(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記制御部は、前記単位発電部の高さを検出する位置センサに電気的に接続され、前記位置センサにより検出された値に基づいて前記ブレードの回転速度又は傾斜角を制御することを特徴とする請求項4に記載のマルチ型風力発電装置。
前記メインブレードのブレードルートに断面が円形又は円形に近い柱状の固定部が形成され、前記固定部の端部から前記ブレードのブレードエッジまで曲線を有する板状の空力部が形成され、
前記サブブレードは、その空力部の少なくとも一部が前記メインブレードの固定部の範囲内に位置することを特徴とする請求項17に記載のマルチ型風力発電装置。
【背景技術】
【0002】
風力発電とは、風車を用いて風が持つエネルギーをスピンドルによる機械的エネルギー(回転力)に変換し、その機械的エネルギーが発電機を駆動するようにすることで電気的エネルギーに変換して電力を得る発電方式をいう。
【0003】
風力発電は、これまで開発された再生可能エネルギー源のうち最も経済性が高いだけでなく、無制限、無コストのクリーンエネルギー源である風を利用して発電するという利点があり、ヨーロッパはもとよりアメリカやアジアなどでも積極的な投資が行われている。
【0004】
このような風力発電のための風力発電装置は、回転軸の方向によって垂直軸風力発電装置と水平軸風力発電装置に分けられる。これまでは水平軸風力発電装置のほうが垂直軸風力発電装置より効率が高く安定しているので、商業用風力発電団地にはほとんど水平軸風力発電装置が適用されている。
【0005】
通常の水平型風力発電機において、多くの動力を得るためには、ブレードの大きさを大きくしたりブレードの大きさに応じた容量を有する発電機を取り付けなければならない。しかし、ブレードが大きくなったり発電機の容量が大きくなると、ブレード及び発電機の重量が増加し、重いブレード及び発電機を支持するタワー及び構造物の規模をどちらも大きくしなければならず、ブレード及び発電機を含む発電施設の重量が増加すると、その重量を支持するベアリングなどの部品を大きくしなければならず、風向きに応じて回転ブレードの向きを変えるヨー動作のために別途の特殊装置を設置しなければならない。
【0006】
従って、設置及び維持コストが等比級数的に増加し、その技術的難易度及びコストの増加により風力発電装置の幅広い普及に大変な障害をもたらすという問題があった。
【0007】
これに鑑み、
図1に示すように1つのタワーの周囲に複数の発電部を円周方向に配置するマルチ型風力発電装置が近年知られている。前記マルチ型風力発電装置においては、1つのタワー1に1つのメインナセル2を設置し、メインナセル2に複数のサポートアーム3を回転可能に放射状に結合し、各サポートアーム3に単位発電部Gをそれぞれ設置している。単位発電部Gは、発電機(図示せず)を含むサブナセル4と、サブナセル4に回転可能に結合されるロータ(図示せず)と、前記ロータに結合されて共に回転する小型ブレード5とを含む。
【0008】
このようなマルチ型風力発電装置においては、ブレード5の大きさを大きくするのではなく、単位発電部Gの数を増加させることにより、多くの動力が得られるようにしているので、ブレード5の重量を過度に増加させないことから、タワー1及び構造物の規模を過度に大きくする必要がなく、各単位発電部Gを支持するベアリングなどの部品も大きくする必要がなくなり、設置及び維持コストを低減することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、このような従来のマルチ型風力発電装置においては、前述した利点を有するにもかかわらず、サポートアーム3がメインナセル2に対して回転運動を行うことから、風速の変動が激しく、騒音が大きくなり、システムの疲労荷重が増加するだけでなく、サポートアーム3の構造強度が弱くなるので、大容量の単位発電部Gの適用が困難であるという問題があった。
【0010】
また、従来のマルチ型風力発電装置においては、各単位発電部Gがタワー1の前面でダウンウィンド方式で配置されることから、各ブレード5のブレードエッジとタワー1間の間隔t1を保持することが困難であり、ブレード5がタワー1に衝突して破損することがあった。
【0011】
さらに、従来のマルチ型風力発電装置においては、1つのブレードの重量がかなり重いことから、風速条件に応じて各ブレードの角度を調整するためには多くのエネルギーを必要とするだけでなく反応速度が遅く、ブレードのブレードルート付近が円筒状に形成されていることから、空力性能が低下してエネルギー生産量が減少し、低風速条件でのエネルギー生産量を増加させるためにブレードエッジでの速度を増加させなければならないので、騒音が増加するという問題もあった。
【0012】
本発明の目的は、風速の変動及び騒音が小さく、システムの疲労荷重が低く、大容量の単位発電部の適用が容易なマルチ型風力発電装置を提供することにある。
【0013】
本発明の他の目的は、ブレードとタワー間の間隔を十分に保持することができ、安定性及び信頼性を向上させることができるマルチ型風力発電装置を提供することにある。
【0014】
本発明のさらに他の目的は、風速条件に応じてブレードの角度を調整する際に必要なエネルギーを減らしながらも角度を迅速に調整することができ、ブレードのブレードルート付近での空力性能を向上させてエネルギー生産量を増加させることができ、低風速条件でもブレードの回転による騒音を減少させることができるマルチ型風力発電装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するために、本発明は、タワーと、前記タワーに放射状に備えられる複数のアームと、前記アームにそれぞれ設置されて単位発電部を構成するナセルと、前記ナセルにそれぞれ結合されて前記ナセルと共に単位発電部を構成するブレードとを含み、少なくとも2つの前記単位発電部は、前記ブレードの回転方向が互いに逆方向である、マルチ型風力発電装置を提供する。
【0016】
ここで、円周方向に隣接する前記単位発電部は、前記ブレードの回転方向が互いに逆方向であるか、又は前記単位発電部は、前記タワーの高さ方向に複数の領域に分類され、当該領域によって前記ブレードの回転速度、傾斜角又は長さが異なる。
【0017】
また、前記複数のアームは、前記タワーに固定結合されてもよい。
【0019】
また、上記目的を達成するために、本発明は、タワーと、前記タワーに放射状に固定される複数のアームと、前記アームにそれぞれ設置されて単位発電部を構成するナセルと、前記ナセルにそれぞれ結合されて前記ナセルと共に単位発電部を構成するブレードとを含み、前記アームは、前記タワーに固定される固定点と前記単位発電部が結合される固定点とが前記タワーの高さ方向中心線を基準として両方にそれぞれ位置する、マルチ型風力発電装置を提供する。
【0020】
また、前記複数のアームは、補強部材により互いに結合されるか、又は前記タワーに結合される補強部材により支持されてもよい。
【0025】
さらに、前記アームは、メンテナンスのための移送部を含んでもよい。
【0026】
さらに、前記複数のアームは、前記タワーに対して回転可能に結合され、前記タワーと前記アームとの間には、前記アームの制動状態を維持するための制動部がさらに備えられてもよい。
【0027】
さらに、前記ブレードは、風向きに対してアップウィンド方式で結合される。
【0028】
さらに、前記ブレードは、それぞれのブレードエッジを囲むようにダクトを備えてもよい。
【0029】
さらに、前記ブレードは、回転半径の大きいメインブレードと回転半径の小さいサブブレードとを含み、前記メインブレードのブレードルートに断面が円形又は円形に近い柱状の固定部が形成され、前記固定部の端部から前記ブレードのブレードエッジまで曲線を有する板状の空力部が形成され、前記サブブレードは、前記空力部の少なくとも一部が前記メインブレードの固定部の範囲内に位置するようにしてもよい。
【0030】
本発明によるマルチ型風力発電装置は、サポートアームによる風速の変動及び騒音を小さくすることができ、システムの疲労荷重を低減することができ、サポートアームの構造強度が強化されて大容量の単位発電部を適用することができ、それにより風力発電装置の大容量化を達成することができる。
【0031】
また、ブレードとタワー間の間隔を十分に保持し、ブレードがタワーに衝突して破損することを未然に防止することにより、風力発電装置の安定性及び信頼性を向上させることができる。
【0032】
さらに、アームに移送部が備えられており、単位発電部のメンテナンスが容易であり、複数のブレードの外郭にダクトが備えられており、風力効果を向上させることができる。
【0033】
さらに、単位発電部のブレードがメインブレードとサブブレードとからなり、風速条件に応じてブレードの角度を調整する際に必要なエネルギーを減らしながらも角度を迅速に調整することができ、エネルギー効率を向上させることができる。
【0034】
さらに、ブレードの空力性能を向上させることにより、低風速条件でも、エネルギー生産量を増加させることができるだけでなく、ブレードの回転トルクの増加により遅くなった回転速度でも同じエネルギーを生産することができ、ブレードの回転による騒音を減少させることができる。
【発明の効果】
【0035】
本発明によるマルチ型風力発電装置は、サポートアームによる風速の変動及び騒音を小さくすることができ、システムの疲労荷重を低減することができ、サポートアームの構造強度が強化されて大容量の単位発電部を適用することができ、それにより風力発電装置の大容量化を達成することができる。
【0036】
また、ブレードとタワー間の間隔を十分に保持し、ブレードがタワーに衝突して破損することを未然に防止することにより、風力発電装置の安定性及び信頼性を向上させることができる。
【0037】
さらに、アームに移送部が備えられており、単位発電部のメンテナンスが容易であり、複数のブレードの外郭にダクトが備えられており、風力効果を向上させることができる。
【0038】
さらに、単位発電部のブレードがメインブレードとサブブレードとからなり、風速条件に応じてブレードの角度を調整する際に必要なエネルギーを減らしながらも角度を迅速に調整することができ、エネルギー効率を向上させることができる。
【0039】
さらに、ブレードの空力性能を向上させることにより、低風速条件でも、エネルギー生産量を増加させることができるだけでなく、ブレードの回転トルクの増加により遅くなった回転速度でも同じエネルギーを生産することができ、ブレードの回転による騒音を減少させることができる。
【0040】
本発明の理解を助けるために提供され、本明細書に組み込まれて本明細書の一部を構成する添付図面は、本発明の実施形態を示し、明細書と共に本発明の原理を説明する。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下、本発明によるマルチ型風力発電装置を添付図面に示す一実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0043】
図3は本発明によるマルチ型風力発電装置の一例を示す斜視図であり、
図4及び
図5は
図3による風力発電装置を示す側面図及び正面図である。
【0044】
同図に示すように、本発明によるマルチ型風力発電装置は、地面から所定の高さとなるように立設されるタワー10と、タワー10の上端周辺に放射状に配列され、風速に応じて異なる方向又は異なる回転速度で回転して個別に発電する複数の単位発電部Gとを含む。単位発電部Gは、後述するサブナセル40と、サブナセル40に結合される複数のブレード50とを含む。
【0045】
タワー10は、上端から下端へ行くほど外径が大きくなり、中空截頭円錐状に形成されるようにしてもよい。また、タワー10の内部には、前記単位発電部のメンテナンスのために作業者や作業器具を移動させることができるように、階段、コンベア又はエレベータが設置されてもよい。
【0046】
単位発電部Gは、後述するサポートアーム30を用いてタワー10に固定結合されてもよく、後述するブレードアーム130と共にタワー10に対して回転可能に結合されてもよい。単位発電部Gがタワー10に固定結合される方式を固定式発電装置といい、単位発電部Gが回転可能に結合される方式を回転式発電装置という。
【0047】
前記固定式発電装置においては、タワー10の上端にメインナセル20が水平方向に固定結合され、メインナセル20に複数のサポートアーム30が放射状に延びるように固定結合され、サポートアーム30の端部に単位発電部Gが結合されるようにしてもよい。
【0048】
ここで、メインナセル20は、サポートアーム30がブレードの役割を果たさないことから、外形が通常のナセルの形状に形成されるだけであり、内部にはギヤボックスや発電機などが備えられない。当然ながら、前記メインナセルは、ナセルの形状に形成されるのではなく、単なる棒状のフレームで形成されてもよい。
【0049】
サポートアーム30は、メインナセル20から遠ざかるほど外径が小さくなるように形成され、メインナセル20の外周面に放射状に固定結合されてもよい。また、サポートアーム30は、中実棒状に形成されてもよく、単位発電部Gのメンテナンスのために、内部に
図6に示すように階段やコンベア、超大型の場合はエレベータなどの移送装置が設置されてもよい。
【0050】
サポートアーム30は、円周方向に等間隔で配列されることが、後述するブレード50の回転半径を最大限大きくすることができるだけでなく、タワー10の両側に配列される部品の左右均衡をとることができるので好ましい。例えば、サポートアームの数が4つの場合は、
図5に示すように、サポートアーム30同士が直角をなすように配列し、かつタワー10の高さ方向中心線を基準として両側にそれぞれ2つずつ対称となるように配列することが好ましい。当然ながら、前記単位発電部を含むサポートアームの数は、2つ以上であれば特に制限されない。
【0051】
図4に示すように、サポートアーム30は、メインナセル20に結合される第1端部31と、第1端部31から放射状に延びて後述するサブナセル40が結合される第2端部32とからなる。サポートアーム30は、第1端部31及び第2端部32のどちらもタワー10の前方(以下、風の流れ方向を基準として上流側を前方という。)に位置するように設置されてもよい。しかし、サポートアーム30は、
図4に示すように、第1端部31がタワー10の後方に位置して第2端部32がタワー10の前方に位置するように、傾斜して配置されてもよい。これにより、サポートアーム30は、傾斜してタワー10と交差して両端部の固定点A、Bがタワー10の両方にそれぞれ位置し、後述するサブナセル40は、タワー10の前方に配置される。従って、サポートアーム30がメインナセル20に加える垂直荷重が分散し、タワー10とメインナセル20とが結合される固定点Cでの荷重の集中による破損を防止することができる。
【0052】
サブナセル40は、ギヤボックスや発電機を有する通常のナセルの形状に形成され、各サポートアーム30の第2端部32にそれぞれ固定結合される。
【0053】
サブナセル40の前方には、複数のブレード50がそれぞれ回転可能に結合され、サブナセル40の後方には、サブナセル40が風向きに応じて回転するヨー動作をサポートするウィンドベーン(図示せず)が設置される。
【0054】
複数のブレード50は、いわゆるアップウィンド方式でそれぞれ設置されてもよい。これにより、
図4に示すように、ブレード50のブレードエッジ50aとタワー10間の間隔t2を、ブレード50がタワー10に衝突しない程度の所定間隔以上となるように保持することができる。
【0055】
このようにして、本発明によるマルチ型風力発電装置は、前記サポートアームが前記タワーに固定されたメインナセルに固定結合されることにより、前記サポートアームの回転時に発生し得る風速の変動及び騒音を小さくすることができ、システムの疲労荷重を低減することができる。また、前記サポートアームが前記メインナセルに加えて前記タワーに固定されると共に、前記サポートアームが前記タワーの高さ方向中心線を基準として後方から前方に配置されることにより、前記サポートアームの構造強度が強化されるだけでなく、前記サポートアームの両固定端での偏心荷重が相殺され、前記サブナセルと前記ブレードとからなる各発電部の容量を大きく増加させることができる。これにより、風力発電装置の大容量化を達成することができる。
【0056】
さらに、サポートアーム30の端部に設置されるサブナセルにそれぞれのブレードがダウンウィンド方式で結合されることにより、前記サポートアームの両端部の固定点間の距離を最小限にすると共に、前記ブレードのブレードエッジと前記タワー間の間隔を十分に保持することができる。これにより、前記ブレードが前記タワーに衝突して破損することを未然に防止することができる。
【0057】
一方、本発明によるマルチ型風力発電装置においては、タワーの周囲に複数の単位発電部が円周方向に配列されることにより、各単位発電部がタワーの高さ方向中心線からサポートアームの長さだけ遠い位置に配置されるだけでなく、各単位発電部のブレードが回転して各単位発電部がタワーを中心とする回転モーメントを発生する。従って、前記マルチ型風力発電装置は、各単位発電部から発生する回転モーメントにより左右方向(前後方向に対して水平に直交する方向)に激しい偏心荷重を受けることになり、前記風力発電装置を安定して支持するためには高い剛性を有する補強構造が要求されるだけでなく、各単位発電部の容量を増加させて風力発電装置を大型化することが制限される。
【0058】
本実施形態においては、各単位発電部Gのブレード50が設置位置に応じて異なる方向に回転するように構成することにより、ブレード50の回転時に各単位発電部Gから発生する回転モーメントを相殺し、左右方向の偏心荷重を低減することができる。
【0059】
例えば、
図7に示すように4つの単位発電部を有する風力発電装置の場合、タワーの高さ方向中心線CLを基準として、右上に位置する発電部G1のブレードは時計方向(CW)に回転し、左上に位置する発電部G2のブレードは反時計方向(CCW)に回転し、左下に位置する発電部G3のブレードは反時計方向(CCW)に回転し、右下に位置する発電部G4のブレードは時計方向(CW)に回転するように制御してもよい。しかし、場合によっては、右に位置する発電部G1、G4のブレードと左に位置する発電部G2、G3のブレードとが互いに逆方向に回転するように制御するか、上方に位置する発電部G1、G2のブレードと下方に位置する発電部G3、G4のブレードとが互いに逆方向に回転するように制御するなど、多様に実現することができる。
【0060】
このような本実施形態によるマルチ型風力発電装置においては、通常の水平型風力発電装置のように、風が吹けば、各単位発電部G1、G2、G3、G4のブレード50が回転し、その回転力を電気的エネルギーに変換して発電する。
【0061】
ここで、単位発電部G1、G2、G3、G4は、設置位置に応じて、ブレード50が水平軸又は垂直軸を中心に逆方向に回転するか、又は対角線方向に対称となるように回転することにより、ブレード50の回転時に各単位発電部G1、G2、G3、G4から発生する回転モーメントを相殺し、左右方向の偏心荷重を低減する。これにより、タワーをはじめとする風力発電装置の規模を大型化することができる。
【0062】
一方、本発明によるマルチ型風力発電装置においては、複数の単位発電部が備えられることにより、風力発電装置全体の重量が増加するだけでなく、各単位発電部の設置高さによる風速差に起因する上下方向の偏心荷重が増加することがある。このような上下方向の偏心荷重も左右方向の偏心荷重と同様に風力発電装置の大型化を制限する。
【0063】
すなわち、前述した実施形態は、各単位発電部の設置位置に応じてブレードを異なる方向に回転させることにより、各単位発電部から発生する回転モーメントを相殺し、左右方向の偏心荷重を低減するものであるが、本実施形態は、各単位発電部の設置高さに応じてブレード50の回転速度(RPM)及び傾斜角(ピッチ)を制御する風速対応制御部を備えることにより、各単位発電部の設置高さによる風速差を相殺するものである。
【0064】
例えば、上方に位置する単位発電部のブレードの回転速度よりも下方に位置する単位発電部のブレードの回転速度を増加させるか、又は上方に位置する単位発電部のブレードの傾斜角よりも下方に位置する単位発電部のブレードの傾斜角を大きくすることにより、上方の単位発電部と下方の単位発電部の荷重差を相殺することができる。
【0065】
このために、
図8に示すように、サブナセル40(風力発電装置の前方)には、風速を検出する風速センサ81が設けられ、また、サブナセル40には、風速センサ81により検出された値の入力を受け、風速の変化に応じて該当単位発電部G1、G2、G3、G4のブレード50の回転速度を制御するか又はブレード50の傾斜角を制御する制御ユニット(以下、マイコン)83が備えられるようにしてもよい。
【0066】
ここで、ブレード50の回転速度及び傾斜角の制御は、各単位発電部G1、G2、G3、G4毎に独立して行うことが好ましいが、場合によっては、タワー10の任意の高さ(例えば、メインナセル)を基準として下方に位置する単位発電部G3、G4と上方に位置する単位発電部G1、G2とに区分し、各グループの単位発電部をグループ制御してもよい。図示していないが、単位発電部の領域は、前述したように上方及び下方に区分することに加え、上方、中間及び下方に区分するなど、多様に区分することができる。
【0067】
一方、本発明によるマルチ型風力発電装置における上下方向の偏心荷重を低減する他の実施形態を説明する。
【0068】
すなわち、前述した実施形態は、位置に応じて単位発電部のブレードの回転速度又は傾斜角を制御するものであるが、本実施形態は、位置に応じてブレードの大きさが異なるようにすることで上下方向の偏心荷重を低減するものである。
【0069】
図9に示すように、相対的に風速の速い上方に位置する単位発電部G1、G2のブレードの長さL2よりも相対的に風速の遅い下方に位置する単位発電部G3、G4のブレードの長さL1を長くすることにより、下方に位置する単位発電部のブレードの大きさを大きくし、それにより風速差に起因する単位発電部の上下方向の偏心荷重を相殺することができる。
【0070】
このように、前記単位発電部は、隣接する単位発電部のブレードを互いに逆方向に回転させて隣接する発電部間の回転モーメントを相殺することにより、単位発電部の左右方向の偏心荷重を低減したり、上方に位置する単位発電部よりも、下方に位置する単位発電部のブレードの回転速度及び傾斜角を大きくするか又は下方に位置する単位発電部のブレードの大きさを大きくすることにより、単位発電部の上下方向の偏心荷重を低減することができる。これにより、各発電部の容量をさらに大きく増加させ、風力発電装置の大容量化及びと安定化を達成することができる。
【0071】
一方、本発明によるマルチ型風力発電装置においては、タワーの前方に複数の単位発電部が配置されることにより、前記単位発電部を支持する固定点に応力が集中し、前記固定点での応力集中により互いに結合される部材が破損することがある。よって、本実施形態においては、前後方向の偏心荷重を低減することにより、結合部位での応力集中を緩和する。
【0072】
すなわち、前述した実施形態は、メインナセル20がタワー10の上端に対して垂直方向に結合されるものであるが、この場合、サポータアーム20の両固定点A、Bをタワー10の両方にそれぞれ配置するとしても、単位発電部Gがサポータアーム30に結合される固定点Bがメインナセル20がタワー10に固定される固定点Cを基準として偏心して配置されるので、固定点Cに応力が集中して破損することがある。
【0073】
本実施形態は、
図10に示すように、メインナセル20がタワー10に対して所定の角度だけ傾斜して結合されるようにすることにより、上下方向の荷重を低減するものである。この場合、メインナセル20がタワー10に結合される第3固定点Cの高さよりもサポートアーム30がメインナセル20に結合される第2固定点Bの高さが所定の高さ差hだけ高くなる。これにより、第3固定点Cに加わる荷重をある程度相殺することができ、第3固定点Cでの応力集中を低減することができる。
【0074】
一方、本発明によるマルチ型風力発電装置においては、タワーの周囲に複数の単位発電部が放射状に配列されることにより、これらの単位発電部を支持するサポートアームが撓んだりねじれたりする恐れがある。よって、本実施形態においては、各単位発電部を支持するサポートアームが変形することを防止する。
【0075】
すなわち、前述した実施形態は、前記サポートアームの第2端部に単位発電部がそれぞれ結合され、前記サポートアームが前記メインナセルに独立して結合されるものである。しかし、この場合、前記サポートアームは、当該サポートアーム自体の重量や前記単位発電部の重量などにより前記サポートアームが撓み、風力発電装置の信頼性を低下させるだけでなく、大容量化の実現にも障害となり得る。
【0076】
これに鑑み、本実施形態においては、
図11に示すように、各サポートアーム30を少なくとも1つの補強フレーム70で連結し、各サポートアーム30が互いを支持するようにしてもよい。これにより、各サポートアーム30の構造強度が強化されるので、偏心荷重を低減することができるだけでなく、サポートアーム30の長さ及びブレード50の風量を増加させて風力発電装置全体の発電容量を増加させることができる。
【0077】
ここで、補強フレーム70は、
図11に示すように各サポートアーム30間に連結設置されてもよいが、タワー10とメインナセル20との間に設置されてもよい。例えば、補強フレーム70は、
図12に示すように、タワー10に結合されてメインナセル20の底面を支えて支持するように設置されてもよく、
図13に示すように、メインナセル20の上面にタワー10と同じ方向に主塔71が延設されてその主塔71からフレーム又はケーブル72などが懸架されてメインナセル20を支持するように設置されてもよい。
【0078】
また、図示していないが、前記補強フレームは、前記サポートアームに結合されて前記サブナセルの底面を支えて支持するようにしてもよい。
【0079】
一方、本発明によるマルチ型風力発電装置は、前記ブレードの外周面にダクトを備えることにより、空力効率を向上させて発電量を増加させるようにしてもよい。例えば、
図14及び
図15に示すように、ブレード50のブレードエッジ50aの周辺には、ブレード50を囲んで風を当該ブレードの方向に誘導するように、ダクト60が設けられてもよい。ダクト60は、ブレード50のブレードエッジ50aと所定の間隔t3を保持した状態で設けられ、ブレード50が独立して回転できるようにしてもよい。このために、ダクト60は、環状に形成され、複数のリブ61によりサブナセル40に固定結合されるようにしてもよい。
【0080】
また、図示していないが、前記ダクトは、各ブレードのブレードエッジに結合されて当該ブレードと共に形成されるようにしてもよい。この場合、前記ダクトを固定するためのリブを別途備えなくてもよい。
【0081】
このように、ブレード50のブレードエッジ50aの周辺にダクト60を設けることにより、広い風速範囲で運用できるようになり、同一の風速に対して大きな出力を発生することができ、騒音の低減により高い回転数で運用できるようになり、同一の容量の風力発電装置の小型化及び軽量化が可能になる。
【0082】
一方、前述した実施形態においては、前記サポートアームが前記メインナセルに固定設置される場合を説明したが、本実施形態においては、前記サポートアームが前記メインナセルに回転可能に結合され、空力効率をさらに向上させることができる。
図16は本発明によるマルチ型風力発電装置の他の実施形態を示す斜視図であり、
図17は
図16による風力発電装置を示す側面図であり、
図18は
図16及び
図17による各単位発電部のブレードを制御するための風速対応制御部を示すブロック図である。
【0083】
図16及び
図17に示すように、前述した実施形態におけるサポートアームがメインナセル120(正確には前記メインナセルに結合されるロータ組立体に結合されるが、便宜上前記メインナセルに結合されると説明する。)に回転可能に結合されて一種のブレード(以下、ブレードアーム130という。)の役割を果たす場合も、前述した実施形態を同様に適用することができる。
【0084】
ただし、本実施形態においては、メインナセル120に結合されるブレードアーム130が、従来のサポートアームとは異なり、メインナセル120に対して回転しなければならないので、ブレードアーム130の両端は、タワー110の高さ方向中心線を基準として前方に配置されてメインナセル120に結合されなければならない。この場合も、サブナセル140に回転可能に結合されるブレード(以下、サブブレードという。)150は、サブブレード150のブレードエッジがタワー10から所定間隔離隔してアップウィンド方式で結合されることが好ましい。
【0085】
また、本実施形態のように、ブレードアーム130が回転する場合は、各単位発電部Gが円周方向に移動するので、前述した固定式発電装置とは偏心荷重を相殺するための構成や制御方法が異なる。すなわち、本実施形態においては、単位発電部Gの位置をリアルタイム(又は周期的)に監視できるように、サブナセル140には、サブナセル140の位置を検出してマイコン183に伝達する位置センサ181がそれぞれ設けられ、また、サブナセル140(又は風力発電装置の前方)には、風速を検出してマイコン183に伝達する風速センサ182が設けられ、さらに、サブナセル140には、位置センサ181及び風速センサ182により検出された値の入力を受け、風速の変化に応じて該当単位発電部Gのブレード150の回転速度を制御するか又はブレード150の傾斜角を制御する制御ユニット(マイコン)が備えられるようにしてもよい。
【0086】
ここで、メインナセル120及びブレードアーム130も一種の単位発電部Gを構成することができるので、マイコン183によりブレードアーム130の回転速度及び傾斜角を制御することができる。
【0087】
また、マイコン183は、単位発電部Gが円周方向に回転するので、単位発電部Gの回転速度及び傾斜角の制御を個別に行うことが好ましい。しかし、場合によっては、
図7に示すように、四象限の領域に分けて該当領域に入る単位発電部をグループ制御するようにしてもよい。
【0088】
また、本実施形態のように、ブレードアーム130がメインナセル120に回転可能に結合される場合は、各単位発電部Gが円周方向に移動するので、単位発電部Gが所定の領域に入ると、該当ブレード150の回転速度及び傾斜角に加えて回転方向が変更されるように制御してもよい。このために、各単位発電部Gに備えられるロータとしては、双方向回転が可能なロータを適用することができる。この場合は、ブレードアーム130の数が多いか又は奇数で設置されたとき、必要に応じてブレード150の回転方向を変更することができ、偏心荷重を効果的に相殺することができる。
【0089】
また、ブレードアーム130がメインナセル120を中心に回転するので、単位発電部Gなどをメンテナンスするためには、ブレードアーム130が固定された状態を維持しなければならない。これに鑑み、本実施形態においては、タワー110又はメインナセル120に、ブレードアーム130が結合されたロータの回転を拘束するための制動部(図示せず)がさらに備えられるようにしてもよい。
【0090】
一方、このようなマルチ型風力発電装置は、
図19に示すように、前記サポートアームに別途の単位発電部(以下、サブ単位発電部Gsという。)をさらに備えてもよい。この場合も、前述した実施形態を同様に適用することができる。
【0091】
ただし、本実施形態においては、サブ単位発電部Gsのサブナセル291及びブレード295のほうがサポートアーム(又はブレードアーム)230の端部に設置される単位発電部(以下、メイン単位発電部Gmという。)のブレード250より小さく形成されることが、前記ブレードの回転半径を大きくすることができるので好ましい。
【0092】
また、この場合は、メイン単位発電部Gmのブレード回転方向とサブ単位発電部Gsのブレード回転方向とが逆となるように制御してもよい。これにより、左右方向の偏心荷重をより効果的に相殺することができる。
【0093】
一方、本発明によるマルチ型風力発電装置のさらに他の実施形態を説明すると次の通りである。
【0094】
すなわち、前述した実施形態は、単位発電部のブレードが同一の大きさ及び形状を有するものであるが、本実施形態は、単位発電部のブレードが異なる大きさ及び形状を有するようにし、様々な風速条件に対応できるようにする。
【0095】
図20及び
図21は本実施形態によるマルチ型風力発電装置の他の実施形態を示す斜視図及び正面図である。
【0096】
同図に示すように、本実施形態による風力発電装置の単位発電部Gは、ナセル40の一側にタービン軸を回転させるハブ45が備えられ、ハブ45には、メインブレード51とサブブレード52とが一体に形成されるか又は別体のベーン取付部(図示せず)により分離可能に結合されていてもよい。メインブレード51及びサブブレード52が分離型である場合は、それぞれのベーン取付部が別途の動力制御ユニット(図示せず)の角度制御部に電気的に接続され、メインブレード又はサブブレードの空力面の角度を変化させることができるように制御してもよい。
【0097】
図20に示すように、メインブレード51とサブブレード52とは、同一円周上に交互に配列されてもよい。また、メインブレード51のブレードルート付近には断面が円形又は円形に近い柱状の固定部51aが形成され、固定部51aの端部からメインブレード51のブレードエッジまでは風の影響を受けるように曲面を有する板状の空力面51bが形成されてもよい。空力面51bは、ブレードエッジへ行くほど次第に断面積が小さくなるように形成されてもよい。
【0098】
サブブレード52は、メインブレード51と略同一に形成されてもよい。ただし、サブブレード52は、メインブレード51よりベーンの長さ及び幅がそれぞれ小さく形成され、好ましくは、メインブレード51のブレードルート部位にサブブレード52の空力面(符号なし)が存在する程度の大きさに形成される。
【0099】
また、サブブレード52は、メインブレード51のように、風速条件に応じてブレードの角度が変化する可変ピッチ型ブレードを実現するようにハブ45に回転可能に結合されてもよいが、サブブレード52のほうがメインブレード51に比べて著しく小さく形成された場合は、ブレードの角度が固定される固定ピッチ型ブレードを実現するようにハブ45に固定結合されてもよい。
【0100】
また、図示していないが、サブブレード52は、メインブレード51間に複数備えられてもよく、前記メインブレードとは異なる形状、例えばブレードエッジへ行くほど次第に表面積が大きくなる扇形に形成されてもよい。
【0101】
また、前記メインブレードと前記サブブレードとは、前記角度制御部に接続されたモータにそれぞれ独立して結合されて個別制御されるようにしてもよく、ベルトやチェーンなどを用いて複数のブレードが1つのモータによりグループ制御されるようにしてもよい。
【0102】
前述したように、メインブレードとサブブレードとを有するマルチ型風力発電装置は、風量の少ない低風速条件でもサブブレードにより単位発電部が迅速に発電を開始することができるだけでなく、前記メインブレードのブレードルート部位を通過する風が前記サブブレードに影響を与え、低風速での空力性能が増大し、追加のエネルギー生産量を発生することができる。
【0103】
また、始動風速と定格風速が減少して年間発電量(Annual Energy Production; AEP)が増加する。この場合、前記サブブレードの回転半径が前記メインブレードの回転半径の50%以上となるようにすることが、AEPを増加させることができるので好ましい。しかし、前記サブブレードの回転半径が大きすぎる場合、荷重が増加して始動風速と定格風速が増加することがあるので、前記サブブレードの回転半径は、前記メインブレードの回転半径の約75%以下にすることが好ましい。
【0104】
また、前記サブブレードによりトルクが増加するので、定格回転数を減少させるだけでなく回転速度を遅くすることができ、それにより、前記ブレードの高速回転時に発生し得る騒音を低減することができる。