(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
少なくとも1個の細長い支持部材と複数のコロニー形成部材とを含む尾索類コロニー形成装置であって、各コロニー形成部材が、前記支持部材に連結され、少なくとも1個の実質的に平滑な連続した平面のコロニー形成表面を含み、前記コロニー形成表面が板又は円盤状である、装置。
前記ステップ(a)(i)が、前記ホヤから抽出された1種類以上の多糖を酵素又は酸加水分解に供して1種類以上の単糖を含む加水分解物を形成する前に、前記ホヤから1種類以上の多糖を抽出するステップを含む、請求項10に記載の方法。
前記ステップ(a)(i)が、前記ホヤを酵素又は酸加水分解に供することを含み、前記ホヤを酵素又は酸加水分解に供する前にそれを50%を超える乾燥含有量に乾燥させるステップを更に含む、請求項10に記載の方法。
前記(b)ステップのエステル交換前に、前記ホヤから抽出された前記脂質/脂肪酸がエステル化プロセスに供され、それによって前記脂肪酸が酸触媒の存在下でアルコールと反応して脂肪酸アルキルエステルを形成する、請求項10に記載の方法。
前記(b)ステップのエステル交換前に、前記ホヤがエステル化プロセスに供され、それによって前記ホヤ中に存在する前記脂肪酸が酸触媒の存在下でアルコールと反応して脂肪酸アルキルエステルを形成する、請求項10に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の第1の態様は、アルコール及びバイオディーゼルから選択される1種類以上の生物燃料の製造のための尾索類又は尾索類から得られる抽出物の使用に関する。
【0015】
尾索類
尾索類は、ほとんどの海洋生息環境において世界的に見られる。尾索類は、セルロースを合成する唯一の動物である。セルロースは、動物バイオマスのかなりの割合を占める(参考文献1,2)。尾索類は、高い潜在的成長能を有する。この特徴は、その年の大量発生に寄与することができ、かなりのセルロース資源をもたらすことができる。そのため、尾索類は、再生可能エネルギー資源として特に適している。
【0016】
尾索動物亜門には3つの綱、すなわちホヤ綱、タリア綱及びオタマボヤ綱がある(参考文献3)。本発明においては、尾索類は、ホヤ綱、タリア綱又はオタマボヤ綱から選択される。好ましくは、尾索類はホヤである。ホヤ(ascidians)は、ホヤ(sea squirts)としても一般に知られている。ホヤの多くの種は、自由生活漂泳性幼生期を有する日和見性であり、海洋環境における新しい表面、例えば、船体表面に定着すると変態を遂げる。その日和見挙動のために、それらは、新しい浸水構造体の表面にコロニーを形成する最初の動物であることが多い。したがって、それらは収集が容易である。
【0017】
ホヤは多数の種が存在し、例えば、Aplidium glabrum、Ascidia sydneiensis、Ascidia mentula、Ascidiella aspersa、Botrylloides violaceus、Botryllus schlloseri、Ciona savignyi、Didemnum candidum、Didemnum vexillum、Diplosoma listerianum、Eusynstyela tincta、Herdmania pallida、Lissoclinum fragile、Microcosmus exasperatus、Microcosmus squamiger、Molgula manhattensis、Perophora japonica、Phallusia nigra、Styela canopus、Styela clava、Trididemnum solidus及びCiona intestinalisである。ホヤの中でも、C.intestinalisは、スカンジナビア水域における最も優勢な種である。それは、主に進化発生生物学におけるモデル生物体としてのその使用のために、最も研究された種でもある(参考文献4)。C.intestinalisは、雌雄同体であり、水柱に自由に放卵し、そこで繁殖が起こる。幼生は、自由に泳ぎ、摂食せず、任意の適切な表面に付着し、温度に応じて1〜5日以内に変態を起こす(参考文献5,6)。セルロースは、幼生期と成体期の両方の外皮中で生成される。幼生においては、それは、主に保護機能を果たすが、変態中の事象の順番を制御するのにも関与し、幼形及び成体形をもたらす(参考文献7,8)。成体においては、セルロースは、外皮の構成成分である。外皮は、動物全体を包み、体の残りの部分と協調して成長する。セルロースは、外皮と外套を連結する外皮索(tunic chord)中にも存在する(参考文献9)。スカンジナビア海岸に沿っては、幼生の定着が年間を通して連続的に起こる。本発明の好ましい一実施形態においては、尾索類はC.intestinalisである。
【0018】
本明細書では、尾索類とは、尾索類本体の全体又は一部を指す。
【0019】
本明細書では、尾索類から得られる抽出物とは、前記尾索類から得られるある種の物質が豊富な材料を指す。尾索類から得られる抽出物としては、1種類以上の単糖、多糖、例えばセルロース、及び/又は脂質/脂肪酸が豊富である、尾索類を処理することによって得られる材料が挙げられる。
【0020】
本発明においては、尾索類又は尾索類から得られる抽出物は、本明細書に記載の生物燃料の製造のためのバイオマス又は原料として使用される。
【0021】
本明細書では「尾索類」という用語は、「1種類以上の尾索類」又は「複数の尾索類」で置き換えることができる。
【0022】
生物燃料
本明細書では、生物燃料は、アルコール及びバイオディーゼルから選択される、好ましくはエタノール及び脂肪酸アルキルエステルから選択される生物燃料である。
【0023】
アルコール
一態様においては、本発明は、アルコール製造のための尾索類又は尾索類から得られる抽出物の使用に関する。好ましくは、アルコールは、C
1〜C
4アルコール、すなわちメタノール、エタノール、プロパノール又はブタノールである。より好ましくは、アルコールはエタノールである。
【0024】
本研究は、尾索類C.intestinalisの場合、C
6糖8.8重量%(セルロース6.7重量%、マンノースとガラクトース2.1重量%)及びC
5糖0.4重量%の収率を見いだした。セルロースは、酵素又は酸加水分解、続いて発酵によってエタノールに転化することができる(参考文献10〜15)。本研究は、C.intestinalis由来のセルロースが木材セルロースよりも結晶性であり、分子サイズが小さいことを見いだした。したがって、このセルロースは、酸又は酵素加水分解によってエタノール発酵用のグルコースに、より容易に加水分解される。その結果、このセルロースからのエタノール製造は、木材からよりも簡単で安くなる。
【0025】
この種からのエタノール製造の可能性については、以下のように推定することができる。参考文献16から、長さ100mmのC.intestinalisは乾燥重量が0.6gであることが知られている。C.intestinalisは、海底1m
2当たり3000個体に達する密度で見られることが多い。ホヤのこの量は、1.8kg/m
2の重さである(3,000個体/m
2×0.0006kg/個体=ホヤ1.8kg/m
2)。C
6糖8.8重量%の収率では、ホヤ1.8kgはC
6糖0.16kgになる(0.088×1.8kg=C
6糖0.16kg)。C
6糖1kg当たりエタノール0.64lの収量とすると、C
6糖0.16kgはエタノール0.10リットルになる(0.16×0.64=エタノール0.10リットル)。したがって、エタノール収量0.10リットル/m
2又は1,000リットル/ヘクタール海底となる。
【0026】
上記計算は、1回の収穫に基づく。C.intestinalisは少なくとも年2回収穫することが可能であるので(参考文献17)、年間エタノール収量は海底1ヘクタール当たり少なくとも2,000リットルである可能性がある。この計算は、例えば海底の、2次元養殖に対してなされた。ホヤは、海水柱において3次元で養殖することができるので、海底/海面1ヘクタール当たりの潜在的エタノール収量ははるかに大きい。ホヤは、有光層に限定されず、したがって60又は70mもの深さまで高い成長速度を得ることができる。長さ20m、直径0.4m(表面積25.12m
2/棒)であり、1ヘクタール全体に1m間隔で配置された(すなわち棒10,000本)、水中の棒にホヤが成長する状況を考える。これは、海面1ヘクタール当たりのホヤ成長の表面積が251,200m
2になる。これは、上記計算に基づくと、海面1ヘクタール当たりエタノール約50,900リットルの年間生産量となり得る。これは、海面1ヘクタールがエタノール少なくとも約50,900リットルを毎年生成する可能性を有することを意味する。C
6糖に加え、C
5糖0.4重量%の収率がホヤC.intestinalisから可能である。C
5糖は、発酵させてエタノールにすることができ、C
6糖から得られるエタノールにエタノール4.5%が追加される(すなわち、上記モデルに基づくと、年間生産量1.045×50,900=エタノール53,190リットルになる)。
【0027】
本研究によれば、この収率は上記推定よりもはるかに大きくなり得る。本研究によれば、C.intestinalisは、6か月の成長後に約31g(乾燥重量1.37g)に成長することができる。さらに、本明細書に記載された板状の複数のコロニー形成表面を支持する細長い部材を使用すると、9690個体/m
2の密度を得ることができる。3次元養殖モデルにおいては、20メートルのロープの長さ1メートル当たり3枚の板とし、板の表面積を0.2m
2とすると、海中の細長い部材1本当たりの表面積が12m
2になり、細長い部材が1m間隔で配置される場合には120,000m
2/ヘクタールになる。年2回の収穫とすると、1ヘクタール当たりの年間エタノール収量は、上と同じ計算によって約180,000リットル(9690個体/m
2×0.00137kg×0.088 C
6糖×0.64リットルエタノール/kg糖×120,000m
2×年2回の収穫=エタノール180,000リットル)、又はC
5糖の寄与を含めて毎年188,000リットルになる。
【0028】
下表において、尾索類からの潜在的エタノール収量を、エタノール製造用バイオマスとして従来使用されている作物からの年間収量と比較することができる。
【0030】
したがって、尾索類から製造される海面1ヘクタール当たりのエタノール量は、耕地1ヘクタール当たりの陸生作物から製造されるエタノール量を大きく超える可能性があり、ある場合には1桁超える可能性がある。
【0031】
好ましくは、本発明は、アルコール製造用バイオマスとしての尾索類の使用に関する。一態様においては、本発明は、尾索類からアルコールを製造する方法であって、前記方法が、
(i)前記尾索類を酵素又は酸加水分解に供して、1種類以上の単糖を含む加水分解物を形成すること、及び
(ii)前記1種類以上の単糖を発酵させてアルコールを形成すること
を含む、方法に関する。
【0032】
本発明のこの態様においては、尾索類自体を酵素又は酸加水分解に供し、尾索類からの多糖又は単糖の抽出は不要である。
【0033】
尾索類は、尾索類本体全体の形態とすることができ、又は尾索類本体の一部の形態、好ましくは、尾索類本体の残りの部分から単離された外皮とすることができる。尾索類は、例えば、新たに収穫することができ、又は凍結貯蔵品から解凍することができる。好ましくは、尾索類を洗浄して海塩を除去する。好ましくは、この洗浄は、湿った尾索類、すなわち乾燥されていない尾索類に対して実施され、好ましくは、洗浄は脱イオン又は淡水で実施される。これによって、有益には、得られる尾索類材料の灰分が減少する。
【0034】
尾索類を酵素又は酸加水分解に供する前に、尾索類は好ましくは乾燥される。好ましくは、本発明は、尾索類からアルコールを製造する方法であって、前記方法が、
(i)前記尾索類を乾燥させること、
(ii)前記乾燥尾索類を酵素又は酸加水分解に供して、1種類以上の単糖を含む加水分解物を形成すること、及び
(iii)前記1種類以上の単糖を発酵させてアルコールを形成すること
を含む、方法に関する。
【0035】
乾燥は、当該技術分野で公知の任意の手段によって実施することができる。好ましくは、尾索類は、50%を超え、より好ましくは70%を超え、より好ましくは80%を超え、より好ましくは85%を超え、更により好ましくは90%を超える乾燥含有量(本明細書では乾燥度とも称する)に乾燥される。本明細書では乾燥含有量は、尾索類材料の乾燥重量の尺度である。これは、乾燥器加熱によって105℃で終夜(試料のグラム基準で)、又は赤外線加熱によって105℃で恒量に達するまで(試料の300mg基準で)、尾索類材料を乾燥させた後に計算され、乾燥前の湿った尾索類材料の重量に対する得られた乾燥材料の重量百分率である。尾索類は、それを圧縮して水の一部を除去し、それを加熱された床の上に置いて、例えば約39%乾燥度まで乾燥させることによって、乾燥させることができる。次いで、尾索類を、例えば130℃から150℃に加熱された、乾燥機に移すことができ、そこで例えば約89%乾燥度まで乾燥させる。あるいは、尾索類は、例えば、100℃を超える温度で秒単位の時間尺度で、凍結乾燥によって乾燥させることができ、又は噴霧乾燥によって乾燥させることができる。乾燥尾索類の使用は、任意の後続の酵素加水分解に対する阻害効果を最小限にする利点がある。一実施形態においては、乾燥尾索類材料は、例えば粉砕によって、機械的に破壊することができる。
【0036】
本発明のこの態様においては、乾燥尾索類材料を酵素又は酸加水分解に供して、1種類以上の単糖を含む加水分解物を形成することができる。次いで、加水分解物を発酵させて、アルコールを製造することができる。
【0037】
セルロースに加えて、尾索類は、マンノース、ガラクトースなどのC
6糖も含み、キシロース、アラビノースなどの1種類以上のC
5糖も含み得る。乾燥尾索類は、セルロース、別の多糖などの多糖、又はグルコースで構成される糖タンパク質、マンノース、ガラクトースなどの別のC
6糖、並びにキシロース、アラビノースなどの1種類以上のC
5糖を含む。
【0038】
尾索類が酵素又は酸加水分解に供されて、1種類以上の単糖を含む加水分解物を形成するときには、加水分解物は、尾索類中に既に存在する単糖、並びにセルロース及び別の成分の加水分解によって生成された単糖を含み得る。
【0039】
本発明で利用される酵素及び酸加水分解とそれに続く発酵の各方法は、限定されず、当業者に知られており、以下の刊行物に記載された任意の方法を含む。
【0040】
リー・J(Li J),レンホルム・H(Lennholm H),ヘンリクソン・G(Henriksson G),ゲラーステッド・G(Gellerstedt G)(2000a).「エタノール製造のためのリグノセルロース物質のバイオリファイナリ.I.炭水化物の定量化(Bio−refinery of lignocellulosic materials for ethanol production.I.Quantification of carbohydrates)」,第13回アルコール燃料国際シンポジウム(International Symposium on Alcohol Fuels)(ISAF XIII)(ストックホルム,2000年7月3〜6日),予稿集(第I巻),6号、
リー・J(Li J),レンホルム・H(Lennholm H),ヘンリクソン・G(Henriksson G),ゲラーステッド・G(Gellerstedt G)(2000b).「エタノール製造のためのリグノセルロース物質のバイオリファイナリ.II.蒸気爆砕の基礎と戦略的設計(Bio−refinery of lignocellulosic materials for ethanol production.II.Fundaments and strategic design of steam explosion)」,第1回エネルギー・産業用バイオマスの世界会議および展示会(World Conference and Exhibition on Biomass for Energy and Industry)(セビーリャ,2000年6月5〜9日),予稿集,767−770、
リー・J(Li J),レンホルム・H(Lennholm H),ヘンリクソン・G(Henriksson G),ゲラーステッド・G(Gellerstedt G)(2001).「エタノール製造のためのリグノセルロース物質のバイオリファイナリ.III.カッパ価測定による蒸気爆砕の評価(Bio−refinery of lignocellulosic materials for ethanol production.III.Evaluation of steam explosion by kappa number determination)」,第7回リグニンおよび他の木材成分の化学に関するブラジルシンポジウム(Brazilian Symposium on the Chemistry of Lignins and Other Wood Components),(ベロオリゾンテ,2001年9月3〜5日),予稿集(口頭発表),423−430、
リー・J(Li J),レンホルム・H(Lennholm H),ヘンリクソン・G(Henriksson G),ゲラーステッド・G(Gellerstedt G)(2002).「エタノール製造のためのリグノセルロース物質のバイオリファイナリ.IV.プロセスの経済的実現可能の改善のための高価値副産物の製造(Bio−refinery of lignocellulosic materials for ethanol production.IV.Manufacture of high value by−products for improvement of process economic feasibility)」,第2回パルプ化および製紙の新技術に関する国際シンポジウム(International Symposium on Emerging Technologies of Pulping & Papermaking),(広州,2002年10月9〜11日),予稿集,82−90、
リン・Y(Lin Y),タナカ・S(Tanaka S)(2006).「バイオマス資源からのエタノール発酵:現在の状況と前途(Ethanol fermentation from biomass resources:current state and prospects)」.アプライド・マイクロバイオロジー・アンド・バイオテクノロジー(Applied Microbiology and Biotechnology)69(6):627−642、及び
ハーン−へゲルダル・B(Hahn−Haegerdal B),ガルベ・M(Galbe M),ゴルワ−グラウスルンド・MF(Gorwa−Grauslund MF),リデン・G(Liden G),ザッチ・G(Zacchi G)(2006).「バイオエタノール:今日の残りかすから明日の燃料(Bio−ethanol − the fuel of tomorrow from the residues of today)」.トレンズ・イン・バイオテクノロジー(Trends in Biotechnology)24(12):549−556。
【0041】
一実施形態においては、本発明の方法は、尾索類の酸加水分解を含む。好ましくは、硫酸、例えば72〜74%H
2SO
4などの濃硫酸が使用される。
【0042】
一実施形態においては、本発明の方法は、尾索類の酵素加水分解を含む。多糖を単糖に転化する酵素を含めて、1種類以上の酵素を使用することができる。好ましくは、1種類以上の酵素、例えばセルラーゼ及びグルコシダーゼは、セルロースをグルコースに転化する。
【0043】
好ましい一実施形態においては、加水分解物はグルコースを含み、これは、一般にパン酵母として知られるSaccharomyces cerevisae系統を使用した発酵によりエタノールになる。
【0044】
アルコール、好ましくはエタノールの回収は、アルコール、好ましくはエタノールを発酵ブロスの他の成分から分離する蒸留、及びアルコール、好ましくはエタノールから任意の残留水を除去する脱水によって、実施することができる。
【0045】
好ましくは、本発明は、アルコール製造用バイオマスとしての尾索類から得られる抽出物の使用に関する。好ましくは、本発明は、尾索類からアルコールを製造する方法であって、前記方法が、
(i)1種類以上の多糖を前記尾索類から抽出し、前記1種類以上の多糖を酵素又は酸加水分解に供して、1種類以上の単糖を含む加水分解物を形成すること、及び
(ii)前記1種類以上の単糖を発酵させてアルコールを形成すること
を含む、方法に関する。
【0046】
尾索類は、尾索類本体全体の形態とすることができ、又は尾索類本体の一部の形態、好ましくは、尾索類本体の残りの部分から単離された外皮とすることができる。尾索類は、例えば、新たに収穫することができ、又は凍結貯蔵品から解凍することができる。好ましくは、尾索類を洗浄して海塩を除去する。好ましくは、この洗浄は、湿った尾索類、すなわち乾燥されていない尾索類に対して実施され、好ましくは、洗浄は脱イオン又は真水で実施される。
【0047】
尾索類を酵素又は酸加水分解に供する前に、尾索類は好ましくは乾燥される。好ましくは、本発明は、尾索類からアルコールを製造する方法であって、前記方法が、
(i)前記尾索類を乾燥させること、
(ii)1種類以上の多糖を前記尾索類から抽出し、前記1種類以上の多糖を酵素又は酸加水分解に供して、1種類以上の単糖を含む加水分解物を形成すること、及び
(iii)前記1種類以上の単糖を発酵させてアルコールを形成すること
を含む、方法に関する。
【0048】
乾燥は、当該技術分野で公知の任意の手段によって実施することができる。好ましくは、尾索類は、50%を超え、より好ましくは70%を超え、より好ましくは80%を超え、より好ましくは85%を超え、更により好ましくは90%を超える乾燥含有量(本明細書では乾燥度とも称する)に乾燥される。尾索類は、それを圧縮して水の一部を除去し、それを加熱された床の上に置いて、例えば約39%乾燥度まで乾燥させることによって、乾燥させることができる。次いで、尾索類を、例えば130℃から150℃に加熱された、乾燥機に移すことができ、そこで例えば約89%素乾燥まで乾燥させる。あるいは、尾索類は、例えば、100℃を超える温度で秒単位の時間尺度で、凍結乾燥によって乾燥させることができ、又は噴霧乾燥によって乾燥させることができる。乾燥尾索類の使用は、任意の後続の酵素加水分解に対する阻害効果を最小限にする利点がある。一実施形態においては、乾燥尾索類材料は、例えば粉砕によって、機械的に破壊することができる。
【0049】
本発明のこの態様においては、1種類以上の多糖は、尾索類から抽出される。抽出方法は、限定されず、当業者に周知の任意の方法を含む。好ましくは、抽出は、1種類以上の多糖を分離することと一緒に、存在する任意のリグニン様構造体が破壊されるように乾燥尾索類を処理することを含む。好ましくは、前記1種類以上の多糖は、セルロースを含む。尾索類は、ヨンソク・ク(Young−Seok Koo)ら,「ホヤ外皮からの化学セルロースの調製と性質及びそれからの再生セルロース繊維(Preparation and Properties of Chemical Cellulose from Ascidan Tunic and Their Regenerated Cellulose Fibers)」,ジャーナル・オブ・アプライド・ポリマー・サイエンス(Journal of applied Polymer Science),第85巻,1634−1643(2002)に記載のものなどの手段によってセルロースが豊富なパルプに加工することができる。この参考文献においては、尾索類原料が乾燥され、ミルを使用して粉末にされる。粉末は、酸水溶液(H
2SO
4)で処理され、ろ過され、アセトン及び水で洗浄され、75℃で減圧乾燥される。次いで、試料は、アルカリ水溶液(NaOH/Na
2S)で処理され、前述と同様にろ過され、洗浄され、乾燥される。最後に、試料は、漂白剤(NaOCl水溶液)で処理され、前述と同様にろ過され、洗浄され、乾燥される。得られる試料は、セルロースが豊富である。
【0050】
本発明のこの態様の好ましい一実施形態においては、セルロースは、尾索類を乾燥ステップ、酸処理ステップ、アルカリ処理ステップ及び酸化/漂白ステップに供することによって尾索類から抽出される。酸処理ステップ、アルカリ処理ステップ及び酸化/漂白ステップの3つのステップは、例えば存在する任意のリグニン様構造体を破壊することによって、乾燥尾索類からのセルロースの抽出を容易にする処理法を構成する。この処理法後、固体多糖生成物をろ過又は遠心分離によって分離することができる。次いで、多糖生成物を洗浄し、乾燥させることができる。乾燥ステップは上述したとおりである。酸処理ステップ、アルカリ処理ステップ及び酸化/漂白ステップを以下に更に記述する。
【0051】
酸処理ステップは、酸加水分解ステップである。乾燥試料を酸水溶液、例えば0.9wt%H
2SO
4で180℃で2時間処理する。得られた生成物をろ過し、洗浄し、例えば50℃で乾燥させる。
【0052】
アルカリ処理ステップは、アルカリ加水分解/クラフトパルプ化ステップである。酸処理ステップからの生成物をアルカリ水溶液、例えば9/3wt%NaOH/Na
2S溶液で180℃で2時間処理する。得られた生成物をろ過し、洗浄し、例えば50℃で乾燥させる。
【0053】
酸化/漂白ステップは、アルカリ処理ステップの生成物を漂白剤、例えば2.9wt%NaOCl溶液で75℃で1時間処理することを含む。得られた生成物をろ過し、洗浄し、例えば50℃で乾燥させる。
【0054】
セルロースが豊富な、尾索類からの抽出物が得られる。次いで、この抽出物を酵素又は酸加水分解に供して、1種類以上の単糖を含む加水分解物を形成することができる。アルコールを生成する加水分解物の発酵がこれに続く。本発明のこの態様において利用することができる酵素及び酸加水分解とその後に続く発酵及びアルコール回収の各ステップは、前述のとおりである。一実施形態においては、本発明の方法は、尾索類から抽出された1種類以上の多糖の酸加水分解を含む。好ましくは、硫酸が使用される。一実施形態においては、本発明の方法は、尾索類から抽出された1種類以上の多糖の酵素加水分解を含む。多糖を単糖に転化する酵素を含めて、1種類以上の酵素を使用することができる。好ましくは、1種類以上の酵素、例えばセルラーゼ及びグルコシダーゼは、セルロースをグルコースに転化する。
【0055】
本発明は、さらに、本明細書に記載された尾索類又は尾索類から得られる抽出物からアルコールを製造する方法を提供する。この方法は、前記尾索類を養殖する方法も含む。前記尾索類はホヤである。養殖方法は、前記尾索類の生育及び収穫を含み、本明細書に記載されたとおりとすることができる。
【0056】
バイオディーゼル
一態様においては、本発明は、バイオディーゼル製造のための尾索類又は尾索類から得られる抽出物の使用に関する。
【0057】
バイオディーゼルは、脂質からエステル交換によって製造することができる。バイオディーゼルの主成分は、脂肪酸アルキルエステル、特に脂肪酸メチル(又はエチル)エステルを含む。典型的には、バイオディーゼルの製造においては、脂質は、水酸化カリウム又はナトリウム及びメタノール(又はエタノール)と混合され、化学反応によって酸メチル(又はエチル)エステル及びグリセロールを生成する。
【0058】
本研究によれば、C.intestinalisは、総脂質含有量が3.2重量%である。上述した3次元養殖モデルを使用すると、エタノールに加えて海洋表面積1ヘクタール当たり動物脂質29,000リットルの収量になる。これらの動物脂質は、エステル交換又はアルコール分解によるバイオディーゼル製造の原料を与える(参考文献19)。長さ100mmのC.intestinalis0.6g(乾燥重量)及び海底1m
2当たり3000個体の密度に対する文献からの推定により、本発明者らは、バイオディーゼル収量0.058リットル/m
2(3,000個体/m
2×0.0006kg/個体×0.032=0.058リットル/m
2)又は580リットル/ヘクタールを得ることになる。この計算は、1回の収穫に基づく。C.intestinalisは少なくとも年2回収穫することが可能であるので、年間バイオディーゼル収量は海底1ヘクタール当たり少なくとも1,150リットルである可能性がある(年2回の収穫×580リットル/ヘクタール)。しかし、この計算は、例えば海底の、2次元養殖に対してなされる。ホヤは、海水柱において3次元で養殖することができるので、海底/海面1ヘクタール当たりの潜在的バイオディーゼル収量ははるかに大きい。長さ20m、直径0.4m(表面積25.12m
2/棒)であり、1ヘクタール全体に1m間隔で配置された(すなわち棒10,000本)、水中の棒にホヤが成長する状況を考える。これは、海面1ヘクタール当たりのホヤ成長の表面積が251,200m
2になる。これは、上記計算に基づくと、海洋表面積1ヘクタール当たりバイオディーゼル約29,000リットルの年間生産量となり得る。
【0059】
本研究によれば、この収率は上記推定よりもはるかに大きくなり得る。本研究によれば、C.intestinalisは、6か月の配置後に約31g(乾燥重量1.37g)に成長することができる。さらに、本明細書に記載された板状の複数のコロニー形成表面を支持する細長い部材を使用すると、9690個体/m
2の密度を得ることができる。3次元養殖モデルにおいては、20メートルのロープの長さ1メートル当たり3枚の板とし、板の表面積を0.2m
2とすると、海中の細長い部材1本当たりの表面積が12m
2になり、細長い部材が1m間隔で配置される場合には120,000m
2/ヘクタールになる。年2回の収穫とすると、1ヘクタール当たりの年間バイオディーゼル収量は、上と同じ計算によって約102,000リットル(9690個体/m
2×0.00137kg×0.032 脂質×120,000m
2×年2回の収穫=バイオディーゼル102,000リットル)になる。
【0060】
好ましくは、本発明は、バイオディーゼル製造用バイオマスとしての尾索類の使用に関する。一態様においては、本発明は、尾索類からバイオディーゼルを製造する方法であって、前記方法が、前記尾索類をエステル交換又はアルコール分解に供することを含む、方法に関する。この方法においては、尾索類中に存在する脂質は、エステル交換又はアルコール分解によってバイオディーゼルに転化される。本発明のこの態様においては、尾索類自体をエステル交換又はアルコール分解に供し、尾索類からの脂質/脂肪酸の抽出は不要である。
【0061】
尾索類は、尾索類本体全体の形態とすることができ、又は尾索類本体の残りの部分から単離された外皮などの尾索類本体の一部の形態とすることができる。尾索類は、例えば、新たに収穫することができ、又は凍結貯蔵品から解凍することができる。好ましくは、尾索類を洗浄して海塩を除去する。好ましくは、この洗浄は、湿った尾索類、すなわち乾燥されていない尾索類に対して実施され、好ましくは、洗浄は脱イオン又は真水で実施される。これによって、有益には、得られる尾索類材料の灰分が減少する。
【0062】
尾索類をエステル交換に供する前に、尾索類を好ましくは乾燥させる。好ましくは、本発明は、尾索類からバイオディーゼルを製造する方法であって、前記方法が、前記尾索類を乾燥させるステップ、及び前記乾燥尾索類をエステル交換又はアルコール分解に供するステップを含む、方法に関する。
【0063】
乾燥は、当該技術分野で公知の任意の手段によって実施することができる。好ましくは、尾索類は、50%を超え、より好ましくは70%を超え、より好ましくは80%を超え、より好ましくは85%を超え、更により好ましくは90%を超える乾燥含有量(本明細書では乾燥度とも称する)に乾燥される。尾索類は、それを圧縮して水の一部を除去し、それを加熱された床の上に置いて、例えば約39%乾燥度まで乾燥させることによって、乾燥させることができる。次いで、尾索類を、例えば130℃から150℃に加熱された、乾燥機に移すことができ、そこで例えば約89%乾燥度まで乾燥させる。あるいは、尾索類は、例えば、100℃を超える温度で秒単位の時間尺度で、凍結乾燥によって乾燥させることができ、又は噴霧乾燥によって乾燥させることができる。乾燥尾索類の使用は、エステル交換反応に対して水が有する阻害効果を最小限にする利点がある。一実施形態においては、乾燥尾索類材料は、例えば粉砕によって、機械的に破壊することができる。
【0064】
尾索類は、天然の脂質及び/又は脂肪酸を含む。尾索類中に天然に存在する脂質としては、脂肪酸及び(モノグリセリド、ジグリセリド、(脂肪としても知られる)トリグリセリドを含めた)その誘導体、ステロール、リン脂質及びスフィンゴ脂質が挙げられる。さらに、尾索類は、脂肪酸も含む。本研究によれば、C.intestinalisは、
図1に示した脂肪酸組成を含む。脂肪酸は、本明細書では、炭素原子数を示す第1の数と二重結合数である第2の数によって特定される。n3の記号は、脂肪酸がオメガ3脂肪酸であることを示す。オメガ3脂肪酸は、脂肪酸のメチル末端から3番目の結合が二重結合である不飽和脂肪酸である。それだけに限定されないが、尾索類から単離された脂肪酸は、以下の脂肪酸、すなわち14:0、16:0、16:1、18:0、18:1、18:4、20:0、20:1、20:5−n3(エイコサペンタエン酸)、21:5−n3、22:6−n3(ドコサヘキサエン酸)及び22:5−n3の1つ以上を含み得る。それだけに限定されないが、尾索類から単離された脂肪酸は、以下の脂肪酸、すなわち16:0、16:1、16:2、18:0、18:1、18:2、18:3、18:4、20:0、20:1、20:2、20:3、20:5−n3(エイコサペンタエン酸)、[21:5−n3]及び22:6−n3(ドコサヘキサエン酸)の1つ以上を含み得る。それだけに限定されないが、尾索類から単離された脂肪酸は、以下の脂肪酸、すなわち14:0、16:0、16:1、16:2、18:0、18:1、18:2、18:3、18:4、20:0、20:1、20:2、20:3、20:5−n3(エイコサペンタエン酸)、21:5−n3、22:6−n3(ドコサヘキサエン酸)及び22:5−n3の1つ以上を含み得る。さらに、本研究によれば、C.intestinalisは、ほとんど又は全くグリセロールを含まない。これは、
図2に示したHNMR結果で理解することができる。グリセロールは、バイオディーゼル製造プロセスにおける副生物であり、除去しなければならないので、これは特に有利である。
【0065】
本発明の方法においては、尾索類脂質は、エステル交換又はアルコール分解によってバイオディーゼルに転化される。エステル交換は、エステルがアルコキシ部分の交換によって別のエステルに転換される有機反応のクラスを記述するのに使用される一般用語である。尾索類脂質としては、モノ、ジ、トリグリセリドなどのエステルが挙げられる。これらがアルコールとの反応によってエステル交換されるときには、エステル交換プロセスはアルコール分解としても知られる。尾索類脂質は、遊離脂肪酸も含む。脂肪酸がアルコールと反応するときには、このプロセスはアルコール分解と呼ばれる。
【0066】
脂肪又はトリグリセリドのエステル交換においては、トリグリセリドは、強酸又は塩基の存在下でアルコールと反応して、脂肪酸アルキルエステルとグリセロールの混合物を生成する。典型的には、アルコールは、メタノール、エタノール、プロパノール又はブタノールから選択される一価アルコールである。典型的には、塩基触媒はNaOH又はKOHである。典型的には、酸触媒は濃硫酸である。バイオディーゼル製造の場合、酸触媒によるエステル交換よりも速く進行するから、トリグリセリドの塩基触媒によるエステル交換がより一般的に使用される。
【0067】
本研究によれば、尾索類は、高い遊離脂肪酸含有量を有することができる。遊離脂肪酸は、存在すると、塩基触媒によるエステル交換において、無機塩基触媒と反応して、触媒を中和し、せっけんを形成することによって、問題となることがある。これを回避するために、ジェンマ・ビセンテ(Gemma Vicente)ら,「液内培養の菌類バイオマスのバイオディーゼルへの直接変換・エネルギー燃料(Direct Transformation of Fungal Biomass from Submerged Cultures into Biodiesel.Energy Fuels)」,2010,24:3173−3178及びフリーマン・B(Freeman B),プライド・E・H(Pryde E H)ら,「エステル交換植物油からの脂肪酸エステルの収量に影響する変数(Variable affecting the yields of fatty acid esters from transesterificated vegetable oils)」,JAOCS.1984,61(1):1683−1687に記載のものなど、酸触媒によるエステル交換を採用することができる。
【0068】
一実施形態においては、2段階エステル交換プロセスを使用することができる。これは、尾索類脂質がアルコールと塩基触媒の存在下で反応する、例えば、メタノールとKOHの存在下で反応する第1段階と、続いて脂質がアルコールとただし酸触媒の存在下で反応する、例えば、メタノールとBF
3の存在下で反応する第2段階とを含むことができる。
【0069】
存在する脂肪酸の量は、脂質混合物の試料を標準塩基溶液で滴定することによって確認することができる。尾索類脂質中の多量の遊離脂肪酸の場合には、尾索類(又は尾索類脂質/脂肪酸)は、第2段階であるエステル交換プロセス前に実施される第1段階としてエステル化プロセスを含む2段階プロセスに供することができる。第1段階エステル化プロセスにおいては、遊離脂肪酸は、濃H
2SO
4などの酸触媒の存在下でアルコールによってエステル化される。反応生成物は、新規に形成された脂肪酸エステルを含む脂質相及びグリセロール相を含む。グリセロール相を除去し、脂質相を上述したものなどの第2段階エステル交換に供することができる。典型的な2段階プロセスは、ズライカー・S(Zullaikah S),ライ・C・C(Lai C C),バリS・R(Vali S R)ら,「米糠油原料生物ディーゼル燃料製造のための二段酸触媒プロセス(A two−step acid−catalyzed process for the production of biodiesel from rice bran oil)」,バイオリソース・テクノロジー(Bioresource Technology),2005,(96):1889−1896、ガジェ・S・V(Ghadge S V),ラヘマン・H(Raheman H.),「高遊離脂肪酸を有するマフア(Madhuca indica)油からのバイオディーゼル製造(Biodiesel production from mahua(Madhuca indica) oil having high free fatty acids)」,バイオマス・アンド・バイオエナジー(Biomass and Bioenergy),2005,(28):601−605、及びチェン・S(Chen S),ジアーン・J(JianG J),ニエ・X(Nie X),チャーン・X(Chang X),「高酸価の廃酸油からのバイオディーゼルの調製に関する研究(Study on Preparation of Biodiesel from Waste Acidificated Oil of High−acid−value)」,ケミストリー・アンド・インダストリー・オブ・フォレスト・プロダクツ(Chemistry and industry of forest products),2009,29(4):47−52に記載されている。
【0070】
代替プロセスは、遊離脂肪酸の同時エステル化、及びリパーゼなどの酵素触媒を使用したトリグリセリドのエステル交換である。かかるプロセスは、リー・N・W(Li N W),ゾーン・M・H(Zong M H),ウー・H(Wu H.),「Penicillium expansum 由来固定化リパーゼによる廃油のバイオディーゼルへの高効率変換(Highly efficient transformation of waste oil to biodiesel by immobilized lipase from Penicillium expansum)」,プロセス バイオケミストリー(Process Biochemistry),2009,44:685−688に記載されている。
【0071】
代替プロセスは、触媒を必要とせず、したがって遊離脂肪酸からせっけんが形成されるという問題がない、超臨界メタノールエステル交換である。かかるプロセスは、デミルバス・A(Demirbas A),「触媒性および非触媒性超臨界メタノールエステル交換法による植物油からのバイオディーゼル製造(Biodiesel production from vegetable oils via catalytic and non−catalytic supercritical methanol transesterification methods)」,プログレス・イン・エナジー・アンド・コンバスチョン・サイエンス(Progress in Energy and Combustion Science),2005,31:466−487に記載されている。
【0072】
エステル交換又はアルコール分解は、国際公開第2009/089802号に記載のものなど当該技術分野で公知の手段によって実施することができる。
【0073】
好ましくは、新しい尾索類から新しい脂質として得られるときには、好ましい方法は、アルカリ触媒によるエステル交換である。酸価が高いとき、例えば、長期貯蔵された尾索類試料から得られる脂質の場合、酸触媒によるアルコール分解又は上述した2ステップ(段階)法が好ましい。
【0074】
好ましくは、バイオディーゼルは、エステル交換又はアルコール分解反応混合物から回収される。生成物のバイオディーゼルとグリセロールは非混和性である。バイオディーゼルは、(尾索類残留物を除去する)一連の遠心分離及び分離、蒸発、並びに溶媒抽出ステップによって反応混合物から回収することができる。
【0075】
好ましくは、本発明は、バイオディーゼル製造用バイオマスとしての尾索類から得られる抽出物の使用に関する。一態様においては、本発明は、尾索類からバイオディーゼルを製造する方法であって、前記方法が、
(i)前記尾索類から脂質/脂肪酸を抽出すること、及び
(ii)前記脂質/脂肪酸をエステル交換又はアルコール分解によってバイオディーゼルに転化すること
を含む、方法に関する。
【0076】
好ましい一実施形態においては、本発明のこの態様は、脂肪酸アルキルエステルを製造する方法に関する。好ましくは、脂肪酸アルキルエステルはメチル又はエチルエステルである。
【0077】
尾索類は、尾索類本体全体の形態とすることができ、又は尾索類本体の残りの部分から単離された外皮などの尾索類本体の一部の形態とすることができる。尾索類は、例えば、新たに収穫することができ、又は凍結貯蔵品から解凍することができる。好ましくは、尾索類を洗浄して海塩を除去する。好ましくは、この洗浄は、湿った尾索類、すなわち乾燥されていない尾索類に対して実施され、好ましくは、洗浄は脱イオン又は真水で実施される。
【0078】
本発明の方法においては、尾索類からの脂質/脂肪酸の抽出は、ろ過−遠心分離、溶媒抽出、酸抽出、圧縮、蒸留などの当該技術分野で公知の手段によって実施することができる。好ましくは、溶媒抽出が使用され、好ましくは、それがジエチルエーテル又は石油エーテルを使用して実施される。好ましくは、ソックスレー抽出が使用される。
【0079】
好ましくは、石油エーテルを使用したソックスレー抽出が使用される。ソックスレー抽出ステップ後、得られた生成物をろ過してろ液を尾索類残留物から分離することができ、次いでろ液を蒸発させて脂質/脂肪酸を得ることができる。
【0080】
尾索類から脂質/脂肪酸を抽出するステップの前に、好ましくは、尾索類を乾燥させる。一態様においては、本発明は、尾索類からバイオディーゼルを製造する方法であって、前記方法が、
(i)尾索類を乾燥させること、
(ii)前記乾燥尾索類から脂質/脂肪酸を抽出すること、及び
(iii)前記脂質/脂肪酸をエステル交換又はアルコール分解によってバイオディーゼルに転化すること
を含む、方法に関する。
【0081】
乾燥は、前述のとおりに実施することができる。
【0082】
本発明の方法においては、抽出された脂質/脂肪酸は、エステル交換又はアルコール分解によってバイオディーゼルに転化される。脂質/脂肪酸のエステル交換又はアルコール分解は、上述したように実施することができる。
【0083】
好ましくは、バイオディーゼルは、エステル交換又はアルコール分解反応混合物から回収される。バイオディーゼルは、一連の分離、蒸発及び溶媒抽出ステップによって反応混合物から回収することができる。
【0084】
使用時、バイオディーゼルは、単独で、又は鉱物ディーゼルと混合して、例えば、鉱物ディーゼルと混合された最高15%バイオディーゼルの量で、使用することができる。
【0085】
本発明は、さらに、本明細書に記載された尾索類又は尾索類から得られる抽出物からバイオディーゼルを製造する方法を提供する。この方法は、前記尾索類を養殖する方法も含み、前記尾索類はホヤである。養殖方法は、前記尾索類の生育及び収穫を含み、本明細書に記載されたようにすることができる。
【0086】
複合方法
一態様においては、本発明は、アルコール及びバイオディーゼルから選択される1種類を超える生物燃料の製造のための尾索類の使用に関する。具体的には、本発明は、第1の生物燃料を尾索類から上記方法の一つによって製造し、さらに第2の生物燃料を前記尾索類から製造する方法であって、第1と第2の生物燃料が異なり、アルコール及びバイオディーゼルから選択される、方法を提供する。
【0087】
一実施形態においては、本発明は、アルコールを尾索類から上記方法によって製造する方法であって、バイオディーゼルを前記尾索類から上記方法の一つによって製造することをさらに含む、方法を提供する。
【0088】
本発明のこの態様においては、好ましくは、尾索類を最初に乾燥させる。乾燥は、前述のとおりに実施することができる。次いで、1種類以上の多糖及び脂肪酸/脂質を前記尾索類から抽出し、上記方法において使用して関連する生物燃料を製造する。
【0089】
一実施形態においては、方法は、
(i)尾索類を乾燥させること、
(ii)1種類以上の多糖を前記乾燥尾索類から抽出し、前記1種類以上の多糖を酵素又は酸加水分解に供して、1種類以上の単糖を含む加水分解物を形成すること、
(iii)前記1種類以上の単糖を発酵させてアルコールを形成すること
を含み、ステップ(ii)又はステップ(iii)中に、脂質/脂肪酸を含む少なくとも1種類の溶液が形成され、該方法は、さらに、前記脂質/脂肪酸を前記溶液から抽出すること、及び前記脂質/脂肪酸をエステル交換又はアルコール分解によってバイオディーゼルに転化することを含む。該溶液は、(a)1種類以上の多糖を前記乾燥尾索類から抽出するステップ中、及び/又は(b)前記1種類以上の多糖を酵素又は酸加水分解に供し、1種類以上の単糖を含む加水分解物を形成するステップ中、及び/又は(c)発酵ステップ中又は後に、形成することができる。(a)においては、溶液は、残留物中のセルロース又はC
6糖含有量を高める乾燥尾索類の処理中に形成されたものとすることができる。(b)においては、溶液は加水分解物とすることができる。(c)においては、溶液は発酵ブロスとすることができる。脂質/脂肪酸は、水よりも軽い有機溶媒の添加の助けがあってもなくても、前記溶液中で浮遊層を形成する。脂質/脂肪酸は、当該技術分野で公知の手段によって回収することができる。
【0090】
別の一実施形態においては、方法は、
(i)尾索類を乾燥させること、
(ii)前記乾燥尾索類を酵素又は酸加水分解に供して、1種類以上の単糖を含む加水分解物を形成すること、
(iii)前記1種類以上の単糖を発酵させてアルコールを形成すること
を含み、ステップ(ii)又は(iii)中に、脂質/脂肪酸を含む少なくとも1種類の溶液が形成され、該方法は、さらに、前記脂質/脂肪酸を前記溶液から抽出すること、及び前記脂質/脂肪酸をエステル交換又はアルコール分解によってバイオディーゼルに転化することを含む。該溶液は、加水分解物又は発酵ブロスとすることができる。脂質/脂肪酸は、前記溶液中で浮遊層を形成し、当該技術分野で公知の手段によって回収することができる。
【0091】
別の一実施形態においては、方法は、
(i)尾索類を乾燥させること、
(ii)前記乾燥尾索類から脂質/脂肪酸を抽出すること、
(iii)前記脂質/脂肪酸をエステル交換又はアルコール分解によってバイオディーゼルに転化すること
を含み、脂質/脂肪酸を前記尾索類から抽出するステップ中に、尾索類残留物が形成され、該方法は、さらに、1種類以上の多糖を前記尾索類残留物から抽出すること、前記1種類以上の多糖を酵素又は酸加水分解に供して1種類以上の単糖を含む加水分解物を形成すること、及び前記1種類以上の単糖を発酵させてアルコールを形成することを含む。
【0092】
別の一実施形態においては、方法は、
(i)尾索類を乾燥させること、
(ii)前記乾燥尾索類をエステル交換又はアルコール分解に供し、それによって前記乾燥尾索類中に存在する脂質/脂肪酸をバイオディーゼルに転化すること、
(iii)バイオディーゼルを回収すること
を含み、バイオディーゼルを前記乾燥尾索類から回収するステップ中に、尾索類残留物が形成され、該方法は、さらに、1種類以上の多糖を前記尾索類残留物から抽出すること、前記1種類以上の多糖を酵素又は酸加水分解に供して1種類以上の単糖を含む加水分解物を形成すること、及び前記1種類以上の単糖を発酵させてアルコールを形成することを含む。
【0093】
本発明の複合方法の態様の上記実施形態においては、乾燥ステップを省略することができる。
【0094】
1種類以上の多糖の抽出、酵素又は酸加水分解、発酵、脂質/脂肪酸の抽出、エステル交換又はアルコール分解、アルコール及び/又はバイオディーゼルの回収の各方法は、当該技術分野で公知であり、又は前述のとおりである。
【0095】
本発明の態様は、尾索類バイオマスの単位重量当たりの生物燃料製造量が増加し、さらに、海域での生物燃料の製造を増加させる点で、明白な利点を有する。
【0096】
工業的スケールアップ
本発明の方法は、工業的スケールアップに適している。本明細書に開示するアルコール製造方法では、例えば、パルプ工業又は製紙業で使用される既存の反応器を使用することができる。本明細書に開示するバイオディーゼル製造方法では、例えば、バイオディーゼルを植物油から製造する既存の反応器を使用することができる。
【0097】
3次元養殖
本発明のこの態様は、海洋におけるホヤの3次元養殖方法に関する。目的は、多量のホヤの生産を可能にする養殖方法を提供することである。別の目的は、ホヤの自然な補充及び定着を促進し、ホヤ集団を養殖物から育成又は供給しなければならないステップが不要な、養殖方法を提供することである。別の目的は、ホヤの単作を拡大させ、ホヤ以外の生物体のコロニー形成に起因する生物付着を最小にする、養殖方法を提供することである。本明細書に記載の3次元養殖方法の実施形態の各々は、これらの目的の少なくとも1つを満たす。
【0098】
一態様においては、本発明は、海洋におけるホヤの3次元養殖方法に関する。
【0099】
この態様においては、本発明は、ホヤを養殖する方法であって、
(a)海中構造体の表面にホヤのコロニーを形成するステップ、及び
(b)前記ホヤを前記構造体から収穫するステップ
を含み、前記構造体が、コロニー形成表面を有する複数の細長い部材を含み、前記構造体が、ホヤコロニー形成を支持するように配列された3次元海中領域を画定する、方法に関する。
【0100】
好ましくは、海中構造体表面のコロニー形成は、ホヤの自然な補充及び定着によって成される。
【0101】
本明細書では、細長い部材は、ロープ(
図3)、棒又は中空円柱とすることができる。好ましくは、ロープ、棒又は中空円柱は、直径1から10cm、より好ましくは直径2から4cm、更により好ましくは2cmである。
【0102】
一実施形態においては、コロニー形成表面は、ロープ、棒又は中空円柱の表面を含む。この実施形態においては、海中構造体は、ロープ、棒若しくは中空円柱又はその組合せから選択される複数の細長い部材を含む。ホヤは、細長い部材の表面にコロニーを形成し、そこから収穫される。この実施形態においては、好ましくは、複数の細長い部材は、少なくとも1個の中空円柱を含む。中空円柱は、好ましくは、10cmを超える、より好ましくは20cmを超える、更により好ましくは30から70cmの直径を有する。
【0103】
一実施形態においては、細長い部材は、支持機能を有する。この実施形態においては、細長い部材は、細長い支持部材と称することができ、複数のコロニー形成部材を備え、各コロニー形成部材は前記支持部材に連結される。各コロニー形成部材は、少なくとも1個のコロニー形成表面を含む。好ましくは、コロニー形成表面は、実質的に平滑で連続している。
【0104】
一実施形態においては、コロニー形成表面の少なくとも1個は平面である。好ましくは、この表面は、垂直又は水平である。この状況における垂直及び水平という用語は、細長い部材(又は細長い支持部材)に対するものである。より好ましくは、この表面は、平面かつ水平である。本研究によれば、かかる表面は、ホヤをより優勢にする(生物付着の減少)。
【0105】
一実施形態においては、平面を有するコロニー形成部材の少なくとも1個は、板又は円盤状である。好ましくは、それらは直径約0.4〜0.6mの円盤であり、一実施形態においては、細長い部材上に1〜3m間隔で配置される。別の一実施形態においては、円盤は、細長い部材上に0.2〜1m間隔、好ましくは0.3〜0.5m間隔で配置される。これらは、細長い部材に当該技術分野で公知の手段によって取り付けることができる。コロニー形成表面又は部材は、正方形又は矩形の板とすることができる。これらは、幅又は長さ約0.2〜1.5mとすることができる。好ましくは、それらは幅又は長さ約0.2〜0.6mであり、より好ましくは、それらは幅又は長さ約0.4〜0.6mである。一実施形態においては、これらは、細長い部材上に1〜3m間隔で配置される。別の一実施形態においては、それらは、細長い部材上に0.2〜1m間隔、好ましくは0.3〜0.5m間隔で配置される。これらは、細長い部材に当該技術分野で公知の手段によって取り付けることができる。
【0106】
一実施形態においては、コロニー形成部材の少なくとも1個は、円柱又は中空管の形である。好ましくは、それらは、直径約0.4〜0.6mの中空管である。これらは、細長い部材に当該技術分野で公知の手段によって連結することができる。一実施形態においては、それらは、円柱の一端又は両端に位置する手段を固定することによって細長い部材に取り付けられる。
【0107】
必要に応じて、コロニー形成部材を1個を超える細長い部材に取り付けることができる。
【0108】
コロニー形成部材は、好ましくは、細長い支持部材に沿って少なくとも20cm間隔で位置し、好ましくは25cmから1m間隔である。コロニー形成部材が水平方向の平面を有する場合、この距離はホヤを十分成長させるのに必要である。
【0109】
好ましくは、コロニー形成部材は、穿孔されているか、又は穴のあいた材料若しくは網でできている。これによって、コロニー形成部材のコストが低下し、上部と下部又は内側と外側のコロニー形成表面間のホヤ幼生の進入も促進される。
【0110】
一実施形態においては、細長い部材は、複数のほぼ放射状に延びたコロニー形成表面又は部材を支持する。
【0111】
ほぼ放射状に延びたコロニー形成表面又は部材は、円柱状又は中空管とすることができる(
図3)。好ましくは、それらは、直径約0.4〜0.6mの中空管である。これらは、細長い部材に当該技術分野で公知の手段によって取り付けることができる。一実施形態においては、それらは、円柱の一端又は両端に位置する手段を固定することによって細長い部材に取り付けられる。
【0112】
ほぼ放射状に延びたコロニー形成表面又は部材は、円盤状とすることができる(
図4)。好ましくは、それらは直径約0.4〜0.6mの円盤であり、一実施形態においては、細長い部材上に1〜3m間隔で配置される。別の一実施形態においては、円盤は、細長い部材上に0.2〜1m間隔、好ましくは0.3〜0.5m間隔で配置される。これらは、細長い部材に当該技術分野で公知の手段によって取り付けることができる。
【0113】
ほぼ放射状に延びたコロニー形成表面又は部材は、矩形とすることができる。好ましくは、それらは幅又は長さ約0.2〜0.6mであり、より好ましくは、それらは幅又は長さ約0.4〜0.6mである。一実施形態においては、これらは、細長い部材上に1〜3m間隔で配置される。別の一実施形態においては、それらは、細長い部材上に0.2〜1m間隔、好ましくは0.3〜0.5m間隔で配置される。これらは、細長い部材に当該技術分野で公知の手段によって取り付けることができる。
【0114】
使用時、細長い部材は、細長い部材を水中で垂直に維持するブイと重りを使用して、表面ロングラインシステムに取り付けることができる(
図2、3及び4)。
【0115】
以下、尾索類のコロニー形成に使用される海中構造体又は装置を
図7及び例AからEを参照して記述する。
【0116】
図7は、尾索類のコロニー形成のためのロングラインシステム(1)を示す。ロングラインシステム(1)は、ロングライン(2)に連結された幾つかの細長い部材(3)からなる。ロングライン自体は、それを水中で正しい向きに維持するために、ロングライン(2)の中心部分に沿って少なくとも1個の海面ブイ(4)に取り付けられる。ロングライン(2)の両端は海底(5)に取り付けられる。
【0117】
ブイ(6)も細長い部材(3)の各々の一端に取り付けられ、細長い部材(3)を水中で垂直に維持するために、重り(7)が他端に取り付けられる。
【0118】
図7に示すように、細長い部材(3)の多種多様な構造体をロングライン(2)と組み合わせて使用することができる。
【0119】
各例に示されるように、細長い部材(3)は、積み重ね又は並んだ形態の複数のコロニー形成部材(8)を含む。
【0120】
コロニー形成部材(8)は、平面又は角柱を含めて、種々の形状を有するものでよい。少なくとも1個の平面コロニー形成表面を含むコロニー形成部材(8)は、以下で考察するように平面がコロニー形成及び収穫を容易にするので、他の形状よりも好ましい場合がある。
【0121】
例A及びBに示した細長い部材(3)は、複数の平面コロニー形成部材(8a〜8e)を含む。細長い部材(3)は、適切な連結装置を使用して、コロニー形成部材(8)(例Aでは円盤及び例Bでは正方形)の中央を通してコロニー形成部材(8)に連結される。
【0122】
コロニー形成部材(8)自体は各々、少なくとも1個の連続した表面、すなわち尾索類コロニー形成に有害となりうる、表面から延びた実質的な隆起部、突出部などのない表面を有する。さらに、かかる表面は、ホヤ以外の生物体の定着に起因する生物付着を阻止する。
【0123】
例C及びDは、円柱状であり、1個の連続した表面、すなわち円柱を形成する外周面を有する。一実施形態においては、円柱は両端が開いており、円柱を形成する外周面も連続した表面である。一実施形態においては、コロニー形成部材は、一端又は両端が覆われて上部及び/又は下部平面を形成した円柱である。この実施形態においては、円柱は、3個の連続した表面、すなわち、上部及び下部表面並びに円柱を形成する外周面を有する。
【0124】
例A、B及びEは各々、コロニー形成部材(8)1個当たり2個の平面(上部及び下側表面)を有する。
【0125】
コロニー形成部材(8a及び8b)の平面は、細長い部材(3)とコロニー形成部材(8)の連結の周りに円周方向及び放射状に延びる連続した表面を与える。したがって、表面への進入が制限されず、尾索類は表面に容易にコロニー形成することができる。さらに、この進入路によって、コロニー形成部材(8)からの尾索類の収穫も容易になる。例C及びDは、コロニー形成及び収穫が可能な、同様に連続した、外周面を含む。
【0126】
コロニー形成部材(8)は、例Aに示したように、円盤(8a)などの任意の適切な形状とすることができる。コロニー形成部材(8)は、例Bに示したように正方形又は矩形(8b)とすることもできる。
【0127】
例Cの細長い部材(3)は、複数の円柱状コロニー形成部材(8c)を含む。円柱状コロニー形成部材(8c)は、各円柱の中心軸を通して細長い部材(3)に連結される。一実施形態においては、各円柱状コロニー形成部材(8c)は、各円柱の両端面である2個の平面コロニー形成表面を含めて、3個のコロニー形成表面を含むことができる。したがって、3個の連続したコロニー形成表面が提供される。コロニー形成部材(8)は、円柱状コロニー形成部材に限定されず、任意の角柱で形成することができる。
【0128】
例Dの細長い部材は、単一の円柱状コロニー形成部材(8d)を含む。コロニー形成部材(8d)は、円柱の中心軸を通して細長い部材(3)に連結される。単一の円柱状コロニー形成部材は、両端が開いている。コロニー形成部材(8d)は、穿孔されており、又は網で形成されている。これによって、円柱内面へのホヤ幼生の進入が促進され、したがって内面へのホヤの定着が促進される。しかし、穴のあいた材料又は網でできた1個を超えるコロニー形成部材(8)を提供することもできる。一実施形態においては、各円柱の両端面である2個の平面コロニー形成表面を含めて、3個の連続したコロニー形成表面を提供することができる。
【0129】
例Dの実施形態は、中空円柱であり、好ましくは、10cmを超える、より好ましくは20cmを超える、更により好ましくは30から70cmの直径を有する、細長い部材であると考えることもできる。
【0130】
例Eの細長い部材は、複数の細長い部材(3)と複数のコロニー形成部材(8e)を含む。各細長い部材(3)は、各コロニー形成部材(8e)のエッジに連結される。細長い部材(3)は、コロニー形成部材(8e)の平面形状を維持するために、各コロニー形成部材(8e)のエッジの周囲に等間隔で配置される。幾つかの矩形コロニー形成部材(8e)が例Eでは示されている。しかし、コロニー形成部材(8)の形状は、連続したコロニー形成表面が提供されるならば、任意の形状とすることができる。
【0131】
本明細書に記載のコロニー形成部材は、放射状に延びたコロニー形成表面又は部材を含めて、好ましくは、プラスチック、好ましくはPVCでできている。好ましくは、それらは、プラスチック又はプラスチック材料、例えば、アクリル(Perspex)、ポリプロピレン、ポリブチレン、高密度ポリエチレン又はPVCでできている。
【0132】
好ましくは、コロニー形成表面は暗色であり、好ましくは、それらは白色よりも暗く、好ましくは、それらは光を反射しない。好ましくは、コロニー形成表面は、黒色又は暗灰色である。海に対してコントラストの低い色を有するコロニー形成表面を採用することによって、競合的生物付着が減少することが見いだされた。
【0133】
好ましくは、コロニー形成表面は、プラスチック材料でできており、暗色であり、水平方向の平面である。好ましくは、コロニー形成表面は、プラスチック材料でできており、暗色であり、水平方向の平面である。
【0134】
海中構造体は、ホヤコロニー形成を支持するように配列された3次元海中領域を画定する。好ましくは、海中構造体は、5,000から15,000個の細長い部材を含む。好ましくは、細長い部材は長さ5から70mであり、最も好ましくは、細長い部材は長さ5から50mである。一実施形態においては、細長い部材は長さ10から70mであり、別の一実施形態においては、それらは長さ15から25mであり、別の一実施形態においては、それらは長さ20mである。別の一実施形態においては、細長い部材は長さ5から20mである。別の一実施形態においては、細長い部材は長さ5から10mである。好ましくは、細長い部材は、0.5mから4m間隔、より好ましくは1から1.5m間隔で配置される。好ましくは、1個の海中構造体は、5,000m
2から1,000,000m
2(100ヘクタール)の海面積を占める。好ましくは、1個の海中構造体は、5,000m
2から20,000m
2の海面積を占める。好ましくは、1個の海中構造体は、10,000m
2から1,000,000m
2(100ヘクタール)の海面積を占める。好ましくは、海中構造体は、10,000m
2(1ヘクタール)の面積を占める。
【0135】
収穫は、ホヤをコロニー形成表面からこそぎ取ることによって、又は減圧吸引によって、実施することができる。収穫は、例えば、船から延びた真空ホースを使用することによって、海中構造体のその場で実施することができる。その場での収穫は、遠隔操作輸送手段(ROV)を使用してホヤをコロニー形成表面から収穫することによって実施することもできる。より小規模では、収穫は、例えば、細長い部材を水中から船上に引き上げた後に前記船上で実施することができる。
【0136】
好ましくは、ホヤは、重量が10gを超えると、より好ましくは(湿)重量が20gを超えると、更により好ましくは重量が30gを超えると、収穫される。
【0137】
本研究は、ホヤの成長速度M=(1×10
-13)×D
6.41を示唆している。ここで、Mは質量(グラム)であり、Dは時間(日)である。これに基づくと、6か月の配置期間は、湿重量約31g(又は乾燥重量1.37g)のホヤを生ずる。本研究は、3月から8月の終わりまで温和から冷たい水中で海中構造体への幼生の連続補充も示し、ホヤは構造体上に少なくとも6から9か月間存続することも示す。したがって、2つの異なる収穫戦略が存在する。第1の海中構造体の配置は、5から6か月。第2は、3月から8月までの細長い部材の配置と8月から5月までの収穫の連続収穫(10か月)である。後者の収穫戦略においては、5〜9か月養殖されたホヤが収穫され、総バイオマス収量が増加する。
【0138】
本発明の尾索類養殖場は、海に置かれるべきである。好ましくは、ただしそれだけに限らないが、それらは、栄養素の豊富な水中にあるべきである。養殖場は、沖合と沿岸域の両方に置くことができる。好ましくは、ただしそれだけに限定されないが、養殖場は、沿岸域、フィヨルド、湾岸域及び河口に置かれる。
【0139】
ホヤは、効率的なろ過食者であることが知られており、すなわち、水中に浮遊する食物粒子を保持する摂取フィルターに水を通すことによってその食物を獲得する。例えば下水及び農業活動(陸上及び水産養殖)から、多量の栄養素が供給される水塊においては、植物プランクトンは、この過剰の栄養素負荷を使用して、大量発生する(すなわち、その成長速度の増加)。これは、富栄養化と呼ばれ、過剰発生した藻類が死ぬと、これらの粒子が分解されて水中の酸素が減少し、この生態系における生物多様性が低下する。栄養素は植物プランクトンに結合しており、ホヤが植物プランクトンを食べて成長し、それらが除去され、生物燃料に使用されると、栄養素が水から除去され、その結果、それらは、生態系の富栄養化の効果を抑制する。したがって、ホヤ養殖場は、有利には、人間活動から多量の栄養素が供給される地域における浄化目的で使用することができる。好ましくは、本明細書に開示するホヤを養殖する方法は、海の富栄養化の効果を抑制する方法でもある。好ましくは、本明細書に開示するホヤを養殖する方法は、富栄養化又は高栄養素負荷を受けやすい海域に海中構造体を配置することを含む。
【0140】
本発明の別の一態様においては、本明細書に記載されたホヤから生物燃料を製造する方法であって、
(a)海中構造体の表面にホヤのコロニーを形成するステップ、及び
(b)前記ホヤを前記構造体から収穫するステップ
を含み、前記構造体が、複数のほぼ放射状に延びたコロニー形成表面又は部材を支持する少なくとも1個の細長い部材を含む、方法が提供される。
【0141】
本発明の一態様においては、上述したようにホヤから生物燃料を製造する方法であって、上記方法によって前記ホヤを養殖する方法を含む、方法が提供される。
【0142】
本発明を以下の非限定的例によって更に説明する。
[実施例1]
尾索類の乾燥
ステップ1 原料−乾燥
ステップ1A
ロングラインシステムに取り付けられたロープに定着したホヤ(C.intestinalis)をこそぎ取ることによって新しい試料4kgを得た。アルミニウムの枠と4cmの脚を有し、底部に格子の付いた矩形PVC製かご(W×L×H=22cm×52cm×25cm)にこの原料を入れた。PVC板を原料の上に載せ、12kgの重りをPVC板の上に載せることによって原料を圧縮した。これは、圧力10g/cm
2に相当する。原料を終夜圧縮した。この圧縮ステップ後、試料の重さは2.65kg、すなわち初期湿重量4kgの66.2wt%であった。次いで、試料を加熱された床の上の新聞紙の間に約24時間広げた。新聞紙をこの間に3から4回取り替えた。この手順によって、重量350g、すなわち初期湿重量4kgの9wt%の「湿」試料を得た。最終乾燥プロセスを乾燥機を使用して130〜150℃で30〜60分間実施した。これによって、重量175g、すなわち初期湿重量4kgの4wt%の「乾燥」試料を得た。「湿」試料は乾燥含有量39%であり、「乾燥」試料は乾燥含有量89%であった。乾燥含有量は、試料を赤外線加熱によって105℃で恒量に達するまで乾燥させた後に計算され、乾燥前の尾索類材料の湿重量に対する得られた乾燥材料の重量%に等しい。
【0143】
ステップ1B
代替乾燥手順も使用した。これは、2個の12リットルと1個の18リットルの計3個のCamwear(登録商標)ビーカー(Cambro)を圧縮/水収集システムとして使用するものであった。2個の12リットルビーカーのうち1個は、底部に穴が開けられた。ホヤ2.8kgを穴の開いた12リットルビーカーに入れ、加圧せずに2時間放置して水を抜き取った。穴の開いた12リットルビーカーの下に置かれた第2の12リットルビーカーに水を収集した。水5リットルを18リットルビーカーに注ぎ、これを12リットルビーカー中のホヤの上に3〜4時間載せた。圧力を徐々に増加させるために、さらに水10リットルを18リットルビーカーに添加した。これは、最終圧力28g/cm
2に相当する。ホヤをこの圧力下で終夜保持した。その結果、出発の2.8kgの原料から水1.2リットルが抜かれた。最後に、試料を乾燥機で130〜150℃で2〜3時間乾燥させた。
[実施例2]
尾索類の組成分析
ステップ2 組成分析
ステップ1Aの乾燥試料を以下について分析した。
【0144】
(i)灰分(無機化合物)(これは、燃焼により、FTIR(フーリエ変換赤外)分光法を使用して、測定された)、
(ii)CaCO
3含有量(これは、酸処理後のCO
2発光によって測定された)、
(iii)リグニン含有量(これは、リー・J;ゲラーステッド・G,「カッパ価測定の速度論およびメカニズム(Kinetics and mechanism of kappa number determination)」ノルディック・パルプ・アンド・ペーパー・リサーチ・ジャーナル((Nordic Pulp Pap.Res.J.(1998),13(2),147−152)に記載の方法によるカッパ価とタッピ スタンダード(Tappi standard),T 222 om−02の方法によるKlasonリグニン定量の両方によって測定された)、
(iv)脂質含有量及び脂肪酸組成(これは、公認分析化学者協会(Association of Official Analytical Chemists:AOAC)法983.23及びヨーロッパ薬局方「2.4.22.ガスクロマトグラフィーによる脂肪酸組成(Composition of fatty acids by gas chromatography)」に記載の標準方法によって測定された)。
【0146】
灰分:47wt%(したがって、試料の53wt%は有機化合物で構成される)、主にシリカート。
【0147】
CaCO
3:〜1.6wt%
リグニン様物質:6.3wt%(カッパ価)及び7.2wt%(klasonリグニン)
脂質含有量:1.7〜3.2%
脂肪酸組成:
図1参照
[実施例3]
尾索類からのセルロースの抽出
ステップ3 セルロースミクロフィブリルの調製
セルロースミクロフィブリルを、ステップ1Aで得られた原料の乾燥試料から調製した。乾燥試料を酸加水分解、続いてアルカリ加水分解/クラフトパルプ化、続いて酸化及び漂白に供した。
【0148】
酸加水分解:乾燥試料20gを0.9wt%H
2SO
4 200mlに添加し、180℃に2時間加熱した。残留物をろ別し、洗浄し、50℃で乾燥させた。
【0149】
アルカリ加水分解/クラフトパルプ化:上で得られた乾燥生成物を9/3wt%NaOH/Na
2S溶液100mlに添加し、180℃に2時間加熱した。残留物をろ別し、洗浄し、次いで50℃で乾燥させた。
【0150】
酸化及び漂白:上記アルカリ処理後の乾燥生成物を2.9wt%NaOCl溶液100mlに添加し、75℃に1時間加熱し、続いてろ過し、洗浄し、50℃で乾燥させた。純セルロースを、出発材料、すなわちステップ1Aで得られた原料の乾燥試料の重量に基づいて収率3.6wt%で得た(
図5(i))。糖分析によれば、それは、80wt%を超える量のグルコースを唯一の中性糖として含む。これは、Tappi standard TAPPI T 249 cm−09「木材の抽出されない成分および木材パルプの炭水化物組成(Carbohydrate composition of Extractive−free Wood and Wood Pulp)」に従い、セルロースの酸加水分解が100℃で4時間の代わりに120℃で1時間実施された変更を加えて、測定された。
【0151】
酸加水分解ステップからの収率は乾燥試料の21wt%であり、アルカリ加水分解/クラフトパルプ化ステップからの収率は(酸加水分解後の乾燥出発試料の重量に基づいて)33wt%であり、酸化/漂白ステップからの収率は(アルカリ加水分解後の乾燥出発試料の重量に基づいて)52wt%であった。
【0152】
得られたセルロースミクロフィブリルの試料の粘度は500dm
3/kgであり、重合度(DP)936(約150Kダルトン)に相当した。セルロースミクロフィブリルの試料は、LiCl/DMAc溶液への溶解性が低すぎて、LiCl/DMAc SEC分析(ポリマーの分子サイズを評価する分析)を実施できなかった。木材セルロースは一般にこのLiCl/DMAc溶液に可溶であるので、これは、得られたセルロースが木材セルロースとは明確な構造上の相違を有することを示唆している。これは、顕微鏡分析によっても確認された。顕微鏡分析では、得られたセルロースミクロフィブリルは、木材セルロースミクロフィブリルとは極めて異なって見え、前者はより長く、より厚く、より均一な形状であった(
図5(i)及び(ii))。
[実施例4]
尾索類におけるセルロースの加水分解条件の比較
ステップ4 セルロース加水分解条件の比較
この実施例においては、ステップ1で得られた原料の「湿」試料及び「乾燥」試料(上記参照)及び純セルロースの基準試料(トウヒ木材から得られた溶解パルプ)を酸加水分解と酵素加水分解の両方に供した。
【0153】
A.酸加水分解
各場合において、試料1gを40%H
2SO
4(固体/液体=1/10)中で90℃で1時間の酸加水分解に供した。利用可能なセルロースに対するグルコースへの加水分解収率結果は、Tappi standard TAPPI T 249 cm−09「木材の抽出されない成分および木材パルプの炭水化物組成(Carbohydrate composition of Extractive−free Wood and Wood Pulp)」に従い、試料の前加水分解なしで、測定された。
【0154】
基準試料 3.6wt%
乾燥試料 6.6wt%
湿試料 「湿」試料の溶液は、酸加水分解中に極めて粘ちゅうになり、信頼できるグルコース含有量測定のための正確な採取ができなかった。
【0155】
B.酵素加水分解
各場合において、試料1gをNovozymes342(エンドグルカナーゼ、エキソグルカナーゼ及びβグルコシダーゼを含有するNovozymes製市販酵素製品)を使用して40℃でpH7で5時間の酵素加水分解(固体/液体=1/30)に供した。利用可能なセルロースに対するグルコースへの加水分解収率結果は、
基準試料 2.0wt%
乾燥試料 1.0wt%
湿試料 3.5wt%
であった。
【0156】
「湿」試料はより速く加水分解したが、酵素加水分解に対して「湿」試料の阻害効果が認められた。グルコシダーゼ活性が一部阻害され、その結果、かなりの量のセロビオースが「湿」試料の加水分解生成物中に検出された。セロビオースは、基準試料及び乾燥試料の加水分解生成物中には検出されなかった。
[実施例6]
バイオディーゼル製造
(A)尾索類からの脂質の抽出、及び抽出された脂質のエステル交換
(i)乾燥尾索類からの脂質の抽出
尾索類の試料を凍結乾燥させた。乾燥尾索類106グラムをソックスレー装置中で石油エーテル800ml(30〜60℃)を使用して6時間抽出した。得られた生成物をろ過して、溶液(ろ液)を固体尾索類材料から分離した。ろ液をロータリーエバポレータを使用して減圧蒸発させた。脂質3.2グラムを得た(乾燥尾索類重量に基づく収率3wt%)。
【0157】
(ii)抽出された脂質のエステル交換−塩基触媒
KOH50mgをメタノール20mlに激しく撹拌しながら添加した。次いで、得られた溶液を前ステップで得られた脂質1グラムに添加した。混合物を加熱還流させ、4時間還流させた。次いで、混合物を冷却し、静置した。その後、上層を分離し、ロータリーエバポレータを使用して減圧蒸発させた。次いで、水(10ml)を添加し、続いてCH
2Cl
2 10mlを添加した。激しく振とうし、次いで静置後、底層を分離し、蒸発させ、バイオディーゼル0.7グラムを得た。掛け算をすると、これは、乾燥尾索類の重量に基づいてバイオディーゼル2.1wt%の収率に等しい。
【0158】
(B)乾燥尾索類のエステル交換−酸触媒
尾索類の試料を凍結乾燥させた。乾燥尾索類10グラムを0.2M H
2SO
4を含むメタノール200mlに懸濁させた。混合物を10時間加熱還流させ、その間に十分撹拌した。懸濁液を冷却し、遠心分離し、溶液を蒸発させた。得られた残留物を水10mlに添加した。CH
2Cl
2 10mlも添加された。混合物を激しく振とう後、それを静置した。底層を分離し、蒸発させ、バイオディーゼル0.16グラムを得た(乾燥尾索類重量に基づくバイオディーゼル収率1.6wt%)。
[実施例7]
養殖方法
海中構造体を5月にBergen近くの海水中で組み立てた。構造体は、以下の要素を含んだ。これらの要素は、ロングラインシステムに固定された。ロングラインシステムは要素を海面下4から20mの深さに保持した。
【0159】
(i)ロープに固定され、ロープに沿って1メートル毎に配置された(各々直径40cm及び長さ50cmの)中空灰色PVC円柱、
(ii)ロープに固定され、ロープに沿って1メートルごとに配置された(各々長さ50cm及び幅34cmの)矩形灰色PVC板、
(iii)直径1.2cmの黒色ロープ(Rope Polysteel3本撚り、100%ポリプロピレンマルチフィラメント、12MM、Bilteama)、及び
(iv)直径2cmの緑色ロープ(Rope Polysteel3本撚りDANLINE 20MM、AS Fiskevegn)。
【0160】
3か月後、(円柱及び板が取り付けられたものを含めて)ロープを船上に引き上げ、手作業でホヤをこそぎ取ることによって、ホヤ(Ciona intestinalis)を海中構造体から収穫した。ロープ1メートルごとに収集されたバイオマスを回収し、次いでこれを表面積の関数として計算した。結果を
図8及び9に示す。これらの図においては、kg/m
2単位のバイオマスを深さ(m)の関数として示す。
【0161】
その結果によれば、1m
2当たりのバイオマスは、板が取り付けられたロープが他のロープよりもかなり高かった。板は平均22.2kg/m
2を生成し、これに対して円柱は4.8kg、黒色ロープは4.6kg、最後に緑色ロープは1.2kgであった。この実験に使用された板は平均9690個体/m
2を生成し、円柱は3106個体/m
2を生成し、一方、黒色及び緑色ロープはそれぞれ1645及び529個体/m
2を生成した。
【0162】
黒色ロープは、1m
2当たりのバイオマスが緑色ロープよりも多く生成され、より暗色の表面がホヤのコロニー形成及び定着を促進することを示した。
【0163】
さらに、板と円柱構造体の両方が、黒色及び緑色ロープと比較して、Ciona intestinalisの極めて均一なコロニーを形成し、別の生物体による生物付着が極めて少ないことが目視で明らかであった。
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