特許第6113398号(P6113398)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6113398一体型リードサスペンションを有する磁気記録ディスクドライブ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6113398
(24)【登録日】2017年3月24日
(45)【発行日】2017年4月12日
(54)【発明の名称】一体型リードサスペンションを有する磁気記録ディスクドライブ
(51)【国際特許分類】
   G11B 21/21 20060101AFI20170403BHJP
   G11B 5/60 20060101ALI20170403BHJP
【FI】
   G11B21/21 C
   G11B5/60 P
【請求項の数】10
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2010-262328(P2010-262328)
(22)【出願日】2010年11月25日
(65)【公開番号】特開2011-123988(P2011-123988A)
(43)【公開日】2011年6月23日
【審査請求日】2013年11月21日
【審判番号】不服2015-22272(P2015-22272/J1)
【審判請求日】2015年12月17日
(31)【優先権主張番号】12/635606
(32)【優先日】2009年12月10日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】503116280
【氏名又は名称】エイチジーエスティーネザーランドビーブイ
(74)【復代理人】
【識別番号】110001689
【氏名又は名称】青稜特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】コントレラス ジョン
(72)【発明者】
【氏名】フランカ‐ネト ルイズ
【合議体】
【審判長】 水野 恵雄
【審判官】 北岡 浩
【審判官】 吉田 隆之
(56)【参考文献】
【文献】 特開平4−72904(JP,A)
【文献】 特開2000−268336(JP,A)
【文献】 Designing Disk Drive Interconnects to Obtain a Desired Transmitted Write Current Waveform、IEEE TRANSACTIONS ON MAGNETICS、その他、2002.01.発行、Vol.38, No.1、pp.55−60
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G11B5/56-5/60
G11B21/16-21/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ソース電圧Vsを有する書き込みドライバ回路と書き込みヘッドとを有する磁気記録ディスクドライブにおける、前記書き込みドライバ回路を前記書き込みヘッドに電気的に接続するための一体型リードサスペンションであって、
前記書き込みドライバ回路に接続するための、固定の特性インピーダンスを有する可撓ケーブル部と、
前記書き込みヘッドに接続するための、固定の特性インピーダンスを有するジンバル部と、
前記可撓ケーブル部と前記ジンバル部とを接続し、N個のセグメント(Nは2以上の整数)を有する伝送線とを有し、
前記N個のセグメントの各々は、特性インピーダンスを有し、
前記Nは、3以上の整数であり、
各々のセグメントは、少なくとも3個の異なった特性インピーダンスを有し、
前記可撓ケーブル部から前記ジンバル部への連続するセグメントの特性インピーダンスは、連続的に小さくならず、
前記書き込みドライバ回路から前記書き込みヘッドへの信号は、低周波数と高周波数との間の所定の周波数帯域幅において伝送され、
前記N個のセグメントの前記特性インピーダンスにより、前記所定の周波数帯域幅にわたる周波数における前記書き込みドライバ回路から前記書き込みヘッドへの前記信号について平坦な群遅延が得られ、
前記平坦な群遅延とは、前記所定の周波数帯域幅にわたる前記群遅延が、前記低周波数における前記群遅延の所定のパーセンテージを超えて逸脱せず、
前記所定の周波数帯域幅は、約0.1GHz〜3.0GHzであり、
前記所定の周波数帯域幅にわたる前記群遅延は、0.1GHzにおける前記群遅延の10パーセント以下である一体型リードサスペンション。
【請求項2】
前記N個のセグメントは、同じ長さを有する請求項1に記載の一体型リードサスペンション。
【請求項3】
前記N個のセグメントは、異なる長さを有する請求項1に記載の一体型リードサスペンション。
【請求項4】
前記伝送線は複数の導電性トレースを備え、
第1のセグメントの前記トレースの幅は、前記第1のセグメントに接続された第2のセグメントの前記トレースの幅と異なる請求項1に記載の一体型リードサスペンション。
【請求項5】
各セグメントの前記トレースの幅は、前記各セグメントに接続されたセグメントの前記トレースの幅と異なる請求項4に記載の一体型リードサスペンション。
【請求項6】
磁気記録ディスクドライブにおける書き込みドライバ回路を書き込みヘッドに電気的に接続するための一体型リードサスペンションであって、
前記書き込みドライバ回路に接続するための、固定の特性インピーダンスを有する可撓ケーブル部と、
前記書き込みヘッドに接続するための、固定の特性インピーダンスを有するジンバル部と、
前記可撓ケーブル部と前記ジンバル部とを接続する複数の導電性トレースと、各々が特性インピーダンスを有するN個のセグメント(Nは2以上の整数)とを有し、前記各々のセグメントの前記トレースの幅は、前記各々のセグメントに接続された前記セグメントの前記トレースの幅と異なる伝送線とを備え、
前記Nは、3以上の整数であり、
各々のセグメントは、少なくとも3個の異なった特性インピーダンスを有し、
前記可撓ケーブル部から前記ジンバル部への連続するセグメントの特性インピーダンスは、連続的に小さくならず、
前記書き込みドライバ回路から前記書き込みヘッドへの信号は、低周波数と高周波数との間の所定の周波数帯域幅において伝送され、前記N個のセグメントの前記特性インピーダンスにより、前記所定の周波数帯域幅にわたる周波数における前記書き込みドライバ回路から前記書き込みヘッドへの前記信号について平坦な群遅延が得られ、前記平坦な群遅延とは、前記所定の周波数帯域幅にわたる前記群遅延が、前記低周波数における前記群遅延の所定のパーセンテージ以内であり、
前記所定の周波数帯域幅は約0.1GHz〜3.0GHzであり、
前記所定の周波数帯域幅にわたる前記群遅延は、0.1GHzにおける前記群遅延の10パーセント以内である一体型リードサスペンション。
【請求項7】
磁気記録ディスクドライブの書き込みドライバ回路を前記磁気記録ディスクドライブの誘導書き込みヘッドに電気的に接続する一体型リードサスペンションの特性インピーダンスを最適化するための方法であって、ソース電圧Vsの前記書き込みドライバ回路から抵抗器Rhに表される損失を有する前記誘導書き込みヘッドへの信号は、所定の周波数帯域幅において伝送され、前記一体型リードサスペンションは、前記書き込みドライバ回路に接続された固定の特性インピーダンスを有する可撓ケーブル部と、前記書き込みヘッドに接続された固定の特性インピーダンスを有するジンバル部と、前記可撓ケーブル部と前記ジンバル部とを接続し、かつそれぞれ特性インピーダンスを有する複数N個のセグメントを含む固定長伝送線とを含み、
前記方法は、
各整数N=2〜N=K(Kは3以上の整数)について、平坦な群遅延を有する最大の周波数帯域幅が得られるN個のセグメントの各々の特性インピーダンスZ01〜Z0Nの組を決定するステップと、
それぞれ得られた前記最大の周波数帯域幅のうち、最大の周波数帯域幅が得られるN個のセグメントの特性インピーダンスZ01〜Z0Nを選択するステップとを含む方法であって、
前記Nは、3以上の整数であり、
各々のセグメントは、少なくとも3個の異なった特性インピーダンスを有し、
前記可撓ケーブル部から前記ジンバル部への連続するセグメントの特性インピーダンスは、連続的に小さくならないことを特徴とする方法。
【請求項8】
前記N個のセグメントについて前記最大の周波数帯域幅が得られる特性インピーダンスの前記組を決定するステップは、K=N+1個のセグメントについての前記最大の周波数帯域幅がK=N個のセグメントについての前記最大の周波数帯域幅未満であるときに前記決定を終了させるステップを含む請求項に記載の方法。
【請求項9】
前記N個のセグメントについて前記最大の周波数帯域幅が得られる特性インピーダンスの前記組を決定するステップは、Kが所定の限界値に等しいときに前記決定を終了させるステップを含む請求項に記載の方法。
【請求項10】
前記書き込みドライバ回路からの前記信号についての前記所定の周波数帯域幅は、約0.1GHz〜3.0GHzであり、
前記平坦な群遅延とは、前記群遅延が、0.1GHzにおける前記群遅延の10パーセント以内である請求項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、磁気記録ハードディスクドライブ(HDD)における読み書き回路を読み書きヘッドに接続するための一体型リードサスペンション(Integrated Lead Suspension:ILS)に関し、より詳細には、最適な特性インピーダンスを有するILSに関する。
【背景技術】
【0002】
磁気記録HDDにおいて、読み書きヘッドは、回転ディスクの上方の薄い空気膜上に乗る空気軸受スライダ上に形成されている。スライダは、端部にジンバルを有する屈曲部で構成された機械的サスペンションにより、ディスクドライブのアクチュエータアームに接続されている。スライダは、ディスクが回転する際に空気軸受上でのわずかな移動を可能にするジンバルに取り付けられている。
【0003】
読み書き回路、典型的には読み取りプリアンプ/書き込みドライバモジュールまたはチップから、可撓ケーブルおよびサスペンションを通じて、スライダ上の読み取りおよび書き込み要素への電気的接続が要求される。機械的接続と電気的接続とを一体化したサスペンションは、一体型リードサスペンション(ILS)と呼ばれ、可撓ケーブルとジンバルとの間に接続される。典型的なILSは、ステンレス鋼などの導電性金属基板、ポリイミドなどの絶縁誘電体層、および誘電体層上にパターン化された導電性銅線またはトレースの、一般に可撓性積層体である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第7,417,818B2号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
書き込みドライバ回路は、正負の書き込み信号(+Wおよび−W)の各々について、ILSに単一点入力を提供するのが典型的である。書き込みドライバ回路は、ILSを通じて書き込み要素またはヘッドに電流を供給する。書き込みドライバ回路の電源電圧および書き込みヘッドを通じた電流の性能は、ILSの特性インピーダンスに依存する。書き込みドライバ回路には、幅広い周波数帯域の信号を供給することが要求され、これには、ILSの特性インピーダンスを最適化することが要求される。しかし、ILSの設計において、最適な特性インピーダンスの達成を困難にする物理的制約が存在する。例えば、可撓ケーブルおよびジンバルは、ともに好ましくない値の固定インピーダンスを有するかもしれず、ILSは、固定長を有するかもしれず、これらにより、ILSの特性インピーダンスを最適化することが困難になる。その上、ILSに沿うパッドおよびバイアにおける容量性負荷により、書き込みドライバ回路から書き込みヘッドに伝送される広帯域信号に無視できない集中外乱が加えられ得る。
【0006】
最適な特性インピーダンスを有するILSを有するHDD、および様々な物理的制約下で広帯域信号の品位のために最適な特性インピーダンスを有するようにILSを設計するための方法が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、磁気記録ディスクドライブにおける一体型リードサスペンション(ILS)であって、可撓ケーブルとジンバルとの間のILSの伝送線部が固定長を有し、各々が自らの特性インピーダンスを有する多数の相互接続されたセグメントで構成されている、ILSに関する。いずれの2つのセグメント間のインターフェイスにおいても、導電性トレースの幅が変化している。固定長セグメントのインピーダンスにおける変化は、そのトレース幅における変化の関数である。セグメントの数およびそれらの特性インピーダンス値は、書き込みドライバから書き込みヘッドまでの実質的に平坦な群遅延を有する最大の帯域幅を発生させるように選択される。
【0008】
本発明の性質および利点をより深く理解するため、下記の詳細な説明を添付の図面とともに参照すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】ハードディスクドライブのヘッド/ディスクアセンブリ(HDA)の上面図であり、従来技術による電気トレース相互接続アレイを有する一体型リードサスペンション(ILS)を示す。
図2A】従来技術による可撓ケーブルパッド部とジンバル部との間の伝送線を示すILSの平面図である。
図2B図2AにおけるILSの断面2B−2Bを通る拡大断面図であり、その積層構成を示す。
図2C図2AにおけるILSの断面2C−2Cを通る拡大断面図であり、ILSにおける窓または間隙を示す。
図3】差分信号モードを表す概略図であり、従来技術による書き込みドライバ回路と書き込みヘッドとの間の相互接続へのインピーダンス寄与を示し、特性インピーダンスZを有するILSの伝送線の固定長伸長部を示す。
図4】差分信号モードを表す概略図であり、本発明による書き込みドライバ回路と書き込みヘッドとの間の相互接続へのインピーダンス寄与を示し、各々がその特性インピーダンスを有する多数の伝送線セグメントを有するILSの固定長伝送線を示す。
図5】本発明による窓付き金属バックプレーン上の2つの伝送線セグメント間のインターフェイスを示す。
図6】本発明による多セグメント伝送線に最適化された総特性インピーダンスを提供するため、ILSの伝送線の固定長伸長部における伝送線セグメントの数およびそれらの特性インピーダンスを選択するための方法を示すフローチャートである。
図7】本発明による多セグメント伝送線を有する相互接続についての群遅延グラフの例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は、ハードディスクドライブ10のヘッド/ディスクアセンブリ(HDA)の上面図である。ハードディスクドライブ10は、読み書きヘッド29に接続された導電性相互接続トレースまたは線のアレイ32を有する一体型リードサスペンション(ILS)または屈曲部30を有する少なくとも1つの負荷ビームアセンブリ20を有する。負荷ビームアセンブリ20は、Eブロック24に接続された剛性アーム22に取り付けられている。ディスクドライブ10は、ディスクのスタック(上部ディスク16を含む)を支持するスピンドル14を支持する剛性ベース12を含む。スピンドル14は、湾曲した矢印17により示す方向にディスクを回転させるためのスピンドルモータ(不図示)により回転させられる。また、ディスクドライブ10は、ピボット点41においてベース12に回転可能に装着された回転アクチュエータアセンブリ40を含む。アクチュエータアセンブリ40は、ベース12に固定された磁石アセンブリ42とボイスコイル43とを含むボイスコイルモータ(VCM)アクチュエータである。制御回路(不図示)により通電されると、ボイスコイル43は移動し、それにより、Eブロック24を取り付けられたアーム22および負荷ビームアセンブリ20とともに回転させて、ヘッド29をディスク上のデータトラックに対して位置決めする。トレース相互接続アレイ32は、一端において読み書きヘッド29に接続されるとともに、その他端において、Eブロック24の側面に固定された電気モジュールまたはチップ50に収容された読み書き回路に接続されている。チップ50は、読み取りプリアンプ/書き込みドライバ回路を含む。
【0011】
図2Aは、ジンバル部51と可撓ケーブルパッド部52との間の伝送線セグメント31を示すILS30の平面図である。ILS30は、導電性基板、絶縁誘電体層、電気トレースまたは線のための導電性層、およびオプションの絶縁誘電体カバー層の3層で構成される積層体である。ジンバル部51は、読み書きヘッド29(図1)を収容するスライダ(不図示)を支持し、スライダ上のパッドに電気的に接続するためのパッド55に至る導電性トレース53を有する。ILS30は、ジンバル部51上のトレース53に接続された電気的接続端部34を有する。可撓ケーブルパッド部52は、チップ50(図1)に電気的に接続された複数の電気的接続パッド(パッド54、56等)を有する。ILS30は、可撓ケーブルパッド部52上のパッド54、56に接続された電気的接続端部36を有する。可撓ケーブルパッド部52とジンバル部51との間でILS30の本体または伝送線セグメント31に沿って、複数の交互配置された導電性トレースまたは線32が互いにほぼ平行に延在している。線32は、チップ50における書き込みドライバを、ジンバル端部51に接続されたスライダ上の書き込みヘッドに接続する。
【0012】
図2Bおよび図2Cは、第1の組の線71、73、75、77と第2の組の線72、74、76、78としてグループ化された線32のトレース相互接続アレイを示す伝送線セグメント31の断面図である。線71〜78は、銅で形成されるのが典型的であり、交互配置された状態の差分書き込み信号(+Wおよび−W)を搬送するものとして図示されている。また、ILS30は、チップ50における読み取りプリアンプを、ジンバル端部51に接続されたスライダ上の読み取りヘッドに接続する導電性トレースまたは線57(図2A)を含む。
【0013】
図2Bは、図2Aにおける伝送線セグメント31の断面2B−2Bを通る拡大断面図であり、その積層構成を示す。伝送線セグメント31は、ほぼ平面の支持部材60、複数の交互配置された導電性トレースまたは線(第1の組における線71、73、75、77および第2の組における線72、74、76、78等)、およびオプションの絶縁誘電体カバー層66を含む。線71〜78は、交互配置された状態の差分書き込み信号(+Wおよび−W)を搬送する。支持部材60は、ステンレス鋼などの金属で形成されるのが典型的な導電性ベースまたは基板62、およびポリイミドなどの誘電体材料で形成されたトレース71〜78と基板62との間の絶縁層64を含む。支持基板62は、厚さ約18ミクロンであるのが典型的で、絶縁誘電体層64は、厚さ約10ミクロンであるのが典型的である。また、オプションの誘電体カバー層66は、ポリイミドで、線71〜78の上部に約15ミクロンの厚さに形成されるのが典型的である。
【0014】
また、図2Aに示すように、伝送線セグメント31は、積層体の基板62において複数の窓または間隙33を含む。この様子を、図2Aの断面2C−2Cの断面図である図2Cに示す。間隙においては、誘電体層64の下方にステンレス鋼が存在しない。間隙により、導電性基板62により引き起こされる信号損失が低減される。交互配置された導電性トレース、導電性基板62、および窓または間隙33により、伝送線セグメント31の相互接続特性インピーダンスZのより幅広い調整が可能になる。
【0015】
図3は、書き込みドライバ回路と書き込みヘッドとの間の相互接続へのインピーダンス寄与を示す概略図である。書き込みドライバ回路は、ソース抵抗Rおよびソース電圧Vを有し、誘導書き込みヘッドは、その抵抗損失および磁気損失を有効な負荷抵抗器Rに集中させた状態で有する。書き込みドライバ回路は、典型的には0.1GHzから3.0GHzまでの、将来のより高データレートのハードディスクドライブシステムにおいてはそれ以上の関連する周波数成分を有する、広帯域信号を供給することが要求される。書き込みドライバ回路は、ILS30の可撓ケーブルパッド部52に接続された可撓ケーブルに接続されている。相互接続のこれらの部分は、ほぼ固定されたZa1〜Za3として表されるインピーダンスを付与し、総インピーダンスを最適化するために変更することはできない。パッド(パッド56(図2A)等)に起因する寄生容量CpadおよびILSのセクション31における交互配置されたトレースへのバイアに起因する寄生容量Cviaは、集中成分として表している。同様に、書き込みヘッドは、ILS30のジンバル部51に接続されている。相互接続のこの部分は、ほぼ固定されたZb1として表されるインピーダンスを付与し、総インピーダンスを最適化するために変更することはできない。セクション31における交互配置されたトレースへのバイアに起因する寄生容量Cviaは、Zb1に寄与する。
【0016】
従って、図3の従来技術の相互接続では、伝送線31のみが、その特性インピーダンスZを広帯域信号の伝送に最適化可能である。しかし、伝送線31は固定長を有する。伝送線31のこの伸長部が長いほど、書き込みドライバから書き込みヘッドへの相互接続の全体的性能に対するこの伸長部の影響が大きくなり得る。平坦な群遅延を有する所望される周波数帯域幅の信号の伝送を確保するため、特性インピーダンスZを最適化すべきである。群遅延とは、信号が伝送線を通過するのに要する時間変化率の尺度である。群遅延は、周波数、伝送線の長さ、および相互接続に沿うインピーダンスの関数である。群遅延は、HDDにおいて用いられる典型的な伝送長についてはピコ秒単位で測定されるのが典型的である。
【0017】
本明細書で用いる実質的に平坦な群遅延とは、広周波数帯域信号のすべての周波数における群遅延が、ベース群遅延値(通常、対象となる最低周波数における群遅延とされる)からいくらかの許容逸脱範囲内であることを意味する。例えば、0.1GHz〜3.0GHzの周波数帯域幅について、実質的に平坦な群遅延とは、すべての周波数についての群遅延が、低周波数(すなわち0.1GHz)についての群遅延の特定のパーセンテージ(例えば1、5、または10パーセント)以内(または用いられる特定の書き込みドライバ信号の要件によっては別の値)である、というものであってもよい。
【0018】
書き込みドライバから書き込みヘッドへの信号品質を向上させるための従来技術の方法は、全信号経路を構成する様々な部分の影響を等化することに焦点を当てていた。これらの方法は、可撓ケーブルおよびジンバル部の特性インピーダンスを調整するステップを含んでいた。しかし、これらの領域における物理的制限のため、製造における大きな変更なく達成可能なインピーダンス値の点で調整は制限されていた。加えて、CpadおよびCviaの静電容量値は、例えばトレースをそれぞれのコンデンサ領域において幅広くすることによりトレースにより多くの金属を加えることにより、意図的に余分な静電容量で増大されていた。
【0019】
本発明では、伝送線31が、各セグメントが自らの特性インピーダンスを有する多セグメント伝送線131に置換されている。書き込み電流オーバーシュートパルスを調整する目的の多セグメント伝送線は、(特許文献1)に記載されている。要求されるオーバーシュートを達成するため、書き込みドライバに接続された第1のセグメントは、書き込みドライバのインピーダンスZWDと整合するインピーダンスZ01を有することが要求され、第1のセグメントから書き込みヘッドに接続されたセグメントまでの各連続セグメントは、連続的に小さくなるインピーダンスを有することが要求される。
【0020】
本発明では、後述するように、多数のセグメントについて最適な特性インピーダンスを見出す方法が従来技術と大きく異なるが、単一の特性インピーダンスを有する伝送線(図3)の伸長部は、多セグメント伝送線(図4)においてすべてのセグメントが同じ特性インピーダンスを有するという特殊な場合であることが認識されよう。
【0021】
図4は、本発明による書き込みドライバ回路と書き込みヘッドとの間の相互接続への個々の伝送線セグメントのインピーダンス寄与を示す概略図である。図4において、ILS130は、特性インピーダンスZ01〜Z07をそれぞれ有する7つのセグメント(131−1〜131−7)を有する伝送線131を有する。
【0022】
しかし、本発明は、特定のセグメント数に限定されない。いずれの2つのセグメント間のインターフェイスにおいても、トレースの幅が変化している。この様子を図5に示し、かかる図は、窓33上でなされたトレース幅d1を有するセグメント131−1とトレース幅d2を有するセグメント131−2との間の典型的なインターフェイスを示す。固定長セグメントのインピーダンスにおける変化は、そのトレース幅における変化の関数である。従って、131−2がd1よりも大きいd2を有する場合、Z02はZ01よりも小さい(Z01およびZ02はそれぞれ131−1および131−2を含む伝送線セグメントの特性インピーダンス)。
【0023】
本発明において、セグメントの数およびそれらの特性インピーダンス値は、書き込みドライバから書き込みヘッドまでの実質的に平坦な群遅延を有する最大の帯域幅を発生させるように選択される。書き込みヘッドモデルにおける抵抗器Rが、書き込みドライバからの信号を送達する必要がある負荷要素である。
【0024】
伝送線セグメントの数およびそれらの特性インピーダンスを系統的に選択して、書き込みドライバから抵抗器Rまでの実質的に平坦な群遅延を有する最大の帯域幅を提供するための方法を、図6のフローチャートに関して説明する。本方法は、インピーダンス、帯域幅、および群遅延の計算を行う市販のソフトウェア(Applied Wave Research社のMicrowave Office(登録商標)等)を使用して行うことが可能である。
【0025】
まず、ブロック300において、V、R、およびRの値、ならびに可撓ケーブルおよび可撓ケーブルパッド部52およびジンバル部51への接続についてのインピーダンスZa1〜Za3の値を設定する。また、Cpadの値、Cviaの値、ならびにCparおよびLについての値を設定する。これらの値は、特定の書き込みドライバ、ヘッド、および可撓ケーブルの設計から既知であるか、または計算される。次いで、ブロック305において、伝送線131の全長に対する単一セグメント(N=1)の伝送線について最適な特性インピーダンスZを計算する。これは、平坦な群遅延を有する最大の周波数帯域幅が得られるZの値である。達成される最大の帯域幅(N=1に対するBW(N))を保存する。
【0026】
次に、ブロック310において、セグメント数を1だけ増加させる(N=N+1)。
【0027】
ブロック315において、[Z01〜Z0N]に対する値の組から、実質的に平坦な群遅延を有する最大の帯域幅を発生させる組を検索する。最適なインピーダンス値[Z01〜Z0N]の組を見出すために用い得る多くの最適化アルゴリズムおよびストラテジ(最急降下法、シンプレックス法、および試行錯誤等を含む)が存在する。例えば、Nが2以上であるNの各値について、1回目の試行では、実質的に同じ長さを有するN個のセグメントを選択し、値[Z01〜Z0N]を計算可能である。後続の試行では、異なる長さのN個のセグメントを選択可能である。実質的に平坦な群遅延を有する最大の帯域幅を発生させる組[Z01〜Z0N]を見出し、保存する。今回のセグメント数で得られる最大の帯域幅も保存する。
【0028】
ブロック320において、BWmax(N)をBWmax(N−1)に対してテストする。BWmax(N)が先に算出されたBWmax(N−1)よりも大きければ(ブロック320の出力におけるYES)、ブロック310に戻り、セグメント数を1だけインクリメントして処理を継続する。BWmax(N)が先に算出されたBWmax(N−1)以下であれば(ブロック320の出力におけるNO)、これは、テスト対象のN−1個のセグメントの場合に最大の周波数帯域幅(BWmax)となる最良の結果が達成されたことを示し、値[Z01〜Z0(N−1)maxを抽出し、N−1個のセグメントについての特性インピーダンス値として用いる(ブロック325)。K=N+1において正常終了(ブロック320の出力におけるNO)となる。
【0029】
しかし、セグメント数に実用的限界値を設定して処理を終了させ、その時点における最良の結果をその設計についての最良の結果として用いることが可能である。セグメント数に対するこの限界値は、伝送線セグメントについて利用可能な全長および最終的な設計において用いられる信号の最大の関連する周波数(伝送線におけるより小さい波長)の関数として設定可能である。これは、波長の小部分(1/10または1/20)よりも小さい長さでは、伝送線セグメントに対する伝送線の影響は無視できるためである。
【0030】
図6の方法は、インピーダンス値の数および最適な組を選択するための1つのアルゴリズムに過ぎない。本方法を変形することが可能である。利用可能な全長と伝送対象信号の最大の関連する周波数とから使用可能な最小伝送線セグメント長を決定可能であるため、試行対象セグメントの最大数を決定可能である。従って、1からこの最大数までのすべてのセグメント数をテストして、最良の解を見出すことが可能である。その上、値[Z01〜Z0N]の組を試行する実際のアルゴリズムは、数値最適化問題を解決するために用いられるいずれのアルゴリズムとすることも可能である。
【0031】
また、アルゴリズムが実質的に同じ特性インピーダンスを有する2つ以上の連続した伝送線のセグメントを見出したときは必ず、これらのセグメントが、その同じ特性インピーダンスを有する伝送線の単一の伸長部であると認識されるように、本方法を変更可能である。かかる認識により、最終的な設計は、不均等な長さのセグメントを有するようになる。また、テスト対象の特性インピーダンス値は、製造可能な値の範囲に制限可能である。
【0032】
図7は、本発明による多セグメント伝送線を有する相互接続についての群遅延グラフの例を示す。伝送線は、35mmの固定長を有していた。図6のフローチャートにおける方法により、セグメント長が等しく、各々5mmの長さを有する7つのセグメント(N=7)が選択された。図6のフローチャートにおける方法の使用により決定されるZ01〜Z07の値は、それぞれ79、38、79、38、80、40、および84Ωであった。伝送線を設計する際、インピーダンスZ01〜Z07の個々の値は、図5に示すように、各個々のセグメントについてトレースの幅を適正に設計することにより得られる。この結果、図7に示すように、平坦な群遅延を有する最大の周波数帯域幅は、概ね0.1GHz〜6.1GHzであった。
【0033】
本発明を好ましい実施形態を参照して特に図示し、説明したが、本発明の要旨を逸脱することなく形態および詳細における様々な変更を行ってもよいことが当業者には理解されよう。そのため、開示された発明は、例示的なものにすぎず、添付の請求項において特定される範囲にのみ限定されるものと考えられるべきである。
【符号の説明】
【0034】
10 ハードディスクドライブ
12 ベース
14 スピンドル
16 ディスク
20 負荷ビームアセンブリ
22 アーム
24 Eブロック
29 読み書きヘッド
30、130 一体型リードサスペンション
31、131 伝送線セグメント
32 トレースインターコネクトアレイ
33 窓
34、36 電気的接続端部
40 アクチュエータアセンブリ
41 ピボット点
42 磁石アセンブリ
43 ボイスコイル
50 チップ
51 ジンバル部
52 可撓ケーブルパッド部
53、57 導電性トレース
54、55、56 パッド
60 支持部材
62 基板
64 誘電体層
66 絶縁誘電体カバー層
71、72、73、74、75、76、77、78 線
131−1、131−2、131−3、131−4、131−5、131−6、131−7 セグメント
pad、Cvia 寄生容量
d1、d2 トレース幅
負荷抵抗器
ソース抵抗
ソース電圧
a1、Za2、Za3、Zb1、Z01、Z02、Z03、Z04、Z05、Z06、Z07 インピーダンス。
図1
図2A
図2B
図2C
図3
図4
図5
図6
図7