特許第6113150号(P6113150)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6113150
(24)【登録日】2017年3月24日
(45)【発行日】2017年4月12日
(54)【発明の名称】生物物質由来の化合物を有する分散剤
(51)【国際特許分類】
   B01F 17/14 20060101AFI20170403BHJP
   B01J 13/00 20060101ALI20170403BHJP
   C09D 17/00 20060101ALI20170403BHJP
   C09D 11/00 20140101ALI20170403BHJP
   C09D 7/12 20060101ALI20170403BHJP
   A23L 29/10 20160101ALI20170403BHJP
【FI】
   B01F17/14
   B01J13/00 B
   C09D17/00
   C09D11/00
   C09D7/12
   A23L29/10
【請求項の数】24
【全頁数】29
(21)【出願番号】特願2014-510456(P2014-510456)
(86)(22)【出願日】2012年5月10日
(65)【公表番号】特表2014-519403(P2014-519403A)
(43)【公表日】2014年8月14日
(86)【国際出願番号】US2012037241
(87)【国際公開番号】WO2012154917
(87)【国際公開日】20121115
【審査請求日】2015年2月16日
(31)【優先権主張番号】61/484,293
(32)【優先日】2011年5月10日
(33)【優先権主張国】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】507303309
【氏名又は名称】アーチャー−ダニエルズ−ミッドランド カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】バセース,シレーン,エス.
(72)【発明者】
【氏名】タブエナ−サリヤーズ,テオドラ,アール.
(72)【発明者】
【氏名】セブリー,ブルース,アール.
【審査官】 今村 明子
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭63−279753(JP,A)
【文献】 特開昭64−051054(JP,A)
【文献】 特表2010−518126(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/018596(WO,A1)
【文献】 特開平09−059145(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/056833(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01F 17/00−17/52
B01J 13/00−13/22
A61K 8/00− 8/99
A61Q 1/00−90/00
A23L 29/10
C09D 7/00−17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レシチンと
酸と
水と
酸の塩と、
酸のエステルと、
を含み、pHが6未満であり、
前記酸が乳酸であって前記酸のエステルが乳酸エチルであり、前記酸の塩が乳酸ナトリウムである、
ナノ分散液形態の組成物。
【請求項2】
レシチンが、未精製の濾過レシチン、脱油レシチン、化学修飾レシチン、酵素処理レシチン、標準レシチン、およびこれらのいずれかの組合せからなる群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
組成物の30重量%〜80重量%のレシチン、
組成物の10重量%〜50重量%の酸、および
組成物の10重量%〜30重量%の水
を含む、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
5g/L未満の揮発性有機化合物を含む、請求項1〜のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
陰イオン界面活性剤、非イオン界面活性剤およびこれらのいずれかの組合せからなる群から選択される界面活性剤をさらに含む、請求項1〜のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
界面活性剤が10.0〜24.0の間の親水性親油性バランスを有する、請求項に記載の組成物。
【請求項7】
非イオン界面活性剤が、ソルビタンモノステアレート、ロジンのポリオキシエチレンエステル、ポリオキシエチレンドデシルモノエーテル、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロックコポリマー、ポリオキシエチレンモノラウレート、ポリオキシエチレンモノヘキサデシルエーテル、ポリオキシエチレンモノオレエート、ポリオキシエチレンモノ(cis−9−オクタデセニル)エーテル、ポリオキシエチレンモノステアレート、ポリオキシエチレンモノオクタデシルエーテル、ポリオキシエチレンジオレエート、ポリオキシエチレンジステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタントリオレエート、ポリオキシエチレンソルビタントリステアレート、オレイン酸のポリグリセロールエステル、ポリオキシエチレンソルビトールヘキサステアレート、ポリオキシエチレンモノテトラデシルエーテル、ポリオキシエチレンソルビトールヘキサオレエート、脂肪酸、トール油、ソルビトールヘキサエステル、エトキシル化ひまし油、エトキシル化ダイズ油、ナタネ油エトキシレート、エトキシル化脂肪酸、エトキシル化脂肪アルコール、エトキシル化ポリオキシエチレンソルビトールテトラオレエート、グリセロールおよびポリエチレングリコールの混合エステル、アルコール、ポリグリセロールエステル、モノグリセリド、スクロースエステル、アルキルポリグリコシド、ポリソルベート、脂肪アルカノールアミド、ポリグリコールエーテル、それらの任意の誘導体、およびこれらのいずれかの組合せからなる群から選択される、請求項または請求項に記載の組成物。
【請求項8】
陰イオン界面活性剤が、直鎖脂肪酸のナトリウム塩およびカリウム塩、ポリオキシエチレン化脂肪アルコールカルボキシレート、直鎖アルキルベンゼンスルホネート、アルファオレフィンスルホネート、スルホン化脂肪酸メチルエステル、アリールアルカンスルホネート、スルホサクシネートエステル、アルキルジフェニルエーテル(ジ)スルホネート、アルキルナフタレンスルホネート、イソエチオネート、アルキルエーテル硫酸塩、スルホン化油、脂肪酸モノエタノールアミドサルフェート、ポリオキシエチレン脂肪酸モノエタノールアミドサルフェート、脂肪族リン酸エステル、ノニルフェノールリン酸エステル、フッ素化陰イオン剤、およびこれらのいずれかの組合せからなる群から選択される、請求項5〜7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
組成物が1,500センチポアズ以下の粘度を有する、請求項1〜のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
プロピレングリコールをさらに含む、請求項1〜のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか一項に記載の組成物を含む製品。
【請求項12】
製品が、塗料、インク、被覆剤、磁性流体、コンクリート、セラミック、織物用助剤、皮革仕上助剤、プラスチック配合剤、潤滑剤、油田掘削添加剤、離型剤、および化粧品からなる群から選択される、請求項11に記載の製品。
【請求項13】
レシチンを、2〜35の間の誘電率を有する有機酸、有機酸の塩及び有機酸のエステルと混合すること、および
水を有機酸、有機酸の塩、有機酸のエステルおよびレシチンと混合すること
を含み、pHが6未満であり、
前記有機酸が乳酸であって、前記有機酸のエステルが乳酸エチルであり、前記有機酸の塩が乳酸ナトリウムである、
ナノ分散液形態の製品の製造方法。
【請求項14】
補助界面活性剤をレシチンと混合することをさらに含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
レシチンおよび補助界面活性剤を加熱することをさらに含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
補助界面活性剤が、陰イオン界面活性剤、非イオン界面活性剤およびそれらの組合せからなる群から選択される、請求項14又は15に記載の方法。
【請求項17】
プロピレングリコールとレシチンとを混合することをさらに含む、請求項1316のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
請求項1〜10のいずれか一項に記載の組成物を、分散助剤、粉砕助剤、またはそれらの組合せとして使用することを含む方法。
【請求項19】
顔料を溶液中に分散させる方法であって、
ナノ分散液形態の組成物を前記顔料と混合し、
前記ナノ分散液形態の組成物が、レシチンと、酸と、水と、を含み、
前記組成物のpHが6未満であり、
前記酸が乳酸である、
方法。
【請求項20】
顔料が、有機顔料、無機顔料、カーボンブラック、およびこれらのいずれかの組合せからなる群から選択される、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
請求項1〜10に記載のいずれか一項に記載の組成物を含む、食品組成物。
【請求項22】
顔料をさらに含む、請求項1〜10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項23】
顔料が、有機顔料、無機顔料、カーボンブラック、二酸化チタン、およびこれらのいずれかの組合せからなる群から選択される、請求項22に記載の組成物。
【請求項24】
請求項1〜10のいずれか一項に記載の組成物の、分散助剤、粉砕助剤、またはそれらの組合せとしての使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、レシチンを含む分散剤およびその使用に関する。本開示はまた、そのような分散剤の調製方法およびその分散剤の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
分散剤およびラテックスは、紙加工、絵の具、塗料、および接着剤、ならびに紙、金属、および医薬品産業用の被覆剤などの用途に有用である。分散剤は、塗料および被覆剤配合物の全組成物のほんの数パーセントを占めるだけだが、分散剤はそのような塗料および被覆剤配合物の性能の面で極めて重要な役割を果たす。分散剤は、顔料粒子の露出表面積を増やし、そのようにして被覆面積を増やすことにより、コストを下げつつ、色の安定性をもたらし、かつ顔料の隠ぺい力を最大化する。
【0003】
分散は、関係する溶剤、樹脂、および顔料の化学的性質を含む変数が関わる複雑な過程である。こうした化学的性質の変化は、レオロジーの変化と関係し、その結果としての分散剤技術(dispersant technology)とも関係する。立体力(steric force)および静電力は、顔料分散液を安定化することができ、それらは多くの場合、陰イオン界面活性剤および非イオン界面活性剤によって、また結果として生じる顔料表面へのその影響によって実現される。こうした界面活性剤は使いやすく、安価であり、かつ低濃度で有効である。しかし、陰イオン界面活性剤はpHおよび塩の影響を受けやすい。非イオン界面活性剤の吸着は、pHおよび塩の影響を受けないが、有効であるためにはそうした非イオン界面活性剤を多量に用いる必要がある。
【0004】
他の分散剤技術では、従来の界面活性剤のような分散剤よりも高分子量の超分散剤を使用する。そのような超分散剤の1タイプは、顔料表面に吸収されるアンカー基(anchoring group)を分子内に有し、かつ顔料粒子の周囲に立体的安定化バリヤーを生じるポリマー鎖を有する、ポリマー分散剤である。ポリマー分散剤は分散顔料に吸収されるが、そのような分散剤は、湿潤性や乳化性がほとんどない。そのような分散剤は、界面活性剤のような分散剤と比べて泡立ちが少ないことが多いので、一部の水性配合物には魅力的なものである。
【0005】
リン酸エステルは分散剤技術に関連してよく使用されるが、そうしたリン酸エステルは単独で使用されることはないので、補助分散剤と見なされる。リン酸エステルは、顔料粒子との立体相互作用によって安定化を助ける。
【0006】
湿潤力および分散力とは別に、分散剤は懸濁粒子を安定化させる必要もある。さもなければ懸濁粒子は再び凝集することになる。この安定化は極めて重要であるが、実現が困難である。しかし、実現されるなら、着色剤の保存可能期間は長くなり、色、光沢、および色の相性(color compatibility)が改善される。
【0007】
こうした望ましい分散剤特性を示す界面活性剤の1つは、頭部基としてホスフェート部分を有する陰イオン性リン酸エステルである。陰イオン性リン酸エステルは、リン酸誘導体とアルコールとから合成され、残留リン酸がいくらかあるので、pHは2という低さになる。陰イオン性リン酸エステルは多くの場合、遊離酸形態として利用できる。湿潤剤または分散剤用の配合物中にホスフェート基が存在すると、塗料中の顔料の光沢および色受容性(color acceptance property)が向上し、塗料のエージングによる粘度増大が少なくなり、表面のぬれが改善され、分散液が安定する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
「環境により優しい」製品に対する要望があるため、石油系製品に取って代わることのできるもっと多くの生物物質由来の(biobased)添加剤がますます必要となるにつれ、分散剤、被覆剤、およびラテックスタイプの製品に使用できる生物物質由来の製品であって、生物物質由来の製品が石油系の対応製品の望ましい特性すべてを満たすような生物物質由来の製品が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
概要
様々な実施形態のそれぞれにおいて、本発明はこれらの必要を満たし、分散剤として使用できる生物物質由来の製品を開示する。
【0010】
一実施形態では、ナノ分散液(nano-dispersion)形態の組成物は、レシチンと酸と水とを含む。
【0011】
別の実施形態では、ナノエマルション(nano-emulsion)形態の分散剤組成物は、2〜35の間の誘電率を有する有機溶剤、レシチン、および水を含む。
【0012】
更なる実施形態では、ナノ分散液形態の製品を製造するための方法は、レシチンを、2〜35の間の誘電率を有する有機溶剤と混合すること、および水をその有機溶剤およびレシチンと混合することを含む。
【0013】
他の実施形態では、分散剤としての本発明の組成物の使用および化合物を分散させる方法も開示されている。
【0014】
本開示は、この概要に開示の実施形態に限定されるわけではなく、請求項によって定義される本発明の趣旨および範囲内に含まれる変更形態も対象として含むことを意図していることを理解すべきである。
【0015】
本開示の特徴および利点は添付図を参照することによりいっそうよく理解されうる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の様々な実施形態の分散剤の密度を示す。
図2】本発明の分散剤の実施形態を用いて製造された塗料の特性のグラフ表示である。
図3】本発明の分散剤の様々な実施形態を用いて製造された塗料の色を示す。
図4】本発明の分散剤の一実施形態で製造された塗料を、他の分散剤で製造された塗料と比較した場合の色の比較を示す。
図5】本発明の分散剤の実施形態を用いて製造された塗料の特性のグラフ表示である。
図6】本発明の分散剤の様々な実施形態を用いて製造された塗料の色を示す。
図7】本発明の分散剤の様々な実施形態を用いて製造された塗料の色を示す。
図8】本発明の分散剤の実施形態を用いて製造された塗料の特性のグラフ表示である。
図9】本発明の分散剤の様々な実施形態を用いて製造された塗料の色を示す。
図10】本発明の分散剤の様々な実施形態を用いて製造された塗料の色を示す。
図11】本発明の分散剤の様々な実施形態を用いて製造された塗料の色を示す。
図12】本発明の分散剤の実施形態を用いて製造された塗料の特性のグラフ表示である。
図13】本発明の分散剤の実施形態を用いて製造された塗料の特性のグラフ表示である。
図14】本発明の分散剤の様々な実施形態を用いて製造された塗料の色を示す。
図15】本発明の分散剤の実施形態を用いて製造された塗料の特性のグラフ表示である。
図16】本発明の分散剤の様々な実施形態を用いて製造された塗料の色を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
実施例の場合または特に記載のある箇所以外の本出願(請求項を含む)では、量または特性を示す数字はすべて、あらゆる箇所において「約」という用語で修飾されると理解されるべきである。続く説明に示されているいずれの数値パラメータも、逆のことが示されていない限り、本開示による組成物および方法における所望の特性に応じて変化しうる。少なくとも、また請求項の範囲だけに均等論を当てはめようとするのではなく、本記載で述べられている各数値パラメータは、少なくとも、報告されている有効数字の桁数を考慮して、また通常の丸め法を当てはめて解釈すべきである。
【0018】
本明細書に援用すると述べられているどの特許、刊行物または他の開示資料も、全体であれ一部であれ、援用される資料は、本開示に述べられている既存の定義、陳述、または他の開示資料と矛盾しない程度までしか援用されない。したがって、ここに述べた開示は、本明細書に援用したどんな矛盾する資料にも取って代わるものではない。
【0019】
本明細書に開示の実施形態は、レシチンと有機溶剤とを含んでいる組成物(ナノ分散液を形成する)を含む組成物および方法に関する。一実施形態では、本明細書に記載のナノ分散液は自己集合(self-assemble)し、熱力学的に安定しており、平均粒径は1ミクロンでありうる。様々な実施形態において、組成物は、開示の組成物の5重量%〜95重量%の範囲(ある特定の実施形態では70%〜95%)の量のレシチンと、開示の組成物の5重量%〜95重量%の範囲(ある特定の実施形態では5%〜30%)の量の有機溶剤とのブレンドである。
【0020】
レシチンは、動物組織および植物組織(例えば、卵黄、大豆、およびキャノーラまたは菜種など)に見いだされる脂質物質である。レシチンは様々な成分を含み、その成分としては、例えば、ホスファチジルコリン(「PC」)、ホスファチジルイノシトール(「PI」)、およびホスファチジルエタノールアミン(「PE」)などのリン脂質があるが、それらに限定されない。レシチンは両親媒性があるため、効果的な加工助剤、乳化剤、分散剤および/または界面活性剤となる。レシチンはまた、水性媒体においてナノ分散液を形成でき、活性成分(actives)の担持量が多い自然成分でもある。しかし、そのような水性媒体中では、レシチンはpHおよび電解質に対する耐性が限られてくる傾向がある。
【0021】
レシチンは、物質間の境界層を改質するのが望ましい用途で使用できる。混合しない液相の存在する場合、レシチンは界面張力を減少させて、乳化剤として働くことができる。2つ以上の固相と一緒に使用する場合、レシチンは潤滑剤および/または離型剤として働くことができる。
【0022】
一実施形態では、レシチンに基づく本発明の製品は、分散剤配合物に有用であり、低いpH(2まで下がっている場合など)でも安定しており、水性分散液に用いた場合、レシチンに基づく製品は、pHが10まで安定したままであり、また多量のシリケートおよび電解質(最大40%までの塩化カルシウム)があっても安定したままであり、エマルションが破壊されない。
【0023】
レシチンと1種または複数種の有機溶剤を組み合わせると、従来のレシチンと比べて粘度の低い水性組成物が得られることが見出された。粘度が低下すると、水系および非水系の分散剤としてレシチンをいっそう応用できるようになる。開示のレシチン−有機溶剤組成物は、多数の用途(例えば、塗料、インク、および他の被覆剤の顔料分散媒体など)にとって望ましい粘度分布となるように配合することができる。様々な実施形態において、開示のレシチン−酸性化剤(acidifier)組成物は、粘度が1500センチポアズ未満である。他の実施形態では、開示のレシチン−酸性化剤組成物は、粘度が1200センチポアズ未満、500センチポアズ未満、または100センチポアズ未満である。
【0024】
開示の組成物および方法に用いるのに適したレシチンとしては、未精製の濾過レシチン、液体レシチン、脱油レシチン、化学修飾および/または酵素処理されたレシチン、標準レシチン、およびこれらのいずれかのブレンドがあるが、これらに限定されない。本開示で使用するレシチンは一般に、レシチン製品を入手および製造するのに用いられる加工条件および添加剤に応じて、親水性親油性バランス(「HLB」)値が1.0〜10.0の範囲になる傾向がある。例えば、未精製の濾過レシチンはHLB値がおよそ4.0であり、油中水型エマルションの形成に有利に働く。標準レシチンとしては、HLB値が10.0〜24.0の範囲である補助乳化剤(co-emulsifiers)があるが、これにより、HLB値が7.0〜12.0であって、水中油型乳剤に有利に働くレシチン組成物がもたらされる。どんなレシチンでも、あるいはどんなレシチンの組合せでも、レシチンの初期HLB値とは関係なく、開示の組成物および方法に用いるのに適している。開示の組成物および方法に有用なレシチンは、親水性親油性バランス値が10.0〜24.0の範囲(ある特定の実施形態では、10.0〜18.0)である補助乳化剤を含むことができる。
【0025】
両親媒性物質(例えば、レシチンなど)の乳化剤特性および/または界面活性剤特性は、その物質の親水性親油性バランス(「HLB」)値によって少なくともある程度予測できる。HLB値は、油または水に対する両親媒性物質の相対的優先性(relative preference)の指標としての役目を果たすことができ、HLB値が高いほど、より親水性の分子であり、HLB値が低いほど、より疎水性の分子である。HLB値の説明は、米国特許第6,677,327号(この全体を本明細書に援用する)に示されている。HLBについては、Griffin, “Classification of Surface-Active Agents by 'HLB,'" J. Soc. Cosmetic Chemists 1 (1949); Griffin, "Calculation of HLB Values of Non-Ionic Surfactants," J. Soc. Cosmetic Chemists 5 (1954); Davies, "A quantitative kinetic theory of emulsion type, I. Physical chemistry of the emulsifying agent," Gas/Liquid and Liquid/Liquid Interfaces, Proceedings of the 2d International Congress on Surface Activity (1957);およびSchick, “Nonionic Surfactants: Physical Chemistry”, Marcel Dekker, Inc., New York, N. Y., pp. 439-47 (1987)(これらの各々についてその全体を本明細書に援用する)にも記載されている。
【0026】
様々な実施形態において、開示の組成物および方法で使用される有機溶剤は、乳酸、プロピオン酸、メチル酢酸、酢酸、フマル酸、クエン酸、アスコルビン酸、グルコン酸、グルコンデルタラクトン酸(gluconic delta lactone acid)、アジピン酸、リンゴ酸、酒石酸、ヒドロキシ酸、これらのいずれかの塩、これらのいずれかのエステル、またはこれらのいずれかの組合せからなる酸性化剤の群から選択できる。別の実施形態では、有機溶剤は、乳酸、乳酸ナトリウム、乳酸エチル、またはこれらのいずれかの組合せから選択される。酸性化剤は、生物由来の(bio-derived)酸、有機酸、またはこれらの組合せであってもよい。別の実施形態では、組成物のpHは、6未満、5未満、または4未満であってよい。
【0027】
生物由来の物質は、石油化学資源からではなく、生体物質から得られる。生物由来の物質は、ASTM国際放射性同位元素標準法(ASTM International Radioisotope Standard Method)D6866を用いて、炭素同位体比により石油由来の物質から区別できる。本明細書で使用される「生物由来」という用語は、再生可能な生物学的供給原料(例えば、農業、林業、植物、真菌、細菌、または動物の供給原料など)に由来するか、あるいはそれから合成されることを表す。
【0028】
様々な機関が、生物由来量(bio-derived content)を測定するための認可条件を定めた。こうした方法では、生物由来製品と石油由来製品との間の同位体存在度の違いを、例えば、液体シンチレーション係数、加速器質量分析、または高精度同位体比質量分析法(high precision isotope ratio mass spectrometry)によって、測定する必要がある。炭素の同位元素の同位体比(13C/12C炭素同位体比または14C/12C炭素同位体比など)は、高精度の同位体比質量分析法を用いて測定できる。生理学的過程(例えば、光合成の間の植物内のCO輸送など)による同位体分別により、自然または生物由来の化合物では特定の同位体比になることが研究により示されてきた。石油製品および石油由来製品は、石油生成の間の様々な化学過程および同位体分別により13C/12C炭素同位体比が異なる。さらに、不安定な14C炭素放射性同位元素の放射性崩壊により、石油製品と比べて、生物由来製品の同位体比が異なってくる。製品の生物由来量は、ASTM国際放射性同位元素標準法D6866によって検査できる。ASTM国際放射性同位元素標準法D6866により、物質または製品中の全有機炭素の重量(質量)パーセントとして、物質または製品中の生物由来炭素の量に基づいた、物質の生物由来量が測定される。生物由来製品は、生物に由来する組成物に特有の炭素同位体比を有することになる。
【0029】
生物由来の物質は、石油化学製品および石油由来製品への依存を減らそうとするかまたは別のものに依存しようとしている工業製造業者にとって、魅力的な代替品となる。石油化学製品および石油由来製品を、生物源に由来する製品および/または供給原料(すなわち、生物物質由来の製品)で代用するなら、多くの利点がもたらされる。例えば、生物源からの製品および供給原料は、普通は再生可能資源である。ほとんどの場合、それらから作られる生物由来の化学薬品および製品は、石油化学製品および石油化学製品から作られる製品よりも環境に対する負荷が少ない。容易に得られる石油化学製品の供給が枯渇し続けているので、石油化学生産の経済性からして、石油化学製品および石油由来製品のコストは、生物物質由来の製品よりも高くならざるをえないであろう。さらに、石油化学製品の供給を大衆がますます懸念しているので、各会社は、再生可能な資源からの生物由来製品に関連してもたらされる販売促進の有利性から恩恵を受けるであろう。
【0030】
様々な実施形態において、開示の組成物は、1種または複数種の補助界面活性剤を含むこともできる。1種または複数種の補助界面活性剤は、1種または複数種の陰イオン界面活性剤、1種または複数種の非イオン界面活性剤、あるいは1種または複数種の陰イオン界面活性剤と1種または複数種の非イオン界面活性剤との組合せを含むこともできる。様々な実施形態において、補助界面活性剤または補助界面活性剤の組合せは、親水性親油性バランスが10.0〜24.0の範囲であってよく、実施形態によっては10.0〜18.0であってよい。
【0031】
様々な実施形態において、レシチンは、開示の組成物の5重量%〜95重量%を構成してよく、実施形態によっては、60%〜90%、さらに他の実施形態では30%〜80%を構成してよく、有機溶剤は、開示の組成物の5重量%〜60重量%を構成してよく、実施形態によっては10%〜50%、さらに他の実施形態では15%〜55%を構成してよく、また水は、組成物の5重量%〜40重量%を構成してよく、さらに実施形態によっては10%〜30%を構成してよい。
【0032】
開示の組成物および方法に用いるのに適した陰イオン界面活性剤としては、直鎖脂肪酸のナトリウム塩およびカリウム塩、ポリオキシエチレン化脂肪アルコールカルボキシレート、直鎖アルキルベンゼンスルホネート、アルファオレフィンスルホネート、スルホン化脂肪酸メチルエステル、アリールアルカンスルホネート、スルホサクシネートエステル、アルキルジフェニルエーテル(ジ)スルホネート、アルキルナフタレンスルホネート、イソエチオネート類(isoethionates)、アルキルエーテル硫酸塩、スルホン化油、脂肪酸モノエタノールアミドサルフェート(fatty acid monoethanolamide sulfates)、ポリオキシエチレン脂肪酸モノエタノールアミドサルフェート(polyoxyethylene fatty acid monoethanolamide sulfates)、脂肪族リン酸エステル、ノニルフェノールリン酸エステル、サルコシネート(sarcosinates)、フッ素化陰イオン剤(fluorinated anionics)、油脂化学製品由来の陰イオン界面活性剤、およびこれらのいずれかの組合せがあるが、これらに限定されない。様々な実施形態において、界面活性剤は、陰イオン界面活性剤(例えば、リン酸エステルなど)を含む。
【0033】
開示の組成物および方法に用いるのに適した非イオン界面活性剤としては、ソルビタンモノステアレート、ロジンのポリオキシエチレンエステル、ポリオキシエチレンドデシルモノエーテル、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロックコポリマー、ポリオキシエチレンモノラウレート、ポリオキシエチレンモノヘキサデシルエーテル、ポリオキシエチレンモノオレエート、ポリオキシエチレンモノ(cis−9−オクタデセニル)エーテル、ポリオキシエチレンモノステアレート、ポリオキシエチレンモノオクタデシルエーテル、ポリオキシエチレンジオレエート、ポリオキシエチレンジステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタントリオレエート、ポリオキシエチレンソルビタントリステアレート、オレイン酸のポリグリセロールエステル、ポリオキシエチレンソルビトールヘキサステアレート、ポリオキシエチレンモノテトラデシルエーテル、ポリオキシエチレンソルビトールヘキサオレエート、脂肪酸、トール油(tall oil)、ソルビトールヘキサエステル、エトキシル化ひまし油、エトキシル化ダイズ油、ナタネ油エトキシレート、エトキシル化脂肪酸、エトキシル化脂肪アルコール、エトキシル化ポリオキシエチレンソルビトールテトラオレエート、グリセロールおよびポリエチレングリコールの混合エステル、アルコール類、ポリグリセロールエステル、モノグリセリド、スクロースエステル、アルキルポリグリコシド、ポリソルベート、脂肪アルカノールアミド、ポリグリコールエーテル、これらのいずれかの誘導体、およびこれらのいずれかの組合せがあるが、これらに限定されない。様々な実施形態において、界面活性剤は、非イオン界面活性剤(例えば、脂肪酸エトキシレートなど)を含む。
【0034】
様々な実施形態において、開示の組成物および方法は、レシチン、有機溶剤、および補助界面活性剤(陰イオン界面活性剤または非イオン界面活性剤など)を含むことができる。有機溶剤は、2〜35の間の誘電率を有することができる。
【0035】
レシチンと有機溶剤とを組み合わせると、従来のレシチンと比べて粘度の低い組成物が得られる。粘度が下がると、様々な用途(例えば、塗料、インク、および他の被覆剤組成物など)において、加工助剤、乳化剤、分散剤および/または界面活性剤としての組成物の応用性が増す。レシチンと有機溶剤を含む実施形態は、低粘度組成物が水分散性である水性系において有用である。
【0036】
様々な実施形態において、開示の水分散性レシチン−酸性化剤組成物は、水性塗料(ラテックス塗料を含むが、それに限定されない)において有用である。様々な実施形態において、開示の組成物は、塗料およびインク配合物における顔料の分散媒体として使用できる。様々な実施形態において、開示の組成物は、顔料加工(粉砕、微粉砕および離型の促進が含まれるが、それらに限定されない)に役立ち、それは、顔料を含んだ配合物の光沢、着色剤、および濃度の改善に寄与しうる。開示の組成物は低粘度であるため、分散液中の顔料および他の微粒子の塗膜での均質性が改善される。したがって、開示の組成物により、分散剤、湿潤剤、および/または安定剤の特性および性能が改善される。
【0037】
他の実施形態では、開示の組成物は、磁性流体用途に使用できる。一実施形態では、開示の組成物は、ベース溶剤(solvent base)(基油とエステル化合物との混合物を含むが、これに限定されない)中の磁粉を安定化させるのに使用できる。開示の組成物により、湿潤特性および分散特性が改善されるので、磁性流体中の懸濁粒子の凝集は少なくなり、流体の粘度に悪影響が及ぶことはない。
【0038】
開示の組成物は、ナノテクノロジー用途にも使用できる。一実施形態では、開示の組成物は、ナノ粒子懸濁液における分散剤、湿潤剤、可溶化剤、および/または安定剤として使用できる。開示の組成物および方法の更なる用途として、ガラス繊維、コンクリート、セラミックス、プラスチック、および複合材での使用があるが、これらに限定されない。開示の組成物の更なる用途として、織物用助剤、皮革仕上剤、プラスチック配合剤、潤滑剤、油田掘削添加剤、皮膚軟化薬、塗膜形成剤、および離型剤としての用途もあるが、これらに限定されない。
【0039】
様々な用途における開示の組成物の多数の機能(分散剤、湿潤剤、可溶化剤、および/または安定剤としての機能)に加えて、開示の組成物はまた、揮発性有機化合物(「VOC」)を含まないか、揮発性有機化合物が少ない。低VOCの塗料、インク、および他の表面被覆剤は、キャリヤーとして、石油系溶剤の代わりに水を使用できる。したがって、溶剤で運ばれる表面被覆剤よりも有害な放出のレベルは低い。しかし、石油系のものと比べて水性被覆剤系では、顔料および他の着色剤の分散がいっそう困難でありうる。それゆえに、開示の組成物は、低VOCの被覆剤配合物に使用して、顔料および着色剤の分散を改善することができ、望ましくないVOCを組成物にもたらさない。
【0040】
EPA基準を満たすためには、塗料、インクおよび他の表面被覆剤は、200グラム/リットルを超えるVOCを含んではならない。一般に、低VOCの表面覆剤は普通、50g/LのVOCしきい値を満たす。例えば、グリーンシール規格(Green Seal Standard)(GS−11)マークの付いた塗料は、50g/L(フラットシーン(flat sheen)の場合)または150g/L(非フラットシーン(non-flat sheen)の場合)よりも少ないことが保証される。EPA基準測定法24(EPA Reference Test Method 24)にしたがった場合に、含まれるVOCが5g/L以下の範囲にある表面被覆剤は、「ゼロVOC」と呼ぶことができる。
【0041】
様々な実施形態において、本明細書に開示の組成物は、組成物1リットル当たりVOCが25グラム未満である。様々な実施形態において、本明細書に開示の組成物は、VOCレベルが5g/L未満、1g/L未満、または0.5g/L未満である。様々な実施形態において、本明細書に開示の組成物は、低VOCの生物由来の分散剤、湿潤剤、可溶化剤、および/または安定剤として使用できる。
【0042】
別の実施形態では、本発明の組成物は、食品グレードであってもよく、食品グレードの界面活性剤(例えば、ポリソルベートなど)を含んでもよい。
【0043】
本明細書に開示の実施形態はまた、開示の組成物の調製方法に関する。様々な実施形態において、レシチンを周囲温度より高い温度に加熱し、有機溶剤を高温でレシチンに加え、有機溶剤とレシチンを混ぜ合わせてレシチンと有機溶剤とのブレンドを形成させる。ブレンドを周囲温度に冷却する。得られたブレンドは、レシチン成分単独よりも粘度が低く、3000cP未満でありうる。様々な実施形態において、レシチンと有機溶剤とのブレンドの粘度は、2000cP未満、500cP未満、または100cP未満でありうる。他の様々な実施形態では、1種または複数種の補助界面活性剤を、1種または複数種の有機溶剤の前か、またはそれと同時のいずれかにレシチンに加えることができる。あるいはその代わりに、1種または複数種の補助界面活性剤を、レシチンと1種または複数種の有機溶剤とのブレンドに加えることもできる。
【0044】
本明細書に開示の実施形態はまた、開示の組成物の使用方法に関する。様々な実施形態において、開示の組成物は、配合物(例えば、コンクリート、セラミック、ガラス繊維、プラスチック、インク、塗料、または他の被覆剤など)中に成分を分散しやすくするかまたはぬれやすくするのに使用する。開示の組成物を配合物に混ぜて、少なくとも1種の成分(例えば、顔料など)を分散させるか、ぬれさせる。様々な実施形態において、開示の組成物は、様々な配合物に用いる低VOCの生物由来添加剤を含む。
【0045】
本明細書に記載されているように、開示の組成物は、溶剤系塗料および水系の塗料、インク、および他の被覆剤系を配合するのに適している。開示の組成物の両親媒性により、有機顔料、無機顔料、カーボンブラック、または二酸化チタンの良好な湿潤剤および安定剤として使用することが可能になる。開示の組成物また、多種多様な顔料濃縮物にも適している。様々な実施形態において、本明細書に例示されているように、開示の組成物は、塗料、インクおよび他の被覆剤系の配合時に顔料分散過程で粉砕助剤として添加する。
【0046】
様々な実施形態において、本明細書で例示されているように、開示の組成物は、粉砕粘度が低く、顔料の配合量が多く、泡が少なく、着色性が高く、しかも迅速に分散/湿潤する、低VOC分散剤として働くことができる。様々な実施形態において、開示の組成物は、アルキルフェノールエトキシレートを含まない乳化剤ブレンドを含むことができる。
【実施例】
【0047】
以下の例示的な非限定的例は、本明細書に示した実施形態をさらに説明するために示す。本発明の範囲内において、これらの実施例の変形形態が可能であることは当業者なら理解するであろう。
【0048】
実施例1.
この実施例では、水分散性のレシチン濃縮物を作る方法を説明する。73重量パーセントの量のレシチン(Archer-Daniels-Midland Company (Decatur, IL)から入手可能)と20重量パーセントの量のトール脂肪酸エトキシレート(Stepan, (North field, IL)から入手可能)と7重量パーセントの量の大豆脂肪酸とを混ぜて、レシチン−補助界面活性剤ブレンドを調製した。諸成分を50℃で絶えず撹拌しながら30分〜60分の間混合し、琥珀色の透明なレシチンと補助界面活性剤とのブレンドを製造した。
【0049】
実施例2.
65重量パーセントの量の実施例1のレシチン−補助界面活性剤ブレンドを、35重量パーセントの量の乳酸(濃度88%)(Archer-Daniels-Midland Company(Decatur, IL)から入手可能)と、室温で絶えず撹拌しながら、30分間混合して、水中で安定した乳状水性分散液を容易に形成する透明系を得た。
【0050】
実施例3.
65重量パーセントの量の実施例1のブレンドを、4重量パーセントの量の乳酸エチル(Archer-Daniels-Midland Company(Decatur, IL)から入手可能)と混合し、その後、室温で30分間絶えず撹拌しながら、7重量パーセントの量の水を添加して、水中で安定した乳状水性分散液を容易に形成する透明系を得た。このブレンドのpHは2.0である。
【0051】
実施例4.
58重量パーセントの量の実施例1のレシチン−補助界面活性剤ブレンドを、22重量パーセントの量の乳酸ナトリウム(濃度60%)(Archer-Daniels-Midland Company(Decatur, IL)から入手可能)と混合し、その後、9%の乳酸(濃度88%)(Archer-Daniels-Midland Company(Decatur, IL)から入手可能)と混合した。このブレンドに、4重量パーセントの量の乳酸エチル(Archer-Daniels-Midland Company(Decatur, IL)から入手可能)を、次いで、室温で30分間絶えず撹拌しながら7重量パーセントの量の水を加えて、水中で安定した乳状水性分散液を容易に形成する透明系を得た。このブレンドのpHは4.5である。この実施例で製造した組成物をADM6200と呼ぶ。
【0052】
実施例5.
56重量パーセントの量の実施例1のレシチン−補助界面活性剤ブレンドを、22重量パーセントの量の乳酸ナトリウム(濃度60%)(Archer-Daniels-Midland Company(Decatur, IL)から入手可能)と混合し、その後、9%の乳酸(濃度88%)(Archer-Daniels-Midland Company(Decatur, IL)から入手可能)と混合した。このブレンドに、4重量パーセントの量の乳酸エチル(Archer-Daniels-Midland Company(Decatur, IL)から入手可能)を、次いで、室温で30分間絶えず撹拌しながら9重量パーセントの量のTergitol L-62(ポリエチレングリコール、HLB値約7を有する非イオン界面活性剤)(DOW Chemical Company (Midland, Michigan)から入手可能)を加えて、水中で安定した乳状水性分散液を容易に形成する透明系を得た。このブレンドのpHは4.5である。
【0053】
実施例6.
56重量パーセントの量の実施例1のレシチン−補助界面活性剤ブレンドを、22重量パーセントの量の乳酸ナトリウム(濃度60%)(Archer-Daniels-Midland Company(Decatur, IL)から入手可能)と混合し、その後、9%の乳酸(濃度88%)(Archer-Daniels-Midland Company(Decatur, IL)から入手可能)と混合した。このブレンドに、4重量パーセントの量の乳酸エチル(Archer-Daniels-Midland Company(Decatur, IL)から入手可能)を、次いで、室温で30分間絶えず撹拌しながら9重量パーセントの量のプロピレングリコール(Archer-Daniels-Midland Company(Decatur, IL)から入手可能)を加えて、水中で安定した乳状水性分散液を容易に形成する透明系を得た。このブレンドのpHは4.5である。
【0054】
実施例7.
この実施例では、水分散性のレシチン濃縮物を作る方法を説明する。73重量パーセントの量のレシチン(Archer-Daniels-Midland Company (Decatur, IL)から入手可能)と、20重量パーセントの量の、ポリオキシエチレン(20)モノオレエート、ポリソルベート80のブレンド(BASF (Flirham, NJ)から入手可能)と、7重量パーセントの量の大豆脂肪酸とを混ぜて、レシチン−補助界面活性剤ブレンドを調製した。諸成分を50℃で絶えず撹拌しながら30分〜60分の間混合し、琥珀色の透明なレシチン−補助界面活性剤ブレンドを製造した。
【0055】
実施例8.
58重量パーセントの量の実施例7のレシチン−補助界面活性剤ブレンドを、22重量パーセントの量の乳酸ナトリウム(濃度60%)(Archer-Daniels-Midland Company(Decatur, IL)から入手可能)と混合し、その後、9%の乳酸(濃度88%)(Archer-Daniels-Midland Company(Decatur, IL)から入手可能)と混合した。このブレンドに、4重量パーセントの量の乳酸エチル(Archer-Daniels-Midland Company(Decatur, IL)から入手可能)を、次いで、室温で30分間絶えず撹拌しながら7重量パーセントの量の水を加えて、水中で安定した乳状水性分散液を容易に形成する透明系を得た。このブレンドのpHは4.5である。この実施例で製造した組成物をADM6400と呼び、これは食品グレードである。
【0056】
実施例9.
表1に示す配合処方に従って顔料分散液を調製した。実施例4で製造した組成物(本明細書ではADM6200と呼ぶ)を、標準または基準としてのADM3200(2010年11月18日に出願された米国特許出願第12/993,282号の実施例8にしたがって製造)と比較した。ビーズミルをシミュレートするために、カウルブレード(cowles blade)およびガラスビーズを用いて1300rpmで45分間顔料を粉砕した。Sherwin-Williamsの光沢青色調ベース(Gloss blue tint base)を用いて1%の顔料率(pigmentation)で、着色を評価した。塗料混合物をLeneta白色紙に塗布し、通常の実験室条件下で一晩乾燥させた。色特性はスペクトロガイド(Spectro-guide)で求めた。
【0057】
【表1】
【0058】
表2は、顔料分散液と塗膜の特性を示す。ADM3200をADM6200(試験1)に置き換えると、色の濃さ(color strength)の増大から分かるように着色(color development)の増大はごくわずかなまま、塗膜の光沢が増大したが、色差(color difference)(ΔE)はごくわずかであった。しかし、ADM6200の顔料分散液は、ADM6200の密度がADM3200より低くなっていることから分かるように、いくらか起泡があった。Tergitol L-62の量を33%減らすと(試験2)、塗膜光沢が減少した。また色の濃さが濃くなったことから分かるように着色が極めてわずかに増大したが、色の差(ΔE)は非常に小さかった。しかし、試験2の顔料分散液は、図1に示すように、試験1およびADM3200よりも試験2の密度が低くなっていることから分かるように、起泡性(foam development)が高くなっていた。
【0059】
【表2】
【0060】
塗膜特性のグラフ表示を図2に示し、色を図3に示す。
【0061】
ADM6200分散剤は、ADM3200と同じ着色を示し、光沢は少し増大していた。
【0062】
実施例10.
実施例9の顔料分散液(ADM6200の試験1および2、およびADM3200)および市販の分散剤(BYK(USA)のDisperbyk)を、着色のためSherwin-Williamsの光沢青色調ベースと混ぜ、Leneta白色紙に塗布し、実験室条件下で乾燥させた。色特性はスペクトロガイドで求めた。
【0063】
表3は、ADM6200(試験1)およびADM3200と、同じ日に塗布したDisperbykとのCIELabの比較を示す。色の比較は図4に示す。表4は、ADM6200(試験1)のCIELabを、ADM3200およびDisperbykと比較したものを示す。表3および4のb値では、ADM6200、ADM3200、およびDisperbyk分散剤の間に大きな色の違いはなかった。
【0064】
【表3】
【0065】
【表4】
【0066】
実施例11.
表5の配合処方に従って顔料分散液を調製した。ADM6200を、標準としての(2010年11月18日に出願された米国特許出願第12/993,282号の実施例4に従って製造された)ADM3100と比較して評価した。ビーズミルをシミュレートするために、カウルブレードおよびガラスビーズを用いて1200rpmで45分間顔料を粉砕した。Sherwin-Williamsの光沢白色ベース(Gloss White Base)を用いて1%の顔料率で、着色を評価した。塗料混合物をLeneta白色紙に塗布し、通常の実験室条件下で一晩乾燥させた。色特性はスペクトロガイドで求めた。
【0067】
【表5】
【0068】
表6は顔料分散と塗膜の特性を示す。ADM6200配合物中のTergitol L-62の量を50%減らすと、その密度の高さおよび粘度の低さ(図5)から分かるように分散液の起泡性が減少した。ADM6200の着色は、CIELabのLおよび+b値ならびに色の濃さによって示されるようにADM3100と比べてやや改善された。またADM6200を有する塗料の光沢はADM3100と比べて改善された。
【0069】
【表6】
【0070】
塗膜特性のグラフ表示を図5に示し、色を図6に示す。
【0071】
実施例12.
顔料分散液を、ADM6200、ADM3100、Nuosperse、およびDisperbykを用いて着色のためにSherwin-Williamsの光沢白色ベースと混合し、Leneta白色紙に塗布し、実験室条件下で一晩乾燥させた。色特性はスペクトロガイドで求めた。
【0072】
表7は、ADM6200およびADM3100を、市販の分散剤であるNuosperseおよびDisperbyk(BYK(USA)のもの)と比べた場合のCIELab比較を示し、色の比較を図7に示す。表8は、ADM3100P、Nuosperse、およびDisperbykと比較した場合のLactic Blend BのCIELabを示す。CIELabのa値から、Lactic Blend BはNuosperseおよびDisperbykと同等であった。
【0073】
【表7】
【0074】
【表8】
【0075】
実施例13.
表9の配合処方に従って顔料分散液を調製した。ADM6200を、ADM3200を標準として評価した。ビーズミルをシミュレートするために、カウルブレードおよびガラスビーズを用いて1300rpmで45分間顔料を粉砕した。Sherwin-Williamsの光沢白色ベースを用いて1.56%の顔料率で、着色を評価した。塗料混合物をLeneta白色紙に塗布し、色特性をスペクトロガイドで求めた。
【0076】
【表9】
【0077】
ADM6200をADM3200と比較した。両方の配合処方で6.75gの水は使用しなかった。ADM6200は、ADM3200と比べて粘度および密度が高くなっていることから分かるように、粉砕時の起泡性がADM3200よりも小さく、また表10に示すように、ADM6200は、ADM3200と比べて光沢は増大し、着色が同等であった。
【0078】
【表10】
【0079】
塗膜特性のグラフ表示を図8に示し、色を図9に示す。
【0080】
実施例14.
着色のためにSherwin-Williamsのエクストラ光沢白色ベース(Extra White Gloss base)と混ぜた顔料分散液は、ADM6200(試験5)、ADM3200、およびDisperbykを含んだ。種々の顔料分散液をLeneta白色紙に塗布し、実験室条件下で一晩乾燥させた。色特性はスペクトロガイドで求めた。
【0081】
表11は、ADM6200、ADM3200、およびDisperbykのCIELab比較を示す。色の比較を図10に示す。表12は、ADM6200とDisperbykおよびADM3200とのCIELab比較を示し、図11に色の比較を示す。
【0082】
【表11】
【0083】
【表12】
【0084】
表11および12のCIELabのL値から、ADM6200はDisperbykよりも着色が優れていた(値が小さいほど、色は暗くなる)。Disperbykは、室温保存で色が不安定になった。これは、図11に示されているように色の変化で示される。図12は、グラフによるL値の比較を示す。
【0085】
実施例15.黒色顔料の分散
表13の配合処方に従って顔料分散液を調製した。様々な試験を行って、標準ADM3200配合物と比較した。ビーズミルをシミュレートするために、カウルブレードおよびガラスビーズを用いて1200rpmで60分間顔料を粉砕した。Sherwin-Williamsの光沢白色ベースを用いて1%の顔料率で、着色を評価した。塗料混合物をLeneta白色紙に塗布し、通常の実験室条件下で一晩乾燥させた。色特性はスペクトロガイドで求めた。
【0086】
【表13】
【0087】
標準配合物のADM3200をADM6200と同量置換(lb-lb substitution)すると、粉砕時の粘度の増大、過剰の起泡、および着色の淡色化(lighter color development)が見られた。Tergitol L-62の低減またはADM6200の増大に関する幾つかの試験では、起泡は減少せず、着色は改善されなかった。しかし、脱泡剤であるDrewplus L475をByk 021で置き換えると(試験4)、着色が改善し、60分間の粉砕の後に練り顔料の粘度が増大したが、まだ濾過することができた。顔料率を約20%に減らすと(試験5)、起泡特性が改善された。60分間の粉砕の間ずっと練り顔料の粘度の増大はなかった。また着色はADM3200よりも優れていた。
【0088】
表14は、分散液および塗膜の特性を示す。ADM6200(試験5)では、粘度が低くなり、着色が向上し、CIELab値で示されるように色の濃さが濃くなった。
【0089】
【表14】
【0090】
塗膜特性のグラフ表示を図13に示し、色を図14に示す。
【0091】
ADM6200分散剤は、顔料の配合量が少なくてもADM3200よりも着色が優れていた。ADM6200は起泡性も改善した。
【0092】
実施例16.二酸化チタンの分散液
表15の配合処方に従って顔料分散液を調製した。ADM6200を標準としてのADM3100によって評価した。顔料を、1600rpmで45分間高速分散させながら分散させた。Sherwin-Williamsの光沢青色調ベース中で1.5%にして着色を評価した。塗料混合物をLeneta白色紙に塗布し、通常の実験室条件下で一晩乾燥させた。色特性はスペクトロガイドで求めた。
【0093】
【表15】
【0094】
白色分散液配合物においてADM3100とADM6200とを同量置換した場合について評価した。練り顔料(millbase)の粘度はすでに低くかったので、顔料の添加後に、試料に更なる水を加えなかった。それで、顔料率は少なくとも1%増大した。表16は分散液および塗膜の特性を示す。「粉砕度」に示されているようにどちらの分散剤も、分散特性が優れていた。また着色は色差がごくわずかであった。ADM6200による顔料分散では、粘度が低くなり、顔料配合量が少し増え、高い密度に示されるように起泡性はごくわずかであった。
【0095】
【表16】
【0096】
塗膜特性のグラフ表示を図15に示し、色を図16に示す。
【0097】
ADM6200分散剤の場合、ADM3100と着色が同等であり、練り顔料の起泡性は減少し、顔料配合量は増大した。
【0098】
実施例17.
以下の表17は、ADM6400の作用が、顔料配合量を増やす点では効果的であり、それとともに、色に関して妥協することなく粘度を下げることができることを示している。標準ADM3200で示されるように、顔料配合量は非常に限られており、粘度との関連で上限に達する。ADM6400では、分散作用と顔料配合量に良好な相乗効果が見られ、顔料配合量は実に42%に達しうる。有機顔料でも同様の結果が得られた。
【0099】
【表17】
【0100】
ある特定の例示的実施形態、組成物およびその用途を参照しながら本開示を説明してきた。しかし、様々な代替形態、変形形態または例示的実施形態の任意のものの組合せは、本開示の精神および範囲から逸脱しなくても実施できることは、当業者に理解されるであろう。したがって、本開示は、例示的実施形態の記載によって限定されることはなく、むしろ最初に提出された添付の特許請求の範囲によって限定されるものである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
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図15
図16