【課題を解決するための手段】
【0010】
(第一の発明)
第一の発明は、油化処理が可能な所定の排出物容器(40)を減容処理する減容装置(20)を搭載した移動体(10)に係る。
その移動体(10)は、少なくとも左右の側面および上面を囲ったコンテナボックス(12)を荷台に備える。
前記の減容装置(20)は、前記の排出物容器(40)を減容させるための減容用油(50)を蓄えるとともに当該排出物(40)を投入可能な処理空間を備えた処理タンク(21)と、 その処理タンク(21)の内部における減容用油(50)の量および温度を調整する調整装置(26)と、 その調整装置(26)によって量を調整された減容用油を貯留させる減容用油タンク(26a)と、を備える。
前記の処理タンク(21)は、前記のコンテナボックス(12)の内部空間へ配置するとともに、 前記の減容用油タンク(26a)は、前記の処理タンク(21)に隣接させて配置する。
前記のコンテナボックス(12)における上面を覆う上面パネル(12a)には、前記の処理タンク(21)が配置された位置にその処理タンクへの排出物容器(40)の投入を可能とするためのタンク用投入構造を備える。
そのタンク用投入構造(12b)の下方に位置する前記の処理タンクの上部には、前記のタンク用投入構造(12b)から前記の処理タンク(21)における内部空間へ連通するタンク上部投入口(21a)を備える。
前記の減容用油タンク(26a)は、前記のタンク上部投入口(21a)から前記の
排出物容器(40)を投入する作業者が投入作業をしやすい高さへ登りやすい階段構造を備える。
【0011】
(用語説明)
「排出物容器(40)」は、油化処理が可能な材質にて成型された樹脂容器である。蓋付きポリバケツなど、熱可塑性樹脂成型品であることが一般的である。排出物容器(40)として代表的なのは、所定の医療排出物を一時的に保管するための容器である。ここで「所定の医療排出物」とは、使い捨てにされる注射器、薬剤が入っていた容器、点滴チューブなど、特に医療現場で発生する各種の排出物(感染性の医療排出物)である。更には、滅菌処理を必要とする排出物を主に想定している。
「移動体」とは、代表的には車両のことであり、これには
後述する実施形態にて示す「荷台を備えたトラック」の他、自らは移動のための動力源を備えずに他の車両によって牽引されるコンテナ車両などをも含む。
【0012】
「減容用油(50)」とは、引火点が比較的高く、油化処理に適した油である。より具体的には、所定の排出物(プラスチックなど)の液相のものよりも比重が軽く、且つ、その引火点および発火点が排出物容器(40)や廃棄物の多くを占めるプラスチックの融解点よりも高い油である。例えば、大豆油、菜種油、オリーブ油、落花生油などの植物油、である。
「調整装置(26)」が調整する減容用油の温度は、処理タンク(21)における「処理」の段階(目的)および処理対象によって異なる。処理が油化あるいは油化の前処理を目的としているのであれば摂氏200〜270度であり、減容滅菌を目的としているのであれば摂氏170〜220度となる。ただし、減容滅菌であっても、長時間の処理によってある程度の油化処理となる。たとえば処理対象物である排出物容器(40)がポリカーボネートである場合には、油化処理のためには、摂氏270度となる。
【0013】
「タンク用投入構造」とは、たとえば、上面パネル(12a)にヒンジ状の金具を用いることによる開放構造、蓋およびヒンジ金具を用いて形成するタンク用投入口(12b)、などである。
「階段構造」とは、たとえば、減容用油タンク(26a)の形状を、荷台の上面からタンク上部投入口(21a)へ向かって登る階段状とする(
図1,2参照)。作業者の足場となる複数のステップを設けることとしてもよい。
【0014】
(作用)
本発明に係る移動体(10)が、排出物容器(40)が排出される現場(たとえば病院)へ移動する。そして、移動体(10)の運転手などの作業者が、排出物容器(40)を処理タンク(21)へ投入する。このとき、処理タンク(21)の処理空間には、排出物容器(40)を処理するために所定温度とされている減容用油(50)が貯留している。したがって、投入された排出物容器(40)は、減容用油(50)に浸ることで形が崩れ、内部の空気が抜けて減容する。減容用油(50)の温度が排出物容器(40)を油化させるような温度である場合には溶融が始まるが、減容および滅菌が主目的である。
排出物容器(40)が投入されると、その排出物容器(40)の温度が上がる分、減容用油(50)の温度が下がるが、調整装置(26)によって処理タンク(21)内の減容用油の温度は所定温度に保たれる。そのため、排出物容器(40)が加熱されることで、滅菌、除菌されつつ減容され、場合によっては溶融される。 医療排出物に対する溶融温度は、医療排出物からの感染症を防ぐための滅菌に必要な温度よりも十分高く、溶融が開始されれば滅菌時間も十分に確保できる。したがって、本発明を実施することにより、感染症の危険性が低くなることに寄与する。
【0015】
一般に、ゴミ収集車がゴミを収集する場合、機械的な圧力を掛けることでゴミを減容し、そのゴミ収集車によって運搬可能な容量を有効に活用する。しかし、機械的な圧力を掛けるのみでは滅菌がなされないので、作業者には排出物容器(40)を原因とする感染症へ罹患するなどのおそれが残っている。
本願に係る排出物処理用移動体であれば、数多くの排出物容器(40)を運搬前および運搬中に加熱によって減容し、同時に滅菌することができる。そのため、運搬可能な容量を有効に活用できるとともに、作業者の安全性も確保できる。
移動体(10)が移動しながら減容処理を実行すれば、排出物の温度が上昇しているので、油化が終了するまでのトータルの処理時間を短縮できる。また、加熱されることで内部を占めていた空気が逃げて体積が減る排出物も多く、排出物をそのまま運搬するよりも減容されるので、運搬効率を向上させることができる。油化が始まらない程度の温度に保つことで、減容用油(50)を繰り返して使用できる。
【0016】
排出物容器(40)は、タンク上部投入口(21a)から処理タンク(21)へ投入されるのであるが、作業者は、排出物容器(40)をタンク上部投入口(21a)へ投入しやすい位置まで運ばなければならない。減容用油タンク(26a)には、その投入作業をしやすい高さにまでへ登りやすい階段構造が備えられているので、作業者は、その階段構造を使って登ることができる。
排出物容器(40)をタンク上部投入口(21a)へ投入する作業のために、簡易クレーンなどの機器を使えないような場所や、そのような機器を使うまでもないような数の排出物容器(40)を投入する場合などにおいて、作業効率の向上に寄与する。
【0017】
(第一の発明のバリエーション1)
第一の発明は、以下のように形成すると、より好ましい。
すなわち、 前記の移動体(10)は、荷台を備えたトラックとし、 前記のコンテナボックス(12)の内部には、前記の減容装置(20)における少なくとも前記の処理タンク(21)および前記の
調整装置(26)を配置する。
前記の処理タンク(21)には、前記のコンテナボックス(12)において、前記の調整装置(26)よりもトラックの運転席から遠い位置に配置する。
【0018】
(作用)
処理タンク(21)は、コンテナボックス(12)における後方に位置する。このため、コンテナボックス(12)における排出物容器の処理タンク(21)への投入作業をする作業者の動線が、処理タンク(21)がコンテナボックス(12)における後方に位置していない場合に比べて短くて済む。
また、排出物を処理タンク(21)に収納した後は、移動体の総重量が増える。しかし、増えた総重量のうち、処理タンク(21)において増えた体積は、調整装置(26)または回収タンク(26a)へ油として蓄積され、そこへ重量が分散される。回収タンク(26a)は階段状であるので、重心も下がる。よって、車両全体の重量バランスを調整することになり、移動体の運転安定性に寄与する。
【0019】
(第一の発明のバリエーション2)
第一の発明は、以下のように形成すると、より好ましい。
すなわち、
前記の調整装置(26)は、処理タンク(21)の内部における減容用油(50)の量を調整するためのポンプ(26b)と、
そのポンプにて処理タンク(21)の内部から吸い出された減容用油(50)の温度を上昇させるための加熱器(25)と、
その
加熱器(25)および
前記のポンプ
(26b)へ電気エネルギを供給するための発電装置(27)と、を備える。
【0020】
(第一の発明のバリエーション3)
第一の発明は、前記の処理タンクを、廃棄プラスチック等を油化処理する油化プラントにおける油化装置に用いる内釜とすると、より好ましい。
ここで「油化プラントにおける油化装置」とは、熱分解油化装置などとも言われる。鉄鋼などで作製されるいわゆる内釜に対して、その底面や側面をバーナーの炎で加熱するのが「外釜」と呼ばれる。例えば、耐火煉瓦によって組まれてい
る。
【0021】
(作用)
処理タンク(21)は、廃棄プラスチック等を油化処理する油化プラントにおける油化装置に用いる内釜である。このため、その処理タンク(21)をそのまま、油化プラントにおける油化装置に入れることができる。
また、車両に積み込む前には、油化装置においてその内釜である処理タンク(21)に対して所定量の減容用油を満たし、加熱して減容用油が所定温度になったら、車両に積み込む。こうすることで、前記加熱器(25)および前記調整装置(26)が作動する時間を抑制できる。
処理タンク(21)内に多くの排出物を収容した後には、本請求項に係る移動体
(10)が油化プラントに戻り、その油化プラントおける油化装置に戻すことができる。それにより、前記の移動体
(10)による油化処理が不完全であっても、油化プラントにおける完全な油化処理が可能である。
【0022】
(第一の発明のバリエーション4)
第一の発明は、以下のように形成すると、より好ましい。
すなわち、前記処理タンク(21)には、その内部空間を形成する内面に沿って上部から下部側に移動可能な内蓋(22)と、 その内蓋(22)を上下動させるための内蓋上下動機構(23)と、を備えることとしてもよい
(図3参照)。
【0023】
「内蓋上下動機構(23)」とは、内蓋(22)を必要に応じて上下動させることができる機構である。たとえば、リンク機構、ラックアンドピニオン、チェーン式などがある。
【0024】
(作用)
排出物容器を処理タンク(21)に投入した直後には、排出物容器の中には空気が多く含まれているので減容用油に対して浮いてしまう。そのため、排出物容器の溶融が進まず、多くの排出物容器を投入することができない。そのため、内蓋(22)およびその内蓋(22)を上下動させるための内蓋上下動機構(23)によって、投入した排出物容器を押し下げ、排出物容器の溶融を促進させる。その結果、早く多くの排出物容器を投入することができるようになる。
【0025】
(第一の発明のバリエーション
5)
第一の発明は、以下のように形成すると、より好ましい。
すなわち、前記処理タンク(21)には、その内部空間に連通する排気管
(図7における21bを参照)を備え、 その排気管(21b)には、前記処理タンク(21)における内部空間から排出されるガスを除菌する除菌フィルタを備えることとしてもよい。
【0026】
(作用)
投入された排出物容器は、減容用油に浸ることで溶融が開始され、内部を占めていた多くの空気が処理タンク(21)内に充満し、やがて排気管(21b)を介して処理タンク(21)の外に出る。その際、処理タンク(21)の外に出る空気は、減容用油からもたらされる熱に、十分にさらされていない可能性がある。そのため、除菌が不十分であることが予想される。しかし、排気管(21b)には除菌フィルタが備えられているので、処理タンク(21)における内部空間から排出されるガスを除菌することができる。