特許第6113073号(P6113073)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6113073
(24)【登録日】2017年3月24日
(45)【発行日】2017年4月12日
(54)【発明の名称】カバーテープ
(51)【国際特許分類】
   B65D 85/86 20060101AFI20170403BHJP
   B65D 73/02 20060101ALI20170403BHJP
   B32B 7/02 20060101ALI20170403BHJP
   B32B 27/18 20060101ALI20170403BHJP
【FI】
   B65D85/38 S
   B65D85/38 N
   B65D73/02 J
   B65D73/02 M
   B32B7/02 104
   B32B27/18 D
【請求項の数】5
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-538579(P2013-538579)
(86)(22)【出願日】2012年10月12日
(86)【国際出願番号】JP2012076402
(87)【国際公開番号】WO2013054867
(87)【国際公開日】20130418
【審査請求日】2015年9月17日
(31)【優先権主張番号】特願2011-226748(P2011-226748)
(32)【優先日】2011年10月14日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003296
【氏名又は名称】デンカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101199
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 義教
(74)【代理人】
【識別番号】100109726
【弁理士】
【氏名又は名称】園田 吉隆
(72)【発明者】
【氏名】杉本 和也
(72)【発明者】
【氏名】徳永 久次
(72)【発明者】
【氏名】弘岡 忠昭
【審査官】 吉澤 秀明
(56)【参考文献】
【文献】 特開平4−367457(JP,A)
【文献】 特開2004−255736(JP,A)
【文献】 特開昭60−215039(JP,A)
【文献】 特開平11−165364(JP,A)
【文献】 特開昭61−78637(JP,A)
【文献】 特開2004−1371(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 85/86
B32B 7/02
B32B 27/18
B65D 73/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材層と樹脂製キャリアテープにヒートシールされる接着層とを少なくとも有するカバーテープにおいて、基材層の接着層とは反対側の面に帯電防止層を有し、該帯電防止層が少なくとも無機系帯電防止剤と平均粒径が0.2〜3.0μmのワックスを含有し、帯電防止層を構成する成分全体に対し、無機系帯電防止剤が40〜80質量%、ワックスの含有量が10〜50質量%であり、23℃×30%R.H.雰囲気下での基材層側の表面抵抗率が1013Ω/□以下であり、無機系帯電防止剤が、ケイ酸マグネシウム又はスメクタイトのいずれかあるいは双方であることを特徴とするカバーテープ。
【請求項2】
ワックスが、植物由来のカルナバワックス、ライスワックス、キャンデリラワックス、石油由来のパラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、合成ワックスであるオレフィン系ワックス、エステル系ワックス、ケトン系ワックス、アミド系ワックスのいずれか又はこれらの組み合わせであることを特徴とする請求項1に記載のカバーテープ。
【請求項3】
上記帯電防止層が、バインダー成分として、ポリウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、エチレン−酢酸ビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ブタジエン系樹脂、スチレン系樹脂、アクリル変性ポリエステル樹脂及びこれらの組合せからなる群から選択される熱可塑性樹脂を含有することを特徴とする請求項1又は2に記載のカバーテープ。
【請求項4】
上記接着層が、樹脂製キャリアテープにヒートシール可能なポリウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、エチレン−酢酸ビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ブタジエン系樹脂、水素添加系を含むスチレン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂のいずれか又はこれらの組み合わせを含有することを特徴とする請求項1からのいずれか一項に記載のカバーテープ。
【請求項5】
上記基材層が、ポリエステル、ポリオレフィン又はナイロンからなる樹脂製フィルムのいずれか一層か又はその複数層の積層体であることを特徴とする請求項1からのいずれか一項に記載のカバーテープ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品の包装体に使用されるカバーテープに関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器の小型化に伴い、使用される電子部品についても小型化、高性能化が進み、併せて電子機器の組み立て工程においてはプリント基板上に電子部品を自動的に実装することが行われている。このようなチップ型表面実装用電子部品は、電子部品の形状に合わせて熱成形された収納ポケットが連続的に形成されたキャリアテープに収納されている。各収納ポケットに電子部品を収納後、キャリアテープの上面に蓋材としてカバーテープを重ね、加熱したシールコテでカバーテープの両端を長さ方向に連続的にヒートシールして電子部品の包装体とされる。
【0003】
カバーテープは、ヒートシールの対象となるキャリアテープに合わせた幅に断裁し連続的にロール状に巻き取られた巻物としてテーピングマシンのカバーテープ繰り出し部にセットされるが、その繰り出しの際に、カバーテープの表裏が互いに貼りついた、一般的にブロッキングと呼ばれる状態となってしまうと、カバーテープの安定した繰り出しがなされず、これが原因となり、部品がキャリアテープの収納ポケット内に安定して装填されずに部品装填ラインが停止するという問題が発生する。すなわち、カバーテープはロール状巻物として輸送や保管がなされる際に高温又は高温多湿環境下に曝されると表面側の基材層もしくはその表面の帯電防止層と裏面側の接着層とが接着してしまうブロッキング現象が発生し、一度このブロッキングが起きるとロール状巻物を温度や湿度が適正範囲に管理された場所に保管しても解消されることは期待できない。また、接着層を構成する樹脂の種類によっては、前記の部品装填ラインの停止のみならず、カバーテープの基材層に積層された帯電防止層が接着層に移行することで帯電防止性能が低下するといった不良現象を併発することもある。
【0004】
カバーテープのブロッキング対策として、カバーテープの接着層中に酸化錫やシリカ、珪酸アルミニウムといったブロッキング防止剤を添加する方法(特許文献1〜3参照)、また、ポリメタクリル酸やポリエステル、ポリウレタン、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂などからなる接着層にシリカ等の無機フィラーを添加する方法(特許文献4参照)、更には、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂に4級アンモニウム塩型カチオン系界面活性剤を分散した組成物からなる帯電防止性ブロッキング防止層を形成する方法(特許文献5参照)が提案されている。しかしながら、これらの発明は、ロール状巻物として輸送や保管がなされる際に高温又は高温多湿環境下に曝された場合でのブロッキング耐性が不十分であった。
【0005】
更に近年、ICを始めとして、トランジスター、ダイオード、コンデンサー、圧電素子レジスターなどの表面実装用電子部品は、上記装填工程内で、電子部品の有無、部品の収納方向、リードの欠損や曲がりを検査機で検査される。しかし、プラスチックの多くは電気絶縁性が高いため、発生した静電気が容易に蓄積して、埃などが表面に付着し、内容物である電子部品を鮮明に確認できず生産ラインが停止するなどといった問題がある。
上記問題の対策として、カバーテープの最表面に帯電防止剤を塗布することがなされている。
【0006】
一般的に用いられる帯電防止剤としては、空気中の水分を吸着することにより効果を発揮する界面活性剤のような低分子型や高分子型帯電防止剤があるが、低分子型では、塵や埃などの付着を制御するのに十分な帯電防止性能が得られ難く、テープ巻取り時に塗工面とは反対側の表面に移行してしまい、性能に悪影響を及ぼすことが問題として挙げられる(特許文献6)。また、高分子型帯電防止剤でも周囲の湿気や水分の影響を受けやすく、低湿度環境下(23℃×20%R.H.雰囲気以下)で、帯電防止性能が低下する(特許文献7、8)など、十分な帯電防止性能を維持することは困難であった。
【0007】
【特許文献1】特開平8−119373号公報
【特許文献2】特開2000−280411号公報
【特許文献3】特開2011−63662号公報
【特許文献4】特開2000−327024号公報
【特許文献5】特開2004−51105号公報
【特許文献6】特開2009−40835号公報
【特許文献7】特開2010−132927号公報
【特許文献8】特開2008−296447号公報
【発明の概要】
【0008】
本発明の主たる課題は、上述した問題点を少なくとも部分的に解消しうるカバーテープを提供することにある。
また、本発明の他の課題は、高温又は高温多湿環境下に曝されてもブロッキングの発生がなく、低湿度環境下でも安定した帯電防止性能を維持し、電子部品をキャリアテープに収納する工程で弊害の無いカバーテープを提供することにある。
【0009】
本発明者等は、これらの課題について鋭意検討した結果、表面に無機系帯電防止剤とワックスを含有させた帯電防止層を形成することで、前記の課題を解決することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
即ち、本発明の一態様によれば、基材層と樹脂製キャリアテープにヒートシールされる接着層とを少なくとも有するカバーテープにおいて、基材層の接着層とは反対側の面に帯電防止層を有し、該帯電防止層が少なくとも無機系帯電防止剤と平均粒径が0.2〜3.0μmのワックスを含有し、帯電防止層を構成する成分全体に対し、無機系帯電防止剤の含有量が40〜80質量%、ワックスの含有量が10〜50質量%であり、23℃×30%R.H.雰囲気下での基材層側の表面抵抗率が1013Ω/□以下であることを特徴とするカバーテープが提供される。ここで、基材層側の表面抵抗率とは、基材層の上記帯電防止層側の表面の表面抵抗率のことである。また、カバーテープは、上記帯電防止層が上記基材層の表面側に設けられてカバーテープの表面層を構成しさえすれば、上記基材層と上記接着層の間に中間層等の他の層が介在されてもよく、また中間層等の他の層が介在されるのが強度向上等の点でむしろ好ましい。
【0011】
本発明の好ましい態様では、上記無機系帯電防止剤は、ケイ酸マグネシウムあるいはスメクタイト、例えばモンモリロナイト、バイデライト、ノントロナイト、ヘクトライト、サボナイトのいずれか又はこれらの組み合わせであり、他の好ましい態様では、上記ワックスは、植物由来のカルナバワックス、ライスワックス、キャンデリラワックス、石油由来のパラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、合成ワックスであるオレフィン系ワックス、エステル系ワックス、ケトン系ワックス、アミド系ワックスのいずれか又はこれらの組み合わせである。
【0012】
更に、本発明の好ましい態様では、上記帯電防止層は、バインダー成分として、ポリウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、エチレン−酢酸ビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ブタジエン系樹脂、スチレン系樹脂、アクリル変性ポリエステル樹脂及びこれらの組合せからなる群から選択される熱可塑性樹脂を含有し、他の好ましい態様では、上記接着層は、樹脂製キャリアテープにヒートシール可能なポリウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、エチレン−酢酸ビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ブタジエン系樹脂、水素添加系を含むスチレン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂のいずれか又はこれらの組み合わせを含有し、更に他の好ましい態様では、上記基材層は、ポリエステル、ポリオレフィンまたはナイロンからなる樹脂製フィルムのいずれか一層か又はその複数層を積層したものである。
【0013】
更に本発明の一態様では、キャリアテープにヒートシールされうる接着層の表面側にも帯電防止層又は導電層を設けてもよく、この接着層側の帯電防止層は、上記基材層の表面に設けられる帯電防止層と組成等が同一でも異なるものでもよい。
【0014】
本発明は、無機系帯電防止剤とワックスを含有した帯電防止層を基材層の表面に形成することで、高温又は高温多湿環境下に曝されてもブロッキングの発生がなく低湿度環境下でも安定した帯電防止性能を維持し、電子部品をキャリアテープに収納する工程で弊害の無いカバーテープが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態に係るカバーテープの積層構造を示す概略断面図である。
図2】本発明の他の実施形態に係るカバーテープの積層構造を示す概略断面図である。
図3】本発明の更に他の実施形態に係るカバーテープの積層構造を示す概略断面図である。
図4】カバーテープの耐ブロッキング性を評価する方法を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態に係るカバーテープの構造を、図面を参照しながら説明する。
図1に示すように、本発明の一実施形態に係るカバーテープ10は、基材層11と、該基材層11の裏側に積層される中間層12と、該中間層12の裏側に積層される接着層13と、基材層11の中間層12(又は接着層13)とは反対側の表側の面に積層される帯電防止層14とを含む構造を有する。
【0017】
基材層11は、ポリエステル、ポリオレフィン又はナイロンからなる樹脂製フィルムのいずれか一層か又はその複数層を積層したものである。特に好ましい基材層11の材料は、二軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)、二軸延伸ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリプロピレン、ポリエチレン、二軸延伸した6,6−ナイロン、6−ナイロン等である。基材層11の厚みとしては、薄すぎるとカバーテープ自体の引張り強度が低くなるためカバーテープを剥離する際に破断が発生しやすい一方、厚すぎるとキャリアテープに対するヒートシール性の低下を招くため、9〜35μmの厚みが好ましい。
【0018】
中間層12を構成する樹脂としては、低密度ポリエチレン、直鎖低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレンや、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−1−ブテン共重合体、エチレン−1−ペンテン共重合体、エチレン−1−ヘキセン共重合体、エチレン−1−オクテン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、ポリウレタンが挙げられ、これらを単独あるいは二種以上の混合物として併用することも可能である。その厚さは、10〜50μmが好ましく、10μm未満では引き裂き強度に劣り、50μmを超えると接着性に問題が生じる場合がある。
【0019】
接着層13は、接着性を有する熱可塑性樹脂から形成され、該熱可塑性樹脂としては、ポリウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、エチレン−酢酸ビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ブタジエン系樹脂、水素添加系を含むスチレン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂のいずれか又はこれらの組み合わせが好適に用いられる。接着層13の厚みは、キャリアテープとのヒートシールが適切になされる範囲であれば、特に制限はなく、例えば5〜40μmである。
【0020】
帯電防止層14は、無機系帯電防止剤とワックスを含有する。無機系帯電防止剤としては、ケイ酸マグネシウム又はスメクタイト、例えばモンモリロナイト、バイデライト、ノントロナイト、ヘクトライト、サボナイトのいずれか又はこれらの組み合わせが好適に用いられる。帯電防止層を構成する成分全体に対する無機系帯電防止剤の含有量としては、40〜80質量%が好ましい。40質量%未満では帯電防止性能が発現し難くなる一方、80質量%を超えると基材層11との密着性が悪くなることがある。
【0021】
帯電防止層14に含有されるワックスとしては、植物由来のカルナバワックス、ライスワックス、キャンデリラワックス、石油由来のパラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、合成ワックスであるオレフィン系ワックス、エステル系ワックス、ケトン系ワックス、アミド系ワックスのいずれか又はこれらの組み合わせが好適に用いられる。帯電防止層を構成する成分全体に対するワックスの含有量としては、10〜50質量%が好ましく、更に好ましくは10〜30質量%、又は15〜25質量%である。10質量%未満では十分にブロッキングを抑制することが困難となり、50質量%を超えると帯電防止性能を阻害することがある。
【0022】
帯電防止層14にワックスは微粒子の形態で均一分散させられるが、その平均粒径は、0.2〜3.0μmであり、好ましくは0.5〜3.0μmである。0.2μm未満では十分なブロッキング防止性能が得られ難く、3.0μmを超えると帯電防止性能を阻害する恐れがある。
尚、後述するように、帯電防止層14は、帯電防止剤やワックスを含有する塗工液を調製し、基材層11の表面にこれを塗工することによって形成されるが、ワックスの上記平均粒径は、塗工液に含まれるワックス分散液中におけるワックス粒子の平均粒径、厳密には重量平均粒径であり、例えばコールターカウンター法又はマイクロトラック法等により測定することができる。
【0023】
帯電防止層14には、バインダー成分として熱可塑性樹脂を更に含有させてもよい。かかる熱可塑性樹脂としては、ポリウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、エチレン−酢酸ビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ブタジエン系樹脂、スチレン系樹脂、アクリル変性ポリエステル樹脂を好適に用いることができる。
【0024】
帯電防止層14の厚さは0.02〜0.5μm、好ましくは0.05〜0.3μm、更に好ましくは0.05〜0.2μmの範囲である。帯電防止層の厚さが0.02μm未満では、十分な帯電防止性能が発現しないことがあり、一方、帯電防止層の厚さが0.5μmを越えると帯電防止層の凝集破壊により帯電防止層自体が脱離し、異物として問題となる恐れがある。なお、後述するように、帯電防止層は、通常は帯電防止層を構成する各種成分を溶解又は分散させた液を塗布したり、あるいは帯電防止層を構成する各種成分のエマルジョンを塗布する方法によって形成されるが、塗布法で形成した場合、ここでいう厚みとは乾燥後の厚みである。
【0025】
図2は、本発明の別の実施形態に係るカバーテープの構造を示すもので、図1に示したカバーテープ10と同一の構造の部分については、図1における符号と同一の符号を付してその説明を省略する。
本実施形態においては、接着層13の表面に、更なる帯電防止層もしくは導電層15が形成される。更なる帯電防止層15には、基材層11の表面に設けられる帯電防止層14と同一の成分を用いてもよいが、別の成分を用いてもよい。一実施形態では、帯電防止層15の帯電防止剤は、カチオン性、アニオン性、ノニオン性、両性、高分子型のいずれの帯電防止剤でも用いることができる。また、導電層15が形成される場合、導電剤としては、例えば硫化亜鉛、硫化銅、硫化カドミウム、硫化ニッケル、硫化パラジウム等の硫化物に導電性をもたせた導電性微粒子、硫酸バリウム、または酸化錫、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化チタン等の金属酸化物、導電性カーボン微粒子、ケイ素含有有機化合物、もしくは表面金属メッキ微粒子などが使用できる。更に、これら更なる帯電防止層又は導電層15には、ポリウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、エチレン−酢酸ビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ブタジエン系樹脂、水素添加系を含むスチレン系樹脂、アクリル変性ポリエステル樹脂及びこれらの組合せからなるバインダー成分となる熱可塑性樹脂を含有させることができ、該更なる帯電防止層又は導電層15自体がヒートシール性を有していてもよい。
【0026】
図3は、本発明の更に別の実施形態に係るカバーテープの構造を示すもので、図1に示したカバーテープ10の構造と比較すると、図1のカバーテープ10において中間層12が省かれた点が異なるのみである。
【0027】
上記実施形態に係る図1〜3に示したカバーテープにおいて、その全体の厚さは40〜75μmの範囲とするものが好ましい。40μm未満では高速でカバーテープを剥がした際に切れやすく、75μmを超えると、カバーテープをキャリアテープにヒートシールする際に熱の伝わりが悪くなることでシール状態が不安定になるのみならず、カバーテープをキャリアテープから剥がす際の剥離強度のバラツキが大きくなるためである。
【0028】
また上記実施形態に係るカバーテープ10において、キャリアテープからカバーテープ10を剥離する際の剥離形態としては特に限定されず、キャリアテープとカバーテープ10の接着層13(図1、3の場合)もしくは更なる帯電防止層又は導電層15(図2の場合)の界面で剥離される界面剥離、カバーテープ10の構成内部での凝集破壊や界面での剥離による凝集剥離や層間剥離のいずれの形態であってもよい。
【0029】
さらに、上記カバーテープ10は、何れの実施形態に係るものにおいても、その帯電防止層14側の23℃×30%R.H.雰囲気下での表面抵抗率が、1013Ω/□以下、好ましくは1012Ω/□以下の帯電防止性能を有している。表面抵抗率が1013Ω/□を超えると帯電防止層14側に埃が付着することがあり、部品を収納する際もしくはキャリアテープからカバーテープ10を剥離した部品を実装する際に、部品に埃が付着して本来の機能を発現しないことがある。
【0030】
上記カバーテープの製造方法は、特に限定されるものではなく、従来から用いられている方法を用いることができる。例えば、基材層11と接着層13、並びにこれらの層間に中間層12が介在される場合は中間層12も含めて、ドライラミネート又は押し出しラミネート法によって積層体を製造する。ついで、この積層体の基材層11側の表面に帯電防止層14を、例えば、グラビアコーター、リバースコーター、キスコーター、エアナイフコーター、メイヤーバーコーター、ディップコーター等により塗工する。この塗工に際しては、帯電防止剤やワックス並びにその他熱可塑性樹脂等を含有し、特に前述のように平均粒径が所定範囲の微粒状ワックスが均一に分散した分散液を塗工液として調製し、これを積層体に塗工する。また接着層13の側に更なる帯電防止層又は導電層15を設ける場合も、同様の塗工方法を使用することができる。
【0031】
尚、積層構造の作製に際しては、各層の接触面に接着剤を塗布してもよい。また塗工に際しては、必要に応じて、塗工前に塗工される層の表面にコロナ処理やオゾン処理を施すことで塗工剤の濡れ性を向上させるようにしてもよく、特にコロナ処理が好ましい。
【実施例】
【0032】
以下、本発明を実施例によって詳細に説明するが、本発明の範囲はこれら実施例によって限定されるものではない。尚、ここで作製したカバーテープの各種特性は下記に示す評価方法によって評価した。
【0033】
(1)耐ブロッキング性
図4を参照しながら、カバーテープの耐ブロッキング性評価方法を説明する。
直径93mmのプラスチックコア20に幅5.5mm×長さ500mでスリット加工してカバーテープの基材層表面の帯電防止層側が外方となるようレコード状に巻いた後に、60℃ドライ環境および40℃×90%R.H.環境にそれぞれ24時間投入する。各環境下から取り出した後、23℃×50%R.H.の環境下に1時間放置し、同じく23℃×50%R.H.の雰囲気下で巻芯部の残りが20m程度になるまで繰り出した状態で、巻芯部の20mを残してカバーテープを切断する。図4に示す治具21に巻芯部のスリット品22を時計回りの向きでテープを繰り出せるように取り付けた後、冶具の「0」の位置(図4中、時計盤で方向を特定して3時の位置)で静置した状態でカバーテープを20cm繰り出し、その先端部に1gの荷重23を取り付ける(図4(a))。ついで、繰り出し部が冶具上の「6」(図4中、時計盤で方向を特定して9時の位置)に来るように時計回りに180°回転させる(図4(b))。回転直後に1gの荷重23により巻取状態のカバーテープから自然に繰り出し部が剥離されて移動した後に繰り出し部が停止する位置を読み取る(例えば図4(c)に示すようになる)。
【0034】
上記方法によれば、荷重23が示す治具21上の評価点数「0」から「6」がブロッキングの度合いを示す。すなわち、評価点数が「6」ではブロッキングした状態となり、評価点数が小さくなるに連れて耐ブロッキング性に優れることを意味し、評価点数が「0」であれば全くブロッキングしていないことを示すこととなる。この方法は耐ブロッキング性の評価としては非常に厳しいものであることから、評価点数が「3」以下であれば耐ブロッキング性を有するカバーテープであるものと判断できる。
【0035】
(2)表面抵抗率(23℃×50%R.H.)
耐ブロッキング性評価と同じ環境下にスリット加工品を投入し、同様に巻芯部を用いて三菱化学社のハイレスタUP MCP−HT450を使用し、JIS K 6911の方法にて、23℃×50%R.H.雰囲気下、印加電圧500Vで基材層表面の帯電防止層側の表面抵抗率を測定する。
【0036】
(3)表面抵抗率(23℃×30%R.H.)
上記(2)と同じ測定器を用いて23℃×30%R.H.雰囲気下に24時間放置した後に同一雰囲気下にて、印加電圧500Vで基材層表面の帯電防止層側の表面抵抗率を測定する。
【0037】
また、実施例及び比較例において、基材層11、中間層12、接着層13、帯電防止層14及び接着層13の表面に形成した帯電防止層15について(図2参照)、以下の原料を用いた。
(基材層11の原料)
・ 二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡社製)、厚み12μm
(中間層12の原料)
・ m−LLDPE:ハーモレックスNH745N(日本ポリエチレン社製)
(接着層13の樹脂)
・ スチレン−ブタジエンブロック共重合体1:クリアレン(電気化学工業社製、ピカット軟化温度:76℃、スチレン比:83質量%)
・ スチレン−ブタジエンブロック共重合体2:TR−2000(JSR社製、ピカット軟化温度:45℃、スチレン比:40質量%)
・ ハイインパクトポリスチレン:トーヨースチロールE640N(東洋スチレン社製、ピカット軟化温度:99℃)
・ エチレン−α−オレフィンランダム共重合体:タフマーA(三井化学社製)
・ アクリル系樹脂:EC−242(新中村化学工業社製、Tg=60℃)
【0038】
(帯電防止層14)
・ ワックス成分:
ケミパールW500(三井化学社製、オレフィン系ワックス水分散体、固形分:40%、平均粒径:2.5μm(コールターカウンター法))
ケミパールW900(三井化学社製、オレフィン系ワックス水分散体、固形分:40%、平均粒径:0.6μm(マイクロトラック法))
ケミパールW100(三井化学社製、オレフィン系ワックス水分散体、固形分:40%、平均粒径:3.0μm(コールターカウンター法))
ケミパールW400(三井化学社製、オレフィン系ワックス水分散体、固形分:40%、平均粒径:4.0μm(コールターカウンター法))
MYE−35G(丸芳化学社製、オレフィン系ワックス水分散体、固形分:35%、平均粒径:0.2μm)
AQACER498(BYK社製、パラフィンワックス水分散体、固形分:50%、平均粒径:0.1μm(へグマンゲージ法))
・ バインダー樹脂:
エリーテルKA3556(ユニチカ社製、ポリエステル樹脂、ガラス転移温度:80℃)
・ 無機系帯電防止剤:
ラポナイトS482(Rockwood Additives社製、ケイ酸マグネシウム、燐片状(短辺:1nm、長辺:25nm)
(帯電防止層15)
・ 帯電防止剤:
ボンディップPM(コニシ社製、四級アンモニウムアクリレートエチル硫酸塩)
・ バインダー樹脂:
NKポリマーMK−100EC−242(新中村化学工業社製、ガラス転移温度:55℃、メタクリル酸メチル−アクリル酸ブチルのランダム共重合体のエマルジョン溶液)
・ アンチブロッキング材:
AERODISP W630(日本アエロジル社製、球状アルミナ、平均粒径:0.12μm)
【0039】
<実施例1>
スチレン−ブタジエンブロック共重合体「クリアレン」(電気化学工業社製)42.5質量%と、スチレン−ブタジエンブロック共重合体「TR−2000」(JSR社製)22.5質量%と、エチレン−α−オレフィンランダム共重合体「タフマーA」(三井化学社製)25質量%と、ハイインパクトポリスチレン:トーヨースチロール「E640N」(東洋スチレン社製)10質量%を、タンブラーを用いてプリブレンドし、径40mmの単軸押出機を用いて210℃で混練し、毎分20mのライン速度で接着層(図2中、13)を構成する樹脂組成物を得た。この接着層の樹脂組成物を用いて、インフレーション押出機を用いて製膜を行い、接着層を構成する15μm厚のフィルムを得た。更に、基材層(図2中、11)を構成する二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(厚み12μm)に二液硬化型ポリウレタン型アンカーコート剤を、ロールコーターを用いて塗布しておき、当該塗布面と上述した接着層のフィルムとの間に、中間層(図2中、12)を構成する溶融したm−LLDPE「ハーモレックスNH745N」(日本ポリエチレン社製)を25μmの厚みになるように押出し、押出ラミネート法によって積層フィルム(図2中、11〜13の積層体)を得た。積層フィルムの基材層と接着層の両表面にコロナ処理した後、基材層表面に帯電防止層1(図2中、14)として予め水で希釈して固形分濃度が3.5%となるように作製しておいた無機系帯電防止剤水溶液「ラポナイトS482」(Rockwood Additives社製)60質量%とワックス成分となる「ケミパールW500」(三井化学社製)25質量%及びポリエステル樹脂「KA3556」(ユニチカ社製)15質量%を混合した分散液をグラビアコーターにより乾燥後の塗工厚みが0.1μmになるように塗布し、次いで接着層表面に形成させる帯電防止層2(図2中、15)として予め作製しておいたボンディップPM(コニシ社製)31質量%、NKポリマーMK−100EC−242(新中村化学工業社製)25質量%とAERODISP W630(日本アエロジル社製)44質量%を混合した分散液を、グラビアコーターを用いて、乾燥後の塗工厚みが0.3μmになるように塗布したカバーテープを得た。
【0040】
<実施例2〜9、比較例1〜9>
帯電防止層(図2中、14)を、表1及び表2に記載した組成比率にて形成した以外は、実施例1と同様にして本発明の実施例2〜3に係るカバーテープ及び比較例1、3〜9に係るカバーテープを作製した。また、帯電防止層を表1及び表2に記載した組成比率にて形成し、接着層(図2中、13)をアクリル系樹脂「EC−242」(新中村化学工業社製)によって形成した以外は、実施例1と同様にして本発明の実施例4〜9に係るカバーテープ及び比較例2に係るカバーテープを作製した。
【0041】
上記実施例1〜9及び比較例1〜9に係るカバーテープについて、前述した各種特性を求めた。その結果を表1及び表2に併せてまとめる。
【表1】
【表2】
この結果から分かるように、実施例1〜9に係るカバーテープは、いずれも、高温環境下及び高温高湿環境下で優れた耐ブロッキング性を示し、且つ、低湿度下でも安定した帯電防止性能を示した。これに対して、比較例1〜9に係るカバーテープは、高温環境下又は高温高湿環境下での耐ブロッキング性か、低湿度下での帯電防止性能の少なくともいずれかが所望の性能を達成できなかった。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明により提供されるカバーテープは、テーピングマシンにより電子部品をキャリアテープに収納する生産工程における生産停止や収納部品の検査不可といったトラブルを解消するものであり、具体的にはカバーテープのブロッキングを抑制することで繰り出し安定性を実現し、且つ低湿度でも安定した帯電防止性能を持たせることで電子部品の収納効率を高めることができるものである。
【符号の説明】
【0043】
10 カバーテープ
11 基材層
12 中間層
13 接着層
14 帯電防止層
15 帯電防止層又は導電層
20 プラスチックコア
21 耐ブロッキング性評価用治具
22 巻芯部のスリット品
23 荷重
1〜6 耐ブロッキング性のスコア
図1
図2
図3
図4