特許第6113197号(P6113197)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6113197測定信号記憶部を有する3次元ホールセンサによって相対位置を非接触式に測定する方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6113197
(24)【登録日】2017年3月24日
(45)【発行日】2017年4月12日
(54)【発明の名称】測定信号記憶部を有する3次元ホールセンサによって相対位置を非接触式に測定する方法
(51)【国際特許分類】
   G01D 5/14 20060101AFI20170403BHJP
   G01R 33/02 20060101ALI20170403BHJP
   G01R 33/07 20060101ALI20170403BHJP
【FI】
   G01D5/14 H
   G01R33/02 Q
   G01R33/06 H
【請求項の数】10
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-559237(P2014-559237)
(86)(22)【出願日】2013年3月1日
(65)【公表番号】特表2015-512040(P2015-512040A)
(43)【公表日】2015年4月23日
(86)【国際出願番号】EP2013054134
(87)【国際公開番号】WO2013127984
(87)【国際公開日】20130906
【審査請求日】2016年1月13日
(31)【優先権主張番号】102012203225.8
(32)【優先日】2012年3月1日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】501090342
【氏名又は名称】ティーイー コネクティビティ ジャーマニー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツンク
【氏名又は名称原語表記】TE Connectivity Germany GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】000227995
【氏名又は名称】タイコエレクトロニクスジャパン合同会社
(72)【発明者】
【氏名】シャーフ、オリバー
【審査官】 平野 真樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−328046(JP,A)
【文献】 特表2013−531254(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0027028(US,A1)
【文献】 特開2012−112655(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01D 5/00−5/252
G01D 5/39−5/62
G01B 7/00−7/34
G01R 33/00−33/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁界を生成する磁界源(102)と磁界センサ(100)の互いに対する相対位置を非接触式に測定する方法であって、
前記磁界源(102)と前記磁界センサ(100)が互いに対して移動可能であり、
前記磁界センサ(100)は、前記磁界の磁束密度の少なくとも2つの空間成分(By,Bz)を検出し、位置信号が前記測定された成分から生成され、前記方法は、
前記2つの磁束密度成分の比率に基づいて前記位置信号を計算するステップと、
前記磁束密度の絶対値を計算し、前記絶対値を所定の閾値と比較するステップと、
前記磁束密度の絶対値が前記閾値よりも高い場合、現在の計算された位置信号を出力するステップと、
前記磁束密度の絶対値が前記閾値以下である場合、先行して記憶された位置信号を出力するステップと、
前記出力位置信号を記憶するステップと
を備える方法。
【請求項2】
前記磁界センサが2次元ホールセンサ(100)又は3次元ホールセンサ(100)を備える請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記磁界源が少なくとも1個の永久磁石(102)を備える請求項1又は請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記位置信号の計算は、
に従って角度αを確立することと、
変位比例出力信号を生成するために前記角度を線形化することを備える請求項1乃至3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記磁束密度の前記絶対値の計算は、前記磁界の前記磁束密度の前記少なくとも2つの空間成分(By,Bz)から前記ベクトルの絶対値を計算することによって実行される請求項1乃至4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記位置信号の記憶は、角度
の値の記憶や前記角度の線形化値の記憶よりなる請求項1乃至5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
磁界を生成する磁界源(102)と磁界センサ(100)の互いに対する相対位置を非接触式に測定する変位センサであって、
前記磁界源(102)と前記磁界センサ(100)が互いに対して移動可能であり、
前記磁界センサ(100)は、前記磁界の磁束密度の少なくとも2つの空間成分(By,Bz)を検出して前記測定された成分から位置信号を生成するように構成され、
前記磁界センサ(100)は、
前記2つの磁束密度成分の比率に基づいて前記位置信号を計算するため及び前記磁束密度の絶対値を計算して前記絶対値を所定の閾値と比較するための制御及び計算ユニットであって、前記磁束密度の前記絶対値が前記閾値よりも高い場合に現在計算された位置信号を出力するため及び前記磁束密度の前記絶対値が前記閾値以下である場合に先行して記憶された位置信号を出力するために動作される制御及び計算ユニットと
前記出力位置信号を記憶するための記憶ユニット(106)と
を備える変位センサ。
【請求項8】
前記磁界センサ(100)が2次元ホールセンサ又は3次元ホールセンサを備える請求項7に記載の変位センサ。
【請求項9】
前記磁界源(102)が少なくとも1個の永久磁石を備える請求項7又は請求項8に記載の変位センサ。
【請求項10】
前記磁界源(102)は、前記磁界源と前記磁界センサとの間の相対線形移動によって画定される軸に対して回転対称である磁界を生成する請求項7乃至9のいずれか一項に記載の変位センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁界を生成する磁界源と磁界センサの互いに対する相対位置を非接触式に測定する方法に関する。本発明は、更に対応する変位センサにも関する。本発明は、ホール効果に基づき且つ磁界による制御が失われると以前の値を記憶することによって同時にサイズが減少する磁石を用いてセンサ出力範囲の増加を達成するセンサの動作原理を記述している。
【0002】
本発明による方法によって、特に線形移動が、1個以上の永久磁石とホール効果に基づく磁気センサとの間の磁気相互作用によって非接触式に検出され且つ値を求めることを目的としている。
【背景技術】
【0003】
線形移動の測定は、例えばマシンツールを制御するために、空気圧技術において、自動化技術とロボットにおいて、及び自動車分野において使用されている。移動の非接触式検出によって、特に、摩耗が全くない利点が提供される。光学的及び磁気的方法は、非接触式測定方法のうち、最も普及している。光学的方法は光の波長が小さいために高レベルの精度を確保しているのに対し、磁気的方法は特に磁石における埃及び傷に対して極めて感度が低く、センサコンポーネントは、非磁性ハーメチックケーシング内に完全に囲まれている。
【0004】
変位可能永久磁石の位置が2次元又は3次元ホールセンサによって確立される変位センサシステムが種々の製造業者によって市場に提供されている。
【0005】
ある位置の相対線形移動を検出するために、2つの相互に対して垂直な磁界成分が測定され、それらの比率がその位置を検出するために値を求められる。この方法は、一方の磁界成分が極値を取り、従って小さな変位を検出しない領域において、他方の磁界成分が変位に対して全てより強く反応し、実質的に等しい高レベルの測定精度が完全な測定範囲内で提供される利点を有する。
【0006】
更に、この原理は、磁界成分同士間の比例部材が位置を検出するために使用されているので、絶対磁界強度の変化に対して比較的に余り敏感ではない利点を有する。
【0007】
欧州特許第0979988号明細書は、永久磁石と電子センサとの間の相対線形移動の非接触式磁気検出の測定方法を開示している。電子センサによってその相対線形移動を検出するために、位置を検出するために比率の値が求められる2つの相互に垂直な磁界成分が1つの位置で検出される。
【0008】
第2の方法の変形例において、また、既知の測定方法は、電子センサによってその相対線形移動を検出するために、位置を検出するために比率の値が求められる2つの相互に垂直な磁界成分が2つの位置で検出されるように実行されることができる。
【0009】
欧州特許出願公開第2159546号明細書は、2つの相互に垂直な磁界成分(R,A)を検出するためにセンサ構成と永久磁石との間の相対線形移動の非接触式検出のための測定方法を開示している。2次元又は3次元ホールセンサが種々の磁界成分を検出するために個々のセンサの代わりに使用される。準線形位置測定線が関数U=y−e+gによって形成される。ここで、yは磁界成分の機能関係であり、eとgは予め決定可能な電圧値である。特に、準線形位置測定線U=f(y)は、関係y=a+b・R/f(c・R+d・A)に従って、ホールセンサの出力信号から形成される。ここでRは半径方向磁界成分であり、Aは軸方向磁界成分であり、Uは測定電圧であり、a,b,c,d及びnは定数係数である。
【0010】
欧州特許出願公開第1243897号明細書は、所定の経路に沿って互いに対して変位されることができる磁界源と磁界センサを備える磁気変位センサに関する。磁界センサは、磁界源によって生成される磁界の2つの成分を測定する。次に、測定された成分から、磁界センサと磁界源の相対位置を構成する位置信号が導出される。変位センサに関するこの欧州特許出願公開第1243897号明細書で述べられる説明は、位置信号の成立には磁界の2つの測定された成分の分割が含まれる点で区別される。
【0011】
しかしながら、これらの既知の方法には、磁気制御磁界が測定範囲の端部で非常に弱く、位置を計算するために使用される磁束密度の成分が小さな値を取り、従って、両方の値の信号対雑音比(SN比)が計算には好ましくなくなる欠点がある。
【0012】
図1は、線形移動を非接触式に検出するためにホールセンサ100が固定位置に構成され、移動可能永久磁石102の磁界が検出される構成を示している。永久磁石102の移動の方向におけるN極性付与やS極性付与に従って、移動方向へ延出する磁界は、後で、磁界成分Bzであるように示され、その磁界を横切るように延出する成分は、後で、Byであるように示される。
【0013】
図2は、永久磁石102が構成される位置zに従う磁束密度の成分ByとBzの経路を示している。ゼロ位置は、永久磁石102とセンサ100が互いに直接対向する位置である。
【0014】
以下の式(1)に従って計算されることができる角度αは、一般的に測定信号として使用される。
【0015】
磁束密度の絶対値
の経路が位置zの関数として図3に示されている。磁束密度のベクトルの絶対値
は、以下の式(2)に従って個々の成分ByとBzから既知の方法で計算される。対応する計算ルールは、当業者にとっては従来通りであるので、他の座標系を使用する時や第3の磁界成分Bxを含む時に当てはまる。
【0016】
図4に示されるように、角度αは、ホールセンサ100に関して所与の制限値まで比較的線形に永久磁石102の位置に依存する。現在測定された特性線は、線α_linによって図4に示されるように、一般的には更に線形化される。次に、その線形化された線α_linは、センサの出力特性線を形成する。図5は、そのセンサによって出力された位置信号OUTの経路を示している。
【0017】
最も市販されている従来の3次元ホールセンサは、十分に強力な磁界の存在下でのみ動作される。永久磁石がセンサの検出範囲外に位置されると、センサ信号は、もはや利用することができない。
【0018】
所謂「クランピング」すなわち測定範囲端で測定値の省略が行われる更に既知の構成がある。本測定からは独立した固定された所定の値が、もはや信頼できない実際の測定値の代わりに出力される。米国特許第6,502,544号明細書は、センサ信号が夫々センサの最小の又は最大の可能な出力電圧を各々構成する下又は上のクランプ電圧に設定されるスロットル弁構成に対するホールセンサを記述している。
【0019】
しかしながら、このようなクランプ電圧は、それらが固定的に事前設定され且つ現在の測定値に依存しないために、特定の技術用途に対して十分にフレキシブルではない。特に、そのように固定的に設定されたクランプされた測定値は、センサが、例えば、自動車分野のHブリッジ回路で生じるように、動的範囲の中心で磁界を失う時に不適切である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
本発明の目的は、既述されたタイプの測定方法と変位センサを向上することであり、それによって、変位センサが実質的により大きな偏向範囲に対して使用されることができ、より強力な磁界源を必要とすることなく、偏向範囲の定義された部分範囲で最適化された精度を有する。
【課題を解決するための手段】
【0021】
この目的は、独立の特許請求の範囲の主題によって達成される。従属の請求項は、本発明に従う方法と変位センサの有利な展開に関連する。
【0022】
本発明は、磁界センサが更に磁界源による制御が失われた時に有効なセンサ信号が更に出力されることができる記憶ユニットを更に備える概念に基づいている。特に、信頼できるものとして決定された最新の位置値は、永久磁石が十分に強力な磁界を中に生成するセンサに向かう方向まで再び移動するまで、記憶され且つ出力される。次に、本発明に従うセンサは、記憶された値の代わりに再び現在の測定値を出力する。
【0023】
本発明に従うセンサは、有効な出力信号を常に出力するので、そのセンサは、理論的には、引き続くハードウェアやソフトウェアが許容できる値外である信号によって中断されることなく任意のサイズの変位経路に対して使用されることができる。変位経路が比較的に大きいけれども、実際に含まれる測定範囲が僅かに比較的に小さい用途に対して、全体の変位範囲をカバーする位置にある不必要に大きな磁石の選択を排することが更に可能である。
【0024】
本発明に従う利点は、2次元ホールセンサ又は3次元ホールセンサが磁界センサとして使用され且つ磁界源が少なくとも1個の永久磁石を備える場合に特に容易に達成されることができる。
【0025】
磁束密度の絶対値が、センサの位置で監視される場合、特に簡単で効率的な方法で、磁界源が磁界センサから過剰に大きな距離に到達した状態を決定して、なお満足できるSN比を確保することが可能である。いずれにせよ、センサが個々の磁束密度成分を検出するので、磁束密度の絶対値を計算するために、追加の技術的測定の複雑さが必要なく、代わりに、計算が実行される必要があるだけである。
【0026】
本発明をより良く理解するために、以下の図面に示される実施形態を参照してより詳細に説明がなされる。同一のコンポーネントは、同じ参照番号と同じコンポーネント名称を使用して指示される。更に、図示され記述される実施形態からの個別の特徴と特徴の組合せは、また、それ自体発明的な独立の解決策やその発明に従う解決策を構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明に従う、信号の値を求めることができる変位センサを示す。
図2】永久磁石の位置に従って生成された磁界成分の経路を示す。
図3】生成された磁界成分から計算された磁束の絶対値の経路を示す。
図4】生成された磁界成分から計算された角度αの経路と直線化された角度の経路を示す。
図5】位置の関数としてのセンサの出力信号の経路を示す。
図6】実際の測定範囲の外側の変位経路に対する角度αの経路を示す。
図7】大きな変位経路で動作中に記憶ユニットの無いセンサの出力信号の図である。
図8】測定範囲のエッジ領域を検出するためのセンサ構成の概略図である。
図9】変位範囲のエッジで部分測定範囲を効率的に検出するための本発明に従うセンサ構成の概略図である。
図10】比較的に大きな変位経路zに対する計算された角度αの経路を示す。
図11図10に属する磁束密度の絶対値の経路の図である。
図12】本発明を使用する記憶された角度値の概略図である。
図13図12の角度値から計算された出力値の図である。
図14】磁束密度の種々の閾値に対する位置に従う出力値の図である。
図15】シリンダ用途での引込み位置を正確に測定するための測定構成の概略図である。
図16】変位経路に従う図15の構成に対して出力された出力信号を示す。
図17】選択レバーの中央位置を正確に測定するための測定構成の概略図である。
図18図17の構成に対する角度ψに従う出力信号の経路を示す。
図19】Hブリッジ回路の中立位置を検出するための測定構成の下からの図である。
図20図19の構成に対する個々のギャップの側面図である。
図21】第1の磁石の位置に従うセンサの出力信号を示す。
図22】第2の磁石の位置に従うセンサの出力信号を示す。
図23】第3の磁石の位置に従うセンサの出力信号を示す。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明は、ここで、図面を参照して以下により詳細に説明される。
【0029】
第1の実施形態に従う変位センサ構成は、図1に示されている。ホールセンサ100が固定位置に取り付けられ、一方では、永久磁石102がホールセンサ100に関して線形に移動可能なように支持される。永久磁石102は、N軸やS軸が移動方向に平行に配向されるように極性付与される。しかしながら、原理的には、本発明の原理は、永久磁石102のN軸やS軸が移動方向に対して横切るように延出するように永久磁石102が極性付与される構成に適用されてもよい。永久磁石102は、各用途によって決定される変位経路104によって、2つの方向における図1に示されるゼロ位置の外側へ変位されることができる。ホールセンサ100は、少なくとも2つの直交する磁界成分すなわち移動線に沿って延出する磁界成分とそれに対して横切るように延出する磁界成分を検出する(図2参照)。これらの2つの成分のベクトル加算によって図3に示されるように、磁界の絶対値
が提供される。角度αは、移動方向に対して垂直である全磁界ベクトル
によって囲まれる角度として定義される。
【0030】
既に述べたように、角度αは、式(1)に従って移動方向の磁界成分又はその方向を横切る磁界成分から計算される。
【0031】
計算された角度αは、図4図5に示されるように、変位比例出力信号OUTとして利用可能にされるために線形化される。
【0032】
当然、本発明に従う原理は、他の磁界源例えば電磁石へ及び磁気抵抗センサや誘導センサのような他の磁界センサへ移されてもよい。
【0033】
本書では、一方では移動方向の磁界の値Bzと他方では移動方向を横切る磁界の値Byは、磁界センサ、本例ではホールセンサ100における永久磁石102の位置に従って測定される磁界成分として用いられる。当然、Byに直交して延出する値Bxは、計算のために使用されてもよい。
【0034】
図6は、3次元ホールセンサ100が検出される測定経路の中心に構成されている図1の構成に対して−40mmと+40mmとの間よりも広範な変位範囲に対して式(1)に従って計算された角度αを示す。位置z=0で、磁気制御磁界の絶対値
は最大である。測定範囲端で(この例では、+35mm又は−35mmを超える値zで)、磁気制御磁界は、非常に弱くなり、それによって、その角度を計算するためのByとBzに対する値が非常に小さくなり、従って、両方の値のSN比が計算のためには好ましくなくなる。これによって、図6に示されるように、測定範囲端で値αの発振まで大きな変動となる。
【0035】
この望ましくない挙動を抑制するために、この絶対値
は、多くの既知のセンサで連続的に監視される。値が最小値未満になると、センサ信号がスイッチオフされるか又は許容可能な特性線範囲の外側の値が出力される。これが図7に示されている。この例では、センサは、z<−35mmとz>+35mm範囲でスイッチオフされ、磁石の変位位置は、もはや示されることができない。従って、磁束密度ByやBzのSN比は、磁束密度の成分が有意な測定信号を供給するのに十分なように大きくなければならないので、これらの既知のセンサにおいて磁石の最大の可能な変位範囲を定める。従って、本発明は、記憶ユニット106を有する3次元ホールセンサ102を提案している。
【0036】
多くの用途のため或いは多くの用途において、磁石の変位範囲の一部分の正確な検出のみが必要であるが、残りの変位範囲では、比較的に不正確に表されることができ、この範囲では、一定の有効信号の出力で十分である。センサがそのような用途に対して全体の変位範囲において中心に構成される場合、非常に強力な制御磁界を有する比較的に大きな永久磁石102が使用されなければならず、それによってSN比は、全測定範囲にわたる信頼できる検出に対して十分に大きなままである。図8は、MBAが測定範囲開始を示し、MBEが測定範囲端を示し、且つMBMが測定範囲中心を示すようこのような構成を示す。TMB1は、対象の部分的測定範囲1を示す。
【0037】
本発明に従うセンサによって、出力特性線は、実質的により簡単な方法で生成されることができ、センサ100の傍の実質的により小さな永久磁石102はMBAとTMB1との間の部分的測定範囲内に直接構成され、移動可能磁石は、その制御磁界がこの部分的測定範囲に対して十分に強力であるように大きく構成される。本発明により、センサ100は、磁石が検出範囲を出る前の最新の現在値αを記憶するためにラッチとして機能する位置にある記憶デバイス106を有する。或いは又はそれに加えて、任意ではあるが他の方法で更に処理される線状化された出力値OUTもまた記憶されることができる。
【0038】
センサは、磁石102がセンサ100の検出範囲内に戻されるまでこの値を出力する。換言すれば、本発明に従う3次元ホールセンサ100は、最新の出力値の記憶機能によって補完され、それによって、理論的には無限に大きな磁石の変位範囲は、安定して挙動するにも拘らずセンサを有する測定構成において可能となる。
【0039】
図10は、磁石の拡張された変位範囲での角度αの挙動を示す。検出範囲を出る磁石は、図11に示されるように、磁束密度の絶対値
によって値が求められる。絶対値
が最小磁束密度Bminに対する閾値よりも小さい場合、αの最新の有効値が記憶値α_latchedとして記憶され、更に、出力信号OUTの計算のために使用される(図12図13を参照)。
【0040】
許容可能範囲がB磁界の絶対値に対していかに狭く選択されたかによって、記憶された値の位置と残りの線形範囲の幅が変化する。これは、概略的に、例えば図14に示されている。より大きな閾値Bminに対する範囲を定めることには、SN比がより大きく且つ中断のリスクがより低い利点があるが、実際の動的測定範囲がより狭い欠点が有る。
【0041】
多くの有利な用途例が、本発明に従う格納3次元ホールセンサに対して以下に述べられる。
【0042】
図15は、シリンダ用途での端部位置を制御するための引っ込み位置の正確な測定を可能とするセンサ構成である。移動可能磁石102は、この例では、シリンダピストン108に固定されている。センサ100は、実際に対象となる測定範囲を構成する端部位置の領域内に構成される。
【0043】
この位置にわたる関連する出力特性線が図16に示されている。必要な変位経路が200mmで比較的に大きいが、大きな距離z>TMB1にわたっては、位置z=TMB1にある磁石102が、センサ100に対して十分に高い磁界を生成する範囲に入るまで、記憶された最後の値OUT_latchedのみが接続された信号処理ユニットに出力されることが明確に示されることができる。本発明により、センサは、記憶された値OUT_latchedの代わりに実際に測定された値を再び出力する。
【0044】
選択レバーの中心位置すなわちニュートラル位置の正確な検出のための本発明に従うセンサ構成の他の有利な一用途が図17図18に示されている。永久磁石102の変位経路は、この例では円弧110にわたって延出し、選択レバー112は、永久磁石102に接続されている。センサ100は、選択レバー112が検出されるべきゼロ位置に構成される時に、このセンサ100が移動可能磁石102に最も近いように固定される。
【0045】
図18に示されるように、変位経路は、例えば、角度ψに対して−90°から+90°の範囲内に延出できる。しかしながら、ゼロ位置回りの2°乃至3°の部分的範囲のみが正確に検出されなければならない。比較的に小さな磁石102は、有効測定値が原理上対象外にあるエッジ領域にある次の電子評価ユニットに伝送される場合、その磁石102の回りに延出する。これは、定義された測定範囲を出る前の最新の測定値が記憶され且つ全体の残りの変位範囲に対して出力される本発明に従って実行される。
【0046】
他の有利な一用途が図19から図23に示されている。また、本発明に従う構成は、自動車においてHブリッジ回路のニュートラル位置を正確に測定するのに有利は方法で使用することができる。原理的に既知のように、各ギャップに対して個別の制御磁石102A,102B,102Cが使用される。図19に示されるように、磁石構成の横方向の変位によってギャップが変化する場合、センサ100は、隣のギャップの磁石が検出されるまで中心位置の範囲内に現在の値を記憶する。
【0047】
関連する測定信号が図21から図23に示されている。自動車のバックギアRから5速ギア5への仮想の切替え経路が不連続線によって概略的に示され、センサ100は、磁界を全く測定せず、従って、出力信号として(磁石102Cによって生成された)最新の有効値を出力する。正のz方向への更なる変位中、制御磁界は磁石102Cによって十分に大きくなり、センサ100が現在測定された値を出力する。ギャップが変化すると、図19の全体の磁石構成がここでx方向へ移動し、センサ100で測定されたB磁界が閾値
未満になる。次に、センサ100は、磁石102Bが十分に大きな制御磁界を生成するまで図23から特性線の動的範囲内で測定された最新の値を出力する。
【0048】
この状態で、図22からの特性線の現在の測定値が一時的に出力される。負のx方向への磁石構成の更なる変位が起こると、センサはまた、第2の磁石102Bによる制御を失い、そのセンサが第3の磁石102Cによって制御されるまで、記憶された最新の測定値を出力する。磁石構成が正のz方向へ移動するので、最初に、出力信号OUTは、測定された値が出力される動的範囲にわたって変化する。制御磁界がz方向で失われると、センサ100は、約10mmにわたって全ての位置に対して最新の有効値を出力する。
【0049】
従って、本発明に従うセンサは、実質的により正確な方法で小さな部分測定範囲で測定するが、引き続くユニットに対して全変位範囲にわたって有効である測定値を供給し、その結果、実質的により広範な環境で使用されることができる利点を有する。更に、実質的により小さな制御磁石で測定目的を達成するのに十分である。更に、本発明に従う記憶機能は、記憶された値が測定値の上端又は下端ではない場合が生じても、センサが磁界源による制御を失う前に現在測定された任意の値を記憶する可能性を提供する。
【符号の説明】
【0050】
100 ホールセンサ
102,102A,102B,102C 永久磁石
104 変位経路
106 記憶ユニット
108 シリンダピストン
110 円弧
112 選択レバー
図1
図2
図3
図4
図5
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図10
図11
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