【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような従来の技術では、操作レバーを操作する際に、トラニオンピン110の貫通孔111の端部に当たるアジャストボルト120のねじ部121、すなわち
図11に矢印Aで示した部分に応力集中が発生する。これは、パーキングブレーキの操作レバーを操作すると、操作レバーに設けた出力リンクが揺動し、その際、出力リンクとトラニオンピン110との間で相対的に揺動運動が起こるため、出力リンクとトラニオンピン110との摩擦抵抗により、ねじ部に曲げモーメントが発生することによる。
【0006】
このため、操作レバーの操作が繰り返される度に応力集中が発生して、当該部分から破損し、折損に至ることも有り得るという問題点があった。
【0007】
この問題点を解決するための対策として従来は
図14に示したようにナット140とトラニオンピン110との間に全長の長いカラー150Aを介装し、トラニオンピン110の貫通孔111の端部にアジャストボルト120のねじ部121が掛からないようにしていた。これは、トラニオンピン110の貫通孔111の端部が径の小さいねじ部121に当たらないようにして応力集中によるアジャストボルト120の破損を防止しようとするものである。
【0008】
しかしながら、このような対策ではナット140が螺合されたアジャストボルト120のねじ部121の先端からトラニオンピン110までの全長が長くなる。このため、レイアウト上に不都合が生じ易いという問題が有った。
【0009】
また、他には、ねじ部のサイズを大きくするという対策もある。これは、ねじ部の径を大きくすることによってねじ部の強度を上げて、応力集中による破損を防止しようとするものである。しかしながら、この場合にはトラニオンピンやアジャストボルトを新たな規格のものとすることに成るので、コストが上昇するという問題点が有る。
【0010】
本発明は、このような従来の技術が有する問題点に着目してなされたもので、従来のアジャストボルトを破損することなく使用でき、かつ、アジャストボルトの突出によるレイアウト上の支障が生じない連結手段および該連結手段に用いる筒状体を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
かかる目的を達成するための本発明の要旨とするところは、次の各項の発明に存する。
[1]先端側にねじ部(13a)を形成したアジャストボルト(13)をトラニオンピン(11)の貫通孔(11a)に挿通させ、前記ねじ部(13a)にはナット(N)を螺合させ、前記先端側とは反対側の基端部(13b)に他の部材を連結する連結手段(10)において、
前記トラニオンピン(11)の貫通孔(11a)を貫通し、内側に前記アジャストボルト(13)が挿通される筒状体(12,12A,20,30,40)を有し、
前記筒状体(12,12A,20,30,40)は、前記トラニオンピン(11)に挿通した前記アジャストボルト(13)のねじ部(13a)のうち前記トラニオンピン(11)よりも前記基端部(13b)寄りに
前記トラニオンピン(11)から露出する部分を覆う全長を有すると共に前記トラニオンピン(11)の貫通孔(11a)からの抜けを防止する抜け防止手段を有することを特徴とする連結手段(10)。
【0012】
[2]前記筒状体(12,12A)の抜け防止手段は、前記ナット(N)を螺合させる前記アジャストボルト(13)のねじ部(13a)が露出する側の端部に設けた鍔(12a)であることを特徴とする項[1]に記載の連結手段(10)。
【0013】
[3]前記筒状体(20)の抜け防止手段は、前記ナット(N)を螺合させる前記アジャストボルト(13)のねじ部(13a)が露出する側を前記トラニオンピン(11)の貫通孔(11a)から抜け落ちない大きさで、かつ、前記トラニオンピン(11)と前記ナット(N)との間で延長したカラー部(22)であることを特徴とする項[1]に記載の連結手段(10)。
【0014】
[4]前記筒状体(30)は、径を小さくなるように絞ると径が元に戻るように広がるばね鋼を筒状に曲げたものであり、絞った径が元に戻るように広がる復元力を前記抜け防止手段としたことを特徴とする項[1]に記載の連結手段(10)。
【0015】
[5]前記筒状体(40)は、前記トラニオンピン(11)の貫通孔(11a)を貫通する円筒部(41)と、該円筒部(41)から延びる、内部横断面が角形状であり、前記貫通孔を貫通しない不貫通部(42)とを有し、
前記アジャストボルト(13)は、前記不貫通部(42)内での回転を防止する形状の回転防止部を有するものであり、
前記貫通孔(11a)を貫通した前記円筒部(41)の端部を拡径してかしめることによって前記トラニオンピン(11)からの前記筒状体(12)の抜けを防止するかしめ部を前記抜け防止手段として有することを特徴とする項[1]に記載の連結手段(10)。
【0016】
[6]前記項[1]から項[5]の何れか一項に記載の連結手段(10)に用いる筒状体(12,12A,20,30,40)。
【0017】
前記本発明は次のように作用する。
項[1]に係る連結手段(10)によれば、該連結手段(10)は、トラニオンピン(11)の貫通孔(11a)に筒状体(12,12A,20,30,40)を貫通させておく。筒状体(12,12A,20,30,40)は、抜け防止手段を有しているので、トラニオンピン(11)の貫通孔(11a)から抜けてしまうことが防止されている。
【0018】
この筒状体(12,12A,20,30,40)には、ねじ部(13a)を形成したアジャストボルト(13)の先端側を挿通させる。挿通させて筒状体(12,12A,20,30,40)の一端から露出させたアジャストボルト(13)のねじ部(13a)にナット(N)を螺合させ、一方、基端部(13b)には例えばイコライザー(E)を取り付けて該イコライザー(E)にブレーキケーブルを連結する。
【0019】
このようにしてトラニオンピン(11)に挿通したアジャストボルト(13)のねじ部(13a)のうちトラニオンピン(11)よりも基端部(13b)寄りに
トラニオンピン(11)から露出する部分は、筒状体(12,12A,20,30,40)に覆われている。したがって、ねじ部(13a)は、トラニオンピン(11)の貫通孔(11a)の端部に当接することがないので貫通孔(11a)の端部からの応力集中がない。このため、貫通孔(11a)の端部からの応力集中によるアジャストボルト(13)の破損を防止することができる。
【0020】
項[2]に係る連結手段(10)によれば、筒状体(12,12A)は、ナット(N)を螺合させるアジャストボルト(13)のねじ部(13a)が露出する側の端部に設けた鍔(12a)を抜け防止手段としているので、トラニオンピン(11)の貫通孔(11a)に挿入した後、鍔(12a)の無い端部側からアジャストボルト(13)のねじ部(13a)を挿通し、鍔(12a)から先に露出したねじ部(13a)にナット(N)を螺合させればよい。これにより、筒状体(12,12A)がトラニオンピン(11)から抜けてしまうことがない。
【0021】
項[3]に係る連結手段(10)によれば、筒状体(20)は、ナット(N)を螺合させるアジャストボルト(13)のねじ部(13a)が露出する側を延長して全長を長くし、かつこの延長した部分をトラニオンピン(11)の貫通孔(11a)から抜け落ちない大きさのカラー部(22)とし、このカラー部(22)を抜け防止手段としている。これにより、筒状体(20)がトラニオンピン(11)から抜けてしまうことがない。
【0022】
項[4]に係る連結手段(10)によれば、筒状体(30)は、径を小さくなるように絞ると径が元に戻るように広がるばね鋼を筒状に曲げたものであり、絞った径が元に戻るように広がる復元力を抜け防止手段としたので、ナット(N)を螺合させるアジャストボルト(13)のねじ部(13a)が露出する側の端部に鍔を設ける必要が無く、極めて簡易な構成とすることができる。なお、この筒状体(30)は、何によっても拘束されることのない状態に放置したとき、その外径が筒状体(30)の内径よりも大きくなるものである。
【0023】
項[5]に係る連結手段(10)によれば、筒状体(40)は、トラニオンピン(11)の貫通孔(11a)を貫通する円筒部(41)と、この円筒部(41)から延びる、内部横断面が角形状であり、貫通孔を貫通しない不貫通部(42)とを有しており、アジャストボルト(13)は、回転防止部により不貫通部(42)の内部で回転不能となる。また、筒状体(40)は、トラニオンピン(11)の貫通孔(11a)を貫通した円筒部(41)の端部を拡径してかしめることによってトラニオンピン(11)からの筒状体(40)の抜けを防止することができる。
【0024】
項[6]に係る筒状体(12,12A,20,30,40)によれば、アジャストボルト(13)のねじ部(13a)がトラニオンピン(11)の貫通孔(11a)の端部に当接することなく、したがって貫通孔(11a)の端部からの応力集中が発生しないので、折損などの破損を防止することができる。