【実施例1】
【0030】
図1を参照して本発明の第1実施例を説明する。
図1は、スクレーパリング1を三次元図で示す。スクレーパリング1は、本実施例では3つのセグメント2a、2b、2cで構成されるキャリアリング2を含む。キャリアリング2における隣り合う2つのセグメントは、参照符号Aを用いて
図1に示すように、中断部によって互いに分離される。複数のセグメントで構成されるキャリアリング2は、円形断面を有する。複数の中断部Aは、キャリアリング2における個別のセグメントの間にギャップを形成する。
【0031】
図1及び後続の図では、スクレーパリングの軸方向を矢印Xで示す。さらに、それらの図では、スクレーパリングの周方向を対応する矢印Uで示す。特に、その軸方向は、キャリアリング2の対称軸に平行に伸びる。その周方向は、その円形のスクレーパリングの周囲に沿って伸びる。
【0032】
図1では、説明の明確化のため、スクレーパリングを分離された態様で示す。すなわち、関連するロッドに搭載された状態ではない態様で示す。
【0033】
内周において、特に、スクレーパリング1の内面において、より正確に言うと、キャリアリング2を形成する複数のセグメントの内面において、本実施例では、軸方向に間隔を空けて配置されるスクレーパ層板3a及び3bが提供される。スクレーパ層板3a、3bは、複数のセグメントで形成される。スクレーパ層板を形成するセグメントの数は、キャリアリング2を形成するセグメントの数に等しい。スクレーパ層板3a、3bにおけるそれらセグメントは、層板中断部B及びCによって、互いに分離される。層板中断部B、Cは、キャリアリング2の周方向に関し、キャリアリング2における中断部Aに対応する位置に設けられる。
【0034】
スクレーパ層板3a、3bは、本実施例では、キャリアリングの内周面に形成される溝に挿入される。スクレーパ層板3a、3bは、スクレーパリングの動作中に周方向に移動できない態様で、溝に挿入される。
【0035】
代案として、スクレーパ層板3a、3bは、例えば溶接によって或いは別の方法によって、キャリアリング2の内周面に直接的に付けられてもよい。さらに、キャリアリング2の内周で切断される方式でスクレーパ層板3a、3bを設計することが可能である。
【0036】
図1は、3つの中断部Aを有するキャリアリング2を示す。キャリアリング2におけるそれら中断部Aは、キャリアリング2を形成するセグメント2a、2b、2cが軸方向からの突出部において重なり合うよう、斜めになるように形成される。スクレーパ層板3a、3bは、
図1から推測されるように、層板中断部B、Cにおけるスクレーパ層板3a、3bのセグメントの端部が、キャリアリング2の中断部A内に僅かに突出するように設計される。
【0037】
スクレーパ層板3a、3bのそれぞれの間にある層板中断部B、Cは、キャリアリング2の中断部Aの設計を考慮して、キャリアリング2の中断部Aに関連付けられる層板中断部B、Cのそれぞれがキャリアリング2の軸方向からの突出部において重なり合わないように、配置される。
【0038】
図1に示すスクレーパリング1は、キャリアリング2の外周にそれぞれ備えられる付勢手段又はスプリング4によって半径方向内側に付勢されている。組み立てられた状態では、キャリアリング2のセグメント2a、2b、2cは、提供されるスクレーパ層板3a、3bによって、関連するロッドの外周に隣接し、また、所定の力によってスクレーパ層板3a、3bがロッドの外周に押し付けられるように、付勢力がスプリング4によってそれらセグメントにかけられている。取り付けられた状態では、キャリアリング2の内周に備えられる層板3a、3bが、関連するロッドの外周上を滑らかに動くように、相対軸方向運動が、スクレーパリング1とその関連するロッドとの間で許容される。ロッドがスクレーパリング1に関して動かされる間、スクレーパリング1が動かないようにされてもよく、一方で、ロッドが動かないようにされ、且つ、スクレーパリング1がロッドに関して軸方向に移動可能とされてもよい。上述の状況の双方の組み合わせは、スクレーパリング1とその関連するロッドとの間の相対運動が許容される限り、同様に起こり得る。
【0039】
キャリアリング2における複数のセグメントが内側に付勢され得るという機能が満たされる限り、スプリング4とは異なる付勢手段が提供されてもよい。
【0040】
図示されたスクレーパリング1は、2つの空間の分離をもたらすために用いられ、一方で、関連するロッドは、上述の方法で、スクレーパリング1内で、スクレーパリング1に関して移動可能に配置される。スクレーパリング1又はロッドが動かないか否かは重要でない。確保されなければならないのは、単に、スクレーパリング1とロッドとの間の相対移動性であるためである。それらの空間は、閉じられた空間である必要はなく、周囲と連通していてもよい。
【0041】
特に、スクレーパリング1は、スクレーパリング1とロッドとの間の相対軸方向運動によって、それら空間のうちの何れか一方におけるロッドの外面に適用される、ロッドに付着する流体を擦るため、また、ロッドのところに提供される流体膜が他方の空間内に入るのを防止するために用いられる。これらの応用は、液圧アクチュエータ、液圧アプリケーション、コンプレッサを含み、また、特に、ピストンロッドとしてのロッドが、クランクケースのような一方の空間内で潤滑油膜を備え、一方で、内燃機関におけるエア受け入れ空間のような他方の空間にその潤滑油が入るのが防止されるところの内燃機関での応用を含む。
【0042】
本発明にしたがって、スクレーパリング1は、以下の効果を有する厳密に設定された中断部Aを備える。
【0043】
スクレーパリング1の動作中、摩耗は、スクレーパ層板3a、3bとロッドの外面との間の接触によるスクレーパリング1とその関連するロッドとの間の相対運動によって生じる。この摩耗は、層板3a、3bからの材料の摩滅を引き起こし、その結果、スクレーパ層板3a、3bの幾何学的寸法は、動作中に変化する。スクレーパ層板3a、3bの摩耗は、キャリアリング2の外周に提供される付勢手段4により、付勢手段4による半径方向内側に作用する力によるいくらかの摩耗の後であっても、関連するロッドの外面にスクレーパ層板3a、3bを接触させ続けることによって補われる。そのため、キャリアリング2を構成するセグメント2a、2b、2cの間の中断部、及び、スクレーパ層板3a、3bを構成するセグメントの間の中断部を形成する層板中断部B、Cは、スクレーパ層板3a、3bの摩耗の際に、半径方向内側に向けられた運動を許容する役割を果たす。そのような運動の場合、キャリアリング2の外周が全体的に減少するためである。キャリアリング2の外周の減少は、キャリアリング2のセグメント2a、2b、2cの間の中断部Aが閉じられるまで進行し得る。
【0044】
キャリアリング2を形成するセグメント2a、2b、2cが軸方向突出部において重なり合うようにする、中断部Aの具体的な構造、すなわち、斜め形状によって、2つの層板3a、3bとの相互作用により、関連するロッドに付着する流体膜が中断部Aを通過するのが防止される。このようにして、基本的には、関連するロッドに付着する流体膜が一方の空間から他方の空間に入るのを防止することであるスクレーパリング1の機能が一緒に改善される。なお、それらの空間は、スクレーパリング1によって分離されている。
【0045】
キャリアリング2の中断部Aの位置に対応する位置に配置される層板中断部B、Cを含む2つのスクレーパ層板3a、3bの具体的な配置は、主として、この機能をサポートする。
【0046】
以下では、
図2を参照して、第1実施例の変形例について説明する。
【0047】
図2のスクレーパリング1aの構造は、要部において、
図1のスクレーパリング1の構造と同様である。しかしながら、キャリアリング2の中断部Aが修正設計されている。
【0048】
図2で見られるように、キャリアリング2の中断部Aは、キャリアリング2を形成するセグメント2a、2b、2cの間でギャップが周方向に提供されるように、段付きとなっている。一方で、それらセグメントの端部は、その周方向で段付きとなっている。具体的には、キャリアリング2の中断部Aのそれぞれにおいて、キャリアリング2の軸方向からの突出部で、隣接するセグメントが重なり合うように、中断部Aのところで、各セグメントは2段階にカットされている。
図2から推測されるように、スクレーパ層板3a、3bのそれぞれが、中断部Aにおける段部の1つと関連付けられるように、2つのスクレーパ層板3a、3bは、軸方向に間隔を空けるように配置される。より正確に言うと、スクレーパ層板3a、3bのセグメントは、キャリアリング2における中断部Aの段付き構成のため、異なる周方向延長部を伴って延びる。この変形例でも、スクレーパ層板3a、3bを形成するセグメントの端部は、キャリアリング2の中断部A内に僅かに突出する。
【0049】
図2の配置によって、
図1の配置によって達成されるのと実質的に同じ効果が達成される。
【0050】
図2では、キャリアリング2の隣接するセグメントが軸方向においても互いに間隔を空けて配置されるように、中断部Aにおけるセグメントの段付き端部が示されている。そのような間隔は、層板3a、3bの摩耗による直径の簡単な補償を維持するように構成される。
【0051】
しかしながら、別の変形例では、隣接するセグメントの段付き端部は、中断部Aのところで軸方向に接触していてもよい。中断部Aのところで周方向の距離が変化する際に、接触する面同士が滑らかに動くようにするためである。そのような配置は、スクレーパリング全体の改善された位置あわせ安定性をもたらすように構成される。
【実施例2】
【0052】
図3a、
図3b、及び
図4に基づいて、本発明の第2実施例を説明する。第2実施例は、スクレーパ層板3cに関する。第2実施例のスクレーパ層板3cは、少なくとも2つのセグメントで構成されるスクレーパリング1bに取り付けられるのに適している。さらに、第2実施例のスクレーパ層板3cは、第1実施例で説明したスクレーパリング1、1aに取り付けられるのにも適している。
【0053】
第2実施例の説明のため、図示するスクレーパ層板3cの、4つのセグメント2a、2b、2c、2dで構成されるスクレーパリング1bへの適用を説明する。
図3aは、4つのセグメントで構成されるスクレーパリング1bに取り付けられるスクレーパ層板3cを示す。第2実施例のスクレーパリング1bの機能は、第1実施例におけるスクレーパリング1、1aの機能と実質的に同じである。
【0054】
図3aは、中断部Aによって4つのセグメント2a、2b、2c、2dに分割されるキャリアリング2を有するスクレーパリング1bを示す。それらセグメントには、キャリアリング2におけるそれらセグメントの設計に合わせて設計される少なくとも1つのスクレーパ層板3cが提供される。具体的には、スクレーパ層板3cは、スクレーパリング1bのために提供されるキャリアリングにおけるセグメントの数と同じ数の、層板中断部Bによって分割されるセグメントを備える。
図3aでは、それらセグメントの数はそれぞれ4つである。ここでもまた、スプリングとして例示され得る付勢手段4が、キャリアリング2の外周に備えられている。
【0055】
図3aからの切り出しである
図3bは、キャリアリングの中断部Aの領域を示す。ここでは、互いに向き合う或いは層板中断部Bの領域において隣接するスクレーパ層板3cにおけるセグメントの端面の面取部がより明確に示されている。
【0056】
図4の例は、周方向Uにおけるα=90°の拡がりを有する本発明によるスクレーパ層板3cを示す。
【0057】
第2実施例は、スクレーパ層板3cを形成する複数のセグメントの端部の具体的な構成に関する。
図4の例ではスクレーパ層板3cにおける1つのセグメントが示されているのみであるが、
図3aに示す4つのセグメントで構成されるスクレーパリング1bに取り付けられるのに適したスクレーパ層板3cが、
図4に示すタイプの4つのセグメントで構成されることは明らかである。
【0058】
図4は、以下で説明する本発明にしたがったスクレーパ層板3cの角度関係を示す。
図4に示すスクレーパ層板3cにおけるセグメントの端部は、半径方向から逸脱するようにカットされる。具体的には、
図4に示すセグメントの端部は、そのセグメントの内周のところで且つそのセグメントの端点のところに適用される接線Tと断面積Sとの間に形成される角度ηでカットされる。ここでは、角度αが90°の場合にそのセグメントの外面の拡がりの角度βがαより小さいこととなる。以下では、本発明によるスクレーパ層板3cを維持するために角度ηを決定するための基本概念を説明する。
【0059】
図4に示すセグメントを4つ備えることで構成されるスクレーパ層板3cを用いる場合、動作開始の際に、そのセグメントにおける円弧長bを有する内周は、関連するロッドの外面と接触する。その円弧は、半径rを有する。摩耗が進行する際、スクレーパ層板3cの各セグメントの内面から材料が摩滅する。それ故に、その内面は、円弧長Bを有するように構成されるそのセグメントの外面の方向に移動する。それらセグメントの端面Sが半径方向にカットされている場合、これらの用途では今まで一般的であったように、スクレーパ層板3cにおけるセグメントの内周の摩耗の場合、スクレーパ層板3cとその関連するロッドの外面との間の接触面積の変化が結果として生じる。具体的には、摩耗の際、セグメント毎の接触面積における周方向の拡がり及び円弧長のそれぞれは増大する。その結果、今までのところ、この変化は、スクレーパ層板におけるセグメント間の十分なギャップによって考慮されなければならなかった。
【0060】
しかしながら、そのようなギャップは、潤滑油等のロッドに付着する流体が、軸方向の相対運動によって、スクレーパ層板3cとその関連するロッドとの間を通過する事態を引き起こす。本発明による、スクレーパ層板3cにおけるセグメントが傾斜端を有する構成は、スクレーパ層板3cを形成するセグメント間の間隔を最小限にするよう構成される。さらに、その隙間の寸法の大きな変化は、本発明による構成によって防止され得る。
【0061】
以下では、角度εの定義を詳細に説明する。
【0062】
図4は、
図4に示す幾何学的設計に基づいて、内周における円弧長bの値が外周における円弧長Bの値と等しくなるように、両側において角度αから差し引かれる必要がある角度γを示す。セグメントの外周の拡がりにおける円弧長とセグメントの内周の拡がりにおける円弧長とは、
b=π×2r×α/360°・・・(1)
B=π×2r×β/360°・・・(2)
で導き出される。
【0063】
スクレーパ層板3cの隣接するセグメントの端部が互いに隣接すると仮定すると、4つの層板セグメントの場合、αに対しては値90°が導き出される。半径r=132mm、半径R=142mmという例示的な前提の場合、
β=132×90°/142=83.66°・・・(3)
が導き出される。
【0064】
角度関係は、以下のように表される。
α−2γ=β・・・(4)
その結果、
図4に書き入れられる角度εは、
ε=arctan(Δb/(R−r))=
arctan[(π×2R×γ)/(360°(R−r))]・・・(5)
として導き出される。
【0065】
角度γに関しては、b及びBが同じ値でなければならないという数値例を考慮して、値3.17°が導き出される。その結果、本実施例では、(5)式より、角度εに関して、値38.17°が導き出される。
【0066】
η=90°−ε・・・(6)
という前提に基づいて、4つのセグメントを有するスクレーパ層板3cに関して値51.9°が導き出される。なお、スクレーパ層板3cでは、動作開始の際にセグメントの端部が互いに隣接し、且つ、摩耗した場合に内周のところで円弧長B及びbの値が等しくなるように維持され、その角度は、スクレーパ層板3cでの理想的な同心摩耗の前提で算出されるため、η
konzと称される。
【0067】
本実施例では、セグメントの内周で且つその端部に適用される接線Tと傾斜端面Sとの間で測定される角度η=η
konz=51.9°が導き出される。角度η=51.9°でセグメントの端部が面取りされるよう構成される4つのセグメントを有するスクレーパ層板が挿入されるスクレーパリングは、動作中、特に、スクレーパ層板3cのセグメントの内周面の摩耗の際に、スクレーパ層板の内周面の周方向の拡がりを一定に維持するという結果をもたらす。このようにして、セグメント間の過度に大きなギャップが回避され、それによって、区切られるべき2つの空間の間の、擦り取るべき流体の通過が最小限に抑制され得る。
【0068】
本実施例は、スクレーパ層板3cが4つのセグメントで構成され、特定の内径及び外径を前提とする一例として説明された。この例は、単に、セグメントの端部が面取り設計を有するスクレーパ層板3cの機能を説明するのに役立つものにすぎない。特に、r及びRの値は、本発明を理解する上で重要ではなく、説明を完全なものとするのに役立つにすぎない。
【0069】
以下では、特に本発明の効果をさらに改善する、本発明の有利的な別の改良点を表す第2実施例の変形例について説明する。
【0070】
実施例に示すスクレーパ層板3cは、4つのセグメントを有する。しかしながら、スクレーパ層板3cは、2つのセグメント、3つのセグメント、又は5つ以上のセグメントを有するように設計されてもよい。さらに、それらセグメントで構成されるスクレーパ層板の内径及び外径は、その用途に適合され得る。
【0071】
本発明の基本概念によると、スクレーパ層板3cは、周方向における層板中断部によって形成される多くのセグメントで構成され、層板中断部を区切るスクレーパ層板3cにおけるそれらセグメントの端面Sは、摩耗によって引き起こされるスクレーパ層板3cの擦り面の変化を少なくとも部分的に補うために、スクレーパ層板3cの半径方向に関して傾斜するように構成される。
【0072】
本発明の基本概念によると、スクレーパ層板3cのセグメントの端面Sと、スクレーパ層板3cの内周に位置し、且つ、セグメントの端部に位置する点に適用される接線Tとの間にある角度ηは、η=η
konzに関する前述の考慮により定められる。
【0073】
この計算は、3つ以下或いは5つ以上のセグメント、例えば20個のセグメント、さらには20個より多いセグメントで構成されるスクレーパ層板に関しても同様に利用可能である。
【0074】
図5を参照して第2実施例の特に有利的な変形例について説明する。
図5は、どのような幾何学的関係がスクレーパ層板3cの偏摩耗をもたらすかを概略的に示す。この主旨のため、
図5には、スクレーパ層板の中心を根幹とする最大偏摩滅が書き込まれている。
【0075】
角度η
konzの定義は、上述から分かるように、同心摩耗に基づく。しかしながら、実際には、理論的に想定された同心摩耗とは違い、スクレーパ層板3cの内周では、偏摩耗が生じる。
【0076】
以下では、上述の偏摩耗の事実を考慮に入れた
図5と、
図3a、
図3b、及び
図4とを参照して、第2実施例の特に有利的な変形例について説明する。
【0077】
図3a、
図3b、及び
図4に示す例によって、スクレーパ層板3cにおけるセグメントの同心で均一な摩耗を考慮に入れるために、角度η=η
konz=51.9°が、4つのセグメントで構成されるスクレーパ層板3cに関して最適であることを説明した。このようにして、それらセグメントの内周面の周方向の拡がり及び円弧長b、Bは、想定される同心摩耗によって一定に維持される。
【0078】
第2実施例のさらなる改良点は、偏摩耗の場合には
図5に示すようにスクレーパ層板3cの内周における曲率が外周における曲率と一致しないため、実際に考慮される偏摩耗が、スクレーパ層板3cの機能を最適化するための根拠として別の角度を採用しなければならないという前提に基づく。実際には、結果としての幾何学的形状は、同心摩耗から導き出されるものと、
図5に示す最大偏摩滅から導き出されるものとの間のものとなり得る。この文脈において、発明者らは、偏摩耗を考慮に入れる場合に、スクレーパ層板3cで形成される角度ηが補正されなければならないことを見出した。4つのセグメントで構成されるスクレーパ層板の例では、角度η=η
konz=51.9°が導き出されたが、発明者らは、スクレーパ層板の偏摩耗のために、η=45°で最良の機能が提供され得ることを確認した。これより、同心摩耗から導き出される理論的に計算可能な角度η
konzがスクレーパ層板の機能を改善するために補正され得ることが理解され得る。この考慮に基づき、第2実施例のこの展開にしたがって、補正係数kがもたらされ、それにより、スクレーパ層板の最大可能偏摩耗を考慮に入れる補正後の角度η
exが得られるように、角度η
konzが掛け算されなければならない。
【0079】
4つのセグメントを有するスクレーパ層板の場合の補正係数kは0.868であり、この文脈では、スクレーパ層板3cの極端な偏摩耗が、基礎として採用される。スクレーパ層板の最適化に関するさらなる考慮は、補正係数kが常に1未満であるという事実をもたらした。以下の表1は、セグメントの数に対応する補正係数kに関して分かったことの結果を示す。セグメントの数、それから導き出される角度α及びβは、スクレーパ層板における同心摩耗から導き出されるη
konzの値と比較される。さらに、補正係数k及びその結果としての補正後の値η
exを提示する。
【0080】
【表1】
スクレーパ層板3cを構成するセグメントの数が多い場合、補正係数kが値1に近いことが表から見て取れる。さらに、セグメントの数が2の場合、補正係数kが0であり、そのため、補正後の角度η
exが0°であることが分かる。本発明によると、偏摩耗のために、端面Sがスクレーパ層板3cの内周に関して接線方向に延びるように、補正後の角度η
exとして0°が導き出される。
【0081】
その結果、
η
ex=η
konz・k・・・(7)
が導き出される。
【0082】
設定された補正係数kが最大偏摩耗の限度を表し、また、実際には、上述の表で与えられるkの値と1との間の値が、本発明による有利な効果を達成するために選択され得る。これにより、偏摩耗に関するスクレーパ層板の機能が最適化される値の幅が導き出される。言い換えれば、本発明によると、以下の式が適用可能なスクレーパ層板が有利的である。
η
ex≦η≦η
konz・・・(8)
【実施例4】
【0087】
第1実施例及び第3実施例に記載されたスクレーパリング、並びに、第2実施例に記載されたスクレーパ層板は、例えば、内燃機関に搭載されるグランドパッキンで使用され得る。
【0088】
図6は、本発明にしたがったグランドパッキン10を含むクロスヘッドの領域における、内燃機関の断面図を示す。
図6は、クランクケース30及びエア受け入れ空間40を示す。クランクケース30とエア受け入れ空間40とを分離するために、グランド10がパーティション内に備えられる。グランド10は、内燃機関のピストンロッド20の周りに同軸に配置される。ピストンロッド20は、例えばクロスヘッド装置を通じて、内燃機関のクランクシャフトに接続される。ピストンロッド20は、内燃機関の動作中、グランド10に関して軸方向に移動する。
【0089】
グランドパッキン10では、クランクケース30の領域においてピストンロッド20に適用される、ピストンロッド20に付着する潤滑油を擦り取るために、また、それをクランクケース30に戻すために、複数の、例えば4つのスクレーパリング1が軸方向に連続的に配置される。これは、エア受け入れ空間40の領域におけるピストンロッド20のところで、ピストンロッド20に付着する潤滑油の量が最小限に抑制され、また同時に、エア受け入れ空間40からクランクケース30への通過領域における汚染が最小限に抑制され得ることを伴う。
【0090】
グランド10に挿入されるスクレーパリングは、第1実施例にしたがって設計され得る。スクレーパリング1、1aのキャリアリング2を形成するセグメント間にある中断部Aの領域における面取部の詳細な構成により、ピストンロッドに付着する潤滑油の通過が、軸方向に間隔を空けて配置される2つのスクレーパ層板3a、3bを用いて、最小限に抑制され得るようにするためである。
【0091】
この機能は、第2実施例ではスクレーパ層板3d、3eとして記載され且つ称される、2つのスクレーパ層板3cを利用するキャリアリング2を備えるスクレーパリングによってさらに改善され得る。
【0092】
最適化された解決策では、第4実施例のグランド10は、キャリアリング2のセグメント間の中断部の最適設計、及び、スクレーパ層板3d、3eにおける複数のセグメントの端部の設計の双方が採用される第3実施例で定められるようなスクレーパリングを含む。
【0093】
本発明は、前述の実施例に限定されることはない。具体的には、本発明の、内燃機関のためのグランドパッキンへの適用は単なる一例であり、本発明は、その効果を、スクレーパリングによって2つの空間が分離されなければならない全ての用途に広げる。それらの用途では、そのスクレーパリングに関連付けられるロッドは、その関連するロッドとそのスクレーパリングとの間の相対運動の際に、そのスクレーパリングによって擦られる。
【0094】
実施例に記載されたグランドパッキンのためのスクレーパ層板の数、セグメントの数、又は、スクレーパリングの数は、単なる例示であり、用途に応じて変更され得る。