(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための形態について説明する。
【0011】
本発明の被覆材は、1種または2種以上の被膜層を積層することによって形成されたものである。被覆材を形成する各被膜層は、結合材として樹脂成分を含有する。
【0012】
本発明において、被覆材を形成する被膜層の少なくとも1種以上は、樹脂成分、及び吸熱物質を含有するものである。本発明では、このような被膜層を使用することによって、耐熱性を高めることができる。
【0013】
吸熱物質は、加熱により水を放出する金属化合物である。このような吸熱物質は、加熱の際、水蒸気を発生し、その吸熱作用によって耐熱性向上に寄与するものである。
このような吸熱物質としては、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、水酸化ストロンチウム、水酸化スカンジウム等の金属水酸化物;ホウ砂(四ホウ酸ナトリウム)、八ホウ酸二ナトリウム、ホウ酸亜鉛等の金属ホウ酸塩;ゼオライト、ハロイサイト、アロフェン、エトリンジャイト等が挙げられ、これらの1種または2種以上が使用できる。吸熱物質としては、特に金属水酸化物が好適である。
【0014】
吸熱物質の比率は、樹脂成分の固形分100重量部に対し、好ましくは10〜800重量部、より好ましくは20〜600重量部、さらに好ましくは40〜500重量部、最も好ましくは60〜400重量部である。吸熱物質がこのような比率であれば、十分な耐熱性向上効果が得られる。
【0015】
被膜層の樹脂成分としては、例えば、酢酸ビニル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、塩化ビニル樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、アクリルシリコン樹脂、フッ素樹脂等が使用可能である。これらは1種または2種以上で使用することができる。また、これら樹脂成分は架橋反応性を有するものであってもよい。
【0016】
本発明では、被覆材を形成する被膜層の少なくとも1種以上が、樹脂成分として、有機樹脂及びシリコン物質を含むことが望ましい。有機樹脂及びシリコン物質を含む樹脂成分(以下、単に「複合樹脂」とも言う。)を含有する被膜層を使用すれば、本発明の効果を一層高めることが可能となる。このような複合樹脂の形態としては、有機樹脂とシリコン物質を混合した形態、有機樹脂とシリコン物質を反応させた形態等が挙げられる。有機樹脂とシリコン物質の重量比率は、固形分換算で100:10〜100:90であることが好ましく、より好ましくは100:15〜100:70である。この範囲を満たす場合、一層耐熱性に優れた被膜層を形成することができる。特にこのような被覆材は断熱材等の表面被覆に採用した場合に効果的である。この作用機構は明らかではないが、上記複合樹脂を用いた被膜層は耐熱性に加え通気性を有するため、断熱層に上記の被覆材を積層した積層構造体が高温に晒された場合には、断熱層より発生した可燃性ガスが、積層構造体の内部または表層に滞留し難くなり、燃焼を効果的に抑制することができると推測される。
【0017】
上記複合樹脂のうち、有機樹脂としては上述の各種樹脂が挙げられ、この中でもアクリル樹脂が好適である。アクリル樹脂は、各種アクリルモノマーを重合、あるいは、各種アクリルモノマーとその他のモノマーを共重合することにより得ることができる。このうちアクリルモノマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル;(メタ)アクリル酸等のカルボキシル基含有アクリルモノマー;N−メチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のアミノ基含有アクリルモノマー;(メタ)アクリルアミド等のアミド基含有アクリルモノマー;ダイアセトン(メタ)アクリルアミド等のカルボニル基含有アクリルモノマー;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等の水酸基含有アクリルモノマー;(メタ)アクリルニトリル等のニトリル基含有アクリルモノマー;γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン等の加水分解性シリル基含有アクリルモノマー等が挙げられる。
【0018】
上記複合樹脂のうち、シリコン物質としては、シリカ、シリコーン等が挙げられ、中でもシリカが好適である。
このようなシリカは、例えば、珪酸ソーダ、珪酸リチウム、珪酸カリウム、シリケート化合物を原料として製造することができる。このうち、シリケート化合物としては、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラn−プロポキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラn−ブトキシシラン、テトライソブトキシシラン、テトラsec−ブトキシシラン、テトラt−ブトキシシラン、テトラフェノキシシラン等、あるいはこれらの縮合物等が挙げられる。製造時には触媒等を使用することもできる。また、製造過程ないし製造後に、触媒等に含まれる金属をイオン交換処理等によって除去することもできる。シリカの粒子径は、好ましくは1〜200nm、より好ましくは3〜100nmである。
【0019】
このような複合樹脂としては、特に、アクリル樹脂エマルション及びシリカを含むものが好適である。このうち、アクリル樹脂エマルションとしては、シリカと反応可能なものが好適である。具体的には、シリカに存在するシラノール基と反応可能な、水酸基、加水分解性シリル基等(好ましくは、加水分解性シリル基)の官能基を有するエマルションであることが好ましい。このような樹脂成分を用いることにより、本発明の効果をいっそう高めることができる。この作用機構は明らかではないが、上記複合樹脂を用いた被膜層では、シリカが凝集することなく、被膜層全体に分散して存在するため、耐熱性及び通気性に優れるとともに、有機樹脂の燃焼を抑制することができると推察される。
【0020】
本発明の被覆材を形成する際、使用可能な被膜層としては、例えば、
(A1)樹脂成分、及び吸熱物質を含有する被膜層。
(A2)樹脂成分を含有する被膜層(吸熱物質は含有しない)。
等が挙げられる(以下、(A1)と(A2)を併せて「Aタイプ」ともいう)。
【0021】
さらに、好ましい樹脂成分を含有する被膜層として、
(B1)有機樹脂及びシリコン物質を含む複合樹脂、及び吸熱物質を含有する被膜層。
(B2)有機樹脂及びシリコン物質を含む複合樹脂を含有する被膜層(吸熱物質は含有しない)。
等が挙げられる(以下、(B1)と(B2)を併せて「Bタイプ」ともいう)。
【0022】
本発明では、上記被膜層の1種または2種以上を用いて、1層または2層以上からなる被覆材を形成し、被膜層の少なくとも1種以上は、樹脂成分、及び吸熱物質を含有するもの(上記(A1)または上記(B1))とする。すなわち、被覆材を構成する各層のうち、少なくとも1層以上は、樹脂成分、及び吸熱物質を含有する層(上記(A1)または上記(B1)によって形成される層)とする。
【0023】
本発明の被覆材の態様としては、例えば以下に示すものが挙げられる。
【0024】
(1)被覆材が1層からなる場合
この場合は、(A1)または(B1)の被膜層を用いて、1層の被覆材を形成する。
【0025】
(2)被覆材が2層からなる場合
この場合は、第1被膜層、第2被膜層のうち、少なくとも1層を(A1)または(B1)によって形成する。例えば、以下の被膜層の積層によって、順に、第1被膜層/第2被膜層を形成すればよい。
・(A1)/{(A1)、(A2)、(B1)、または(B2)}
・(A2)/{(A1)、または(B1)}
・(B1)/{(A1)、(A2)、(B1)、または(B2)}
・(B2)/{(A1)、または(B1)}
このような態様では、特に、第1被膜層、第2被膜層のいずれか一方、または両方がBタイプであることが好ましく、さらには、少なくとも第2被膜層(被覆材の最表面層)がBタイプであることが好ましい。
【0026】
(3)被覆材が3層以上からなる場合
この場合は、被覆材を構成する各被膜層のうち、少なくとも1層を(A1)または(B1)によって形成する。さらに、本発明では、少なくとも被覆材の最表面層が、Bタイプであることが好ましい。
【0027】
上記(2)(3)のように、被覆材が2層以上からなる場合、少なくとも2層以上を(A1)または(B1)によって形成することが好ましい。このように、複数層に吸熱性物質を含むことにより、本発明の効果をよりいっそう発揮することができる。
【0028】
このような被覆材を形成する被膜層は、上記条件を満たす限り、種々の形態のものを使用することができる。例えば、上記Aタイプ、上記Bタイプの構成を満たす被膜層用組成物(以下、「被膜層用組成物」ともいう。)により形成することができる。具体的に、使用可能な被膜層用組成物の形態としては、例えば、合成樹脂エマルションペイント、つや有り合成樹脂エマルションペイント、非水分散形樹脂エナメル等のフラット系塗料;JIS
A 6909に規定される建築用仕上塗材(例えば、リシン塗料、単層弾性塗材等の薄付け仕上塗材;スタッコ塗料等の厚付け仕上塗材;複層仕上塗材等);その他多彩模様塗料、石材調仕上塗材、砂岩調仕上塗材等が挙げられる。この他、樹脂成分を含有する各種下塗材、下地調整塗材等(ポリマーセメント等)も被膜層用組成物として使用できる。また、樹脂成分を含有する各種クリヤー塗料も、本発明の被膜層用組成物として使用できる。これら被膜層用組成物としては、媒体として水を含む水性組成物が好適である。これら湿式の被膜層用組成物を、板状に成形したシート材等が、本発明の被覆材として使用できる。
【0029】
本発明の被覆材の厚み(各層の厚み)は、目的に応じて適宜設定すればよいが、被覆材全体の厚みが、好ましくは0.5mm〜10mm、より好ましくは1mm〜8mmである。このような範囲であれば、十分な耐熱性向上効果が得られる。
【0030】
本発明における被覆材は、その最終的な仕上外観において、複数色による模様、及び/または凹凸による模様を有するものが好ましい。このような被覆材では、これら模様によって美観性を高めることができる。なお、ここに言う複数色による模様とは、少なくとも2色以上の色彩が視認可能な状態で混在する模様のことである。また、凹凸による模様とは、概ね0.2〜5mm程度の高低差を有する表面模様のことである。
複数色による模様は、例えば、被膜層用組成物として多彩模様塗料、石材調仕上塗材等を用いることにより形成できる。また、色彩の異なる複数の組成物を用い、部分塗装等を行うことで、複数色による模様を形成することも可能である。
凹凸による模様は、例えば、上述の建築用仕上塗材、石材調仕上塗材、砂岩調仕上塗材等を用いることにより形成できる。
【0031】
本発明において、被覆材の裏面に基層を設けることもできる。さらには、被膜層と被膜層の間、被膜層の内部等に、補強層を設けることもできる。このような基層及び/または補強層を設けることにより、被覆材の強度、耐久性、割れ防止性、耐熱性等を高めることができる。このような基層あるいは補強層としては、例えば、紙、合成紙、不燃紙、樹脂シート、金属シート、織布、不織布等が挙げられる。これらは、必要に応じて表面処理等が施されたものであってもよい。その厚みは、0.05mm以上(より好ましく0.1mm〜5mm)であることが好ましい。
【0032】
本発明における被覆材の製造方法としては、特に限定されず公知の方法で製造することができる。例えば、以下の方法の場合、効果発現の点で好適である。
【0033】
(1)被覆材が1層からなる場合
(a)型枠に、被膜層用組成物を流し込み、乾燥、硬化させ、脱型する方法、
また、基層を積層する場合は、
(b)上記(a)の後、接着剤等で基層を積層する方法、
(c)上記(a)の被膜層用組成物が乾燥する前に基層を積層する方法、
(d)基層に、被膜層用組成物を塗付し乾燥、硬化させる方法、
等が挙げられる。
【0034】
(2)被覆材が2層からなる場合
(e)型枠に、第2の被膜層用組成物を流し込み、乾燥、硬化させ、次いで、第1被膜層用組成物を流し込み、乾燥、硬化させ、脱型する方法、
また、基層を積層する場合は、
(f)上記(e)の後、接着剤等で基層を積層する方法、
(g)上記(e)の第1被膜層用組成物が乾燥する前に基層を積層する方法、
(h)基層に、第1被膜層用組成物を塗付し、次いで、第2被膜層用組成物を塗付し乾燥、硬化させる方法、
等が挙げられる。また、上記(a)〜(d)で得られた被膜層を接着剤等で積層することもできる。
【0035】
(3)被覆材が3層以上からなる場合
上記の被覆材が2層からなる場合と同様にして、第3被膜層用組成物、第4被膜層用組成物を積層すればよい。
【0036】
上記型枠としては、例えばシリコーン樹脂製、ウレタン樹脂製、金属製等の型枠、あるいは離型紙を設けた型枠等が使用できる。また、必要に応じて、離型剤を使用してもよい。
【0037】
上記において被膜層用組成物を流し込む、または塗付する際には、例えば、スプレー、ローラー、刷毛、コテ、レシプロ、コーター、流し込み等の手段を用いた方法を採用することができる。被膜層用組成物の塗付け量は、使用する材料や塗付器具の種類、被覆材の表面形状等に応じて適宜設定すればよい。塗装時には、必要に応じ被膜層用組成物を希釈することもできる。
【0038】
被覆材に凹凸による模様を形成する場合、型枠を使用する場合は型枠側が被覆材の最表面となるため、型枠内側の形状を調整することで付与することができる。また、型枠を使用しない場合は、塗付器具の種類とその使用方法を適宜選定すればよい。これにより、種々の凹凸模様(例えば砂壁状、ゆず肌状、繊維壁状、さざ波状、スタッコ状、凹凸状、月面状、櫛引状、虫喰状等)が形成できる。被膜層用組成物の塗付後、その被膜(被膜層)が乾燥する前に、塗面をデザインローラー、コテ、刷毛、櫛、へら等で処理したり、エンボス加工により種々の凹凸模様を形成させることもできる。
【0039】
本発明の被覆材は建築物の表面被覆に用い、建築物の内外装面を構成する建材として使用できる。建築物内外装面の基材としては、例えば、コンクリート、モルタル、セメントボード、押出成形板、スレート板、PC板、ALC板、繊維強化セメント板、金属系サイディングボード、窯業系サイディングボード、セラミック板、珪酸カルシウム板、プラスチックボード、硬質木片セメント板、レンガ、タイル、等が用いられる。このような基材は、既存塗膜層、断熱材等を有するものであってもよい。本発明の被覆材は、このような基材を被覆する材料として使用できる。
【0040】
特に、本発明の被覆材は、建築物の屋外側表面に、ポリスチレンフォーム、ポリウレタンフォーム、ポリフェノールフォーム等の有機質発泡体からなる断熱材を配置した基材に対して好ましく適用できるものである。断熱材の表面は、ポリマーセメント及び/または網状体等で補強されていてもよい。
【0041】
また、本発明の被覆材を施工する際には、公知の接着剤、粘着剤、粘着テープ、釘、鋲等を用いて基材に貼着すればよい。その他、ピン、ファスナー、レール等を用いて固定化することもできる。本発明では、吸熱物質を含む接着剤、粘着剤を用いて基材に貼着することが好適である。
【0042】
被覆材を接着剤で貼り付ける際、隣接する被覆材どうしを突き合わせて貼りつけたり、被覆材間に目地を設けたりすることもできる。突き合わせて貼り付ける場合、接着剤がはみ出さないようにすることが好ましい。また、目地を設ける場合、被覆材を貼り付ける際の間隔は特には限定されないが、1mm〜30mm程度であればよい。このような範囲であれば、目地模様を生かした仕上げを行うことができる。接着剤を硬化させる際の雰囲気温度は、適宜設定することができるが、通常は常温でよい。
【実施例】
【0043】
以下に実施例を示し、本発明の特徴をより明確にする。
【0044】
(被膜層用組成物)
被膜層用組成物として、以下の各被膜層用組成物を用意した。
【0045】
・被膜層用組成物1
アクリル樹脂エマルション(固形分50重量%)200重量部に対し、吸熱物質(水酸化アルミニウム)25重量部、炭酸カルシウム255重量部、酸化チタン80重量部、造膜助剤8重量部、粘性調整剤3重量部、分散剤2重量部、消泡剤3重量部、水60重量部を常法により均一に混合して、被膜層用組成物1を製造した。この被膜層用組成物1は、合成樹脂エマルションペイントに該当する。
【0046】
・被膜層用組成物2
アクリル樹脂エマルション(固形分50重量%)200重量部に対し、吸熱物質(水酸化アルミニウム)55重量部、炭酸カルシウム225重量部、酸化チタン80重量部、造膜助剤8重量部、粘性調整剤3重量部、分散剤2重量部、消泡剤3重量部、水60重量部を常法により均一に混合して、被膜層用組成物2を製造した。この被膜層用組成物2は、合成樹脂エマルションペイントに該当する。
【0047】
・被膜層用組成物3
アクリル樹脂エマルション(固形分50重量%)200重量部に対し、吸熱物質(水酸化アルミニウム)90重量部、炭酸カルシウム190重量部、酸化チタン80重量部、造膜助剤8重量部、粘性調整剤3重量部、分散剤2重量部、消泡剤3重量部、水60重量部を常法により均一に混合して、被膜層用組成物3を製造した。この被膜層用組成物3は、合成樹脂エマルションペイントに該当する。
【0048】
・被膜層用組成物4
アクリル樹脂エマルション(固形分50重量%)200重量部に対し、吸熱物質(水酸化アルミニウム)140重量部、炭酸カルシウム140重量部、酸化チタン80重量部、造膜助剤8重量部、粘性調整剤3重量部、分散剤2重量部、消泡剤3重量部、水60重量部を常法により均一に混合して、被膜層用組成物4を製造した。この被膜層用組成物4は、合成樹脂エマルションペイントに該当する。
【0049】
・被膜層用組成物5
アクリル樹脂エマルション(固形分50重量%)200重量部に対し、吸熱物質(水酸化アルミニウム)350重量部、酸化チタン80重量部、造膜助剤8重量部、粘性調整剤3重量部、分散剤2重量部、消泡剤3重量部、水80重量部を常法により均一に混合して、被膜層用組成物5を製造した。この被膜層用組成物5は、合成樹脂エマルションペイントに該当する。
【0050】
・被膜層用組成物6
アクリル樹脂エマルション(固形分50重量%)200重量部に対し、炭酸カルシウム280重量部、酸化チタン80重量部、造膜助剤8重量部、粘性調整剤3重量部、分散剤2重量部、消泡剤3重量部、水60重量部を常法により均一に混合して、被膜層用組成物6を製造した。この被膜層用組成物6は、合成樹脂エマルションペイントに該当する。
【0051】
・被膜層用組成物7
アクリル樹脂エマルション(固形分50重量%)200重量部に対し、吸熱物質(水酸化アルミニウム)210重量部、骨材(黄色骨材、黒色骨材、褐色骨材、寒水石の混合物)550重量部、造膜助剤10重量部、粘性調整剤4重量部、消泡剤2重量部、水110重量部を常法により均一に混合して、被膜層用組成物7を製造した。この被膜層用組成物7は、石材調仕上塗材に該当する。
【0052】
・被膜層用組成物8
アクリル樹脂エマルション(固形分50重量%)200重量部に対し、炭酸カルシウム210重量部、骨材(黄色骨材、黒色骨材、褐色骨材、寒水石の混合物)550重量部、造膜助剤10重量部、粘性調整剤4重量部、消泡剤2重量部、水110重量部を常法により均一に混合して、被膜層用組成物8を製造した。この被膜層用組成物8は、石材調仕上塗材に該当する。
【0053】
・被膜層用組成物9
シリカ複合アクリル樹脂エマルション(固形分50重量%、加水分解性シリル基含有アクリル樹脂:シリカ=100:25(固形分比)、シリカの平均粒子径15nm)250重量部に対し、吸熱物質(水酸化アルミニウム)210重量部、骨材(黄色骨材、黒色骨材、褐色骨材、寒水石の混合物)550重量部、造膜助剤10重量部、粘性調整剤4重量部、消泡剤2重量部、水110重量部を常法により均一に混合して、被膜層用組成物9を製造した。この被膜層用組成物9は、石材調仕上塗材に該当する。
【0054】
・被膜層用組成物10
シリカ複合アクリル樹脂エマルション(固形分50重量%、加水分解性シリル基含有アクリル樹脂:シリカ=100:25(固形分比)、シリカの平均粒子径15nm)250重量部に対し、炭酸カルシウム210重量部、骨材(黄色骨材、黒色骨材、褐色骨材、寒水石の混合物)550重量部、造膜助剤10重量部、粘性調整剤4重量部、消泡剤2重量部、水110重量部を常法により均一に混合して、被膜層用組成物10を製造した。この被膜層用組成物10は、石材調仕上塗材に該当する。
【0055】
・被膜層用組成物11
シリカ複合アクリル樹脂エマルション(固形分50重量%、加水分解性シリル基含有アクリル樹脂:シリカ=100:25(固形分比)、シリカの平均粒子径5nm)250重量部に対し、炭酸カルシウム210重量部、骨材(黄色骨材、黒色骨材、褐色骨材、寒水石の混合物)550重量部、造膜助剤10重量部、粘性調整剤4重量部、消泡剤2重量部、水110重量部を常法により均一に混合して、被膜層用組成物11を製造した。この被膜層用組成物11は、石材調仕上塗材に該当する。
【0056】
・被膜層用組成物12
シリカ複合アクリル樹脂エマルション(固形分50重量%、加水分解性シリル基含有アクリル樹脂:シリカ=100:17(固形分比)、シリカの平均粒子径5nm)234重量部に対し、炭酸カルシウム210重量部、骨材(黄色骨材、黒色骨材、褐色骨材、寒水石の混合物)550重量部、造膜助剤10重量部、粘性調整剤4重量部、消泡剤2重量部、水110重量部を常法により均一に混合して、被膜層用組成物12を製造した。この被膜層用組成物12は、石材調仕上塗材に該当する。
【0057】
・被膜層用組成物13
シリカ複合アクリル樹脂エマルション(固形分50重量%、加水分解性シリル基含有アクリル樹脂:シリカ=100:33(固形分比)、シリカの平均粒子径5nm)267重量部に対し、炭酸カルシウム210重量部、骨材(黄色骨材、黒色骨材、褐色骨材、寒水石の混合物)550重量部、造膜助剤10重量部、粘性調整剤4重量部、消泡剤2重量部、水110重量部を常法により均一に混合して、被膜層用組成物13を製造した。この被膜層用組成物13は、石材調仕上塗材に該当する。
【0058】
・被膜層用組成物14
灰色樹脂粒子(アクリル樹脂エマルション、黒色酸化鉄、黄色酸化鉄、酸化チタン、水を主成分とする着色材の粒状化物、粒子径約3mm)と、濃灰色樹脂粒子(アクリル樹脂エマルション、黒色酸化鉄、黄色酸化鉄、酸化チタン、水を主成分とする着色材の粒状化物、粒子径約4mm)と、黒色樹脂粒子(アクリル樹脂エマルション、黒色酸化鉄、水を主成分とする着色材の粒状化物、粒子径約2mm)とが水性媒体(アクリル樹脂エマルションを含む)に分散した被膜層用組成物14を製造した。なお、灰色樹脂粒子と濃灰色樹脂粒子と黒色樹脂粒子の重量比率は、35:35:30である。この被膜層用組成物14は、多彩模様塗料に該当する。
【0059】
・被膜層用組成物15
アクリル樹脂エマルション(固形分50重量%)200重量部に対し、炭酸カルシウム140重量部、酸化チタン20重量部、骨材(寒水石)200重量部、造膜助剤10重量部、粘性調整剤3重量部、消泡剤2重量部、水80重量部を常法により均一に混合して、被膜層用組成物15を製造した。この被膜層用組成物15は、砂岩調仕上塗材に該当する。
【0060】
・被膜層用組成物16
アクリル樹脂エマルション(固形分50重量%)200重量部に対し、炭酸カルシウム1200重量部、酸化チタン30重量部、造膜助剤15重量部、粘性調整剤1重量部、消泡剤3重量部、水250重量部を常法により均一に混合して、被膜層用組成物16を製造した。この被膜層用組成物16は、複層仕上塗材に該当する。
【0061】
(被覆材の製造)
基層(ガラス不織布:厚み0.4mm、坪量50g/m
2)の上に、表1に示す第1被膜層用組成物をスプレー塗装し、80℃下で1時間乾燥後、第2被膜層層用組成物をスプレー塗装し、80℃下で1時間乾燥させ、被覆材1〜17を得た。
なお、被膜層用組成物1〜6の塗付け量は0.15kg/m
2、被膜層用組成物7〜13、15〜16の塗付け量は4kg/m
2、被膜層用組成物14の塗付け量は0.8kg/m
2である。
【0062】
<試験I>
(
参考例1)
スレート板上に板状のポリスチレンフォーム(厚み50mm)を貼りつけたものを塗装対象の基材とした。この基材の全面に対し、接着剤を塗付し、被覆材1の基層側を貼り付け、7日間養生した。以上の方法により、試験体を作製した。なお、以上の工程はすべて標準状態(気温23℃、相対湿度50%)下で行った。
【0063】
(評価1:耐熱性試験)
耐熱性試験は、試験体表面(被膜層側)を、ガスバーナーで30秒間加熱し、加熱を停止した後、消火時間、及びその状態を観察することにより行った。その結果を表1に示した。なお、加熱を停止した後の状態は、変形が極く僅かであったものをA、著しく変形したものをDとして、A>B>C>Dの4段階評価とした。
参考例1では、加熱停止後20秒以内に燃焼が止まり、変形は僅か(評価B)であった。
【0064】
(参考例2)〜(参考例8)、(実施例9)〜(実施例13)、(参考例14)〜(参考例16)、(比較例1)
表1に示す、被覆材を使用した以外は、
参考例1と同様の方法で試験を行った。その結果を表1に示した。
【0065】
<試験II>
上記の
参考例4、
参考例8、
実施例9、
実施例10を対象に、以下の評価2を実施した。
(評価2:耐熱性試験)
この試験は、試験体表面(被膜層側)を、ガスバーナーで45秒間加熱し、加熱を停止した後、消火時間、及びその状態を観察することにより行った。その結果を表1に示した。なお、評価基準は、表1と同様とした。
【0066】
【表1】