(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6113075
(24)【登録日】2017年3月24日
(45)【発行日】2017年4月12日
(54)【発明の名称】内燃機関用のピストンおよび該ピストンの製造方法
(51)【国際特許分類】
F02F 3/18 20060101AFI20170403BHJP
【FI】
F02F3/18
【請求項の数】7
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2013-543525(P2013-543525)
(86)(22)【出願日】2011年12月15日
(65)【公表番号】特表2013-545927(P2013-545927A)
(43)【公表日】2013年12月26日
(86)【国際出願番号】DE2011002128
(87)【国際公開番号】WO2012079566
(87)【国際公開日】20120621
【審査請求日】2014年11月26日
(31)【優先権主張番号】102010055161.9
(32)【優先日】2010年12月18日
(33)【優先権主張国】DE
(31)【優先権主張番号】102011114105.0
(32)【優先日】2011年9月22日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】506292974
【氏名又は名称】マーレ インターナショナル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】MAHLE International GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】ウルリヒ ビショフベアガー
【審査官】
田村 耕作
(56)【参考文献】
【文献】
英国特許出願公開第00492383(GB,A)
【文献】
特開昭52−092034(JP,A)
【文献】
特開2006−299979(JP,A)
【文献】
特開2005−127300(JP,A)
【文献】
米国特許第01841796(US,A)
【文献】
実開昭59−047340(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02F 3/16− 3/22
F01P 1/00−11/20
F16J 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピストンクラウン(11)と、ピストンスカート(16)とを備えた、内燃機関用のピストン(10)であって、
前記ピストンクラウン(11)は、環状に延びるリング部分(15)ならびに該リング部分(15)の領域に環状に延びるクーリングチャンネル(23)を有し、
前記ピストンスカート(16)は、各々1つのボス孔(18)を備えた2つのピストンボス(17)を有し、
該ピストンボス(17)は、ボス結合部(19)を介して前記ピストンクラウン(11)の下面(11a)に配置されていて、前記ピストンボス(17)は、2つの摺動面(21,22)を介して互いに結合されている、内燃機関用のピストン(10)において、
前記ピストン(10)は、鋼を含む材料から成るボックス型ピストンとして形成されており、
前記ピストンボス(17)の内部に、外方に向かって閉鎖された軸方向の孔(24a,24b,24c,24d)が4つ設けられており、該孔(24a,24b,24c,24d)は、1つの摺動面(21,22)と、1つのボス孔(18)との間に各1つずつ配置されており、前記4つの孔(24a,24b,24c,24d)のうち少なくとも1つの孔は、閉鎖エレメント(26)により閉鎖されており、
前記4つの孔(24a,24b,24c,24d)の全ての孔は、前記クーリングチャンネル(23)に開口しており、
前記クーリングチャンネル(23)と、前記4つの孔(24a,24b,24c,24d)の全ての孔とが、ナトリウムおよび/またはカリウムから成る充填物(27)を有していることを特徴とする、内燃機関用のピストン。
【請求項2】
前記閉鎖エレメント(26)は、前記孔内に圧入されているか、またはピストンに溶接されている、請求項1記載のピストン。
【請求項3】
前記充填物(27)は、前記クーリングチャンネル(23)の半分の高さまでの充填高さを有している、請求項1又は2記載のピストン。
【請求項4】
前記充填物(27)は、前記クーリングチャンネルの容積の3%から5%までの充填量を有している、請求項1から3までのいずれか1項記載のピストン。
【請求項5】
前記充填物(27)は、22質量%のナトリウムと、78質量%のカリウムとを有するカリウム−ナトリウム合金から成っている、請求項1から4までのいずれか1項記載のピストン。
【請求項6】
前記充填物(27)は、リチウムおよび/または窒化リチウムを含む、請求項1から5までのいずれか1項記載のピストン。
【請求項7】
前記充填物(27)は、酸化ナトリウムおよび/または酸化カリウムを含む、請求項1から5までのいずれか1項記載のピストン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ピストンクラウンとピストンスカートとを備えた内燃機関用のピストンであって、ピストンクラウンが、環状に延びるリング溝部分と、該リング溝の領域において環状に延びるクーリングチャンネルとを備え、ピストンスカートが、ボス孔を備えたピストンボスを備え、該ピストンボスは、ボス結合部を介してピストンクラウンの下面に配置されており、ピストンボスが、摺動面を介して互いに結合されている、内燃機関用のピストンに関する。
【0002】
現代の内燃機関では、ピストンはピストン頂面の領域において常に比較的高い温度負荷にさらされている。このことは、運転中にピストンクラウンとピストンスカートとの間の著しい温度差をもたらす。したがって、常温のエンジンにおけるピストンの組込みの遊びは、高温のエンジンにおける組込みの遊びとは異なっている。
【0003】
本発明の課題は、冒頭で述べたピストンを改良して、運転中にピストンクラウンとピストンスカートとの間の均一な温度分配が生じるようにすることである。
【0004】
この課題を解決した本発明の構成によれば、ピストンボスの内部に、外方に向かって閉じられた軸方向の少なくとも1つの孔が設けられていて、該孔は、摺動面と、ボス孔との間に配置されており、少なくとも1つの孔は、クーリングチャンネルに開口し、クーリングチャンネルと少なくとも1つの孔とが、ナトリウムおよび/またはカリウムから成る充填物を含んでいるようにした。
【0005】
本発明によるピストンは、ピストン頂面の領域で発生した熱が、ピストンクラウンを介して、ピストンボスへと導かれ、比較的大面積の摺動面を介して放出されることにより優れている。これにより、運転中に、均一な温度分配が、ピストン全体にわたって達成される。さらに、ピストン全体の効率的な冷却が得られる。
【0006】
付加的にピストンクラウンの下面が冷却オイルで冷却される場合、オイルカーボンの形成が阻止される。全体的に、特に冷却オイルの消費が減少される。
【0007】
常温のエンジンと高温のエンジンとの間のピストンの組込み遊びの差が減じられるので、既にピストンの組込み時に、従来よりも小さな遊びが生じ得る。まだ冷たいエンジンでもピストンの摺動面が加熱されることによって、さらに運転中に摩擦損失が減じられる。
【0008】
有利な実施の形態は請求項2以下に記載されている。
【0009】
有利には、4つの孔が設けられており、該4つの孔は、摺動面とボス孔との間に配置されている。これにより、ピストンにおいて特に均一な温度分配を達成することができる。
【0010】
少なくとも1つの孔は、有利には閉鎖エレメントにより閉じられている。この閉鎖エレメントはたとえば孔内に圧入されているか、またはピストンに溶接されている。これにより冷却剤が進出することを阻止することができる。
【0011】
冷却手段の充填は、有利にはクーリングチャンネルの半分の高さまでの充填高さを有している。これにより、振とう効果、ひいては特に効果的な冷却が達成される。
【0012】
特に、エンジン運転中にピストン内に流入する燃焼熱の割合を制限することが望ましい場合、このことは、充填された冷却剤の量により制御することができる。ピストンの機能を確実にするためには、ときにクーリングチャンネル容積の3−5%を冷却剤で充填することで既に充分であることが判った。
【0013】
充填物は、カリウム、ナトリウムまたはこれら両方の金属から成る合金から成っていてよい。充填物が、22質量%のナトリウムと78質量%のカリウムを有するカリウム−ナトリウム合金であると特に有利である。なぜならば、このカリウム−ナトリウム合金は、特に低い融点を有しているからである。
【0014】
充填物は、付加的にリチウムおよび/または窒化リチウムを含んでいる。充填時に保護ガスとして窒素が使用される場合、窒素は、リチウムと反応して窒化リチウムとなり、これにより冷却通路から取り除かれ得る。
【0015】
充填中に、場合によっては存在する乾いた空気と冷却剤とが反応した場合、充填物は、さらに酸化ナトリウムおよび/または酸化カリウムを含み得る。
【0016】
本発明によるピストンは、鉄ベースの材料、たとえば析出硬化された鋼、調質鋼、硬質鋳鉄、およびねずみ鋳鉄(層状グラファイトを含む鋳鉄)を含む群から成る材料から成っていてよい。
【0017】
本発明の実施の形態を以下に添付の図面につき詳しく説明する。図面は概略的であり正しい縮尺で示されたものではない。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明によるピストンの実施の形態を部分的に断面で示す図である。
【
図3】
図1のIII−III線に沿った断面図である。
【0019】
図1から
図4は、本発明によるピストン10の実施の形態を示している。このピストン10は、一部分から成るピストンであっても、複数の部分から成るピストンであってもよい。ピストン10は、鋼材料および/または軽金属材料から製造されていてよい。
図1から
図3には、例示的に一体的なボックス型ピストン(Kastenkolben)10が示されている。ピストン10は、燃焼キャビティ13を有するピストン頂面12と、環状に延びる火炎ウェブ14と、ピストンリング(図示せず)を収容するリング溝部分15とを備えたピストンクラウン11を有している。リング溝部分15が位置する高さに、環状に延びる冷却通路もしくはクーリングチャンネル23が設けられている。ピストン10は、さらにピストンボス17と、ピストンピン(図示せず)を収容するボス孔18とを備えたピストンスカート16を有している。ピストンボス17は、ボス結合部19を介してピストンクラウン11の下面11aに結合されている。ピストンボス17は、摺動面21,22を介して互いに結合されている(特に
図2を参照)。
【0020】
ピストンスカート16は、本実施の形態では、4つの軸方向の孔24a,24b,24c,24dを有している。これらの孔24a−24dは、それぞれピストンボス17に加工形成されていて、摺動面21,22と、ボス孔18との間に配置されている。孔24a−24dは、クーリングチャンネル23に開口している。本実施の形態では、ピストン10は、たとえば自体公知の形式で鋳造されていてよく、この場合、クーリングチャンネル23と孔24a−24dとは自体公知の形式でソルトコア(塩中子)を用いて加工形成され得る。重要なのは、少なくとも1つの孔24aが、外方に向かう開口25を有していることである。本発明によれば、冷却剤27、すなわちナトリウム、カリウムまたはこれら両金属から成る合金が、開口25を通じて孔24a内に充填される。孔24aから、冷却剤27はクーリングチャンネル23内ならびに別の孔24b−24d内へと分配される。開口25は、次いで、本実施の形態では圧入された鋼球26により密に閉じられる。開口25は、たとえばカバーにより被せ溶接することによって、またはキャップを圧入することにより閉じられてもよい(図示せず)。
【0021】
孔24a−24dの大きさおよび冷却剤27の充填量は、ピストン10のサイズおよび材料に適合される。平均的には、ピストン10毎に約10g〜40gの冷却剤27が必要である。冷却出力は、供給された冷却剤27の量を介して制御することができる。有利には、クーリングチャンネル23内で、クーリングチャンネル23のほぼ半分の高さに相当する充填状態が生じる。この場合、運転中に、自体公知の振とう効果が、効果的な冷却のために付加的に利用され得る。運転中に220℃の温度を有する冷却剤27としてのナトリウムに対しては、350kW/m
2の冷却出力において、約260℃のピストン10の最大表面温度が生じる。付加的には、ピストンクラウン11の下面11aは冷却オイルの吹き付けにより冷却され得る。
【0022】
孔24aの充填のためには、開口25を通じてランス(槍状体)が導入され、窒素または別の適当な不活性ガスを用いて、または乾燥空気を用いて洗浄が行われる。室温では固体の冷却剤27、たとえばナトリウムおよび/またはカリウムを導入するために、これらのナトリウムおよび/またはカリウムは保護ガス(たとえば窒素、不活性ガスまたは乾燥空気)のもとでプレスにより開口25を通じて押し込まれるので、冷却剤27は、線材状に孔24aもしくはクーリングチャンネル23内に押し込まれ得る。純粋な金属の代わりに、ナトリウムおよびカリウムから成る合金が使用され得る。このナトリウムおよびカリウムから成る合金は室温において既に液状である。孔24aを充填する別の方法は、窒素、不活性ガスまたは乾燥空気での洗浄後に、孔24a−24dおよびクーリングチャンネル23が排気され、冷却剤27が真空内に導入されることにより優れている。したがって、冷却剤27は、比較的容易にクーリングチャンネル23内で往復移動し、かつ孔24a−24d内へかつ孔24a−24d外へと移動することができる。なぜならば、存在する保護ガスにより阻止されないからである。
【0023】
実際には、燃焼熱の、エンジン運転中にピストン内へ流出する割合を制限することが望ましい場合、このことは充填された冷却剤の量により制御することができることが判った。さらに、ピストンの機能を保証するためには、ときに3−5%のクーリングチャンネル容積を冷却剤で充填することだけで既に充分であることが判った。
【0024】
クーリングチャンネル23もしくは孔24a−24dから保護ガスを取り除く別の可能性は、保護ガスとしての窒素または乾燥空気(つまり、実質的に窒素と酸素との混合物)を使用し、冷却剤27に少量のリチウムを添加することにある。この場合、経験的にはガス空間(つまり、冷却通路23の容積+孔24a−24dの容積)の平方センチメートルあたり約1.8mg〜2.0mgのリチウムが使用される。ナトリウムおよびカリウムが酸素と反応して酸化物になる間に、リチウムは窒素と反応して窒化リチウムとなる。したがって保護ガスは、実際には完全に固体として冷却剤27に結合される。