(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
金融庁告示(バーゼル3(Basel III)のルールを国内銀行向けに告示化したもの)により、国際的に活動する国内銀行等の金融機関は、自己資本比率やTier1比率等の指標について一定水準を確保することが求められている(自己資本規制)。例えば、総自己資本比率は、自己資本÷リスクアセット×100(%)で算出され、国際的に活動する金融機関はこれが8%以上を維持することが求められている。当該規制により、金融機関の健全性を確保し、破綻を回避することにより預金者保護等を図ろうとするものである。
【0003】
総自己資本比率の「自己資本」は、普通株等Tier1+その他Tier1+Tier2、「リスクアセット」は、信用リスクアセット+(マーケットリスク相当額+オペレーショナルリスク相当額)×12.5という各指標の合計で算出することができ、これらの計算式および指標はバーゼル委員会により定義されたものである。このうち、「信用リスクアセット」は、EAD×リスクウェイトにより算出することができる。なお、EADは、コミットメントラインに係る将来の追加引出額を勘案することが求められている。また、リスクウェイトは、PD、LGD、マチュリティを入力変数としてバーゼル委の定めるリスクウェイト関数に従って算出することができる。各入力パラメータは各金融機関で推計している。各入力パラメータの概要を表1に示す。
【0004】
【表1】
【0005】
このうち、コミットメントライン追加引出率は、現状、
図2に示すように、現在の使用済み額から1年前の使用済み額を引いた「追加引出額」を、1年前の「未使用額」で割ることにより算出可能である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、現状のコミットメントライン追加引出率による推計手法は、数少ないデフォルト実績に依拠しているため、(1)推計値として不安定になってしまう可能性がある(例えば、推計モデルを年次更新する場合、そのブレ幅が大きくなる場合がある)、(2)セグメント(商品種別、格付、業種等)による分類推計が困難である、(3)現推計手法の妥当性を確認するベンチマークモデルが必要である、等幾つかの課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、このような目的を達成するためになされたものであって、その一実施形態は、金融機関の自己資本比率を算出するためにコミットメントライン追加引出率を推計するコンピュータであって、前記コンピュータは、
複数の債務者の格付を取得し、前記格付は、前記金融機関において独自の規定により設定され、ならびに過去の格付および現在の格付を含み、
前記過去の格付と、前記現在の格付の差から、前記過去から前記現在までの所定期間における格付低下幅を算出し、
前記格付低下幅に基づいて、前記複数の債務者のうち、前記所定期間に格付が低下した債務者を判定し、
前記格付が低下した債務者に対して、前記所定期間における融資枠からの追加引出額を算出し、
前記追加引出額に基づいて、コミットメントライン追加引出率を算出し、
前記格付低下幅ごとに、前記コミットメントライン追加引出率の平均値を算出する
ように構成されたことを特徴とする。
【0008】
また、前段落に記載のコンピュータは、回帰分析により、前記格付低下幅と、前記コミットメントライン追加引出率の前記平均値との関係性を定式化し、定式化された関係式に、前記格付低下幅を入力することにより、前記コミットメントライン追加引出率の前記平均値を補正し、引出率推計値を推計するようにさらに構成されたことを特徴とする。
【0009】
また、前段落に記載のコンピュータは、前記引出率推計値を、格付別債務者数または期待DF数によって加重平均するようにさらに構成され、前記期待DF数は、今後に格付がデフォルトになってしまうと予想される債務者数であることを特徴とする。
【0010】
また、前段落に記載のコンピュータにおいて、
前記期待DF数は、前記格付別債務者数およびPD値の乗算によって算出されることを特徴とする。
【0011】
さらに、前2段落に記載のコンピュータにおいて、前記格付別債務者数または前記期待DF数によって加重平均された推計値を、自己資本比率の入力パラメータとして用いることを特徴とする。
【0012】
また、本発明の別の実施形態は、金融機関の自己資本比率を算出するためにコミットメントライン追加引出率を推計する、コンピュータで実行される方法であって、前記方法は、
複数の債務者の格付を取得するステップであって、前記格付は、前記金融機関において独自の規定により設定され、ならびに過去の格付および現在の格付を含む、ステップと、
前記過去の格付と、前記現在の格付の差から、前記過去から前記現在までの所定期間における格付低下幅を算出するステップと、
前記格付低下幅に基づいて、前記複数の債務者のうち、前記所定期間に格付が低下した債務者を判定するステップと、
前記格付が低下した債務者に対して、前記所定期間における融資枠からの追加引出額を算出するステップと、
前記追加引出額に基づいて、コミットメントライン追加引出率を算出するステップと、
前記格付低下幅ごとに、前記コミットメントライン追加引出率の平均値を算出するステップと
を備えたことを特徴とする。
【0013】
さらに、本発明の別の実施形態は、金融機関の自己資本比率を算出するためにコミットメントライン追加引出率を推計する、コンピュータで実行される方法をコンピュータに実行させるコンピュータプログラムであって、前記コンピュータプログラムは、前記コンピュータによって実行されると、前記コンピュータに、
複数の債務者の格付を取得させ、前記格付は、前記金融機関において独自の規定により設定され、ならびに過去の格付および現在の格付を含み、
前記過去の格付と、前記現在の格付の差から、前記過去から前記現在までの所定期間における格付低下幅を算出させ、
前記格付低下幅に基づいて、前記複数の債務者のうち、前記所定期間に格付が低下した債務者を判定させ、
前記格付が低下した債務者に対して、前記所定期間における融資枠からの追加引出額を算出させ、
前記追加引出額に基づいて、コミットメントライン追加引出率を算出させ、
前記格付低下幅ごとに、前記コミットメントライン追加引出率の平均値を算出させる
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
以上説明したように、本発明により、推計値としてより安定性の高いコミットメントライン追加引出率(延いては自己資本比率)を算出することができ、セグメントによる分類推計を可能とし、および本発明を、現推計手法の妥当性を確認するベンチマークモデルとして使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施形態に係る推計サーバ100の構成を詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る推計サーバの構成を示す図である。なお、
図1では、単一のコンピュータシステムを想定し、必要な機能構成だけを示している。そのため、推計サーバは複数台のサーバコンピュータから構成される分散型サーバコンピュータであってもよい。
【0017】
推計サーバ100は、CPU110にシステムバス115を介して、RAM111、入力装置112、出力装置113、通信制御装置114、および不揮発性記憶媒体(ROMやHDD等)である記憶装置116が接続された構成を有する。記憶装置116は、コミットメントライン引出率推計モデルの各機能を奏するためのソフトウェアプログラムを格納したプログラム格納領域と、当該ソフトウェアプログラムで取り扱うデータを格納したデータ格納領域とを備えている。以下に説明するプログラム格納領域の各手段は、実際は独立したソフトウェアプログラム、そのルーチンやコンポーネント等であり、CPU110によって記憶装置116から呼び出されRAM111のワークエリアに展開されて、データベース等を適宜参照しながら順次実行されることで、各機能を奏するものである。
【0018】
次に、記憶装置116におけるプログラム格納領域に格納されているソフトウェアプログラムは、本発明に関連するものだけを列挙すると、格付低下幅算出手段120、追加引出率算出手段121、データ集計手段122、および加重平均算出手段123を備えている。これらの手段は、CPU110によって実行される。
【0019】
格付低下幅算出手段120は、債務者ごとの格付の低下幅を算出する。格付低下幅とは、金融機関における独自の規定により設定される債務者の格付の低下した段階数である(例えば、13段階の格付で、最高の格付を「1」、最低の格付を「13(デフォルト)」とした場合、1→13に格付が低下した場合の格付低下幅は、12である)。推計モデルを年次更新する場合、1年前(過去)の格付と、現在の格付との低下幅を算出する。
【0020】
追加引出率算出手段121は、後述する引出実績データ記憶部130から追加引出実績データを抽出し、デフォルト先、非デフォルト格付低下先の各コミットメントライン追加引出率を算出する。ここで、デフォルト先とは直近1年間で格付がデフォルトになってしまった取引顧客のことをいう。また、非デフォルト格付低下先とは、デフォルト先以外の債務者のうち、直近1年間で格付が低下した債務者のことをいう。デフォルト先による推計モデルが従来のもので、さらに非デフォルト格付低下先を利用した推計モデルが本発明に係る推計モデルである。
【0021】
データ集計手段122は、算出したコミットメントライン追加引出率を、格付低下幅ごとに平均し、後述する格付低下幅別集計データ記憶部131に格納する。また、データ集計手段122は、格付ごとの、PD値(デフォルトする確率の予想値、表1参照)、債務者数、期待DF数を算出し、後述する格付別集計データ記憶部132に格納する。ここで、期待DF数とは、今後(例えば1年後)に格付がデフォルトになってしまうと予想される債務者数である。期待DF数は、PD値×債務者数で算出することができる。
【0022】
加重平均算出手段123は、算出したコミットメントライン追加引出率を、格付別の債務者数および格付別の期待DF数のそれぞれで加重平均値を算出し、後述する加重平均データ記憶部133に格納する。
【0023】
次に、記憶装置116におけるデータ格納領域は、本発明に関連するものだけを列挙すると、引出実績データ記憶部130、格付低下幅別集計データ記憶部131、格付別集計データ記憶部132、および加重平均データ記憶部133を備える。いずれも、記憶装置116内に確保された一定の記憶領域である。
【0024】
引出実績データ記憶部130は、引出額の実績データを格納する。
図3は、本発明の一実施形態に係る引出実績データ記憶部に格納されたデータを示す図である。
図3における引出実績データは融資枠内で行なわれた引出しごとの実績データであり、債務者を一意に示す「債務者ID」、引出し実行した日付を示す「引出日」、および引出し金額を示す「引出額」を格納する。本データは、引出しごとの実績データであるため、
図3で示されるように、「債務者ID」には同一IDが複数存在する場合もある。
【0025】
格付低下幅別集計データ記憶部131は、格付低下幅ごとのコミットメントライン追加引出率の平均データを格納する。
図4は、本発明の一実施形態に係る格付低下幅別集計データ記憶部に格納されたデータを示す図である。
図4における格付低下幅別集計データデータは、債務者の格付の低下した段階数を示す「格付低下幅」、および格付低下幅ごとのコミットメントライン追加引出率の平均値を示す「引出率推計値」を格納する。
【0026】
格付別集計データ記憶部132は、取引を依頼する利用顧客に係るデータを格納する。
図5は、本発明の一実施形態に係る格付別集計データ記憶部に格納されたデータを示す図である。
図5における格付別集計データは、集計時の格付を示す「格付」、表1に示される倒産する確率の予想値を示す「PD値」、格付ごとの債務者数を示す「債務者数」、および所定期間後(推計モデルを年次更新する場合、1年後)に格付がデフォルトになってしまう債務者の予想数を示す「期待DF数」を格納する。「期待DF数」は、前述した通り、債務者数×PD値で算出することができる。
【0027】
加重平均データ記憶部133は、格付別債務者数および期待DF数のそれぞれにおける、コミットメントライン追加引出率の加重平均データを格納する。
図6は、本発明の一実施形態に係る加重平均データ記憶部に格納されたデータを示す図である。
図6における加重平均データは、コミットメントライン追加引出率を格付別の債務者数で重み付けした平均値を示す「格付別債務者数加重平均」、およびコミットメントライン追加引出率を格付別の期待DF数で重み付けした平均値を示す「期待DF数加重平均」を格納する。
【0028】
次に、
図7および8のフローチャート、および
図3〜6のデータを参照して、本発明の一実施形態に係るコミットメントライン追加引出率集計処理を流れに沿って説明する。
図7は、本発明の一実施形態に係るコミットメントライン追加引出率集計処理を示すフローチャートである。本処理は、コミットメントライン追加引出率の推計モデルを確立することを目的とし、推計サーバ100において実行されるバッチ処理である。以下に説明する本処理は一実施形態であり、推計モデルの年次更新を行なうために1年に1回、実行することを想定している。
【0029】
まず、ステップ701にて、格付低下幅算出手段120は、債務者データ(図示せず)から債務者の格付を取得する。取得する格付は、現在の格付と、1年前の格付である。また、格付は、
図5に示されるような、最高の格付を「1」、最低の格付を「13(デフォルト)」とする13段階の格付であるが、これも一実施形態である。なお、本ステップでは、債務者1件分の格付を取得することを想定している。すなわち、本処理は、債務者1件分の処理が完了すると、次の債務者1件分の処理を実行し、これを繰り返すことにより、集計処理を行なうことを想定している。ただし、別の実施形態では、全件分の債務者の格付を取得し、集計処理を行なうこともできる。
【0030】
次に、格付低下幅算出手段120は、ステップ701で取得した、現在の格付と1年前の格付との差異から、格付低下幅を算出する(ステップ702)。例えば、1→DFに格付が低下した場合の格付低下幅は、12である。現在の格付と1年前の格付とが同じ場合の低下幅は0、格付が上がっている場合、例えば、低下幅はマイナス値になる(例えば、4B→3に上がった場合の低下幅は−2である)。
【0031】
次に、格付低下幅算出手段120は、ステップ702で算出した格付低下幅に基づいて、債務者がデフォルト先、非デフォルト格付低下先、またはその他であるかを判定する(ステップ703)。ここで、デフォルト先とは格付が低下したものの内、現在の格付がデフォルトになってしまった債務者である。また、非デフォルト格付低下先とは、デフォルト先とは格付が低下したものの内、現在の格付がデフォルト以外の格付である債務者である。その他は、格付が1年前と変わっていない債務者、および格付が上がった債務者である。従来の推計モデルはデフォルト先のみを対象とし、本推計モデルでは、格付が低下した債務者(すなわち、デフォルト先+非デフォルト格付低下先)を推計対象としているため、このような判定を行なう。
【0032】
ステップ703の判定結果が、デフォルト先か非デフォルト格付低下先かである場合(すなわち、格付が低下している場合)、ステップ704のYesルートに進み、追加引出率算出手段121は、引出実績データ記憶部130から債務者の直近1年以内の追加引出実績データを抽出する(ステップ705)。具体的には、引出実績データ(
図3)に対し、対象債務者の債務者IDを検索キーとして、特定の基準日(例えば3月末日)における直近1年の追加引出額を取得する。複数年にわたる実績データが取得できる場合は、取得できる追加引出額も複数分になる。なお、直近1年以内の引出実績データが存在しない場合、追加引出額は0円となる。
【0033】
次に、追加引出率算出手段121は、取得した追加引出実績データ(追加引出額)等に基づいて、コミットメントライン追加引出率を算出する(ステップ706)。具体的には、
図2に示すように、現在の使用済み額から1年前の使用済み額を引いた「追加引出額」を、1年前の「未使用額」で割ることにより、コミットメントライン追加引出率を算出することができる。
【0034】
ステップ706の後、またはステップ703の判定結果がデフォルト先か非デフォルト格付低下先かでない場合(すなわち、格付が変わらないか上がっている場合)でステップ704のYesルートに進むと、格付低下幅算出手段120は、次の債務者が存在するか否かを判定する(ステップ707)。次の債務者が存在すると判定された場合、Yesルートに進み、格付低下幅算出手段120は、債務者データ(図示せず)から次の債務者の格付を取得する(ステップ708)。なお、取得する格付については、ステップ701の説明と同様である。その後、次の債務者が存在しなくなるまで、ステップ702から708を繰り返す。
【0035】
ステップ707にて、次の債務者は存在しないと判定された場合、Noルートに進み、各データ集計処理を実行する(ステップ709)。ステップ709のデータ集計処理については、
図8を用いて後述する。ステップ709の後、本処理は終了する。
【0036】
次に、
図8のフローチャートを参照して、ステップ709のデータ集計処理の詳細を説明する。
図8は、本発明の一実施形態に係るコミットメントライン追加引出率集計処理の詳細を示すフローチャートである。本処理は、ステップ704においてデフォルト先、あまたは非デフォルト格付低下先と判定された債務者(すなわち、格付が低下した債務者)を処理対象としている。
【0037】
まず、ステップ801にて、データ集計手段122は、ステップ706で算出したコミットメントライン追加引出率を、ステップ702で算出した格付低下幅ごとに平均し、格付低下幅別集計データ(
図4)を作成し、格付低下幅別集計データ記憶部131に格納する。
図4における「引出率推計値」が格付低下幅ごとのコミットメントライン追加引出率の平均値であり、これが本推計モデルでの格付低下幅ごとの1つの指標とすることができる。なお、ステップ801にて用いる、格付低下幅ごとのコミットメントライン追加引出率の数(すなわち、債務者数)が十分でない可能性もある。そのため、さらに回帰分析により、各格付低下幅と、各格付低下幅に対応したコミットメントライン追加引出率との関係性を定式化し、引出率推計値を補正(推計)することもできる。例えば、回帰分析により、各格付低下幅と、各格付低下幅に対応したコミットメントライン追加引出率の平均値から、指数関数y=ae
bxといった関係式(x:コミットメントライン追加引出率、y:格付低下幅)を導くことができる。この関係式に、各格付低下幅を当てはめていくことにより、格付低下幅ごとの補正されたコミットメントライン追加引出率の平均値を推計することができる。この推計値を、引出率推計値として、今後のステップに用いることができる。
【0038】
次に、データ集計手段122は、格付ごとの、PD値(倒産する確率の予想値、表1参照)、債務者数、期待DF数を算出し、格付別集計データ(
図5)を作成し、格付別集計データ記憶部132に格納する(ステップ802)。
図5における「PD値」は、金融機関において格付けごとに推計した値である。
図5における「債務者数」は格付ごとの債務者の合計数である。
図5における「期待DF値」は、格付ごとのPD値×債務者数で算出することができる。なお、ステップ801と802の処理順は逆であってもよい。
【0039】
次に、加重平均算出手段123は、ステップ801で算出した引出率推定値を、格付別の債務者数および格付別の期待DF数のそれぞれで加重平均し、加重平均データ(
図6)を作成し、加重平均データ記憶部133に格納する(ステップ803)。
図6における「格付別債務者数加重平均」は、格付ごとに引出率推計値(
図4)×債務者数(
図5)を算出し、各算出値の合計(75%×100社+60%×500社+50%×1000社+40%×2000社+35%×3000社+・・・+5%×3000社)を、債務者の合計で割ることにより算出することができる。また、「期待DF値加重平均」は、格付ごとに引出率推計値(
図4)×期待DF数(
図5)を算出し、各算出値の合計(75%×0社+60%×0社+50%×5社+40%×10社+35%×10社+・・・+5%×1000社)を、期待DF数の合計で割ることにより算出することができる。ステップ803の後、本処理は終了し、
図7のフローチャートに戻る。
【0040】
なお、ステップ803で算出した、コミットメントライン追加引出率の格付別債務者数加重平均(20.36%)および期待DF値加重平均(9.74%)が本推計モデルでの推計値である。これらの推計値を、自己資本比率を算出する際の入力パラメータ(コミットメントライン追加引出率)として用いることにより、安定性の高い推計値を算出することができる。
【0041】
以上より、本発明により、本発明により、推計値としてより安定性の高いコミットメントライン追加引出率(延いては自己資本比率)を算出することができ、セグメントによる分類推計を可能とし、および本発明を、現推計手法の妥当性を確認するベンチマークモデルとして使用することができる。
【課題】現状のコミットメントライン追加引出率による推計手法は、数少ないデフォルト実績に依拠しているため、(1)推計値として不安定になってしまう可能性がある(例えば、推計モデルを年次更新する場合、そのブレ幅が大きくなる場合がある)、(2)セグメント(商品種別、格付、業種等)による分類推計が困難である、(3)現推計手法の妥当性を確認するベンチマークモデルが必要である、等幾つかの課題がある。