特許第6113188号(P6113188)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ギルデマイスター エナジー ストーリッジ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツングの特許一覧

特許6113188電気化学を基礎とするエネルギーの生成もしくは蓄積のためのシステム
<>
  • 特許6113188-電気化学を基礎とするエネルギーの生成もしくは蓄積のためのシステム 図000004
  • 特許6113188-電気化学を基礎とするエネルギーの生成もしくは蓄積のためのシステム 図000005
  • 特許6113188-電気化学を基礎とするエネルギーの生成もしくは蓄積のためのシステム 図000006
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6113188
(24)【登録日】2017年3月24日
(45)【発行日】2017年4月12日
(54)【発明の名称】電気化学を基礎とするエネルギーの生成もしくは蓄積のためのシステム
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/18 20060101AFI20170403BHJP
   H01M 4/88 20060101ALI20170403BHJP
   H01M 8/02 20160101ALI20170403BHJP
   H01M 4/92 20060101ALI20170403BHJP
   H01M 4/90 20060101ALI20170403BHJP
   H01M 4/86 20060101ALI20170403BHJP
【FI】
   H01M8/18
   H01M4/88 K
   H01M8/02 L
   H01M4/92
   H01M4/90 X
   H01M4/86 B
   H01M8/02 E
【請求項の数】12
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-552554(P2014-552554)
(86)(22)【出願日】2012年12月20日
(65)【公表番号】特表2015-504233(P2015-504233A)
(43)【公表日】2015年2月5日
(86)【国際出願番号】EP2012076324
(87)【国際公開番号】WO2013110421
(87)【国際公開日】20130801
【審査請求日】2015年11月13日
(31)【優先権主張番号】A0069/2012
(32)【優先日】2012年1月23日
(33)【優先権主張国】AT
(73)【特許権者】
【識別番号】515340774
【氏名又は名称】ギルデマイスター エナジー ストーリッジ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】GILDEMEISTER energy storage GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】アダム ホワイトヘッド
(72)【発明者】
【氏名】マーティン ハラー
【審査官】 高木 康晴
(56)【参考文献】
【文献】 特開平02−226668(JP,A)
【文献】 特開昭61−211960(JP,A)
【文献】 実開平04−124754(JP,U)
【文献】 特開2000−012065(JP,A)
【文献】 特開2006−147374(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0220318(US,A1)
【文献】 特開昭54−162130(JP,A)
【文献】 特開平07−211347(JP,A)
【文献】 特表平09−507950(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/18
H01M 4/86−4/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの負極が配置されている負極側の半電池
少なくとも1つの正極が配置されている正極側の半電池、と
負極側の電解液(21)含む負極側のタンクおよび正極側の電解液(22)を含む正極側のタンク
とからなる少なくとも1つのフロー電池を含む、電気化学を基礎とするエネルギーの生成もしくは蓄積のためのシステムであって、
その際、
前記負極側の半電池と前記正極側の半電池とが隔膜によって隔離され、
前記負極側の電解液(21)が、前記負極側のタンクと前記負極側の半電池との間で循環し、
前記正極側の電解液(22)が、前記正極側のタンクと前記正極側の半電池との間で循環し、
前記負極側のタンクにおいて、前記負極側の電解液(21)の上方に第1のガス空間および前記正極側のタンクにおいて、前記正極側の電解液(22)の上方に第2のガス空間が存在し、その際前記第1のガス空間および前記第2のガス空間は、1つの共通のガス空間(23)につながっている前記システムにおいて、
少なくとも1つの触媒(24)が、前記正極側のタンクに設けられており、かつ前記正極側の電解液(22)に浮かんでいる装置に塗布され、これにより前記触媒(24)は、前記正極側の電解液(22)とも前記共通のガス空間(23)とも接触して配置されていることを特徴とする、前記システム。
【請求項2】
前記触媒(24)が、前記正極側の電解液(22)の正極側のレドックスペアの反応相手の還元に役立つことを特徴とする、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記正極側の電解液(22)が、前記正極側のタンクにおいて前記触媒(24)の表面の1つを介して、定期的に又は連続的に、前記正極側の半電池により循環することにより流通することを特徴とする、請求項1又は2に記載のシステム。
【請求項4】
前記触媒(24)が、前記正極側の電解液(22)用の入口(31)及び/又は出口に配置されていることを特徴とする、請求項1又は2に記載のシステム。
【請求項5】
前記触媒(24)が、枠(11)に張られたメンブレン(12)へと塗布されていることを特徴とする、請求項1又は2に記載のシステム。
【請求項6】
前記触媒(24)が、前記正極側の電解液(22)に部分的に浸される織物に塗布されていることを特徴とする、請求項1又は2に記載のシステム。
【請求項7】
前記触媒(24)が、少なくとも1つのガス拡散層を有することを特徴とする、請求項1からまでのいずれか1項に記載のシステム。
【請求項8】
前記ガス拡散層が、伝導性繊維を含むガス拡散層であることを特徴とする、請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
前記触媒(24)が、白金及び/又は二酸化イリジウムをベースとすることを特徴とする、請求項1からまでのいずれか1項に記載のシステム。
【請求項10】
前記触媒(24)へのガスの流過を生成させるかあるいは保持するための装置が設けられていることを特徴とする、請求項1からまでのいずれか1項に記載のシステム。
【請求項11】
前記共通のガス空間(23)の、周囲に対する圧力補償のための装置が設けられていることを特徴とする、請求項1から10までのいずれか1項に記載のシステム。
【請求項12】
前記正極側の半電池中の正極側の電解液(22)が、充電された状態で四価と五価のバナジウムと、硫酸と、場合により更なる添加剤を含有していることを特徴とする、請求項1から11までのいずれか1項に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気化学を基礎とするエネルギーの生成もしくは蓄積のためのシステムであって、電荷の異なる電解液が流通する、隔膜によって隔離された、それぞれ2つの半電池と、各電解液ごとのそれぞれ1つのタンクとからなる少なくとも1つのフローセルを含み、前記の半電池には、それぞれ少なくとも1つの電極が配置されている前記システム、特に正極側の半電池中の電解液が、充電状態で四価と五価のバナジウムと、硫酸と、場合により更なる添加剤を含有するシステムに関する。
【0002】
実際に使用される、水性電解質を有する電気化学的なエネルギー貯蔵装置システムのほぼすべてにおいて、ある程度の割合の気体状の水素が生成する。レドックスフロー型電池、特にバナジウム系レドックスフロー型電池について、それには一つの特別な問題がある。それというのも、水素は、2H++2e- <−> H2に相応して負極側の電極で形成され、負極側の電極で望まれる反応、例えばV3++e- <−> V2+を阻むからである。
【0003】
負極側の電極での水素発生の強さは、正極側の電極でのパラサイト反応(例えばO2又はCO2の形成)よりもかなり高いので、正極側の電極もしくは負極側の電極で充電状態(SOC、state-of-charge)に差が生ずる。バナジウム電池に関しては、結果的に、水素形成の所定の期間後に負極側の電解液は、正極側の電解液が含有するVO2+より多くのV3+を有する。それにより、該システムの容量は低下する。
【0004】
レドックスフロー型電池に関する前記の水素形成もしくは充電状態の不均衡に計らうために、様々な、しかし構造上かつ制御的に面倒な解決策が既に提案されている。ここで、N. H. Hagedorn, NASA redox storage syste, development project, in Final Report DOE/NASA/12726-24, NASA Lewis Research Center, Cleveland, Ohio (1984)とUS4159366のいずれによっても、Fe−Cr系レドックスフロー型電池に関して、リバランスセル(Rebalance-Zelle)の使用が提案されている。前記セルは、とりわけ水素アノードと鉄カソードから成っており、それらはイオン交換体隔膜によって隔離されており、ガス電極側で水素が供給される。後に、水素還元ではなく好ましくは塩素が生ずる形式が開発された。同様の解決策は、US5258241にも紹介されている。
【0005】
JP07211347は、とりわけバナジウム系レドックスフロー型電池のためのリバランスセルを開示しており、前記電池においては、VO2+は隔膜によって分けられた一方のセルの電極でVO2+へと還元され、そしてもう一方の電極で水性の硫酸から酸素が生ずる。この構造は、先の段落で記載したシステムと同様の欠点を有する。アノード側の半電池の脱水の回避のために水を定期的に補充する必要があることと、平衡の生成のためにエネルギー投入(電気的エネルギー)が必要であることがさらに追加される。
【0006】
リバランスセルは、前記セルに導かれた電荷が大きすぎる場合に、電解液が利用可能な容量の低下を受けるため、手間を掛けて監視せねばならない。それというのも、前記セルは、その際に反対方向で平衡からはずれるからである。
【0007】
鉛酸バッテリについては、ガス改質装置が知られておりかつ慣例的である。しかしそのためには、溶液中に存在する電気的活性種を有するレドックスフロー型電池での使用は予定されていない。ここでは、触媒が、前記電気的活性種の充電状態の再調整のために使用される。
【0008】
従って、本発明によって、上述の欠点を回避しつつ新規の解決策が提案される。前記解決策は、タンク同士をつなぐ共通のガス容量が設けられていることと、正極側の電解液のためのタンクにおいて、正極側のレドックスペアの反応相手の還元のための少なくとも1種の触媒が、正極側の電解液とも、前記の共通のガス容量とも接触して配置されていることを特徴としている。さらに、本発明によるシステムは追加のセルを用いずに循環によって対処され、それは、能動的にポンプ圧送するか又は強制放電する必要がなく、受動的であり、それどころか能動的でない。必要な水素はシステム内で形成され、外部から供給する必要がなく、そして該水素は、正極側の電解液の"放電"のために、一方で負極側の電解液の"充電"のために使用される。
【0009】
更に、リバランスセルで必要とされる、両方の電解液について個別の、充電状態を有効な範囲に調整するための電荷の大きさを測定するためにそこで予定されている充電状態の頻繁な監視は回避されるか、あるいはかなり減らすことができる。それは、非常に手間がかかり、また費用がかかる。
【0010】
本発明の第一の実施形態によれば、触媒は、電解液用の入口及び/又は出口のそばに配置されている。それにより、費用のかかる装置を用いずに、一定の流動量が触媒上に保証される。
【0011】
より好ましくは、前記触媒は、正極側の電解液に浮かんでいる装置に、好ましくは枠に張られたメンブレンに塗布され、それにより前記触媒は、正極側の電解液とも共通のガス容量とも、より簡単に接触が達成されている。
【0012】
もう一つの変法は、この目的のために、前記触媒が、正極側の電解液に部分的に浸される織物に塗布されることを見込んでいる。
【0013】
前記触媒は、より好ましくは少なくとも1つのガス拡散層を有し、好ましくは伝導性繊維を含むガス拡散層を有し、こうして水素を含有するガスが触媒へと簡単に入ることを可能にすると同時に、正極側の電解質がもう一方のコーティングされていない側に入ることを許容する。
【0014】
特に有効であると示される本発明による装置の一実施形態は、白金及び/又は二酸化イリジウムをベースとする触媒が設けられていることを特徴としている。
【0015】
好ましくは、本発明によるシステムには、触媒へのガスの流過を生成させるかあるいは保持するための装置が設けられており、これは、触媒反応の向上に寄与する。
【0016】
より好ましくは、更なる一実施形態によれば、共通のガス容量の、周囲に対する圧力補償のための装置が予定されている。
【0017】
上述の全ての特徴は、特に好ましくは、今までに挙げた効果及び利点を達成して、電気化学を基礎とするエネルギーの生成もしくは貯蔵のためのシステムであって、正極側の半電池中の電解液が、充電状態で四価と五価のバナジウムと、硫酸と、場合により更なる添加剤を含有する前記システムにおいても使用される。それによって、前記の電気化学セルは、レドックス燃料電池の場合のように単に放電だけに対して、バナジウム系レドックスフロー型電池の充電のためにも放電のためにも使用される。
【0018】
対象の本発明は主としてバナジウム系レドックスフロー型電池での使用のためのものであるが、本発明は、原則的に、水性の電解質を有するあらゆる種類のレドックスフロー型電池、例えば鉄とクロムを基礎とする前記電池のために使用することができる。
【0019】
以下の詳細な説明において、本発明を、実施例をもとに添付の図面を参照してより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は、正極側の電解質の入口の近くに本発明による触媒を有するレドックスフロー型電池のタンクを示す概略図を示している。
図2図2は、本発明による触媒の好ましい構造的な実施形態を示している。
図3図3は、本発明による触媒を短時間使用したことによる小さい電気化学電池によって発生された電流のグラフを示している。
【0021】
その際、図1は、概略図において、正極側の電解質の入口の近くに本発明による触媒を有するレドックスフロー型電池のタンクを示しており、図2は、本発明による触媒の好ましい構造的な実施形態であり、かつ図3は、本発明による触媒を短時間使用したことによる小さい電気化学セルによって発生された電流のグラフである。
【0022】
図1は、電気化学を基礎とするエネルギーの生成もしくは貯蔵のためのシステムについての好ましい例としての、レドックスフロー型電池のフローセルのタンクを示している。それらのタンク中には、電荷の異なる電解液が存在し、それらの電解液は、半電池でのエネルギーの生成もしくはエネルギーの貯蔵のために、引き続き再びそれらのタンクへと戻り循環され、その際、負極側の電解液は、21として示され、かつ正極側の電解液は、22として示されている。
【0023】
前記のタンクは、空間的に隔離された容器であってよいが、図1に示されるように、1つの共通の容器中に、隔壁によって仕切られた、互いに隣り合う2つのコンパートメントとして形成されていてもよい。正極側の電解液は、例えば充電状態で四価と五価のバナジウムと、硫酸と、場合により更なる添加剤を含有してよい。電解液21、22の上方に、好ましくは両方のタンクの上方に、これらの両方のタンク同士をつなぐ共通のガス容量23が設けられている。電解液21、22のために2つのコンパートメントを有する共通の容器の場合に、共通のガス容量23は、前記コンパートメントの上方の、隔壁によって分けられていない領域を通じて形成される。更に、正極側の電解質22のタンクにおいて、正極側のレドックスペアの反応相手の還元のための少なくとも1種の触媒24は、正極側の電解液とも、共通のガス容量23とも接触して配置されている。図1から明らかなように、触媒24は、より好ましくは、正極側の電解液22が、定期的に又は連続的に、その表面の一つを流過するように配置されている。このことは、ここでは電解液用の入口31の近くに位置づけることによってもたらされている。また、出口の近くに位置づけることも可能である。
【0024】
触媒24は、触媒作用物質製の構造物からなるか、又は前記物質でコーティングされた担体からなる。その装置によって、触媒24の部分領域が、正極側の電解液22と接触することと、それ以外の部分領域が、水素を含有しかつ負極側の電極で形成されるガスと接触することがもたらされる。そのように、正極側の電解質22と、前記容量23中のガスと、触媒24との間の3相界面が生ずる。
【0025】
タンク中の電解液21、22の容量、従って電解質水準の高さは、より一般的には、数センチメートルだけ変動する(半電池間にあるイオン交換体隔膜を通じた物質輸送に基づく)ので、触媒24は、その一部が正極側の電解液22に浸されているか、又はより好ましくは、例えば触媒作用コーティングを有する浮体として構成することによって前記の高さ変動の追跡(Nachfuehrung)ができるように設計されているか、のいずれかである。そのための一例は、図2に示されており、図2は、浮くことができる枠11、より好ましくはPVC製の、PE製の、PP製の又は他の安定な材料製の枠であって、その中に触媒コーティングがなされたメンブレン12が張られたものを示している。
【0026】
好適なメンブレンは、イオン交換体膜(例えばNafion(登録商標)、DuPont社製)又はミクロ細孔タイプのもの(例えばミクロ細孔のポリエチレン製セパレータ、しばしば鉛酸バッテリで使用される)であってよい。触媒作用コーティングは、一方の側に又は両方の側に存在してよく、それは伝導性粒子(例えば工業用石炭(Industriekohle)など)に塗布されていてもよく、次いでそれにより前記メンブレンはコーティングされている(それ自体は、燃料電池で慣例的)。
【0027】
ガス拡散電極に似たメンブレン担体を有さない触媒も考慮できる。それは、撥水性で、多孔質の導電性層上に触媒作用層を含む。前記層は、また付加的に、還元反応のための活性表面を拡大するために、導電性の繊維(特に黒鉛繊維、例えばカーボン織物)を含んでもよい。更に、前記の撥水性で、多孔質の導電性層は、水素を含有するガスを一方の側から触媒材料へと簡単に入れることを可能する一方で、もう一方のコーティングされていない側へと正極側の電解液が入るのを保持したままにする。
【0028】
バナジウム系レドックスフロー型電池の場合に、それによってVO2+の還元は、正極側のタンクにおいて、負極側の電極で形成されるH2を使用して行われ、それにより両方のタンクにおける充電状態は同じに保たれる(すなわち、バナジウムの平均的な酸化状態は3.5の初期値に保持されるべきである)。
【0029】
本発明による装置は、受動的に作動する、すなわち外部起源からのエネルギーを導入することなく、正極側の電解質22における気体状の水素と電気的活性種との間の反応だけによって、酸化状態の荷電において、例えば反応VO2++H++1/2 H2 <−> VO2++H2Oにおいて作動する。前記の反応は熱的に好ましいけれども(ΔG0 約−97kJ mol-1)、その反応は、室温でかつ好適な触媒の存在がないと、僅かな程度でしか行われない。
【0030】
もちろん、水素の使用を向上させるために、複数の触媒的装置24が、正極側の電解質22のタンク中に設けられていてよい。更に、触媒24へのガスの流過をもたらすための装置が設けられていてよく、能動的な装置か、又は対流の発生と伝導のための装置のいずれかが設けられていてよい。
【0031】
触媒作用物質としては、原則的にあらゆる可能な物質を使用でき、その際、特に、酸性環境における水素還元反応のためには、微分散性のPt、Pt−Ru、Pt−Mo、Pt−W、Pt−Co−Mo、Pt−Co−W、Pd、Pt−Cr、IrO2などが好ましい。その際に重要なのは、電解質への溶解に対する十分な安定性である。
【0032】
水素ガスの消費は、タンクの上方のガス容量23において環境に対して圧力の低下をもたらしうるので、より好ましくは圧力補償のための装置が、例えば圧縮ガス源から不活性ガスを導入するための装置が予定されている。他方で、水素形成に基づく過剰圧は、容量23から、火炎防止器(Flammensperre)が組み込まれた導管を介してガスを抜き出すことによって引き下げることができる。
【0033】
以下の使用例をもとに、本発明による装置の利点が説明されるべきである。
【0034】
使用例1:
区分けされたタンクと共通のガス容量とを有する1つのセルを有する試験システムで、満充電された正極側の電解質と負極側の電解質を導入した。その際、正極側の電解質は、公称で、0.8Mの(VO22SO4、3.2MのH2SO4を有し、かつ負極側の電解質は、1.6MのVSO4、2.4MのH2SO4を有する。前記セルを、一定の1.75Vに保ち、こうして前記電解質を満充電のまま保った。その際、保持電流を連続的に測定した。
【0035】
タンク上方の共通のガス容量において、水素ガスをその濃度が90%に達するまでポンプ圧入し、その後にタンクを遮断して密封した。酸素の不在で作動するガスセンサによって、連続的に水素濃度を測定した。該システムを、ただガス容量中に位置づけられただけの、電解質と接触していない触媒で稼働させた。その際、保持電流は、約40mAで一定に測定された。
【0036】
引き続き、IrO2でコーティングされたTiグリッドを部分的に電解質中に浸し、こうしてそのグリッドのほぼ半分が正極側の電解質中に存在し、もう一方の半分はその上にあるガス容量に存在した。約5分後に、正極側の電解質の還元への応答においてセルを流れる電流の増加が確認できた。39分後には、触媒グリッドを取り出した。電流は、なおも数分間にわたって、正極側の電解質が再び満充電されるまで、基底水準より高いままであった。その際、再び40mAの電流が生じた。
【0037】
それにより、正極側の電解質の還元に関する触媒の効率は、ガス容量中の水素の酸化によって検出できた。
【0038】
使用例2:
上記試験を、IrO2でコーティングされたTiグリッドの下方の浸された部分の周りに巻かれた20cm2の面積と5mmの厚さを有する黒鉛フェルトを用いて繰り返した。該触媒装置36分間にわたり沈めたままにし、次いでそれを取り出し、その後に過剰充電が測定された。
【0039】
結果は以下の通りであった:
【表1】
【0040】
これらの数値は、追加のフェルトの面積がVO2+の還元のために好ましいことを示している。そのことは、反応速度がバナジウムの還元によって制限され、一方で水素の酸化(それは白金で生ずる)によって制限される場合に予想されるべきである。
【0041】
Ti上IrO2触媒(Ti上Ptも)と、Ti上IrO2を有する黒鉛フェルトと組み合わせた触媒は、正極側の電解質との水素の再結合に関して僅かな効果しか示さなかった。
【0042】
しかし、Pt−Ir触媒コーティングがメンブレン上に塗布された、燃料電池用のメンブレン装置が有効であることが判明した。ガス容量中の前記のメンブレンを用いて(電解質と接触していない)、3mAの電流がそのセルを流れた。触媒と電解質との接触の後に(触媒は、電解液に浮かんでおり、電解質とも水素含有ガスとも良好に接触している)、電流は約27mAに高まった。電解質から触媒を取り出した後に、その電流は、全てのV(VI)が再酸化されるまでゆっくりと再び下がった。図3は、83%の水素濃度で、かつ2000秒と13000秒のタイムマークの間の、メンブレンに担持された触媒材料を部分的に浸した場合の前記と類似の試験についての電流−時間の図を表す。
【0043】
基底電流(Basis-Strom)を超過する平均電流I触媒は、その際、以下の表が示しているように、ガス容量中の水素含有率とは比較的無関係であった:
【表2】
【0044】
メンブレンに担持された触媒の面積は、5.0cm2であり、その実験は室温で実施した。
【符号の説明】
【0045】
11 枠、 12 メンブレン、 21 電解液、 22 電解液、 23 ガス容量、 24 触媒、 31 電解液用の入口
図1
図2
図3