(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記振動部は、衝撃部、動力伝達部、姿勢制御部、車輛のクラッチ、車輛のダンパー、車輛のショックアブソーバー、建造物用の制振支持装置、組み立てロボットの筋肉部分、液体流量制御用バルブ、音響装置、医療・福祉用ロボットハンド及び介護ハンドから選ばれる少なくとも一つの振動部である請求項8に記載の振動吸収装置。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明はマトリックス樹脂と磁性粉を含む磁気粘弾性エラストマー組成物である。磁性粉は軟磁性金属粉又は酸化物磁性粉(フェライト粉)があり、軟磁性金属粉としては、Fe−Si合金、Fe−Al合金、Fe−Si−Al合金(センダスト)、Fe−Si−Cr合金、Fe−Ni合金(パーマロイ)、Fe−Ni−Co合金(ミューメタル)、Fe−Ni−Mo合金(スーパーマロイ)、Fe−Co合金、Fe−Si−Al−Cr合金、Fe−Si−B合金、Fe−Si−Co−B合金等の鉄系の合金粉、あるいはカルボニル鉄粉等があり、フェライト粉としては、Mn−Znフェライト、Mn−Mg−Znフェライト、Mg−Cu−Znフェライト、Ni−Znフェライト、Ni−Cu−Znフェライト、Cu−Znフェライト等のスピネル系フェライト、W型、Y型、Z型、M型等の六方晶フェライトがあるが、本発明においてはカルボニル鉄粉を使用するのが好ましい。
【0012】
前記カルボニル鉄粉は、軟磁性鉄粉の一種として、また粉末工業製品としてそれ自体はよく知られている。カルボニル鉄粉は、カルボニル鉄(Fe(CO)
5)して気化させ分解することによりCOを除去して得られる。このカルボニル鉄粉は、平均粒子径2〜10μmが好ましく、さらに好ましくは2〜8μmである。粒子径の測定はレーザー回折光散乱法により、50質量%粒子径を測定する。この測定器としては、例えば堀場製作所製社製のレーザー回折/散乱式粒子分布測定装置LA−950S2がある。
【0013】
前記磁性粉は、前記組成物を100体積%としたとき30〜70体積%含み、より好ましくは35〜70体積%含む。前記の範囲であれば、磁力を印加したとき貯蔵弾性率の変化が十分に高いものとなる。
【0014】
マトリックス樹脂としては熱硬化性樹脂でもよいし熱可塑性樹脂でもよく、ゴムやエラストマーも含む。ゴムには、天然ゴム(ASTM略語NR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、1,2−ポリブタジエン(1,2-BR)、スチレンーブタジエン(SBR)、クロロプレンゴム(CR),二トリルゴム(NBR)、ブチルゴム(IIR)、エチレンープロピレンゴム(EPM、EPDM)、クロロスルホン化プリエチレン(CSM)アクリルゴム(ACM、ANM)、エピクロルヒドリンゴム(CO,ECO)多硫化ゴム(T)、シリコーンゴム、フッ素ゴム(FKM)、ウレタンゴム(U)等があるがここに挙げた限りではない。熱可塑性エラストマー(TPE)にも適用できる。TPEとしては、一例としてスチレン系TPE,オレフィン系TPE,塩化ビニル系TPE,ウレタン系TPE,エステル系TPE,アミド系TPE,塩素化ポエチレン系TPE, Syn-1,2-ポリブタジエン系TPE, Trans-1,4-ポリイソプレン系TPE,フッ素系TPE等が挙げられる。前記において「系」とは、ホモポリマー又は共重合体等のことである。シリコーンゴムの架橋は付加反応でもよいし、過酸化物反応でもよい。以下においては付加反応による架橋で説明する。
【0015】
前記マトリックス樹脂はオルガノポリシロキサンであるのが好ましい。オルガノポリシロキサンは耐熱性が高く、加工性も良いからである。オルガノポリシロキサンをマトリックスとする組成物は、ゴム、ゴムシート、パテ、グリースなどいかなるものであっても良い。
【0016】
前記磁気粘弾性エラストマー組成物は日本ゴム協会標準規格(SRIS0101)アスカーC硬度で5〜60であり、より好ましいアスカーC硬度で20〜50である。硬度が前記の範囲であれば、磁力を印加したとき貯蔵弾性率の変化が高い磁気粘弾性エラストマー組成物となる。本発明の磁気粘弾性エラストマー組成物は、0.2Tの磁束密度の磁力を印加したとき、貯蔵弾性率が5倍以上変化するのが好ましく、さらに好ましくは9倍以上である。前記の貯蔵弾性率の変化であれば実用的である。
【0017】
マトリックス樹脂がオルガノポリシロキサンの場合は、下記組成のコンパウンドを硬化して得るのが好ましい。
(A)ベースポリマー成分:1分子中に平均2個以上かつ分子鎖両末端のケイ素原子に結合したアルケニル基を含有する直鎖状オルガノポリシロキサン
(B)架橋成分:1分子中に平均2個以上のケイ素原子に結合した水素原子を含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンが、前記A成分中のケイ素原子結合アルケニル基1モルに対して、1モル未満の量
(C)白金系金属触媒:A成分に対して重量単位で0.01〜1000ppm
(D)磁性粉:オルガノポリシロキサンを20〜80体積%としたとき20〜80体積%(オルガノポリシロキサン100重量部に対して200〜3000重量部)
(E)無機粒子顔料:マトリックス樹脂100重量部に対して0.1〜10重量部
【0018】
(1)ベースポリマー成分(A成分)
ベースポリマー成分(A成分)は、一分子中にケイ素原子に結合したアルケニル基を2個以上含有するオルガノポリシロキサンであり、アルケニル基を2個含有するオルガノポリシロキサンは本発明のシリコーンゴム組成物における主剤(ベースポリマー成分)である。このオルガノポリシロキサンは、アルケニル基として、ビニル基、アリル基等の炭素原子数2〜8、特に2〜6の、ケイ素原子に結合したアルケニル基を一分子中に2個有する。粘度は25℃で10〜1000000mPa・s、特に100〜100000mPa・sであることが作業性、硬化性などから望ましい。
【0019】
具体的には、下記一般式(化1)で表される1分子中に平均2個以上かつ分子鎖末端のケイ素原子に結合したアルケニル基を含有するオルガノポリシロキサンを使用する。側鎖はトリオルガノシロキシ基で封鎖された直鎖状オルガノポリシロキサンである。25℃における粘度は10〜1000000mPa・sのものが作業性、硬化性などから望ましい。なお、この直鎖状オルガノポリシロキサンは少量の分岐状構造(三官能性シロキサン単位)を分子鎖中に含有するものであってもよい。
【0021】
式中、R
1は互いに同一又は異種の脂肪族不飽和結合を有さない非置換又は置換一価炭化水素基であり、R
2はアルケニル基であり、kは0又は正の整数である。ここで、R
1の脂肪族不飽和結合を有さない非置換又は置換の一価炭化水素基としては、例えば、炭素原子数1〜10、特に1〜6のものが好ましく、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等のアルキル基、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基等のアラルキル基、並びに、これらの基の水素原子の一部又は全部をフッ素、臭素、塩素等のハロゲン原子、シアノ基等で置換したもの、例えばクロロメチル基、クロロプロピル基、ブロモエチル基、トリフロロプロピル基等のハロゲン置換アルキル基、シアノエチル基等が挙げられる。R
2のアルケニル基としては、例えば炭素原子数2〜6、特に2〜3のものが好ましく、具体的にはビニル基、アリル基、プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基、イソブテニル基、ヘキセニル基、シクロヘキセニル基等が挙げられ、好ましくはビニル基である。一般式(1)において、kは、一般的には0≦k≦10000を満足する0又は正の整数であり、好ましくは5≦k≦2000、より好ましくは10≦k≦1200を満足する整数である。
【0022】
A成分のオルガノポリシロキサンとしては一分子中に例えばビニル基、アリル基等の炭素原子数2〜8、特に2〜6のケイ素原子に結合したアルケニル基を3個以上、通常、3〜30個、好ましくは、3〜20個程度有するオルガノポリシロキサンを併用しても良い。分子構造は直鎖状、環状、分岐状、三次元網状のいずれの分子構造のものであってもよい。好ましくは、主鎖がジオルガノシロキサン単位の繰り返しからなり、分子鎖両末端がトリオルガノシロキシ基で封鎖された、25℃での粘度が10〜1000000mPa・s、特に100〜100000mPa・sの直鎖状オルガノポリシロキサンである。
【0023】
アルケニル基は分子のいずれかの部分に結合していればよい。例えば、分子鎖末端、あるいは分子鎖非末端(分子鎖途中)のケイ素原子に結合しているものを含んでも良い。なかでも下記一般式(化2)で表される分子鎖両末端のケイ素原子上にそれぞれ1〜3個のアルケニル基を有し(但し、この分子鎖末端のケイ素原子に結合したアルケニル基が、両末端合計で3個未満である場合には、分子鎖非末端(分子鎖途中)のケイ素原子に結合したアルケニル基を、(例えばジオルガノシロキサン単位中の置換基として)、少なくとも1個有する直鎖状オルガノポリシロキサンであって、上記でも述べた通り25℃における粘度が10〜1,000,000mPa・sのものが作業性、硬化性などから望ましい。なお、この直鎖状オルガノポリシロキサンは少量の分岐状構造(三官能性シロキサン単位)を分子鎖中に含有するものであってもよい。
【0025】
式中、R
3は互いに同一又は異種の非置換又は置換一価炭化水素基であって、少なくとも1個がアルケニル基である。R
4は互いに同一又は異種の脂肪族不飽和結合を有さない非置換又は置換一価炭化水素基であり、R
5はアルケニル基であり、l,mは0又は正の整数である。ここで、R
3の一価炭化水素基としては、炭素原子数1〜10、特に1〜6のものが好ましく、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等のアルキル基、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基等のアラルキル基、ビニル基、アリル基、プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基、ヘキセニル基、シクロヘキセニル基、オクテニル基等のアルケニル基や、これらの基の水素原子の一部又は全部をフッ素、臭素、塩素等のハロゲン原子、シアノ基等で置換したもの、例えばクロロメチル基、クロロプロピル基、ブロモエチル基、トリフロロプロピル基等のハロゲン置換アルキル基やシアノエチル基等が挙げられる。
【0026】
また、R
4の一価炭化水素基としても、炭素原子数1〜10、特に1〜6のものが好ましく、上記R
1の具体例と同様のものが例示できるが、但しアルケニル基は含まない。R
5のアルケニル基としては、例えば炭素数2〜6、特に炭素数2〜3のものが好ましく、具体的には前記式(化1)のR
2と同じものが例示され、好ましくはビニル基である。
【0027】
l,mは、一般的には0<l+m≦10000を満足する0又は正の整数であり、好ましくは5≦l+m≦2000、より好ましくは10≦l+m≦1200で、かつ0<l/(l+m)≦0.2、好ましくは、0.0011≦l/(l+m)≦0.1を満足する整数である。
【0028】
(2)架橋成分(B成分)
本発明のB成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンは架橋剤として作用するものであり、この成分中のSiH基とA成分中のアルケニル基とが付加反応(ヒドロシリル化)することにより硬化物を形成するものである。かかるオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、一分子中にケイ素原子に結合した水素原子(即ち、SiH基)を2個以上有するものであればいずれのものでもよく、このオルガノハイドロジェンポリシロキサンの分子構造は、直鎖状、環状、分岐状、三次元網状構造のいずれであってもよいが、一分子中のケイ素原子の数(即ち、重合度)は2〜1000、特に2〜300程度のものを使用することができる。
【0029】
水素原子が結合するケイ素原子の位置は特に制約はなく、分子鎖の末端でも非末端(途中)でもよい。また、水素原子以外のケイ素原子に結合した有機基としては、前記一般式(化1)のR
1と同様の脂肪族不飽和結合を有さない非置換又は置換一価炭化水素基が挙げられる。
【0030】
B成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンとしては下記構造のものが例示できる。
【化3】
【化4】
【化5】
【0031】
上記の式中、Phはフェニル基、エポキシ基、アクリロイル基、メタアクリロイル基、アルコキシ基の少なくとも1種を含む有機基である。Lは0〜1,000の整数、特には0〜300の整数であり、Mは1〜200の整数である。)
【0032】
(3)触媒成分(C成分)
C成分の触媒成分は、本組成物の硬化を促進させる成分である。C成分としては、ヒドロシリル化反応に用いられる触媒として周知の触媒を用いることができる。例えば白金黒、塩化第2白金、塩化白金酸、塩化白金酸と一価アルコールとの反応物、塩化白金酸とオレフィン類やビニルシロキサンとの錯体、白金ビスアセトアセテート等の白金系触媒、パラジウム系触媒、ロジウム系触媒などの白金族金属触媒が挙げられる。C成分の配合量は、硬化に必要な量であればよく、所望の硬化速度などに応じて適宜調整することができる。A成分に対して金属原子重量として0.01〜1000ppm添加する。
【0033】
(4)磁性粉(D成分)
前記磁性粉は、アルコキシシラン又はアルキルチタネートにより表面処理しておくのが好ましい。この表面処理をしておくとシリコーンゴムの場合、硬化阻害を防ぐことができる。前記アルコキシシランは、R(CH
3)
aSi(OR’)
3-a(Rは炭素数1〜20のアルキル基、R’は炭素数1〜4のアルキル基、aは0もしくは1)で示されるシラン化合物、もしくはその部分加水分解物が好ましい。R(CH
3)
aSi(OR’)
3-a(Rは炭素数1〜20のアルキル基、R’は炭素数1〜4のアルキル基、aは0もしくは1)で示されるアルコキシシラン化合物(以下単に「シラン」という。)は、一例としてメチルトリメトキシラン,エチルトリメトキシラン,プロピルトリメトキシラン,ブチルトリメトキシラン,ペンチルトリメトキシラン,ヘキシルトリメトキシラン,ヘキシルトリエトキシシラン,オクチルトリメトキシシラン,オクチルトリエトキシラン,デシルトリメトキシシラン,デシルトリエトキシシラン,ドデシルトリメトキシシラン,ドデシルトリエトキシシラン,ヘキ
サデシルトリメトキシシラン,ヘキ
サデシルトリエトキシシシラン,オクタデシルトリメトキシシラン,オクタデシルトリエトキシシシラン等のシラン化合物がある。前記シラン化合物は、一種又は二種以上混合して使用することができる。表面処理剤として、アルコキシシランと片末端シラノールシロキサンを併用してもよい。ここでいう表面処理とは共有結合のほか吸着なども含む。
【0034】
(5)その他の成分(E成分)
本発明の組成物には、必要に応じて前記以外の成分を配合することができる。例えばベンガラなどの無機顔料、フィラーの表面処理等の目的でアルキルトリアルコキシシランなどを添加してもよい。フィラー表面処理などの目的で添加する材料として、アルコキシ基含有シリコーンを添加しても良い。
【0035】
本発明の振動吸収装置は、前記の磁気粘弾性エラストマー組成物を組み込んだ振動吸収装置であって、前記磁気粘弾性エラストマー組成物を振動部に配置し、磁力を印加したときの貯蔵弾性率の変化を利用して、前記振動部の振動を吸収する装置である。前記振動部は、衝撃部、動力伝達部、姿勢制御部、車輛のクラッチ、車輛のダンパー、車輛のショックアブソーバー、建造物用の制振支持装置、組み立てロボットの筋肉部分、液体流量制御用バルブ、音響装置、医療・福祉用ロボットハンド及び介護ハンドから選ばれる少なくとも一つの振動部であることが好ましい。具体的な装置については、
図2−3で説明する。
【0036】
以下図面により説明する。
図1は本発明の一実施例における磁気粘弾性エラストマー組成物シートの模式的断面図である。この磁気粘弾性エラストマー組成物シート10は、マトリックス樹脂12に磁性粉11が分散されている。
【0037】
貯蔵弾性率の測定方法を、
図2を参照しながら説明する。この貯蔵弾性率測定装置20は、コイル部22に印加する電流を発生させる直流安定化電源21と、磁界を発生させ,鉄心23,24およびMRE25a,25b内に閉磁路を形成するための磁気コイル22と、MRE25a,25b断面に対して直角に挿通する磁束線が巡回する経路としての,上部側鉄心23を含む。この上部側鉄心23は粘弾性評価式における1自由度振動系の質量としての役割も兼ねる。下部側鉄心24は23と同じく,磁束線が巡回する経路である。MRE25a,25bは1自由度振動系における粘弾性要素としてのMRE(測定サンプル)であり、上部側鉄心23と下部側鉄心24が,相対的に図の左右方向(せん断方向)へ変位することに伴う同方向の変形を想定し,その粘弾性を評価する。加速度計26aは上部鉄心23に生じる水平方向の加速度を計測する。加速度計26bは下部鉄心24に生じる水平方向の加速度(振動入力加速度)を計測する。水平加振台27は下部鉄心24と結合され,同鉄心の上下方向変位を規制し,同鉄心を水平方向に加振する。電磁加振器28は水平加振台27と結合され,同加振台を水平方向に移動させる。電力増幅器29は電磁加振器28に電力を供給する。シグナルアナライザ30は加速度計26a,26bで検出した加速度信号を周波数領域上にて伝達関数処理する。信号増幅器31は加速度計26a,26bからの電圧信号を増幅する。
【0038】
この貯蔵弾性率測定装置20は、水平加振台27の上に載せられたコイル22,上部鉄心23,下部鉄心24,及びMRE(測定サンプル)25a,25bのうち、コイル22と上部鉄心23を合わせたものを質量、MRE(測定サンプル:エラストマ)25aと25bを2つの並列ばね要素とみなし、これらの質量とばね要素とから構成される1自由度振動系が、基礎部(水平加振台27)において変位加振を受け、水平方向に振動する。変位加振は、水平加振台27に連結された電磁加振器28によって生成される。基礎部に取り付けられた加速度計26b,及び質量に取り付けられた加速度計26aによって、両者の加速度を同時に計測し、シグナルアナライザ30の演算機能を利用して、周波数領域にて両者の加速度伝達関数を求める。粘弾性の指標として複素ばね係数を採用し、得られた伝達関数を用いて、下記の理論に従い複素ばね係数を求める。質量をm,質量の絶対変位をx,水平加振台の変位をu,MREの複素ばね定数をk
*とする。変位加振を受けて振動する系の運動方程式は次の数式(数1)のように表わせる。
【0040】
ここで複素ばね定数k
*を、周波数依存性を考慮して次の数式(数2)のように定義する。
【0042】
式(2)において、k'(ω)はばね定数,η(ω)は損失係数,ωは角振動数である。また、jは虚数単位を表す。次に,式(1)をラプラス変換し、変位入力U(s)に対する応答変位X(s)の伝達関数G(s)=X / Uを求めると、次式(数3)が得られる。
【0044】
さらに、式(3)においてs = jωと置き換え、複素ばね定数の定義式(2)を代入すると、周波数領域における伝達関数G (jω)は次のように求められる。
【0046】
ここで、実測値として得られる加速度伝達関数の実部及び虚部を、それぞれG
R,G
Iとおくと、伝達関数はG(jω) = G
R + jG
Iのように表すことができる。G
R,G
Iは式(4)の実部及び虚部と等しいと考え、これらを等値することにより、ばね定数k'(ω)と損失係数η(ω)は実測値から次式(数5〜6)を用いて計算される。
【0049】
次に、
図3を参照して、ばね定数k'(ω)から、貯蔵弾性率E'(ω)を算出する方法を示す。いま、粘弾性体は直方体形状とし、その厚さをt、幅をb、長さをaとする。粘弾性体は下面を拘束され、その天面は外力Fの作用を受けて、水平方向にdだけ変位するとする。
まず、荷重Fと変形量dとの間には次の関係が成り立つ。
【0051】
なお、周波数依存性を表すωの記号は省略する。次に、式(7)の関係を、弾性体に生じるせん断応力τとせん断ひずみγの関係に変換する。τとγとの間には、貯蔵弾性率E'を用いて次式の関係が成り立つ。
【0053】
ここで、τ,γはそれぞれ、
図3の記号を用いて次のように表される。
【0056】
式(7)を式(9)に代入してFを消去し、さらに式(9)、(10)を式(8)に代入することによって、E'は以下のように書き表すことができる。
【0058】
さらに、損失弾性率E''は貯蔵弾性率E'、損失係数ηを用いて、次のように計算できる。
【0060】
MRE粘弾性の磁場依存性を調べるために、直流安定化電源21からコイル22に印加する電流を0〜2A(磁束密度で0〜200mT相当)と段階的に変化させながら、ランダム変位加振時の加速度伝達関数を計測し、各々の定電流値に対して式(5)及び(6)を用いてばね定数及び損失係数を算出した。
【実施例】
【0061】
以下実施例を用いて説明する。本発明は実施例に限定されるものではない。
【0062】
<硬さ>
日本ゴム協会標準規格(SRIS0101)に規定されているアスカーC硬度を測定した。
<貯蔵弾性率>
貯蔵弾性率は、
図2及び
図3と前記の
図2及び
図3を用いた説明文のとおり測定及び計算した。なお、
図2及び
図3と前記の
図2及び
図3を用いた説明文は、貯蔵弾性率の測定のみならず、本発明の振動吸収装置の一実施例にもなっている。
【0063】
(実施例1〜4)
1.材料成分
(1)シリコーン成分
シリコーン成分として二液室温硬化シリコーンゴムを使用した。なお、二液RTVにはベースポリマー成分(A成分)と架橋成分(B成分)と白金系金属触媒(C成分)が予め添加されている。
(2)磁性粉
実施例1:下記に記載のシラン処理後の平均粒子径10.5μmのパーマロイ(50Fe-50Ni)を50体積%の割合で添加し、均一に混合した。
実施例2:パーマロイに換えて平均粒子径3.9-5.0μmのカルボニル鉄粉とした以外は実施例1と同様とした。
比較例1:パーマロイに換えて平均粒子径10.8μmのフェライト(Mn-Zn系鉄)とした以外は実施例1と同様とした。
比較例2:パーマロイに換えて平均粒子径30.1μmのフェライト(Ni-Zn系鉄)とした以外は実施例1と同様とした。
(3)シラン処理
前記磁性粉にシランカップリング剤を1質量%の割合で添加し、均一になるまで撹拌する。撹拌した磁性粉をトレ―等に均一に拡げ100℃で2時間乾燥させた。
2.シート成形加工方法
離型処理をしたポリエステルフィルム上に厚さ3mmの金枠を置きコンパウンドを流し込み、もう一枚の離型処理をしたポリエステルフィルムを載せた。これを5MPaの圧力で、120℃、10分硬化し、厚さ3.0mmのシリコーンゴムシートを成形した。得られたシリコーンゴムシートの物性は表1にまとめて示す。
【0064】
【表1】
表1から、カルボニル鉄が最も粘弾性変化が大きいことがわかった。
【0065】
(実施例3〜6、比較例3〜4)
磁性粉体として平均粒子径3.9-5.0μmのカルボニル鉄粉を使用し、表2に示すように添加量を変えて実験した。他の条件は実施例1と同様である。結果も合わせて表2にまとめて示す。
【0066】
【表2】
【0067】
表2から、貯蔵弾性率の変化は、硬度とカルボニル鉄粉の含有量に依存すると推測した。なお、カルボニル鉄粉60体積%では硬さが上昇し貯蔵弾性率の変化が低下した。カルボニル鉄80体積%では成型時の流動性が悪く成型不可であった。
図4は実施例4で得られた磁気粘弾性エラストマー組成物の貯蔵弾性率の周波数特性測定グラフである。
【0068】
(実施例7〜11、比較例5)
磁性粉体として平均粒子径3.9-5.0μmのカルボニル鉄粉を使用し、加硫剤の添加量を操作してゴム硬度を変えた以外は実施例1と同様に実験した。条件と結果を表3にまとめて示す。
【0069】
【表3】
【0070】
表3から、カルボニル鉄が50体積%、アスカーC硬度が10〜52のときが磁場印加時に貯蔵弾性率の変化が5倍以上あることがわかった。アスカーC硬度が69ときは磁場印加時に貯蔵弾性率の変化が5倍未満である。
【解決手段】マトリックス樹脂(12)と磁性粉(11)を含む磁気粘弾性エラストマー組成物(10)であって、前記組成物を100体積%としたとき、前記磁性粉(11)は30〜70体積%含み、前記磁気粘弾性エラストマー組成物(10)は日本ゴム協会標準規格(SRIS0101)アスカーC硬度が5〜60である。前記磁性粉は平均粒子径2〜500μmが好ましく、前記マトリックス樹脂はオルガノポリシロキサンが好ましい。前記磁気粘弾性エラストマー組成物は、200mTの磁束密度の磁力を印加したとき、貯蔵弾性率が5倍以上変化するのが好ましい。