特許第6113067号(P6113067)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6113067
(24)【登録日】2017年3月24日
(45)【発行日】2017年4月12日
(54)【発明の名称】電動車両の充電安全装置
(51)【国際特許分類】
   B60L 3/00 20060101AFI20170403BHJP
   B60L 11/18 20060101ALI20170403BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20170403BHJP
   H02H 7/18 20060101ALI20170403BHJP
【FI】
   B60L3/00 S
   B60L11/18 C
   H02J7/00 S
   H02H7/18
【請求項の数】3
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2013-271474(P2013-271474)
(22)【出願日】2013年12月27日
(65)【公開番号】特開2015-126666(P2015-126666A)
(43)【公開日】2015年7月6日
【審査請求日】2015年11月11日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 発明装置を備える車両の貸渡し
(73)【特許権者】
【識別番号】303002158
【氏名又は名称】三菱ふそうトラック・バス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000151276
【氏名又は名称】株式会社東京アールアンドデー
(74)【代理人】
【識別番号】100090022
【弁理士】
【氏名又は名称】長門 侃二
(72)【発明者】
【氏名】牛田 秀幸
(72)【発明者】
【氏名】井上 喜博
(72)【発明者】
【氏名】岸 繁男
【審査官】 大内 俊彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−205755(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/132434(WO,A1)
【文献】 特開2011−45175(JP,A)
【文献】 特開2011−35975(JP,A)
【文献】 特開2012−39689(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60L 3/00− 3/12
B60L 11/00−11/18
H02J 7/00
H02H 7/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部電源から充電器を介して充電可能な蓄電装置と、
前記蓄電装置を含む第一回路と、
前記充電器及びPTCヒータを含む高電圧機器が接続されている第二回路と、
前記第一回路と前記第二回路とを結ぶ電路の断接を行うメインコンタクタと、
前記第一回路内にて前記蓄電装置と前記メインコンタクタとを結ぶ電路の断接を行う蓄電コンタクタと、
前記第二回路内にて前記充電器と前記PTCヒータとを接続する電路の断接を行うヒータコンタクタと、
前記充電器から前記蓄電装置への充電状態を監視して、充電異常を検出したときに前記ヒータコンタクタを接続状態とする安全制御部と、
を備える電動車両の充電安全装置。
【請求項2】
前記安全制御部は、前記第二回路の電圧を検出する電圧センサにより検出された電圧が所定電圧以上となった場合に充電異常と判定する請求項1記載の電動車両の充電安全装置。
【請求項3】
前記安全制御部は、前記メインコンタクタ又は前記蓄電コンタクタが接続状態にならないことを検出した場合に充電異常と判定する請求項1又は2記載の電動車両の充電安全装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大容量の電力を充電可能な蓄電装置を備えた電動車両の充電安全装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境問題等を考慮して、モータのみで走行可能な電気自動車や、エンジンとモータとを駆動源とするハイブリッド電気自動車等の電動車両の開発が進んでいる。このような電動車両には、大容量のバッテリやキャパシタ等の蓄電装置が搭載されており、安全に大電力を取り扱うための電源管理がなされている。
【0003】
例えば、特許文献1には、車両の衝突時に、衝突時に駆動すべき機器へ安定的に電源を供給するとともに、平滑コンデンサに蓄積された残留電荷を速やかに放電すべく高圧系補機を駆動する電力変換装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−10406号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1では、車両の衝突による異常発生に対する安全性を確保しているが、近年、外部電源からの電力を蓄電装置に充電可能な電動車両が開発されており、充電時における異常発生に対する安全性も確保する必要がある。
例えば、電動車両において外部電源と接続される充電器と蓄電装置との間のコンタクタ(電磁接触器)が遮断される等の不具合が生じると、充電電力の受け入れ先がなくなり、充電器と同回路内にある機器のみに充電器の出力電圧が印加されることとなる。このときに充電器に過大な電圧の発生を防止する安全機能が備わっていないと、受け入れ先のない充電電力が過大な電圧を発生させ、機器の破損を招くおそれがある。
【0006】
本発明はこのような問題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、充電異常時における機器の破損を防ぎ、充電時の安全性を向上させることのできる電動車両の充電安全装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した目的を達成するために、第1の発明に係る電動車両の充電安全装置は、外部電源から充電器を介して充電可能な蓄電装置と、前記蓄電装置を含む第一回路と、前記充電器及びPTCヒータを含む高電圧機器が接続されている第二回路と、前記第一回路と前記第二回路とを結ぶ電路の断接を行うメインコンタクタと、前記第一回路内にて前記蓄電装置と前記メインコンタクタとを結ぶ電路の断接を行う蓄電コンタクタと、前記第二回路内にて前記充電器と前記PTCヒータとを接続する電路の断接を行うヒータコンタクタと、前記充電器から前記蓄電装置への充電状態を監視して、充電異常を検出したときに前記ヒータコンタクタを接続状態とする安全制御部と、を備える。
【0008】
また、第2の発明に係る電動車両の充電安全装置では、前記第1の発明において、前記安全制御部は、前記第二回路の電圧を検出する電圧センサにより検出された電圧が所定電圧以上となった場合に充電異常と判定する。
また、第3の発明に係る電動車両の充電安全装置では、前記第1及び第2の発明において、前記安全制御部は、前記メインコンタクタ又は前記蓄電コンタクタが接続状態にならないことを検出した場合に充電異常と判定する。
【発明の効果】
【0009】
上記手段を用いる本発明によれば、充電異常の発生時に、外部電源からの電力をPTCヒータに供給することにより他の機器へ過大な電圧が印加されることがなくなることから、充電異常時における機器の破損を防ぎ、充電時の安全性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態に係る電動車両の充電安全装置の概略構成を示したブロック図である。
図2】(a)正常充電時の電力の流れ及び(b)安全制御時の電力の流れを示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づき説明する。
図1は本発明の一実施形態における電動車両の充電安全装置の概略構成を示したブロック図であり、同図に基づき説明する。なお、図1においては、高電圧ラインを実線で示し、信号ラインを一点鎖線で示す。
本実施形態における電動車両には蓄電装置であるバッテリ1が搭載されている。当該バッテリ1は例えば12kWhの高充電容量を有するバッテリである。図1ではバッテリ1は単体として示しているが、複数のバッテリを直列又は並列に接続して備えていてもよい。そして、当該バッテリ1を電力源とする各種機器がジャンクションボックス2を介してバッテリ1と接続されている。
【0012】
詳しくは、本実施形態における電動車両は駆動源である走行用モータ3を備えており、当該走行用モータ3のみで走行可能な電気自動車である。走行用モータ3は、インバータ4を介してジャンクションボックス2に接続されている。
また、ジャンクションボックス2には、電動車両の暖房のためのPTC(Positive Temperature Coefficient)ヒータ5が接続されている。当該PTCヒータ5は電力が供給されることで発熱する特性を有し、当該特性による熱により水を加熱する。そして、PTCヒータ5により加熱された温水は、図示しないウォータポンプにより循環することで車内の暖房に使用される。本実施形態のPTCヒータ5は、例えば8kWの消費電力を有している。図1ではPTCヒータ5は単体として示しているが、複数備えていてもよい。
【0013】
さらに、例えばDC−DCコンバータ、クーラーコンプレッサ、パワーステアリングインバータ等の高電圧補機類6がジャンクションボックス2に接続されている。なお、これらの高電圧補機類6の消費電力はいずれもPTCヒータ5の消費電力よりも低い。
【0014】
また、ジャンクションボックス2には、外部電源と接続されバッテリ1の充電を行う充電器7が接続されている。外部電源は例えば家庭用の100V、200Vの普通充電や、急速充電、非接触充電等がある。本実施形態では1つの充電器7を示しているが、充電器は外部電源に対応して複数設けてもよい。
【0015】
ここで、ジャンクションボックス2に接続されているバッテリ1側の回路を第一回路10とし、他方の各種機器が接続されている回路を第二回路11として以下説明する。
ジャンクションボックス2内には電路の断接を行う各種コンタクタ(電磁接触器)が設けられており、図1に示す本実施形態では、第一回路10と第二回路11とを結ぶ電路にメインコンタクタ20が設けられている。第二回路11は当該メインコンタクタ20から各種機器へと電路が分岐しており、当該メインコンタクタ20の断接によりバッテリ1と各種機器との間の電力の供給及び遮断が行われる。
【0016】
また、第一回路10内においてメインコンタクタ20からバッテリ1への電路の途中には蓄電コンタクタ23が設けられている。当該蓄電コンタクタ23の断接によりバッテリ1と各種機器との間の電力の供給及び遮断が行われる。なお、蓄電コンタクタ23が設けられる位置は特に限定されず、図1に示すようにバッテリ1内部に設けられてもよいし、バッテリ1外部に設けられていてもよい(図示せず)。
【0017】
また、第二回路11内においてメインコンタクタ20からPTCヒータ5への電路の途中にはヒータコンタクタ21が設けられている。当該ヒータコンタクタ21は、PTCヒータ5への電力の供給及び遮断を行う。
さらにメインコンタクタ20から各種機器へ分岐するまでの電路には、第二回路11内の電圧を検出する電圧センサ22が設けられている。
【0018】
また、ジャンクションボックス2には各コンタクタの断接を制御する安全制御部30が接続されている。安全制御部30は、電圧センサ22と接続されており、第二回路11内の電圧を監視し、充電時に異常を検出した際には安全制御を実行する。
【0019】
詳しくは、図2を参照すると(a)正常充電時の電力の流れ及び(b)安全制御時の電力の流れを示す説明図が示されており、以下同図に基づき安全制御部30が実行する充電異常時の安全制御について説明する。
図2(a)に示すように、正常充電時においては、メインコンタクタ20を接続した状態で、外部電源を充電器7に接続することで、充電器7からメインコンタクタ20と蓄電コンタクタ23を経由してバッテリ1に電力が供給されて充電が行われる。
【0020】
一方、充電開始時又は充電中にメインコンタクタ20又は蓄電コンタクタ23が遮断される不具合が発生した場合、安全制御部30はメインコンタクタ20又は蓄電コンタクタ23からの不具合を検出したり、電圧センサ22により第二回路11内の電圧が所定電圧以上となったことを検出したりすることで、充電異常の判定を行う。そして、安全制御部30は充電異常が発生したと判定したときには、ヒータコンタクタ21を接続状態に切り替えるよう制御する。これにより図2(b)に示すように、外部電源からの電力は、充電器7からヒータコンタクタ21を経由してPTCヒータ5に供給される。
【0021】
PTCヒータ5は他の高電圧補機類6よりも高い消費電力を有していることから、外部電源からの電力は速やかに消費される。
また、PTCヒータ5は電力を熱に変換するため、安全に電力を消費することができる。
【0022】
このように本実施形態における電動車両の充電安全装置は、充電異常の発生時に、外部電源からの電力をPTCヒータ5に供給することにより他の機器へ過大な電圧が供給されることがなくなることから、充電異常時における機器の破損を防ぎ、充電時の安全性を向上させることができる。
【0023】
以上で本発明に係る電動車両の充電安全装置の実施形態についての説明を終えるが、実施形態は上記実施形態に限られるものではない。
例えば上記実施形態の電動車両では蓄電装置としてバッテリ1を備えているが、蓄電装置はバッテリに限らず、例えばキャパシタであってもよい。
【0024】
また、上記実施形態では、走行用モータ3のみで走行する電気自動車に本発明を適用しているが、例えばエンジンとモータとで走行するハイブリッド電気自動車にも同じように本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0025】
1 バッテリ(蓄電装置)
2 ジャンクションボックス
3 走行用モータ
4 インバータ
5 PTCヒータ
6 高電圧補機類
7 充電器
10 第一回路
11 第二回路
20 メインコンタクタ
21 ヒータコンタクタ
22 電圧センサ
23 蓄電コンタクタ
30 安全制御部
図1
図2