特許第6113349号(P6113349)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6113349
(24)【登録日】2017年3月24日
(45)【発行日】2017年4月12日
(54)【発明の名称】排出物用処理移動体
(51)【国際特許分類】
   C08J 11/06 20060101AFI20170403BHJP
   B09B 3/00 20060101ALI20170403BHJP
   B09B 5/00 20060101ALI20170403BHJP
   B60P 3/00 20060101ALI20170403BHJP
   B65F 3/00 20060101ALI20170403BHJP
   C10G 1/10 20060101ALI20170403BHJP
【FI】
   C08J11/06
   B09B3/00 304P
   B09B5/00 Q
   B60P3/00 Q
   B65F3/00 K
   C10G1/10
【請求項の数】6
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-206284(P2016-206284)
(22)【出願日】2016年10月20日
【審査請求日】2016年11月24日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】516316071
【氏名又は名称】株式会社HOIDI JAPAN
(73)【特許権者】
【識別番号】516316082
【氏名又は名称】耿 躍杰
(73)【特許権者】
【識別番号】516316093
【氏名又は名称】劉 効蘭
(73)【特許権者】
【識別番号】516316107
【氏名又は名称】種村 秀輝
(74)【代理人】
【識別番号】100101384
【弁理士】
【氏名又は名称】的場 成夫
(74)【代理人】
【識別番号】100101742
【弁理士】
【氏名又は名称】麦島 隆
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 實
【審査官】 増田 健司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−302039(JP,A)
【文献】 特開2003−80999(JP,A)
【文献】 特開2003−82155(JP,A)
【文献】 特開平10−44151(JP,A)
【文献】 特開2001−260739(JP,A)
【文献】 特開2001−261881(JP,A)
【文献】 特開2001−40135(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 11/06
B09B 3/00
B09B 5/00
B60P 3/00
B65F 3/00
C10G 1/10
A61L 11/00
A61L 2/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
油化処理が可能な所定の排出物容器を減容処理する減容装置を搭載した移動体であって、
その移動体は、少なくとも左右の側面および上面を囲ったコンテナボックスを荷台に備え、
前記の減容装置は、前記の排出物容器を減容させるための減容用油を蓄えるとともに当該排出物を投入可能な処理空間を備えた処理タンクと、
その処理タンクの内部における減容用油の量および温度を調整する調整装置と、
その調整装置によって量を調整された減容用油を貯留させる減容用油タンクと、
を備え、
前記の処理タンクは、前記のコンテナボックスの内部空間へ配置するとともに、
前記の減容用油タンクは、前記の処理タンクに隣接させて配置し、
前記のコンテナボックスにおける上面を覆う上面パネルには、前記の処理タンクが配置された位置にその処理タンクへの排出物容器の投入を可能とするためのタンク用投入構造を備え、
そのタンク用投入構造の下方に位置する前記の処理タンクの上部には、前記のタンク用投入構造から前記の処理タンクにおける内部空間へ連通するタンク上部投入口を備え、
前記の減容用油タンクは、前記のタンク上部投入口から前記の排出物容器を投入する作業者が投入作業をしやすい高さへ登りやすい階段構造
を備えた排出物処理用移動体。
【請求項2】
前記の移動体は、荷台を備えたトラックとし、
前記のコンテナボックスの内部には、前記の減容装置における少なくとも前記の処理タンクおよび前記の調整装置を配置するとともに、
前記の処理タンクには、前記のコンテナボックスにおいて、前記の調整装置よりもトラックの運転席から遠い位置に配置した請求項1に記載の排出物処理用移動体。
【請求項3】
前記の調整装置は、処理タンクの内部における減容用油の量を調整するためのポンプと、
そのポンプにて処理タンクの内部から吸い出された減容用油の温度を上昇させるための加熱器と、
その加熱器および前記のポンプへ電気エネルギを供給するための発電装置と、を備えた請求項1または請求項2のいずれかに記載の排出物処理用移動体。
【請求項4】
前記の処理タンクは、廃棄プラスチック等を油化処理する油化プラントにおける油化装置に用いる内釜とした請求項1から請求項3のいずれかに記載の排出物処理用移動体。
【請求項5】
前記の処理タンクには、その内部空間を形成する内面に沿って上部から下部側に移動可能な内釜と、
その内釜を上下動させるための内釜上下動機構と、
を備えた請求項1から請求項4のいずれかに記載の排出物処理用移動体。
【請求項6】
前記の処理タンクには、その内部空間に連通する排気管を備え、
その排気管には、前記処理タンクにおける内部空間から排出されるガスを除菌する除菌フィルタと、
前記処理タンクにおける内部空間から排出されるガスの脱臭を行う脱臭装置と、
を備えた請求項1から請求項5のいずれかに記載の排出物処理用移動体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油化処理が可能な排出物や廃棄物を、その発生場所、集積場所などに出向いて処理することができる移動体に関する技術である。
ここで、油化処理が可能な排出物、廃棄物とは、一般の廃棄プラスチック、廃棄発泡スチロール、FRPなどである。
【背景技術】
【0002】
従来、プラスチック、発泡スチロールなどの処理は、焼却、埋め立てなどによっていた。焼却処理の場合は、被処理物の多くがプラスチックで占められているため、焼却炉の寿命が短くなる他、ダイオキシン発生を防止しなければならないなど問題がある。
また、排出物や廃棄物をその発生場所や集積場所にて処理することは、安全性や悪臭などの周辺環境への影響、処理スペース確保などが制限条件となっており、難しかった。
【0003】
さて、本願の発明者は、前述のような課題を解決するため、特許文献1に開示する技術を案出し、特許を取得した。
この技術は、油化処理が可能な排出物や廃棄物を、その発生場所、集積場所などに出向いて処理する技術を確保でき、排出物の輸送効率の向上できる排出物処理用移動体に係る。
【0004】
具体的に説明する。
特許文献1に開示されたのは、医療現場で使い捨てされる注射器や点滴チューブなどの排出物を収納した樹脂製の排出物容器を、溶融処理するための溶融処理装置(20)を搭載したトラックなどの移動体(10)である(図7参照)。
【0005】
溶融処理装置(20)は、排出物容器を溶融させるための溶融油を蓄えるとともに当該排出物容器を投入可能な処理空間を備えた処理タンク(21)と、その処理タンク(21)内の溶融油の温度を所定温度に保つための加熱器(25)と、その加熱器(25)および前記処理タンク(21)との間で溶融油の量を調整するための調整装置(26)とを備えている。調整装置(26)には、回収タンク(26a)、ポンプ(26b)、配管、弁などが含まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許4324683公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者が特許文献1に開示された排出物処理用移動体を使って、医療排出物を収納したプラスチック容器である排出物容器を回収し、油化処理を実行したところ、以下のような問題点に気付いた。
排出物処理用移動体は、排出物容器が発生する医療現場(病院など)では、数多くの排出物容器を短時間で処理タンク(21)へ投入することが求められる。投入作業の際には、処理タンク(21)が開放されるために、溶融油の温度が下がってしまうからである。
第一の問題点として、数多くの排出物容器を処理タンク(21)へ投入するという作業を短時間で実行するのが困難な点である。
【0008】
第二の問題点としては、移動体(10)の安定性である。回収用タンク(26a)を前方(運転席寄り)に位置させる構造としていたが、回収用タンク(26a)には、溶融油が常時入っているわけではなく、入っていても少ないことも多い。回収用タンク(26a)に入っている溶融油の量が少ないのであれば、前方には位置することの意味は大きくないようである。
それよりも、回収用タンク(26a)に溶融油が入っている場合には重心が下がるような設計のほうが、移動体(10)は安定すると予想される。
【0009】
本発明が解決しようとする課題は、排出物処理用移動体に関し、処理の対象を処理タンクへ投入する作業を効率化でき、移動体の安定性を高めることに寄与する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(第一の発明)
第一の発明は、油化処理が可能な所定の排出物容器(40)を減容処理する減容装置(20)を搭載した移動体(10)に係る。
その移動体(10)は、少なくとも左右の側面および上面を囲ったコンテナボックス(12)を荷台に備える。
前記の減容装置(20)は、前記の排出物容器(40)を減容させるための減容用油(50)を蓄えるとともに当該排出物(40)を投入可能な処理空間を備えた処理タンク(21)と、 その処理タンク(21)の内部における減容用油(50)の量および温度を調整する調整装置(26)と、 その調整装置(26)によって量を調整された減容用油を貯留させる減容用油タンク(26a)と、を備える。
前記の処理タンク(21)は、前記のコンテナボックス(12)の内部空間へ配置するとともに、 前記の減容用油タンク(26a)は、前記の処理タンク(21)に隣接させて配置する。
前記のコンテナボックス(12)における上面を覆う上面パネル(12a)には、前記の処理タンク(21)が配置された位置にその処理タンクへの排出物容器(40)の投入を可能とするためのタンク用投入構造を備える。
そのタンク用投入構造(12b)の下方に位置する前記の処理タンクの上部には、前記のタンク用投入構造(12b)から前記の処理タンク(21)における内部空間へ連通するタンク上部投入口(21a)を備える。
前記の減容用油タンク(26a)は、前記のタンク上部投入口(21a)から前記の排出物容器(40)を投入する作業者が投入作業をしやすい高さへ登りやすい階段構造を備える。
【0011】
(用語説明)
「排出物容器(40)」は、油化処理が可能な材質にて成型された樹脂容器である。蓋付きポリバケツなど、熱可塑性樹脂成型品であることが一般的である。排出物容器(40)として代表的なのは、所定の医療排出物を一時的に保管するための容器である。ここで「所定の医療排出物」とは、使い捨てにされる注射器、薬剤が入っていた容器、点滴チューブなど、特に医療現場で発生する各種の排出物(感染性の医療排出物)である。更には、滅菌処理を必要とする排出物を主に想定している。
「移動体」とは、代表的には車両のことであり、これには後述する実施形態にて示す「荷台を備えたトラック」の他、自らは移動のための動力源を備えずに他の車両によって牽引されるコンテナ車両などをも含む。
【0012】
「減容用油(50)」とは、引火点が比較的高く、油化処理に適した油である。より具体的には、所定の排出物(プラスチックなど)の液相のものよりも比重が軽く、且つ、その引火点および発火点が排出物容器(40)や廃棄物の多くを占めるプラスチックの融解点よりも高い油である。例えば、大豆油、菜種油、オリーブ油、落花生油などの植物油、である。
「調整装置(26)」が調整する減容用油の温度は、処理タンク(21)における「処理」の段階(目的)および処理対象によって異なる。処理が油化あるいは油化の前処理を目的としているのであれば摂氏200〜270度であり、減容滅菌を目的としているのであれば摂氏170〜220度となる。ただし、減容滅菌であっても、長時間の処理によってある程度の油化処理となる。たとえば処理対象物である排出物容器(40)がポリカーボネートである場合には、油化処理のためには、摂氏270度となる。
【0013】
「タンク用投入構造」とは、たとえば、上面パネル(12a)にヒンジ状の金具を用いることによる開放構造、蓋およびヒンジ金具を用いて形成するタンク用投入口(12b)、などである。
「階段構造」とは、たとえば、減容用油タンク(26a)の形状を、荷台の上面からタンク上部投入口(21a)へ向かって登る階段状とする(図1,2参照)。作業者の足場となる複数のステップを設けることとしてもよい。
【0014】
(作用)
本発明に係る移動体(10)が、排出物容器(40)が排出される現場(たとえば病院)へ移動する。そして、移動体(10)の運転手などの作業者が、排出物容器(40)を処理タンク(21)へ投入する。このとき、処理タンク(21)の処理空間には、排出物容器(40)を処理するために所定温度とされている減容用油(50)が貯留している。したがって、投入された排出物容器(40)は、減容用油(50)に浸ることで形が崩れ、内部の空気が抜けて減容する。減容用油(50)の温度が排出物容器(40)を油化させるような温度である場合には溶融が始まるが、減容および滅菌が主目的である。
排出物容器(40)が投入されると、その排出物容器(40)の温度が上がる分、減容用油(50)の温度が下がるが、調整装置(26)によって処理タンク(21)内の減容用油の温度は所定温度に保たれる。そのため、排出物容器(40)が加熱されることで、滅菌、除菌されつつ減容され、場合によっては溶融される。 医療排出物に対する溶融温度は、医療排出物からの感染症を防ぐための滅菌に必要な温度よりも十分高く、溶融が開始されれば滅菌時間も十分に確保できる。したがって、本発明を実施することにより、感染症の危険性が低くなることに寄与する。
【0015】
一般に、ゴミ収集車がゴミを収集する場合、機械的な圧力を掛けることでゴミを減容し、そのゴミ収集車によって運搬可能な容量を有効に活用する。しかし、機械的な圧力を掛けるのみでは滅菌がなされないので、作業者には排出物容器(40)を原因とする感染症へ罹患するなどのおそれが残っている。
本願に係る排出物処理用移動体であれば、数多くの排出物容器(40)を運搬前および運搬中に加熱によって減容し、同時に滅菌することができる。そのため、運搬可能な容量を有効に活用できるとともに、作業者の安全性も確保できる。
移動体(10)が移動しながら減容処理を実行すれば、排出物の温度が上昇しているので、油化が終了するまでのトータルの処理時間を短縮できる。また、加熱されることで内部を占めていた空気が逃げて体積が減る排出物も多く、排出物をそのまま運搬するよりも減容されるので、運搬効率を向上させることができる。油化が始まらない程度の温度に保つことで、減容用油(50)を繰り返して使用できる。
【0016】
排出物容器(40)は、タンク上部投入口(21a)から処理タンク(21)へ投入されるのであるが、作業者は、排出物容器(40)をタンク上部投入口(21a)へ投入しやすい位置まで運ばなければならない。減容用油タンク(26a)には、その投入作業をしやすい高さにまでへ登りやすい階段構造が備えられているので、作業者は、その階段構造を使って登ることができる。
排出物容器(40)をタンク上部投入口(21a)へ投入する作業のために、簡易クレーンなどの機器を使えないような場所や、そのような機器を使うまでもないような数の排出物容器(40)を投入する場合などにおいて、作業効率の向上に寄与する。
【0017】
(第一の発明のバリエーション1)
第一の発明は、以下のように形成すると、より好ましい。
すなわち、 前記の移動体(10)は、荷台を備えたトラックとし、 前記のコンテナボックス(12)の内部には、前記の減容装置(20)における少なくとも前記の処理タンク(21)および前記の調整装置(26)を配置する。
前記の処理タンク(21)には、前記のコンテナボックス(12)において、前記の調整装置(26)よりもトラックの運転席から遠い位置に配置する。
【0018】
(作用)
処理タンク(21)は、コンテナボックス(12)における後方に位置する。このため、コンテナボックス(12)における排出物容器の処理タンク(21)への投入作業をする作業者の動線が、処理タンク(21)がコンテナボックス(12)における後方に位置していない場合に比べて短くて済む。
また、排出物を処理タンク(21)に収納した後は、移動体の総重量が増える。しかし、増えた総重量のうち、処理タンク(21)において増えた体積は、調整装置(26)または回収タンク(26a)へ油として蓄積され、そこへ重量が分散される。回収タンク(26a)は階段状であるので、重心も下がる。よって、車両全体の重量バランスを調整することになり、移動体の運転安定性に寄与する。
【0019】
(第一の発明のバリエーション2)
第一の発明は、以下のように形成すると、より好ましい。
すなわち、前記の調整装置(26)は、処理タンク(21)の内部における減容用油(50)の量を調整するためのポンプ(26b)と、
そのポンプにて処理タンク(21)の内部から吸い出された減容用油(50)の温度を上昇させるための加熱器(25)と、
その加熱器(25)および前記のポンプ(26b)へ電気エネルギを供給するための発電装置(27)と、を備える。
【0020】
(第一の発明のバリエーション3)
第一の発明は、前記の処理タンクを、廃棄プラスチック等を油化処理する油化プラントにおける油化装置に用いる内釜とすると、より好ましい。
ここで「油化プラントにおける油化装置」とは、熱分解油化装置などとも言われる。鉄鋼などで作製されるいわゆる内釜に対して、その底面や側面をバーナーの炎で加熱するのが「外釜」と呼ばれる。例えば、耐火煉瓦によって組まれている。
【0021】
(作用)
処理タンク(21)は、廃棄プラスチック等を油化処理する油化プラントにおける油化装置に用いる内釜である。このため、その処理タンク(21)をそのまま、油化プラントにおける油化装置に入れることができる。
また、車両に積み込む前には、油化装置においてその内釜である処理タンク(21)に対して所定量の減容用油を満たし、加熱して減容用油が所定温度になったら、車両に積み込む。こうすることで、前記加熱器(25)および前記調整装置(26)が作動する時間を抑制できる。
処理タンク(21)内に多くの排出物を収容した後には、本請求項に係る移動体(10)が油化プラントに戻り、その油化プラントおける油化装置に戻すことができる。それにより、前記の移動体(10)による油化処理が不完全であっても、油化プラントにおける完全な油化処理が可能である。
【0022】
(第一の発明のバリエーション4)
第一の発明は、以下のように形成すると、より好ましい。
すなわち、前記処理タンク(21)には、その内部空間を形成する内面に沿って上部から下部側に移動可能な内蓋(22)と、 その内蓋(22)を上下動させるための内蓋上下動機構(23)と、を備えることとしてもよい図3参照)
【0023】
「内蓋上下動機構(23)」とは、内蓋(22)を必要に応じて上下動させることができる機構である。たとえば、リンク機構、ラックアンドピニオン、チェーン式などがある。
【0024】
(作用)
排出物容器を処理タンク(21)に投入した直後には、排出物容器の中には空気が多く含まれているので減容用油に対して浮いてしまう。そのため、排出物容器の溶融が進まず、多くの排出物容器を投入することができない。そのため、内蓋(22)およびその内蓋(22)を上下動させるための内蓋上下動機構(23)によって、投入した排出物容器を押し下げ、排出物容器の溶融を促進させる。その結果、早く多くの排出物容器を投入することができるようになる。
【0025】
(第一の発明のバリエーション
第一の発明は、以下のように形成すると、より好ましい。
すなわち、前記処理タンク(21)には、その内部空間に連通する排気管(図7における21bを参照)を備え、 その排気管(21b)には、前記処理タンク(21)における内部空間から排出されるガスを除菌する除菌フィルタを備えることとしてもよい。
【0026】
(作用)
投入された排出物容器は、減容用油に浸ることで溶融が開始され、内部を占めていた多くの空気が処理タンク(21)内に充満し、やがて排気管(21b)を介して処理タンク(21)の外に出る。その際、処理タンク(21)の外に出る空気は、減容用油からもたらされる熱に、十分にさらされていない可能性がある。そのため、除菌が不十分であることが予想される。しかし、排気管(21b)には除菌フィルタが備えられているので、処理タンク(21)における内部空間から排出されるガスを除菌することができる。
【発明の効果】
【0027】
第一の発明によれば、排出物処理用移動体に関し、処理の対象を処理タンクへ投入する作業を効率化でき、移動体の安定性を高めることに寄与する排出物処理用移動体を提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明の実施形態に係るトラックを概略的に示した斜視図である。一部の部品は図示を省略している。
図2】本発明の実施形態に係るトラックを概略的に示した側面図である。
図3】本発明の実施形態に係るトラックにおける主要部を拡大した側面図である。
図4】本発明の実施形態に係るトラックへ処理タンクを収納する場合を示す斜視図である。
図5】油化プラントにおける油化装置の主要部を示す側面図である。
図6】本発明の実施形態に係る回収タンクとトラックとの関係を示す側面図である。
図7】従来技術を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、図1から図6(補足的に従来技術を示した図7を参照させながら、本願発明の実施形態について説明する。図1から図3、および図6は、本実施形態に係るトラック(10)を概略的に示した図である。
このトラック(10)は、所定の医療排出物が入ったプラスチック容器である排出物容器(40)を溶融処理するための減容装置(20)を搭載した移動体である。そして、六面を囲ったコンテナボックス(12)を荷台(11)に備えるとともに、前記の加熱器(25)に用いる熱エネルギを供給するための発電装置(27)を運転席および前記コンテナボックスの間に搭載している。
【0030】
前記の減容装置(20)は、前記の排出物容器(40)を溶融させるための減容用油(50)を蓄えるとともに当該排出物容器(40)を投入可能な処理空間を備えた処理タンク(21)と、 その処理タンク(21)内の減容用油の温度を所定温度に保つための加熱器(25)と、 その加熱器(25)および前記処理タンク(21)との間で減容用油の量を調整するための調整装置(26)とを備えている。調整装置(26))には、減容用油タンク(26a)、ポンプ(26b)、配管(26c)、弁などが含まれる。
【0031】
「所定の医療排出物」とは、使い捨てにされる注射器、薬剤が入っていた容器、点滴チューブなど医療現場にて出される排出物である。
「排出物容器(40)」は、処理タンク(21)に用いられる減容用油(50)にて油化処理が可能な材質にて成型された樹脂容器である。蓋付きのポリバケツなどでもよいが、医療排出物を安全に収納して保持できるという条件を満たす必要がある。
【0032】
「処理タンク(21)内の減容用油である所定温度」とは、処理タンクにおける「処理」の段階(目的)によって異なる。本実施形態では、減容と滅菌を目的として摂氏200〜270度としており、油化の前処理となる。
「減容用油」とは、排出物容器およびその排出物容器内の廃棄物(プラスチック)の液相のものよりも比重が軽く、且つ、その引火点および発火点が当該プラスチックの融解点よりも高い油である。本実施形態では、大豆油を採用した。因みに、大豆油と同様の不乾性植物油であるオリーブ油は、比重0.91、引火点225℃、発火点343℃である。一方、処理対象の一つであるポリスチロールの融解点は160〜180℃、比重は1.0〜1.3であって、いずれも上記の要件を満たしている。
本実施形態では、減容用油(50)として、約3000リットルを処理タンク(21)に蓄えることとしている。また、調整装置(26)の減容用油タンク(26a)には、2880リットルの体積を確保している。
【0033】
(内釜)
処理タンク(21)は、廃棄プラスチック等を油化処理する油化プラントにおける油化装置に用いる内釜をそのまま用いる。これを図4および図5に示す。「油化プラントにおける油化装置」とは、熱分解油化装置などと言われる。鉄鋼などで作製されるいわゆる内釜に対して、その底面や側面をバーナーの炎で加熱するのが「外釜」と呼ばれる。
この内釜となる処理タンク(21)における上部のフランジ部を、円筒形をなす処理タンク固定材(24)が支えることで、処理タンク(21)の底をわずかに浮かせた状態で保持する。なお、処理タンク固定材(24)は、断熱効果のある素材を採用している。
【0034】
(油化プラントとトラックとの関係)
処理タンク(21)が廃棄プラスチック等を油化処理する油化プラントにおける油化装置に用いる内釜であるので、その処理タンク(21)をそのまま、油化プラントにおける油化装置に入れることができる。そのため、トラック(10)に積み込む前には、油化装置においてその内釜である処理タンク(21)に対して所定量の減容用油(50)を満たし、加熱して減容用油(50)が所定温度になったら、トラック(10)に積み込む。こうすることで、加熱器(25)および調整装置(26)を作動させる時間を抑制できる。
処理タンク(21)内に多くの排出物容器(40)を収容した後には、そのトラックによって油化プラントに戻ったら、その油化プラントおける油化装置へ戻すことができる。
【0035】
処理タンク(21)は、その内部空間を形成する内面に沿って上部から下部側に移動可能な内蓋(22)と、その内蓋(22)を上下動させるためのリンク機構(23)とを備えている。このリンク機構(23)は、コントローラ(28)によって作動させることができる。そのコントローラ(28)は、減容用油タンク(26a)の上部へ着脱自在に固定されている(図1,2参照)。
本実施形態においては、コンテナボックスの上面パネル(12a)は、蝶番(図示を省略)を用いて側面パネルへ固定しているので、ウィング状に開閉できる(図1参照)。しかし、蝶番を用いず、減容用油タンク(26a)へ連通させるタンク用投入口(この実施形態とは異なる形態であるため図示を省略)を備えることとしても良い。
【0036】
排出物容器を処理タンク(21)に投入した直後には、排出物容器(40)の中には空気が多く含まれているので減容用油(50)に対して浮いてしまう。そのため、排出物容器(40)の溶融が進まず、多くの排出物容器(40)を投入することができない。そのため、内蓋(22)およびその内蓋(22)を上下動させるためのリンク機構(23)によって、投入した排出物容器(40)に圧力を掛けて押し下げ、排出物容器(40)の溶融を促進させる。その結果、早く多くの排出物容器(40)を投入することができるようになる。
なお、上部投入口(21a)の真下には、内蓋(22)に図7に示した従来技術と同様に内蓋開口部(図1図2においては図示を省略)を備えてあり、その内蓋開口部が開くことで、排出物容器の投入の際に内蓋(22)が邪魔にならない。
【0037】
前記処理タンク(21)には、前記処理タンク(21)における内部空間に連通する排気管(図1図2においては図示を省略)を図7に示した従来技術と同様に備える。また、その排気管には、前記処理タンク(21)における内部空間から排出されるガスを除菌する除菌フィルタを備えている。この除菌フィルタは、脱臭効果もある。
【0038】
投入された排出物容器(40)は、減容用油(50)に浸ることで、排出物容器(40)の内部を占めていた多くの空気が処理タンク(21)内に充満し、やがて排気管を介して処理タンク(21)の外に出る。その際、処理タンク(21)の外に出る空気は、減容用油(50)からもたらされる熱に、十分にさらされていない可能性がある。そのため、除菌が不十分であることが予想される。しかし、排気管には図7に示した従来技術と同様に除菌・脱臭装置(図1図2においては図示を省略)が連結され、その中には除菌フィルタが備えられることで、処理タンク(21)における内部空間から排出されるガスを除菌することができる。
なお、除菌とともに脱臭処理も実行すれば、トラック(10)が処理を実行している場所の周囲に対する影響を最小限に抑えることができる。
【0039】
コンテナボックス(12)には、減容装置(20)における少なくとも処理タンク(21)および加熱器(25)を配置する。また、処理タンク(21)は、コンテナボックス(12)において、加熱器(25)よりもトラックの運転席から遠い位置に配置している。
本実施形態においては、発電装置(27)もコンテナボックス(12)に配置しているが、発電装置(27)が軽油発電方式であるため運転中に排気ガスを出すので、コンテナボックス(12)の外に位置させることとしてもよい。なお、本実施形態における発電装置(27)の能力は、50アンペアである。
【0040】
本実施形態における移動体はトラック(10)であるので、運転手がいれば、排出物容器が排出される現場、例えば病院に移動させることができる。
コンテナボックス(12)においては、処理タンク(21)が加熱器(25)よりもトラックの運転席から遠い位置に配置されている。すなわち、処理タンク(21)は、コンテナボックス(12)における後方に位置する。このため、コンテナボックス(12)における排出物容器の処理タンク(21)への投入作業をする作業者の動線が、処理タンク(21)がコンテナボックス(12)における後方に位置していない場合に比べて短くて済む。
【0041】
コンテナボックス(12)は六面を囲っており、更に処理タンク固定材(24)にも断熱材が含まれているので、暖めた減容用油(50)を満たした処理タンク(21)は冷めにくい。
コンテナボックス(12)における上面を覆う上面パネル(12a)は、処理タンク(21)が配置された位置にその処理タンクへの排出物容器(40)の投入を可能とするためのタンク用投入口を備える場合(図示を省略)、そのタンク用投入口の下方に位置する処理タンク(21)は、タンク用投入口(12b)と処理タンク(21)における内部空間に連通するタンク上部投入口(21a)を備えている。
【0042】
排出物容器の処理タンク(21)への投入作業は、まず、コンテナボックス(12)の上面パネル(12a)を開く。そして、タンク上部投入口(21a)を開ける。すると、処理タンク(21)における内部空間に連通するので、投入作業が行える状態となる。
なお、作業者は、排出物容器(40)をタンク上部投入口(21a)へ投入しやすい位置まで運ばなければならない。減容用油タンク(26a)には、その投入作業をしやすい高さにまでへ登りやすい階段構造や補助ステップ(26d)が備えられているので、作業者は、その階段構造などを使って登ることができる。
作業者は、投入作業が終了したときには、処理タンク(21)の内部空間の温度を下げないようにするため、タンク用投入口(12b)を閉じる。
【0043】
本実施形態に係る医療排出物処理用のトラック(10)が、排出物容器(40)が排出される現場、例えば病院に移動する。そして、トラック(10)の運転手などの作業者が、排出物容器(40)を処理タンク(21)に投入する。このとき、処理タンク(21)の処理空間には、排出物容器を処理するための所定温度となった減容用油(50)が貯留している。したがって、投入された排出物容器(40)は、減容用油(50)に浸ることで減容が開始される。
減容が開始されると排出物容器(40)が暖められる分、減容用油(50)の温度が下がるが、加熱器(25)および調整装置(26)によって処理タンク(21)内の減容用油(50)の温度は所定温度に保たれる。そのため、処理タンク(21)に投入された排出物容器(40)を丸ごと加熱することができ、排出物容器(40)は除菌されつつ減容される。
【0044】
溶融温度は、医療排出物からの感染症を防ぐための滅菌に必要な温度よりも十分高く、溶融が開始されれば滅菌時間も十分に確保できる。したがって、本実施形態による感染症の危険性は著しく低い。
また、排出物容器(40)に入っている医療排出物は、注射器、ガーゼなど空気を多く含んでいる。このため、排出物容器(40)に対する加熱が進めば、注射器などに入っていた空気が処理タンク(21)から出るので、著しく体積が減少する。このため、排出物容器(40)をそのまま輸送することに比べ、極めて多くの排出物容器(40)を輸送できることとなる。
【0045】
本実施形態に係るトラック(10)が図4図5に示すような油化プラントに戻る際には、トラック(10)における後方に位置する処理タンク(21)と前方に位置する減容用油タンク(26a)とに重量が分散されるので、運搬におけるトラック(10)への負担が軽減される。しかも、減容用油タンク(26a)は階段状の構造をしているので、重心を低くすることに寄与する。
【0046】
図6は、減容用油タンク(26a)を、本実施形態に係るトラック(10)から積み降ろす様子を示す。減容用油(50)は、減容用油タンク(26a)へ抜き取っておく。
減容用油タンク(26a)へ抜き取れられた油は、ほとんどが減容用油(50)であるが、排出物容器(40)やそれに収納されていた樹脂などが油化されて油が発生し、減容用油(50)に混在する場合もある。油化された油がある場合には、それと減容用油(50)とを分離し、減容用油(50)を再利用する。
【0047】
図4に示すように、トラック(10)にタンク移動機構を備えているので、油化プラントにおける油化装置に戻す場合など、移動が必要な際に便利である。
油化プラントにおける油化装置に処理タンク(21)が内釜として戻されれば、そのまま油化処理を続行することができる。トラック(10)の減容装置(20)によって排出物容器(40)やそれに収納されていた樹脂は加熱されており、油化プラントにおける完全な油化処理が効率的に実行可能である。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本願発明は、特殊車両の製造業、医療排出物に限らず油化処理可能な廃棄物を運送する運送業、油化処理装置などのプラント製造業、油化処理装置を用いたリサイクル業などにおいて、利用可能性を有する。
【符号の説明】
【0049】
10 ;トラック(移動体) 11 ;荷台
12 ;コンテナボックス 12a;上面パネル
20 ;減容装置(従来技術では、溶融処理装置)
21 ;処理タンク 21a;上部投入口
21b;排気管 21c;除菌・脱臭装置
22 ;内蓋 22a;内蓋開口部
23 ;リンク機構
24 ;処理タンク固定材
25 ;加熱器
26 ;調整装置
26a減容用油タンク
26bポンプ 26c;配管
26d;補助ステップ
27 ;発電装置 28 ;コントローラ
30 ;油化装置 31 ;外釜
40 ;排出物処理容器
50 ;減容用油
【要約】
【課題】 処理の対象を処理タンクへ投入する作業を効率化できる排出物処理用移動体を提供する。
【解決手段】 油化処理が可能な所定の排出物容器(40)を減容処理する減容装置(20)を搭載する。減容装置(20)は、排出物容器(40)を減容させるための減容用油(50)を蓄えるとともに当該排出物(40)を投入可能な処理空間を備えた処理タンク(21)と、 その処理タンク(21)の内部における減容用油(50)の量および温度を調整する調整装置(26)と、 その減容用油を貯留させる減容用油タンク(26a)と、を備える。減容用油タンク(26a)は、処理タンク(21)のタンク上部投入口(21a)から廃棄物容器(40)を投入する作業者が投入作業をしやすい高さへ登りやすい階段構造を備える。
【選択図】 図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7