特許第6113412号(P6113412)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6113412
(24)【登録日】2017年3月24日
(45)【発行日】2017年4月12日
(54)【発明の名称】光学レンズの製造方法
(51)【国際特許分類】
   G02C 7/00 20060101AFI20170403BHJP
   G02B 1/115 20150101ALI20170403BHJP
【FI】
   G02C7/00
   G02B1/115
【請求項の数】7
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2012-41679(P2012-41679)
(22)【出願日】2012年2月28日
(65)【公開番号】特開2012-194547(P2012-194547A)
(43)【公開日】2012年10月11日
【審査請求日】2015年1月21日
(31)【優先権主張番号】特願2011-41427(P2011-41427)
(32)【優先日】2011年2月28日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000113263
【氏名又は名称】HOYA株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000925
【氏名又は名称】特許業務法人信友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大久保 繁樹
(72)【発明者】
【氏名】山之内 政仁
【審査官】 後藤 亮治
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭59−050423(JP,A)
【文献】 特開2002−258002(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0151182(US,A1)
【文献】 特表2008−524833(JP,A)
【文献】 特開2007−313633(JP,A)
【文献】 国際公開第2006/003939(WO,A1)
【文献】 特開2000−153698(JP,A)
【文献】 特開2004−321928(JP,A)
【文献】 特開2006−178160(JP,A)
【文献】 特開2007−041569(JP,A)
【文献】 特開2006−138887(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 1/10 − 1/18
G02B 3/00 − 3/14
G02C 7/02
B24B 1/00 − 1/04
B24B 9/00 − 19/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レンズ基材に設定されたレンズ領域の外側に、位置合わせ用のマークとして前記レンズ領域の外形形状の基準となる2以上のマークを形成する工程と、
前記レンズ基材の一主面側の上方に、前記マークを基準として形成位置を制御しながら前記レンズ領域の所定位置に開口を有するマスキング層をパターン形成する工程と、
前記マスキング層の上方からの処理により、当該マスキング層の開口底部の露出面に対して選択的な処理を施す工程と、
前記レンズ基材上から前記マスキング層を除去し、当該レンズ基材の一主面側に前記選択的な処理による処理パターンを形成する工程と、
前記位置合わせ用のマークを形成した後でマスキング層をパターン形成する前、または前記処理パターンを形成した後に、前記レンズ基材の一主面側の上方に反射防止膜を形成する工程とを行う、
光学レンズの製造方法。
【請求項2】
前記選択的な処理を施す工程では、透明材料膜の成膜処理を行い、
前記マスキング層を除去する工程では、当該マスキング層上に成膜された前記透明材料膜を当該マスキング層と共に除去することにより、当該マスキング層の開口底部の露出面上のみに当該透明材料膜からなる透明パターンを前記処理パターンとして形成する
請求項1記載の光学レンズの製造方法。
【請求項3】
前記処理パターンは、当該処理パターンを挟んで配置される各層の屈折率よりも高い屈折率を有する
請求項1または2に記載の光学レンズの製造方法。
【請求項4】
前記マスキング層を形成する前に、前記レンズ基材の一主面上にハードコート膜を形成する工程を行う
請求項1〜3の何れかに記載の光学レンズの製造方法。
【請求項5】
前記マスキング層を形成する工程の前に、当該マスキング層の下地表面に対して当該マスキング層を構成するインクに対する濡れ性を確保するための改質処理を行う
請求項1〜4の何れかに記載の光学レンズの製造方法。
【請求項6】
前記処理パターンが形成された前記レンズ基材から前記レンズ領域を切り出す工程を行う
請求項1〜5の何れかに記載の光学レンズの製造方法。
【請求項7】
前記マスキング層をパターン形成する工程では、インクジェット法によるパターン形成を行う
請求項1〜6の何れかに記載の光学レンズの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学レンズの製造方法に関し、特にはレンズ面にパターンを設ける工程を有する光学レンズの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
眼鏡用のレンズは、レンズ基材の表面を覆う様々な膜を備えている。例えば、レンズ基材に対して傷が入ることを防止するためのハードコート膜、レンズ面での光反射を防止するための反射防止膜、さらにはレンズの水ヤケを防止するための撥水膜などである。この他にも、眼に入射する光量を抑えるための膜として、レンズの全面に半透過性薄膜をドット状にコーティングし、この上部を反射防止膜で覆う構成が提案されている(例えば下記特許文献1参照)。
【0003】
また近年では、ファッション性の高い眼鏡用のレンズとして、軽量で染色性に優れたプラスチックレンズが好ましく用いられており、さらに意匠性を高める目的で、インクジェット法を適用した着色塗料の塗布によりレンズに模様を施す構成も提案されている(例えば下記特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−55253号公報
【特許文献2】国際公開WO00/67051(特に第7頁)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、例えば意匠性を高める目的でレンズに模様を施す場合において、上述のように、単にレンズに対してインクジェット法によって着色塗料を塗布する方法では、模様を施す位置を制御することは可能なものの、模様を構成する材料がインクジェット法に適用可能な材料に限定されてしまう。このため、インクジェット法による模様(パターン)の形成は、無機材料のようなインクの形成に不向きな材料を用いることができず、汎用性に欠ける方法であった。
【0006】
そこで本発明は、レンズ基材上の所定位置に、材料を限定することなく精度良好にレンズ面に処理パターンを形成することが可能な光学レンズの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような目的を達成するための本発明の光学レンズの製造方法は、次の工程を行うことを特徴としている。先ず、レンズ基材に設定されたレンズ領域の外側に、位置合わせ用のマークを形成する工程を行う。次いで、レンズ基材の一主面側の上方に、先に形成したマークを基準として印刷位置を制御しながらレンズ領域の所定位置に開口を有するマスキング層をパターン形成する工程を行う。その後、マスキング層の上方からの処理により、当該マスキング層の開口底部の露出面に対して選択的な処理を施す工程を行う。しかる後、レンズ基材上からマスキング層を除去し、当該レンズ基材の一主面側に、上述した選択的な処理による処理パターンを形成する工程を行う。
【0008】
このような製造方法によれば、パターン形成されたマスキング層の上方からの処理によって、マスキング層の開口底部の露出面に処理パターンを形成している。このため、マスキング層のパターン形成を、例えばインクジェット法のような位置および形状精度の良好な方法によって行うことにより、処理パターンを形成するための処理が、位置および形状精度が良好な方法に限定されることはなく、選択範囲の広い処理方法を適用しつつも、精度の高い処理パターンを得ることができる。
【0009】
以上の製造方法において、上述した選択的な処理を施す工程では、透明材料膜の成膜処理を行う。この場合、マスキング層を除去する工程では、当該マスキング層上に成膜された透明材料膜を当該マスキング層と共に除去する。これにより、マスキング層の開口底部の露出面上のみに、上述した処理パターンとして透明材料膜からなる透明パターンを形成する。このような処理を行うことにより、レンズ基材上に精度良好に透明パターンを形成することができる。
【0010】
また以上の製造方法において、上述した選択的な処理を施す工程の別の例として、マスキング層の開口底部に対する染色処理を行っても良い。この場合、処理パターンとして染色パターンを形成する。このような処理を行うことにより、レンズ基材の少なくとも表面層に精度良好に染色パターンを形成することができる。
【0011】
また以上の製造方法において、インクジェット法によってマスキング層を形成する工程の前に、マスキング層の下地表面に対してマスキング層を構成するインクに対する濡れ性を確保するための改質処理を行うことが好ましい。これにより、次に行うインクジェット法において、均質な連続膜としてマスキング層を形成することができ、このマスキング層の上部から処理を施した場合において、マスキング層の開口内のみに精度良好に処理パターンを形成することが可能になる。
【発明の効果】
【0012】
以上説明したように本発明の光学レンズ製造方法によれば、レンズ基材上の所定位置に、選択範囲の広い処理方法を適用して材料を限定することなく精度良好に処理パターンを形成することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】第1実施形態の方法によって得られる光学レンズの構成を示す平面図および断面図である。
図2】第1実施形態の光学レンズの製造手順を示すフローチャートである。
図3】第1実施形態の光学レンズの製造手順を示す製造工程図(その1)である。
図4】第1実施形態の光学レンズの製造手順を示す製造工程図(その2)である。
図5】第1実施形態の光学レンズの製造手順を示す製造工程図(その3)である。
図6】第2実施形態の方法によって得られる光学レンズの構成を示す平面図および断面図である。
図7】第3実施形態の方法によって得られる光学レンズの構成を示す平面図および断面図である。
図8】第3実施形態の光学レンズの製造手順を示すフローチャートである。
図9】第3実施形態の光学レンズの製造手順を示す製造工程図(その1)である。
図10】第3実施形態の光学レンズの製造手順を示す製造工程図(その2)である。
図11】第4実施形態の方法によって得られる光学レンズの構成を示す平面図および断面図である。
図12】第4実施形態の光学レンズの製造手順を示すフローチャートである。
図13】第4実施形態の光学レンズの製造手順を示す製造工程図(その1)である。
図14】第4実施形態の光学レンズの製造手順を示す製造工程図(その2)である。
図15】第5実施形態の方法によって得られる光学レンズの構成を示す平面図および断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を、図面に基づいて次に示す順に説明する。
1.第1実施形態(反射防止膜とレンズ基材との間に島状の透明パターンを設ける例)
2.第2実施形態(反射防止膜とレンズ基材との間に開口部を有する透明パターンを設ける例)
3.第3実施形態(反射防止膜の上部に島状の透明パターンを設ける例)
4.第4実施形態(レンズ基材の表面層に島状の染色パターンを設ける例)
5.第5実施形態(レンズ基材の表面層に開口部を有する染色パターンを設ける例)
尚、各実施形態において共通の構成要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0015】
≪1.第1実施形態≫
<第1実施形態の光学レンズの構成>
図1は、第1実施形態の光学レンズの構成を説明するための平面図(図1A)と、当該平面図におけるa−a’断面図(図1B)である。これらの図に示す第1実施形態の光学レンズ1aは、例えば眼鏡用の光学レンズに好適に用いられるものであって、次のように構成されている。
【0016】
すなわち光学レンズ1aは、レンズ基材11の一主面上に、ハードコート膜13、反射防止膜15、および撥水膜17をこの順に積層させている。また特に本第1実施形態の光学レンズ1aは、レンズ基材11上におけるハードコート膜13と反射防止膜15との間に、処理パターンとして島状の透明パターン19aを備えているところが特徴的である。以下、光学レンズ1aを構成する各部材の詳細な構成を、レンズ基材11側から順に説明する。
【0017】
[レンズ基材11]
レンズ基材11は、光学レンズ用に用いられる一般的なプラスチック材料からなり、所定のレンズ形状に成形されている。プラスチック材料は、例えば屈折率(nD)1.50〜1.74程度のものが用いられる。このようなプラスチック材料としては、例えばアリルジグリコールカーボネート、ウレタン系樹脂、ポリカーボネート、チオウレタン系樹脂及びエピスルフィド樹脂が例示される。このようなレンズ基材11において、この光学レンズ1aを用いて構成される眼鏡の外側となる面を一主面とし、この一主面上に上述したハードコート膜13〜撥水膜17、および透明パターン19aの各層が積層されている。
【0018】
[ハードコート膜13]
ハードコート膜13は、反射防止膜15の下地として用いられる膜であり、例えば有機珪素化合物を含む材料を用いて構成されている。このハードコート膜13は、上述したプラスチック材料の屈折率に近い屈折率である。具体的には、ハードコート膜13の屈折率(nD)は1.49〜1.70程度であり、レンズ基材11の素材に応じて膜構成が選択される。
【0019】
[反射防止膜15]
反射防止膜15は、屈折率の異なる材料膜を積層させた多層構造を有し、干渉作用によって光の反射を防止する膜である。このような反射防止膜15は、一例として低屈折率膜15aと高屈折率膜15bとを交互に積層してなる多層構造が挙げられる。低屈折率膜15aは、例えば屈折率1.43〜1.47程度の二酸化珪素(SiO2)からなる。また高屈折率膜15bは、低屈折率膜15aよりも高い屈折率を有する材料からなり、例えば酸化ニオブ(Nb2O5)、酸化タンタル(Ta2O5)、酸化チタン(TiO2)、酸化ジルコニウム(ZrO2)、酸化イットリウム(Y2O3)、さらには酸化アルミニウム(Al2O3)等の金属酸化物を、適宜の割合で用いて構成される。
【0020】
以上のような低屈折率膜15aと高屈折率膜15bとからなる反射防止膜15は、積層数が限定されることはない。一例として、レンズ基材11側から順に、低屈折率膜15a-1,高屈折率膜15b-2,…低屈折率膜15a-7の順に、7層を積層させた反射防止膜15が挙げられる。また、これらの各低屈折率膜15aおよび各高屈折率膜15bは、所定の位相差となるように各屈折率に応じた各膜厚を有している。
【0021】
一例として、レンズ基材11側から順に、低屈折率膜15a-1/高屈折率膜15b-2/低屈折率膜15a-3の3層を合わせた位相差が[λ/4]となり、高屈折率膜15b-4/低屈折率膜15a-5/高屈折率膜15b-6の3層を合わせた位相差が[λ/2]となり、低屈折率膜15a-7の1層の位相差が[λ/4]となるように、各低屈折率膜15aおよび各
高屈折率膜15bの膜厚が各屈折率に応じて設定されている膜構成が挙げられる。
【0022】
[撥水膜17]
撥水膜17は、例えばフッ素置換アルキル基含有有機ケイ素化合物からなる。この撥水膜17は、反射防止膜15と合わせて反射防止機能を奏するように設定された膜厚を有している。
【0023】
[透明パターン19a]
透明パターン19aは、例えば装飾用の模様、ロゴマーク、または文字等として設けられたものであって、光透過性を有する材料で構成された島状パターンとして構成されている。本第1実施形態で用いられる透明パターン19aは、例えば可視光に対して光透過性を有していれば良いが、特には透明パターン19aを挟んで配置される各層の屈折率よりも高い屈折率を有することが好ましい。またこの透明パターン19aの膜厚は、透明パターン19aを構成する材料の屈折率と、撥水膜17側から見た場合の透明パターン19aに対して求められる視認性とによって、適宜に調整される。尚、透明パターン19aは、異なる材料層を積層させたものであっても良い。
【0024】
このような透明パターン19aには、透明パターン19aを挟んで配置されたハードコート膜13および低屈折率膜15a-1よりも高い屈折率の材料を用いられている。このような材料には、反射防止膜15に用いられる高屈折率膜15bを構成する材料と同様の材料が好適に用いられる。これらの材料を用いて透明パターン19aを構成する場合、膜厚10nm程度で透明パターン19aを形成する。これにより、撥水膜17側から見た場合の透明パターン19aに高い視認性を得ることができる。尚、透明パターン19aに対して、あえて低い視認性を持たせる場合であっても、透明パターン19aの屈折率と膜厚とを調整すれば良い。
【0025】
以上のような構成の光学レンズ1aは、この光学レンズ1aを用いて構成された眼鏡の内側、すなわち装着者側に向かって配置される面上にも、レンズ基材11側から順にハードコート膜、反射防止膜、および撥水膜がこの順に設けられても良い。
【0026】
<第1実施形態の光学レンズの製造方法>
図2は、上述した構成を有する第1実施形態の光学レンズの製造手順を示すフローチャートである。図3図5は、上述した構成を有する第1実施形態の光学レンズの製造手順を示す製造工程図である。以下にこれらの図に基づいて、第1実施形態の光学レンズを眼鏡用に適用する場合の製造手順を説明する。
【0027】
先ず、図3A図3Cに示すように、レンズ基材におけるレンズ領域の外側に位置合わせ用の基準マークm1〜m4を形成する(S1)。この工程は、以下のように行う。
【0028】
図3A
先ず、図3Aに示すように、レンズ基材11を用意する。レンズ基材の一例として、眼鏡用単焦点レンズを挙げて説明する。
【0029】
このレンズ基材11に対して、幾何学中心G.C、および光学中心O.Cを計測によって確定する。そして、光学中心O.Cを含む光学座標を示す仮の点マークM1〜M3を、レンズ基材11の一主面側にマーク付けする。この点マークM1〜M3は、例えば赤色のインクを用いてマーク付けされる。一例として、光学中心O.Cを中央の点マークM2として、この左右に等間隔で点マークM1,M3を配置する。
【0030】
図3B
次に、図3Bに示すように、オーダーに応じて作成された光学レンズに関する三次元の外形形状Fのデータと、レンズ基材11において点マークM1〜M3で示される光学座標とから、レンズ基材11において外形形状Fの中心(フレーム中心)F.Cとなる位置を検出する。
【0031】
図3C
その後、図3Cに示すように、光学中心O.Cとフレーム中心F.Cとの関係から、レンズ基材11に対して、レンズ領域の外形形状Fを確定する。そして、光学座標を示す点マークM1〜M3に基づいて、レンズ基材11上に外形形状Fの基準となる基準マークm1〜m4を形成する。これらの基準マークm1〜m4は、上下左右を識別可能である。また、眼鏡の右側レンズであるか左側レンズであるかを識別可能なデザインであると好ましい。例えば、左右を示す基準マークm2、m4を、眼鏡の中央に向く矢印として形成する。
【0032】
また、このような基準マークm1〜m4は、外形形状Fで囲まれたレンズ領域の外側にマーキングする。これにより、外形形状Fに合わせてレンズ基材11をシェイプカットした後には、レンズ上に基準マークm1〜m4が残らない構成とする。尚、ここでは、基準マークm1〜m4は、光学中心O.Cを基準としてレイアウトした場合を図示した。しかしながら、基準マークm1〜m4は、フレーム中心F.Cを基準としてレイアウトしても良い。
【0033】
以上のような基準マークm1〜m4は、例えばレーザマーカによって、レンズ基材11の一主面に対して直接形成される。この際、レンズ基材11が熱の影響で破壊されない程度のパワー設定で、レンズ基材11に対してレーザ照射を行う。尚、基準マークm1〜m4の形成は、レーザマーカに限定されることはなく、例えばインクジェット法を適用しても良い。この際、マーカに用いるインクは、後に説明するマスキング層を除去する工程において、マスキング層と同時に除去されることのない材質を選択して用いることが重要である。さらに基準マークm1〜m4の形成は、例えばケガキマークを手書きで形成しても良い。
【0034】
以上においては、レンズ基材11が単焦点レンズである場合においての基準マークm1〜m4の形成を説明した。しかしながら、レンズ基材11は、単焦点レンズである場合に限定されることはなく、多焦点レンズ、累進レンズ、さらには他のレンズであっても良い。多焦点レンズを用いる場合であれば、セグメント(小玉)と呼ばれる部分の頂点を基準にフレーム中心F.Cを検出して外形形状Fを確定し、基準マークm1〜m4を形成すれば良い。また累進レンズを用いる場合であれば、隠しマーク(レイアウト基準マーク)を基準にフレーム中心F.Cを検出して外形形状Fを確定し、基準マークm1〜m4を形成すれば良い。また累進レンズを用いる場合、プリズムリファレンスポイントを中央の点マークM2とし、その左右に等間隔で点マークM1,M3を配置し、これらの点マークM1〜M3に基づいて基準マークm1〜m4をレイアウトすれば良い。
【0035】
基準マークm1〜m4の形成後には、点マークM1〜M3をふき取り除去する。
【0036】
図4A図4B
以上のようにして基準マークm1〜m4を形成した後、図4Aの平面図、および図4Bの断面図(図4Aのa−a’断面に相当)に示すように、レンズ基材11上にハードコート膜13を成膜する(S2)。ハードコート膜13の成膜は、例えば有機珪素化合物を溶解させた溶液を用いた浸漬法によって成膜する。
【0037】
次いで、ハードコート膜13表面の改質処理を行う(S3)。この改質処理としては、次に行うマスキング層の形成において用いるインクに対して、ハードコート膜13表面の濡れ性を確保するための処理を行う。ここでは、ハードコート膜13の表面にダメージを与えることのない処理方法として、例えば酸素プラズマを用いたプラズマ処理を行う。尚、濡れ性を確保するための改質処理としては、ハードコート膜13に対してダメージを与えることのない方法であれば、プラズマ処理に限定されることはなく、例えばイオン照射処理、コロナ放電処理、アルカリ処理等を行っても良い。
【0038】
次に、例えばインクジェット法を適用して、レンズ基材11の一主面側の上方、すなわちここでは改質処理を施したハードコート膜13を下地として、この下地表面上にマスキング層21をパターン形成する(S4)。ここで形成するマスキング層21は、レンズ基材11の一主面側に確定した光学レンズの外形形状Fを全体的に覆うと共に、光学レンズに形成する透明パターンに対応する開口パターン21aを備えている。尚、マスキング層21は、外形形状Fよりも数mm以上大きい形状で形成することが好ましく、これによって外形形状Fに合わせてレンズ基材11をシェイプカットする際の誤差を吸収する。
【0039】
この際、レンズ基材11のカーブに影響されることなく、先に作成した基準マークm1〜m4に基づいて予め設定されたレンズ基材11上の所定位置に開口パターン21aを設けてマスキング層21を印刷形成することが重要である。このためここでは、インクジェット法を適用したマスキング層21の形成を行う。ここで適用されるインクジェット法は、型式や方式が限定されることはなく、連続型であってもオンデマンド型であっても良く、オンデマンド型であればピエゾ方式であってもサーマル方式であっても良い。
【0040】
ここでのインクジェット法によるマスキング層21の形成は、例えば紫外線硬化型インキ(UVキュアインキ)を用いる。中でも、硬化後であっても、ハードコート膜13に対して選択的に除去可能なインクが用いられる。このようなインクとしては、例えば硬化後にエタノールやアセトンに溶解して除去することが可能である高付着性・高接着性の非吸収性素材用のいわゆる硬質UVインクや軟質UVインクが挙げられる。
【0041】
このようなインクを用いたインクジェット法においては、印刷条件を調整することにより、塗布ムラのない連続膜としてマスキング層21を形成することが重要である。このような印刷条件としては、印刷ヘッドに対するレンズ基材の移動速度、移動方向の解像度、移動方向に垂直な幅方向の解像度、インク液滴のサイズ、インク液滴のドロップ周波数、同一着弾点に滴下するインク液滴数などである。これらの印刷条件は、相互に関連性を有しているため、適宜調整することによって、印刷ムラを防止したマスキング層21の成膜を行う。
【0042】
以上のようなインクジェット法によるマスキング層21の成膜後には、マスキング層21に対して紫外線(UV)照射を行うことにより、マスキング層21を構成するインクを硬化させる。
【0043】
図5A
次に図5Aに示すように、マスキング層21の上方から透明材料膜19の成膜を行う(S5)。これにより、ハードコート膜13に対しては、マスキング層21の開口パターン21aの底部の露出面に対して選択的に成膜処理を施す。ここでは、蒸着法によって、例えば酸化タンタル(Ta2O5)からなる屈折率2.05〜2.15の透明材料膜19を、予め設定された膜厚(例えば10nm)で成膜する。この成膜においては、イオンアシスト蒸着を行うことにより、膜質および密着性良好に透明材料膜19を成膜することが好ましい。
【0044】
図5B
次いで図5Bに示すように、ハードコート膜13上からマスキング層21を除去する処理を行い、マスキング層21と共にこの上部の透明材料膜19を選択的に除去する(S6)。ここでは、例えばマスキング層21を溶解する溶剤(エタノールやアセトン)を用いたウェット処理により、マスキング層21の除去を行う。これにより、マスキング層21の開口パターン21a内に成膜された透明材料膜19部分のみを、ハードコート膜13を介してレンズ基材11上に残し、残された透明材料膜19部分を透明パターン19aとしてレンズ基材11上に形成する。このようにして形成された透明パターン19aは、マスキング層21に形成した開口パターン21aと同一の位置に形成された同一形状のものとなる。
【0045】
図5C
次に図5Cに示すように、透明パターン19aが形成されたハードコート膜13上に、低屈折率膜15aと高屈折率膜15bとを交互に積層成膜した多層構造の反射防止膜15を成膜し、さらに反射防止膜15上に撥水膜17を成膜する(S7)。反射防止膜15の成膜は、イオンアシスト蒸着を適用して行うことにより、下層側の低屈折率膜15a-1から順に、低屈折率膜15a-7までの各層を、各組成および各膜厚で成膜する。
【0046】
図1A図1B
以上の後には、先の図1Aおよび図1Bに示したように、撥水膜17までが成膜されたレンズ基材11を、レンズ基材11に対して確定された外形形状Fにシェイプカットする(S8)。この際、図4Aを参照し、レンズ基材11における外形形状Fの外側に形成した基準マークm1〜m4に基づいて位置合わせされた所定位置に加工用治具を吸着させ、レンズ基材11を加工用治具に固定する。この状態で、シェイプカット加工機を用い、基準マークm1〜m4に基づいて位置合わせされた外形形状Fに、レンズ基材11をシェイプカットし、その後加工用治具を取り外して光学レンズ1aを完成させる。その後は、外観検査を経て光学レンズ1aを出荷する。
【0047】
<第1実施形態の効果>
以上説明した第1実施形態の光学レンズ製造方法では、図5Aを用いて説明したように、マスキング層21の上部からの成膜処理によって、マスキング層21の開口内に処理パターンとしての透明パターン19aを形成している。このため、透明パターン19aを蒸着成膜に適する材料で構成することができる。しかも透明パターン19a(処理パターン)は、マスキング層21に形成された開口パターン21aの底部に露出するレンズ基材11上に形成される。このため、インクジェット法によるマスキング層21の形成精度に倣って、位置精度および形状精度の高い透明パターン19a(処理パターン)を得ることができる。この結果、レンズ基材11上の所定位置に、例えばインクジェット法のような高精度なパターン形成法には適さないが、蒸着成膜のような成膜には適する材料からなる透明パターン19aを、精度良好な処理パターンとして形成することが可能になる。
【0048】
またこのようにして得られた第1実施形態の構成を有する光学レンズ1aは、多層構造の反射防止膜15に対して透明パターン19aを積層させたことにより、透明パターン19aの配置部分とそれ以外の部分とで、反射防止膜15側から光学レンズ1aに入射した光の光反射特性が異なるものとなる。これにより、撥水膜17を介して反射防止膜15側からレンズ1aを見た場合には、反射防止膜15における反射防止機能が維持され、かつ上述した光反射特性の違いとして透明パターン19aを容易に視認することができる。一方、この光学レンズ1aを眼鏡用とし、眼鏡の装着者側となる反射防止膜15および撥水膜17とは反対側の至近距離から光学レンズ1aを見た場合、透明パターン19aが容易に視認されることはない。
【0049】
この結果、この光学レンズ1aを用いることにより、装着者の視界を違和感なく確保することが可能でありながらも、外側から視認可能な透明パターン19aを、例えば装飾用の模様、ロゴマーク、または文字等として備えることでデザイン性に優れた眼鏡を構成することが可能になる。
【0050】
また本第1実施形態では、透明パターン19aを、レンズ基材11と反射防止膜15との間、より詳しくはハードコート膜13と反射防止膜15を構成する低屈折率膜15a-1との間に配置した。これにより、反射防止膜15においての層構造の連続性を損なうことなく、レンズ基材11の一主面側の表面を、反射防止膜15で一様に覆った通常のレンズ構成とすることができる。したがって、反射防止膜15の表面を、耐摩擦性に優れた二酸化珪素(SiO2)のような低屈折率膜15a-7で一様に覆うことができ、損傷を受けにくいレンズ構成とすることができる。また、多層構造の反射防止膜15を成膜する際のプロセスの連続性が阻害されることもない。
【0051】
さらにこのような構成において、透明パターン19aが、これを挟んで配置されるハードコート膜13および低屈折率膜15a-1各層の屈折率よりも高い屈折率を有する場合であれば、透明パターン19aが薄膜の単層構造であっても、反射防止膜15側から光学レンズ1aを見た場合の透明パターン19aの視認性の向上を図ることができる。例えば10nmの膜厚の酸化タンタル(Ta2O5)単層で構成された透明パターン19aを配置した場合、反射防止膜15側から見た片面視感反射率は、透明パターン19aの配置部で1.624%、透明パターン19aの未配置部で0.545%であり、十分に高い透明パターン19aの視認性が得られていることが確認された。
【0052】
≪2.第2実施形態≫
<第2実施形態の光学レンズの構成>
図6は、第2実施形態の光学レンズの構成を説明するための平面図(図6A)と、当該平面図におけるa−a’断面図(図6B)である。これらの図に示す第2実施形態の光学レンズ1bが、第1実施形態の光学レンズ(1a)と異なるところは、例えば装飾用の模様、ロゴマーク、または文字等を構成する処理パターンとして設けられた透明パターン19bが、開口部hを有する抜きパターンとして構成されているところにあり、他の構成は第1実施形態と同様である。
【0053】
このような開口部hを有する透明パターン19bは、平面形状以外は第1実施形態で説明した島状の透明パターン(19a)と同様の構成であって良い。すなわち、透明パターン19bは、例えば可視光に対して光透過性を有していれば良いが、特には透明パターン19bを挟んで配置される各層の屈折率よりも高い屈折率を有することが好ましい。またこの透明パターン19bは、透明パターン19bを構成する材料の屈折率と、撥水膜17側から見た場合の透明パターン19bに対して求められる視認性とによって、適宜に調整された膜厚を有し、さらに異なる材料層を積層させたものであっても良い。
【0054】
<第2実施形態の光学レンズの製造方法>
以上のような構成の第2実施形態の光学レンズ1bの製造方法は、第1実施形態と同様である。ただし、図4を用いて説明したマスキング層21の形成においては、パターンを反転させたマスキング層を、例えばインクジェット法のような精度の高い形成方法の適用によって形成すれば良い。
【0055】
<第2実施形態の効果>
このような第2実施形態であっても、第1実施形態と同様の方法が適用されるため、第1実施形態の製造方法と同様に、レンズ基材11上の所定位置に、例えばインクジェット法のような高精度なパターン形成方法には適さないが、蒸着成膜のような成膜には適する材料からなる透明パターン19bを、精度良好な処理パターンとして形成することが可能になる。
【0056】
また第2実施形態の光学レンズ1bであっても、第1実施形態の光学レンズの構成と同様の構成で、ハードコート膜13と反射防止膜15の低屈折率膜15a-1との間に、透明パターン19bを積層させている。これにより、第1実施形態と同様に、この光学レンズ1bを用いることにより、装着者の視界を違和感なく確保することが可能でありながらも、外側から視認可能な透明パターン19bを例えば装飾用の模様、ロゴマーク、または文字等として備えることでデザイン性に優れた眼鏡を構成することが可能になると共に、透明パターン19bを設けたことによって多層構造の反射防止膜15を成膜する際のプロセスの連続性が阻害されることもない。さらに透明パターン19bが、これを挟んで配置されているハードコート膜13と反射防止膜15の低屈折率膜15a-1よりも高い屈折率を有する場合であれば、第1実施形態で説明したと同様に、透明パターン19bが薄膜の単層構造であっても、反射防止膜15側から光学レンズ1bを見た場合の透明パターン19bの視認性の向上を図ることができる。
【0057】
≪3.第3実施形態≫
<第3実施形態の光学レンズの構成>
図7は、第3実施形態の光学レンズの構成を説明するための平面図(図7A)と、当該平面図におけるa−a’断面図(図7B)である。これらの図に示す第3実施形態の光学レンズ1cが、他の実施形態の光学レンズ(1a,1b)と異なるところは、例えば装飾用の模様、ロゴマーク、または文字等を構成する島状の透明パターン29c(処理パターン)が、反射防止膜15の上部に積層して設けられているところにあり、他の構成は第1実施形態と同様である。
【0058】
このような透明パターン29cは、第1実施形態および第2実施形態の光学レンズに配置した透明パターンと比較して、より光学レンズ1cの表面近くに配置されることになる。このため、透明パターン29cは、耐摩擦性に優れた二酸化珪素(SiO2)のような低屈折率材料を用いて構成することが好ましい。またこの透明パターン29cは、透明パターン29cを構成する材料の屈折率と、撥水膜17側から見た場合の透明パターン29cに対して求められる視認性とによって、適宜に調整された膜厚を有すること、さらに異なる材料層を積層させたものであっても良いことは、他の実施形態と同様である。尚、透明パターン29cを積層構造とする場合、透明パターン29cを構成する最上層部分が、耐摩擦性に優れた二酸化珪素(SiO2)のような低屈折率材料を用いて構成することが好ましい。
【0059】
<第3実施形態の光学レンズの製造方法>
図8は、上述した構成を有する第3実施形態の光学レンズの製造手順を示すフローチャートである。図9および図10は、上述した構成を有する第3実施形態の光学レンズの製造手順を示す製造工程図である。以下にこれらの図面に基づいて、第3実施形態の光学レンズを眼鏡用に適用する場合の製造手順の特徴部を説明する。
【0060】
図9A
先ず予め、第1実施形態において図3A図3Cを用いて説明した手順と同様にして、レンズ基材11の一主面側に、ここでの図示を省略した基準マーク(m1〜m4)を形成しておく(S11)。その後、先ずこのレンズ基材11の一主面上にハードコート膜13を成膜し(S12)、次いでハードコート膜13表面の濡れ性を確保するための改質処理を行い(S13)、その後多層構造の反射防止膜15を成膜する(S14)。
【0061】
以上の成膜および処理は、第1実施形態で説明した手順と同様であり、ハードコート膜13の成膜は、例えば有機珪素化合物を溶解させた溶液を用いた浸漬法によって成膜する。ハードコート膜13表面の改質処理は、例えば酸素プラズマを用いたプラズマ処理を行う。さらに反射防止膜15の成膜は、イオンアシスト蒸着を適用して行うことにより、下層側の低屈折率膜15a-1から順に低屈折率膜15a-7までの各層を、各組成および各膜厚で成膜する。ただし、最上層の低屈折率膜15a-7は、透明パターンを積層することを考慮し、別途膜厚を調整しても良い。
【0062】
図9B
次に図9Bに示すように、反射防止膜15における低屈折率膜15a-7の上部に、第1実施形態と同様に、例えばインクジェット法を適用してマスキング層21をパターン形成する(S15)。ここで形成するマスキング層21は、第1実施形態と同様であり、レンズ基材11の一主面側に確定したレンズの外形形状を全体的に覆うと共に、光学レンズに形成する透明パターンに対応する開口パターン21aを備えている。またこのインクジェット法において用いるインクは、第1実施形態と同様であって、例えば硬化後にエタノールやアセトンに溶解して除去することが可能なUVキュアインクを用いる。
【0063】
尚、マスキング層21の形成前には、反射防止膜15表面の濡れ性を確保するための改質処理を行っても良い。この改質処理は、適宜の方法で行われる。またインクジェット法によるマスキング層21の成膜後には、マスキング層21に対して紫外線(UV)照射を行うことにより、マスキング層21を構成するUVキュアインクを硬化させることも、第1実施形態と同様である。
【0064】
図10A
次いで図10Aに示すように、マスキング層21の上方から透明材料膜29の成膜を行う(S16)。これにより、反射防止膜15に対しては、マスキング層21の開口パターン21aの底部の露出面に対して選択的に成膜処理を施す。ここでは、蒸着法によって、二酸化珪素(SiO2)からなる屈折率1.43〜1.47の透明材料膜29を、予め設定された膜厚(例えば10nm)で成膜する。この成膜においては、必要に応じてイオンアシスト蒸着を行うことにより、膜質および密着性良好に透明材料膜29の成膜を行う。
【0065】
図10B
その後、図10Bに示すように、反射防止膜15上からマスキング層21を除去する処理を行い、マスキング層21と共にこの上部の透明材料膜29を選択的に除去する(S17)。ここでは、例えばマスキング層21を構成するインクを溶解する溶剤(エタノールやアセトン)を用いたウェット処理により、マスキング層21を除去し、マスキング層21と共に上部の透明材料膜29の選択的な除去を行う。これにより、マスキング層21の開口パターン21a内に成膜された透明材料膜29部分のみを、ハードコート膜13および反射防止膜15を介してレンズ基材11上に残し、残された透明材料膜29部分を透明パターン29cとしてレンズ基材11上に形成する。このようにして形成された透明パターン29cは、マスキング層21に形成した開口パターン21aと同一の位置に同一形状で形成されたものとなる。
【0066】
図7A図7B
以上の後には、先の図7に示したように、透明パターン29cを覆う状態で、反射防止膜15上に撥水膜17を成膜する(S18)。次いで、撥水膜17までが成膜されたレンズ基材11を、レンズ基材11に対して確定された外形形状Fにシェイプカットする(S19)。この際、第1実施形態で説明した手順と同様に、レンズ基材11における外形形状Fの外側に形成した基準マークm1〜m4に基づいて位置合わせされた外形形状Fに、レンズ基材11をシェイプカットする。
【0067】
<第3実施形態の効果>
以上説明した第3実施形態の光学レンズ製造方法であっても、図10Aを用いて説明したように、マスキング層21の上部からの成膜処理によって、マスキング層21の開口パターン21aの底部に処理パターンとしての透明パターン29cを形成している。このため、第1実施形態と同様に、レンズ基材11上の所定位置に、例えばインクジェット法のような高精度なパターン形成法には適さないが、蒸着成膜のような成膜には適する材料からなる透明パターン29cを、精度良好な処理パターンとして形成することが可能になる。
【0068】
またこのようにして得られた第3実施形態の光学レンズ1cであっても、他の実施形態の光学レンズの構成と同様に、多層構造の反射防止膜15に対して透明パターン29cを積層させている。これにより、他の実施形態と同様に、この光学レンズ1cを用いることにより、装着者の視界を違和感なく確保することが可能でありながらも、外側から視認可能な透明パターン29cを装飾用の模様、ロゴマーク、または文字等として備えることでデザイン性に優れた眼鏡を構成することが可能になる。
【0069】
尚、本第3実施形態では、反射防止膜15上に島状の透明パターン29cを積層させた構成を説明した。しかしながら、第2実施形態のように反射防止膜15上に積層する透明パターンとして開口部を有する透明パターンを用いても良く、この場合であっても本第3実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0070】
さらに、上述した第1実施形態〜第3実施形態では、反射防止膜15の上部または下部に透明パターンを積層する構成を説明した。しかしながら、透明パターンは、多層構造の反射防止膜15の層間に配置されても良い。この場合、透明パターンは、これを構成する材料の屈折率と、撥水膜17側から見た場合の透明パターンに対して求められる視認性とによって、適宜に調整された膜厚を有すること、さらに異なる材料層を積層させたものであっても良いことは、上述した各実施形態と同様である。
【0071】
≪4.第4実施形態≫
<第4実施形態の光学レンズの構成>
図11は、第4実施形態の光学レンズの構成を説明するための平面図(図11A)と、当該平面図におけるa−a’断面図(図11B)である。これらの図に示す第4実施形態の光学レンズ1dが、先の第1〜第3実施形態の光学レンズ(1a〜1c)と異なるところは、処理パターンとして島状の染色パターン31dが設けられているところにあり、他の構成は第1実施形態と同様である。
【0072】
すなわち処理パターンとして設けられる染色パターン31dは、レンズ基材11の凹面及び凸面のどちらか一方の面を一主面とし、この一主面側の表面層に設けられている。この染色パターン31dは、撥水膜17側から見た場合の染色パターン31dに対して求められる視認性によって、レンズ基材11の表面層における深さdと、染色パターン31dを構成する染料の濃度とが、適宜に調整されていることとする。特に、この光学レンズ1dが、眼鏡用の光学レンズとして用いられる場合、撥水膜17と反対側の至近距離から光学レンズ1dを見た場合に、染色パターン31dが容易に視認されない程度に、染色パターン31dの深さと染料の濃度とが調整されていることが好ましい。
【0073】
このような染色パターン31dを構成する染料は、プラスチック材料からなるレンズ基材11を染色可能なものであれば良く、染色パターン31dを形成する染色方法によって適宜な材料が用いられる。例えば昇華染色法によるレンズ基材11の染色によって染色パターン31dを形成する場合であれば、染料としては昇華性染料が用いられる。また、浸漬法による染色の場合には、浸漬法用の染料が用いられる。
【0074】
以上のような染色パターン31dが設けたれたレンズ基材11における一主面上には、他の実施形態と同様の構成のハードコート膜13、多層構造の反射防止膜15、および撥水膜17がこの順に積層されている。
【0075】
<第4実施形態の光学レンズの製造方法>
図12は、上述した構成を有する第4実施形態の光学レンズの製造手順を示すフローチャートである。図13図14は、上述した構成を有する第4実施形態の光学レンズの製造手順を示す製造工程図である。以下にこれらの図面に基づいて、第4実施形態の光学レンズを眼鏡用に適用する場合の製造手順の特徴部を説明する。
【0076】
図13A図13B
先ず図13Aの平面図、および図13Bの断面図(図13Aのa−a’断面に相当)に示すように、予め、レンズ基材11におけるレンズの外形形状Fを確定し、レンズ基材11の一主面側に外形形状Fの基準となる基準マークm1〜m4を形成する(S21)。この工程は、第1実施形態において図3A図3Cを用いて説明した手順と同様に行う。
【0077】
次に、レンズ基材11の一主面側における表面の改質処理を行う(S22)。この改質処理としては、次に行うマスキング層の形成において用いるインクに対して、レンズ基材11表面の濡れ性を確保するための処理を行う。ここでは、例えばレンズ基材11の表面にダメージを与えることのない処理方法として、例えば酸素プラズマを用いたプラズマ処理を行う。尚、濡れ性を確保するための改質処理としては、この他にもレンズ基材11に対してダメージを与えることのない方法であれば、プラズマ処理に限定されることはなく、例えばイオン照射処理やコロナ放電処理を行っても良い。
【0078】
次に、例えばインクジェット法を適用して、改質処理を施したレンズ基材11を下地として、この下地表面上に、第1実施形態で説明した手順と同様の手順でマスキング層21をパターン形成する(S23)。ここでは、第1実施形態と同様にインクジェット法を適用することにより、レンズ基材11のカーブに影響されることなく、先に作製した基準マークm1〜m4に基づいて予め設定されたレンズ基材11上の所定位置に開口パターン21aが設けられるようにマスキング層21を印刷形成することが重要である。
【0079】
図14A
次に図14Aに示すように、マスキング層21の上方からレンズ基材11の染色処理を行う(S24)。これにより、レンズ基材11に対しては、マスキング層21の開口パターン21aの底部の露出面に対して選択的に染色処理を施す。ここでは、例えば昇華染色を行う。この場合、例えば昇華性染料を水系溶媒に分散させたインクを基板上に塗布してなる印刷シートを用意する。この印刷シートのインク塗布面と、レンズ基材11におけるマスキング層21の形成面とを対向させて配置し、所定の減圧雰囲気下において印刷シートを加熱する。これにより、印刷シートの昇華性染料を昇華させ、マスキング層21の開口パターン21aの底部に露出するレンズ基材11を染色する。この際、マスキング層21も染色されるが、マスキング層21で覆われているレンズ基材11部分は染色されることはない。このため、開口パターン21aの底部のみに、レンズ基材11の表面層を染色処理してなる染色パターン31dが形成される。このようにして形成された染色パターン31dは、マスキング層21に形成した開口パターン21aと同一の位置に形成された同一形状のものとなる。
【0080】
ここでは、染色パターン31dに求められる視認性によって、レンズ基材11の表面層における深さdと、染色パターン31dを構成する染料の濃度とを制御した染色処理を行う。このような染色処理における深さdおよび染料の濃度は、レンズ基板11の材質毎に、印刷シートを構成する昇華性染料の濃度、および染色の処理時間の調整によって制御される。
なお、浸漬法の場合、液体染料に浸漬させる時間や染料温度等で、濃度の制御をすることが可能である。また、浸漬法の場合、凹凸両面染色も可能であり、片面染色と両面染色でマスキングイメージの濃淡制御をすることも可能である。
【0081】
図14B
次いで図14Bに示すように、レンズ基材11上からマスキング層21を除去する処理を行う(S25)。ここでは、例えばマスキング層21を溶解する溶剤(エタノールやアセトン)を用いたウェット処理により、染色されたマスキング層21の除去を行う。
【0082】
図14C
その後図14Cに示すように、染色パターン31dが形成されたレンズ基材11上に、ハードコート膜13、および低屈折率膜15aと高屈折率膜15bとを交互に積層成膜した多層構造の反射防止膜15とをこの順に成膜し、さらに反射防止膜15上に撥水膜17を成膜する(S26)。反射防止膜15の成膜は、イオンアシスト蒸着を適用して行うことにより、下層側の低屈折率膜15a-1から順に、低屈折率膜15a-7までの各層を、各組成および各膜厚で成膜する。
【0083】
図11A図11B
以上の後には、先の図11Aおよび図11Bに示したように、撥水膜17までが成膜されたレンズ基材11を、レンズ基材11に対して確定された外形形状Fにシェイプカットする(S27)。この際、図13を参照し、第1実施形態で説明した手順と同様にレンズ基材11に形成した基準マークm1〜m4に基づいて位置合わせされた外形形状Fに、レンズ基材11をシェイプカットし、第4実施形態の光学レンズ1dを得る。
【0084】
<第4実施形態の効果>
以上説明した第4実施形態の光学レンズ製造方法では、図14Aを用いて説明したように、マスキング層21の上部からの染色処理によって、マスキング層21の開口パターン21aの底部に処理パターンとしての染色パターン31dを形成している。つまり、処理パターンを、染色による染色パターン31dとして形成することができる。しかも染色パターン31d(処理パターン)は、マスキング層21に形成された開口パターン21a内に形成される。このため、インクジェット法によるマスキング層21の形成精度に倣って、形状精度の高い染色パターン31d(処理パターン)を得ることができる。この結果、レンズ基材11の表面層の所定位置に、形状精度の高い装飾用の模様、ロゴマーク、または文字等としての染色パターン31dを、外側から視認可能な処理パターンとして形成することが可能になる。
【0085】
≪5.第5実施形態≫
<第5実施形態の光学レンズの構成>
図15は、第5実施形態の光学レンズの構成を説明するための平面図(図15A)と、当該平面図におけるa−a’断面図(図15B)である。これらの図に示す第5実施形態の光学レンズ1eが、第4実施形態の光学レンズ(1d)と異なるところは、染色パターン31eが、開口部hを有する抜きパターンとして構成されているところにあり、他の構成は第4実施形態と同様である。
【0086】
このような開口部hを有する染色パターン31eは、平面形状以外は第4実施形態で説明した島状の染色パターン(31d)と同様の構成であって良い。すなわち、染色パターン31eは、撥水膜17側から見た場合の染色パターン31eに対して求められる視認性によって、レンズ基材11の表面層における深さdと、染色パターン31eを構成する染料の濃度とが、適宜に調整されていることとする。特に、この光学レンズ1eが、眼鏡用の光学レンズとして用いられる場合、撥水膜17と反対側の至近距離から光学レンズ1eを見た場合に、染色パターン31eが容易に視認されない程度に、染色パターン31eの深さと染料の濃度とが調整されていることが好ましい。
【0087】
<第5実施形態の光学レンズの製造方法>
以上のような構成の第5実施形態の光学レンズ1eの製造方法は、第4実施形態と同様である。ただし、図13を用いて説明したマスキング層21の形成においては、パターンを反転させたマスキング層を、インクジェット法の適用によって形成すれば良い。
【0088】
<第5実施形態の効果>
このような第5実施形態であっても、第4実施形態と同様の方法が適用されるため、第4実施形態の製造方法と同様の効果を得ることができる。
【0089】
尚、以上説明した第4実施形態および第5実施形態においては、マスキング層21の上方からの昇華染色法によってレンズ基材11の一主面側の表面層に染色パターンを形成する構成を説明した。しかしながら、染色パターンの形成が昇華染色に限定されることはなく、浸漬法や転写法のような他の染色方法を適用しても良い。
【0090】
ただし、第4実施形態および第5実施形態において説明したように、レンズ基材11の一主面側のみにマスキング層21を形成した状態で、例えば浸漬法のようにレンズ基材11全体を染料にさらす方法を適用して染色処理を行った場合、マスキング層21が形成されていないレンズ基材11の他主面側は全面が染色処理されることになる。この場合、マスキング層21側からの染色処理によって染色パターンを形成するには、他主面側からの染色がマスキング層21を設けた一主面側に達することのないように、染色条件を制御した染色を行うことが重要である。尚、レンズ基材11の一主面側と共に、他主面側におけるレンズ領域の全面をマスキング層で覆って染色処理を行うことで、レンズ基材11の他主面側の染色を防止しても良い。
【0091】
また以上説明した第1〜第5実施形態においては、眼鏡用の光学レンズに処理パターンを設ける場合を想定した説明を行った。しかしながら本発明の光学レンズ製造方法は、眼鏡用の光学レンズの製造に適用する場合に限定されることはなく、所定のレンズ領域に例えば装飾用の模様、ロゴマーク、または文字等としての処理パターンを形成する場合に広く適用可能である。
【0092】
さらに以上説明した第1〜第5実施形態においては、マスキング層21の形成をインクジェット法によって行う場合を説明した。しかしながら、マスキング層21の形成はインクジェット法の適用に限定されることはなく、印刷法やテープの貼り付けによってマスキング層21を形成しても良い。この場合であっても、マスキング層21を位置および形状精度良好に形成することにより、材料を限定することなく精度良好にレンズ面に透明材料膜からなる透明パターンや染色パターンを形成することが可能になる。
【符号の説明】
【0093】
1a,1b,1c,1d,1e…光学レンズ、11…レンズ基材、F…外形形状(レンズ領域)、m1,m2,m3,m4…基準マーク、21…マスキング層、19,29…透明材料膜、19a,19b,29c…透明パターン(処理パターン)、31d,31e…染色パターン(処理パターン)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15