(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記組成物を、80℃で60分間加熱硬化させて得られる厚さ100μmのフィルムの、DMSにより5℃/分の昇温速度で測定されるガラス転移温度Tgが30〜110℃である、請求項1〜8のいずれか一項に記載のシール剤。
前記組成物を、80℃で60分間加熱硬化させて得られる厚さ100μmのフィルムの、DMSにより5℃/分の昇温速度で測定されるガラス転移温度Tgが10〜40℃である、請求項1〜8のいずれか一項に記載のシール剤。
電気泳動方式の表示素子を挟持する一対の基板の周縁部に形成される前記一対の基板同士の隙間に浸透させて、前記表示素子を一対の基板間に封止する、請求項1〜10のいずれか一項に記載のシール剤。
【発明を実施するための形態】
【0016】
1.組成物
本発明の組成物は、(1)23℃において液状のエポキシ樹脂と、(3)23℃において固体である2級アミンもしくは3級アミン、または2級アミンもしくは3級アミンを内包するマイクロカプセルと、(4)フィラーと、を含む樹脂組成物であって、前記(4)成分の含有量が、前記(1)成分と前記(3)成分との合計100重量部に対して、50〜300重量部である。E型粘度計により測定される25℃、2.5rpmにおける組成物の粘度が、0.5〜50Pa・sである。
【0017】
第1の形態の組成物は、組成物1g当たりのアルコキシル基の含有量が5.4×10
−4mol以下である。
【0018】
第2の形態の組成物は、(4)成分の質量平均粒子径d50が0.05〜30μmである。
【0019】
第3の形態の組成物は、水分含有量が0.9重量%以下である。
【0020】
本発明の組成物は、必要に応じて(2)酸無水物と、分子内に2以上のメルカプト基を有するチオール化合物とからなる群より選ばれる23℃において液状のエポキシ樹脂硬化剤や、(5)アルコキシル基を有する化合物、具体的にはシランカップリング剤などの任意成分をさらに含んでよい。
【0021】
以下で、(1)〜(
7)成分について説明する。本願明細書において「〜」で規定した数値範囲は、その数値範囲の境界値を含む。例えば、「10〜100」とは10以上100以下を意味する。
【0022】
(1)液状エポキシ樹脂
液状エポキシ樹脂は、23℃で液状のエポキシ樹脂である。液状エポキシ樹脂は、1分子内に2以上のエポキシ基を有し、かつ常温(23℃)で液状のエポキシ樹脂であれば、特に限定されない。液状エポキシ樹脂の例には、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、ビスフェノールE型、ビスフェノールS型、ビスフェノールAD型、および水添ビスフェノールA型等のビスフェノール型エポキシ樹脂;ジフェニルエーテル型エポキシ樹脂;フェノールノボラック型、クレゾールノボラック型、ビフェニルノボラック型、ビスフェノールノボラック型、ナフトールノボラック型、トリスフェノールノボラック型、ジシクロペンタジエンノボラック型等のノボラック型エポキシ樹脂;ビフェニル型エポキシ樹脂;ナフチル型エポキシ樹脂;トリフェノールメタン型、トリフェノールエタン型、トリフェノールプロパン型等のトリフェノールアルカン型エポキシ樹脂;脂環型エポキシ樹脂;脂肪族エポキシ樹脂;ポリサルファイド変性エポキシ樹脂;レゾルシン型エポキシ樹脂;グリシジルアミン型エポキシ樹脂等が含まれる。またこれらの構造を有する樹脂で官能基にアルコキシル基を含む樹脂を用いてもよい。
【0023】
グリシジルアミン型エポキシ樹脂としては、例えば分子中に下記式で表されるN−グリシジル基を有するエポキシ樹脂が挙げられる。
【化1】
【0024】
さらに、グリシジルアミン型エポキシ樹脂は、分子中に2以上のグリシジル基を有し、かつベンゼン核を1以上有するものが好ましい。このような化合物は、芳香族アミン化合物のアミノ基に、1または2つのエピハロヒドリンを反応させて得られ、モノグリシジルアミノ基またはジグリシジルアミノ基を有する化合物である。グリシジルアミン型エポキシ樹脂の具体例としては、N,N-ビス(2,3-エポキシプロピル)-4-(2,3-エポキシプロポキシ)メチルアニリン、N,N,N',N'-テトラグリシジル-4,4'-ジアミノジフェニルメタン等が挙げられる。
【0025】
上記エポキシ樹脂のなかでも、結晶性が比較的低く、塗布性や粘度安定性が良好であるなどの観点から、2官能のエポキシ樹脂が好ましく、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールE型エポキシ樹脂、およびポリサルファイド変性エポキシ樹脂等がより好ましい。
【0026】
液状エポキシ樹脂の重量平均分子量(Mw)は、200〜700であることが好ましく、300〜500であることがより好ましい。エポキシ樹脂の重量平均分子量は、例えば、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、ポリスチレンを標準として測定できる。
【0027】
液状エポキシ樹脂は、単独で用いてもよいし、種類や分子量の異なる2種類以上のエポキシ樹脂を組み合わせて用いてもよい。
【0028】
液状エポキシ樹脂の含有量は、組成物全体に対して5〜50重量%であることが好ましく、10〜45重量%であることがより好ましく、10〜30重量%であることがさらに好ましい。
【0029】
(2)液状エポキシ樹脂硬化剤
液状エポキシ樹脂硬化剤は、室温(23℃)で液状であり、かつ通常の保存条件下(室温、可視光線)ではエポキシ樹脂を急速には硬化させないが、熱を与えられるとエポキシ樹脂を硬化させる熱硬化剤であることが好ましい。これらの熱硬化剤は、硬化後の樹脂中に架橋基として組み込まれる。なかでも、80℃程度の比較的低温でエポキシ樹脂を硬化させる熱硬化剤が好ましく、具体的な例には、酸無水物や分子内に2以上のメルカプト基を有するチオール化合物などが好ましい。
【0030】
酸無水物の例には、無水フタル酸等の芳香族酸無水物;ヘキサヒドロ無水フタル酸、4-メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2,3-ジカルボン酸無水物、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2,3-ジカルボン酸無水物等の脂環式酸無水物;無水コハク酸等の脂肪族酸無水物などが含まれる。これらは単独で、または2種以上を混合して用いることが可能である。なかでも、室温で低粘度な液体であることから、脂環式酸無水物が好ましい。
【0031】
分子内に2以上のメルカプト基を有するチオール化合物の例には、メルカプト基含有カルボン酸と、多価アルコールとを反応させて得られるエステル化合物が含まれる。メルカプト基含有カルボン酸の例には、2-メルカプトプロピオン酸、2-メルカプトイソ酪酸、および3-メルカプトイソ酪酸などのメルカプト基含有脂肪族カルボン酸が含まれる。
【0032】
多価アルコールの例には、エチレングリコール、トリメチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,2-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、テトラメチレングリコール、テトラエチレングリコールなどの炭素数2〜10のアルキレングリコール類、ジエチレングリコール、グリセリン、ジプロピレングリコール、トリメチロールプロパン、ジトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、1,3,5-トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌル酸などが含まれ、好ましくはトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリスリトール、および1,3,5-トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌル酸など、3価以上の多価脂肪族アルコールである。
【0033】
分子内に2以上のメルカプト基を有するチオール化合物は、市販品として容易に入手できる。市販品として入手可能なチオール化合物の例には、1,4-ビス(3-メルカプトブチリルオキシ)ブタン(カレンズMTBD1 昭和電工(株)製)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトブチレート)(カレンズMT PE1 昭和電工(株)製)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)(PEMP SC有機化学(株)製)、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオネート)(TMMP SC有機化学(株)製)、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3-メルカプトプロピオネート)(DPMP SC有機化学(株)製)、ビスフェノールA型チオール(QX−11 三菱化学(株)製)、トリス-[(3-メルカプトプロピオニルオキシ)-エチル]-イソシアヌレート(TEMPIC SC有機化学(株)製)、テトラエチレングリコール ビス(3-メルカプトプロピオネート)(EGMP−4 SC有機化学(株)製)、1,2-ビス(2-メルカプトエチルチオ)-3-メルカプトプロパン(三井化学(株)製)、チオール基含有ポリエーテルポリマー(カップキュア3−800 ジャパンエポキシレジン(株)製)、1,3,5-トリス(3-メルカプトブチルオキシエチル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン(カレンズMTNR1 昭和電工(株)製)などが含まれる。
【0034】
液状エポキシ樹脂硬化剤は、組成物の適切な粘度を実現させる観点から、数平均分子量が200〜800であることが好ましい。数平均分子量が200〜800の範囲内であれば、組成物の粘度が塗布性や隙間への埋め込み性に適した粘度になりやすく、また組成物をシール剤として使用した際に、シール形状を安定に保持しやすくなる。液状エポキシ樹脂硬化剤の数平均分子量は、GPC分析などにより測定できる。
【0035】
液状エポキシ樹脂硬化剤の含有量は、組成物全体に対して5〜40重量%であることが好ましく、10〜30重量%であることがより好ましい。液状エポキシ樹脂硬化剤の含有量が上記範囲であると、組成物の粘度を低くできるだけでなく、硬化物が適度な柔軟性を有する。
【0036】
(1)液状エポキシ樹脂と(2)液状エポキシ樹脂硬化剤との合計含有量は、前記組成物全体に対して10〜90重量%であることが好ましく、20〜60重量%であることがより好ましい。含有量が前記範囲内ならば、組成物の粘度がシール剤などとして使用される際にハンドリングしやすい粘度になりやすく、室温下においても、組成物に含まれる液状エポキシ樹脂と液状エポキシ樹脂硬化剤との反応が生じにくく、組成物の保存安定性が保たれやすくなる。
【0037】
(3)23℃で固体である2級もしくは3級アミン、または2級もしくは3級アミンを内包するマイクロカプセル
23℃で固体である2級もしくは3級アミン、または2級もしくは3級アミンを内包するマイクロカプセルは、液状エポキシ樹脂の硬化剤または硬化促進剤として機能する。23℃で固体である2級または3級アミンの例には、変性ポリアミン、イミダゾール化合物、ポリアミドアミン化合物、ポリアミノウレア化合物、有機酸ヒドラジド化合物および有機酸ジヒドラジド化合物等が含まれる。
【0038】
変性ポリアミンは、ポリアミンとエポキシ樹脂とを反応させて得られるポリマー構造を有する化合物である。変性ポリアミンにおけるポリアミンは、特に制限されず、1級、2級および3級アミンが含まれ、好ましくはイミダゾール化合物である。
【0039】
変性ポリアミンの例には、富士化成工業(株)製フジキュアFXR−1081、(株)ADEKA製アデカハードナーEH4339S(軟化点120〜130℃)、ADEKA製アデカハードナーEH4342および(株)ADEKA製アデカハードナーEH4357S(軟化点73〜83℃)等が含まれる。
【0040】
イミダゾール化合物の例には、2-メチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-イソプロピルイミダゾール、2-ウンデシルイミダゾール、2-ヘプタデシルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、2-アミノプロピルイミダゾール等が含まれる。
【0041】
ポリアミドアミン化合物の例には、ジカルボン酸とポリアミンとを脱水縮合反応させて得られる。ポリアミドアミン化合物の具体例には、ジカルボン酸とエチレンジアミンとを脱水縮合反応させた後、環化して得られるイミダゾリンなどが含まれる。
【0042】
ポリアミノウレア化合物とは、アミンと尿素とを加熱硬化させて得られる化合物である。ポリアミノウレア化合物の例には、フジキュアFXR−1081(融点121℃)、およびフジキュアFXR−1020(融点124℃)などが含まれる。
【0043】
有機酸ヒドラジド化合物の例には、p−ヒドロキシ安息香酸ヒドラジド(PHBH 日本ファインケム(株)製、融点264℃)等が含まれる。有機酸ジヒドラジド化合物の例には、アジピン酸ジヒドラジド(融点181℃)、1,3-ビス(ヒドラジノカルボエチル)-5-イソプロピルヒダントイン(融点120℃)、7,11-オクタデカジエン-1,18-ジカルボヒドラジド(融点160℃)、ドデカン二酸ジヒドラジド(融点190℃)、およびセバシン酸ジヒドラジド(融点189℃)等が含まれる。
【0044】
23℃で固体である2級または3級アミンの融点は、組成物を熱硬化させる際の熱硬化温度近傍であることが好ましく、60〜180℃であることが好ましい。23℃で固体である2級アミンまたは3級アミンの融点が低すぎると、室温で液状エポキシ樹脂の硬化反応を生じやすく、組成物の保存安定性が低くなる。23℃で固体である2級アミンまたは3級アミンの融点が高すぎると、上記熱硬化温度で硬化剤または硬化促進剤としての機能が得られにくくなる恐れがある。
【0045】
23℃で固体である2級または3級アミンの平均粒子径は、後述のように微小な基板同士の隙間に埋め込めるようにするために、例えば0.1〜10μmであることが好ましく、0.1〜0.5μmであることがより好ましい。
【0046】
23℃で固体である2級アミンまたは3級アミンの含有量は、組成物全体に対して2〜20重量%であることが好ましく、5〜15重量%であることがより好ましい。23℃で固体である2級アミンまたは3級アミンの含有量が少なすぎると、エポキシ樹脂の硬化速度を高める効果が十分に得られないことがある。一方、23℃で固体である2級アミンまたは3級アミンの含有量が多すぎると、組成物の粘度が上昇しやすくなる。
【0047】
(3)23℃で固体である2級または3級アミンと、(2)液状エポキシ樹脂硬化剤との含有比((3)成分/(2)成分)が、重量比で0.1〜1.2であることが好ましい。上記含有比が低すぎると、組成物に含まれる液状エポキシ樹脂硬化剤が比較的多くなるため、室温でも液状エポキシ樹脂と反応して粘度安定性が低下することがある。一方、上記含有比が高すぎると、組成物の粘度が上昇しやすくなる。
【0048】
2級または3級アミンを内包するマイクロカプセルは、2級または3級アミンからなるコアと、該コアを内包するカプセル壁とを有する。コアとなる2級または3級アミンは、特に制限されず、23℃で液状または固体状でありうる。コアとなる2級または3級アミンの例には、前述と同様の、変性ポリアミンおよびイミダゾール化合物等が含まれる。カプセル壁の材質は、特に制限されないが、保存時の組成物の安定性と、加熱による活性発現のバランスの点から高分子化合物であることが好ましい。例えばポリウレタン化合物、ポリウレタンウレア化合物、ポリウレア化合物、ポリビニル化合物、メラミン化合物、エポキシ樹脂、フェノール樹脂等から得られる高分子化合物でありうる。カプセル壁の融点は、組成物の熱硬化温度でマイクロカプセルを硬化剤または硬化促進剤として機能させるために、60〜180℃であることが好ましい。このようなマイクロカプセルの市販品の例には、イミダゾール変性マイクロカプセル体(旭化成(株)製 ノバキュアHX−3722)などが含まれる。
【0049】
マイクロカプセルの平均一次粒子径は、前述と同様に、0.1〜10μmであることが好ましく、0.5〜5μmであることがより好ましい。マイクロカプセルの含有量は、組成物における2級または3級アミンの含有量が、前述した範囲となるように調整されればよい。このような23℃で固体である2級アミンもしくは3級アミン、または2級もしくは3級アミンを内包するマイクロカプセルを含む組成物は、室温において液状エポキシ樹脂との反応性が低いため、室温での保存安定性が高い。また、2級アミンまたは3級アミンを含む組成物は、硬化速度も高い。
【0050】
(4)フィラー
フィラーは、組成物の硬化物の耐湿性や線膨張性を調整しうる。フィラーは、無機フィラー、または有機フィラーもしくはこれらの混合物であり、好ましくは無機フィラーと有機フィラーとの混合物である。
【0051】
無機フィラーは、特に制限されず、その例には、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、硫酸マグネシウム、珪酸アルミニウム、珪酸ジルコニウム、酸化鉄、酸化チタン、酸化アルミニウム(アルミナ)、酸化亜鉛、二酸化ケイ素、チタン酸カリウム、カオリン、タルク、ガラスビーズ、セリサイト活性白土、ベントナイト、窒化アルミニウム、窒化ケイ素等の無機フィラーが含まれ、好ましくは二酸化ケイ素、タルクである。
【0052】
有機フィラーは、特に制限されないが、熱硬化温度近傍で融解することによる液だれを防止する観点から、融点または軟化点が60〜120℃であるものが好ましい。そのような有機フィラーの例には、シリコン微粒子、アクリル微粒子、スチレン・ジビニルベンゼン共重合体等のスチレン微粒子、およびポリオレフィン微粒子からなる群より選ばれる微粒子;およびカルナバワックス、マイクロクリスタリンワックス、変性マイクロクリスタリンワックス、フィッシャートロプッシュワックスおよび変性フィッシャートロプッシュワックスからなる群より選ばれるワックスなどが含まれる。
【0053】
フィラーの形状は、特に限定されず、球状、板状、針状等の定形状あるいは非定形状のいずれであってもよいが、微小な隙間への埋め込み性を高める観点では、球状であることが好ましい。
【0054】
フィラーの平均一次粒子径は、0.1〜20μmであることが好ましく、0.1〜10μmがより好ましく、0.5〜5μmであることがさらに好ましい。フィラーの平均一次粒子径は、JIS Z8825−1に記載のレーザー回折法で測定できる。
【0055】
また、フィラーの質量平均粒子径d50は、0.05〜30μmであることが好ましく、25μm未満であることが好ましい。フィラーの質量平均粒子径d50が前記範囲にあると、組成物の粘度安定性が高くなる。また耐透湿性を高めるという観点からは、フィラーの質量平均粒子径d50が0.05μm以上であることが好ましく、0.1μm以上がより好ましく、0.2μm以上がさらに好ましく、1.0μm超であってもよい。質量平均粒子径d50が小さくなると組成物の粘度が大きくなり、組成物が微小な隙間(本願でいう端面)への埋め込み性が悪くなる傾向にある。また、フィラーの比表面積が大きくなり、フィラー表面を通じて水分などが透過しやすくなるためと推測される。
【0056】
フィラーの質量平均粒子径d50は、JIS Z8825−1に準拠した方法でレーザー法粒子測定器によって求めた質量加積曲線上の50質量%値で示される粒子径である。粒子測定器としては、レーザ回折/散乱式粒度分布測定装置Microtrac社製 MT−3300EX2(レーザー波長780nm)を用いて測定することができる。
【0057】
また湿式によるフィラーの平均粒子径測定は、フィラー0.1gをエタノール40mL中に分散し、超音波ホモジナイザーにより出力25Wで20分間処理した分散液に対して、前述の粒子測定器を用いて、室温で測定することができる。また同様にベックマンコールター社製LS−230(レーザー波長750nm)、堀場製作所社製 LA−750(レーザー波長632.8nm)、などを用いて測定することができる。
【0058】
組成物の粘度安定性という観点から、フィラーの比表面積は0.7m
2/g以上が好ましく、1.0m
2/g以上がより好ましい。質量平均粒子径d50が同じで、比表面積が異なるフィラーを比べた場合、比表面積が大きいフィラーの方が、より粒度分布の算術標準偏差が大きく、粒度分布が広いことを意味する。粒度分布は例えば、レーザ回折/散乱式粒度分布測定装置 Microtrac社製 MT−3300EX2などを用いて測定することができる。なお前記比表面積は、JIS Z8830に準拠した方法で、気体吸着法(BET法)により測定することができる。
【0059】
フィラーの真密度は、0.5〜4.0g/cm
3が好ましく、0.8〜3.0g/cm
3がより好ましい。
【0060】
フィラーは、微小な隙間への埋め込み性を高める観点から、単分散よりは広分散であることが好ましい。単分散性の高いフィラーを含む組成物は、粘度が高くなり易く、微小な隙間に対する埋め込み性が低下し易いからである。
【0061】
フィラーの凝集による組成物の粘度上昇を抑制するために、フィラーには表面処理が施されてもよい。具体的には、フィラーの凝集は、フィラー同士の相互作用により生じやすいため、フィラー同士を相互作用させないようにするために、フィラー表面を不活性化(非極性化)する処理が施されていることが好ましい。
【0062】
フィラー表面を不活性化(非極性化)する処理の例には、フィラー表面に疎水性基を導入できる方法であればよく、環状シロキサン、シランカップリング剤、チタネート系カップリング剤、ヘキサアルキルジシラザン等により処理する方法が含まれる。
【0063】
フィラーの含有量は、前記(1)液状のエポキシ樹脂および(3)2級または3級アミンの合計100重量部に対して50〜300重量部であることが好ましく、70〜200重量部であることがより好ましく、75〜200重量部であることがさらに好ましい。また前記(1)液状エポキシ樹脂、(2)液状エポキシ樹脂硬化剤および(3)2級または3級アミンの合計100重量部に対して50〜150重量部であることが好ましく、75〜125重量部であることがより好ましい。組成物が無機フィラーと有機フィラーの両方を含む場合、フィラーの含有量とは、無機フィラーと有機フィラーの合計含有量を意味する。このように、フィラーの含有量が調整された組成物は、適正な粘度が保持されており、基板に対する塗布性、すなわち表示素子を挟持する基板間の狭い隙間に侵入しやすく、また、かかる組成物の硬化物は吸湿しづらいので、耐湿接着信頼性が高い。
【0064】
(5)アルコキシ基を有する化合物
本発明の組成物は、前述の成分(1)〜(4)以外の(5)アルコキシル基を有する化合物を含んでもよい。(5)アルコキシル基を有する化合物を添加した場合、本発明の組成物が硬化する際に接触する基板、具体的には本発明の組成物を表示デバイス端面シール剤として用いた場合、前記デバイスの基板がガラスや表面を蒸着等で極性化処理した樹脂に対して、前記アルコキシル基が反応し架橋するため、シール剤の硬化物と基板との接着強度を高めることができる。
【0065】
成分(1)〜(4)以外の(5)アルコキシ基を有する化合物としては、特に限定されないが、具体的には3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルエチルジエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシランなどのシランカップリング剤や2,2-ビス(4-((メタ)アクリロキシポリエトキシポリプロポキシ)フェニル)プロパンなどの化合物が挙げられる。
【0066】
上述のように、基板と本発明の組成物の硬化物の接着強度を高めるためには、一般的には、アルコキシ基を有する化合物を多く添加するのが好ましいとされる。しかし、組成物のアルコキシ基の含有率は、組成物1gに対して5.4×10
−4mol以下であることが好ましい。アルコキシ基の含有量が多すぎると、組成物を加熱し硬化する際にアルコキシ基が分解し発生するアルコールが表示素子を劣化させる恐れがある。また、組成物のアルコキシ基の含有率は、組成物1gに対して1.3×10
−4molよりも多いことが好ましい。
【0067】
素子を劣化させるメカニズムは明確ではないが、以下のように推測される。アルコキシ基を有する化合物は極性が高いため、ガラスや表面を極性化処理した樹脂の基板にシール剤が接触すると、前記アルコキシ基を有する化合物が基板に偏在する。このためアルコキシル基が分解して形成されるアルコールがシール剤と基板の間に溜まり親水性の微細な隙間が形成されると考えられる。これにより
アルコキシ基の含有量が多すぎる組成物を用いて表示デバイスを作成すると、基板とシール剤の硬化物の間に水分などが通りやすくなり、表示素子の劣化を効率よく抑制できなくなると推測される。
【0068】
(6)固体状エポキシ樹脂
本発明の組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、他の硬化性樹脂をさらに含んでもよい。他の硬化性樹脂の例には、組成物の耐熱性を高めるなどの観点から、固体状エポキシ樹脂などが含まれる。固体状のエポキシ樹脂としては、例えば固体状のビス
フェノールA型エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0069】
(7)その他の成分
さらに本発明の組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、ゴム剤、イオントラップ剤、イオン交換剤、レベリング剤、顔料、染料、可塑剤、消泡剤等の添加剤をさらに含んでもよい。これらの添加剤は、単独で、あるいは複数種を組み合わせて用いてもよい。なかでも、本発明の組成物は、後述のように、表示デバイス端面の耐衝撃性を高めたり、基板との密着性を高めたりするために、ゴム剤をさらに含むことが好ましい。ゴム剤の例には、シリコーン系ゴム剤、アクリル系ゴム剤、オレフィン系ゴム剤、ポリエステル系ゴム剤、ウレタン系ゴム剤などが含まれる。
【0070】
本発明の組成物の水分含有量は、0.9重量%以下であることが好ましく、0.5重量%以下であることがより好ましく、0.29重量%以下であることがさらに好ましく、0.2重量%以下であってもよい。水分含有量は、組成物全体の重量部を100とした場合の、その組成物に含まれる水分の重量部(重量%)である。本発明の組成物は、後述するように、表示デバイス端面シール剤として好ましく用いられる。シール剤中の水分含有量が多い場合、そのシール剤によって封止されたデバイス内に、シール剤から水分が侵入しやすく、表示デバイスに影響が生じる可能性がある。特に、電気泳動方式により情報を表示するデバイスは、水等の極性分子の影響を受けやすい。
【0071】
組成物中の水分含有量が多いと、組成物の粘度安定性が損なわれる恐れがある。特に組成物を表示デバイス端面シール剤として用いた場合に、端面にシール剤を均一に浸透させるために、前記シール剤の粘度は低い状態で維持されている必要がある。特に後述する8)粘度安定性試験において説明するように、シール剤として保管される態様で、低い粘度のまま維持されている必要がある。
【0072】
組成物の水分含有量が多くなると、粘度安定性が損なわれる作用については明確ではないが、通常のエポキシ樹脂を含む接着性組成物に比べて、本発明の組成物はフィラーの含有量が多く、かつ低粘度に調整されているため、本発明の組成物に含まれるエポキシ樹脂などの重合性成分が水分によってわずかに反応して分子量が大きくなった場合、フィラーの流動性が低下し、組成物の粘度に大きく変動すると推測される。
【0073】
組成物中の水分含有量の測定は、カールフィッシャー法により行うことができる。組成物中の水分含有量を上記範囲とするためには、水分含有量の少ない原料を選択し、水分の少ない条件で組成物を調製する。また、各原料を、組成物の調製前に脱水することも好ましい。
【0074】
本発明の組成物の、E型粘度計により25℃、2.5rpmで測定される粘度が0.5〜50Pa・sであることが好ましく、1〜20Pa・sであることがより好ましい。組成物の粘度が0.5Pa・s未満であると、シール剤とした際にシールパターンの形状を保持し難く、液だれし易くなる。一方、組成物の粘度が50Pa・s超であると、微小な隙間に埋め込むことができず、シール性が低下しやすい。組成物の粘度は、前述の通り、(1)液状エポキシ樹脂と(2)液状エポキシ
樹脂硬化剤の含有量や、(4)フィラーの形状および平均一次粒子径等により調整されうる。
【0075】
本発明の組成物は、微小な隙間に対して埋め込み易くする観点から、比較的低いせん断速度で測定した粘度と比較的高いせん断速度で測定した粘度との比(低シェア粘度/高シェア粘度)を示すチキソトロピー指数(TI値)が1に近いことが好ましい。チキソトロピー指数は、例えば組成物に含まれる(4)フィラーの平均一次粒子径やフィラーの質量平均粒子径d50などによって調整されうる。
【0076】
本発明の組成物の硬化物は、組成物を表示デバイスのシール剤として用いた際の高温での基板との接着強度を維持するために、一定以上の耐熱性を有することが好ましい。好ましい耐熱性は、表示デバイスの基板の種類によって決定される。例えば、組成物の線膨張係数に近い線膨張係数を有する樹脂シートとガラス基板との間に表示素子を挟持する表示デバイスにおいて、本発明の組成物を一対の基板の隙間を封止するシール剤として使用する場合、本発明の組成物を80℃で60分間加熱硬化させて得られる硬化物のガラス転移温度(Tg)は、30〜110℃であることが好ましい。組成物の硬化物のガラス転移温度が上記範囲であれば、各基板とシール剤との間での界面剥離等が生じる可能性が少なく、信頼性の高い表示デバイスとすることが可能となる。
【0077】
また、2枚の樹脂シートの間、もしくは2枚のガラス基板の間に表示素子を挟持する表示デバイスにおいて、本発明の組成物を一対の基板の隙間を封止するシール剤として使用する場合、本発明の組成物を80℃で60分間加熱硬化させて得られる硬化物のガラス転移温度(Tg)は、10〜40℃であることが好ましい。2枚の樹脂シートを一対の基板として使用する場合、表示デバイスにはフレキシビリティが要求されることがある。そこでこの場合、シール剤も柔軟性を有することが好ましく、組成物の硬化物のガラス転移温度を上記範囲とすることが好ましい。また、2枚のガラス基板を一対の基板として使用する場合には、ガラス基板とシール剤との線膨張係数の差によって、ガラス基板とシール剤との界面で剥離が生じる可能性がある。そこで、硬化物のガラス転移温度を上記範囲とすることで、界面剥離が生じ難いものとできる。
【0078】
なお、ここでいう樹脂シートとは、透明性が高い樹脂から構成されることが好ましく、具体的には、ポリエチレンテレフタレート、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート、環状ポリオレフィン(COC),ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、透明ABS樹脂、透明ナイロン、透明ポリイミド、ポリビニルアルコールなどが挙げられる。
【0079】
また、硬化物のガラス転移温度は、本発明の組成物を、80℃で60分間熱硬化させて得られる、厚さ100μmのフィルムのガラス転移温度を、DMSにより5℃/分の昇温速度で測定することにより求められる。
【0080】
本発明の組成物を調製する方法は、特に限定されない。たとえば、前述した各成分を混合して本発明の組成物を調製することができる。各成分を混合する手段は、特に限定されず、例えば双腕式攪拌機、ロール混練機、2軸押出機、ボールミル混練機、および遊星式撹拌機等が含まれる。本発明の組成物は、前述の各成分を混合した後、フィルタでろ過して不純物を取り除き、さらに真空脱泡処理を施すことにより得ることができる。得られた本発明の組成物は、ガラス瓶やポリ容器に密封充填して保存される。前述のように、組成物はその水分含有量が低いことが好ましい。したがって、水分透過性の低い容器中で保存することが好ましい。
【0081】
本発明の組成物は、各種表示デバイスの端面、特に表示素子を挟持する2枚の基板の間の隙間が予め形成されている端面を封止するための表示デバイス端面シール剤として用いられることが好ましい。
【0082】
本発明の組成物は、適度に低粘度であるため、特に表示素子を挟持する基板間の隙間への塗布性(侵入性または浸透性ともいう)が高く、硬化物の耐湿性が高い。このため、液晶素子、EL素子、LED素子、電気泳動方式の表示素子等を有する各種表示デバイスのシール剤;好ましくは、表示素子を挟持する2枚の基板の間の隙間にシール剤を塗布する必要がある電気泳動方式や電気流動方式など表示素子を有する表示デバイスの端面を封止するシール剤として用いられる。電気泳動方式の表示デバイスの例には、電子ペーパーなどが含まれる。
【0083】
2.表示デバイスとその製造方法
本発明の表示デバイスは、電気泳動方式等の表示素子と、表示素子を挟持する一対の基板とを有し、一対の基板の周縁部に形成される基板同士の隙間を、シール部材が封止する構造を有する。シール部材は、本発明の表示デバイス端面シール剤の硬化物を用いることができる。
【0084】
図1は、本発明の表示デバイスの一実施形態を示す模式図である。表示デバイス10は、電気泳動方式の表示素子12と、表示素子12を挟持する一対の基板14および16とを有し、一対の基板14および16の端部同士の間に形成される隙間18が、シール部材20で封止された構造を有する。
【0085】
表示素子12は、電気泳動方式の表示層12Aと、表示層12Aを駆動するための透明電極12Bおよび12Cと、を有する。
【0086】
基板14および16は、ガラス板または樹脂シートなどであってよいが、基板14および16のうち少なくとも表示面となる基板は、透明なガラス板または樹脂シートであることが好ましい。透明な樹脂シートの例には、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂;アクリル樹脂;ポリカーボネート樹脂等で構成されたシートが含まれる。基板14および16の厚さは、用途にもよるが、それぞれ0.1〜3mm程度とすることができ、好ましくは0.5〜1.5mmである。
【0087】
基板14と16との間のギャップ(隙間)18は、用途にもよるが、電子ペーパーなどでは、例えば20〜500μmであり、より好ましくは300μm以下である。
【0088】
本発明の表示デバイスは、例えば以下のようにして製造されうる。表示デバイスは、1)電気泳動方式などの表示素子と、表示素子を挟持する一対の基板とを有する積層体を得るステップ;2)積層体の周縁部に形成された一対の基板との隙間に、本発明の組成物からなるシール剤を塗布または滴下して、前記隙間に浸透させるステップ;および3)シール剤を硬化させるステップ;を経て製造される。
【0089】
積層体の周縁部に表示デバイス端面シール剤を塗布または滴下する手段は、特に制限されず、ディスペンサー、スクリーン印刷等であってよい。
【0090】
表示デバイス端面シール剤の硬化は、熱硬化でも光硬化であってもよいが、表示素子の劣化を抑制する点では、熱硬化が好ましい。表示デバイス端面シール剤を紫外線照射して光硬化させると、表示素子が紫外線照射により劣化するおそれがある。また、表示素子には光照射せずに、表示デバイス端面のシール剤のみに光照射することは、製造効率も悪いからである。
【0091】
熱硬化温度は、表示素子へのダメージを少なくする観点から、例えば60〜80℃が好ましく、60〜70℃がより好ましい。熱硬化時間は、熱硬化温度や、シール剤の量にもよるが、例えば30〜90分程度としうる。
【0092】
このように、本発明の表示デバイスの製造方法では、表示素子と、それを挟持する一対の基板とを有する積層体を組み立てた後、積層体の周縁部に形成された一対の基板との隙間を、シール剤で封止する。本発明のシール剤は、前述の通り、フィラー多く含むにもかかわらず適度に粘度が低いため、一対の基板の周縁部に形成される微小な隙間にも、精度よく埋め込むことができる。さらに、本発明のシール剤の硬化物は、高い耐湿性を有するため、得られる表示デバイスは、高温高湿下においても高い接着強度を維持することができる。
【実施例】
【0093】
実施例および比較例で用いた各成分を以下に示す。
(1)液状エポキシ樹脂(水分含有量が、0.2重量%以下である成分を用いた)
A:ビスフェノールA型エポキシ樹脂
(三菱化学(株)製:JER828、エポキシ当量184〜194g/eq)
B:ビスフェノールF型エポキシ樹脂
(DIC(株)製:エピクロン830S、エポキシ当量165〜177g/eq)
C:ビスフェノールE型エポキシ樹脂
(プリンテック(株)製:R710、エポキシ当量160〜180g/eq)
D:p−アミノフェノール型エポキシ樹脂
(住友化学(株)製:ELM−100、エポキシ当量90〜100g/eq)
【0094】
(2)液状エポキシ樹脂硬化剤(水分含有量が100重量ppm以下である成分を用いた)
A:4−メチルヘキサヒドロ無水フタル酸及びヘキサヒドロ無水フタル酸の混合物
(新日本理化(株)製:リカシッドMH−700)
B:3−ドデセニルコハク酸無水物
(新日本理化(株)製:リカシッドDDSA)
C:ペンタエリスリトール テトラキス(3-メルカプトプロピオネート)
D:トリメチロールプロパン トリス(3-メルカプトプロピオネート)
【0095】
(3)2級アミンもしくは3級アミン(水分含有量が0.1重量%以下である成分を用いた)
A:イミダゾール変性マイクロカプセル体
(旭化成(株)製:ノバキュアHX−3722)
B:変性ポリアミン
(富士化成工業(株)製:フジキュアFXR−1081、融点:121℃)
C:2−フェニルイミダゾール
((株)四国化成製:2PZ、融点:142℃)
【0096】
(4)フィラー(水分含有量が1重量%以下である成分を用いた)
【0097】
無機フィラー
A:二酸化珪素
((株)龍森製:FUSELEX(R) RD−8、平均一次粒子径15μm、質量平均粒子径d50:15μm、比表面積:2.2m
2/g、球状)
B:二酸化珪素
((株)トクヤマ製:エクセリカ UF−725、質量平均粒子径d50:7μm、比表面積:1.6m
2/g、球状)
C:二酸化珪素
((株)龍森製:Crystalite(R) A−1、質量平均粒子径d50:11μm、比表面積:1.1m
2/g、球状)
D:二酸化珪素
((株)トクヤマ製:エクセリカ SE−30K、質量平均粒子径d50:25μm、比表面積:0.8m
2/g、球状)
E:二酸化珪素
((株)日本触媒製:シーホスター KE−S50、質量平均粒子径d50:0.4μm、比表面積:6m
2/g、球状)
F:二酸化珪素
((株)トクヤマ製:エクセリカ SE−40C、質量平均粒子径d50:36μm、比表面積:0.6m
2/g、球状)
G:二酸化珪素
(日本アエロジル(株)製:AEROSIL(R) 50、質量平均粒子径d50:0.03μm、比表面積:50m
2/g、球状)
【0098】
有機フィラー:
A:アクリル微粒子
(ガンツ化成(株)製:F325G、平均一次粒子径0.5μm、質量平均粒子径d50:0.5μm、球状)
B:アクリル微粒子
(ガンツ化成(株)製:F351G、平均一次粒子径0.3μm、質量平均粒子径d50
:0.3μm、球状)
【0099】
(5)シランカップリング剤(水分含有量が0.1重量%以下である成分を用いた)
A:3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン
(信越化学(株)製 KBM403、1分子当たりのアルコキシ基数:3、分子量:236.3、アルコキシル基含有量(mol/g):0.0127)
B:2-(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン
(信越化学(株)製 KBM303、1分子当たりのアルコキシ基数:3、分子量:246.4、アルコキシル基含有量(mol/g):0.0122)
C:3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン
(信越化学(株)製 KBM402、1分子当たりのアルコキシ基数:2、分子量:220.3、アルコキシル基含有量(mol/g):0.0091)
D:3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン
(信越化学(株)製 KBM803、1分子当たりのアルコキシ基数:2、分子量:196.4、アルコキシル基含有量(mol/g):0.0153)
【0100】
(6)その他(水分含有量が0.1重量%以下である成分を用いた)
固体エポキシ樹脂:ビスフェノールA型エポキシ樹脂
(三菱化学(株)製:JER1001、エポキシ当量450〜500g/eq、軟化点64℃)
【0101】
(実施例1−1)
(1)液状エポキシ樹脂としてビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱化学(株)製:JER828)を22重量部、(2)液状エポキシ樹脂硬化剤として4−メチルヘキサヒドロ無水フタル酸及びヘキサヒドロ無水フタル酸の混合物(新日本理化(株)製:リカシッドMH−700)を19重量部、(3)アミンとしてイミダゾール変性マイクロカプセル体(旭化成(株)製:ノバキュアHX−3722)を12重量部、(4)無機フィラーとして二酸化珪素((株)龍森製:RD−8)を45重量部、有機フィラーとしてアクリル微粒子(ガンツ化成(株)製:F325G)を2重量部、3本ロールで混練した。その後、混練物をフィルタによりろ過し、真空脱泡処理して組成物(以下、「シール剤」という)を得た。シール剤の調製は、液状エポキシ樹脂などの原料の水分量が増えない程度の低い湿度下で行なった。得られた組成物の水分含有量を、カールフィッシャー法により測定したところ、0.1wt%であった。
【0102】
(実施例1−2〜1−44、比較例1−1〜1−11)
組成物の組成を、表1〜表5に示されるように変更した以外は、実施例1と同様にしてシール剤を得た。また前記組成物のアルコキシ基濃度は、組成
物中のアルコキシ基を有する化合物の含有量から計算した。例えば実施例2では、組成物100重量部に対してシランカップリング剤Aを1重量部添加しているため、(1/100)*0.0127(mol/g)=1.3×10
−4(mol/g)となる。
【0103】
(実施例2−1)
(1)液状エポキシ樹脂としてビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱化学(株)製:JER828)を22重量部、(2)液状エポキシ樹脂硬化剤として4−メチルヘキサヒドロ無水フタル酸及びヘキサヒドロ無水フタル酸の混合物(新日本理化(株)製:リカシッドMH−700)を19重量部、(3)アミンとしてイミダゾール変性マイクロカプセル体(旭化成(株)製:ノバキュアHX−3722)を12重量部、(4)無機フィラーとして二酸化珪素((株)龍森製:RD−8)を45重量部、有機フィラーとしてアクリル微粒子(ガンツ化成(株)製:F325G)を2重量部、3本ロールで混練した。その後、混練物をフィルタによりろ過し、真空脱泡処理して組成物(以下、「シール剤」という)を得た。シール剤の調製は、液状エポキシ樹脂などの原料の水分量が増えない程度の低い湿度下で行なった。得られた組成物の水分含有量を、カールフィッシャー法により測定したところ、0.1wt%であった。
【0104】
(実施例2−2〜2−50、比較例2−1〜2−10)
組成物の組成を、表6〜表11に示されるように変更した以外は、実施例1と同様にしてシール剤を得た。
【0105】
(実施例3−1)
(1)液状エポキシ樹脂としてビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱化学(株)製:JER828)を22重量部、(2)液状エポキシ樹脂硬化剤として4−メチルヘキサヒドロ無水フタル酸及びヘキサヒドロ無水フタル酸の混合物(新日本理化(株)製:リカシッドMH−700)を19重量部、(3)アミンとしてイミダゾール変性マイクロカプセル体(旭化成(株)製:ノバキュアHX−3722)を12重量部、(4)無機フィラーとして二酸化珪素((株)龍森製:RD−8)を45重量部、有機フィラーとしてアクリル微粒子(ガンツ化成(株)製:F325G)を2重量部、3本ロールで混練した。その後、混練物をフィルタによりろ過し、真空脱泡処理して組成物(以下、「シール剤」という)を得た。シール剤の調製は、液状エポキシ樹脂などの原料の水分量が増えない程度の低い湿度下で行なった。得られた組成物の水分含有量を、カールフィッシャー法により測定したところ、0.1wt%であった。
【0106】
(実施例3−2〜3−39、比較例3−1〜3−13)
組成物の組成を、表12〜表15に示されるように変更した以外は、実施例1と同様にしてシール剤を得た。
【0107】
また実施例3−2,3−3,3−5,3−6、3−8,3−9、3−11,3−12、3−14,3−15、3−17,3−18、3−20,3−21、3−23,3−24,3−26,3−27、3−29,3−30,3−32,3−33、3−35,3−36、3−38,3−39、比較例3−1〜3−13については、35℃、95RH%の大気中でシール剤を調整し、表12〜表15に記載の水分含有量(wt%)になるまで前記大気中に放置した後、後述する評価を行った。
【0108】
(実施例3−40)
真空ポンプで減圧したまま400度で3時間加熱したモレキュラーシーブ5Aをカラムに充填し、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱化学(株)製:JER828)と4−メチルヘキサヒドロ無水フタル酸及びヘキサヒドロ無水フタル酸の混合物(新日本理化(株)製:リカシッドMH−700)を流して脱水処理した。また、二酸化珪素((株)龍森製:RD−8)を真空ポンプで減圧したまま200度で3時間加熱し、脱水処理した。脱水処理した(1)液状エポキシ樹脂としてビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱化学(株)製:JER828)を22重量部、脱水処理した(2)液状エポキシ樹脂硬化剤として4−メチルヘキサヒドロ無水フタル酸及びヘキサヒドロ無水フタル酸の混合物(新日本理化(株)製:リカシッドMH−700)を19重量部、(3)アミンとしてイミダゾール変性マイクロカプセル体(旭化成(株)製:ノバキュアHX−3722)を12重量部、脱水処理した(4)無機フィラーとして二酸化珪素((株)龍森製:RD−8)を45重量部、有機フィラーとしてアクリル微粒子(ガンツ化成(株)製:F325G)を2重量部、3本ロールで混練した。その後、混練物をフィルタによりろ過し、真空脱泡処理して組成物(以下、「シール剤」という)を得た。シール剤の調製は、液状エポキシ樹脂などの原料の水分量が増えない程度の低い湿度下で行なった。得られた組成物の水分含有量を、カールフィッシャー法により測定したところ、0.01wt%であった。
【0109】
各実施例および比較例で得られたシール剤の粘度、接着強度、セル歪、高温高湿信頼性、ガラス転移温度(Tg)、素子劣化試験、透過湿度性、粘度安定性を、以下のようにして評価した。
【0110】
1)粘度
得られたシール剤の粘度を、E型粘度計により25℃、2.5rpmで測定した。
【0111】
2)接着強度
得られたシール剤に、スペーサとして平均粒子径が50μmである球状シリカを1%添加し、混合脱泡した。このスペーサ入りのシール剤を、スクリーン版を介して、25mm×45mm×厚さ0.7mmの無アルカリガラス上に直径1mmの円状のシールパターンを描画した。
【0112】
このシールパターンを描画した無アルカリガラスに、対となるアルカリガラスを重ね合わせて固定した後、80℃で60分加熱して貼り合わせた。このようにして貼り合わせた二枚のガラス板(以下「試験片」という)を、25℃、湿度50%の恒温槽にて、24時間保管した。その後、恒温槽から取り出した試験片の平面引張り強度を、引張り試験装置(インテスコ(株)製)により、引張り速度2mm/分で測定した。
【0113】
3)セル歪試験
50mm×50mm×厚さ0.7mmの無アルカリガラス上に、平均粒子径が50μmである球状スペーサを散布(配置)した。この基板上に、対となる40mm×40mmのガラス基板を重ね合わせた後、周縁部に形成された基板同士の隙間(50μm)に得られたシール剤をディスペンサーにより塗布した。その後、シール剤を、80℃で60分間加熱して硬化させて、セルを作製した。得られたセルの中心部にニュートンリングが発生するかどうかを観察し、歪の有無を評価した。
セルの中心部にニュートンリングがみられない:歪みなし(○)
セルの中心部に1本のニュートンリングが発生:歪みあり(△)
セルの中心部に2本以上のニュートンリングが発生:歪みあり(×)
【0114】
4)高温高湿信頼性試験
50mm×50mm×厚さ0.7mmの無アルカリガラス上に、10mgの乾燥した炭酸カルシウムの微粉末を載せた。この基板上に、対となる40mm×40mmのガラス基板を重ね合わせた後、その周縁部に形成された基板同士の間の隙間(100μm)に、シール剤をディスペンサーで塗布した。その後、シール剤を80℃、60分間加熱して硬化させて、セルを作製した。
【0115】
得られたセルを、(1)60℃95%RHで1000時間、(2)85℃85%RHで1000時間それぞれ放置したときの、放置前後のセル重量を測定した。放置前後のセル重量の変化が小さいほど耐湿性が高いことを示す。
放置後のセル重量が、放置前のセル重量の100%以上102%以下:○
放置後のセル重量が、放置前のセル重量の102%超105%以下:△
放置後のセル重量が、放置前のセル重量の105%超:×
【0116】
5)ガラス転移温度(Tg)
前記1)で調製したスペーサ入りのシール剤を、アプリケータを用いて離型紙上に100μmの膜厚に塗布した。シール剤の塗膜が形成された離型紙を、80℃の熱風乾燥オーブンで60分間保持した後、取り出して冷却した。その後、離型紙から塗膜を剥離して、膜厚100μmのフィルムを得た。得られたフィルムのガラス転移温度(Tg)を、セイコーインスツルメント(株)製 DMS−6100を用いて、5℃/minの昇温速度で測定した。
【0117】
6)素子劣化試験
50mm×50mm×厚さ0.7mmの無アルカリガラス上に、アドバンテック社製乾燥度試験紙(12mm×40mm)を3枚並べて載せた。この基板上に、対となる45mm×45mmのガラス基板を重ね合わせた後、その周縁部に形成された基板同士の間の隙間(隙間の間隔:100μm)に、シール剤をディスペンサーで塗布した。その後、シール剤を80℃、60分間加熱して硬化させて、セルを作製した。得られたセルを、60℃80%RHで500時間放置したときの、放置後の乾燥度試験紙の変色度合いを、アドバンテック社製乾燥度試験紙標準変色表(含水率1.0〜10.0表示)を元に評価した。
放置後のセル端面部の乾燥度試験紙の色が、含水率1.0〜3.0に相当:○
放置後のセル端面部の乾燥度試験紙の色が、含水率4.0〜5.0に相当:△
放置後のセル端面部の乾燥度試験紙の色が、含水率5.5〜10.0に相当:×
【0118】
7)透湿カップ法による透湿量測定(JIS:Z0208準拠)
6)項で得られた100μmのフィルムを用い、JIS:Z0208に準拠した方法でアルミカップを作製し、60℃80%RHの高温高湿槽に24h放置した前後の重量から、下記の計算式で透湿量を算出した。
【0119】
透湿量(g/m
2・100μm・24h)=[24h放置後のアルミカップ重量(g)−放置前のアルミカップ重量(g)]/フィルム面積(m
2)
【0120】
8)粘度安定性
粘度測定用のシール剤をプラスチック製のシリンジに抜取り、シリンジの長軸方向が鉛直になるように立てた状態で保管し、表示デバイス端面などへのシール剤の保管状態に近い状態で、本発明の組成物の粘度安定性を評価した。1)項で、E型粘度計により25℃、2.5rpmで測定したシール剤の粘度をAとし、23℃で24時間保管した後に、測定したシール剤の粘度
をBとし、粘度増加率を次の計算式で算出した。
粘度増加率(%)=B/A×100
放置前後の粘度増加率が100%に近いほど粘度安定性が高いことを示す。
粘度増加率が120%以下:○
粘度増加率が120%超150%以下:△
粘度増加率が150%超:×
【0121】
さらに、23℃で48時間保管した後に、測定したシール剤の粘度をCとし、48時間保管後の粘度増加率を次の計算式で算出した。
粘度増加率(%)=C/A×100
放置前後の粘度増加率が100%に近いほど粘度安定性が高いことを示す。
粘度増加率が120%以下:○
粘度増加率が120%超150%以下:△
粘度増加率が150%超:×
【0122】
実施例1−1〜1−11の評価結果を表1に、実施例1−12〜1−22の評価結果を表2に、実施例1−23〜1−33の評価結果を表3に、
実施例1−34〜1−44の評価結果を表4に、比較例1−1〜1−11の評価結果を表5にそれぞれ示す。なお、表1〜5の組成の欄の数値の単位は、いずれも「重量部」である。また「フィラー含有比※」は(1)成分、(3)成分の合計100重量部に対する(4)成分(フィラー)の割合(重量部)を示し、「フィラー含有比※※」は、(1)成分、(2)成分および(3)成分の合計100重量部に対する(4)成分(フィラー)の割合(重量部)を示す。
【0123】
【表1】
【0124】
【表2】
【0125】
【表3】
【0126】
【表4】
【0127】
【表5】
【0128】
表1〜4に示されるように、実施例1−1〜1−44の組成物は、いずれもフィラーの含有比が高いにもかかわらず、粘度が15Pa・s以下と低いことがわかる。このため、実施例1−1〜1−44の組成物は、基板同士の隙間を十分に埋め込むことができ、また接着強度が高いため、得られるセルの高温高湿下での信頼性が高いことがわかる。また素子劣化試験の成績が良好であることがわかる。
【0129】
一方、表5に示されるように、特に比較例1−1,1−3,1−5,1−7,1−9,1−10の組成物は、いずれも粘度が低く、接着強度が高く、かつ硬化物の透過湿度が低いにもかかわらず、素子劣化試験の成績が悪いことがわかる。このため組成物中に含まれるアルコキシル基が分解することで発生するアルコール類が素子劣化に大きく作用することがわかる。
【0130】
透過湿度が低いのにもかかわらず、素子劣化試験の結果が悪い理由は以下のように推測される。7)の透湿量測定では、本発明の組成物の硬化物だけの透過湿度を測定しているのに対し、6)素子劣化試験では、本発明の組成物の硬化物と基板との間のシール性も含めて評価している。組成物がアルコキシ基を有する化合物を含む場合、アルコキシ基を有する化合物は極性が高いため、比較的極性が高い基板表面に偏在する。このため、アルコキシ基が分解しアルコールが発生すると基板と組成物の硬化物の間に、水分などを通すパスが形成されるため、組成物中のアルコキシ基の含有量が一定値以上になると、透過湿度が低いのにもかかわらず、素子劣化試験の結果が悪くなると推測される。
【0131】
また比較例1−11はフィラーの含有量が少ないため、高温高湿下での信頼性が低く、シール性が低下したと考えられる。
【0132】
実施例2−1〜2−11の評価結果を表6に、実施例2−12〜2−22の評価結果を表7に、実施例2−23〜2−33の評価結果を表8に、実施例2−34〜2−44の評価結果を表9に、実施例2−45〜2−50の評価結果を表10に、比較例2−1〜2−10の評価結果を表11にそれぞれ示す。なお、表6〜11の組成の欄の数値の単位は、いずれも「重量部」である。また「フィラー含有比※」は(1)成分、(3)成分の合計100重量部に対するフィラーの割合(重量部)を示し、「フィラー含有比※※」は、(1)成分、(2)成分および(3)成分の合計100重量部に対するフィラーの割合(重量部)を示す。
【0133】
【表6】
【0134】
【表7】
【0135】
【表8】
【0136】
【表9】
【0137】
【表10】
【0138】
【表11】
【0139】
表6〜10に示されるように、実施例2−1〜2−50の組成物は、いずれもフィラーの含有比が高いにもかかわらず、粘度が15Pa・s以下と低いことがわかる。このため、実施例2−1〜2−50の組成物は、基板同士の隙間を十分に埋め込むことができ、また接着強度が高いため、得られるセルの高温高湿下での信頼性が高いことがわかる。また素子劣化試験の成績が良好であることがわかる。さらに実施例2−1〜2−50の組成物は、シール剤として用いられる場合に要求される粘度安定性が高いことがわかる。
【0140】
特に、実施例2−5,2−10,2−13など無機フィラーD(質量平均粒子径d50=25μm)を用いた実施例と、d50が25μm以下の無機フィラーを用いた実施例を比較すると、無機フィラーの質量平均粒子径が25μm未満だと粘度安定性がより高いことがわかる。
【0141】
一方、表11に示されるように、d50が36μmの無機フィラーFを用いた比較例2−1〜2−7の組成物は、いずれも粘度安定性が低いことがわかる。無機フィラーGを用いた比較例2−10は、前記フィラーの質量平均粒子径d50が小さすぎるため、高温高湿信頼性が低く、素子劣化試験の結果が不良であることがわかる。また比較例2−8,2−9は(1)成分と(3)成分の合計100重量部に対するフィラーの含有
比が50未満の43と低いため、粘度安定性が高いものの、硬化物の高温高湿信頼性が低く、かつ素子劣化試験の評価が悪いことがわかる。
【0142】
実施例3−1〜3−13の評価結果を表12に、実施例3−14〜3−26の評価結果を表13に、実施例3−27〜3−40の評価結果を表14に、比較例3−1〜3−13の評価結果を表15にそれぞれ示す。なお、表12〜15の組成の欄の数値の単位は、いずれも「重量部」である。また「フィラー含有比※」は(1)成分、(3)成分の合計100重量部に対するフィラーの割合(重量部)を示し、「フィラー含有比※※」は、(1)成分、(2)成分および(3)成分の合計100重量部に対するフィラーの割合(重量部)を示す。
【0143】
【表12】
【0144】
【表13】
【0145】
【表14】
【0146】
【表15】
【0147】
表12〜14に示されるように、実施例3−1〜3−40の組成物は、いずれもフィラーの含有比が高いにもかかわらず、粘度が15Pa・s以下と低いことがわかる。このため、実施例3−1〜3−40の組成物は、基板同士の隙間を十分に埋め込むことができ、また接着強度が高いため、得られるセルの高温高湿下での信頼性が高いことがわかる。また素子劣化試験の成績が良好であることがわかる。さらに実施例3−1〜3−40の組成物は、シール剤として用いられる場合に要求される粘度安定性が高いことがわかる。
【0148】
一方、表15に示されるように、比較例3−1〜3−13の組成物は、水分含有量が1%と高いため、いずれも粘度安定性や硬化物の高温高湿信頼性が低く、かつ素子劣化試験の評価が悪いことがわかる。