特許第6113086号(P6113086)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6113086
(24)【登録日】2017年3月24日
(45)【発行日】2017年4月12日
(54)【発明の名称】乾燥野菜ブロック及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23B 7/02 20060101AFI20170403BHJP
   A23L 3/44 20060101ALI20170403BHJP
【FI】
   A23B7/02
   A23L3/44
【請求項の数】7
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-558653(P2013-558653)
(86)(22)【出願日】2013年2月6日
(86)【国際出願番号】JP2013052753
(87)【国際公開番号】WO2013121952
(87)【国際公開日】20130822
【審査請求日】2015年12月22日
(31)【優先権主張番号】特願2012-31699(P2012-31699)
(32)【優先日】2012年2月16日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000206945
【氏名又は名称】大塚食品株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 利一
(72)【発明者】
【氏名】森津 成啓
【審査官】 柴原 直司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−218442(JP,A)
【文献】 特公平04−036653(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23B 7/02
A23L 3/44
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乾燥野菜ブロックの製造方法であって、
(1)原料野菜を真空凍結乾燥以外の方法で乾燥することによって、水分量が20〜60質量%の半乾燥野菜を得る工程1、
(2)工程1で得られた半乾燥野菜を密閉容器内で1時間以上静置することにより半乾燥野菜の水分活性を0.85〜1.0の範囲に調整する工程2、
(3)工程2を経た半乾燥野菜を0.2〜0.4MPaの圧力で2〜6秒間押圧することによりブロック形状に成型する工程3、
(4)工程3でブロック形状に成型された半乾燥野菜を真空凍結乾燥する工程4、
を順に有する製造方法。
【請求項2】
前記真空凍結乾燥以外の方法が、熱風乾燥、送風乾燥、遠赤外線加熱乾燥、除湿空気乾燥、自然乾燥、真空減圧乾燥、間接加熱乾燥、マイクロ波加熱乾燥、及び過熱水蒸気乾燥からなる群から選ばれた少なくとも1種である、請求項1に記載の乾燥野菜ブロックの製造方法。
【請求項3】
工程1で水分量が20〜50重量%の半乾燥野菜を得る、請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記密閉容器内の雰囲気温度が10℃以下である、請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
【請求項5】
工程3で半乾燥野菜を0.2〜0.4MPaの圧力で3〜4秒間押圧する、請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法。
【請求項6】
工程3で賦型剤を使用せずに成型する、請求項1〜5のいずれかに記載の製造方法。
【請求項7】
工程1に先立って原料野菜をブランチングする工程を更に有する、請求項1〜6のいずれかに記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乾燥野菜ブロック及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、インスタントラーメン、インスタントスープ、インスタント味噌汁その他の各種加工食品の野菜として乾燥野菜ブロックが使用されている。乾燥野菜ブロックは、一般に原料野菜を適当な大きさに切り揃えてブランチングし、圧縮成型後に真空凍結乾燥することにより製造されている。そして、喫食時は熱湯を注ぐことにより復元される。
【0003】
乾燥野菜ブロックには、形崩れし難く、復元時に野菜本来の味、食感(テクスチャー)及びボリュームが得られることが要求されている。近年、ブロックのコンパクト化や製造コスト低減の要求がなされているが、十分な復元性を有するコンパクトなブロックを低コストで製造することは未だ達成されていない。
【0004】
本願に関連する先行文献として、例えば、特許文献1、2がある。特許文献1には、冷凍機温度で改善された安定性を有する植物性製品及びその製造方法が記載されている。特許文献2には、押圧成型乾燥食材の製造方法が記載されている。しかしながら、これらの特許文献に代表される先行技術は、何れも上記要求を十分に満たすものではなく、更なる改良の余地がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第2866117号公報
【特許文献2】特許第3854614号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、形崩れし難く、復元時に野菜本来の味、食感及びボリュームが得られるコンパクトな乾燥野菜ブロックを、賦形剤を使用せずに低コストで製造する方法を提供することを目的とする。また、当該製造方法により得られる、熱湯に浸漬した際に3分以内で野菜本来の味、食感(テクスチャー)及びボリュームに復元することができる乾燥野菜ブロックを提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、従来技術の問題点を解決するために鋭意研究を重ねた結果、特定の工程を有する製造方法が上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
即ち、本発明は、下記の乾燥野菜ブロック及びその製造方法に関する。
1. 乾燥野菜ブロックの製造方法であって、
(1)原料野菜を真空凍結乾燥以外の方法で乾燥することによって、水分量が20〜60質量%の半乾燥野菜を得る工程1、
(2)工程1で得られた半乾燥野菜を密閉容器内で1時間以上静置することにより半乾燥野菜の水分活性を0.85〜1.0の範囲に調整する工程2、
(3)工程2を経た半乾燥野菜を0.1〜0.6MPaの圧力で2〜6秒間押圧することによりブロック形状に成型する工程3、
(4)工程3でブロック形状に成型された半乾燥野菜を真空凍結乾燥する工程4、
を順に有する製造方法。
2. 前記真空凍結乾燥以外の方法が、熱風乾燥、送風乾燥、遠赤外線加熱乾燥、除湿空気乾燥、自然乾燥、真空減圧乾燥、間接加熱乾燥、マイクロ波加熱乾燥、及び過熱水蒸気乾燥からなる群から選ばれた少なくとも1種である、上記項1に記載の乾燥野菜ブロックの製造方法。
3. 工程1で水分量が20〜50重量%の半乾燥野菜を得る、上記項1又は2に記載の製造方法。
4. 前記密閉容器内の雰囲気温度が10℃以下である、上記項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
5. 工程3で半乾燥野菜を0.2〜0.4MPaの圧力で3〜4秒間押圧する、上記項1〜4のいずれかに記載の製造方法。
6. 工程3で賦型剤を使用せずに成型する、上記項1〜5のいずれかに記載の製造方法。
7. 工程1に先立って原料野菜をブランチングする工程を更に有する、上記項1〜6のいずれかに記載の製造方法。
8. 上記項1〜7のいずれかに記載の製造方法により得られる乾燥野菜ブロックであって、熱湯に浸漬した際に3分以内で原料野菜の状態に復元することができる乾燥野菜ブロック。
【0009】
以下、本発明の乾燥野菜ブロック及びその製造方法について詳細に説明する。
【0010】
本発明の凍結乾燥野菜ブロックの製造方法は、
(1)原料野菜を真空凍結乾燥以外の方法で乾燥することによって、水分量が20〜60質量%の半乾燥野菜を得る工程1、
(2)工程1で得られた半乾燥野菜を密閉容器内で1時間以上静置することにより半乾燥野菜の水分活性を0.85〜1.0の範囲に調整する工程2、
(3)工程2を経た半乾燥野菜を0.1〜0.6MPaの圧力で2〜6秒間押圧することによりブロック形状に成型する工程3、
(4)工程3でブロック形状に成型された半乾燥野菜を真空凍結乾燥する工程4、
を順に有することを特徴とする。
【0011】
上記特徴を有する本発明の乾燥野菜ブロックの製造方法は、特に工程1において水分量が20〜60重量%の半乾燥野菜を得るとともに工程2において半乾燥野菜を密閉容器内で1時間以上静置して半乾燥野菜の水分活性を0.85〜1.0の範囲に調整することにより、
・工程3において0.1〜0.6MPaの圧力で野菜組織を破壊することなく容易に所望のブロック形状に成型することができ、
・工程4において凍結障害を抑制(即ち、氷結晶の数及びサイズが小さいことにより、スポンジ状の組織(食感)の生成が抑制されている)できる上、従来よりも真空凍結乾燥機の体積当たりの野菜処理量が増加するとともに短時間で乾燥処理を完結して製造コストを低減することができ、しかも、
・熱湯により3分以内で復元して野菜本来の味、食感及びボリュームが得られる、
という有利な効果が得られる。
【0012】
以下、本発明の製造方法の各工程について説明する。
【0013】
工程1:真空凍結乾燥以外の方法で乾燥する工程
工程1は、原料野菜を真空凍結乾燥以外の方法で乾燥することによって、水分量が20〜60質量%の半乾燥野菜を得る。本発明において、真空凍結乾燥以外の方法で乾燥する工程(上記工程1)の乾燥原理は蒸発であるため、当該工程の後に行われる真空凍結乾燥工程(上記工程4)とは区別される。本明細書では、上記真空凍結乾燥以外の方法で乾燥する工程を、以下、便宜的に「高温又は(若しくは)常温乾燥する工程」ともいう。
【0014】
原料野菜としては、例えば、キャベツ、ホウレン草、小松菜、チンゲン菜、野沢菜、もやし、豆苗、カリフラワー、ブロッコリー、人参、たまねぎ、ねぎ、ごぼう、南瓜、かぶ、大根、パプリカ、ズッキーニ、菜の花、水菜等が挙げられる。これらの野菜は洗浄後、必要に応じて不要部分を除去し、種類に応じて20〜50mm×20〜50mm程度の大きさにカットして原料野菜とする。その中でも、根野菜は2〜3mm以下にスライスして使用することが好ましい。
【0015】
高温又は常温乾燥する工程後の水分量は20〜60質量%であれば良いが、その中でも20〜50重量%が好ましい。なお、原料野菜の重量を100重量%とした場合の半乾燥野菜の重量割合(半乾燥重量)は、10〜50重量%程度が好ましく、20〜50重量%程度がより好ましい。特に半乾燥重量が20〜35重量%程度であれば、後続の真空凍結乾燥工程において押さえ(ブロック形状を保持するための押さえ)をしなくても所望のブロック形状を容易に保持することができる点で好ましい。
【0016】
高温又は常温乾燥する工程の方法としては、真空凍結乾燥以外の方法であって、かつ水分量が20〜60質量%の半乾燥野菜が得られるように乾燥させれば、特に限定されない。具体的な乾燥方法としては、熱風乾燥、送風乾燥、遠赤外線加熱乾燥、除湿空気乾燥、自然乾燥(天日乾燥を含む)、真空減圧乾燥、間接加熱乾燥、マイクロ波加熱乾燥、過熱水蒸気乾燥等が挙げられる。高温又は常温乾燥する工程は、1種又は2種以上の乾燥方法を組み合わせて行うことができる。高温又は常温乾燥する工程の中でも、乾燥の作業性と野菜本来の風味を損なわないという観点から、熱風乾燥が好ましい。
【0017】
上記間接加熱乾燥とは、熱風による直接加熱ではなく、蒸発に必要な熱を熱保持壁を通じて間接的に供給する乾燥方法である。具体的にはドラム乾燥が挙げられる。また、上記真空減圧乾燥は、上記間接加熱乾燥を減圧にて乾燥する方法に相当する。
【0018】
高温又は常温乾燥する工程として熱風乾燥を行う場合、その熱風乾燥の条件は所定の水分量の半乾燥野菜が得られる限り限定されないが、乾燥温度としては50〜100℃程度が好ましく、50〜70℃程度がより好ましい。乾燥時間は原料野菜の元々の水分量に応じて一定ではないが、30分〜2時間程度が好ましく、30分〜1時間程度がより好ましい。熱風乾燥の際は、変色等を防止するために、野菜の品温を上げず短時間で乾燥が完了するように温度と風量等を設定することが望ましい。
【0019】
熱風乾燥が過度であると喫食時の復元性が悪化し、バリバリとした食感になり易く食感が低下し易い。また、熱風乾燥が不十分であると真空凍結乾燥時に大きな氷結晶が生じて多孔湿でスポンジ状のブロックとなり易く、この場合も食感が低下する。
【0020】
本発明では、原料野菜の種類によっては、上記高温又は常温での乾燥に先立ってブランチングする工程を更に有していてもよい。例えば、キャベツ、ホウレン草、小松菜、チンゲン菜、野沢菜、もやし、豆苗、カリフラワー、ブロッコリー、人参、ごぼう、南瓜、かぶ、ズッキーニ、菜の花、水菜等の場合には、ブランチングを行うことが好ましい。
【0021】
ブランチングは、加熱により野菜の有する酸化酵素を不活性化させて変質や変色を防止したり組織を軟化させて凍結による組織の破損を防止したりするために行う。具体的には、原料野菜を70〜100℃の熱湯で1〜3分程度(好ましくは90℃〜100℃の蒸気に1〜2分程度)晒すことにより行う。
【0022】
ブランチング時やブランチング後には公知の水分活性制御物質を用いてもよいが、工程2において半乾燥野菜の水分活性が0.85〜1.0の範囲に調整できるように用いる。水分活性制御物質としては、例えば、塩化ナトリウム、クエン酸ナトリウム、塩化カリウム、シュークロース、デキストロース、転化糖、グリセロール、ソルビトール、プロピレングリコール、トレハロース等が挙げられる。
【0023】
工程2:静置工程
工程2は、工程1で得られた半乾燥野菜を密閉容器内で1時間以上静置することにより半乾燥野菜の水分活性を0.85〜1.0の範囲に調整する。なお、水分活性(AW:water activity)は、半乾燥野菜を密閉容器内に入れて水分が大気中の蒸気圧と平衡するまで放置し、そのときの器内の相対湿度(H)とその温度に対応する飽和湿度(H)との比で表される数値であり、これは半乾燥野菜(表面、断面、内部)の水蒸気圧(P)と大気の飽和水蒸気圧(P)の比とも等しい。即ち、水分活性AWは、下式で表される。
【0024】
AW=P/P=H/H
密閉容器としては水蒸気を通さない材質であればよく、樹脂製の容器や袋が好ましい。静置時の密閉容器内の雰囲気温度は限定的ではないが、衛生面(微生物管理)の観点では10℃以下が好ましく、5℃以下の冷蔵室が好ましい。静置時間は、半乾燥野菜の表面、断面、内部の水分活性を0.85〜1.0の範囲に均一に調整できる時間であればよく、野菜の種類によって一定ではないが、通常1〜18時間が好ましく、6〜12時間がより好ましい。
【0025】
本発明では、工程1において水分量が20〜60重量%の半乾燥野菜を得た後に工程2において半乾燥野菜を密閉容器内で1時間以上静置して半乾燥野菜の水分活性を0.85〜1.0の範囲に調整することにより、後続の工程3において0.1〜0.6MPaの圧力で野菜組織を破壊することなく容易に所望のブロック形状に成型することができ、工程4において凍結障害を抑制しつつ従来よりも真空凍結乾燥機の体積当たりの野菜処理量を増加させて製造コストを低減することができる。
【0026】
工程3:圧縮成型工程
工程3は、工程2を経た半乾燥野菜を0.1〜0.6MPaの圧力で2〜6秒間押圧することによりブロック形状に成型する。圧力はその中でも0.2〜0.4MPaが好ましい。なお、ブロック形状は限定的ではなく、立方体、直方体、円柱状等が含まれる。直方体形状の場合には、例えば、30mm×40mm×20mm程度に設定できる。この圧縮成型により半乾燥野菜の嵩比重は一般に1/5〜1/10程度となる。
【0027】
本発明では、工程1及び工程2を経た効果として、工程3において、0.1〜0.6MPaの圧力で野菜組織の物理的破壊をすることなく容易に所望のブロック形状に成型することができる。また、成型時に野菜の栄養分を含んだドリップが流出することが効果的に抑制されており、更に喫食の際の復元力も十分に保持されている。このような効果は、工程1及び工程2を経ることにより半乾燥野菜の表面、断面及び内部の湿度の均質化によりしなやかな物性が得られていることに基づくものと考えられる。
【0028】
本発明では、必要に応じて、成型性を高めて且つブロックの形崩れを抑制するために、公知の賦型剤を併用することもできる。例えば、ブドウ糖、乳糖、果糖、ショ糖等の糖類が挙げられる。賦型剤の種類と含有量は限定されないが、含有量については、成型する半乾燥野菜の1〜10重量%程度で、半乾燥野菜の水分活性が0.85〜1.0の範囲から外れないように留意する必要がある。なお、本発明では工程1及び工程2により半乾燥野菜にしなやかな物性を付与しているため、賦型剤を用いなくても容易に所望のブロック形状に成型することができる。
【0029】
工程4:真空凍結乾燥工程
工程4は、工程3でブロック形状に成型された半乾燥野菜を真空凍結乾燥する。本発明において、真空凍結乾燥工程とは、(i)上記工程3で得られた半乾燥野菜に対して凍結する工程、及び(ii)凍結状態の上記半乾燥野菜を真空圧下で乾燥する工程、を行うことをいう。なお、真空凍結乾燥工程(上記工程4)の乾燥原理は昇華であるため、当該工程よりも前に行われる高温又は常温乾燥する工程(上記工程1)とは区別される。
【0030】
真空凍結乾燥の条件は、乾燥野菜ブロックが得られる限り限定的ではない。例えば、真空凍結乾燥工程における凍結(上記(i)工程)の条件としては−20〜−40℃程度で3〜12時間程度が好ましく、−30〜−40℃程度で3〜4時間程度がさらに好ましい。また、真空凍結乾燥工程における真空圧下での乾燥(上記(ii)工程)の条件としては、乾燥温度(乾燥の棚温度)が40〜100℃の範囲で6〜24時間程度が好ましい。真空圧は、20〜100Pa程度が好ましく、20〜70Pa程度がより好ましい。真空凍結乾燥により、水分含有率10重量%以下、好ましくは0〜5重量%程度の乾燥野菜ブロックが得られる。本発明では、工程1及び工程2を経て半乾燥野菜の水分量を20〜60質量%にするとともに野菜内部の湿度を均質化しているため、氷結晶による組織破壊を大幅に低下し、野菜本来の食感を十分に保持できる。また、好適な製造条件では真空凍結乾燥に要する時間を5〜6時間程度、短縮でき、従来よりも製造コスト低減にも寄与する。
【0031】
上記工程を経ることにより得られる凍結乾燥野菜ブロックは、コンパクトな形状でありながらも比較的重量感があり形崩れが生じ難い。水分含有量が極めて少ないため、常温で長期間変質することなく保管が可能である。また、熱湯を注ぐことにより3分以内で完全に復元し、野菜本来の風味、食感、ボリュームが得られる。
【発明の効果】
【0032】
本発明の乾燥野菜ブロックの製造方法は、特に工程1において水分量が20〜60重量%の半乾燥野菜を得るとともに工程2において半乾燥野菜を密閉容器内で1時間以上静置して半乾燥野菜の水分活性を0.85〜1.0の範囲に調整することにより、
・工程3において0.1〜0.6MPaの圧力で野菜組織を破壊することなく容易に所望のブロック形状に成型することができ、
・工程4において凍結障害を抑制(即ち、氷結晶の数及びサイズが小さいことにより、スポンジ状の組織(食感)の生成が抑制されている)できる上、従来よりも真空凍結乾燥機の体積当たりの野菜処理量が増加するとともに短時間で乾燥処理を完結して製造コストを低減することができ、しかも、
・熱湯により3分以内で復元して野菜本来の味、食感及びボリュームが得られる、
という有利な効果が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、実施例及び比較例を示して本発明を具体的に説明する。但し、本発明は実施例に限定されない。
【0034】
実施例1
原料野菜(キャベツ)を用意し、芯を除き、葉の部分を30mm角に切り、ブランチングを行った。ブランチング処理は、90℃の熱湯で2分間加熱後、冷水にて冷却することにより行った。その後、表面に付着した水は脱水機にて除いた後、熱風乾燥機(70℃)で乾燥して半乾燥野菜を得た。
【0035】
半乾燥野菜の水分量及び乾燥重量は、水分量38重量%、乾燥重量14重量%であった。次いで半乾燥野菜を樹脂袋(ポリエチレン/50μm厚)に入れて封口した後、冷蔵庫(5℃)で一晩(14時間)静置した。静置により半乾燥野菜の水分活性は表面、断面、内部のいずれも0.860になった。
【0036】
半乾燥野菜を30mm×40mm×20mmのブロック形状に成型した。成型条件は、圧力が0.2MPa、成型時間は3秒とした。この条件により、野菜の水分(ドリップ)を流出させることなく容易にブロック形状に成型でき、その後も押さえをすることなくブロック形状を維持していた。
【0037】
ブロック形状に成型した半乾燥野菜は凍結後、70〜30Paの条件下、製品温度が50℃を超えない温度条件で凍結乾燥を行った。凍結乾燥により水分含有率5重量%以下の凍結乾燥野菜ブロックを得た。凍結乾燥に要した時間は約12時間であった。
【0038】
得られた凍結乾燥野菜ブロックは、形崩れし難い十分な強度を有していた。また、熱湯により復元したところ、復元性が良く(2〜3分で復元した)、野菜本来の味、食感及びボリュームが十分に得られた。
【0039】
実施例2
原料野菜(ニンジン)を用意し、スライサーで2mm厚にスライスした後、50×20×2mmの形状に成形した。ブランチング処理は、蒸気で2分蒸した後、冷風にて冷却して品温を下げることにより行った。その後、熱風乾燥機(70℃)で乾燥して半乾燥野菜を得た。
【0040】
半乾燥野菜の水分量及び乾燥重量は、水分量53重量%、乾燥重量20重量%であった。次いで半乾燥野菜を樹脂袋(ポリエチレン/100μm)に入れて開口部をシールした後、冷蔵庫(10℃)で4時間静置した静置により半乾燥野菜の水分活性は表面、断面、内部のいずれも0.956になった。
【0041】
各半乾燥野菜を30mm×40mm×20mmのブロック形状に成型した。成型条件は、圧力が0.2MPa、成型時間が3秒とした。この条件により、野菜の水分(ドリップ)を流出させることなく容易にブロック形状に成型でき、その後も押さえをすることなくブロック形状を維持していた。
【0042】
ブロック形状に成型した半乾燥野菜は凍結後、70〜30Paの条件下、製品温度が50℃を超えない温度条件で凍結乾燥を行った。凍結乾燥により水分含有率5重量%以下の凍結乾燥野菜ブロックを得た。凍結乾燥に要した時間は約12時間であった。
【0043】
得られた凍結乾燥野菜ブロックは、形崩れし難い十分な強度を有していた。また、熱湯により復元したところ、復元性が良く(2〜3分で復元した)、野菜本来の味、食感及びボリュームが十分に得られた。
【0044】
実施例3
原料野菜(パプリカ)を用意し、洗浄後、皮をむき、3mm厚でスライスした。
【0045】
ブランチング処理はせず、熱風乾燥機にて(70℃)にて乾燥して半乾燥野菜を得た。
【0046】
半乾燥野菜の水分量及び乾燥重量は、水分量47重量%、乾燥重量20重量%であった。次いで半乾燥野菜を樹脂袋(ポリエチレン/100μm厚)に入れて開口部をシールした後、冷蔵庫(5℃)で、6時間静置した。静置により半乾燥野菜の水分活性は表面、断面、内部のいずれも0.911になった。
【0047】
半乾燥野菜を250mm×320mm×30mmのブロック形状に成型した。成型条件は、圧力が0.2MPa、成型時間が5秒とした。この条件により、野菜の水分(ドリップ)を流出させることなく容易にブロック形状に成型でき、その後も押さえをすることなくブロック形状を維持していた。
【0048】
ブロック形状に成型した半乾燥野菜は凍結後、70〜30Paの条件下、製品温度が40℃を超えない温度条件で凍結乾燥を行った。凍結乾燥により水分含有率5重量%以下の凍結乾燥野菜ブロックを得た。凍結乾燥に要した時間は約20時間であった。
【0049】
得られた凍結乾燥野菜ブロックは、形崩れし難い十分な強度を有していた。また、熱湯により復元したところ、復元性が良く(2〜3分で復元した)、野菜本来の味、食感及びボリュームが十分に得られた。
【0050】
比較例1
静置工程を有さない以外は実施例1と同様にして凍結乾燥野菜ブロックを得た。この場合には、成型後に経時的に膨化してブロック形状を保つことができなかった。なお、半乾燥野菜の成型時の水分活性は測定する場所(サンプリング部位)により値が異なり、1.0〜0.85の範囲に入らないものがあった。
【0051】
比較例2
静置工程を有さない以外は実施例2と同様にして凍結乾燥野菜ブロックを得た。この場合には、成型後に経時的に膨化してブロック形状を保つことができなかった。なお、半乾燥野菜の成型時の水分活性は測定する場所(サンプリング部位)により値が異なり、1.0〜0.85の範囲に入らないものがあった。
【0052】
比較例3
静置工程を有さない以外は実施例3と同様にして凍結乾燥野菜ブロックを得た。この場合には、成型後に経時的に膨化してブロック形状を保つことができなかった。なお、半乾燥野菜の成型時の水分活性は測定する場所(サンプリング部位)により値が異なり、1.0〜0.85の範囲に入らないものがあった。
【0053】
比較例4
成型圧力を0.8MPaに変えた以外は実施例3と同様にして凍結乾燥野菜ブロックを得た。この場合には、ドリップの流出やバリ(端部の突起)の発生が認められた。
(考 察)
従来の一般的な凍結乾燥野菜ブロックは原料野菜をブロック形状に成型し、18〜20時間程度かけて真空凍結乾燥することにより得るが、本発明の製造方法によれば、工程1及び工程2で水分量が調整された半乾燥野菜を予め調製するため、成型が容易であり、凍結時の膨張がないため、押さえをすることなくブロック形状を維持することができる。また、凍結乾燥機の体積当たりの野菜処理量が大幅に増加すると同時に、凍結乾燥に要する時間を大幅に短縮できる。それと同時に復元性が良く、野菜本来の味、食感及びボリュームを十分に得ることができる。