り付けてあり、表裏のキャップは、同形状であって、中心からずれた位置に開口部を有しており、開口面積が外側に向けて広がっていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、キャップの開口面積が外側に向けて広がっているので、遠近法の視覚効果により、パネル体自体が薄くても、奥行き感のある印象のものになるとともに、室外側から効率よく光を取り込み、また室内側に拡散させて、窓の透光性パネルをより小さくしても、室内を明るくすることができる。また、キャップが中心からずれた位置に開口部を有しており、キャップを回転させて取り付けることで開口部の位置が変化するので、パネル体の意匠を好みに変化させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】(a)はパネル体の室外側正面図、(b)はパネル体の室内側正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。このパネル体は、種々の建材として用いられるものであるが、ここでは玄関ドアとして用いられる場合の例を示す。
図1及び
図2に示すように、パネル体は、長方形の板体1からなる。板体1は、断熱パネル11の表側面(室外側面)と裏側面(室内側面)に鋼板12を取り付けて形成したものである。室外側から見て(
図1(a))、右側が吊元側であって、上下方向中間の左側端部に取手13を設けてあり、取手13の上下に錠14を設けてある。そして、板体1には、九つの窓4を設けてある。窓4は、何れも正方形で、大きさは大小二種類であり、各窓4の中心の上下方向位置及び左右方向位置が、相互に一致しないように配置してある。
【0010】
各窓4には、透光性パネル2を嵌め込んである。透光性パネル2は、ガラス板からなる表側パネル21及び裏側パネル22を、スペーサ23を挟んで二枚重ねにした複層ガラスである。
図3に示すように、板体1の断熱パネル11の窓4に対応する位置を、窓4よりも大きくくり抜いてあり、そこに透光性パネル2を嵌め込むことで、板体1の内部に透光性パネル2を設けてある。ここで、窓4同士が近接している箇所(
図3における左上部及び上下方向中央部)においては、断熱パネル11が二つの窓4に跨ってくり抜いてあり、一枚の透光性パネル2を二つの窓4に跨るように嵌め込んである。透光性パネル2は、断熱パネル11より薄く、透光性パネル2の表側(室外側)及び裏側(室内側)に、断熱パネル11と同じ素材からなる補助パネル15を取り付けて、断熱パネル11のくり抜き部を埋めてあり、透光性パネル2と表裏の補助パネル15とで、断熱パネル11と同じ厚さとなっている。そして、表裏の補助パネル15及び鋼板12に正方形の孔を開けて、窓4を形成してある。
【0011】
また、透光性パネル2の表側パネル21と裏側パネル22の間には、着色層5を設けてある。着色層5は、着色された透光性のフィルムを、表側パネル21の室内側面に接着して形成してある。着色層5の色は、グリーン、ピンク、グレーの三種類であり、
図1及び
図3において、ハッチングの種類の違いにより色の違いを表現している(クロス:グリーン、左下がり二重斜線:ピンク、右下がり三重斜線:グレー)。そして、
図3に示すように、透光性パネル2が二つの窓4に跨っている箇所(左上部及び上下方向中央部)においては、一枚の表側パネル21の上下に色の異なる二枚のフィルムを張って、上下の各窓4において着色層5の色を異ならせてある。なお、本実施形態においては、フィルムの大きさが表側パネル21の大きさと略同じであって、透光性パネル2の略全面に着色層5を形成してあるが、窓4以外の部分は外側から見えないので、着色層5は少なくとも窓4の位置に形成してあればよい。
【0012】
さらに、
図1に示すように、各窓4には、板体1の表裏両側からキャップ3を取り付けてある。キャップ3は、窓4の大きさに合わせて大小二種類あるが、形状は略同じであり、一つの窓4の表裏のキャップ3は、同形状である。
図4に示すように、キャップ3は、正方形の枠体32を有していて、枠体32の一方の開口端(
図4における上端)に、外周側に向けて広がる鍔部33を形成してある。また、枠体32の内周側の二辺に、傾斜面34を形成してある。傾斜面34は、幅(窓4に取り付けた状態における見付寸法)が枠体32の内寸幅の略1/3であって、キャップ3の厚さ(窓4に取り付けた状態における見込寸法)よりも大きい。そして、傾斜面34の外周側端は鍔部33に連続しており、外周側から内周側に向けて、他方の開口端(
図4における下端)まで傾斜している。これらの枠体32、鍔部33及び傾斜面34は、樹脂製で一体成形されたものである。さらに、枠体32の内周側の、傾斜面34が存在しない部分が開口部31となる。開口部31は、正方形で、一辺の長さが枠体32の内寸幅の略2/3となる。また、傾斜面34が枠体32の二辺に形成してあるので、開口部31はキャップ3の中心からずれた位置に形成される。このように形成したキャップは、その開口面積が、他方の開口端(
図4における下端)においては開口部31の大きさとなり、一方の開口端(
図4における上端)においては枠体32の内寸の大きさとなっており、開口面積が他方の開口端から一方の開口端に向けて(下側から上側に向けて)広がった形状となっている。そして、このキャップ3を取り付ける際には、窓4に枠体32を嵌め込み、鍔部33を窓4の周縁部に係止させる。窓4とキャップ3は正方形であるから、
図1に示すように、キャップ3を90度回転させて、四通りの向きで取り付けることができるが、一つの窓4の表裏のキャップ3は、対称な向きとなるようにしてある。そして、このようにキャップ3を取り付けることにより、キャップ3の開口面積は、パネル体の内部から外側に向けて広がることになる。
【0013】
このように構成したパネル体によれば、各窓の透光性パネルの色が異なり、透過光の色も異なるので、意匠性が良好である。そして、一枚の透光性パネルが複数の窓に跨っている箇所では、各窓において透光性パネルの着色層の色を異ならせることにより、一枚の透光性パネルで複数の色の異なる窓を形成できる。よって、窓ごとに異なる色の透光性パネルを取り付ける場合と比べて、透光性パネルの枚数を少なくすることができるので、構造が単純で安価であり、組み立ても容易である。
【0014】
さらに、キャップの開口面積が外側に向けて広がっており、特にキャップが中心からずれた位置に開口部を有していて、複数の傾斜面を設けてあり、この傾斜面の見付寸法がキャップの見込寸法よりも大きいので、パネル体の正面から窓を見た際に、遠近法の視覚効果によりキャップの外縁部に対して内縁部が実際よりも奥側に位置するように見える。よって、パネル体自体が薄くても奥行き感のある印象のものになり、またパネル体が実際よりも厚く見え、頑丈な印象のものになる。そして、同じくキャップの開口面積が外側に向けて広がっていることにより、室外側から効率よく光を取り込み、また室内側に拡散させて、窓の透光性パネルをより小さくしても、室内を明るくすることができる。また、キャップが中心からずれた位置に開口部を有しており、キャップを回転させて取り付けることで開口部の位置が変化する。正方形のキャップであれば開口部の位置は四通りであり、窓ごとに開口部の位置を変えて、パネル体の意匠を好みに変化させることができる。なお、キャップは一体成形されたものであって、窓に嵌め込むだけで取り付けられるので、施工性がよい。
【0015】
本発明は、上記の実施形態に限定されない。たとえば、窓の数や配置及び着色層の色は、採光性や意匠性を考慮して自在に設定できる。その際、窓を大小設けることで、透光部の大小と着色層の色の濃淡を組み合わせて、視線の抜けや光の明暗を調整できる。また、着色層は、フィルムを貼って形成するもののほか、表側パネルと裏側パネルの間に着色された透光性のパネルを設けたものや、表側パネル又は裏側パネルの内側面を塗装したものであってもよい。さらに、着色層は窓から視認できる部分の全体を単一色で覆ったものに限られず、窓から視認できる部分の一部のみに着色層を設けたり、一つの窓に複数色の着色層を設けたりして、何らかの模様を表したものであってもよい。また、窓及びキャップの形状は、正方形に限られず、多角形や円形など、回転させることで向きを変えて取り付けることができるものであれば、どのようなものであってもよい。
【符号の説明】
【0016】
1 板体
2 透光性パネル
3 キャップ
4 窓
5 着色層
21 表側パネル
22 裏側パネル
31 開口部