特許第6113114号(P6113114)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6113114
(24)【登録日】2017年3月24日
(45)【発行日】2017年4月12日
(54)【発明の名称】端末接続構造
(51)【国際特許分類】
   F16C 1/14 20060101AFI20170403BHJP
【FI】
   F16C1/14 B
【請求項の数】4
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2014-111438(P2014-111438)
(22)【出願日】2014年5月29日
(65)【公開番号】特開2015-224767(P2015-224767A)
(43)【公開日】2015年12月14日
【審査請求日】2016年5月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】390000996
【氏名又は名称】株式会社ハイレックスコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】特許業務法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐野 立
【審査官】 岡本 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−177936(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0147100(US,A1)
【文献】 特開2006−38217(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16C 1/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺部材の端末が取り付けられ、相手部材に接続される端末部材を備え、該端末部材が前記相手部材の挿入開口部に挿入されて前記相手部材に接続される端末接続構造であって、
前記端末部材が、前記長尺部材の端末が取り付けられる取付部、および、前記取付部から延び、前記挿入開口部に挿入される挿入部を備えた端末部材本体と、前記端末部材本体の挿入部に嵌合される嵌合子とを備え、
前記嵌合子が、
前記挿入開口部への挿入時に弾性変形して前記挿入開口部に挿入され、前記挿入開口部に挿入された後に広がり、前記相手部材の内側係合部と係合する複数の弾性片と、前記複数の弾性片の間で前記挿入部の軸方向に延び、軸方向両端が前記端末部材本体と係合して前記嵌合子の前記挿入部に対する軸方向の移動を規制する複数の規制部とを備え、
前記挿入部が、
軸方向に延び、軸方向の一方に縮径した縮径部を有する軸部を備え、
前記規制部が、前記嵌合子の軸方向内側に変位した変位部を備え、
前記嵌合子が前記端末部材本体に対して、前記変位部が前記縮径部に沿うように取り付けられることを特徴とする端末接続構造。
【請求項2】
前記軸部の先端側と後端側とに前記規制部と係合する係合部を有し、
前記規制部の先端部及び後端部が前記係合部と係合し、
前記縮径部が前記係合部と隣接して設けられた
請求項1に記載の端末接続構造。
【請求項3】
前記縮径部が、後端方向に縮径したテーパ部であり、
前記変位部が、前記テーパ部に対応して、前記嵌合子の内側方向に向かって変位した請求項1または請求項2に記載の端末接続構造。
【請求項4】
前記規制部がバネ弾性を有し、変位部が、前記嵌合子が前記端末部材本体に装着された状態で前記バネ弾性による弾性力によって前記縮径部と当接するように、変位した請求項1〜3のいずれかに記載の端末接続構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、端末接続構造に関する。
【背景技術】
【0002】
コントロールケーブルのような長尺部材を相手部材に連結する構造の1つとして、特許文献1には、コントロールケーブルを連結する中継機構が開示されている。図9に示されるように、特許文献1の中継機構100は、中継機構100に対して一方の方向に延びるコントロールケーブル101aと、他方の方向に延びるコントロールケーブル101bとを中継接続している。具体的には、一方のコントロールケーブル101aのインナーケーブル102aのケーブルエンド103がジョイント部材104の一端(図9中、左側)に係止される。他方のコントロールケーブル101bのインナーケーブル102bは、アタッチメント部材105に係止され、アタッチメント部材105がジョイント部材104に形成された挿通孔106に挿入されてジョイント部材104に取り付けられる。
【0003】
ジョイント部材104の挿通孔106に挿入されるアタッチメント部材105には、ばね部材107が設けられ、ばね部材107は部分的に周方向に広がった板ばね108を備えている。ばね部材107は、ジョイント部材104の挿通孔106に挿入されるときに弾性変形し、ジョイント部材104の内部に入った後に、ばね部材107の板ばね108が外向きに広がって、アタッチメント部材105がジョイント部材104に連結される。ばね部材107は、図10に示されるように、アタッチメント部材105の先端から圧入されて、アタッチメント部材105の軸状の部位のうち、径が細くなった取付部位109に嵌合されて取り付けられる。ばね部材107は、部分的に周方向に広がった板ばね108以外に、板ばね108の間に、取付部位109の軸方向両側に形成された段差109a、109bの部分に挟み込まれる規制部110が設けられており、ジョイント部材104の挿通孔106にアタッチメント部材105が挿入されるときに、ばね部材107のアタッチメント部材105に対する軸方向の移動を規制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013−177936号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、端末部材であるアタッチメント部材105の先端から、端末部材に嵌合する嵌合子であるばね部材107を圧入する際に、アタッチメント部材105とばね部材107の軸心とが傾斜した状態で圧入した場合など、圧入の仕方によっては、規制部110が塑性変形して、本来外側には広がっていない規制部110が外側に広がった状態となってしまい、取付部位109の段差109a、109b(特に段差109b)とうまく係合しない場合がある。このような場合、アタッチメント部材105をジョイント部材104の挿通孔106へ挿入する時に、ばね部材107がアタッチメント部材105の取付部位109に対して軸方向(図9中、右側)にずれて、規制部110の端部が段差109bを覆うように乗り上げて、アタッチメント部材105とジョイント部材104との連結がうまくいかず、ばね部材107を後加工、修正加工して取り付ける必要となる場合がある。そのため、アタッチメント部材105にばね部材107を圧入した際に係合状態を確認する必要があり、また当該係合が適切ではない場合には、修正等の工程が必要となる。つまり、ばね部材107とアタッチメント部材105とを容易に取り付けることができる構造が望まれている。
【0006】
そこで、本発明は、かかる問題点に鑑みて、端末部材本体と端末部材本体に嵌合される嵌合子との適切な嵌合が容易に得られる端末接続構造の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の端末接続構造は、長尺部材の端末が取り付けられ、相手部材に接続される端末部材を備え、該端末部材が前記相手部材の挿入開口部に挿入されて前記相手部材に接続される端末接続構造であって、前記端末部材が、前記長尺部材の端末が取り付けられる取付部、および、前記取付部から延び、前記挿入開口部に挿入される挿入部を備えた端末部材本体と、前記端末部材本体の挿入部に嵌合される嵌合子とを備え、前記嵌合子が、前記挿入開口部への挿入時に弾性変形して前記挿入開口部に挿入され、前記挿入開口部に挿入された後に広がり、前記相手部材の内側係合部と係合する複数の弾性片と、前記複数の弾性片の間で前記挿入部の軸方向に延び、軸方向両端が前記端末部材本体と係合して前記嵌合子の前記挿入部に対する軸方向の移動を規制する複数の規制部とを備え、前記挿入部が、軸方向に延び、軸方向の一方に縮径した縮径部を有する軸部を備え、前記規制部が、前記嵌合子の軸方向内側に変位した変位部を備え、前記嵌合子が前記端末部材本体に対して、前記変位部が前記縮径部に沿うように取り付けられることを特徴とする。
【0008】
また、前記軸部の先端側と後端側とに前記規制部と係合する係合部を有し、前記規制部の先端部及び後端部が前記係合部と係合し、前記縮径部が前記係合部と隣接して設けられることが好ましい。
【0009】
また、前記縮径部が、後端方向に縮径したテーパ部であり、前記変位部が、前記テーパ部に対応して、前記嵌合子の内側方向に向かって変位していることが好ましい。
【0010】
また、前記規制部がバネ弾性を有し、変位部が、前記嵌合子が前記端末部材本体に装着された状態で前記バネ弾性による弾性力によって前記縮径部と当接するように、変位していることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の端末接続構造によれば、弾性片と規制部を有した、端末部材本体に嵌合される嵌合子が、端末部材本体に対して軸方向に移動することを規制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の端末接続構造の一実施形態を示す図である。
図2図1の端末接続構造の分解図である。
図3】(a)は、図1の端末接続構造に用いられる端末部材本体の斜視図であり、(b)は、(a)の端末部材本体の側面図である。
図4】(a)は、図1の端末接続構造に用いられる嵌合子の側面図であり、(b)は、(a)の嵌合子を基端側から見た図であり、(c)は、(a)の嵌合子の底面図である。
図5】(a)〜(c)は、図1の端末接続構造に用いられる端末部材を相手部材に接続する状態を示した図である。
図6】(a)は、図3で示した端末部材本体に図4で示した嵌合子が取り付けられた端末部材を示す側面図であり、(b)は、(a)の嵌合子の規制部が変形した状態で取り付けられた端末部材を示す側面図である。
図7】(a)は、従来の端末接続構造における嵌合子を挿入部に嵌合する前の状態を示す図であり、(b)は、(a)の嵌合子が、挿入部の先端部に対し傾斜した状態で嵌め込まれた状態を示す図であり、(c)は(a)の嵌合子が、挿入部の先端部に対し傾斜した状態で押し込まれ規制部が変形した状態を示す図であり、(d)は、(a)の嵌合子が、規制部が塑性変形した状態で挿入部に嵌合された状態を示す図である。
図8】(a)は、図7(a)の嵌合子の弾性片が、相手部材の挿入開口部の開口縁に当接しているときの嵌合子の状態を示す図であり、(b)は、(a)の嵌合子が、挿入部に対して軸方向にずれて、嵌合部位から外れた状態を示す図である。
図9】従来のコントロールケーブルの中継機構を示す図である。
図10図9の中継機構の分解図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照し、本発明の端末接続構造を詳細に説明する。
【0014】
図1および図2に示されるように、本発明の端末接続構造1は、長尺部材2の端末21a、21bが取り付けられ、相手部材3に接続される端末部材4を備え、端末部材4が相手部材3の挿入開口部3aに挿入されて相手部材3に接続されている。端末接続構造1は、相手部材3と長尺部材2とを、端末部材4を介して接続するために用いられ、たとえば、複数のコントロールケーブルを互いに中継接続する車両用のシート操作装置や、フューエルリッドの開閉機構、トランクの開閉機構などに適用することができる。また、車両用以外の用途にも適用することが可能である。
【0015】
長尺部材2は、所定の長さを有し、端末部材4を介して離れた地点間を接続するために用いられる。また、長尺部材2は、離れた地点を接続するものであれば、特に限定されないが、たとえば、図1および図2に示すように、インナーケーブル22a、22bとアウターケーシング23a、23bとを備えたコントロールケーブルや、操作力を伝達するロッド状の部材であっても構わない。なお、本実施形態では、コントロールケーブルのインナーケーブル22a、22bの一端側の端末21a、21bが端末部材4に取り付けられているが、アウターケーシング23a、23bの端末が端末部材4に取り付けられても構わない。また、図1では、端末部材4には、長尺部材2が2つ取り付けられているが、端末部材4に取り付けられる長尺部材2の数は特に限定されず、1つでも、3つ以上であってもよい。
【0016】
端末部材4は、詳細は後述するが、相手部材3に接続され、長尺部材2を相手部材3に接続する接続部として機能する。長尺部材2の端末21a、21bと端末部材4との間の取り付け方は特に限定されるものではなく、本実施形態で示すように、長尺部材2の端末21a、21bを係合により取り付けてもよいし、鋳込み、溶接、螺合等、他の公知の固着手段で取り付けても構わない。長尺部材2が取り付けられる端末部材4は、上述したように、相手部材3の挿入開口部3aに挿入されて相手部材3に接続される。
【0017】
相手部材3は、端末部材4が接続される接続対象であり、図1に示されるように、端末部材4を挿入することが可能な挿入開口部3aを有している。相手部材3は、端末接続構造1の用途に応じて、端末部材4を接続することができるものであれば、その形状や構造は限定されるものではない。また、挿入開口部3aは、挿入される端末部材4の形状に応じて適宜変更が可能であるが、後述するように、端末部材4の嵌合子6の弾性片61は、端末部材4の挿入開口部3aへの挿入時に、挿入開口部3aの開口縁と当接して径方向内側に変位し、端末部材4の挿入完了後に弾性片61が広がった際に、弾性片61が挿入開口部3aの周囲に設けられた内側係合部3bと係合し、端末部材4が相手部材3から抜け出ることを防止する大きさにされている。
【0018】
なお、本実施形態では、相手部材3は、図1に示されるように、端末部材4を挿入可能な内部空間Sを有する略筒状のジョイント部材として示されている。図1に示した実施形態では、相手部材3(ジョイント部材)の一方側に端末部材4が接続され、他方側に他のインナーケーブル22cが接続されることにより、他のインナーケーブル22cと長尺部材2とを相手部材3(ジョイント部材)により連結している。相手部材3と端末部材4との間の接続構造については後述するが、本実施形態の場合は、他のインナーケーブル22cに引き操作を加えると、相手部材3(ジョイント部材)を介して、2つの長尺部材2を引き操作できるように構成されている。より具体的には、図1に示されるように、相手部材3は、相手部材3の一端側に端末部材4が接続され、他端側に他のインナーケーブル22cの端末21cが係止され、筒状のジョイントケースC内にスライド可能に収容されている。
【0019】
ジョイントケースCは、端末部材4と係合した相手部材3を収容しており、一方側(図1中、右側)の部材には、2つのアウターケーシング23a、23bの端末が固定され、他方側(図1中、左側)の部材には、他のインナーケーブル22cが挿通されるアウターケーシング23cの端末が固定されて、中継機構を構成している。このような中継機構は、上述したように、たとえば車両のシート操作装置に適用することができる。なお、本実施形態では、1つの長尺部材(アウターケーシング23c、インナーケーブル22c)と、2つの長尺部材2(アウターケーシング23a、インナーケーブル22aと、アウターケーシング23b、インナーケーブル22b)とを中継接続する中継機構が示されている。しかしながら、このような構造には限定されず、たとえばフューエルリッドの開閉機構など、1つの長尺部材と1つの長尺部材とを中継接続する中継機構に適用しても構わないし、2つの長尺部材と2つの長尺部材とを接続するものであっても構わない。また、本実施形態では、端末部材4は相手部材3の一端側のみに接続されているが、相手部材3の両端に接続されてもよい。また、端末部材4は、長尺部材2の端末を接続するために、ブラケットなどに取り付けられても構わない。
【0020】
つぎに、端末部材4の構造、および、端末部材4と相手部材3との間の接続構造について説明する。端末部材4は、図1および図2に示されるように、端末部材本体5と、端末部材本体5に取り付けられる嵌合子6とを備えている。端末部材本体5は、長尺部材2と相手部材3とを接続する部材であり、長尺部材2の端末21a、21bが取り付けられる取付部51、および、取付部51から延び、挿入開口部3aに挿入される挿入部52を備えている。
【0021】
端末部材本体5の取付部51は、長尺部材2の端末21a、21bが取り付けられる部位である。取付部51の形状は、長尺部材2の端末21a、21bを取り付けることができるものであればよく、図2図3(a)および(b)に示されるように、外形が略円柱状であってもよいし、角柱状、その他の形状であってもよい。取付部51への長尺部材2の端末21a、21bの取り付け方は、上述したように特に限定されるものではなく、長尺部材2の端末21a、21bを係合等、公知の固着手段により取り付けられる。長尺部材2の端末21a、21bを係合により取付部51に取り付ける場合、係合固定の方法は特に限定されないが、取付部51の外周側から係合してもよいし、長尺部材2が1つだけの場合などは、端末部材本体5の挿入部52の内部に空洞を設けて、挿入部52の内部を通して、長尺部材2の端末21a、21bを、取付部51に係合してもよい。なお、本実施形態では、図3(a)および(b)に示されるように、端末部材本体5の取付部51は、挿入部52よりも大きい柱状に形成され、取付部51に、コントロールケーブルのインナーケーブル22a、22bのケーブルエンド(端末21a、21b)が係止される係止凹部51aが形成されている。係止凹部51aは、取付部51の両端面のうち、挿入部52が延びる側の端面51b(図3(b)参照)において開口し、取付部51の軸方向長さを短くして、端末部材本体5を小型・軽量化している。係止凹部51aは、図3(a)および(b)に示されるように、取付部51の外周側および端面51bに開口している。係止凹部51aには、インナーケーブル22a、22bの端末21a、21bが、取付部51の外周側から挿入されて係合され、インナーケーブル22a、22bの取付時にインナーケーブル22a、22bをガイドするガイド溝51c(図3(a)参照)に沿ってインナーケーブル22a、22bが取り付けられる。
【0022】
また、図3(a)および(b)に示す端末部材本体5の形状は、あくまで一例であり、取付部51と挿入部52の大きさ(軸方向、軸周りの大きさ)は、特に限定されるものではない。また、係止凹部51aの形状も、図示した形状に限られず、長尺部材2の端末21a、21bの形状等に応じて適宜変更が可能である。また、本実施形態では、ガイド溝51cは、図3(a)に示されるように、係止凹部51aから、取付部51の周方向に沿って延びた後、取付部51の軸方向に延びたものを示しているが、ガイド溝51cの形状は、特に図示した形状に限定されるものではない。その他、長尺部材2の端末21a、21bの取付部51への係合構造は、用いられる長尺部材2の本数や、端末21a、21bの形状や大きさ、端末部材本体5の形状や大きさに応じて適宜変更が可能であり、公知の係合構造を用いることができる。
【0023】
端末部材本体5の挿入部52は、図2図3(a)および(b)に示されるように、取付部51から、取付部51と同軸状に延びている。挿入部52は、図1に示されるように、嵌合子6が嵌合され、相手部材3の挿入開口部3aに挿入される部位である。挿入部52は、軸方向に延びる軸部52bを備えている。軸部52bは、挿入部52のうち、嵌合子6が取り付けられる軸状の部位である。本実施形態では、挿入部52は、図3(a)および(b)に示されるように、挿入部52の後端側に設けられ、挿入開口部3aに挿入可能な大きさを有する後端部位52cと、後端部位52cから先端側に延びる軸部52bと、軸部52bの先端側に設けられた先端部位52aとを備えている。本実施形態では、図3(a)および(b)に示されるように、先端部位52aは、略円柱状部と、略円柱状部の挿入部先端側に形成された円錐台形状部とを有している。後端部位52cは、取付部51の先端側に取付部51と同軸状に略円柱状に形成されている。後端部位52cは、先端部位52aの略円柱状部と略同径に形成されている。本実施形態では、軸部52bは、先端部位52aの略円柱状部と後端部位52cとよりも小径に形成されている。なお、本明細書において、「先端」とは、挿入部52の自由端をいい、「後端」とは、挿入部52の先端と反対側の端部をいう。同様に、軸部52bの先端側と後端側とは、挿入部52の先端側(図3(a)および(b)中、左側)、挿入部52の後端側(図3(a)および(b)中、右側)と同じ方向を意味する。また、後述するように、規制部62の先端部、後端部というときは、嵌合子6が軸部52bに取り付けられたときの挿入部52の先端側における規制部62の端部、挿入部52の後端側における規制部62の端部を意味する。
【0024】
軸部52bは、後述するように、嵌合子6が嵌合する部位であり、軸部52bに嵌合した嵌合子6が軸方向に移動しないように、軸部52bの先端側と後端側に係合部E1、E2を備えている。係合部E1、E2は、後述する規制部62の両端がそれぞれ軸方向に当接して、規制部62と係合する部位であり、嵌合子6の軸方向の移動を規制する。先端側の係合部E1は、本実施形態では、先端部位52aと軸部52bとの間の段差として示され、後端側の係合部E2は、軸部52bと後端部位52cとの間の段差として示されている。しかしながら、後述するように、嵌合子6の軸方向の移動を規制することができるように係合することができれば、係合部E1、E2は、挿入部52の先端部位52aおよび後端部位52cと、軸部52bとの間の段差に限定されず、その構造は特に限定されない。
【0025】
つぎに、挿入部52に取り付けられる嵌合子6について説明する。嵌合子6は、挿入部52に嵌合して取り付けられて、挿入部52を挿入開口部3aに挿入した後、端末部材4が、操作時などに挿入開口部3aから抜け出ないようにする機能を有する。嵌合子6は、図4(a)〜(c)に示されるように、複数の弾性片61と、複数の弾性片61の間で挿入部52の軸方向に延びる複数の規制部62とを備えている。嵌合子6は、図1に示されるように、端末部材本体5の挿入部52の軸部52bに嵌合した際に軸部52bの軸と同軸となるように、複数の弾性片61と複数の規制部62とが軸周り方向に交互に配置されている。嵌合子6は、軸部52bへの嵌合時や、挿入開口部3aへの挿入時などに弾性変形可能に構成されている。より詳細に説明すると、本実施形態の嵌合子6は、嵌合子6の先端側(嵌合子6が軸部52bに取り付けられたときの、軸部52bの先端側(図4(a)、(c)中、左側))において、略環状の基部63に対して、弾性片61および規制部62が周方向で連結されている。略環状の基部63には、嵌合子6を挿入部52の先端部位52aから嵌合する際に、基部63が拡径可能なように、軸方向に沿ってスリットSLが設けられている。嵌合子6の挿入部52への嵌合は、嵌合子6が挿入部52から外れないように嵌め込まれるものであればよく、たとえば、図2に示されるように、嵌合子6の後端側(図2中、右側)を挿入部52の先端部位52aから、治具等を用いて規制部62や基部63を外側に広げながら圧入して嵌め込み、嵌め込み後に規制部62や基部63が元の状態に復元することにより嵌合することができる。
【0026】
複数の弾性片61は、図5(a)〜(c)に示されるように、挿入開口部3aへの挿入時に弾性変形して挿入開口部3aに挿入され、挿入開口部3aに挿入された後に広がり、相手部材3の内側係合部3bと係合する。弾性片61が、相手部材3の内側係合部3bと係合することにより、嵌合子6が嵌合された端末部材本体5が、長尺部材2が操作されたときなどに相手部材3の挿入開口部3aから抜け出ることが防止される。弾性片61は、本実施形態では、図4(a)、図5(a)〜(c)に示されるように、基部63から軸部52bの後端側に向かって外側に広がって延びた板バネ状に形成され、複数の(2つの)弾性片61が周方向でほぼ均等に離間するように設けられている。弾性片61は、図5(a)に示されるように、挿入開口部3aへの挿入時に、挿入開口部3aの開口縁と当接するように外側に広がっており、図5(b)に示されるように、挿入開口部3aの開口縁と当接した後、挿入部52を挿入開口部3aにさらに押し込むことにより、外側に広がった弾性片61が、挿入部52の軸心方向に向かって内側に弾性変形して挿入開口部3aに挿入される。挿入された後は、図5(c)に示されるように、弾性変形した弾性片61は元の状態に戻って外側に広がる。元の状態に戻った弾性片61は、図5(c)に示されるように、相手部材3の内側係合部3bと係合可能となり、端末部材4に取り付けられた長尺部材2が引き操作されても、端末部材本体5は、挿入開口部3aから抜け出ることがない。そして、たとえば、図1において、図中左側のインナーケーブル22cが左側に引き操作されると、相手部材3もジョイントケースC内を左側に移動する。相手部材3が左側に移動すると、弾性片61が相手部材3の内側係合部3bと係合しているため、端末部材4も相手部材3とともに左側に移動する。これにより、図1中、右側の2つの長尺部材2(インナーケーブル22a、22b)が操作される。
【0027】
図4(a)〜(c)に示した嵌合子6では、弾性片61は、略環状の基部63から直線的に延びたものを示しているが、挿入部52の挿入開口部3aへの挿入時に弾性変形し、挿入後は相手部材3の内側係合部3bと係合して、端末部材本体5が挿入開口部3aから抜け出ることを防止することができるものであれば、その形状は特に限定されない。また、嵌合子6に設けられる弾性片61の数は、端末部材本体5が相手部材3の挿入開口部3aから抜け出ないように、弾性片61が相手部材3の内側係合部3bと係合するものであれば、特に限定されるものではなく、図4(a)〜(c)に示されるように2つであってもよいし、3つ以上であっても構わない。
【0028】
弾性片61は、図5(b)に示されるように、挿入部52を挿入開口部3aに挿入するときに、挿入開口部3aの開口縁と当接しながら挿入されるため、弾性片61は挿入開口部3aの開口縁から挿入方向(図5中、左側)とは反対方向(図5中、右側)の反力を受ける。したがって、弾性片61が受けた挿入方向とは反対方向の反力により、嵌合子6が挿入部52に対して軸方向でずれないように、嵌合子6の軸方向両端が端末部材本体5と係合する複数の規制部62が設けられている。
【0029】
規制部62は、嵌合子6の、挿入部52に対する軸方向の移動を規制する。ここで、規制部62における「軸方向の移動を規制する」とは、上述したように、嵌合子6が挿入部52(軸部52b)から外れるような軸方向の移動を規制するという意味である。なお、嵌合子6が挿入部52の軸部52bとの間のわずかなクリアランス間で軸方向に移動するような場合など、規制部62の軸方向の長さが軸部52bよりも短く形成されていることにより、嵌合子6が軸部52bにおいて、軸部52bから外れることなく軸方向に移動するような場合は、ここでいう「軸方向の移動」には含まれない。
【0030】
規制部62は、本実施形態では、図5(a)〜(c)に示されるように、規制部62の先端部62aが、軸部52bの先端側の係合部E1と係合し、規制部62の後端部62bが、軸部52bの後端側の係合部E2と係合する。これにより規制部62は、挿入部52が挿入開口部3aへ挿入されるときには、規制部62の後端部62bと軸部52bの後端側の係合部E2とが係合して、嵌合子6が、挿入部52に対して後端側に移動することを規制する。そして、挿入部52が挿入開口部3aに挿入された後に、長尺部材2の操作などにより、相手部材3の内側係合部3bと弾性片61が係合すると、嵌合子6は内側係合部3bからの反力により、嵌合子6を、挿入部52に対して挿入部52の先端側に移動させる方向の力が加わるが、規制部62の先端部62aと軸部52bの先端側の係合部E1とが係合して、嵌合子6が、挿入部52に対して先端側に移動することを規制する。
【0031】
規制部62は、嵌合子6に設けられた複数の弾性片61の間に設けられている。すなわち、弾性片61から周方向で離間して、または隣接して、複数の弾性片61の間に設けられる。規制部62は、弾性片61と同様に、環状の基部63から延びる板状の部材であり、本実施形態では、略矩形状に形成されている。本実施形態では、図4(a)〜(c)に示されるように、2つの弾性片61の間に、2つの規制部62が設けられている。しかしながら、規制部62の数は特に限定されず、たとえば、4つの弾性片61が設けられる場合には、4つの弾性片61の間の4つの空間全てに規制部62を設ける必要はなく、少なくとも2つの規制部62が設けられていればよい。
【0032】
つぎに、軸部52bおよび規制部62について、より詳細に説明する。
【0033】
図2図3(a)および(b)に示されるように、軸部52bは、軸方向の一方に縮径した縮径部52dを有している。縮径部52dは、嵌合子6が軸部52bに取り付けられた際に、嵌合子6の径方向内側に変位した変位部62cが沿うことができるように、軸部52bにおいて縮径した部位である。縮径部52dは、変位部62cが沿うように、軸部52bの外周上の少なくとも一部において縮径していればよく、変位部62cの形状や構造に応じて、縮径部52dの形状や構造は変更が可能である。縮径部52dは、規制部62の変位部62cが形成される位置に対応した軸方向位置に形成されていればよく、軸部52bの軸方向の一方、すなわち、先端側および/または後端側に設けられていればよい。本実施形態では、軸部52bは、図2図3(a)および(b)に示されるように、柱状部52eと、柱状部52eよりも径が小さくなる縮径部52dとを備えている。また、縮径部52dは、軸部52bの後端方向に縮径したテーパ部として示され、縮径部52dは、後端側の係合部E2と隣接して設けられている。また、本実施形態では、図3(a)および(b)に示されるように、挿入部52の先端部位52aと柱状部52eとの間には、段差として示された先端側の係合部E1が形成され、挿入部52の後端部位52cとテーパ部として示された縮径部52dの端部との間には、段差として形成された後端側の係合部E2とが形成されている。本実施形態では、先端側の係合部E1は、軸部52bの柱状部52eの端部との間に、嵌合子6の板材の厚さにほぼ相当する高さを有する段差として形成され、後端側の係合部E2は、軸部52bの縮径部52dの後端との間に、係合部E1側の段差よりも高い段差として形成されている。なお、縮径部52dは、テーパ以外の形状、たとえば、段差状に縮径していてもよいし、溝状に縮径していてもよい。また、本実施形態では、図3(a)に示されるように、縮径部52dは、軸部52bの周方向に連続して縮径しているが、周方向の一部のみが縮径されていてもよい。
【0034】
上述した縮径部52dに対応して、規制部62は、変位部62cを備えている。図6(a)に示されるように、嵌合子6は、端末部材本体5に対して、変位部62cが縮径部52dに沿うように取り付けられる。変位部62cは、嵌合子6が端末部材本体5に取り付けられたときに、縮径部52dに沿って配置される。変位部62cが予め径方向内側に変位しているために、嵌合子6を端末部材本体5に取り付ける際に、規制部62が径方向外側に変位して拡径しても、規制部62の弾性により拡径前の元の状態に戻り、規制部62と係合部E2との係合を得ることができる。規制部62の端末部材本体5との係合をより確実にすることで、規制部62が係合部に乗り上げることなく、端末部材4と相手部材3との接続をすることができる。ここで、「縮径部52dに沿うように」とは、後述するように、たとえば嵌合子6が挿入部52の先端部位52a側から広げられながら嵌め込まれて軸部52bに取り付けられたときに、規制部62が端末部材本体5との係合を確保できるように、変位部62cが縮径部52dの形状や位置に対応して配置されることをいう。変位部62cは、縮径部52dに沿うように構成されていれば、変位部62cと縮径部52dとは接触していてもよいし、変位部62cと縮径部52dとが非接触(縮径部52dの表面からはわずかに浮いた状態)であってもよい。本実施形態では、変位部62cが縮径部52dに沿うように(入り込んで)配置されて、規制部62が係合部E1、E2等と係合することにより、嵌合子6の軸方向の移動の規制がされているが、たとえば、変位部62cが、溝状の縮径部52dに嵌り込んで係合することにより、嵌合子6の移動を規制してもよいし、変位部62cの表面と縮径部52dの表面とが接触して摩擦により、嵌合子6の移動を規制してもよい。
【0035】
変位部62cは、図4(c)および図6(a)に示されるように、嵌合子6の軸方向内側に変位している。すなわち、変位部62cは、嵌合子6の軸に対して相対的に内側(嵌合子6の軸に近くなる方向)に変位されている。なお、変位部62cの変位は、嵌合子6の製造時に折り曲げ等により変位させてもよいし、端末部材本体5への組み付け前に変位させてもよい。本実施形態では、図4(c)および図6(a)に示されるように、縮径部52dが、後端方向に縮径したテーパ部であり、変位部62cが、テーパ部に対応して、嵌合子6の内側方向に向かって変位している。より具体的には、規制部62は、その軸方向の中央部において内側に折り曲げられ、嵌合子6の軸にほぼ平行に軸方向に延びる平坦部62dと、平坦部62dに対して傾斜したテーパ状の変位部62cとを有し、テーパ状の変位部62cが、テーパ部として示された縮径部52d側に変位している。ここで、「テーパ部に対応」した変位部62cの変位は、テーパ部として示された縮径部52dの形状に変位部62cがテーパ部と干渉して、端末部材4と相手部材3との接続を阻害することないような位置・範囲においての変位であればよく、変位部62cはテーパ状に形成される必要はない。たとえば、変位部62cは、湾曲していてもよいし、嵌合子6の内側に向かって段差状に突出するように構成しても構わない。また、変位部62cがテーパ状に形成される場合、変位部62cのテーパ角と縮径部52dのテーパ部のテーパ角とは略同一としてもよいし、異なる角度としてもよい。
【0036】
上述したように、嵌合子6は、図2に示されるように、挿入部52の先端側(先端部位52a)から治具等を用いて、嵌め込まれる。このとき、嵌合子6の規制部62は弾性変形しながら径方向外側に広がり、そのまま嵌合子6を挿入部52の後端側に向けて嵌め込んでいくと、挿入部52の先端部位52aにより略環状の基部63が弾性変形して広がる。略環状の基部63が先端部位52aを越えると、嵌合子6は元の形状に復元し、軸部52bに嵌め込まれる。この状態で、規制部62の先端側の端部62aと、規制部62の後端側の端部62bとが、係合部E1、E2にそれぞれ係合し、嵌合子6が係合部E1、E2の間に挟み込まれて挿入部52の軸部52bに嵌合し、嵌合子6が端末部材本体5に取り付けられる。
【0037】
従来の構造の場合も、上述した特許文献1に示されるように、略環状の基部と規制部とを有した構造は存在し、同様の取り付け方法で取り付けられていた。この従来の構造で、嵌合子を挿入部に取り付ける場合について、図7(a)〜(d)、図8(a)、(b)を用いて説明する。
【0038】
従来の構造では、図7(a)に示されるように、軸部520bは縮径部を有しておらず、規制部620は、嵌合子600の軸に対して平行に設けられている。図7(a)に示す状態から、嵌合子600の規制部620の先端部を、挿入部520の先端部位520aに挿入して取り付ける。しかし、嵌合子600を挿入部520に対して強く挿入した際に、嵌合子600と挿入部520の軸が合うように、しかも均一に力を加えて押し込まなければ、図7(b)に示されるように、挿入部520の軸に対して嵌合子600の軸が傾いてしまうことがある。この状態のまま嵌合子600が挿入部520に強く押し込まれると、図7(c)に示されるように、少なくとも一方の規制部620(図7(c)においては図中、下側の規制部620)が塑性変形してしまう場合がある。このような場合に、嵌合子600をそのまま挿入部520に差し込んでいくと、図7(d)に示されるように、嵌合子600は挿入部520の軸部520bに取り付けられるが、塑性変形した規制部620は、挿入部520の軸部520bの後端側の段部St2に係合せず、嵌合子600の挿入部520に対する軸方向の移動が規制できなくなる。すなわち、図8(a)に示されるように、規制部620の後端側の端部が軸部520bの後端側の段部St2に係合できない状態で、相手部材300の挿入開口部300aに挿入していくと、挿入開口部300aの開口縁と外側に広がった弾性片610とが当接する。挿入開口部300aの開口縁と弾性片610とが当接した後、そのまま挿入していくと、弾性片610は、挿入開口部300aの開口縁から、図中右側に向かって反力を受けて、嵌合子600は開口縁から右側に力を受ける。嵌合子600の規制部620のうちの一方は、塑性変形して段部St2と係合しておらず、嵌合子600の軸部520bへの嵌合が不安定となっている。したがって、そのまま挿入部520を挿入開口部300aに挿入していくと、図8(b)に示されるように、不安定な嵌合状態となっている嵌合子600が軸部520bの段差St2を越えて軸部520bの軸方向外側に乗り上げてしまう。このような場合には、端末部材を相手部材にうまく取り付けることができなくなる場合があり、後加工、修正加工して取り付けたり、嵌合子600を交換して再度取り付け作業をしなければならない場合もある。
【0039】
一方、本発明の端末接続構造1においては、図6(a)に示されるように、軸部52bが縮径部52dを有し、規制部62が変位部62cを備え、変位部62cが縮径部52dに沿うように、嵌合子6が端末部材本体5に対して取り付けられている。したがって、嵌合子6の軸に向かって変位した変位部62cは、縮径部52d側に向かって、端末部材4の径方向内側に入り込んだ状態となり、嵌合子6の規制部62の軸方向両端が端末部材本体5に対して係合する。そして、嵌合子6を挿入部52の先端部位52a側から取り付けたときに、多少規制部62が外側に広がったとしても、変位部62cが嵌合子6の軸に向かって内側に変位しているため、変位部62cは、縮径部52dに沿うように、すなわち、後端側の係合部E2を変位部62cが乗り上げる程度に浮かないように配置される。そのため、規制部62(変位部62c)が多少外側に広がり、挿入時に多少塑性変形してしまった場合であっても、規制部62が、軸部52bとの係合を維持することができる。
【0040】
また、図6(b)に示されるように、規制部62が比較的大きく塑性変形した場合であっても、端末部材本体5への取付前に、嵌合子6の規制部62が変位部62cにより内側に変位しているため、規制部62がある程度塑性変形しても、従来よりも規制部62と軸部52bとの係合が確実となる。嵌合子6が軸部52bに嵌合した状態(図5(a)参照)で、端末部材本体5の挿入部52を、相手部材3の挿入開口部3aに挿入していくと(図5(b)参照)、弾性片61が挿入開口部3aの開口縁と当接し、弾性片61は、挿入開口部3aの開口縁から、図5(b)中右側に向かって反力を受ける。このとき、変位部62cは、図6(a)に示されるように、縮径部52d側に向かって端末部材の径方向内側に入り込んだ状態となり、規制部62の軸方向両端が端末部材本体5に対して係合している。または図6(b)に示されるように、規制部62が変形したとしても、規制部62の軸方向両端が端末部材本体5に対して係合している。したがって、変位部62cおよび縮径部52dにより、嵌合子6は、挿入部52を挿入開口部3aに挿入する際に、挿入開口部3aの開口縁から反力を受けても、規制部62の後端部62bが係合部E2を乗り越えることがなく、端末部材本体5に対して軸方向に移動することが規制される。
【0041】
また、図5(a)〜(c)では、嵌合子6が既に取り付けられた端末部材4を相手部材3に対して取り付ける際の嵌合子6の軸方向の移動の規制について説明したが、嵌合子6を治具により挿入部52に取り付ける際にも同様の効果を奏する。たとえば、挿入部52に嵌合子6を取り付ける際は、治具に嵌合子6のみを取り付け、治具に取り付けられた嵌合子6の後端側から挿入部52を押し込んで挿入していくことにより嵌合子6を挿入部52に取り付ける。従来の構造では、嵌合子600が既に挿入部520に嵌合した状態で、挿入部520を治具に向かってさらに押し込むと、規制部620の後端部が段部St2に乗り上げる場合がある。一方、縮径部52dと変位部62cとを有する端末部材4においては、上述したように、規制部62と軸部52bとの係合が、規制部62が挿入時に塑性変形を生じた場合においても、規制部62と軸部52bとが係合を維持することができる。これにより、嵌合子6を挿入部52に取り付ける際にも、規制部62の後端部62bが係合部E2を乗り越えることなく、嵌合子6が端末部材本体5に対して軸方向に移動することを規制することができる。
【0042】
また、軸部52bの先端側と後端側とに規制部62と係合する係合部E1、E2を有し、規制部62の先端部62a及び後端部62bが係合部E1、E2と係合し、縮径部52dが係合部E1、E2と隣接して設けられている場合、嵌合子6が端末部材本体5に取り付けられたときに、規制部62の先端部62aおよび後端部62bと、係合部E1、E2との係合が完了して、規制部62の先端部および後端部の係合部E1、E2への乗り上げが防止される。これにより、嵌合子6の端末部材本体5に対する軸方向の移動が規制される。
【0043】
また、本実施形態では、縮径部52dは、後端側の係合部E2側に隣接して設けられ、変位部62cも規制部62の後端側に設けられている。後端側の係合部E2は、挿入開口部3aへの挿入部52の挿入時や、治具による嵌合子6の挿入部52への取付時に、規制部62の後端部62bが係合する部位である。したがって、縮径部52dが、後端側の係合部E2側に隣接して設けられ、変位部62cが規制部62の後端側に設けられている場合、規制部62の後端部62bと、後端側の係合部E2とがより確実に係合する。すなわち、図6(a)に示す変位部62cの状態(規制部62に塑性変形がほとんどない場合)と、図6(b)に示す変位部62cの状態(規制部62が外側に広がって塑性変形した場合)との間にわたって、幅広く規制部62の係合を確保することができる。したがって、従来よりも、挿入部52への挿入時の規制部62の変形の許容範囲を大きくすることができる。さらに、縮径部52dを設けることにより、後端側の係合部E2を形成するために、挿入部52の後端部位52cの径を大きくする必要がなくなり、挿入部52の後端部位52cが挿入される相手部材3の挿入開口部3aの大きさを小さくすることもでき、相手部材3を小型化することができる。
【0044】
また、本実施形態では、縮径部52dが、後端方向に縮径したテーパ部であり、変位部62cが、テーパ部に対応して、嵌合子の内側方向に向かって変位している。縮径部52dが軸方向に長さを有しない溝状とした場合には、縮径部52dと変位部62cとの軸方向の位置関係を合わせるために、寸法精度が要求されるが、縮径部52dを後端方向に縮径したテーパ部とした場合は、変位部62cの軸方向に寸法誤差があっても、その寸法誤差を吸収し、テーパ部のテーパ面に変位部62cを沿わせるのが容易である。また、嵌合子6を取り付ける際の取付けが容易であり、より確実に後端側の係合部E2に規制部62の後端部62bが係合される。
【0045】
また、本実施形態では、規制部62がバネ弾性を有し、変位部62cが、嵌合子6が端末部材本体5に装着された状態でバネ弾性による弾性力によって縮径部52dと当接するように、変位するように構成されている。規制部62のバネ弾性により、規制部62の変位部62cの少なくとも一部が縮径部52dに当接する。より具体的には、嵌合子6が端末部材本体5に装着されたときに、嵌合子6の軸に向かって変位した変位部62cが一度外側に広がり、その後バネ弾性により内側に復元する。規制部62のバネ弾性により、内側に復元した変位部62cは、変位部62cの後端側の端部(規制部の後端部62b)が(または変位部62cの内側の面全体が)、縮径部52dのテーパ部と接触する。このように、規制部62がバネ弾性を有し、バネ弾性の弾性力により、変位部62cを縮径部52dの表面と当接させるようにした場合、規制部62がより確実に端末部材本体5と係合する。したがって、より確実に嵌合子6の軸方向の移動を規制することができる。
【符号の説明】
【0046】
1 端末接続構造
2 長尺部材
21a、21b、21c 端末
22a、22b、22c インナーケーブル
23a、23b、23c アウターケーシング
3 相手部材
3a 挿入開口部
3b 内側係合部
4 端末部材
5 端末部材本体
51 取付部
51a 係止凹部
51b 取付部の端面
51c ガイド溝
52 挿入部
52a 挿入部の先端部位
52b 挿入部の軸部
52c 挿入部の後端部位
52d 縮径部
52e 柱状部
6 嵌合子
61 弾性片
62 規制部
62a 規制部の先端部
62b 規制部の後端部
62c 変位部
62d 平坦部
63 基部
C ジョイントケース
E1、E2 係合部
S 内部空間
SL スリット
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10