特許第6113306号(P6113306)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6113306抗マイコプラズマ属菌種サブユニットワクチン
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6113306
(24)【登録日】2017年3月24日
(45)【発行日】2017年4月12日
(54)【発明の名称】抗マイコプラズマ属菌種サブユニットワクチン
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/00 20060101AFI20170403BHJP
   C12N 15/09 20060101ALI20170403BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20170403BHJP
   A61K 39/39 20060101ALI20170403BHJP
【FI】
   A61K39/00 H
   C12N15/00 AZNA
   A61P31/04
   A61K39/39
【請求項の数】12
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2015-555527(P2015-555527)
(86)(22)【出願日】2013年2月5日
(65)【公表番号】特表2016-514086(P2016-514086A)
(43)【公表日】2016年5月19日
(86)【国際出願番号】CN2013071379
(87)【国際公開番号】WO2014121433
(87)【国際公開日】20140814
【審査請求日】2015年8月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】515212437
【氏名又は名称】アグリカルチュラル テクノロジー リサーチ インスティテュート
(74)【代理人】
【識別番号】100092093
【弁理士】
【氏名又は名称】辻居 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100082005
【弁理士】
【氏名又は名称】熊倉 禎男
(74)【代理人】
【識別番号】100084663
【弁理士】
【氏名又は名称】箱田 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100093300
【弁理士】
【氏名又は名称】浅井 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(72)【発明者】
【氏名】リン ジウン−ホーン
(72)【発明者】
【氏名】ワン ジ−ペルン
(72)【発明者】
【氏名】シェイ ミン−ウェイ
(72)【発明者】
【氏名】チェン ゼン−ウェン
(72)【発明者】
【氏名】ファン チェン−ユ
(72)【発明者】
【氏名】リュウ シュエ−タオ
(72)【発明者】
【氏名】ヤン ピン−チェン
【審査官】 安藤 公祐
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第93/024646(WO,A1)
【文献】 特表2012−518417(JP,A)
【文献】 特表2013−503609(JP,A)
【文献】 特表2007−529191(JP,A)
【文献】 YP_115778,NCBI,2012年,[online, 検索日:平成28年7月7日],URL,http://www.ncbi.nlm.nih.gov/protein/54020423?sat=17&satkey=23905202
【文献】 YP_287990,NCBI,2010年,[online, 検索日:平成28年7月7日],URL,http://www.ncbi.nlm.nih.gov/protein/72080932?sat=17&satkey=23905446
【文献】 YP_115659,NCBI,2012年,[online, 検索日:平成28年7月7日],URL,http://www.ncbi.nlm.nih.gov/protein/54020363?sat=17&satkey=23905202
【文献】 YP_115889,NCBI,2012年,[online, 検索日:平成28年7月7日],URL,http://www.ncbi.nlm.nih.gov/protein/54020169?sat=17&satkey=23905202
【文献】 YP_116191,NCBI,2012年,[online, 検索日:平成28年7月7日],URL,http://www.ncbi.nlm.nih.gov/protein/54020654?sat=17&satkey=23905202
【文献】 YP_115900,NCBI,2012年,[online, 検索日:平成28年7月7日],URL,http://www.ncbi.nlm.nih.gov/protein/54020486?sat=17&satkey=23905202
【文献】 Protein Expression and Purification,2011年,78,113-9
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 39/00
A61K 39/39
A61P 31/04
C12N 15/09
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
PdhA、XylF、EutD、Mhp145、P78、P132、Mhp389又はそれらの組合せのタンパク質を含む有効成分を含む、マイコプラズマ属菌種感染を予防するための組成物であって、前記PdhAが配列番号08のアミノ酸配列によって表され、前記XylFが配列番号09のアミノ酸配列によって表され、前記EutDが配列番号10のアミノ酸配列によって表され、前記Mhp145が配列番号11のアミノ酸配列によって表され、前記P78が配列番号12のアミノ酸配列によって表され、前記P132が配列番号13のアミノ酸配列によって表され、前記Mhp389が配列番号14のアミノ酸配列によって表される、組成物。
【請求項2】
前記有効成分がPdhA、XylF、EutD、Mhp145、P78、P132及びMhp389からなる群から選択される少なくとも2つのタンパク質を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記有効成分がPdhA及びP78を含む、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記有効成分がXylF及びMhp145を含む、請求項2に記載の組成物。
【請求項5】
前記有効成分が前記組成物の総容積に基づく50〜3500μg/mLの濃度のものである、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
完全フロイントアジュバント、不完全フロイントアジュバント、アルミナゲル、界面活性剤、ポリアニオンアジュバント、ペプチド、油エマルジョン又はそれらの組合せである薬学的に許容されるアジュバントをさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
薬学的に許容される添加剤をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記薬学的に許容される添加剤が溶媒、安定剤、希釈剤、保存剤、抗菌剤、抗真菌剤、等張剤、吸収遅延剤又はそれらの組合せである、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
プラスミドを含む、マイコプラズマ属菌種感染を予防するための発現ベクターであって、前記プラスミドが
配列番号01、配列番号02、配列番号03、配列番号04、配列番号05、配列番号06及び配列番号07からなる群から選択される少なくとも1つの配列を含むヌクレオチド配列と、
調節エレメントと
を含み、前記プラスミドが融合パートナーをコードする遺伝子をさらに含み、前記融合パートナーが大腸菌のmsyBある、発現ベクター。
【請求項10】
前記調節エレメントがプロモーター及びリボソーム結合部位を含む、請求項9に記載の発現ベクター。
【請求項11】
前記プラスミドがpET−MSYある、請求項9に記載の発現ベクター。
【請求項12】
大腸菌遺伝子発現システムに用いる、請求項9に記載の発現ベクター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、マイコプラズマ属菌種に対するワクチン、とりわけマイコプラズマ属菌種に対するサブユニットワクチンに関する。
【背景技術】
【0002】
マイコプラズマ属菌種は、現在のところ、宿主細胞外で自己複製することができる公知の最も小さい細菌である。ブタ流行性肺炎は、ブタの死亡をもたらすものではないが、ブタを他の病原体に感染しやすくすることに加えて、摂餌効率を低下させ、成長遅延、炎症及び免疫抑制をもたらし、したがって、産業の経済的損害になるものである。
現在までのところ、ブタ流行性肺炎は、薬剤投与、環境の管理及びワクチン接種などの3つの主要な戦略により予防されている。マイコプラズマ・ヒオニューモニエ(Mycoplasma hyopneumoniae)に対する抗生物質の不良な予防効率を考えると、薬剤投与は、治療の目的のためだけに用いることができ、予防の必要を満たすことは困難である。さらに、薬物乱用が薬物耐性細菌によって引き起こされるより大きな感染につながる可能性があることを考慮すると、薬剤投与は、慎重な計画を必要とし、多くの制限が存在する。
環境の管理は、マイコプラズマ属菌種感染の予防の基礎をなす。十分な養豚場の衛生及び管理は、感染の発生を低減するのに有益であろう。他方で、予防は、ワクチン接種によってより包括的なものであり得る。
当該分野における従来のワクチンは、不活性/死細菌をその有効成分として使用している。しかし、マイコプラズマ属菌種は、培養条件の面倒な細菌であり、実験室で培養することが困難であるため、従来のワクチンの価格は、過度に高い。マイコプラズマ属菌種ワクチンの費用を低減するために、科学者は、(1)弱毒化ワクチン、(2)ベクターワクチン、(3)サブユニットワクチン及び(4)DNAワクチンなどの異なる種類のワクチンを開発することを継続的に試みている。とりわけ、サブユニットワクチンは、製造が容易であり、安全性が高いという利点のため最も高い可能性を示している。
現在までのところ、M.ヒオニューモニエワクチンに用いることが可能であると思われるいくつかの可能性のある候補タンパク質が存在するが、M.ヒオニューモニエワクチンに適するタンパク質を確認したさらなる報告は存在しない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
前述のことに照らして、本発明の目的の1つは、予防の費用を低減することができるようにM.ヒオニューモニエワクチンに用いるのに適する抗原を提供し、それにより、新規なM.ヒオニューモニエワクチンを製造することである。
本発明の他の目的は、M.ヒオニューモニエワクチンに用いるのに適する抗原の組合せを提供し、それにより、より良い性能を有するサブユニットワクチンを提供することである。したがって、予防の課題に対するより多くの選択肢が存在することとなる。
【課題を解決するための手段】
【0004】
前述の目的を達成するために、本発明は、配列番号08、配列番号09、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14又はそれらの組合せのアミノ酸配列を含む、マイコプラズマ属菌種感染を予防するためのワクチンを調製するための組換えタンパク質を提供する。
本発明はまた、PdhA、XylF、EutD、Mhp145、P78、P132、Mhp389又はそれらの組合せのタンパク質を含む有効成分及び薬学的に許容されるアジュバントを含む、マイコプラズマ属菌種感染を予防するためのワクチンを提供する。
好ましくは、前記有効成分は、前記ワクチンの総容積に基づく50〜3500μg/mLの濃度のものである。
好ましくは、前記有効成分は、PdhA、XylF、EutD、Mhp145、P78、P132及びMhp389からなる群から選択される少なくとも2つのタンパク質を含む。
【0005】
好ましくは、前記有効成分は、PdhA及びP78を含む。
好ましくは、前記有効成分は、XylF及びMhp145を含む。
好ましくは、前記薬学的に許容されるアジュバントは、完全フロイントアジュバント、不完全フロイントアジュバント、アルミナゲル、界面活性剤、ポリアニオンアジュバント、ペプチド、油エマルジョン又はそれらの組合せである。
好ましくは、前記ワクチンは、薬学的に許容される添加剤をさらに含む。
好ましくは、前記薬学的に許容される添加剤は、溶媒、安定剤、希釈剤、保存剤、抗菌剤、抗真菌剤、等張剤、吸収遅延剤又はそれらの組合せである。
本発明はさらに、配列番号08、配列番号09、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14又はそれらの組合せのアミノ酸配列を含む有効成分及び薬学的に許容されるアジュバントを含む、マイコプラズマ属菌種感染を予防するためのワクチンを提供する。
【0006】
好ましくは、前記有効成分は、前記ワクチンの総容積に基づく50〜3500μg/mLの濃度のものである。
好ましくは、前記有効成分は、配列番号08、配列番号09、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13及び配列番号14からなる群から選択される少なくとも2つのアミノ酸配列を含む。
好ましくは、前記有効成分は、配列番号08及び配列番号12のアミノ酸配列を含む。
好ましくは、前記有効成分は、配列番号09及び配列番号11のアミノ酸配列を含む。
【0007】
好ましくは、前記薬学的に許容されるアジュバントは、完全フロイントアジュバント、不完全フロイントアジュバント、アルミナゲル、界面活性剤、ポリアニオンアジュバント、ペプチド、油エマルジョン又はそれらの組合せである。
好ましくは、前記ワクチンは、薬学的に許容される添加剤をさらに含む。
好ましくは、前記薬学的に許容される添加剤は、溶媒、安定剤、希釈剤、保存剤、抗菌剤、抗真菌剤、等張剤、吸収遅延剤又はそれらの組合せである。
【0008】
本発明はさらに、プラスミドを含む、マイコプラズマ属菌種感染を予防するための発現ベクターを提供し、前記プラスミドは、配列番号01、配列番号02、配列番号03、配列番号04、配列番号05、配列番号06及び配列番号07からなる群から選択される少なくとも1つの配列を含むヌクレオチド配列並びに調節エレメントを含む。
好ましくは、前記調節エレメントは、プロモーター及びリボソーム結合部位を含む。
好ましくは、前記プラスミドは、pET−MSY、pET−YjgD、pET−D又はpET−SUMOである。
好ましくは、前記プラスミドは、融合パートナーをコードする遺伝子をさらに含む。
好ましくは、前記融合パートナーは、大腸菌(E.coli)のmsyB、大腸菌のyjgD、ラムダバクテリオファージのタンパク質D又はS.セレビシエ(S.cerevisiae)のSUMOである。
好ましくは、前記発現ベクターは、大腸菌遺伝子発現システムに用いる。
要約すれば、本発明は、M.ヒオニューモニエサブユニットワクチンの有効成分として用いるのに適する抗原及びそれを用いて調製されるM.ヒオニューモニエサブユニットワクチン/組成物に関する。本サブユニットワクチンは、その費用を低減するために予防業務に効果的に用いることができるだけでなく、本発明の開示は、本発明の少なくとも2つの抗原を用いた「カクテル」サブユニットワクチン(すなわち、少なくとも2つの抗原を有効成分として有する)が免疫応答の誘導を改善したことも示している。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の第1の例において実施した2次元ゲルタンパク質電気泳動の結果を示す図である。
図2】本発明の第1の例において実施したウエスタンブロットの呈色反応の結果を示す図である。
図3】本発明の第2の例において得られたPCR産物の電気泳動の結果を示す図である。
図4-1】本発明の第3の例において実施した誘発実験の記録を示す図である。
図4-2】本発明の第3の例において実施した誘発実験の記録を示す図である。
図4-3】本発明の第3の例において実施した誘発実験の記録を示す図である。
【0010】
本発明の中心概念の1つは、2次元ゲルタンパク質電気泳動並びに免疫学的スクリーニング技術を用いることによりサブユニットワクチンに適する可能性のある候補抗原を調査すること及び質量分析計により抗原を同定することである。次に、本サブユニットワクチンの性能を動物モデル実験により確認した。
手短に述べると、本発明の開発の経過は、以下の通りである。
【0011】
(1)従来のマイコプラズマ・ヒオニューモニエワクチンを注射することによって実験ブタの免疫応答を誘導し、抗M.ヒオニューモニエ抗体を含有する血清を得るステップ。(2)2次元ゲルタンパク質電気泳動用のM.ヒオニューモニエの全タンパク質を得るステップ。(3)ステップ(1)の血清を一次抗体として用いることによりステップ(2)の2次元ゲルタンパク質電気泳動の結果のハイブリダイゼーションを実施し、次いで、増幅後にゲルから二次抗体及び以下の発色法により陽性を示すタンパク質(すなわち、候補抗原)を収集するステップ。(4)ステップ(3)で得られた候補抗原を同定するステップ。(5)大腸菌遺伝子発現システムを用いることにより前記候補抗原を大量に発現させるステップ。(6)ブタ誘発実験により肺における病的特徴(pathological trait)の低減における本サブユニットワクチンの有効性を検討し、それにより、サブユニットワクチンの有効成分として用いる際の前記候補抗原の有用性を確認するステップ。
【0012】
マイコプラズマ属菌種感染を予防するための本ワクチンは、有効成分及び薬学的に許容されるアジュバントを含む。
本発明の実施形態において、前記有効成分は、PdhA、XylF、EutD、Mhp145、P78、P132又はMhp389であり得る。代替実施形態において、前述のタンパク質のいずれかの抗原決定基が妨害されない限り、前記有効成分は、前述のタンパク質のいずれか2つの融合タンパク質であり得る。他の代替実施形態において、前記有効成分は、前述のタンパク質の少なくとも2つを含む。すなわち、本発明のいわゆる「カクテル」ワクチンである。
本発明の他の実施形態において、前記有効成分は、配列番号08、配列番号09、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14又はそれらの組合せのアミノ酸配列を含み得る。代替実施形態において、前記アミノ酸配列のペプチドの折りたたみにより形成された抗原決定基が妨害されない限り、前記有効成分は、少なくとも2つの前記配列を有する融合タンパク質であり得る。他の代替実施形態において、前記有効成分は、前述のアミノ酸配列の1つをそれぞれ含む2つ以上のタンパク質を含む。すなわち、本発明のいわゆる「カクテル」ワクチンである。
前記薬学的に許容されるアジュバントは、前記有効成分の免疫効果を改善し、前記有効成分を安定化し、且つ/又はワクチンの安全性を高めるために用いられる。本発明の前記薬学的に許容されるアジュバントは、完全フロイントアジュバント、不完全フロイントアジュバント、アルミナゲル、界面活性剤、ポリアニオンアジュバント、ペプチド、油エマルジョン又はそれらの組合せを含むが、これらに限定されない。
【0013】
本発明のワクチンは、1つ又は少なくとも2つの前記有効成分(すなわち、カクテルワクチン)を有し得る。本ワクチンの例において、前記有効成分は、前記ワクチンの総容積に基づく50〜3500μg/mLの濃度のものである。本発明の好ましい実施形態において、前記ワクチンが1つの前記有効成分のみを含む場合、前記有効成分は、前記ワクチンの総容積に基づく50〜500μg/mLの濃度のものである。本発明の代替実施形態において、本ワクチンは、少なくとも1つの前記有効成分を含み、前記ワクチンに含有される前記有効成分の総濃度は、前記ワクチンの総容積に基づく50〜1000μg/mL、50〜1500μg/mL、50〜2000μg/mL、50〜2500μg/mL、50〜3000μg/mL又は50〜3500μg/mLである。
【0014】
本発明の他の態様は、マイコプラズマ属菌種感染を予防するための発現ベクターを提供することである。具体的には、前記発現ベクターは、大腸菌遺伝子発現システムに用いることができる。それにもかかわらず、本発明の精神から逸脱することなく、当業者は、本発明の開示に基づいて前記ベクターを改良し、前記ベクターを本発明の範囲に属しながら異なる遺伝子発現システムに適するものにすることができる。
前記発現ベクターは、プラスミドを含む。前記プラスミドは、配列番号01、配列番号02、配列番号03、配列番号04、配列番号05、配列番号06、配列番号07及びそれらの組合せからなる群から選択される少なくとも1つの配列を含むヌクレオチド配列並びに調節エレメントを含む。
前記ベクターは、大腸菌遺伝子発現システムに用い、また大腸菌により本発明の抗原を製造するために用いる。言い換えれば、前記ヌクレオチド配列を大腸菌遺伝子発現システムにより本発明の抗原のアミノ酸配列に翻訳することができ、次にアミノ酸配列を本発明の抗原に折りたたむことができる。
【0015】
代替実施形態において、大腸菌遺伝子発現システムの作動が妨げられず、前記ヌクレオチド配列の産生及びその結果として生じるアミノ酸配列の折りたたみが妨害されない限り、前記プラスミドは、2つ以上の前記ヌクレオチド配列を含み得る。
前記調節エレメントは、発現システムにおける転写及び翻訳を開始するために必要なエレメントを意味する。前記調節エレメントは、プロモーター及びリボソーム結合部位を少なくとも含むものとする。好ましくは、前記調節エレメントは、オペレーター、エンハンサー配列、又はそれらの組合せをさらに含み得る。
【0016】
本発明の好ましい実施形態において、前記プラスミドは、融合パートナーをコードする遺伝子をさらに含む。前記融合パートナーは、大腸菌のmsyB、大腸菌のyjgD、ラムダバクテリオファージのタンパク質D又はS.セレビシエのSUMOを含むが、これらに限定されない。前記MsyBは、酸性アミノ酸に富み、産生されるタンパク質の溶解度を改善するために有利であると思われる。
以下の実施例では、本発明の特徴及び利点をさらに説明するために本発明の試験及び実験を列挙する。以下の実施例は、例となるものであって、本発明の特許請求の範囲を限定するために用いるものではないことに注意するものとする。
【実施例】
【0017】
(例1)サブユニットワクチンの有効成分として用いるのに適する候補抗原のスクリーニング
抗ブタマイコプラズマ属菌種抗体を含有する血清の準備
研究者らによれば、ブタから単離することができる次の7種のマイコプラズマ属菌種が存在する:M.ヒオニューモニエ(Mycoplasm hyopneumoniae)、マイコプラズマ・ヒオルヒニス(Mycoplasma hyorhinis)、マイコプラズマ・ヒオシノビエ(Mycoplasma hyosynoviae)、マイコプラズマ・フロキュレア(Mycoplasma flocculare)、マイコプラズマ・ヒオファリンギス(Mycoplasma hyopharyngis)、マイコプラズマ・スアルビ(Mycoplasma sualvi)、マイコプラズマ・ボビゲニタリウム(Mycoplasma bovigenitalium)(Gourlay et al., 1978; Blank et al., 1996; Assuncao et al., 2005)。とりわけ、M.ヒオニューモニエは、25〜93%の感染率を有するブタ流行性肺炎の主要な病原体である。したがって、本発明では、免疫プロテオミクス試験に、また抗原をコードする遺伝子の源としてM.ヒオニューモニエ(PRIT−5株)を用いた。Friis培地(Friis et al., 1975)をM.ヒオニューモニエを培養するために用いた。実験計画に従って、適量の抗生物質又は1.5%の寒天を固形培地を調合するために加えた。
【0018】
4週齢の3匹のSPFブタを農業技術研究所(Agricultural Technology Research Institute)から入手し、実験の前に養豚場において同じ飼料を給餌し、同じ環境及び生育条件で飼育した。
ブタに32日、46日及び60日齢まで給餌した後、ブタに2mLのBayovac(登録商標)MH−PRIT−5(M.ヒオニューモニエPRIT−5)ワクチンを筋肉内注射により投与した。次いで、ブタに74日齢まで連続的に給餌し、その頸静脈から血液を採取した。採取した血液を室温に1時間放置し、4℃で保存した。翌日、採取した血液を1,107×gで30分間遠心分離し、上清を除去して清浄な管に入れ、−20℃で保存した。
マイコプラズマ属菌種の全タンパク質の2次元ゲルタンパク質電気泳動
ReadyPrep(商標)タンパク質抽出キット(全タンパク質)(Bio−Rad、CA、USA)をマイコプラズマ属菌種の全タンパク質を抽出するために用いた。その後、収集したタンパク質の濃度は、Bio−Rad RC DCタンパク質アッセイキット(CA、USA)を用いて測定した。詳細なプロトコールは、製品説明書を参照することができ、あるいは当分野における周知のプロトコールから修正することができる。
【0019】
2次元ゲルタンパク質電気泳動は、等電点電気泳動(IEF)及びドデシル硫酸ナトリウム−ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)の2段階で実施した。IEFは、その等電点を考慮して試料中のタンパク質を分離するためであり、SDS−PAGEは、その分子量に基づいてタンパク質を分離するためであった。2次元ゲルタンパク質電気泳動の結果を示す図1を参照のこと。
ハイブリダイゼーション
ステップ(1)で得られた血清は、ステップ(2)における2次元ゲルタンパク質電気泳動の結果とハイブリダイズするための一次抗体として用いた。二次抗体により増幅し、以下の発色法により発色させた後、陽性を示すタンパク質を収集した。それらのタンパク質は、抗マイコプラズマ属菌種抗体により認識され、したがって、サブユニットワクチンの有効成分用の候補抗原として適することとなる。
【0020】
ハイブリダイゼーションは、ウエスタンブロッティングにより実施した。手短に述べると、電気泳動の後の2次元ゲルをPVDF膜に転移させた。次いで、膜をインキュベートし、一次抗体(抗マイコプラズマ属菌種抗体を含有する血清)及び二次抗体(AP−コンジュゲート抗ブタIgG)と連続的にハイブリダイズさせた。その後、NBT/BCIP溶液を用いることにより呈色反応を行わせた。
ウエスタンブロッティングの呈色反応の結果を図2に示す。図において、抗マイコプラズマ属菌種抗体との免疫ハイブリダイゼーションに陽性の10種のタンパク質が、サブユニットワクチンの有効成分として用いられる候補抗原として表示されていた。
【0021】
得られた候補抗原の同定
ウエスタンブロッティングの呈色反応に照らして、膜上の陽性位置に対応するゲルをマイクロペプチドにより切断し、質量分析により分析した。次に、質量分析の得られたデータをアミノ酸配列及びタンパク質データベースと照合して、それらのタンパク質を同定した。
抗マイコプラズマ属菌種抗体との免疫ハイブリダイゼーションに陽性の前記10種のタンパク質を示した以下の表1を参照のこと。
【0022】
【表1】
【0023】
(例2)大腸菌遺伝子発現システムによる大量の前記候補抗原の発現
大腸菌JM109をクローニングのための宿主細胞として用い、大腸菌BL21(DE3)をタンパク質発現のための宿主細胞として用いた。大腸菌細胞をLB培地(Luria−Bertani;Difco、Michigan、USA)中で培養した。実験計画に従って、適量の抗生物質又は1.5%の寒天を固形培地を調合するために加えた。
【0024】
候補抗原をコードする遺伝子の増幅
候補抗原が同定された後、それらの抗原をコードする遺伝子をNCBIデータベース(National Center for Biotechnology Information)で検索した。抗原遺伝子を標的とする特異的プライマーをそれに応じてデザインした。次いで、特異的プライマー及び鋳型としてのM.ヒオニューモニエPRIT−5の染色体を用いることにより、抗原遺伝子を増幅した。用いた特異的プライマーを以下の表2に示した。
【0025】
【表2】
【0026】
上の表2に示したプライマーセットを用いてポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を実施して、候補抗原の遺伝子を増幅した。次いで、増幅された遺伝子を大腸菌遺伝子発現システムに用いた。PCR条件は、98℃に5分(1ラウンド);94℃に30秒、55℃に30秒、68℃にX秒(35ラウンド);68℃に5分(1ラウンド)であった。前記Xは、DNAポリメラーゼの伸長時間であり、増幅させる断片のサイズに応じて設定した。PCR反応の後、電気泳動を実施して、PCR産物が予想されたサイズのDNA断片を含有していたかどうかを確認した。PCR産物の電気泳動結果を示す図3を参照のこと。図において、レーン1は、eutD遺伝子であり、レーン2は、pdhAであり、レーン3は、xylFであり、レーン4は、P78遺伝子であり、レーン5は、P132遺伝子であり、レーン6は、mhp145であり、レーン7は、mhp389であった。
【0027】
PCR産物のクローニング
CloneJET PCRクローニングキットを用いてクローニングを実施し、ライゲーション混合物を大腸菌ECOS(商標)9−5(Yeastern、Taipei、Taiwan)に形質転換した。詳細なプロトコールは、製品説明書を参照することができ、あるいは当分野における周知のプロトコールから修正することができる。
【0028】
形質転換の後、細菌を、そのコロニーが形成されるまでアンピシリン(100μg/mL)を含有する固形LB培地上で培養した。次いで、形質転換が成功した菌株をスクリーニングするためにコロニーPCRを実施した。PCR条件は、95℃に5分(1ラウンド);95℃に30秒、55℃に30秒、72℃にX秒(25ラウンド);72℃に7分(1ラウンド)であった。前記Xは、DNAポリメラーゼの伸長時間であり、増幅させる断片のサイズに応じて設定した。Taq DNAポリメラーゼ(Genomics、Taipei、Taiwan)の伸長速度は、1kb/分であり、したがって、Taq DNAポリメラーゼを1kbのDNA断片を増幅するために用いる場合、前記Xを1分と設定するものとする。
【0029】
その組換えプラスミドがinsert DNAを有することが確認された、菌株のプラスミドを次にDNA配列決定に進めた(Systems Biology and Chemoinformatics Ltd.のトータルソリューションプロバイダー)。eutD、pdhA、xylF、P78遺伝子、P132遺伝子、mhp145及びmhp389を含有するプラスミドをそれぞれpJET−eutD、pJET−pdhA、pJET−xylF、pJET−P78、pJET−P132、pJET−mhp145、pJET−mhp389と命名した。
【0030】
M.ヒオニューモニエの抗原遺伝子の点突然変異及びクローニング
大腸菌遺伝子発現システムにおける候補抗原を増幅する前に、異なる生物におけるコドン利用を考慮するものとする。とは言うものの、遺伝子がそこからの最初の生物と大腸菌との間であいまいにコードされるようなコドンを含有する場合、遺伝子は、点突然変異により修飾されることとなる。
【0031】
M.ヒオニューモニエ抗原遺伝子、pdhA、xylF、P78遺伝子、P132遺伝子、mhp145及びmhp389は、TGAコドンを含有する(eutDは、他のもののようにコドン利用の問題を有さない)。TGAコドンは、マイコプラズマ属菌種においてはトリプトファンに翻訳されるが、大腸菌においては停止コドンとして翻訳される。大腸菌遺伝子発現システムにおいて全タンパク質を産生することができないことを防ぐために、TGA部位を標的とするプライマーをデザインし、オーバーラップ伸長ポリメラーゼ連鎖反応を用いることによりTGAをTGGで置換する点突然変異を行わせた。結果として、大腸菌遺伝子発現システムにおいて発現させる遺伝子は、本発明の候補抗原に真に翻訳することができる。さらに、P78遺伝子、P132遺伝子及びmhp389のBamHIの切断部位は、クローニングの便宜のためにサイレント突然変異を受けさせた。
【0032】
点突然変異のために用いたプライマーは、点突然変異の部位をプライマーの中央部に配置し、78℃より高いTm値を有するようにデザインした。点突然変異のためのプライマーのTm値は、Invitrogene Co.により提示された式:Tm=81.5+0.41(GC%)−675/N−ミスマッチ%を用いて計算した。式中、GC%は、関係しているプライマーに含有される全ヌクレオチドを考慮したGCの百分率を指し、Nは、関係しているプライマーの長さを指し、ミスマッチ%は、関係しているプライマーに含有される全ヌクレオチドを考慮した突然変異を受ける塩基の百分率を指す。前記の遺伝子に用いたプライマーセットを以下の表3〜表8に示した。
【0033】
【表3】
【0034】
【表4】
【0035】
【表5】
【0036】
【表6】
【0037】
【表7】
【0038】
【表8】
【0039】
点突然変異に関する方法は、以下のように簡単に説明した。M.ヒオニューモニエPRIT−5の染色体を鋳型として用い、上の表3〜表8に示したプライマーセットを用いることによりDNA断片を増幅した。
50μLのPCR反応混合物は、1×GDP−HiFi PCR緩衝液、dATP、dTTP、dGTP及びdCTPの200μMの混合物、1μMのプライマー、M.ヒオニューモニエPRIT−5の100ngの染色体並びに1UのGDP−HIFI DNAポリメラーゼを含んでいた。PCR条件は、98℃に5分(1ラウンド);94℃に30秒、55℃に30秒、68℃にX秒(35ラウンド);68℃に5分(1ラウンド)であった。前記Xは、DNAポリメラーゼの伸長時間であり、増幅させる断片のサイズに応じて設定した。GDP−HIFI DNAポリメラーゼ(GeneDirex、Las Vegas、USA)の伸長速度は、1kb/15秒であり、したがって、GDP−HiFi DNAポリメラーゼを1kbのDNA断片を増幅するために用いる場合、前記Xは、15秒と設定するものとする。PCR反応の後、PCR産物が予想されたサイズのDNA断片を含有していたかどうかを確認するために電気泳動を実施した。次いで、Gel−M(商標)ゲル抽出システムキットを用いることによりPCR産物をリサイクルした。
【0040】
その後、PCR産物を鋳型として用い、上の表2に示したプライマーセットを用いることにより増幅した。PCR条件は、98℃に2分(1ラウンド);94℃に30秒、55℃に30秒、68℃にX秒(35ラウンド);68℃に5分(1ラウンド)であった。前記Xは、DNAポリメラーゼの伸長時間であり、増幅させる断片のサイズに応じて設定した。GDP−HIFI DNAポリメラーゼ(GeneDirex、Las Vegas、USA)の伸長速度は、1kb/15秒であり、したがって、GDP−HIFI DNAポリメラーゼを1kbのDNA断片を増幅するために用いる場合、前記Xは、15秒と設定するものとする。前記増幅ステップの後、点突然変異を有する候補抗原遺伝子の全長配列を得ることができる。
【0041】
次いで、PCR−M(商標)Clean Upシステムキット(GeneMark、Taichung、Taiwan)を用いることによりPCR産物をリサイクルし、CloneJET PCRクローニングキットを用いることによりそのクローニングを実施した。コロニーPCRを実施して、形質転換後の菌株がinsert DNAを有するプラスミドを含有することを確認し、次いで、その中のプラスミドをDNA配列決定(Systems Biology and Chemoinformatics Ltd.のトータルソリューションプロバイダー)のために単離した。突然変異候補抗原遺伝子を含有するプラスミドをそれぞれpJET−pdhAM、pJET−xylFM、pJET−P78M、pJET−P132M、pJET−mhp145M、pJET−mhp389Mと命名した。
配列決定の結果によれば、点突然変異後の候補抗原遺伝子のDNA配列は、配列番号01(pdhA)、配列番号02(xylF)、配列番号03(eutD、点突然変異させなかった)、配列番号04(mhp145)、配列番号05(P78遺伝子)、配列番号06(P132遺伝子)、配列番号07(mhp389)に示す通りであった。
【0042】
M.ヒオニューモニエ抗原を発現させるための発現ベクターの構築
実験のこの部分においては、M.ヒオニューモニエ抗原を発現させるための発現ベクターを構築するための骨格として、プラスミドpET−MSYを用いた。pET−MSYは、pET29aの誘導体であり、大腸菌msyBを有する。したがって、それにより発現する組換え抗原は、融合パートナーMsyBを有することとなる。MsyBは、酸性アミノ酸に富み、発現するタンパク質の溶解度を増加させることができる。
【0043】
pJET−eutD、pJET−pdhA、pJET−xylF、pJET−P78、pJET−P132、pJET−mhp145及びpJET−mhp389をBamHI及びSalIにより消化した後、得られたDNA断片を、同じ制限酵素によりあらかじめ消化したpET−Msyにリガーゼにより挿入した。次いで、DNA断片を含むpET−Msyを大腸菌ECOS9−5に形質転換した。コロニーPCRを実施して、形質転換後の菌株がinsert DNAを有するプラスミドを含有することを確認し、次いで、その中のプラスミドをDNA配列決定(Systems Biology and Chemoinformatics Ltd.のトータルソリューションプロバイダー)のために単離した。適正なDNA配列を有すると確認されたプラスミドをそれぞれpET−MSYEutD、pET−MSYPdhA、pET−MSYXylF、pET−MSYP78、pET−MSYP132、pET−MSYMhp145及びpET−MSYMhp389と命名した。得られたそれらのプラスミドは、本発明のマイコプラズマ属菌種感染を予防するための発現ベクターの例であった。
【0044】
M.ヒオニューモニエ抗原の発現及び単離
抗原発現のためのベクターを大腸菌BL21(DE3)に形質転換した。形質転換後に結果として生じた菌株の単一コロニーをカナマイシン(作業濃度:30μg/mL)を含有するLB液体培地に接種した。37℃、180rpmで一夜培養した後、細菌の懸濁液を1:100の比率で希釈し、カナマイシン(作業濃度:30μg/mL)を含有する別のLB液体培地に再び接種した。OD600、したがって、約0.6〜0.8を達成するまで細菌を37℃、180rpmで培養した。次いで、0.1mMのIPTGを加えて、発現を誘導した。4時間にわたる誘導の後、遠心分離(10000×g、10分、4℃)によりペレットを収集し、タンパク質電気泳動により発現を検査した。
【0045】
その後、固定化金属アフィニティークロマトグラフィー(IMAC)を、組換えタンパク質のN末端のHisタグとニッケルイオン又はコバルトイオンとの間の共有結合によるタンパク質の単離に用いた。タンパク質の単離のプロトコールは、QIAexpressionist(商標)の製品説明書(第4版、Qiagen)に準拠したものであった。ペレットを溶解緩衝液(50mM NaH2PO4、300mM NaCl、10mMイミダゾール、pH8.0)に懸濁し、超音波プロセッサーによりかき混ぜた。遠心分離(8,000×g、15分)の後、上清を収集して、1mLのNi−NTA樹脂のカラムに導入した。組換え抗原は、前記樹脂上に付着した。次いで、それに付着した非特異的タンパク質を除去することができるように15mLの洗浄緩衝液(50mM NaH2PO4、300mM NaCl、20mMイミダゾール、pH8.0)をカラムに導入して、樹脂を洗浄した。最後に、20mLの溶出緩衝液を加えて(50mM NaH2PO4、300mM NaCl、250mMイミダゾール、pH8.0)、樹脂上の組換え抗原を洗い落とした。この場合、高濃度のイミダゾールは、樹脂上の結合部位を組換えタンパク質と競合し、それにより、組換えタンパク質が洗い落とされることをもたらすことができる。次いで、単離の結果をタンパク質電気泳動により検査した。
単離により収集された本発明の候補抗原は、その後、抗マイコプラズマ属菌種サブユニットワクチンの有効成分として使用されるそれらの能力を確認するための以下の免疫試験に用いることができる。
【0046】
(例3)本発明の候補抗原のブタ免疫誘発実験
この例では、本発明の候補抗原をサブユニットワクチンを調製するための有効成分として用い、生存ブタにおけるその免疫効果について試験した。
ワクチンの調製
1つの単離組換え抗原又はいくつかの単離組換え抗原をアジュバントとしてのアルミナゲルと混合して、サブユニットワクチン又はカクテルサブユニットワクチンを調製した。調製されたワクチンのすべての用量は、容積が2mLであり、それに含有されていた各種の抗原は、100μgであった。
【0047】
以下の表9に免疫誘発実験のためにこの例で調製した試料を示す。
【表9】
ブタ免疫誘発実験は、Bayovac(登録商標)MH−PRIT−5(陽性対照群として、M.ヒオニューモニエPRIT−5を用いて作成)、サブユニットワクチン(本発明の試料1〜7)及びカクテルワクチン(本発明の試料8及び9)を用いて実施するものとした。
4週齢の33匹のSPFブタを農業技術研究所から入手し、実験の前に養豚場において同じ飼料、環境及び生育条件で給餌した。
ブタに35日及び49日齢まで給餌した後、ブタに2mLの上記のワクチンを筋肉内注射により投与した。
【0048】
誘発実験
免疫応答を誘導した前記のブタを109日齢においてマイコプラズマ属菌種により誘発して、前記のワクチンの免疫効果を確認した。
まず第一に、マイコプラズマ属菌種により感染させたブタから採取した肺を20mLのFriis培地中で磨砕し、148.8×gで10分間遠心分離した。上清を除去して清浄な管に入れ、再び7,870×gで40分間遠心分離した。次いで、上清を捨て、沈殿を6mLのFriis培地に懸濁して、懸濁液を得た。その後、懸濁液を5μm及び0.45μmの膜により連続的にろ過して、誘発実験に必要な細菌溶液を得た。
【0049】
細菌溶液(5mL)をその気管を介して麻酔ブタに投与した。投与してから28日後に、ブタを屠殺し、解剖してその肺を採取した。免疫効果は、肺を観察し、以下の基準に従って記録することにより検討した。病的特徴が認められた肺のいずれかの側のメドロ上葉(meddle upper lobe)及び上葉のいずれかを10点としてスコア化し、病的特徴が認められた肺のいずれかの側のメドロ上葉及び横隔葉のいずれかを5点としてスコア化した。全スコアは、55点であった。観察記録を図4に示した。
非注射ブタの結果と比較して、本発明の7つの候補抗原は、従来のワクチン(Bayovac(登録商標)MH−PRIT−5)と同等の免疫効果をもたらすことができた。サブユニットワクチンのより高い安全性を考慮に入れるならば、本発明の候補抗原を含有するワクチンは、より価値の高いものとされよう。
【0050】
他方で、2つ以上の抗原は2倍の免疫効果をもたらさない可能性があるため、1つのワクチンに免疫効果をもたらす2つ以上の抗原を使用することは一般的でなかった。実際、2つ以上の抗原が互いに妨害又は対抗し、その結果として、ワクチンの免疫効果を低下させるという可能性がより高い。この例の結果によれば、本発明の試料8及び試料9(すなわち、カクテルワクチン)は、思いがけなく免疫効果の有意な増大をもたらす。とは言うものの、本発明の候補抗原を組み合わせて用いる場合、本発明のサブユニットワクチンは、高い安全性を有するだけでなく、より十分な免疫効果ももたらす。
【0051】
当業者は、本発明の精神から逸脱することのない本発明の開示に基づく任意の可能な修正を容易に理解することができる。したがって、上記の実施例は、本発明を限定するために用いるのではなく、下文に示す特許請求の範囲に準じた本発明の精神及び範囲のもとでの任意の可能な修正を包含することを意図する。
次に、本発明の好ましい態様を示す。
1. 配列番号08、配列番号09、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14又はそれらの組合せのアミノ酸配列を含む、マイコプラズマ属菌種感染を予防するためのワクチンを調製するためのタンパク質。
2. PdhA、XylF、EutD、Mhp145、P78、P132、Mhp389又はそれらの組合せのタンパク質を含む有効成分と、
薬学的に許容されるアジュバントと
を含む、マイコプラズマ属菌種感染を予防するためのワクチン。
3. 前記有効成分が前記ワクチンの総容積に基づく50〜3500μg/mLの濃度のものである、上記2に記載のワクチン。
4. 前記有効成分がPdhA、XylF、EutD、Mhp145、P78、P132及びMhp389からなる群から選択される少なくとも2つのタンパク質を含む、上記2に記載のワクチン。
5. 前記有効成分がPdhA及びP78を含む、上記4に記載のワクチン。
6. 前記有効成分がXylF及びMhp145を含む、上記4に記載のワクチン。
7. 前記薬学的に許容されるアジュバントが完全フロイントアジュバント、不完全フロイントアジュバント、アルミナゲル、界面活性剤、ポリアニオンアジュバント、ペプチド、油エマルジョン又はそれらの組合せである、上記2に記載のワクチン。
8. 薬学的に許容される添加剤をさらに含む、上記2に記載のワクチン。
9. 前記薬学的に許容される添加剤が溶媒、安定剤、希釈剤、保存剤、抗菌剤、抗真菌剤、等張剤、吸収遅延剤又はそれらの組合せである、上記8に記載のワクチン。
10. 配列番号08、配列番号09、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14又はそれらの組合せのアミノ酸配列を含む有効成分と、
薬学的に許容されるアジュバントと
を含む、マイコプラズマ属菌種感染を予防するためのワクチン。
11. 前記有効成分が前記ワクチンの総容積に基づく50〜3500μg/mLの濃度のものである、上記10に記載のワクチン。
12. 前記有効成分が配列番号08、配列番号09、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13及び配列番号14からなる群から選択される少なくとも2つのアミノ酸配列を含む、上記10に記載のワクチン。
13. 前記有効成分が配列番号08及び配列番号12の2つのアミノ酸配列を含む、上記12に記載のワクチン。
14. 前記有効成分が配列番号09及び配列番号11の2つのアミノ酸配列を含む、上記12に記載のワクチン。
15. 前記薬学的に許容されるアジュバントが完全フロイントアジュバント、不完全フロイントアジュバント、アルミナゲル、界面活性剤、ポリアニオンアジュバント、ペプチド、油エマルジョン又はそれらの組合せである、上記10に記載のワクチン。
16. 薬学的に許容される添加剤をさらに含む、上記10に記載のワクチン。
17. 前記薬学的に許容される添加剤が溶媒、安定剤、希釈剤、保存剤、抗菌剤、抗真菌剤、等張剤、吸収遅延剤又はそれらの組合せである、上記16に記載のワクチン。
18. プラスミドを含む、マイコプラズマ属菌種感染を予防するためのワクチンを調製するための発現ベクターであって、前記プラスミドが
配列番号01、配列番号02、配列番号03、配列番号04、配列番号05、配列番号06及び配列番号07からなる群から選択される少なくとも1つの配列を含むヌクレオチド配列と、
調節エレメントと
を含む、発現ベクター。
19. 前記調節エレメントがプロモーター及びリボソーム結合部位を含む、上記18に記載の発現ベクター。
20. 前記プラスミドがpET−MSY、pET−YjgD、pET−D又はpET−SUMOである、上記18に記載の発現ベクター。
21. 融合パートナーをコードする遺伝子をさらに含む、上記18に記載の発現ベクター。
22. 前記融合パートナーが大腸菌のmsyB、大腸菌のyjgD、ラムダバクテリオファージのタンパク質D又はS.セレビシエのSUMOである、上記21に記載の発現ベクター。
23. 大腸菌遺伝子発現システムに用いる、上記18に記載の発現ベクター。
【符号の説明】
【0052】
1 XylF(キシロース結合リポタンパク質)
2 XylF(キシロース結合リポタンパク質)
3 XylF(キシロース結合リポタンパク質)
4 PdhA(ピルビン酸デヒドロゲナーゼE1−アルファサブユニット)
5 Mhp145(周辺質糖結合タンパク質)
6 EutD(ホスホトランスアセチラーゼ)
7 EutD(ホスホトランスアセチラーゼ)
8 Mhp389
9 P78(リポタンパク質)
10 P132
図1
図2
図3
図4-1】
図4-2】
図4-3】
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]