(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第2のグラフト化ポリブタジエンゴム粒径が0.35〜0.45ミクロンであり、前記第1のグラフト化ポリブタジエンゴム粒径が0.15〜0.25ミクロンである、請求項1に記載の方法。
前記一組の標的ポリマーが、ポリカルボナート、ナイロン、ポリブチレンテレフタラート(PBT)、ポリメチルメタクリラート(PMMA)、及びポリエチレンテレフタラート(PET)のうち少なくとも1つを包含する、請求項6に記載の方法。
スチレン及びアクリロニトリルのモノマーをグラフトされた加硫天然ゴムとグラフト化ポリブタジエンゴムとから作られた天然ゴムベースのABS粉末:組成物全体の20〜60重量部、並びに
天然ゴムベースのABS−標的ポリマーブレンドを形成するために前記天然ゴムベースのABS粉末と組み合わされる標的ポリマー:組成物全体の40〜80重量部
を含む配合された組成物であって、
前記加硫天然ゴムがジビニルベンゼンによって架橋された天然ゴムであり、
前記グラフト化ポリブタジエンゴムが、第1のグラフト化ポリブタジエンゴム粒径を有する第1のグラフト化ポリブタジエンゴム及び第2のグラフト化ポリブタジエンゴム粒径を有する第2のグラフト化ポリブタジエンゴムを含み、前記第2のグラフト化ポリブタジエンゴム粒径が0.35〜0.45ミクロンであり、前記第1のグラフト化ポリブタジエンゴム粒径が0.15〜0.25ミクロンである、
前記組成物。
前記標的ポリマーが、ポリカルボナート、ナイロン、ポリブチレンテレフタラート(PBT)、ポリメチルメタクリラート(PMMA)、及びポリエチレンテレフタラート(PET)のうち少なくとも1つを包含する、請求項14に記載の組成物。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本開示に関連して、用語「組」は、既知の数学的定義に従って(例えば、An Introduction to Mathematical Reasoning:Numbers, Sets,and Functions,“Chapter 11:Properties of Finite Sets”、Peter J. Eccles著、Cambridge University Press(1998)(例えば、ページ140で示される)で説明されている方式に対応する方式で)、少なくとも1の濃度を数学的に示す要素の非空有限組織に相当するか又はそのように定義される(すなわち、本明細書で定義される組は、一重若しくは単一要素の組、又は複数要素の組に相当し得る)。本開示の一態様によると、代表的な組の要素は、材料若しくは化合物、構成要素、若しくは成分;材料若しくは化合物、構成要素、若しくは成分の特性若しくは特徴;プロセス部分:又は値を包含するか又はこれらであることができる。
【0016】
本開示の実施形態による特定のポリマー組成物、ブレンド、樹脂、又は製品(例えば、熱可塑性製品)は、天然ゴムベースのABS、並びに1つ以上の追加ポリマー構成要素又は成分(例えば、ポリカルボナート)を包含する。以下で更に詳述するように、天然ゴムベースのABS−ポリマーブレンド又は製品の形成の前駆体として、本開示の一実施形態による天然ゴムベースのABSは、粉末形態で存在することができる。
【0017】
本開示の一実施形態による組成物は、1つ以上の追加成分、例えばエチレン−ビス−ステアルアミド、シリコーン(EBS)、及びステアリン酸カルシウム(Ca−st)のうち1つ以上を包含することもできる。本開示の特定の代表的実施形態は、ポリカルボナート−天然ゴムベースのABSブレンドに関して本開示において記載しているが、天然ゴムベースのABSとブレンドした1つ以上の他の又は追加のポリマーを包含するその他の組成物も、本開示による実施形態及び後述の請求項に包含される。
【0018】
本開示の実施形態による天然ゴムベースのABS粉末は、環境への悪影響を実質的に低減することができる。これは主に、天然ゴムを使用すること及び望ましくない又は大量の化学汚染物質(例えば、合成ゴム製造プロセスに関連する化学汚染物質)を伴う合成ゴムの使用を避けることから得られる。本開示の複数の実施形態において、天然ゴムは加硫プロセスの前に加工を全く必要としないか又は本質的に必要としない。この結果、製造コストが低下し、化学汚染物質の放出が低減される。更に、本開示の様々な実施形態によって提供される天然ゴムベースのABS粉末は、ナイロン、ポリブチレンテレフタラート(PBT)、ポリメチルメタクリラート(PMMA)、及びポリエチレンテレフタラート(PET)が挙げられるがこれらに限定されない他のポリマー及び/又はプラスチック化合物、組成物、若しくは材料との相溶性に非常に優れるか、優れるか又は比較的優れる。
【0019】
本開示のいくつかの実施形態によるプロセスは、ジビニルベンゼン(DVB)のような架橋剤を天然ゴムと混合して加硫天然ゴムを製造する工程を伴う加硫プロセスを包含する。重合プロセスはこの加硫プロセスに続き、この重合プロセスは、生天然ゴムベースのABS粉末を製造するためのスチレン及びアクリロニトリルの使用を伴う。加硫プロセスにおいてDVBのような適切な架橋剤を使用することで、製造される加硫ゴムは、液体溶液、懸濁液又は乳液として存在できる実質的に液体の形態である。結果として、従来方法で重合プロセスの前に必要とされる中間工程をなくすことができる。重合プロセスに続いて、フロキュレーションプロセス又は反応が行われ、それによって天然ゴムベースのABS粉末が一構成成分として製造される。
【0020】
加硫プロセスは、複数の乳化剤と触媒との混合物の一部を、天然ゴム、架橋剤及び少なくとも1つの脱酸素剤と混合、相互作用、反応、組合せ、連結又はブレンドする工程を伴う。加硫プロセスは中間生成物、又はより具体的には、加硫天然ゴムの生成を促進する。
【0021】
次の重合プロセスにおいて、反応器内で加硫ゴムを、安定剤、少なくとも1つの脱酸素剤、スチレン及びアクリロニトリルのモノマー溶液、移動剤、触媒溶液及び乳化剤溶液と混合する。重合プロセスは、グラフト化天然ゴムを製造、産生、回収又は生成することができる。
【0022】
フロキュレーションプロセスは、ラテックスマスターバッチを製造、回収又は産生する工程、及び該ラテックスマスターバッチの一部を凝固剤及び水と混合して、生天然ゴムベースのABS粉末を製造、回収又は産生する工程を包含する。フロキュレーションに関連する後続プロセス部分は、本開示の実施形態による天然ゴムベースのABS組成物又は構成成分、例えば、天然ゴムベースのABS粉末を製造、産生、回収又は生成するための濾過及び乾燥を包含する。天然ゴムベースのABS粉末は、固体状態形態、例えば粉末形態であることができる。従って、プラスチック製品を作製又は製造するために、天然ゴムベースのABS粉末をポリマー又はプラスチックベースの粉末のような他のプラスチック又はポリマー組成物とすぐに組合せること又は容易に混合することができる。従って、本開示の実施形態の天然ゴムベースのABS粉末とその他の一般的なプラスチック又はプラスチックベースの粉末との間に良好な均一性又は均質性を達成又は確立することができる。これは、天然ゴムベースのABS粉末を、既存のプラスチック又はプラスチック粉末と共に使用、組合せ、適用すること及び/又は少なくとも部分的に置換することを促進するか又は可能にする。
【0023】
フロキュレーションプロセスに続いて、天然ゴムベースのABS粉末に、1つ以上のその他のポリマーを伴うコンパウンディングプロセスを実施し、最終的にABS/PCブレンド又は熱可塑性製品のような天然ゴムベースのポリマーブレンドを製造、産生、回収又は生成することができる。本開示の複数の実施形態によって提供される天然ゴムベースのABS粉末のような天然ゴムベースのABS組成物の使用により、天然ゴムベースのABSを含まないか又は排除した従来のポリマーブレンドと比較して、増大した機械的強度及び/又は強化された物理的特性を示すABS/PC又はその他の天然ゴムベースのABS/標的ポリマー組成物、ブレンド、又は製品を製造、産生又は生成することができる。
【0024】
本開示の代表的実施形態は、本開示で後に詳述する天然ゴムベースのABS−ポリマーブレンド又は製品(例えば、PC熱可塑性製品)を調製、製造及び/又は作製するための方法、プロセス及び/又は技法に関する。しかし、これは、操作特性、機能特性、又は性能特性のような本開示の様々な実施形態に一般的な基本的原則が所望又は必要とされる他の用途から本開示の様々な実施形態を除外するものではない。
【0025】
代表的加硫プロセスの態様
天然ゴムは、架橋を有さず、ポリブタジエンのような合成ゴムと比較して物理的に柔軟で弱い。本開示のいくつかの実施形態によると、天然ゴムが関与する架橋又は加硫プロセス110を最初に実施する。当業者に理解されるように、加硫プロセスは一般的にゴム、例えば天然ゴムの引張及び/又は物理的強度の強化及び/又は補強を伴う。具体的には、加硫は、ゴムの物理的特性を強化するためにゴム分子を互いに架橋させるプロセスである。特に、架橋はゴムの弾性及び強度を約10倍に増大する。
【0026】
従来のゴム加硫方法は、液体ゴムを硫黄又は硫黄含有化合物と共に加熱する工程を伴う。このような実務の例は、Handbook of Plastic Elastomer & Composites(4
th Edition.Charles A.Harper編、The Mc Graw−Hill Companiesより出版)及びAdvanced Rubber Composites(G.Heinrich編、Springerより出版)に記載されている。硫黄又は硫黄含有化合物は架橋剤又は加硫剤として使用される。しかし、本開示のいくつかの実施形態において、ジビニルベンゼン(DVB)を架橋剤又は加硫剤として使用する。DVBを架橋剤又は加硫剤として使用すると、液体溶液、懸濁液又は乳液として存在できる実質的に液体形態の加硫天然ゴムが製造、回収又は産生される。これにより、重合プロセス120の前の中間工程の必要性がなくなる。DVBを架橋剤又は加硫剤として使用することによって、加硫プロセスの結果としての生成物、例えば加硫天然ゴムを、次の重合プロセス120に直接使用することができる。これにより、重合プロセス120の前に追加のプロセスを有する必要又は要求がなくなる。追加的に又は代替的に、過酸化物、例えば、ジアシルペルオキシルエステル、ジアルキルペルオキシルエステル、及び/又はペルオキシケタール、例えば、DCP、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)を架橋剤として使用できる。
【0027】
本開示による加硫プロセス110は、多数の又は一組の異なる出発物質、試薬又は反応物を使用することができる。いくつかの実施形態において、出発物質、試薬及び/又は反応物の組は、天然ゴム、複数の乳化剤、触媒、少なくとも1つの脱酸素剤及び架橋剤を包含する。以下の加硫に関する考察において、天然ゴム、複数の乳化剤、触媒、少なくとも1つの脱酸素剤及び架橋剤を包含する出発物質、試薬及び/又は反応物の組の量は、加硫前の天然ゴムを基準にした重量部で表される。
【0028】
いくつかの実施形態において、水酸化カリウム(KOH)及びオレイン酸等の複数の乳化剤を、加硫プロセス110の間に使用できる。更に、tert−ブチルヒドロペルオキシド(TBHP)のような有機過酸化物を触媒として加硫プロセス110に使用できる。更に、ジビニルベンゼン(DVB)のような架橋剤を使用できる。少なくとも1つの脱酸素剤は、ラクトース、硫酸鉄七水和物(FeSO
4・7H
2O)及びピロリン酸四ナトリウム(TSPP)のうち少なくとも1つを包含する。
【0029】
様々な実施形態において、多数の又は一組の出発物質、試薬又は反応物は、約90〜100重量部、例えば約100重量部の、天然ゴム;約0.1〜0.4重量部、例えば約0.2重量部の、KOH;約0.5〜2重量部、例えば約0.85重量部の、オレイン酸;約1〜3重量部、例えば約2重量部の、TBHP;約0.1〜1重量部、例えば0.5重量部の、DVB;約0.07〜0.42重量部、例えば0.28重量部の、ラクトース;約0.001〜0.006重量部、例えば0.004重量部の、FeSO
4・7H
2O;及び約0.04〜0.24重量部、例えば0.16重量部の、TSPPを包含する。
【0030】
実施形態の詳細に応じて、出発物質、試薬及び/又は反応物の相対量及び/又は濃度は変動し得る。例えば、乳化剤、触媒、少なくとも1つの脱酸素剤及び/又は架橋剤のモル比は、加硫天然ゴムの所望の若しくは標的とする強度又は期待される強度によって変動し得る。
【0031】
加硫プロセス110は、反応器、例えば、20リットル反応器内で遂行、実行又は実施することができる。しかし、異なる容積、形状及び/又はサイズの他の反応器も加硫プロセスに使用できることを当業者は理解するはずである。
【0032】
加硫プロセス110は、加硫反応器の温度を上昇させる、変更及び/又は維持する工程を包含することができ、これは関連技術分野の当業者に理解される方式の加熱システム(例えば、抵抗、放射、対流、投込式若しくはマイクロ波加熱素子、又は加熱炉、加熱ジャケット又はその他の当該技術分野において反応器の温度の上昇、変更及び/又は維持で知られる加熱装置等)によるものであることができる。
【0033】
様々な実施形態において、複数の乳化剤と触媒の混合物が調製又は製造される。KOH及びオレイン酸を包含する複数の乳化剤を混合して乳液混合物を生成した後に、TBHPのような触媒を該乳液混合物に添加して、乳化剤−触媒混合物を生成する。この乳化剤−触媒混合物の第1の部分を、室温又は約20〜30℃で稼働している加硫反応器に導入することができる。乳化剤−触媒の第1部分は、調製される全体的又は最終的な体積又は量の約5%を包含し得る。
【0034】
続いて、天然ゴムを加硫反応器に導入する。天然ゴムはラテックスゴムを包含し、実質的に液体の性質である。乳化剤−触媒混合物の第1部分及び天然ゴムを加硫反応器に添加すると同時に、撹拌機、磁気撹拌機又はかきまぜ機を用いて加硫反応器の内容物を撹拌して、かかる内容物を混合及び/又は均質化することができる。その後、DVBを包含する架橋剤並びにFeSO
4・7H
2O及びTSPPのうち少なくとも1つを包含する少なくとも1つの脱酸素剤を加硫反応器に導入し、混合する。乳化剤−触媒混合物の一部として前に添加したKOH及びオレイン酸は、DVBと天然ゴムとの混合物を安定化する役割を果たし、TBHPは加硫プロセス110を促進する役割を果たす。少なくとも1つの脱酸素剤を加硫反応器に導入することによって、加硫プロセス110の操作温度又は反応温度が低下、低減又は下降し得る。
【0035】
少なくとも1つの脱酸素剤の導入に続いて、加硫反応器の温度を約65〜75℃、例えば、約69〜71℃まで増大又は上昇させる。この温度増大又は上昇は約25〜35分にわたって、例えば、約30分にわたって実施できる。
【0036】
温度が約69〜71℃に上昇しているときに、上記乳化剤−触媒混合物の全体的又は最終的な体積又は量のうち第2の部分又は残りの部分、例えば調製した全体的又は最終的な体積又は量の95%を、約1時間にわたって又は約1時間のオーダーで加硫反応器に導入(例えば、徐々に又は漸次導入)する。乳化剤−触媒混合物の第2又は残りの部分の反応器への導入が完了すると、加硫プロセス110の完了の促進及び達成のうち1つのため、反応器及び/又は反応器内容物を、数時間、例えば約7時間の間、実質的に不変の、一貫した、又は一定の状態に維持するか又は放置する。
【0037】
様々な実施形態において、加硫プロセス110の第1プロセス部分は中間生成物、より具体的には加硫天然ゴムを生成する。本開示のいくつかの実施形態による加硫天然ゴムは、実質的に液体の性質であり、液体溶液、懸濁液又は乳液として存在し得る。これは、得られる加硫ゴムが固体形態である従来のゴム加硫技法と異なり且つ違っている。
【0038】
本開示は、天然ゴムベースのABS粉末(例えば、最終的な又は得られる天然ゴムベースのABS組成物又は製品)の作製又は製造のための重合プロセスを包含する。加硫天然ゴムが液体溶液、懸濁液又は乳液として存在することで、重合プロセス120の前の中間プロセスがなくなり、続く重合プロセス120が促進される。
【0039】
代表的重合プロセスの態様
続いて、重合プロセス120を実施する。当業者に理解されるように、重合プロセス120の間に、モノマー分子は化学的に反応してポリマー鎖を形成する。ポリマー鎖は1つ以上のモノマー種を包含し得る。グラフト重合は、側鎖が主鎖と構造的に異なるポリマーの製造を特に満たすプロセスである。
【0040】
多数の異なる出発物質、試薬又は反応物を本開示による重合プロセス120に使用できる。いくつかの実施形態において、出発物質、試薬及び/又は反応物の組は、加硫天然ゴム、安定化剤、少なくとも1つの脱酸素剤、モノマー、移動剤、触媒及び複数の乳化剤を包含する。以下の記載において、加硫天然ゴム、安定化剤、少なくとも1つの脱酸素剤、モノマー、移動剤、触媒及び複数の乳化剤を包含する出発物質、試薬及び/又は反応物の組の量は、天然ゴムのスチレン−アクリロニトリルコポリマーグラフト化ラテックスを基準とした重量部で表される。
【0041】
様々な実施形態において、水酸化アンモニウム(NH
4OH)を包含する安定化剤を、重合プロセス120に使用する。少なくとも1つの脱酸素剤は、ラクトース、硫化鉄七水和物(FeSO
4・7H
2O)及びピロリン酸四ナトリウム(TSPP)のうち少なくとも1つを包含する。更に、スチレン及びアクリロニトリルを包含するモノマーを、重合プロセス120に使用できる。重合プロセス120に使用する移動剤としては、tert−ドデシルメルカプタン(TDM)が挙げられる。触媒としては、有機過酸化物、例えばtert−ブチルヒドロペルオキシド(TBHP)が挙げられる。TBHPは69〜70%水溶液として供給できる。重合プロセス120のための複数の乳化剤は、水酸化カリウム(KOH)及びオレイン酸を包含する。
【0042】
様々な実施形態において、多数の又は一組の出発物質、試薬又は反応物は、約50〜70重量部、例えば約60重量部の、加硫天然ゴム;約1〜6%重量部、例えば約3%重量部の、水酸化アンモニウム(NH
4OH);約0.2〜0.4重量部、例えば0.3重量部の、ラクトース;約0.0005〜0.0015重量部、例えば、0.001重量部の、FeSO
4・7H
2O;約0.05〜0.15重量部、例えば0.1重量部の、TSPP;約25〜35重量部、例えば30重量部の、スチレン;約5〜15重量部、例えば10重量部の、アクリロニトリル;約0.1〜0.3重量部、例えば0.2重量部の、TDM;約0.1〜0.2重量部、例えば0.136重量部の、TBHP;約0.15〜0.25重量部、例えば0.203重量部の、KOH;及び約0.5〜1.5重量部、例えば1.0重量部の、オレイン酸を包含する。
【0043】
重合プロセス120は、反応器、例えば、20リットル反応器内で遂行、実行又は実施することができる。しかし、異なる容積、形状及び/又はサイズの他の反応器も重合プロセス120に使用できることを当業者は理解するはずである。
【0044】
重合プロセス120は、重合反応器の温度を上昇させる、変更及び/又は維持する工程を包含することができ、これは関連技術分野の当業者に理解される方式で、上記と同一又は類似の方式の加熱システムによるものであることができる。
【0045】
代表的実施形態において、加硫天然ゴムを約20〜30℃の室温で稼働している重合反応器に導入する。加硫天然ゴムは実質的に液体形態であり、液体溶液、懸濁液又は乳液を包含する。その後、NH
4OHのような安定化剤を重合反応器に加える。安定化剤の役割は、分解、例えば加硫天然ゴムの熱分解を、遅延、妨害又は低速化して、加硫天然ゴムが分解又は著しく分解される前に中間生成物を形成し得るようにすることである。
【0046】
安定化剤を添加又は導入した後、重合反応器温度を約60〜70℃、例えば、約64〜66℃まで増大又は上昇させる。この温度増大又は増加は数十分、例えば約25〜35分(例えば、約30分)にわたって実施できる。
【0047】
温度が約64〜66℃に上昇及び/又は維持されているときに、ラクトース、FeSO
4・7H
2O及びTSPPのうち少なくとも1つを包含する少なくとも1つの脱酸素剤を重合反応器に導入する。この少なくとも1つの脱酸素剤は、反応の操作温度を低下させる一因となる。様々な実施形態において、脱酸素剤は任意の順序で反応器に添加できる(すなわち、これらの脱酸素剤を特定の順序で添加する必要はない)。例えば、いくつかの実施形態において、ラクトースはFeSO
4・7H
2Oの前に導入され、その後TSPPが導入される。他の実施形態では、FeSO
4・7H
2Oがラクトース及びTSPPの前に導入される。
【0048】
続いて、スチレン及びアクリロニトリルのモノマー溶液を調製する。いくつかの実施形態において、TDMのような移動剤をモノマー溶液に導入できる。実施形態の詳細に応じて、1つ以上の有機溶媒を、スチレン及び/又はアクリロニトリル及び/又はTDMと共に使用するか又はこれらに添加することができる。有機溶媒としては、アセトン、ジエチルエーテル、酢酸エチル、エタノール、石油エーテル及びジクロロメタンが挙げられる。TDMは重合プロセスを助長し、多数の実施形態において、重合プロセスを促進する。続いて、TDM有り又は無しのモノマー溶液を、約64〜66℃に維持した重合反応器に導入し、混合する。
【0049】
TBHPの触媒溶液並びにKOHとオレイン酸とを包含する複数の乳化剤を含む乳化剤溶液も、重合反応器に導入することができる。TBHPは重合プロセスを開始する役割を果たす。本開示の複数の実施形態において、TBHP溶液、KOH乳化剤溶液、及びオレイン酸は、任意の順序で添加できる(すなわち、TBHPの溶液並びにKOH及びオレイン酸の乳化剤溶液を特定の順序で添加する必要はない)。重合反応器の内容物は、撹拌機、磁気撹拌機又はかきまぜ機を用いて追加的に撹拌し、かかる内容部を混合及び/又は均質化することができる。
【0050】
触媒溶液及び乳化剤溶液の導入の後、重合反応器の内容物を数時間、例えば、約4〜5時間(例えば、4.5時間)均質化させる(例えば、撹拌により)。その後、重合反応器の温度を、約25〜35分、例えば約30分かけて、約65〜75℃、例えば約70℃まで上昇させる。
【0051】
重合反応器の温度が約70℃に達し、及び/又は維持されているときに、重合プロセス120の完了の促進及び達成のうち1つのために約2.5〜3.5時間、例えば3時間の間、重合反応器の反応又は内容物を、その時点の、実質的に不変、若しくは一貫した状態に維持するか又は放置することができる。続いて、重合反応器を冷却し、中間生成物を得る。
【0052】
多数の実施形態において、重合プロセス120の第2プロセス部分は、グラフト化され、天然ゴムを一成分として包含する実質的にラテックスの形態の中間生成物を生成する。従って、この重合プロセス120によって生成する又は得られる中間生成物はグラフト化天然ゴムを包含する。
【0053】
代表的フロキュレーションプロセスの態様
重合プロセス120に続いて、フロキュレーションプロセス130を実施する。当業者に理解されるように、フロキュレーションは溶液の分離を指す。フロキュレーションは、懸濁液中にコロイドを形成するプロセスであり、フロキュレーション中に、微小粒子はフロックに集塊又は凝集する。フロックは懸濁液の上に浮上又は累積するか、又は懸濁液の底に沈降する。フロックは、後で濾過プロセスによって容易に分離又は回収できる。
【0054】
本開示の代表的実施形態において、フロキュレーションプロセス130は、ラテックスマスターバッチを製造、回収又は産生する部分を包含する。
【0055】
本開示の複数の実施形態によるフロキュレーションプロセス130には、多数の又は一組の異なる出発物質、試薬又は反応物を使用できる。いくつかの実施形態において、出発物質、試薬及び/又は反応物の組は、グラフト化天然ゴム、一組のグラフト化ポリブタジエンゴム、乳液樹脂、金属不活性化剤、少なくとも1つの色安定剤、酸化防止剤及び凝固剤を包含する。多数の実施形態において、一組のグラフト化ポリブタジエンゴムは、少なくとも第1のグラフト化ポリブタジエンゴム及び第2のグラフト化ポリブタジエンゴム、並びに場合によっては追加のグラフト化ポリブタジエンゴムを包含する。本開示の一実施形態による代表的フロキュレーションプロセス130に関する以下の考察において、グラフト化天然ゴム、複数のグラフト化ポリブタジエンゴム、乳液樹脂、金属不活性化剤、少なくとも1つの色安定剤、酸化防止剤及び凝固剤を包含する出発物質、試薬及び/又は反応物の組の量は、粉末天然ゴムを基準にした重量部で表される。
【0056】
いくつかの実施形態において、小粒径グラフト化ポリブタジエンゴム(約0.1〜0.2μm)又は中粒径グラフト化ポリブタジエンゴム(約0.3〜0.4μm)を包含するグラフト化ポリブタジエンゴムを、フロキュレーションプロセス130に使用できる。第1及び/又は第2のグラフト化ポリブタジエンゴムは、小粒径及び/又は中粒径グラフト化ポリブタジエンゴムであることができる。乳液樹脂は、スチレン−アクリロニトリルの乳液混合物(E SAN)を包含する。更に、金属不活性化剤は水酸化カリウム(KOH)を包含し;少なくとも1つの色安定剤はピロリン酸四ナトリウム(TSPP)、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)及び水酸化カリウム(KOH)を包含し;酸化防止剤は、フェノール系酸化防止剤、例えばOctolite 1219及びWingstay Lフェノール系酸化防止剤を包含し;凝固剤は金属硫酸塩、例えば、硫酸マグネシウム七水和物及び/又は硫酸マグネシウム七水和物(MgSO
4・7H
2O)と硫酸(H
2SO
4)との混合物を包含する。
【0057】
本開示の代表的実施形態において、フロキュレーションプロセス130における、出発物質、試薬又は反応物の組は、約10〜20重量部、例えば約16.4重量部の、グラフト化天然ゴム;約20〜30重量部、例えば約24.6重量部の、第1のグラフト化ポリブタジエンゴム;約35〜45重量部、例えば約41重量部の、第2のグラフト化ポリブタジエンゴム;約15〜25重量部、例えば18重量部の、スチレン−アクリロニトリル乳液混合物(E SAN);約0.25〜0.75重量部、例えば0.5重量部の、KOH;約0.05〜0.5重量部、例えば0.1重量部の、TSPP;約0.05〜0.5重量部、例えば0.1重量部の、SDS;約0.1〜1重量部、例えば0.21重量部の、KOH;約0.1〜1重量部、例えば0.5重量部の、Wingstay Lフェノール系酸化防止剤;及び約3〜8重量部、例えば4.2重量部の、MgSO
4・7H
2Oを包含する。
【0058】
フロキュレーションプロセス部分130は、一組の反応器、例えば20リットル反応器により遂行、実行又は実施することができる。しかし、異なる容積、形状及び/又はサイズの他の反応器もフロキュレーションプロセス130に使用できることを当業者は理解するはずである。一部の実施形態において、第1フロキュレーション反応器及び第2フロキュレーション反応器を包含する複数のフロキュレーション反応器が使用される。
【0059】
以下の詳述するフロキュレーションプロセス130は、フロキュレーション反応器の温度を上昇させる、変更及び/又は維持する工程を伴うことができ、これは関連技術分野の当業者に理解される方式(例えば、上記の加熱システム又は加熱素子と同一又は類似の方式)であることができる。
【0060】
本開示のいくつかの実施形態によると、重合プロセス120から得られたグラフト化天然ゴムを、約20〜30℃の室温で稼働している第1フロキュレーション反応器に導入する。グラフト化天然ゴムは、液体溶液、懸濁液又は乳液のような実質的に液体の形態である。実施形態の詳細に応じて、グラフト化天然ゴムの量は、最終生成物を生成するように改変、変動又は変更することができ、最終生成物は、特定の特徴を示す天然ゴムベースの粉末を包含する。例えば、大量のグラフト化天然ゴムからは、高い衝撃強度及び高い伸びを有する天然ゴムベースの粉末が得られるが、少量のグラフト化天然ゴムからは、高い引張強度と伸びのバランスがとれた天然ゴムベースの粉末が得られる。
【0061】
その後、1つ以上のポリブタジエンゴムが第1のフロキュレーション反応器に導入される。例えば、複数のポリブタジエンゴムは、第1のグラフト化ポリブタジエンゴム及び第2のグラフト化ポリブタジエンゴムを包含し得る。第1及び/又は第2のグラフト化ポリブタジエンゴムの特性及び/又は量は、得られる天然ゴムベースのABS生成物の物理的特徴に影響し、該特徴を改変、変動又は変更し得る。例えば、増大した粒径又はより大きい粒径の第1のグラフト化ポリブタジエンゴムを増量又は多量にすると、最終生成物の衝撃強度に影響し得る(例えば、増大した又は高い衝撃強度を生じる)のに対し、低減した粒径又はより小さい粒径の第2のグラフト化ポリブタジエンゴムを増量又は多量にすると、最終生成物の光沢に影響し得る(例えば、増大した又は高い光沢を生じる)。第1及び/又は第2のグラフト化ポリブタジエンゴムの特性及び/又は量を変えることによって、得られる天然ゴムベースのABS粉末の特性をそれに従って改変、変動又は変更することができる。第1及び/又は第2のグラフト化ポリブタジエンゴムの種類、特性及び/又は量に応じて、得られる天然ゴムベースのABS粉末の特性を、例えば意図する方式で(例えば、検討中の特定の製品使用環境又は用途に適する方式で)改変、変動又は変更することができる。
【0062】
第1のグラフト化ポリブタジエンゴム及び第2のグラフト化ポリブタジエンゴムの添加に続いて;E SAN、KOH(金属不活性化剤);TSPP、SDS及びKOHのうち少なくとも1つを包含する少なくとも1つの色安定剤;及び酸化防止剤を、第1フロキュレーション反応器に加える。第1フロキュレーション反応器の内容物は、撹拌機、磁気撹拌機又はかきまぜ機を用いて撹拌し、かかる内容物を混合及び/又は均質化することができる。
【0063】
KOH(金属不活性化剤)は、反応混合物中の金属イオン、特に鉄イオンを不活性化することによって流体を安定化する役割を果たす。鉄イオンは、重合プロセスにおけるFeSO
4・7H
2Oとラクトースとの反応から生じ、反応混合物中に残り得る。少なくとも1つの色安定剤は、重合プロセスからの残留触媒(TBHP)の存在による分解を防止する役割を果たし、この分解は反応混合物の変色を生じ得る。酸化防止剤は、得られる天然ゴムベースのABS粉末の分解の防止に有用である。これは、得られる天然ゴムベースのABS粉末の寿命を延長し得る。
【0064】
E SAN、KOH、少なくとも1つの色安定剤及び酸化防止剤は、上記の順序で導入する必要はない。例えば、KOHをE SANの前に添加し、その後酸化防止剤及び少なくとも1つの色安定剤を添加することができる。いくつかの実施形態において、E SAN、KOH、少なくとも1つの色安定剤及び酸化防止剤を全て同時に第1フロキュレーション反応器に添加できる。いくつかの実施形態において、反応完了までに約1時間を要する。
【0065】
E SAN、KOH、色安定剤及び酸化防止剤の添加後、第1フロキュレーション反応器の内容物を室温、例えば約20℃〜40℃で、約30分間維持して、ラテックスマスターバッチを製造する。本開示の様々な実施形態において、ラテックスマスターバッチは実質的に液体の性質であり、懸濁液、ゲル、乳液又は溶液として存在し得る。
【0066】
続いて、約10〜15リットル、例えば、12リットルの水を第2フロキュレーション反応器に導入する。第2フロキュレーション反応器は、室温、例えば約20〜30℃で稼働する。水は、蒸留水及び脱イオン水のうち少なくとも1つを包含し得る。その後、MgSO
4・7H
2Oを包含する凝固剤を第2フロキュレーション反応器に導入した後、第2フロキュレーション反応器の温度を約90〜100℃、例えば約94〜97℃に上昇させる。
【0067】
第2フロキュレーション反応器が約94〜97℃の温度で約10〜15分間維持されているときに、ラテックスマスターバッチの一部を第2フロキュレーション反応器に導入する。ラテックスマスターバッチは、制御された速度で第2フロキュレーション反応器に導入できる。
【0068】
ラテックスマスターバッチを第2フロキュレーション反応器に添加する間に、第2フロキュレーション反応器の温度を約80〜90℃、例えば、約84〜86℃に維持する。例えば、ラテックスマスターバッチの部分の制御した又は漸次の導入は、第2フロキュレーション反応器が約84〜86℃にある間に実施される。ラテックスマスターバッチを完全に添加した後、第2フロキュレーション反応器の温度を約92〜94℃に上昇させる又は変更する。約92〜94℃への温度上昇又は変更は、フロキュレーションプロセスを助長し、可能にし、又は促進する。ラテックスマスターバッチ添加の前、間、及び/又は後の温度変動は、最終生成物の得られる粒径に影響し得る。
【0069】
第2のフロキュレーション反応器の温度を約92〜94℃に上昇させる又は変更すると、ラテックスマスターバッチのフロキュレーションの完了の促進及び達成のうち1つのため、第2フロキュレーション反応器を約92〜94℃で約15〜30分維持する。凝固剤とラテックスマスターバッチを混合することによって、フロキュレーション反応が第2フロキュレーション反応器で起こる。より具体的には、ラテックスマスターバッチのフロキュレーションは、反応器内で凝固剤の補佐、補助、又は支援を受けて起こる。
【0070】
フロキュレーションプロセス130は、得られる生成物を製造、回収又は産生し、この生成物は、生天然ゴムベースのABS粉末を包含する。様々な実施形態において、得られる粉末の粒径は約500μmである。生天然ゴムベースのABS粉末は、水中に懸濁した物質、製品又は粉末として製造される。
【0071】
続いて、この生天然ゴムベースのABS粉末を、第2フロキュレーション反応器内に存在する水及び/又は任意の残留未反応反応物及び/又は副生成物から回収又は分離する。これは、フロキュレーションプロセス130が生天然ゴムベースのABS粉末の濾過を包含する場合には、濾過プロセスによって実行できる。代表的実施形態において、大型濾過装置、例えばコンベヤベルトが使用される。これは、生天然ゴムベースのABS粉末の水分の約40〜60%を除去できる。
【0072】
濾過プロセスに続いて、残余分(retenate)、残渣又は濾取を乾燥する。残余分(retenate)、残渣又は濾取の乾燥は、オーブン、気流乾燥器又はトルネッシュドライヤで約70〜100℃、例えば約80℃の温度で所定時間、例えば約24時間の焼成又は加熱プロセスによって実施できる。乾燥した残余分、残渣又は濾取は、最終生成物である天然ゴムベースのABS粉末を含む。本開示の様々な実施形態により提供される天然ゴムベースのABS粉末は、天然ゴムベースのABS粉末を成分又は添加剤として有する製品を製造するために、コンパウンディングプロセスを経る。
【0073】
本開示の実施形態の天然ゴムベースのABS粉末は、固体の状態又は形態、例えば、粉末形態で製造又は取得できる。従って、天然ゴムベースのABS粉末は、他のプラスチック製品又はプラスチック製品を製造するためのプラスチックベースの粉末と、容易に、より容易に又はより良好に混合することができる。従って、本開示の多数の実施形態の天然ゴムベースのABS粉末と、他の一般的又は慣例的なプラスチック又はプラスチックベースの粉末との間に、良好な均一性又は均質性が存在し得る。これは、天然ゴムベースのABS粉末を、既存のプラスチック又はプラスチックの粉末と共に供給、使用及び/又は適用することを容易にするか又は可能にする。本開示の様々な実施形態により提供される天然ゴムベースのABS粉末の使用により、機械的強度が増大された及び/又は物理的性質が強化されたプラスチック製品を製造、産生又は生成することができる。本開示の実施形態による天然ゴムベースの粉末は、取り扱い及び作業が容易である。
【0074】
天然ゴムベースのABS製品を包含するプラスチック製品の製造を促進するか若しくは生じるため、又は該プラスチック製品を産生又は製造するために、天然ゴムベースのABS粉末に、一般的に、追加のコンパウンディングプロセスを実施する。
【0075】
代表的コンパウンディングプロセスの態様
ポリカルボナート及び天然ゴムベースのABSを包含するプラスチック製品のような、天然ゴムベースのABSを包含するプラスチック製品の製造を促進するか若しくは行うため、又は該プラスチック製品を産生若しくは製造するために、コンパウンディングプロセス140を本開示の実施形態に従って実施することができる。当業者に理解されるように、コンパウンディングは、様々な材料、化合物、物質及び/又は添加剤を、一組の標的、基準、又は関連材料、化合物、組成物、又は物質、例えばポリカルボナートのような少なくとも1つのプラスチック材料と、混合するプロセスである。ほとんどのプラスチック材料は、重合又はフロキュレーション後の状態では加工できない。より具体的には、重合又はフロキュレーション後のプラスチック材料は、例えば加工用のコンパウンディング添加剤を用いて強化する必要がある。加工用添加剤を含まないプラスチック材料は、加工中に分解し、物理的に弱い製品を生成する。添加剤のコンパウンディングは、物理的特性を改良し、技術的利点を付与し、その製品用途におけるプラスチック材料の性能特性を高める重要な役割を果たす。コンパウンディングプロセス140は、得られるプラスチック製品の強化を促進する。
【0076】
多数の又は一組の異なる出発物質、試薬又は反応物を、本開示によるコンパウンディングプロセス140に使用できる。本開示のPC/ABSブレンドに関係する実施形態において、出発物質、試薬及び/又は反応物の組は、天然ゴムベースのABS粉末、スチレンアクリロニトリル樹脂(SAN)及び潤滑剤を包含する。本開示の実施形態による他のABSブレンドにおいて、ナイロン、ポリブチレンテレフタラート(PBT)、ポリメチルメタクリラート(PMMA)、及びポリエチレンテレフタラート(PET)等であるがこれらに限定されない材料又はポリマーを、標的、基準、又は関連材料として、ポリカルボナートの代わりに又はポリカルボナートに加えて組み込むことができる。
【0077】
以下の記述において、天然ゴムベースのABS粉末、SAN及び潤滑剤を包含する一組の出発物質、試薬及び/又は反応物の量は、ABS粉末及びSANを基準とした重量部で表わされる。
【0078】
コンパウンディングプロセス140で使用する潤滑剤は、エチレンビスステアルアミド(EBS)、ステアリン酸カルシウム(Ca−st)及びシリコーン油(Si−Oil)を包含する。
【0079】
様々な実施形態において、本開示によるABSブレンドは、約10〜90重量部の天然ゴムベースのABS粉末を包含し、更に1つ以上の標的、基準、又は関連ポリマーをベースとする材料(例えば、ポリカルボナート材料)を包含する。いくつかの実施形態において、出発物質、試薬又は反応物の組は、約20〜60重量部、例えば約40重量部の、天然ゴムベースのABS粉末;約40〜80重量部、例えば約60重量部の、SAN;約0.2〜3重量部、例えば約0.5重量部の、EBS;約0.05〜2.0重量部、例えば約0.2重量部のCa−st;及び約0.01〜1重量部、例えば0.05重量部の、Si−Oilを包含する。
【0080】
コンパウンディングプロセス140は、配合ミキサー又は押出機、例えば、直径26mm、長さ対直径比(L:D)が約40である2軸押出機(例えば、型式:LABTECH LTE26−40/15kW)で、実行、遂行又は実施することができる。配合ミキサー又は押出機は、完全自動又は半自動であることができる。
【0081】
いくつかの実施形態において、フロキュレーションプロセス130で得られた天然ゴムベースのABS粉末を、約20〜40℃の室温で稼働している配合ミキサー又は押出機に導入する。天然ゴムベースのABS粉末の添加後、SANを配合ミキサー又は押出機に加え、その後SANを配合ミキサー又は押出機に加えた後、EBS、Ca−st及びSi−Oil等の潤滑剤を配合ミキサー又は押出機に入れる。潤滑剤は、天然ゴムベースのABS粉末を柔軟にするか又は柔軟になるようにすることで、コンパウンディングプロセスを促進する。
【0082】
天然ゴムベースのABS粉末、SAN及び潤滑剤を配合ミキサー又は押出機に導入した後、内容物を混合する。続いて、内容物を約190〜210℃の温度で溶融する。その後、溶融した内容物を使用して、例えば前記の混合した押出機内容物をダイに通すことによって、所望の形状及びサイズのプラスチック製品(例えば、天然ゴムベースのABS製品)を製造する。プラスチック製品は、一成分として天然ゴムベースのABS粉末を有する。ダイの形状及びサイズは、製造されるプラスチック製品の形状及びサイズを決定する。いくつかの実施形態において、ダイの形状は、一般的に楕円体又は楕円形(例えば、円形)、長方形及び/又は円筒形部分に相当するか又は該部分を包含することができる。
【0083】
本開示で以後提供する代表的実施例の記載及びそれに対応する表において、特に明記しない限り、特定の数値又は数値範囲の記述は特定の概数値又は概数値範囲の記述であるとみなす。
【実施例】
【0084】
実施例1
本開示の実施形態による天然ゴムベースのアクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)を包含する組成物の調製の第1の代表的実施例を以下に記載する。
【0085】
第1プロセスは、天然ゴムを強化するために実施する。これに、グラフト化天然ゴムを製造するための第2プロセスが続き、該グラフト化天然ゴムは実質的に液体として、例えばラテックスの形態で、存在する。第3プロセスは天然ゴムベースのABS粉末を製造し、その後第4プロセスで、天然ゴムベースのABSを一成分として有するプラスチック製品を形成する。第1、第2、第3及び第4プロセスは、本開示に記載の加硫プロセス110、重合プロセス120、フロキュレーションプロセス130及びコンパウンディングプロセス140に相当し得る。
【0086】
第1プロセスに対応する反応物、試薬又は出発物質を以下の表1に表す。表1の反応物、試薬又は出発物質の量は、プレ加硫ゴムを基準にした重量部で表されている。
【0087】
乳化剤−触媒混合物を最初に調製する。乳化剤は、KOH及びオレイン酸を包含し、触媒はTBHPを包含する。乳化剤は、0.2重量部のKOH及び0.85重量部のオレイン酸を包含する。触媒は、2重量部のTBHPを包含する。TBHPをKOHとオレイン酸との混合物に添加し、撹拌機を用いて室温で撹拌する。
【0088】
続いて、調製した乳化剤−触媒混合物の5体積%を、室温で稼働している20リットル反応器に導入することによって第1プロセスを該反応器内で実施する。100重量部(100%)の天然ゴムを反応器に加え、反応を撹拌する。1種の架橋剤及び3種の脱酸素剤を反応混合物に導入する。架橋剤は、0.5重量部のDVBを包含する。脱酸素剤は、0.28重量部のラクトース、0.004重量部のFeSO
4・7H
2O及び0.16重量部のTSPPを包含する。その後、反応器の温度を30分間かけて70℃に上昇させる。
【0089】
反応器の温度を70℃に維持しながら、乳化剤と触媒との混合物の残りの部分を1時間かけて反応器に導入する。その後、反応混合物を7時間撹拌する。
【0090】
次いで反応器を冷却する。第1プロセスでは、中間生成物又は加硫天然ゴムが製造される。
【0091】
上記第1プロセスに第2プロセスが続く。第2プロセスに対応する反応物や試薬、出発物質の詳細を下記の表2に示す。表2の反応物、試薬及び/又は出発物質の量は、天然ゴムのスチレン−アクリロニトリルコポリマーグラフト化ラテックスを基準にした重量部で表している。
【0092】
第2プロセスは、最初に、室温で稼働している20リットル重合反応器に加硫天然ゴムの60%を導入する。加硫ゴムを、撹拌機を用いて反応器内で撹拌する。次いで安定剤を反応器に導入する。安定剤は、3〜15%の濃度の水酸化アンモニウム(NH
4OH)を樹脂100部当たり0.6部(phr)包含する。NH
4OHの添加後、反応器温度を65℃に上昇させた。温度の増加は30分間かけて行う。温度を65℃に維持しながら、3種の脱酸素剤を反応器に導入する。脱酸素剤は、0.3重量部のラクトース、0.001重量部のFeSO
4・7H
2O及び0.1重量部のTSPPを包含する。
【0093】
次に、スチレン及びアクリロニトリルのモノマー溶液を、tert−ドデシルメルカプタン(TDM)等の移動剤と共に反応器に加える。モノマー溶液は、30%のスチレン、10%のアクリロニトリル、及び0.2重量部のTDMを包含する。これに続いて、触媒溶液及び乳化剤溶液を反応器に導入する。触媒溶液は0.136重量部のTBHPであり、69〜70%水溶液として供給される。乳化剤溶液は、0.203重量部のKOH及び1重量部のオレイン酸を包含する。
【0094】
その後、反応混合物を65℃で4.5時間撹拌した後、反応器の温度を30分間かけて70℃に上昇させる。反応器の温度を70℃に維持しながら、反応混合物を3時間撹拌し、第2プロセスを完了させる。第2プロセスでは、天然ゴムを一成分として有する中間生成物を製造する。中間生成物は、グラフト化天然ゴムを包含する。
【0095】
第3プロセスが第2プロセスに続く。第3プロセスに対応する反応物や試薬、出発物質を以下の表3にまとめる。第3プロセスの例示の表3の反応物、試薬及び/又は出発物質の量は、粉末状天然ゴムを基準にした重量部で表されている。
【0096】
本開示の実施形態によるグラフト化ゴムの様々な組み合わせは、複数の区別可能な(例えば、容易に区別可能な又は有意に異なる)平均又は中央粒径を包含し、組み込み、又は生じる、予め決められた、意図的に選択された、優先的に規定された、又はプログラム可能に決定/特定された、多峰形粒径分布、例えば3つの別個の又は容易に区別できる粒径(例えば、互いに粒径が少なくとも約20%異なる別個の粒子径間又は粒径を有する)に対応する三峰形粒径分布を示す。
【0097】
いくつかの実施形態において、第3プロセスは、第1の粒径を有するグラフト化天然ゴムを、該グラフト化天然ゴムと有意に又は実質的に異なる粒径を有する少なくとも1つのグラフト化ポリブタジエンゴムと組み合わせ又は混合することによる、ラテックスマスターバッチの形成を伴う。本開示による多数の実施形態は、第1の粒径を有するグラフト化天然ゴムを、第1のグラフト化ポリブタジエンゴム及び第2のグラフト化ポリブタジエンゴムを包含する複数のグラフト化合成ゴムと混合する工程を伴い、そのグラフト化天然ゴムの粒径、第1のグラフト化ポリブタジエンゴムの粒径、及び第2のグラフト化ポリブタジエンゴムの粒径が互いに異なるか又は容易に区別できる。
【0098】
第3プロセスの実施形態は、ラテックスマスターバッチの作製から始まり、これは0.8〜1.0ミクロンのような大粒径のグラフト化天然ゴムを16.4%、室温で稼働しているフロキュレーション反応器に加える工程を伴う。続いて、グラフト化ポリブタジエンゴム、例えば0.2ミクロンの小粒径のグラフト化ポリブタジエンゴムを24.6%、及び第3のグラフト化ポリブタジエンゴム、例えば0.4ミクロンの中粒径又は中間粒径のグラフト化ポリブタジエンゴムを41%、反応器に加える。
【0099】
前記の小粒径は、大粒径に対する予め決められたパーセンテージと相関又は対応させることができる。更に、小粒径と大粒径との間に1つ以上の中間粒径を包含する実施形態において、所与の中間粒径は、小粒径に対する予め決められた1を超える(over-unity)割合、大粒径に対する予め決められた1未満(under-unity)の割合、又は予め決められた小粒径と大粒径との差と相関又は対応させることができる。例えば、実施形態の詳細に応じて、小粒径は大粒径よりも20%〜90%小さい、言い換えると、大粒径の10〜80%(例えば、大粒径の20%〜25%、40%〜50%、又は60%〜75%)であることができる。更に、中粒径又は中間粒径は、大粒径よりも20%〜80%小さく、小粒径よりも少なくとも20%大きい(例えば、実施例の詳細に応じて50%〜400%、又は100%、150%、200%、250%、又はそれ以上)ことができ;又は中粒径若しくは中間粒径は、小粒径と大粒径との差の15%〜85%(例えば、25%〜75%、又は50%)分、小粒径よりも大きいことができる。
【0100】
続いて、スチレン−アクリロニトリルの乳液混合物の18%を反応器に導入する。撹拌機を用いて反応を撹拌する。その後、金属不活性化剤、3つの色安定剤及び抗酸化剤を反応混合物に導入する。金属不活性化剤は0.5重量部のKOHを包含し、色安定剤は0.1重量部のTSPP、0.1重量部のSDS及び0.21重量部のKOHを包含し、酸化防止剤は0.5重量部のWingstay Lフェノール系酸化防止剤を包含する。反応混合物を約30分静置すると、ラテックスマスターバッチが製造又は取得される。
【0101】
その後、12リットルの脱イオン水を、室温で稼働している別の20リットル反応器に導入する。続いて、凝固剤のMgSO
4・7H
2Oをこの反応器に導入する。凝固剤は4.2重量部のMgSO
4・7H
2Oを包含する。反応器の温度を95℃に上昇させ、85℃の温度に維持した後、ラテックスマスターバッチの一部、約9リットルを反応器に加える。その後、反応器の温度を約92〜94℃に上昇させ、約30分間放置して、第3プロセスを完了させる。この第3プロセスで、天然ゴムベースのABS粉末が製造される。
【0102】
反応器に残っている残留反応物及び/又は不純物から天然ゴムベースのABS粉末を分離又は回収するために、濾過プロセスを実施できる。その後、天然ゴムベースのABS粉末を、約80℃のオーブンで24時間乾燥する。
【0103】
濾過プロセスに第4プロセスを続けることができる。第4プロセスを用いて、2軸押出機を用いて原料ポリマー又はベースをポリマー樹脂に変換する。第4プロセスの様々な実施形態は、少なくとも1種のポリカルボナート並びに天然ゴムベースのABSを包含するプラスチック樹脂の製造を伴う。
【0104】
第4プロセスの実施形態の反応物、試薬又は出発物質を以下の表4、5、6及び7にまとめる。表4、5、6及び7の反応物、試薬又は出発物質の量は、ABS粉末及びSANを基準にした重量部で表されている。表4a、5a、6a及び7aは、それぞれ表4、5、6及び7に示した実施例2〜18に対応する各々の物理的特性をまとめている。
【0105】
実施例4に示すように、第4プロセスの実施形態は、所与の重量(例えば、70重量部)のポリカルボナート及び所与の重量(例えば、15重量部)の乾燥した天然ゴムベースのABS粉末をミキサーの容器に室温で導入することから開始する。続いて、所与の重量(例えば、15重量部)のSANをミキサーの容器に導入する。これに続いて、潤滑剤をミキサーの容器に加える。潤滑剤は0.5重量部のEBS、0.2重量部のCa−st及び0.05重量部のSi−Oilを包含する。ABS粉末、SAN、ポリカルボナート及び潤滑剤を、低速ミキサーを用いて5分間、十分に混合されるまで混合し、その後混合物を2軸押出機に供給して、コンパウンディング及びペレット化を行う。
【0106】
直径26mm、長さ対直径比(L:D)が40の2軸押出機をコンパウンディングプロセスに使用する。2軸押出機の温度プロファイル及びコンパウンディング条件を表8に示す。
【0107】
本開示による様々な組成物は以下を包含する:
A)60〜80重量部のポリカルボナート及び/又はその他のポリマーをベースとする材料;
B)天然ゴムから作製された天然ゴムベースのABSを15〜30重量部;
C)スチレンとアクリロニトリルとのコポリマーを5〜25重量部;
D)EBSを、ポリマー100部当たり0.5部;
E)シリコーン油を、ポリマー100部当たり0.05部;及び
F)Ca−stを、ポリマー100部当たり0.2部。
【0108】
【表1】
【0109】
【表2】
【0110】
【表3】
【0111】
【表4】
【0112】
【表4a】
【0113】
【表5】
【0114】
【表5a】
【0115】
【表6】
【0116】
【表6a】
【0117】
【表7】
【0118】
【表7a】
【0119】
【表8】