(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6113331
(24)【登録日】2017年3月24日
(45)【発行日】2017年4月12日
(54)【発明の名称】研磨パッド及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
B24B 37/24 20120101AFI20170403BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20170403BHJP
C08J 5/14 20060101ALI20170403BHJP
C08G 18/10 20060101ALI20170403BHJP
C08G 18/65 20060101ALI20170403BHJP
C08G 101/00 20060101ALN20170403BHJP
【FI】
B24B37/24 B
H01L21/304 622F
C08J5/14CFF
C08G18/10
C08G18/65 023
C08G101:00
【請求項の数】4
【外国語出願】
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-100815(P2016-100815)
(22)【出願日】2016年5月19日
(65)【公開番号】特開2016-215368(P2016-215368A)
(43)【公開日】2016年12月22日
【審査請求日】2016年7月27日
(31)【優先権主張番号】10-2015-0070674
(32)【優先日】2015年5月20日
(33)【優先権主張国】KR
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】514261960
【氏名又は名称】エフエヌエス テック カンパニー, リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】龍華国際特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100104156
【弁理士】
【氏名又は名称】龍華 明裕
(74)【代理人】
【識別番号】100118005
【弁理士】
【氏名又は名称】飯山 和俊
(74)【代理人】
【識別番号】100143502
【弁理士】
【氏名又は名称】明石 英也
(74)【代理人】
【識別番号】100138128
【弁理士】
【氏名又は名称】東山 忠義
(74)【代理人】
【識別番号】100156591
【弁理士】
【氏名又は名称】高田 学
(72)【発明者】
【氏名】キム、パルゴン
(72)【発明者】
【氏名】オ、スンテック
【審査官】
亀田 貴志
(56)【参考文献】
【文献】
特開2010−058194(JP,A)
【文献】
特開昭59−041501(JP,A)
【文献】
特開2009−172699(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 37/24
C08G 18/00 − 18/87
C08J 5/14
H01L 21/304
C08G 71/00 − 71/04
C08G 101/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プレポリマ(prepolymer)上にパウダ状の親水性高分子物質を添加するステップと、
前記プレポリマと前記パウダ状の親水性高分子物質に含まれる湿気との反応によって二酸化炭素を発生させ、前記プレポリマ内に気孔を形成するステップと、
を含み、
前記親水性高分子物質の含水率が0.05重量%から10重量%である、多孔性研磨パッドの製造方法。
【請求項2】
前記親水性高分子物質は、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルアセテート(PVAc)、ポリアクリル酸、ポリエチレンオキシド、またはスルホン化イソプレンを含む、請求項1に記載の多孔性研磨パッドの製造方法。
【請求項3】
前記プレポリマと前記親水性高分子物質との反応時に硬化剤が添加される、請求項1または2に記載の多孔性研磨パッドの製造方法。
【請求項4】
前記硬化剤は、4,4'−メチレン−ビス(2−クロロアニリン)、4,4'−メチレン−ビス−(3−クロロ−2,6−ジエチルアニリン)、ジメチルチオトルエンジアミン、トリメチレングリコールジ−p−アミノベンゾエイト、ポリテトラメチレンオキシドジ−p−アミノベンゾエイト、ポリテトラメチレンオキシドモノ−p−アミノベンゾエイト、ポリプロピレンオキシドジ−p−アミノベンゾエイト、ポリプロピレンオキシドモノ−p−アミノベンゾエイト、1,2−ビス(2−アミノフェニルチオ)エタン、4,4'−メチレン−ビス−アニリン、ジエチルトルエンジアミン、5−tert−ブチル−2,4−トルエンジアミン、3−tert−ブチル−2,6−トルエンジアミン、5−tert−アミル−2,4−トルエンジアミン、3−tert−アミル−2,6−トルエンジアミンまたはクロロトルエンジアミンを含む、請求項3に記載の多孔性研磨パッドの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、プレポリマと親水性高分子物質との反応によって発生する二酸化炭素気体による気孔を含む多孔性研磨パッド及び前記多孔性研磨パッドの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置は、シリコンなどの半導体材料を用い、平らで薄いウェハとして形成される。ウェハは、欠陥がないか、最小限の欠陥のみがある十分に平らな表面を有するように研磨されなければならない。ウェハを研磨するためには、様々な化学的、電気化学的、及び化学機械的な研磨技術が用いられる。多年間、光学レンズと半導体ウェハは、化学的−機械的手段によって研磨されてきた。特に、半導体技術分野の急速な進歩は、超大規模集積回路(VLSI)及び超々大規模集積回路(ULSI)の到来を迎え、これにより、半導体基板内において、より小さい領域により多くの素子を詰め込むことができるようになった。素子の密度が大きいほど、より高い平坦度が求められる。
【0003】
「化学機械研磨(chemical mechanical polishing、CMP)」において、ウレタン材料で製造された研磨パッドは、ウェハを研磨するためにスラリと共に用いられる。スラリは、水性の媒介物内に分散したアルミニウム酸化物、セリウム酸化物、またはシリカ粒子などの研磨粒子を含む。研磨粒子は、一般的に100から200nmの大きさを有する。表面調整剤、酸化剤またはpH調節剤などの他の作用剤がスラリ内に存在する。ウレタンパッドは、パッド及びウェハの全面に亘って、スラリの分布、及びスラリや廃スラリの除去に役立てるためのチャンネルまたは穿孔を有するように製織されている。一態様の研磨パッドにおいては、中空の球形の微小部材がウレタン材料の全体部分に分布されている。パッドの表面が使用に伴って摩耗していくときに、微小部材は、再生可能な表面組職を提供し続ける。
【0004】
一方、銅は、低い抵抗のため、連結物質としてますます多く用いられてきている。通常、導電性(金属)及び絶縁表面を平坦化するには、エッチング技術が用いられる。これに関し、CMP工程は、低誘電率(low−k)材料と銅配線の研磨の際に多くの欠陥をもたらす。銅ダマシン法のために低誘電率材料を用い、CMP工程を実行する場合、低誘電率材料は、高い機械的な圧力下において変形または破損し、基板表面に局所的な欠陥を形成するように変形されることがあり、銅配線の研磨の際、基板表面の過研磨(overpolishing)による銅配線のディッシング(dishing)及び誘電層の浸食(erosion)のような局所的な欠陥をもたらし得る。また、障壁(barrier)層のような他の層のばらついた除去をさらにもたらし得る。
【0005】
韓国特許第10−1109376号は、開放セルを含む化学−機械研磨パッドを提供している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本願の一側面は、プレポリマ(prepolymer)上に親水性高分子物質を添加するステップと、前記プレポリマと前記親水性高分子物質との反応によって二酸化炭素を発生させ、前記プレポリマ内に気孔を形成するステップとを含む、多孔性研磨パッドの製造方法を提供する。
【0007】
本願の他の側面は、二酸化炭素の気孔を含む多孔性研磨パッドを提供する。
【0008】
しかし、本願が解決しようとする課題は、上記に言及した課題に限定されるものではなく、言及されていない他の課題は、以下の記載から当業者にとって明確に理解されるはずである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願の第1の側面は、プレポリマ(prepolymer)上に親水性高分子物質を添加するステップと、前記プレポリマと前記親水性高分子物質との反応によって二酸化炭素を発生させ、前記プレポリマ内に気孔を形成するステップとを含む、多孔性研磨パッドの製造方法を提供する。
【0010】
本願の第2の側面は、本願の第1の側面により製造され、二酸化炭素の気孔を含む多孔性研磨パッドを提供する。
【発明の効果】
【0011】
本願の一具現例によれば、多孔性研磨パッドの製造工程において、プレポリマと親水性高分子物質とを用いて二酸化炭素を発生させることにより、研磨パッド内に気孔を形成することができる。
【0012】
特に、従来は、多孔性研磨パッドの製造工程において、パッド内に気孔を形成するために物理的発泡剤または化学的発泡剤を用いてきたが、特に物理的発泡剤により製造された多孔性研磨パッドを化学機械研磨工程に用いる場合、前記物理的発泡剤がパッド上に残留し、ウェハに損傷を与えることが頻繁にあった。
【0013】
しかし、本願の一具現例に係る製造方法によって多孔性研磨パッドを製造する場合、物理的発泡剤を用いることなく、親水性高分子物質を用いて気孔を形成することによって、研磨速度を均一にし、研磨対象の表面の品質を向上させる効果がある。特に、本願の製造方法において、気孔を形成するために用いられる親水性高分子物質は、化学機械研磨工程中にスラリまたは蒸留水に溶けてパッド上に残留しないので、研磨対象に損傷を与えない。
【0014】
また、本願の一具現例に係るプレポリマと親水性高分子物質との反応によって二酸化炭素を発生させる場合、前記反応の温度、攪拌速度、攪拌時間などを調節することによってプレポリマと親水性高分子物質との反応の程度を制御し、二酸化炭素の発生量を調節することができるので、多孔性研磨パッドの気孔の大きさと気孔率を容易に制御することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の属する技術分野において通常の知識を有する者が容易に実施できるように本願の具現例及び実施例を詳しく説明する。
ところが、本願は、様々な異なる形態で具現されることができ、ここで説明する具現例及び実施例に限定されるものではない。
【0016】
本願の明細書全体において、ある部分が他の部分と「連結」されているという場合、これは「直接的に連結」されている場合だけでなく、その中間に他の素子を介して「電気的に連結」されている場合も含む。
【0017】
本願の明細書全体において、ある部材が他の部材の「上に」位置しているという場合、これは、ある部材が他の部材に接している場合だけでなく、両部材の間にまた他の部材が存在する場合も含む。
【0018】
本願の明細書全体において、ある部分がある構成要素を「含む」という場合、これは、特に反対の記載がない限り、他の構成要素を除くのではなく、他の構成要素をさらに含み得ることを意味する。
【0019】
本明細書において用いられる程度の用語「約」、「実質的に」などは、言及された意味に固有の製造及び物質許容誤差が提示される場合、その数値で、またはその数値に近接した意味として用いられ、本願の理解を助けるために、適確であるか絶対的な数値が言及された開示内容を非良心的な侵害者が不当に用いることを防止するために用いられる。また、本願の明細書全体において、「〜するステップ」または「〜のステップ」は、「〜のためのステップ」を意味していない。
【0020】
本願の明細書全体において、マーカッシュ形式の表現に含まれた「これらの組み合わせ」という用語は、マーカッシュ形式の表現に記載された構成要素からなる群より選択される1つ以上の混合または組み合わせを意味するものであり、前記構成要素からなる群より選択される1つ以上を含むことを意味している。
【0021】
本願の明細書全体において、「A及び/又はB」の記載は、「A、B、または、A及びB」を意味している。
【0022】
以下、本願のパッドの製造方法について具現例及び実施例を参照しながら具体的に説明する。しかし、本願がこのような具現例及び実施例に限定されるものではない。
【0023】
本願の第1の側面は、プレポリマ(prepolymer)上に親水性高分子物質を添加するステップと、前記プレポリマと前記親水性高分子物質との反応によって二酸化炭素を発生させ、前記プレポリマ内に気孔を形成するステップとを含む、多孔性研磨パッドの製造方法を提供する。
【0024】
本願の一具現例において、前記プレポリマは、ポリイソシアネートを含むものであり、研磨パッドのマトリックスを構成するウレタンフォームの製造に用いられる。例えば、ウレタンの製造は、イソシアネートと予備重合体のポリオールからのイソシアネート基末端含有ウレタン予備重合体の反応から製造されるものであり得る。前記ポリオールは、ポリプロピレンエーテルグリコール、その共重合体及びその混合物であり得るが、これに限定されるものではない。具体的に、前記反応は、イソシアネート、ジ−イソシアネート、及びトリ−イソシアネート予備重合体のようなウレタン予備重合体を、イソシアネート反応残基を含む予備重合体と反応させることにより形成され得る。適合なイソシアネート反応残基は、アミン及びポリオールを含み得るが、これに限定されるものではない。
【0025】
ポリイソシアネートの成分としては、1分子中にイソシアネート基を2つ以上有する有機化合物であれば特に限定されない。例えば、脂肪族系、脂環族系及び芳香族系ポリイソシアネートまたはこれらの変性物が挙げられる。具体的には、脂肪族系及び脂環族系ポリイソシアネートとしては、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートなどが挙げられるが、これに限定されるものではない。芳香族系ポリイソシアネートとしては、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート及びポリフェニレンポリメチレンポリイソシアネートなどが挙げられ、また、これらのカルボジイミド変性物やプレポリマなどの変性物を含み得るが、これに限定されるものではない。
【0026】
本願の一具現例において、本願の研磨パッドの製造過程においては、上述した重合体樹脂を用いて製造することができ、このような製造過程では、当業界に広く知られた合成方法を特別な制限なく用いることができる。例えば、前記パッドの本体がポリウレタン系化合物より製造される場合は、プレポリマ法(pre−polymer method)またはワンショット法(one shot method)などを用い得る。前記プレポリマ法によれば、ポリオール成分及びイソシアネート成分を反応させてウレタンプレポリマを形成した後、前記ウレタンプレポリマ、ジアミンまたはジオール、発泡剤及び触媒などを混合し硬化させることによってポリウレタン系樹脂を形成することができる。また、前記ワンショット法によれば、ポリオール成分、イソシアネート成分、ジアミンまたはジオール、発泡剤及び触媒などを混合した後、硬化させることによってポリウレタン系樹脂を形成することができる。
【0027】
本願の一具現例において、前記親水性高分子物質は、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルアセテート(PVAc)、ポリアクリル酸、ポリエチレンオキシド、またはスルホン化イソプレンを含み得るが、これに限定されるものではない。
【0028】
本願の一具現例において、前記親水性高分子物質は、親水性基を含む高分子物質であり、前記親水性基は、アルコール基を含み得るが、これに限定されるものではない。前記親水性基を含む親水性高分子物質は、水分を吸収及び含有し、プレポリマに添加する際に前記プレポリマに水分を供給する役割をするものであり得る。
【0029】
本願の一具現例において、前記親水性高分子は、パウダ状であり得るが、これに限定されるものではない。親水性高分子として、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルアセテート(PVAc)、ポリアクリル酸、ポリエチレンオキシド、またはスルホン化イソプレンが前記プレポリマに添加される場合、分散性を向上させるために攪拌させても良く、親水性高分子を均一に分散させることによって、パッド内の気孔の分布を均一にすることができる。前記ポリビニルアルコールのパウダ粒子の大きさは約1μmから約150μmであり得るが、これに限定されるものではない。
【0030】
本願の一具現例において、具体的に、前記親水性パウダ粒子の大きさは約1μmから約150μmであり得るが、これに限定されるものではない。
【0031】
本願の親水性高分子は、前記プレポリマ内に気孔を形成するためのものであり、プレポリマに混合されて親水性高分子が含む水分とプレポリマ内の作用基との反応によって二酸化炭素を発生させることで、パッド内に気孔を形成するものであり得るが、これに限定されるものではない。
【0032】
また、前記重合体樹脂及び前記親水性高分子の他に、用途に応じて、添加剤、補助剤を前記重合体樹脂、例えばポリイソシアネート成分に混合して用いることがある。上記以外の添加剤、補助剤については特に限定されることはなく、通常の樹脂において物性向上や操作性向上などの目的として用いられるものであり、ウレタン化反応に顕著な悪影響を及ぼすものでなければ、何れを用いても構わない。
【0033】
本願の一具現例において、前記親水性高分子は、水分を含むものであり得る。前記水分を含む親水性高分子は、約0.01%から約10%の水分を含む親水性高分子パウダを約1%から約50%の湿度を有する雰囲気下において約1時間から約48時間保管することで、含水率を約0.05%から約10%にするものであり得るが、これに限定されるものではない。
【0034】
本願の一具現例において、前記親水性高分子の含水率は、約0.05%から約10%、約0.1%から約10%、約0.2%から約10%、約0.4%から約10%、約0.6%から約10%、約0.05%から約8%、約0.05%から約6%、または約0.05%から約4%であり得るが、これに限定されるものではない。
【0035】
前記水分がプレポリマのイソシアネートと反応し、下記反応式1のように二酸化炭素を生成する。このときに発生した二酸化炭素がプレポリマの内部で気泡を形成し、前記気泡が破裂する前にプレポリマを硬化する場合、閉鎖した気孔がプレポリマ内に存在するようになる。本願の一具現例に係る多孔性研磨パッドの製造方法によって前記親水性高分子を添加し、パッド内に気孔を形成する場合、前記親水性高分子物質はスラリまたは蒸留水により除去されるので、製造された研磨パッドの表面粗度が減少し、スクラッチのより少ない半導体基板の研磨表面を提供することができる。
【0037】
具体的に、前記の反応式1を見ると、イソシアネート基(−NCO)とポリビニルアルコールに含まれた水(HOH)とが反応して不安定なカルボキシ基が形成され、これは間もなくNH
2とCO
2として分解される。このときに発生した二酸化炭素は前記プレポリマの内部で気泡を形成し、この状態でプレポリマが硬化される場合、研磨パッドの孔隙となる。
【0038】
本願の一具現例において、前記プレポリマと前記親水性高分子との反応時に硬化剤を添加することを含み得るが、これに限定されるものではない。
【0039】
本願の一具現例において、前記硬化剤は、ウレタン予備重合体を硬化または硬質化するために用いられる化合物または化合物の混合物である。硬化剤は、イソシアネート基と反応して予備重合体の鎖を共に連結し、ポリウレタンを形成する。典型的に用いられる一般的な硬化剤は、MBCAと略称され、度々商標名モカ(MOCA;登録商標)と称される4,4'−メチレン−ビス(2−クロロアニリン);MCDEAと略称される4,4'−メチレン−ビス−(3−クロロ−2,6−ジエチルアニリン);ジメチルチオトルエンジアミン、トリメチレングリコールジ−p−アミノベンゾエイト;ポリテトラメチレンオキシドジ−p−アミノベンゾエイト;ポリテトラメチレンオキシドモノ−p−アミノベンゾエイト;ポリプロピレンオキシドジ−p−アミノベンゾエイト;ポリプロピレンオキシドモノ−p−アミノベンゾエイト;1,2−ビス(2−アミノフェニルチオ)エタン;4,4'−メチレン−ビス−アニリン;ジエチルトルエンジアミン;5−tert−ブチル−2,4−トルエンジアミン;3−tert−ブチル−2,6−トルエンジアミン;5−tert−アミル−2,4−トルエンジアミン、3−tert−アミル−2,6−トルエンジアミンまたはクロロトルエンジアミンなどを含み得るが、これに限定されるものではない。
【0040】
本願の第2の側面は、本願の第1の側面により製造され、二酸化炭素の気孔を含む多孔性研磨パッドを提供する。
【0041】
本願の第2の側面において、本願の第1の側面と同様に適用され得る説明は、重複を避けるために省略し、本願の第1の側面の説明内容を借用し得る。
【0042】
本願の一具現例において、本願の第1の側面に係るプレポリマと親水性高分子物質との反応によって二酸化炭素を発生させる場合、反応温度、攪拌速度、攪拌時間などを調節することによりプレポリマと親水性高分子物質との反応の程度を通じて二酸化炭素の発生量を制御することができるため、多孔性研磨パッドの気孔の大きさと気孔率を容易に制御することができる。特に、研磨パッド内に孔隙を形成するための従来の製造方法によれば、気孔の大きさと孔隙率の精密な調節が難しく、約50μm以下の均一な気孔の製作が容易ではなかった。
【0043】
そこで、第2の側面に係る研磨パッドは、二酸化炭素の気孔を含み、好ましい前記気孔の大きさは約1μmから約200μmであり得るが、これに限定されるものではない。また、本願の第1の側面により製造された本願の第2の側面の研磨パッドは、二酸化炭素の気孔を含み、好ましい孔隙率は約1%から約60%であり得るが、これに限定されるものではない。
【0044】
また、第2の側面に係る研磨パッドは、従来の研磨パッドが物理的発泡剤を用いて気孔を形成するにおいて、前記発泡剤がパッドの完成後もパッド上に残留し、研磨工程で研磨対象に欠陥を生じさせる問題があったこととは異なり、発泡剤による不純物が発生しないので、欠陥の発生を防止する。本願の製造方法において、二酸化炭素の気孔を形成するために用いられる親水性高分子物質は、化学機械研磨工程中にスラリまたは蒸留水に溶解され除去されるものであり、研磨対象に影響を与えない。
【0045】
以下、実施例を通じて本発明をより詳しく説明するが、以下の実施例は単に説明するためのものであり、本願の範囲を限定するものではない。
【実施例1】
【0046】
プレポリマを準備して50℃から80℃に加熱した後、粒子の大きさが10μmから100μmであるパウダ状のポリビニルアルコールを混合した。前記ポリビニルアルコールは、水分を吸収する役割をするものであり、0.01%から10%の水分を含むポリビニルアルコールパウダを1%から50%の湿度を有する雰囲気下において1時間から48時間保管することで、含水率が0.05%から10%になるように準備した。前記プレポリマとポリビニルアルコールの混合物を125℃のオーブンに入れて加熱し、硬化剤として溶融させた4,4'−メチレン−ビス(2−クロロアニリン)を注入した後、30秒間攪拌した。前記攪拌工程において、ポリビニルアルコールに含まれた水分がプレポリマのイソシアネート基と反応し、前記プレポリマ内に二酸化炭素を発生させることによってウレタン樹脂の内部に気孔を形成する。攪拌を終えた樹脂は、段差の殆どないプレートまたは一定の枠に塗布した。ここで、プレートまたは枠は、100℃のオーブンで1時間以上加熱したものを用い、前記プレートまたは枠に前記樹脂を塗布した後、100℃のオーブンに入れて24時間以上硬化させた。硬化の完了後、ウレタンを枠から分離して1mmから3mmの厚さで切断した。
【0047】
実施例1により製造された研磨パッドと従来の研磨パッドの研磨性能を比較するために、従来の研磨パッドとして、球形の気孔が充填されたポリウレタンマトリックスからなる研磨パッドを市販のシリコンウェハの研磨に用いた。研磨対象の前記シリコンウェハの表面層の組成物は二酸化ケイ素である。前記ウェハは、市販のシリカ系研磨スラリと研磨機の部品として供給される結合したダイヤモンドパッドコンディショナを用いる市販のウェハ研磨機(AP−300)上で研磨した。パッドは、それぞれのウェハを研磨する前に15分間コンディショニングした。
【0048】
前記コンディショニングの作用は、一連の不規則に配列した微小亀裂または溝をパッドの表面に形成することであり、前記コンディショニングによってパッド上にピッチが0.085inchで深みが0.040inchである一連の溝を生成した。また、用いられる研磨条件は、圧力9psi、加圧板の速度95rpm、キャリアの速度90rpm、及び研磨時間は1分であった。上記した条件を本実験例及びその他の全ての実験例に対して一定に維持することによって、本願の製造方法に係る研磨パッドと従来の研磨パッドの性能を直接対照することができる。従来の研磨パッドについて上記の研磨条件により研磨を実施した場合、試験ウェハに対し2000Å/min以下の材料除去率が観察された。これに対し、実施例の製造方法に係る研磨パッドを用いる場合、3,000Å/min以下の高くて且つ均一な研磨率が観察され、また、全ウェハに亘って材料除去率のばらつきが非常に低かった。
【0049】
上述した本願の説明は例示のためのものであり、本願の属する技術分野において通常の知識を有する者であれば、本願の技術的思想や必須の特徴を変更せずに他の具体的な形態に容易に変形可能であるということが理解できるはずである。それゆえ、上述した実施例は全ての面において例示的なものであり、限定的なものではないと理解すべきである。例えば、単一型で説明されている各構成要素は分散して実施されることもでき、同様に、分散したものと説明されている構成要素も結合した形態で実施されることができる。
【0050】
本願の範囲は、上記の詳細な説明よりは後述する特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲の意味及び範囲、並びにその均等概念から導出される全ての変更または変形された形態が本願の範囲に含まれることと解釈されなければならない。
以下に、実施形態の一例を項目として記す。
[項目1]
プレポリマ(prepolymer)上に親水性高分子物質を添加するステップと、
プレポリマと親水性高分子物質との反応によって二酸化炭素を発生させ、プレポリマ内に気孔を形成するステップと、
を含む、多孔性研磨パッドの製造方法。
[項目2]
親水性高分子物質は、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルアセテート(PVAc)、ポリアクリル酸、ポリエチレンオキシド、またはスルホン化イソプレンを含む、項目1に記載の多孔性研磨パッドの製造方法。
[項目3]
プレポリマと親水性高分子物質との反応時に硬化剤が添加される、項目1または2に記載の多孔性研磨パッドの製造方法。
[項目4]
硬化剤は、4,4'−メチレン−ビス(2−クロロアニリン)、4,4'−メチレン−ビス−(3−クロロ−2,6−ジエチルアニリン)、ジメチルチオトルエンジアミン、トリメチレングリコールジ−p−アミノベンゾエイト、ポリテトラメチレンオキシドジ−p−アミノベンゾエイト、ポリテトラメチレンオキシドモノ−p−アミノベンゾエイト、ポリプロピレンオキシドジ−p−アミノベンゾエイト、ポリプロピレンオキシドモノ−p−アミノベンゾエイト、1,2−ビス(2−アミノフェニルチオ)エタン、4,4'−メチレン−ビス−アニリン、ジエチルトルエンジアミン、5−tert−ブチル−2,4−トルエンジアミン、3−tert−ブチル−2,6−トルエンジアミン、5−tert−アミル−2,4−トルエンジアミン、3−tert−アミル−2,6−トルエンジアミンまたはクロロトルエンジアミンを含む、項目3に記載の多孔性研磨パッドの製造方法。
[項目5]
項目1から4のいずれかにより製造され、二酸化炭素の気孔を含む、多孔性研磨パッド。
[項目6]
気孔は、互いに連結されて形成される、項目5に記載の多孔性研磨パッド。