特許第6113364号(P6113364)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6113364
(24)【登録日】2017年3月24日
(45)【発行日】2017年4月12日
(54)【発明の名称】流体移送接続部
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/34 20060101AFI20170403BHJP
【FI】
   A61M5/34 510
【請求項の数】31
【全頁数】29
(21)【出願番号】特願2016-530526(P2016-530526)
(86)(22)【出願日】2014年7月30日
(65)【公表番号】特表2016-525420(P2016-525420A)
(43)【公表日】2016年8月25日
(86)【国際出願番号】EP2014066436
(87)【国際公開番号】WO2015014914
(87)【国際公開日】20150205
【審査請求日】2016年7月25日
(31)【優先権主張番号】PCT/EP2013/066135
(32)【優先日】2013年7月31日
(33)【優先権主張国】EP
(31)【優先権主張番号】1321128.9
(32)【優先日】2013年11月29日
(33)【優先権主張国】GB
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】514275532
【氏名又は名称】コンセプトメッド・エーエス
(74)【代理人】
【識別番号】100115255
【弁理士】
【氏名又は名称】辻丸 光一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100129137
【弁理士】
【氏名又は名称】中山 ゆみ
(74)【代理人】
【識別番号】100154081
【弁理士】
【氏名又は名称】伊佐治 創
(72)【発明者】
【氏名】ミーデ・クリスティアン
(72)【発明者】
【氏名】アンドレセン・マリウス
(72)【発明者】
【氏名】ブロムヴォグネス・ロルフ
(72)【発明者】
【氏名】ゲールス・ケヴィン
【審査官】 寺川 ゆりか
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第90/000881(WO,A1)
【文献】 米国特許第04490142(US,A)
【文献】 米国特許第04822343(US,A)
【文献】 特開平10−179737(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/164358(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/32,34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体移送デバイスまたは接続部であって、
対応するハブ用のテーパー状摩擦嵌合部を含む流体移送先端部と、
前記流体移送先端部に対して移動するように枢動可能に装着されたレバー部材と、
摩擦嵌合に加えて螺合によってハブが前記先端部に接続できるように前記レバー部材に装着されたねじ部とを含み、
前記レバー部材が弾性的に付勢されることにより、前記ねじ部は前記ハブと前記螺合を形成するように位置し、
前記レバー部材を前記弾性的な付勢に逆らって枢動させることにより、前記ハブとの前記螺合を解除し、続けて前記ハブを前記摩擦嵌合から解放することで、前記ハブが分離できる、流体移送デバイスまたは接続部。
【請求項2】
前記ねじ部が、前記流体移送先端部を部分的に包囲する留め輪が有する雌ねじ部である、請求項1記載のデバイスまたは接続部。
【請求項3】
前記レバー部材に装着された前記ねじ部が、雌ねじ部を有する留め輪の形態をとる、請求項1記載のデバイスまたは接続部。
【請求項4】
前記雌ねじ部を有する留め輪が、前記流体移送先端部の周囲の略360度に延在する、請求項3記載のデバイスまたは接続部。
【請求項5】
前記雌ねじ部を有する留め輪が、前記弾性的な付勢に逆らって前記レバー部材を枢動させることにより離れるように配置された複数のセグメントに分割可能であり、それにより、前記ハブとの前記螺合を解除する、請求項3または4記載のデバイスまたは接続部。
【請求項6】
前記セグメントの少なくともいくつかが、前記流体移送先端部に対して径方向外向きに移動する、請求項5記載のデバイスまたは接続部。
【請求項7】
前記雌ねじ部を有する留め輪が、あらかじめ分割された複数のセグメントを含む、請求項3から6のいずれか一項に記載のデバイスまたは接続部。
【請求項8】
前記雌ねじ部を有する留め輪が、複数のセグメントに破壊されるように配置される、請求項3から6のいずれか一項に記載のデバイスまたは接続部。
【請求項9】
前記雌ねじ部を有する留め輪が、複数のセグメントに分割可能であり、前記複数のセグメントが、ヒンジセグメントである、請求項3から8のいずれか一項に記載のデバイスまたは接続部。
【請求項10】
さらに、前記複数のセグメントを離れた状態でロックする手段を含む、請求項5から9のいずれか一項に記載のデバイスまたは接続部。
【請求項11】
前記レバー部材が、前記複数のセグメントが離れるように移動した後、前記先端部に沿って前方へ移動するように配置されたリムを有する前面を含む、請求項から10のいずれか一項に記載のデバイスまたは接続部。
【請求項12】
前記レバー部材が、前記先端部の軸に対して略横方向の前面を含み、前記先端部の軸に対して略横方向の前面が、前記レバー部材が枢動されると前記先端部に沿って移動するように配置されている、請求項1から11のいずれか一項に記載のデバイスまたは接続部。
【請求項13】
前記レバー部材の初期の枢動移動が、前記先端部の軸に対して略横方向の前面を前記流体移送先端部に対して略横方向に移動させて前記螺合を解除し、前記レバー部材の更なる移動が、前記先端部の軸に対して略横方向の前面を前記流体移送先端部に沿って移動させて前記ハブを前記摩擦嵌合から解放するように、前記先端部の軸に対して略横方向の前面が湾曲している、請求項12記載のデバイスまたは接続部。
【請求項14】
前記レバー部材が、前記摩擦嵌合から解放された後の前記ハブを捕捉するように配置された捕捉手段を含む、請求項1から13のいずれか一項に記載のデバイスまたは接続部。
【請求項15】
前記レバー部材が弾性的に付勢されており、前記レバー部材を前記弾性的な付勢に逆らって枢動させることによって、前記捕捉手段に前記ハブを捕捉させる、請求項14記載のデバイスまたは接続部。
【請求項16】
前記捕捉手段が、前記レバー部材の弾性的に付勢された移動によって解放されるように配置されている、請求項14または15記載のデバイスまたは接続部。
【請求項17】
さらに、前記レバー部材を装着する手段を含む、請求項1から16のいずれか一項に記載のデバイスまたは接続部。
【請求項18】
前記レバー部材を装着する手段が、前記流体移送先端部と一体または別体である、請求項17記載のデバイスまたは接続部。
【請求項19】
前記レバー部材が、別体の取り付け部によって装着されている、請求項17または18記載のデバイスまたは接続部。
【請求項20】
前記レバー部材が着脱可能に装着されている、請求項1から19のいずれか一項に記載のデバイスまたは接続部。
【請求項21】
前記弾性的な付勢に逆らって前記レバー部材をロックする手段を含む、請求項1から20のいずれか一項に記載のデバイスまたは接続部。
【請求項22】
前記流体移送先端部が、対応する雌型ハブに挿入されると前記摩擦嵌合を形成するようにテーパ状に形成された、雄型コネクタ先端部を含む、請求項1から21のいずれか一項に記載のデバイスまたは接続部。
【請求項23】
ハブが、前記流体移送先端部に接続されている、請求項1から22のいずれか一項に記載のデバイスまたは接続部。
【請求項24】
前記ハブが、テーパ状の内面と、その基部に外側リムとを含む、請求項23記載のデバイスまたは接続部。
【請求項25】
前記ハブが、テーパ状の内面と、その基部に外ねじとを含む、請求項23記載のデバイスまたは接続部。
【請求項26】
前記ハブが、テーパ状の内面と、裾部によってその基部から離隔した外側リムまたはねじ部とを含む、請求項23記載のデバイスまたは接続部。
【請求項27】
前記裾部が可撓性を有する、請求項26記載のデバイスまたは接続部。
【請求項28】
前記ハブが、さらに、前記流体移送先端部上の対応するフランジまたは溝を把持するための溝またはフランジを前記テーパ状の内面に含む、請求項24から27のいずれか一項に記載のデバイスまたは接続部。
【請求項29】
前記ハブが、カテーテル、カニューレ、または皮下注射針との流体接続部を提供する、請求項23から28のいずれか一項に記載のデバイスまたは接続部。
【請求項30】
前記流体移送先端部が、シリンジの一部である、請求項1から29のいずれか一項に記載のデバイスまたは接続部。
【請求項31】
前記ハブが、前記摩擦嵌合を形成するテーパ状の内面を有するソケットと、前記螺合を形成する前記ソケットの外面に設けられたねじ部と、前記螺合をロックするために前記ねじ部に外接するフランジとを含む、請求項23記載のデバイスまたは接続部。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に、医療現場で流体を移送する際の、対応するハブからの流体移送デバイスおよび接続部の分離に関するものである。本発明は、流体の移送元/移送先である生きた対象に接続されたハブからの、シリンジ等の流体移送デバイスまたはその他の流体移送接続部の分離に特に有用である。
【背景技術】
【0002】
医療現場においては、様々な理由により、対象からの流体の移送または対象への流体の移送が必要または望ましい場合がある。例えば、静脈からの採血または流動物質の注入、すなわち、静注(IV)療法のため、針または他のカニューレに接続されたハブが使用されることがある。点滴は、IV療法の一種である。IV療法は、電解質平衡異常の矯正、薬剤もしくは栄養の輸送、輸血、または、脱水症状改善のための補液を目的として使用される場合がある。IV療法は、癌患者の化学療法にも使用できる。シリンジ等の流体移送デバイスは、様々な体腔、臓器、または血管への流体の供給のため、または、これらからの流体の除去のためのカニューレと接続するハブに取り付けてもよい。例えば、前記ハブは、膀胱もしくは腎臓からの尿の排出、膿瘍からの流体の除去、関節もしくは嚢胞からの液体の抽出、または気管用チューブを介した呼吸ガスの投与を行うカテーテルを提供するものの一部であってもよい。典型的な気管内チューブは、シリンジを取り付けるためのハブを備えたカフ付き膨張チューブを含み、これによりチューブを膨張させて気管および気管支樹を密閉し、空気漏れおよび流体吸入に対処することが可能となっている。気管切開チューブもしくは尿路カテーテルにおいても、シリンジまたは他の流体注入用デバイスを接続するためのハブを備えたカフシステムが使用されることがあり、カップもしくはバルーンを膨張させることで、前記チューブもしくは前記カテーテルが所定の位置に保持される。しかしながら、針に接続されたシリンジを用いた流体注入は、世界的に最も一般的な医療行為の一つである。
【0003】
対象へ、または対象から流体を移送する際、前記流体移送デバイスは、例えば、シリンジを空にするか、もしくは補充するため、またはIV療法の切り替えのため、取り外して交換されることがあるのに対し、当該患者に挿入された針、カテーテル、または他のカニューレを備えたハブは、その部位に放置されることが多い。少量の流体を担持する2つの医療器具を接続しなければならない場合、標準的なルアー嵌合(Luer fitting)が、漏れのない接続を達成するための最も一般的な手段である。一般的に「ルアーロック」と称されるルアー嵌合の一種では、シリンジ等における「ルアースリップ」摩擦嵌合(下記参照)用テーパ状雄型先端部を包囲する、雌ねじ部を有する留め輪(internally threaded collar)が使用される。前記突出した先端部は、対応する雌型ハブ内に挿入でき、これにより、雄型ねじ部と前記留め輪とが螺合され、前記接続がロックされる。このようなルアーロック嵌合は、簡単に緩まない安全な接続を提供できるという利点を備えるが、前記デバイスのねじを締めるか、もしくは緩める際に、前記ハブを両手で保持する必要がある。ある状況下、例えば、緊急時には、より迅速な取り付け形態が好ましい場合がある。一般的に「ルアースリップ」と称される別の種類のルアー嵌合は、ねじ部を有する留め輪を使用することなく、単に、デバイスの雌型ハブおよび対応するテーパ状雄型先端部間の摩擦嵌合を利用する。標準的な摩擦嵌合は、6%のテーパにより達成される。ルアースリップによる取り付けは、ワクチン接種等、低粘性流体の注入の際、および、例えば、採血等、高圧力を伴わない流体移送の際に、一般的に使用される。
【0004】
ルアーロック接続およびルアースリップ接続の双方で見られる問題として、患者に接続されたままのハブから前記流体移送デバイスを取り外す際に生じる損傷のリスクが挙げられる。医師は、ルアーロック接続のねじを緩める際には、ハブを保持して損傷を避けるよう注意を払うと思われるが、ルアースリップ接続では、前記ハブから前記デバイスを、例えば片手で引き抜きたくなる。しかしながら、このようにすれば、前記ハブが患者の体から強く引き離されることとなり、患者の組織にダメージを与える。多くの場合、前記カニューレが前記ハブに接続された状態では、前記デバイスを真っすぐに引っ張ることができず、前記デバイスが回転し、これにより、部品がねじ曲がることもある。前記ハブ(例えば、IVポート)を所定の位置に保持するために使用されるテープは、皮膚からはがれてしまうことが多く、そのカニューレ(例えば、針)が、予期せず抜けてしまうことすらある。体腔内の流体を空にする場合、例えば、前記シリンジを取り外す際に、前記針ハブを静止状態に保つことは、前記体腔内部での切り傷の散在や、体腔壁のダメージを回避するために不可欠となりうる。さらに、前記ハブおよび前記ルアー先端部の両方において、(使用者のみならず、他の者にも)認識されない汚染が生じるおそれがある。これは、非常に小さい前記ハブを親指と人差し指で保持して前記雄型先端部を引き離す時、前記先端部が外れる際に使用者の指を掠って通過する場合に起こる。
【0005】
さらに、片手で引っ張った場合に作用する力は、通常、摩擦嵌合(ルアースリップ等)から前記デバイスを抜き取るにも不十分であり、前記ルアースリップ先端部を前記ハブに接続する際に使用した力に応じ、医師は、通常、前記デバイスが外れるように引っ張りながら、前記ハブを保持するか、押さえておく必要がある。一般的に、前記デバイスは、前記ハブから引き離される際、同時に回転する。この動きにより、前記ハブに接続された前記針もしくは他の部品が、意図していないのに抜けてしまうということがある。また、前記接続は、流体によって加圧される場合が多い。例えば、気管切開チューブ、気管内チューブ、または尿路カテーテルに接続されたカフでは、雌型ルアーハブにおけるばね付きピストンが前記カフからの流体(気体もしくは液体)の流出をブロックしている間は、雄型ルアー先端部の接続が強固であり、前記接続を緩めるには両手での操作が必要となる場合が多い。
【0006】
分離の容易性は、患者に接続されたハブからデバイスを取り外す場合だけでなく、迅速かつ簡便な方法で、流体ハブを介しシリンジ等のデバイスを満たす、または空にすることが所望される場合にも問題となりうる。例えば、バイアルに挿入された針を用いてシリンジを満たす場合、前記シリンジを取り外す度に、前記針ハブおよび前記シリンジを両手でしっかりと握り、前記針を前記バイアル内に残したままでこれらを分離する必要がある。上述の通り、ここでも、前記使用者が前記ハブを握り、前記先端部が前記ハブを保持している指と接触する時に、汚染のリスクがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第5201716号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
使用者が針ハブと接触するかもしれない別の状況は、採血管を使用する際である。前記採血管は、静脈採血を行うための両頭針によって突き刺し可能なエラストマー隔壁で封をした真空のプラスチックまたはガラス容器である。穿刺力および圧力差のため、針組立品への安全な接続が必要とされ、そのため、通常、ルアースリップではなく、ねじ部を有するルアーロック接続が使用される。特許文献1は、分離の際に前記針組立品を把握してねじる必要のない、別の血液検体採取システムを提案する。本システムにおいて、針組立品は、ねじ接続ではなく、締まり嵌めで装着されている。枢動可能に装着されたレバー組立品は、前記針組立品を適切な位置に保持するように、つまり、前記摩擦嵌合に勝るより高い水準の安全性を提供するように、ばね付勢されている。前記レバーが、そのばね付勢に逆らって作動されると、前記針組立品を適切な位置に保持するのは締まり嵌めのみとなる。前記レバーは、前記ばね付勢を解放すると同時に針組立品に前方突出力を与えるように枢動できる。
【0009】
デバイスを引き離す際に針ハブを片手で保持するあらゆる状況下で、針刺し損傷および汚染のリスクがある。また、針キャップは、置き場所がわからなくなることや、忘れ去られることが多いが、このことも、前記リスクを高めている。針または他の汚染された部品を、シリンジまたは類似のデバイスから廃棄のために分離する場合にも、鋭利な部分を取り外してゴミ箱に入れる際に多くの針刺し損傷が生じるため、上記のことが当てはまる。シリンジを取り扱う者は、通常、汚染された針を使用後にキャップでカバーしてから、前記ハブをつかみ、廃棄のためにシリンジ用外筒から前記針を分離しようとする。しかしながら、前記汚染された針に針キャップを装着する際、人は、精密な動作が難しい腕および肩の大きな筋肉群を使用するものであり、これに、奥行き知覚が良好でないことが組み合わさった結果、前記針キャップを保持している指に対する針刺し損傷が頻発することとなる。針ハブが、前記針にキャップをする、あるいは、前記接続部を取り扱う必要なく、安全に解放できることがより望ましい。
【0010】
医療現場では、(例えば、シリンジが提供する)流体移送先端部および対応するハブの間で非常に安全な接続が必要となる、さまざまな流体移送処置がある。前記ハブは、患者の動脈、静脈、体腔、または臓器に挿入された針またはカテーテルに接続される場合がある。心臓病学、血管造影、および血管形成の分野における手技では、流体(液体および/または気体)を細管に高圧で注入することがある。経皮的冠動脈形成術および血管造影等の冠動脈診断法には、手動のシリンジおよび多様なセットが使用されている。心臓血管造影キットは、一般的に、接続用のカテーテルハブと、任意のサイズ、長さ、および堅さのカテーテル本体と、流体を排出するシングルエンド孔を備えた先端部とを含む。前記カテーテル本体は、冠血管、心室、および/または末梢血管系に挿入される。シリンジは、250〜800psiの範囲、および1000または1200psi(84 bar)までの圧力で、造影剤または生理食塩水を注入するように前記カテーテルハブに接続される場合がある。前記カテーテルハブは、標準的なルアーロック接続を提供する雄型ねじ部を有する。
【0011】
ルアーロックコネクタは、一般に普及し、シリンジをハブに接続するだけでなく、小口径医療用チューブと液体および/または気体用のホースを接続するためにも使用される。ルアーロック接続は、一般的に、血管IVラインに使用されるが、他の治療あるいは診断システムにも用途を見出している。ルアーロック接続は、血圧測定システム、栄養チューブ、カテーテル、および血管、経腸、呼吸、脊髄軸、および尿道/泌尿器系用のホースに使用されてもよい。
【0012】
ルアーロックハブのねじ接続は、多くの場合、高圧に耐える必要があると考えられている。しかしながら、シリンジ、ホース、または他の流体移送デバイスは、ルアーロック留め輪をハブと接続するあるいはハブから分離する際に回転させる必要がある。これには時間がかかり、両手での操作が必要とされる。さらに、使用者が前記ハブを把持して前記接続を緩める際、特に、前記ハブが血液を担持するシャフトを持つ針を有する場合、汚染のおそれがある。ルアーロックハブから流体移送デバイスをより簡単に分離することができれば、医療処置の効率およびワークフローは向上するだろう。
【0013】
本発明は、上記で概説した問題の対処、または、軽減を求める。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の第1の態様によれば、流体移送デバイスであって、対応するハブ用のテーパー状摩擦嵌合部を含む流体移送先端部と、前記流体移送先端部に対して移動するように枢動可能に装着されたレバー部材と、前記摩擦嵌合に加えて螺合によってハブが前記先端部に接続できるように前記レバー部材に装着されたねじ部とを含み、前記レバー部材が弾性的に付勢されることにより、前記ねじ部は前記ハブと螺合を形成するように位置し、前記レバー部材を前記弾性的な付勢に逆らって枢動させることにより、前記ハブとの前記螺合を解除し、続けて前記ハブを前記摩擦嵌合から解放することで、前記ハブが分離できる、流体移送デバイスを提供する。
【発明の効果】
【0015】
このようなデバイスは、新規な、螺合によりロックしてレバーを使用して自動解放する機構を提供する。前記レバー部材に装着された前記ねじ部は、標準的なルアーロックハブ等のねじ部を有するハブを前記デバイスに接続することを可能にする。前記ハブは、従来通り、緻密なねじ接続を確実なものとするため、相対回転により接続されてもよい。このようなルアーロック接続は、高圧流体移送処置に適している場合がある。前記レバー部材を操作して前記ねじ部が離れるように枢動させ、前記螺合を解除することの利点は、ねじを緩める行為なしで、ハブを前記デバイスから分離できることである。両手でねじを緩める通常の操作に代えて、単純な片手でのレバー部材の操作が可能になる。このようなデバイスは、標準的なルアースリップハブ等のフランジを有するハブにさらに接続されてもよく、これにより、前記ねじ部は前記フランジと係合し、前記摩擦嵌合に加えて押し込み式接続を提供する。以下にさらに説明する通り、他のハブ設計も、前記ねじ部により、押し込み式に係合(positively engaged)してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1a〜図1dは、針ハブに接続されたシリンジ用分離機構の実施形態を示す。
図2図2aおよび図2bは、従来のルアースリップハブの側面図および断面図である。
図3図3aおよび図3bは、従来のルアーロックハブの側面図および断面図である。
図4図4a〜図4eは、針ハブに接続されたシリンジ用分離機構の別の実施形態を示す。
図5図5aおよび図5bは、図4cおよび図4dの代替物を示す平面図である。
図6図6aおよび図6bは、図4の実施形態の第1変形例を示す。
図7図7aおよび図7bは、図4の実施形態の第2変形例を示す。
図8図8a〜図8dは、図4の実施形態の別のバージョンを示す平面図および斜視図である。
図9図9a〜図9dは、図4図7の実施形態で使用される分割可能な留め輪のいくつかの実施例を示す。
図10図10aおよび図10bは、図4の実施形態の第3および第4変形例を示す。
図11図11aおよび図1bは、図4の実施形態の第5および第6変形例を示す。
図12図12aおよび図12bは、ハブの別の実施形態を示す。
図13図13は、ハブの別の変形例を示す。
図14図14aおよび図14bは、異なるルアーロックハブの側面図および断面図である。
図15図15aおよび図15bは、シリンジと接続およびシリンジから分離するハブの斜視図である。
図16図16aおよび図16bは、図15aおよび図15bに対応する第1実施形態の断面図である。
図17図17aおよび図17bは、図15aおよび図15bに対応する第2実施形態の断面図である。
図18図18aおよび図18bは、図15aおよび図15bに対応する第3実施形態の断面図である。
図19図19は、流体移送ホースの端部で流体移送先端部に装着された分離機構を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
前記レバー部材に装着された前記ねじ部は、一種のラッチと考えられ、前記弾性的な付勢に逆らって前記レバー部材を枢動することにより前記ラッチを解放し、それにより、前記ねじ部は、接続したハブの外面上の対応するねじ部から分離される。これは、摩擦嵌合によって接続されている前記ハブには干渉しない。単に前記螺合を解除するだけでは、前記流体移送先端部から前記ハブを分離するのに十分でなく、前記ハブは、前記摩擦嵌合のため、重力によって前記先端部から落下することができない。また、前記レバー部材は、前記摩擦嵌合から前記ハブを解放するための付加的機能を有する。これは、例えば、前記流体移送先端部に対して移動して前記ハブを押しやることにより前記摩擦嵌合を解除する、前記レバー部材の前面によって、円滑なワンタッチ操作で実現することができる。一連の好ましい実施形態において、前記レバー部材は、一端(例えば、前面)が、第1位置および第2位間において、前記流体移送先端部に対して移動可能なように、前記デバイスに枢動可能に接続されている。
【0018】
前記レバー部材が弾性的に付勢されることにより、前記ねじ部は前記ハブと螺合を形成するように位置する。これは、前記レバー部材のデフォルト位置が、ルアーロック接続を維持する位置であること意味する。これにより、安全性および信頼性が確保される。前記ハブとの前記螺合を解除するためには、使用者は、積極的に弾性的な付勢を克服しなければならない。
【0019】
上述の通り、ハブは、前記流体移送先端部に押しつける際に回転させて、前記ねじ部に接続されてもよい。前記レバー部材は、前記ハブがこのように接続されている間、その弾性的に付勢された位置にとどまってもよい。例えば、標準的なルアーロックハブは、その外ねじ部と前記レバー部材に装着された前記ねじ部との接続を確かなものにするために、270度まで回転してもよい。しかしながら、出願人は、前記ハブを回転させて前記螺合を形成するために必要な時間および/または手先の器用さが、望ましいとは限らないことに気付いた。前記レバー部材の弾性的な付勢は、それが押しやられてより迅速なハブの接続を可能にすることを意味する。これは、標準的なルアーロック接続に対する改善を提供する。例えば、ハブを回転させずに前記流体移送先端部に押しつけて、前記ハブがテーパー状摩擦嵌合部に接続されている間は前記ねじ部が係合しないように強制的に前記レバー部材をその弾性的な付勢に逆らって枢動させてもよい。最後に、前記ハブを少し回転させることにより、前記ねじ部は係合され、前記レバーはその弾性的に付勢された位置に戻される。これは、前記螺合接続を完成するために、180度または270度ではなく、90度(または、それ以下)の回転のみを要求するかもしれない。前記ねじ部は、一部のみにねじが切られていてもよい。
【0020】
前記レバー部材に装着された前記ねじ部は、標準的な螺旋状ねじ部の形態をとってもよい。前記ねじ部の断面形状(しばしば、その形状、または、ねじ部形状と呼ばれる)は、正方形、矩形、三角形(例えばV字型)、台形、または他の形でもよい。標準的な三角形のねじ部形状は、二等辺三角形に基づいており、通常、V−ねじ部と呼ばれる。正三角形は60°のV−ねじ部を提供する。しかしながら、前記ねじ部が、ハブに全回転を要することなく当該ハブを前記先端部に押しつけることを補助するねじ部形状を有してもよいことを想定している。前記ねじ部は、非正三角形のねじ部形状でもよい。例えば、三角形のねじ部形状は、前記流体移送先端部のテーパ形状が縮径する方向に沿って、下方に角度をつけてもよく、ハブが前記ねじ部を通過して前記摩擦嵌合が一旦形成されると前記螺合が係合するよう補助してもよい。前記ねじ部形状は、下方に延びる歯または他の把持手段を有してもよく、前記螺合を解除するように前記レバー部材を枢動させることなしにハブが強制的に分離されるのを防いでもよい。特に、前記デバイスが、標準的なルアーロックねじ部を有する留め輪を備えていないハブ(例えば、フランジを有するルアースリップハブ、または、前記テーパ状流体移送先端部と摩擦嵌合を形成可能な他のハブ)との接続を目的とする場合、種々異なるねじ部形状が考えられてもよい。
【0021】
対応するハブから前記先端部を分離するのにレバー部材を使用する利点は、入力される力が増幅されてより大きな出力する力を提供することができる、つまり、ハブを前記先端部から遠ざかるように押す、てこの力を提供することにある。レバー部材の機械効率(The mechanical advantage)は、加えられた力を高めることができるため、前記デバイスは前記ハブを保持する必要なく解放することができ、そのため、片手操作が可能になる。さらに、レバー部材は、前記弾性的な付勢の下で枢動されている時に前記螺合を係合し、前記弾性的な付勢に逆らって枢動すると前記ハブを前記螺合から出し、さらに枢動されると前記ハブを前記摩擦嵌合から解放するよう作用するのに理想的である。
【0022】
一連の実施形態では、前記ねじ部は、部分半球留め輪が有する雌ねじである。このような留め輪は前記流体移送先端部の片側の周囲(例えば、前記流体移送先端部の周囲の180度まで)にしか延在しないため、前記螺合は、単純に前記レバー部材を枢動して前記留め輪を前記流体移送先端部およびそれに接続されたハブから離れるように移動させることによって解除されてもよい。
【0023】
より一般的に、前記レバー部材に装着された前記ねじ部は、雌ねじ部を有する留め輪の形態をとることが好ましい。このような留め輪は、前記流体移送先端部を少なくとも部分的に包囲するように前記レバー部材に装着されてもよい。安全なルアーロック接続を確かなものにするために、前記雌ねじ部を有する留め輪は、前記流体移送先端部の周囲の略360度に延在してもよい。しかしながら、360度の留め輪は、前記流体移送先端部から四方に遠ざかるように動くため、前記螺合を解除する前記レバー部材の操作をより困難にする可能性がある。出願人は、前記雌ねじ部を有する留め輪が、前記弾性的な付勢に逆らって前記レバー部材を枢動させることにより離れるように配置された複数のセグメントに分割可能であり、それにより、前記ハブとの前記螺合を解除するという解決法を考案した。
【0024】
これは、前記レバー部材が弾性的に付勢されているかどうかにかかわらず、また、流体移送デバイス(例えば、シリンジ)に対してだけでなく一般的ないかなる流体移送接続部に対してもそれ自体で新規であり、かつ進歩性を有すると考えられる。そのため、本発明の第2の態様によれば、流体移送接続部であって、対応するハブ用のテーパー状摩擦嵌合部を含む流体移送先端部と、前記流体移送先端部に対して移動するように枢動可能に装着されたレバー部材と、前記流体移送先端部を少なくとも部分的に包囲し、前記摩擦嵌合に加えて螺合によってハブが前記先端部に接続できるように、前記レバー部材に装着された雌ねじ部を有する留め輪とを含み、前記雌ねじ部を有する留め輪は複数のセグメントに分割可能であり、前記レバー部材を枢動させることにより前記複数のセグメントを離れるように移動させ、前記螺合を解除することで、前記ハブが分離される、流体移送接続部を提供する。
【0025】
このような流体移送接続部は、加圧された流体移送処置に耐えると信じられている標準的なルアーロック接続の螺合の恩恵を受けるが、対応するハブから前記先端部を緩める代わりに前記レバー部材を操作することにより前記ルアーロック接続を解除することができる。これは、両手でねじる動きではなく、片手での所作であり得る。前記分割可能な留め輪は、レバー作動式分離機構を標準的なルアーロックハブと協働させることができる。
【0026】
前記雌ねじ部を有する留め輪は、前記流体移送先端部の周囲に配置される、例えば部分半球セグメントのような、複数のセグメントに分割可能でもよい。前記複数のセグメントは、例えば、レバー部材と一致する方向または前記レバー部材と直交する方向に移動することにより、離れるように移動してもよい。前記セグメントの少なくともいくつかは、前記流体移送先端部に対して径方向外向きに移動することが好ましい。全てのセグメントが前記流体移送先端部に対して径方向外向きに移動する必要がないことが理解されるであろう。例えば、1以上のセグメントが外側に移動して前記セグメントが離隔する一方で、他の1以上のセグメントは、静止していてもよい。
【0027】
前記雌ねじ部を有する留め輪は、360度まで、連続的または間隔のあいたセグメントの形態で、前記流体移送先端部を包囲してもよい。安全なルアーロック接続は、前記流体移送先端部の周囲の少なくとも180度、190度、200度、210度、220度、230度、240度、250度、260度、270度、280度、290度、300度、310度、320度、330度、340度、または350度に延在する留め輪によって実現されてもよい。好ましい実施形態において、前記雌ねじ部を有する留め輪は、前記流体移送先端部の周囲の略360度に延在する。前記留め輪の移動可能なセグメントは、前記レバー部を操作することによって解除されるという便利な構成の360度の螺合を可能にする。
【0028】
本発明の第2の様態の少なくともいくつかの実施形態によると、前記レバー部材は、使用者が前記留め輪を容易に開閉して思い通りにハブを接続および分離できるように、枢動自在であってもよい。しかしながら、前記レバー部材は、前記留め輪を閉じて前記螺合の形成を維持する、デフォルト位置を持つことが好ましい場合がある。一連の好ましい実施形態において、前記レバー部材が弾性的に付勢されることにより、前記雌ねじ部を有する留め輪が前記流体移送先端部を包囲して、前記ハブと螺合を形成する。そのため、使用者は、前記弾性的な付勢を克服するのに十分な力で前記レバー部材を操作してから前記螺合を解除しなければならない。これにより、ルアーロック接続が予期せず解除されるのを防ぐことができる。そのため、前記セグメントが、前記弾性的な付勢に逆らって前記レバー部材を枢動させることによってのみ、離れるように移動することが好ましい。
【0029】
前記レバー部材は、前記雌ねじ部を有する留め輪を、すでに決められた(例えば製造中形成された)複数のセグメントに分割するように作動してもよい。一連の実施形態において、前記雌ねじ部を有する留め輪は、あらかじめ分割された複数のセグメントを含む。しかしながら、前記レバー部材によって加えられる力は、前記留め輪を物理的にセグメントに分割するため、例えば、前記留め輪に形成された壊れやすい接続部または脆弱領域をこじ開けるために利用されてもよい。別の一連の実施形態では、前記雌ねじ部を有する留め輪は、複数のセグメントに破壊されるように配置される。
【0030】
前記流体移送先端部は、1回以上、ハブに接続および再接続されてもよい。一連の実施形態において、前記雌ねじ部を有する留め輪は、ヒンジセグメントに分割可能であってもよい。このようなヒンジセグメントは、前記レバー部材の操作によって開閉されてもよい。しかしながら、少なくともいくつかの実施形態では、例えば二次汚染を防ぐため、前記流体移送先端部は1回のみ使用可能であることが好ましい。前記留め輪は、ハブの分離の際に永久的ダメージを受け、それにより、前記流体移送接続部またはデバイスが再利用できないように設計されてもよい。一連の実施形態では、前記複数のセグメントを離れた状態でロックする手段を設けてもよい。
【0031】
本発明の第2の態様の実施形態において、前記レバー部材の操作は、前記摩擦嵌合によって前記先端部に接続されたハブには干渉しない場合がある。前記ハブを完全に分離するためには、人手の介入、例えば、使用者が、前記ハブを引き抜く必要がある場合がある。しかしながら、前記摩擦嵌合を手動で解除するのは簡単でなく、前記ハブを緩めるためには、ねじり作用が必要かもしれない。そのため、前記レバー部材を枢動することにより、続けて前記ハブを前記摩擦嵌合から解放することが好ましい。上述の通り、前記レバー部材、例えばその前面は、前記流体移送先端部に対して相対的に移動して前記ハブを押しやって、前記摩擦嵌合を解除するように配置できる。一連の実施形態では、前記レバー部材は、前記セグメントが離れるように移動した後、前記先端部に沿って前方へ移動するように配置されたリムを有する前面を含む。
【0032】
さらに、出願人は、弾性的な付勢が、本発明の少なくともいくつかのさらなる態様に不可欠な特徴でない場合があることを見出した。そこで、本発明の第3の態様によれば、流体移送デバイスまたは接続部であって、対応するハブ用のテーパー状摩擦嵌合部を含む流体移送先端部と、前記流体移送先端部に対して移動するように枢動可能に装着されたレバー部材と、前記摩擦嵌合に加えて螺合によってハブが前記先端部に接続できるように前記レバー部材に装着されたねじ部とを含み、前記レバー部材は、少なくとも2つの異なる位置の間で前記ねじ部を動かすように操作可能であり、第1位置において、前記ねじ部は前記ハブと係合し、それによって、前記ハブをロック位置に保持することを補助し、第2位置において、前記ねじ部は前記ハブと係合せず、前記レバー部材は前記ハブを前記摩擦嵌合から解放するように作動する、流体移送デバイスまたは接続部を提供する。
【0033】
前記レバー部材が、前記第1位置および前記第2位置の間で枢動するように手動で操作可能であることが好ましい。弾性的な付勢を任意に使用して、手動操作を補助してもよい。例えば、前記レバー部材は、前記ねじ部を前記第1位置へ移動させるように弾性的に付勢されてもよい。これにより、前記ねじ部が人手を介さず自動的に先端部と係合することが保証される、すなわち、前記ロック位置が前記デフォルト位置である。そして、前記レバー部材の手動操作は、前記螺合を解除したい時に前記付勢力を克服して前記ねじ部を前記第1位置から前記第2位置へ移動させ、その後、例えば、前記ハブを押しやることによって前記摩擦嵌合を分離することができる。しかしながら、いくつかの実施形態において、このような弾性的な付勢(例えば、スプリング部材)の存在はハブを前記流体移送先端部に接続したい時に使用者に積極的に前記レバー部材を操作することを要求するが、弾性的な付勢なしでは前記レバー部材は前記ねじ部が除かれた前記第2位置(または中立の第3位置)に放置され得る。
【0034】
少なくとも一連の実施形態において、前記レバー部材が、前記第1位置および第2位置の間で枢動自在となるように装着されることが好ましい。これにより、使用者が付勢力を克服する必要がなくなり、前記レバー部をより簡単に制御することができる。これは、使用者に、前記レバー部材の移動の制御における手先の器用さ、および、ハブの選択的な接続/分離を提供するかもしれない。
【0035】
たとえ弾性的な付勢(たとえば、スプリング部材)がなくても、前記レバー部材は、前記ねじ部を前記第1位置に保持するよう配置されるかもしれない。そこで、弾性的な付勢に代えて、または、弾性的な付勢に加えて、前記レバー部材は、それ自体を前記第1位置に保持してもよいし、または、前記流体移送デバイス/接続部が、前記レバー部材を第1位置に保持するよう作用してもよい。例えば、前記流体移送デバイスは、前記流体移送先端部(例えば、シリンジ)に接続された流体室を含んでもよく、前記レバー部材は、第1位置に移動すると前記流体室を把持してもよい。使用者は、前記レバー部材が前記第1位置から遠ざかるように移動する前に、前記把持を克服する力を加える必要があるかもしれない。それゆえ、一連の実施形態では、前記流体移送デバイスまたは接続部は、さらに、前記レバー部材を前記第1位置に保持するように配置された把持手段を含む。このような把持手段は、前記ハブへの前記螺合または他の押し込み式接続(positive connection)に加えて作用する。
【0036】
前述の通り、一連の実施形態において、前記レバー部材は、前記ねじ部を、前記ねじ部が前記ハブをロック位置に保持しなくなるが前記ハブが前記摩擦嵌合によって前記流体移送先端部に接続されたままの、前記第1位置および前記第2位置の間である第3位置へ移動させるように操作可能でもよい。
【0037】
前記レバー部材は、前記ハブを前記摩擦嵌合から解放するよう作動する、(例えば、前面によって提供される)作動部(actuator portion)を含んでもよい。前記作動部は、前記レバー部材が異なる位置の間で枢動されると前記先端部に沿って移動するように配置されることが好ましい。このような実施形態について、さらに、以下に述べる。
【0038】
前記レバー部材は様々な形態をとり得るが、前記レバー部材は、前記先端部の軸に対して略横方向の前面を含み、前記前面が、前記レバー部材が前記弾性的な付勢に逆らって枢動されると前記先端部に沿って移動するように配置されていることが好ましい。前記レバー部材は、力を効率的に伝達するように、比較的高い剛性を有することが好ましい。しかしながら、医療現場での単回使用のための安価、無菌性、および使い捨ての製品を提供するため、前記デバイスまたは少なくとも前記レバー部材を、プラスチック素材から成形することも望ましい。前記レバー部材は、立体シェル(three−dimensional shell)に形成することによって補強されてもよい。前記レバー部材が、前記先端部の軸に対して略横方向の前面と、前記先端部の軸に対して略平行方向に延びる1以上の側面とを含むことが好ましい。前記1以上の面が、前記前面から後方に、前記流体移送先端部から離れるように延びる覆いを形成することが好ましい。前記部材の三次元的な広がりは、種々の実施形態で好まれるように前記部材をプラスチック材料で形成した場合にも、十分な剛性を確保するのに役立つ。
【0039】
一連の実施形態では、前記レバー部材は、前記流体移送先端部の軸に対して略平行に延び、筒状である側面(1以上)を含み、少なくとも部分的に筒状の形状を有する。前記側面(1以上)は、前記流体移送先端部の軸を完全に包囲する必要はない。しかしながら、少なくとも一連の実施形態においては、前記レバー部材の前面が、前記流体移送先端部を包囲する1以上の側面に接続されている。これにより、前記レバー部材を補強することができ、前記レバー部材をハブに押しつけた場合でも、前記前面が、好ましくは屈曲することなく、前記前面の運動エネルギーを伝達して前記ハブを押しやる。
【0040】
これに代えて、あるいはこれに加えて、前記レバー部材の前面および側面(1以上)を、一体的に形成することが好ましい。例えば、少なくとも前記レバー部材のこれらの部分を、単一のプラスチック成形品として形成してもよい。これに代えて、あるいはこれに加えて、前記前面が、前記流体移送先端部を少なくとも部分的に包囲することが好ましい。前記前面は、例えば、前記先端部が前記前面の開口から突出していることにより、前記流体移送先端部を完全に包囲してもよい。これにより、前記レバー部材をよりコンパクトにでき、かつ/あるいは、前記前面が、摩擦嵌合で前流体移送先端部に装着されたハブをより効果的に押すことが可能となる。
【0041】
前記ハブを分離するためにレバー部材を使用する更なる利点は、得られるてこの力を制御するように前記前面の形状(特に湾曲)を設計できることである。一連の実施形態において、前記レバー部材の(例えば弾性的な付勢に逆らった)初期移動が、前記前面を前記流体移送先端部に対して略横方向に移動させて前記螺合の係合を解除し、(例えば弾性的な付勢に逆らった)前記レバー部材の更なる移動が、前記前面を前記流体移送先端部に沿って移動させて前記ハブを前記摩擦嵌合から解放するように、前記前面は湾曲している。したがって、前記前面の湾曲は、分離の異なる段階に合致する2つの異なる移動を提供する。
【0042】
ハブを先端部から押しやる際の潜在的な問題は、ハブが強制的に分離されるかもしれないということである。前記ハブが針またはその他の鋭利物を有する場合、これは、損傷の危険をもらたらしかねない。そのため、前記デバイスが、さらに、前記摩擦嵌合から解放された後の前記ハブを捕捉するように配置された捕捉手段を含むことが好ましい。(例えば弾性的な付勢に逆らった)前記レバー部材の更なる移動が、前記捕捉手段に前記ハブを捕捉させることが好ましい。このようにして、前記ハブは、分離されると捕捉されるが、その後、前記デバイスから制御可能に分離される。前記捕捉手段は、前記レバー部材の弾性的に付勢された移動により(例えば、その静止状態にもどることで)続いて解放されてもよい。
【0043】
例えば、保管および/または輸送の際にコンパクトであるように、前記デバイスが非使用時は、前記弾性的な付勢が提供された場合、それを無効にすることが望ましい。一般的に適用可能な特徴は、前記デバイスに前記弾性的な付勢に逆らって前記レバー部材をロックする手段を持たせることである。
【0044】
前記実施形態のいずれにおいても、前記流体移送デバイスまたは接続部は、前記レバー部材を装着する手段を有してもよい。前記レバー部材が前記流体移送先端部の軸と略平行方向に延びる、例えば、筒状もしくは長方形状の1以上の側面を含む場合、前記側面(1以上)を、前記デバイスの少なくとも一部に沿って延在させ、そのような装着手段に係合させるという便利な構成とするとができる。よって、前記流体移送デバイスまたは前記接続部は、使用時に、ハブから前記先端部の分離を補助する準備が整った状態で装着された前記レバー部材を備えた便利な構成とすることができる。したがって、本発明の少なくともいくつかの実施形態は、使用準備が整ったレバー部材が予め装着された状態で製造および/または販売される、シリンジ等の流体移送デバイスまたはその他の流体移送接続部の新しいカテゴリを提供しうるものである。場合によっては、前記レバー部材を別個に包装し、必要に応じてデバイス(または接続部)に装着することも可能ではあるが、前記デバイス(または接続部)を、当該デバイス(または接続部)に装着された前記レバー部材を含む単一のユニットとして包装、販売する方が有利である。
【0045】
前記レバー部材は、詳細を後述するように、特に、従来の流体移送デバイスまたは接続部に後付けする場合には、前記流体移送先端部に装着または前記流体移送先端部を包囲してもよい。しかしながら、これにより、対応するハブとの摩擦嵌合の形成に使用した方がよい前記流体移送先端部周辺のスペースを、前記レバー部材に取られてしまうか、そうでなければ、前記レバー部材が接続に干渉するというリスクが伴う。したがって、少なくともいくつかの実施形態では、前記レバー部材は、前記流体移送デバイスまたは接続部の流体室に装着することが好ましい。前記レバー部材が、前記流体移送先端部の軸と略平行方向に延びる、例えば、円筒状または長方形状の1以上の側面を含む場合、前記側面(1以上)は、装着のため、前記流体室と平行に延在してもよい。前記側面(1以上)は、前記流体室を少なくとも部分的に包囲し、前記流体室が提供する装着手段と係合する、前記流体移送先端部から延びる覆いを形成することが好ましい。
【0046】
前記レバー部材を装着する手段は、前記流体移送先端部と一体または別体でもよい。一連の実施形態において、前記流体移送デバイスまたは接続部は、一体型のレバー部材を装着する手段を有してもよい。前記装着手段が前記流体移送先端部と一体である実施形態において、それらは、例えば前記先端部と一体の流体室が有する形で前記流体移送先端部の後ろに位置してもよい。一連の実施形態において、前記流体移送デバイスは、前記流体移送先端部と連通する流体室を含み、前記装着手段は前記流体室と一体である。例えば、前記装着手段は、前記流体室と一体のアクスルを含んでもよい。そのような実施例では、前記流体移送デバイスがシリンジを含み、前記シリンジの外筒の外面にアクスルを成形して、前記レバー部材を枢動可能に装着してもよい。そのため、前記シリンジの外筒等の前記流体室はレバー部材を装着するよう設計されてもよく、それにより、使用準備が整ったレバー部材が予め装着された状態で前記デバイスが提供できる。別の一連の実施形態では、例えば、前記レバー部材が一体ヒンジによって枢動可能に装着されることにより、前記レバー部材は、前記流体移送デバイスまたは接続部と一体化することもできる。前記レバー部材および前記流体移送デバイス(または接続部)は、例えば、前記レバー部材を一体成形ヒンジ等により枢動可能に装着し、単一のプラスチック成形品として形成することもできる。
【0047】
しかしながら、別の一連の実施形態では、レバー部材を、既存の流体移送デバイスまたは接続部に後付けすることが望ましい場合がある。例えば、レバー部材を標準的なシリンジまたはその他のデバイス/装着部に装着し、前記デバイス/接続部の設計を変更することなく、上記で概説した様々な利点を享受することが望ましい場合がある。このような実施形態では、前記レバー部材は、別体の取り付け部によって装着されていることが好ましい。前記レバー部材は、任意の好適な手段により、流体移送デバイスまたは接続部に取り付けられてもよい。前記レバー部材は、前記流体移送先端部への干渉を避けるため、前記先端部の後端または前記先端部の後ろに、取り付け留め輪により取り付けられてもよい。
【0048】
前記レバー部材の操作がハブの前記先端部へのロックに続いて前記先端部からのハブの分離を補助するあらゆる状況において、このような後付け機構を、流体移送接続部またはデバイス(シリンジ等)の流体移送先端部または他の任意の部分の周囲に取り付けてもよいことが理解されるであろう。前記機構は、前記先端部のハブへの挿入前または挿入後に取り付ければよい。このような機構は、摩擦嵌合が強固過ぎて前記ハブから前記先端部を引き抜くだけでは簡単に分離できない、または、少なくとも損傷やけがの危険を伴わずに分離できないと判断される場合に、使用者によって、前記流体移送デバイスまたは接続部に任意に取り付けることができる。また、前記機構は、前記流体移送デバイス(または接続部)が針を備えたハブに接続され、針スパイクからの保護が所望される場合にも、任意に取り付けることができる。
【0049】
一連の実施形態において、前記レバー部材は、前記デバイスまたは前記接続部に着脱可能に装着されることが好ましい。これは、前記レバー部材が不要である場合、あるいは、前記レバー部材による干渉を受けることなく前記デバイス(または接続部)を操作することが好ましい場合に、使用者が前記レバー部材を取り外し、廃棄できることを意味する。前記レバー部材を双安定位置に装着し、前記レバー部材を装着位置から解放するためには、ある閾値を超える力および/またはある方向に作用する力が加えられなければならないようにすることが好ましい。これにより、前記レバー部材が予期せず前記デバイス(または接続部)から外れることを防止できる。
【0050】
出願人は、前記レバー部材が弾性的に付勢されて前記留め輪が前記流体移送先端部を正常に取り囲んで螺合を形成しても、使用者が偶発的に前記レバー部材を操作して意図せずハブを分離してしまう危険があることを見出した。いくつかの流体移送工程の間、前記流体接続部が不注意で解放されることを確実に防ぐことを最優先事項としてもよい。これは、特に、高圧流体移送の際に、危険かもしれない。これを避ける1つの方法として、前記レバー部材を操作不能にすることが挙げられる。例えば、前記流体移送デバイスまたは接続部は、前記レバー部材が枢動できないようロックする手段を有してもよい。前記レバー部材を動かす前に、使用者による当該レバー部材のロックの積極的な解除を必要としてもよい。その他の解決法として、前記レバー部材を取り外す、すなわち、手動でねじを緩めなければいけない伝統的なルアーロック接続に回帰することが挙げられる。
【0051】
レバー分離機構を変更せずにルアーロック接続の高水準の安全性を保証する解決法は、前記レバー部材をロックする手段を備える前記ハブを提供することである。そこで、一連の実施形態では、前記ハブは、前記摩擦嵌合を形成するテーパ状の内面を有するソケットと、前記螺合を形成する前記ソケットの外面の周囲に設けられたねじ部と、前記螺合をロックするために前記ねじ部に外接するフランジとを含む。
【0052】
この特徴は、それ自体で新規であり、かつ進歩性を有すると考えられ、それゆえ、本発明の更なる態様は、流体移送接続部から流体を導くハブであって、挿入された対応する流体移送先端部と摩擦嵌合を形成するテーパ状の内面を有するソケットと、前記摩擦嵌合に加えてねじ接続を可能にする前記ソケットの外面の周囲に設けられたねじ部と、対応する流体移送先端部との前記ねじ接続をロックするために前記ねじ部に外接するフランジと、を含むハブを提供する。
【0053】
前記ハブの前記ねじ部に外接する前記付加的フランジは、前記ハブと螺合を形成する雌ねじ部を有する留め輪の外面、すなわち、流体移送デバイスまたは接続部のルアーロック留め輪に対して係合するように配置されてもよい。前記留め輪をレバー部材に装着する場合、この係合は、前記レバー部材が固定されて前記螺合を解除するよう操作できないことを意味する。前記ハブは、前記フランジが、標準的なルアーロック留め輪の幅に略一致する距離をおいて前記ねじ部を取り囲むように、設計してもよい。この距離は、前記フランジと前記ルアーロック留め輪との間の締まり嵌めを提供するために選択してもよい。これに代えて、あるいはこれに加えて、前記フランジは、例えば、ルアーロック留め輪の外面との摩擦係数を増加させる素材で作られ、かつ/あるいはコーティングまたは処理された、把持内面を備えていてもよい。
【0054】
それゆえ、本発明のこの態様の実施形態において、前記ハブは、流体移送デバイスまたは接続部の前記流体移送先端部に接続され、摩擦嵌合が前記先端部と前記ソケットの前記テーパ状の内面との間に形成され、かつ、ねじ接続が前記ねじ部と前記流体移送先端部を少なくとも部分的に包囲する雌ねじ部を有する留め輪との間に形成されてもよい。前記雌ねじ部を有する留め輪は、前記流体移送先端部に対して移動して前記ねじ接続を解除するよう枢動可能に装着されたレバー部材に装着されることが好ましい。前記ねじ部に外接する前記フランジは、前記レバー部材の移動に逆らってねじ接続をロックするために前記雌ねじ部を有する留め輪の外面と係合することが好ましい。これにより、前記フランジは、前記雌ねじ部を有する留め輪が移動する、あるいは、複数のセグメントに分割されることを防ぐことができ、前記ねじ接続は解除されない。
【0055】
その他の実施形態において、流体移送デバイスまたは接続部の前記流体移送先端部は、そのようなフランジを有していないハブに接続されてもよい。その結果、前記ハブは、レバー部材の、前記ハブとねじ接続/螺合を形成する雌ねじ部を有する留め輪を移動させるまたは分割させる操作を可能にする。一連の実施形態では、前記ハブは、例えば標準的なルアースリップハブのように、テーパ状の内面と、その基部に外側リムとを含んでもよい。前記外側リムは、雌ねじ部を有する留め輪と、螺合と類似する締まり嵌めを形成する。別の一連の実施形態では、前記ハブは、例えば標準的なルアーロックハブのように、テーパ状の内面と、その基部に外ねじとを含んでもい。このようなハブの外ねじは、もちろん、対応するルアーロック嵌合の前記雌ねじ部を有する留め輪と螺合を形成するものである。
【0056】
さらに、前記本発明の種々の態様が、前記ハブと螺合を形成するよう前記レバー部材に装着されたねじ部または雌ねじ部を有する留め輪に関するが、本発明が、通常の摩擦嵌合に加えて前記ハブをロックするよう作用するあらゆるラッチまたは押し込み式接続に展開されてもよいことが理解されるであろう。例えば、好適な押し込み式接続は、一対の雄型部分および雌型部分を係合させることによって実現されてもよい。そこで、本発明の更なる広範な態様によれば、流体移送デバイスまたは接続部であって、対応するハブ用のテーパー状摩擦嵌合部を含む流体移送先端部と、前記流体移送先端部に対して移動するように枢動可能に装着されたレバー部材と、前記ハブに装着された部分と係合し、前記摩擦嵌合に加えて押し込み式接続を提供する、前記レバー部材に装着されたラッチとを含み、前記レバー部材を枢動させることにより、前記ラッチを解放し、続けて前記ハブを前記摩擦嵌合から解放することで、前記ハブが前記先端部から分離される、流体移送デバイスまたは接続部、を提供する。いくつかの実施例において、前記ラッチは、前記流体移送先端部の片側のみに押し込み式接続を提供してもよく、例えば、前記先端部の周囲に90度までまたは180度まで延在するラッチでもよい。その他の実施例において、前記ラッチは、前記流体移送先端部を略一周する押し込み式接続を提供してもよく、例えば、前記先端部の周囲に少なくとも180度または270度および360度まで延在するラッチでもよい。前記ラッチは、ねじ部または雌ねじ部を有する留め輪の形態をとってもよい。前述の好ましい特徴のいずれも、同様に、この本発明の更なる態様に適用してもよい。
【0057】
また、好適なハブが、標準的なルアースリップまたはルアーロック設計から逸脱してもよいことを想定している。前記出願人は、前記レバー部材を使用してハブを分離する際、前記レバー部材を前記ハブと相互作用させるための空間を前記外側リムまたは前記ねじ部の下方に提供することが有用であること見出した。それゆえ、一連の実施形態では、前記ハブは、テーパ状の内面と、裾部によってその基部から離隔した外側リムまたはねじ部とを含む。前記裾部は、従来より、前記レバー部材が前記リムまたは前記ねじ部と接触しないで回転するための余地を提供することができる。前述の通り、これにより、前記レバー部材の更なる移動が(例えばリムを有する)前面を前記流体移送先端部に沿って前方に移動させ、前記裾部を通り越し、前記ハブの前記リムまたは前記ねじ部を押すことによって前記ハブを前記摩擦嵌合から解放する前に、雌ねじ部を有する留め輪を開いて前記螺合を解放することができるかもしれない。前記裾部は、可撓性を有してもよい。
【0058】
少なくともいくつかの実施形態では、前記ハブは、さらに、前記ハブが流体移送先端部に接続されると当該流体移送先端部を把持する付加的手段を含んでもよい。例えば、前記先端部を把持する付加的手段は、フランジまたは溝をそのテーパ状の内面に含んでもよい。前記ハブの内面に設けられた前記フランジまたは前記溝は、先端部に接続されると、対応する溝またはフランジと係合してもよい。したがって、このような対応する溝またはフランジが前記流体移送先端部に設けられてもよい。例えば、前記ハブが、環状溝をそのテーパ状の内面に有し、前記流体移送先端部に環状把持フランジが外接してもよい。
【0059】
使用時に、前記ハブは、シリンジ、採血管、ホース、チューブ、IVライン、ストッパー(stopper)、またはクロージングコーン(closing cone)の形態の流体移送デバイスまたは接続部が提供する流体移送先端部に接続されてもよい。前記ハブは、いかなる雌型ルアーロックコネクタの形態をとってもよく、例えば、カテーテル、カニューレ、または皮下注射針への流体接続部等が挙げられる。前記流体移送デバイスまたは接続部は、液体および/または気体を移送するよう配置されてもよい。
【0060】
前記流体移送デバイスは、流体(液体および/または気体)の、流体の入れ物からの移送または流体の入れ物への移送に使用されるあらゆる種類のデバイスを含んでもよい。前記流体の入れ物は、無生物であってもよいし、または生きた対象の一部、例えば、体腔、臓器、または静脈もしくは動脈等の血管であってもよい。本発明は様々な用途を見出すことができるが、前記流体移送デバイスは、医療器具であることが好ましい。前記流体移送デバイスは、シリンジ、薬剤充填済みシリンジ、IV送達デバイス(例えば、「点滴」)、輸液デバイス、流体ポンプ、活栓、アスピレーター、吸引デバイス、採血管またはホース用の容器等の1以上のデバイスを含んでもよい。前記デバイスは、関連する医療規格、例えば、殺菌した皮下注射シリンジに関するISO7886に適合させてもよい。
【0061】
本発明のいくつかの実施形態について、あくまでも例示目的で、添付図面を参照しながら説明する。
【0062】
図1a〜図1dは、ハブ10用分離機構の実施形態を示す。シリンジ2は、対応するハブ10とルアースリップ接続、すなわち、摩擦嵌合を形成するようにテーパ状に形成された流体移送先端部6を有する。加えて、先端部6は、シリンジ2の外筒4の近くで先端部6を包囲する環状把持フランジ8を任意に備えてもよい。ハブ10は、図2aおよび図2bに示すような標準的なルアースリップハブ10または図14aおよび図14bに示すようなフランジ8を把持する環状溝をその内面に有するハブ410でもよい。ハブ10は、リム12の下方に延在する裾部を付加的に備える以外、内部テーパおよび外側リム12を有する標準的なルアースリップハブと同様でもよい。これに代えて、ハブ10は、図3aおよび図3bに示すような標準的なルアーロックハブ110でもよい。
【0063】
本実施形態において(図1a参照)、シリンジ2は、雌ねじを有する部分半球留め輪の形態をとる前方に延びるラッチ46を有する枢動可能に装着されたレバー部材34を有する。図1bに示すように、ハブ10は、当該ハブを前記摩擦嵌合に押しつけると同時に(例えば、リム12を)ラッチ46のねじ部と接続するようにねじることにより先端部6に接続されてもよい。ハブ10が回転しない場合は、当該ハブは先端部6に沿って押されたままになり、その弾性的な付勢に逆らうように強制的にレバー部材34を枢動させ、そして最終的に回転して螺合を形成してもよい。図1cに示すように、その弾性的に付勢された位置において、レバー部材34を枢動し、押し込み式に係合したねじ部を維持する。ハブ10をシリンジ2に接続するには両手での操作が必要かもしれないが、レバー部材34を使用すると、連続的な片手の動きでハブ10を分離することができる。図1dは、そのリーフスプリングの弾性的な付勢に逆らってレバー部材34を下方に枢動することによって、ねじ部を有するラッチ46がハブ10から遠ざかるように移動し、それによって、ハブをロック位置に保持することを補助しなくなる様子を示す。また、レバー部材34の枢動は、先端部6の把持フランジ8との係合からハブ10を押し出し、摩擦嵌合を解除する。任意の捕捉部材44は、ハブ10がシリンジ2から飛び出すのを防ぐために備えられる。
【0064】
これらの実施形態において、標準的なルアースリップハブ10の外側リム12はねじられて、レバー部材34のラッチ46に装着された雌ねじと螺合を形成する。しかしながら、ルアースリップハブは、通常、ルアーロックコネクタのように流体移送先端部と螺合を形成するように意図されていない。ルアーロックハブは、螺合接続が確かに形成されるように、平型リムではなく外ねじを有する。図2および3において、従来のハブを比較する。図2aおよび2bは、外側リム12を有する標準的なルアースリップハブ10を示す。図3aおよび図3bは、外ねじ112を有する標準的なルアーロックハブ110を示す。これらハブ10、110は、いずれも、図1a〜図1dに示すシリンジ2の流体移送先端部6に接続されてもよく、その際ラッチ46のねじ部はリム12または外ねじ112のいずれかと係合して、摩擦嵌合に加えて、押し込み式接続(例えば、螺合)を提供する。
【0065】
標準的なルアーロックハブ110用の分離機構のいくつかの実施形態を以下に述べる。図4a〜図4eに、リーフスプリング140によって弾性的に付勢され、枢動可能に装着されたレバー部材134を有するシリンジ102を示す。ルアーロックハブ110は、テーパ面間の摩擦嵌合によって、シリンジ102の先端部106に接続される。ルアーロックハブ110は、前記摩擦嵌合に加えて螺合によるハブ110の接続を可能にする外ねじ112を、その基部に有する。従来のルアーロックシリンジは、ハブ110に撚り合わせ可能な雌ねじ部を有する留め輪を提供するだろう。しかしながら、これらの実施形態において、雌ねじ部を有する留め輪146は、レバー部材134に装着され、レバー部材134が操作されると開放されるように配置される。
【0066】
図4bに示すように、ハブ110を先端部106と接続またはハブ110を先端部106から分離するために、レバー部材134は、留め輪146を開放するように前記スプリング140の弾性的な付勢に逆らって移動してもよい。接続または分離の際にシリンジ102またはハブ110を回転させる必要はなくなる。前記ねじ接続は、レバー部材134が押し下げられると簡単に解放される。シリンジ102をハブ110から分離する際に、摩擦嵌合を強制的に分離する必要さえないかもしれない。図4cに示すように、レバー部材134をシリンジ102に対して枢動させると、当該レバー部材134の前面または前記前面上のリムは、前記先端部106に沿って前方に押され、片手での操作でハブ110を押しやって接続を自動的に分離するかもしれない。任意の捕捉部材144は、ハブ110が飛び出すのを防ぐように配置されてもよい。このようなレバー機構のさらなる詳細は、本出願人の出願であるWO2013/164358を参照してもよく、その開示の全てをここに取り込む。
【0067】
レバー部材134は、解放されると、前記スプリング140の弾性的な付勢の下、自動的的に枢動し、それにより、ねじ部を有する留め輪146はルアーロックハブ110の外ねじ112を取り囲む。図1に示す前記半球留め輪と違い、ねじ部を有する留め輪146は、ルアーロックハブ110の周囲の略360度に延在することができる。これにより、ルアーロック接続を提供する螺合の完全性は保証される。図4dおよび図4eの平面図は、1つの実施例において、レバー部材134が操作された際に、どのようにねじ部を有する留め輪146を2つの半球セグメントに分割するかを示す。もちろん、ねじ部を有する留め輪146は、留め輪が開放された際、互いに径方向外向きに動く複数の部分に分割されてもよい。これら部分半球セグメントは、それぞれ円周が異なってもよい。3つのセグメントに分割されるねじ部を有する留め輪246の実施例を図5aおよび図5bの平面図に示す。
【0068】
ねじ部を有する留め輪146がハブ110を取り囲む際、例えば、図6aおよび図6bに示すように、セグメント同士が互いに厳密に接触しないかもしれないことが理解されるであろう。1つの実施例において、図7aおよび図7bに示すように、ねじ部を有する留め輪146は、360度連続的なねじ部をルアーロックハブ110の周囲に形成する。
【0069】
レバー部材134が操作されると、雌ねじ部を有する留め輪146は、その径方向にレバー部材134に平行して分割される複数のセグメントに分割されてもよい。他の実施形態において、例えば、図8a〜図8cに示すように、レバー部材134は、その径方向かつレバー部材134に対して横方向に広がる複数のセグメントに分割される雌ねじ部を有する留め輪146を有してもよい。
【0070】
これらの実施形態のいずれにおいても、雌ねじ部を有する留め輪146は、例えば、図9aに示すような切断された留め輪ように、もとから別々のセグメントに分割されていてもよい。また、ねじ部を有する留め輪146は、レバー部材134に力が加えられると留め輪を複数のセグメントに分割することを可能にする1以上の脆弱領域または壊れやすい線を備えた、先端部106の周りを囲む一体の360度の円として形成されてもよい。図9b〜図9dは、いくつかの考え得る実施例を示す。
【0071】
レバー部材134が、任意の適切な方法でねじ部を有する留め輪146を分割するように操作してもよいことが理解されるであろう。図10aの図示例において、先端部106上の特徴(feature)は、レバー部材134が操作された際に、ねじ部を有する留め輪146の1以上のセグメントを押すように配置される。図10bの図示例において、シリンジ102の外筒104に設けられた特徴は、レバー部材134が操作された際に、ねじ部を有する留め輪146を押し開けるように作動してもよい。
【0072】
これらの実施形態の少なくともいくつかにおいて、ねじ部を有する留め輪146を開閉して接続および分離を複数回行うために、レバー部材134は、複数回操作されてもよいことを想定している。しかしながら、シリンジ等の流体移送デバイスを、一般的に1回のみの目的で使用する医療現場においては、前記デバイスを1回使用した後は使用不可とする分離機構が望ましいかもしれない。図11aおよび図11bは、これを実現する考え得るいくつかの方法を示す。図11aにおいて、ねじ部を有する留め輪146のセグメントは、レバー部材の操作によって永久変形され、それにより、留め輪が再度使用できないことがわかる。図11bは、レバー部材が一旦操作されると、留め輪146のセグメントが開放位置においてロックされる代替設計を示す。
【0073】
前述の実施形態の利点は、レバー部材の片手での操作によって標準的なルアーロックハブ110が接続および分離できることである。レバー部材に作用する弾性的な付勢は、そのデフォルト位置がハブ110を取り囲んだねじ部を有する留め輪を保持することを保証し、使用者は、接続を解除するために前記レバー部材に意図的に圧力をかけなければならない。しかしながら、使用者が偶発的に前記レバー部材を操作して螺合接続を解除してしまうリスクを伴わずに、このようなレバー部材を有するシリンジまたは他の流体移送デバイスをハブとルアーロック接続させたい、いくつかの状況があるかもしれない。このような状況において、標準的なルアーロックハブに代えて、図12aおよび図12bに示すような新規なロックハブ210を使用してもよい。雄型ねじ部212に加えて、ハブ210は、ねじ部212に外接する外周フランジ214を有する。図12bに示すように、このハブ210は、ねじ部212をねじって雌ねじ部を有する留め輪146と係合させることによってシリンジ102の先端部106に接続されてもよく、そうるることにより、外周フランジ214が留め輪146を包囲し、それによってねじ接続がロックされる。レバー部材134に圧力がかけられたとしても、ハブ210に設けられた外周フランジ214により、レバー部材134を枢動して留め輪146を開放することはできない。使用者は、従来のルアーロック接続と同様に、ねじを緩めることによってのみハブ210を前記先端部から分離できる。
【0074】
また、同じような種類のロックフランジが、ルアースリップハブに設けられていてもよい。図13に示す別の変形例において、レバー部材334は、ハブ310のフランジ314の内部でロックできる部分半球留め輪等の外向きのラッチ部材366を備える。
【0075】
図14aおよび図14bに、別のハブ410を示す。ハブ410が雄型ねじ部412を有する、つまり、必要に応じてハブ410を標準的なルアーロック接続と一緒に用いてもよいことが分かるだろう。他の変形例において、ねじ部412は、省略されてもよいしプレーンなリムと置き換えてもい。しかしながら、従来のルアーロックハブ(図3aおよび図3b参照)と比較すると、ハブ410は、ねじ部412の下方に裾部414を含む。裾部414は、レバー部材の前面の溝穴を通過するよう下方に延在する。そのため、裾部414は、レバー部材がハブ410と係合するのを助ける面を提供する。図14bの断面図からさらに分かるように、裾部414は、その内面に形成されたテーパ状の環状溝416を有する。溝416は、摩擦嵌合によって流体移送先端部(特に環状把持フランジに取り囲まれている流体移送先端部)に接続された際にハブ410が把持される付加的手段を提供する。最後に、図14aおよび図14bに示すように、ハブ410は、使用者がハブ410を先端部に押すことを容易にする人間工学的な特徴である外輪418を、任意に有してもよい。このようなハブ410は、図1図12に関して前述したように、シリンジ2、102の流体移送先端部6、106に接続されてもよいしシリンジ2、102の流体移送先端部6、106から分離されていてもよい。
【0076】
図15図18は、ハブ510(ここではフランジ512を有する標準的なルアースリップハブ510)用ロックおよび分離機構のさらなる実施形態をいくつか示す。ハブ510は、前述した他のハブのいずれと置き換えてもよい。ハブ510は、針(図示せず)を有してもよく、流体移送接続部の一部を形成してもよい。シリンジ502は、ハブ510とルアースリップ(すなわち、摩擦嵌合)を形成するようにテーパ状に形成された流体移送先端部506を有する。流体移送先端部506の後ろで、レバー部材534はシリンジ502の外筒504に枢動可能に装着されている。レバー部材534は、ねじ部または雌ねじ部を有する留め輪の形態でラッチ546を有する。レバー部材534は、手動で操作してラッチ546を異なる位置の間で動すことができる。
【0077】
図15aに示すように、第1位置において、レバー部材534は下方に枢動され、それにより、ラッチ546のねじ部がハブ510のフランジ512と係合し、それによって前記ハブをロック位置に保持することを補助する。図15bに示すように、第2位置において、レバー部材534は上方に枢動され、前記ねじ部がハブ510と係合せず、さらに、レバー部材534は、先端部506に沿ってハブ510を前方に押すことにより、ハブ510を摩擦嵌合から解放するよう作動する。ハブ510をシリンジ502に接続するには両手での操作が必要かもしれないが、レバー部材534を使用し、連続的な片手の動きでハブ510を分離することができる。図16aおよび図16bの断面図に示すように、レバー部材534の第2位置への移動によってハブ510が解放される際に、ハブ510がシリンジ502から飛び出すのを防ぐために、任意の捕捉部材544はレバー部材534に備えられてもよい。
【0078】
レバー部材534は、図15aおよび図15bに示す第1位置および第2位置の間において枢動自在であってもよい。図17aおよび図17bの断面図は、レバー部材534の前記第1(ロック)位置および前記第2(解放および分離)位置の間での移動を示す。また、図18aおよび図18bの断面図に示すように、レバー部材534は、たとえば、リーフスプリング540(または他のスプリング部材)によって第1位置に弾性的に付勢されてもよい。本実施例において、ラッチ546をハブ510から遠ざかるように移動させるとともにハブ510を先端部506に沿って押して摩擦嵌合を解除するために、使用者は、リーフスプリング540の弾性的な付勢に逆らってレバー部材534を枢動しなければならない。
【0079】
もちろん、前述したような本発明の様々な実施形態は、シリンジの形態の流体移送デバイスに限定されない。ここで述べた分離機構は、流体室として外筒を含むシリンジとの使用に限定されず、これに代えて、ホース、管、カニューレ、等の端部で流体移送先端部に装着されてもよいことが理解されるであろう。図19は、流体移送ホースの端部で流体移送先端部に装着されたレバー作動式分離機構を示す。同様に、このようなホースまたは他の流体移送デバイスは、前述の別の実施形態のいずれかに示される前記シリンジに代えることができる。
図1a
図1b
図1c
図1d
図2a
図2b
図3a
図3b
図4a
図4b
図4c
図4d
図4e
図5a
図5b
図6a
図6b
図7a
図7b
図8a
図8b
図8c
図9a-9d】
図10a
図10b
図11a
図11b
図12a
図12b
図13
図14a
図14b
図15a
図15b
図16a
図16b
図17a
図17b
図18a
図18b
図19