特許第6113472号(P6113472)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6113472
(24)【登録日】2017年3月24日
(45)【発行日】2017年4月12日
(54)【発明の名称】複合発電システム及びその運転方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/04 20160101AFI20170403BHJP
   H01M 8/00 20160101ALI20170403BHJP
   H01M 8/04225 20160101ALI20170403BHJP
   H01M 8/04302 20160101ALI20170403BHJP
   F02C 6/00 20060101ALI20170403BHJP
   F02C 3/22 20060101ALI20170403BHJP
   F02C 9/28 20060101ALI20170403BHJP
   F02C 7/26 20060101ALI20170403BHJP
   F01K 23/02 20060101ALI20170403BHJP
   H01M 8/12 20160101ALN20170403BHJP
【FI】
   H01M8/04 J
   H01M8/00 Z
   H01M8/04 X
   F02C6/00 E
   F02C3/22
   F02C9/28 C
   F02C7/26 D
   F01K23/02 Z
   !H01M8/12
【請求項の数】5
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-265592(P2012-265592)
(22)【出願日】2012年12月4日
(65)【公開番号】特開2014-110227(P2014-110227A)
(43)【公開日】2014年6月12日
【審査請求日】2015年10月6日
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成20年度〜平成22年度 独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「固体酸化物形燃料電池システム要素技術開発実用性向上のための技術開発 超効率運転のための高圧運転技術」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願)
(73)【特許権者】
【識別番号】514030104
【氏名又は名称】三菱日立パワーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100118913
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 邦生
(72)【発明者】
【氏名】寺本 雄一
(72)【発明者】
【氏名】永井 卓磨
(72)【発明者】
【氏名】西浦 雅則
【審査官】 清水 康
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−205932(JP,A)
【文献】 特開2008−311140(JP,A)
【文献】 特開2012−195173(JP,A)
【文献】 特開2000−123846(JP,A)
【文献】 特開平11−273701(JP,A)
【文献】 特開2008−251247(JP,A)
【文献】 特開昭62−055423(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/00 − 8/24
F01K 23/02
F02C 3/22
F02C 6/00
F02C 7/26
F02C 9/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池と内燃機関を組み合わせた連携運転を行って発電し、前記内燃機関を起動してから前記燃料電池との連携運転に移行する連携移行運転モードを備えた複合発電システムであって、
前記燃料電池から前記内燃機関の燃焼器へ排燃料ガスを供給するとともに、上流側から順に設置された排燃料ガス開閉弁及び排燃料ガス流量調整弁を有する排燃料ガス供給ラインと、
前記内燃機関から前記燃料電池へ圧縮した酸化性ガスを供給するとともに、酸化性ガス流量調整弁を有する酸化性ガス供給系と、
前記酸化性ガス流量調整弁の上流で前記酸化性ガス供給系から分岐するとともに起動用開閉弁を有し、前記内燃機関の起動時に前記燃焼器へ前記酸化性ガスを供給する起動用酸化性ガス供給ラインと、
前記酸化性ガス流量調整弁の上流で前記酸化性ガス供給系から分岐し、下流端が前記排燃料ガス供給ラインの途中位置に接続されるとともに、前記燃焼器から前記排燃料ガス供給ラインへの逆流を防止する逆流防止開閉弁を有し、前記内燃機関の起動時には前記連携移行運転モードに用いる、前記排燃料ガス供給ラインを介して前記燃焼器へ前記酸化性ガスを供給する燃料ガス逆流防止ラインと、
を具備して構成したことを特徴とする複合発電システム。
【請求項2】
前記燃料ガス逆流防止ラインの下流端は、前記排燃料ガス開閉弁と前記排燃料ガス流量調整弁との間に接続されることを特徴とする請求項1に記載の複合発電システム。
【請求項3】
前記連携移行運転モードでは、前記酸化性ガス流量調整弁及び前記排燃料ガス開閉弁が全閉とされ、前記排燃料ガス流量調整弁及び前記逆流防止開閉弁が開かれることを特徴とする請求項に記載の複合発電システム。
【請求項4】
燃料電池から内燃機関の燃焼器へ排燃料ガスを供給するとともに、上流側から順に設置された排燃料ガス開閉弁及び排燃料ガス流量調整弁を有する排燃料ガス供給ラインと、
前記内燃機関から前記燃料電池へ圧縮した酸化性ガスを供給するとともに、酸化性ガス流量調整弁を有する酸化性ガス供給系と、
前記酸化性ガス流量調整弁の上流で前記酸化性ガス供給系から分岐するとともに起動用開閉弁を有し、前記内燃機関の起動時に前記燃焼器へ前記酸化性ガスを供給する起動用酸化性ガス供給ラインと、
前記酸化性ガス流量調整弁の上流で前記酸化性ガス供給系から分岐し、下流端が前記排燃料ガス供給ラインの途中位置に接続されるとともに、前記燃焼器から前記排燃料ガス供給ラインへの逆流を防止する逆流防止開閉弁を有し、前記内燃機関の起動時に前記排燃料ガス供給ラインを介して前記燃焼器へ前記酸化性ガスを供給する燃料ガス逆流防止ラインとを備え、通常運転時に燃料電池及び内燃機関を組み合わせた連携運転を行って発電する複合発電システムが、
前記内燃機関を起動してから前記燃料電池との連携運転に移行する連携移行運転モードで、前記燃料ガス逆流防止ラインに前記酸化性ガスを供給しながら前記内燃機関を起動した後、前記燃料電池との連携運転に移行することを特徴とする複合発電システムの運転方法。
【請求項5】
前記燃料ガス逆流防止ラインの下流端は、前記排燃料ガス開閉弁と前記排燃料ガス流量調整弁との間に接続され、
前記連携移行運転モードでは、前記酸化性ガス流量調整弁及び前記排燃料ガス開閉弁を全閉とし、かつ、前記排燃料ガス流量調整弁及び前記逆流防止開閉弁を開いた状態にすることを特徴とする請求項4に記載の複合発電システムの運転方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば高温型燃料電池等の燃料電池と内燃機関であるガスタービン、マイクロガスタービンやガスエンジンとを組み合わせた複合発電システム及びその運転方法に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池は、電気化学反応による発電方式を利用した発電装置であり、優れた発電効率及び環境対応等の特性を有している。このため、21世紀を担う都市型のエネルギー供給システムとして、実用化に向けた研究開発が進んでいる。
このような燃料電池は、燃料側の電極である燃料極と、空気(酸化剤)側の電極である空気極と、これらの間にありイオンのみを通す電解質とにより構成されており、電解質の種類によって様々な形式が開発されている。
【0003】
このうち、固体酸化物形燃料電池(Solid Oxide Fuel Cell:以下「SOFC」と呼ぶ)は、電解質としてジルコニアセラミックスなどのセラミックスが用いられ、都市ガス、天然ガス、石油、メタノール、石炭ガス化ガスなどを燃料として運転される燃料電池である。このSOFCは、イオン伝導率を高めるために作動温度が約700〜1000℃程度と高く、用途の広い高効率な高温型燃料電池として知られている。
このようなSOFCにおいては、発電停止に伴う空気極の還元や燃料極の酸化による劣化を防止するため、SOFCの運転停止後には、燃料極側に窒素等の不活性ガスを通ガスさせて燃料電池を保護することが行われている。
【0004】
このようなSOFCは、例えばマイクロガスタービン(以下、「MGT」と呼ぶ)等の内燃機関と組み合わせて複合発電システムを構築することにより、発電効率の高い発電が可能となる。このような複合発電システムについては、下記に示すような従来技術が知られている。
例えば下記の特許文献1には、燃料電池モジュールにおける燃料ガスと酸化性ガス(酸化剤)との差圧を低く抑えながら、燃料電池モジュールから排出される燃料ガス及び酸化性ガスの差圧に関する制御性を高め、その差圧がガスタービン燃焼器の着火安定性や完全燃焼に最適な範囲となるように制御する技術が開示されている。
また、下記の特許文献2には、ガスタービン燃焼器に燃料電池の排燃料を効果的に押し込めるため、排燃料ガス流路に昇圧ブロワを設けて排燃料ガスの圧力を制御することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4146411号公報
【特許文献2】特開2009−205930号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の複合発電システム、例えば上述したSOFCとMGTとを組み合わせて構成される複合発電システムにおいては、ガスタービン燃焼器に対して、SOFCを通過して発電に用いられた後の燃料ガス(排燃料ガス)及び酸化性ガス(排酸化性ガス)や、SOFCを通過しない未使用の燃料ガスを供給可能とするため、合計3つのガス供給ラインが接続されている。
このような複合発電システムでは、連携前後におけるガスタービン燃焼器の燃焼を安定させるため、SOFCとMGTとが連携した運転を行って発電するコンバインド状態の前後において、ガスタービン燃焼器に対して上述した3つのラインの全てからガスを供給することが必要である。
【0007】
しかし、SOFCとの連携運転前にMGTを起動する場合、上述した3つのガス供給ラインのうち、排燃料ガス供給ラインにおいては、連携前のSOFCから排燃料ガスの供給を受けられない。従って、従来の排燃料ガス供給ラインでは、連携運転前に燃焼器から燃料ガスが逆流することを防止するため、通常運転時に流す排燃料ガスに代えて、例えばSOFCの運転停止後に燃料電池を保護するために使用されている窒素ガス等の不活性ガスを導入することが行われている。
なお、排酸化性ガス供給ラインから供給される排酸化性ガスは、本来がMGTの圧縮機から供給される圧縮空気であるからSOFC停止時でも容易に導入可能であり、さらに、残る未使用の燃料ガス供給ラインについても、SOFCの運転とは関係なく燃料ガスを容易に導入可能である。
【0008】
ところで、上述した排燃料ガス供給ラインについては、適所に設けた開閉弁を閉じて燃料ガスの逆流を防止することも考えられる。しかし、連携運転開始時に排燃料ガスを供給するため上記の開閉弁を開くと、圧力の高い燃焼器側から燃料ガスが流出する逆流を生じる可能性があるので、燃焼器の火炎が失火に至ることも考えられるため好ましくない。
また、SOFCとの連携運転前にMGTを起動する場合の供給ガスとしては、従来の不活性ガスに代えて圧縮空気を導入することも考えられる。しかし、従来の差圧制御では、すなわち排燃料ガス供給ラインに設置した流量制御弁による開度制御(差圧制御)では、燃焼器内に排燃料ガスを押し込むことができないという問題を有している。
【0009】
このように、従来の複合発電システムは、コンバインド状態において、燃焼器の圧力が高くなると排燃料ガスが逆流し、SOFC及びMGTのコンバインドによる運転を継続できない可能性がある。
また、上記の特許文献1及び2に開示された構成は、圧力制御調整弁により配管内の圧力を調整するものであるが、流量制御弁としての制御が開示されておらず、従って、高効率な運転は難しい。
【0010】
このような背景から、SOFCとの連携運転前にMGTを起動する場合においては、燃焼器から燃料ガスが逆流することを防止して安全かつ確実に起動できる複合発電システム及びその運転方法が求められている。
本発明は、上記の課題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、SOFCと連携運転を開始する前のMGT起動時において、燃焼器から燃料ガスが逆流することを防止して安全かつ確実に起動できる複合発電システム及びその運転方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上記の課題を解決するため、下記の手段を採用した。
本発明に係る複合発電システムは、燃料電池と内燃機関を組み合わせた連携運転を行って発電し、前記内燃機関を起動してから前記燃料電池との連携運転に移行する連携移行運転モードを備えた複合発電システムであって、前記燃料電池から前記内燃機関の燃焼器へ排燃料ガスを供給するとともに、上流側から順に設置された排燃料ガス開閉弁及び排燃料ガス流量調整弁を有する排燃料ガス供給ラインと、前記内燃機関から前記燃料電池へ圧縮した酸化性ガスを供給するとともに、酸化性ガス流量調整弁を有する酸化性ガス供給系と、前記酸化性ガス流量調整弁の上流で前記酸化性ガス供給系から分岐するとともに起動用開閉弁を有し、前記内燃機関の起動時に前記燃焼器へ前記酸化性ガスを供給する起動用酸化性ガス供給ラインと、前記酸化性ガス流量調整弁の上流で前記酸化性ガス供給系から分岐し、下流端が前記排燃料ガス供給ラインの途中位置に接続されるとともに、前記燃焼器から前記排燃料ガス供給ラインへの逆流を防止する逆流防止開閉弁を有し、前記内燃機関の起動時には前記連携移行運転モードに用いる、前記排燃料ガス供給ラインを介して前記燃焼器へ前記酸化性ガスを供給する燃料ガス逆流防止ラインと、を具備して構成したことを特徴とするものである。
【0012】
このような複合発電システムによれば、内燃機関の起動時に排燃料ガス供給ラインを介して燃焼器へ酸化性ガスを供給する燃料ガス逆流防止ラインを備えているので、内燃機関を起動してから燃料電池との連携運転に移行する連携移行運転モードにおいては、排燃料ガス供給ラインに内燃機関から圧縮して供給される酸化性ガスを導入し、この酸化性ガスを燃焼器に供給することにより、燃料電池が停止した状態で内燃機関を起動する時には、燃料ガスの逆流を防止することが可能になる。
また、本発明に係る複合発電システムは、前記燃料ガス逆流防止ラインの下流端は、前記排燃料ガス開閉弁と前記排燃料ガス流量調整弁との間に接続されでもよい。そして、前記連携移行運転モードでは、前記酸化性ガス流量調整弁及び前記排燃料ガス開閉弁が全閉とされ、前記排燃料ガス流量調整弁及び前記逆流防止開閉弁が開かれた状態としてもよい
【0013】
本発明に係る複合発電システムの運転方法は、燃料電池から内燃機関の燃焼器へ排燃料ガスを供給するとともに、上流側から順に設置された排燃料ガス開閉弁及び排燃料ガス流量調整弁を有する排燃料ガス供給ラインと、前記内燃機関から前記燃料電池へ圧縮した酸化性ガスを供給するとともに、酸化性ガス流量調整弁を有する酸化性ガス供給系と、前記酸化性ガス流量調整弁の上流で前記酸化性ガス供給系から分岐するとともに起動用開閉弁を有し、前記内燃機関の起動時に前記燃焼器へ前記酸化性ガスを供給する起動用酸化性ガス供給ラインと、前記酸化性ガス流量調整弁の上流で前記酸化性ガス供給系から分岐、下流端が前記排燃料ガス供給ラインの途中位置に接続されるとともに、前記燃焼器から前記排燃料ガス供給ラインへの逆流を防止する逆流防止開閉弁を有し、前記内燃機関の起動時に前記排燃料ガス供給ラインを介して前記燃焼器へ前記酸化性ガスを供給する燃料ガス逆流防止ラインとを備え、通常運転時に燃料電池及び内燃機関を組み合わせた連携運転を行って発電する複合発電システムが、前記内燃機関を起動してから前記燃料電池との連携運転に移行する連携移行運転モードで、前記燃料ガス逆流防止ラインに前記酸化性ガスを供給しながら前記内燃機関を起動した後、前記燃料電池との連携運転に移行することを特徴とするものである。
また、本発明に係る複合発電システムの運転方法は、前記燃料ガス逆流防止ラインの下流端は、前記排燃料ガス開閉弁と前記排燃料ガス流量調整弁との間に接続され、前記連携移行運転モードでは、前記酸化性ガス流量調整弁及び前記排燃料ガス開閉弁を全閉とし、かつ、前記排燃料ガス流量調整弁及び前記逆流防止開閉弁を開いた状態にしてもよい。
【0014】
このような複合発電システムの運転方法によれば、内燃機関を起動してから燃料電池との連携運転に移行する連携移行運転モードにおいて、酸化性ガス流量調整弁及び排燃料ガス開閉弁を全閉とし、かつ、排燃料ガス流量調整弁及び逆流防止開閉弁を開いた状態にして、燃料ガス逆流防止ラインに圧縮された状態の酸化性ガスを供給しながら内燃機関を起動した後、燃料電池との連携運転に移行するので、燃料電池を停止状態にしても、燃焼器から燃料ガスが流出する逆流を防止した内燃機関の起動が可能となる。
【発明の効果】
【0015】
上述した本発明の複合発電システム及びその運転方法によれば、運転停止状態にある燃料電池(SOFC)との連携運転前に内燃機関(MGT)を起動する場合でも、燃焼器に排燃料を供給するラインから圧縮された酸化性ガスを供給することで、燃焼器から燃料ガスが逆流することを防止して安全かつ確実に内燃機関を起動することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明に係る複合発電システム及びその運転方法に関する一実施形態を示す系統図である。
図2図1に示した複合発電システムを構成する固体酸化物形燃料電池(SOFC)について、カートリッジ周辺を拡大した系統図である。
図3図1に示した複合発電システムを構成する内燃機関(マイクロガスタービン)周辺を拡大した系統図である。
図4】固体酸化物形燃料電池(SOFC)について、カートリッジの構造例及び各要素の機能を示す説明図である。
図5】連携運転移行モードにおけるSOFC運転開始の制御過程を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る複合発電システム及びその運転方法について、その一実施形態を図面に基づいて説明する。
図1に示す複合発電システム(燃料電池及び内燃機関による発電システム)1は、高温型の燃料電池であるSOFC10と、内燃機関であるガスタービンやガスエンジンの一例としてマイクロガスタービン(以下、「MGT」と呼ぶ)50とを組み合わせることにより、効率のよい発電を行うものである。
【0018】
すなわち、都市ガス(天然ガス)等を改質した燃料ガス及び空気等の酸化性ガスの供給を受けて電解質を介した電気化学反応により発電するSOFC10に加えて、SOFC10から発電後に排出される高温の排燃料や排出空気を導入してMGT50を運転し、MGT50の出力軸に連結された不図示の発電機を駆動して発電を行うものである。
さらに、MGT50から排出される高温の燃焼排ガスを排熱回収ボイラに導入すれば、蒸気タービンによる発電も組み合わせた複合発電システムの構築も可能である。
【0019】
以下では、上述したSOFC10を採用した複合発電システム1について説明する。このSOFC10は、電解質としてジルコニアセラミックスなどのセラミックスを用い、都市ガス、天然ガス、石油、メタノール、石炭ガス化ガスなどを燃料として運転(発電)するものであり、イオン伝導率を高めるため、作動温度が約700〜1000℃程度と高く設定されている。
【0020】
SOFCカートリッジ11は、図4に示す通り、複数のセルスタック12と、発電室13と、燃料ガス供給室14と、燃料ガス排出室15と、酸化性ガス供給室16と、酸化性ガス排出室17とを有する。また、SOFCカートリッジ11は、上部管板18aと、下部管板18bと、上部断熱体19aと、下部断熱体19bとを有する。
本実施形態のSOFCカートリッジ11は、燃料ガス供給室14と燃料ガス排出室15と酸化性ガス供給室16と酸化性ガス排出室17とが図示のように配置されることで、燃料ガスと酸化性ガスとがセルスタック12の内側と外側とを対向して流れる構造となっている。しかし、必ずしもこの配置や構成に限定されることはなく、例えば、セルスタックの内側と外側とを平行して流れる、または、酸化性ガスがセルスタックの長手方向と直交する方向へ流れるようにしてもよい。
【0021】
また、上述した酸化性ガスは、15〜30%程度の酸素を含むガスのことであり、代表的には空気が好適である。しかし、空気以外にも、燃焼排ガスと空気との混合ガスや、酸素と空気の混合ガス等が使用可能である。
以下の説明では、燃料として都市ガスをSOFC10の外部または内部で改質して使用し、酸化性ガスとして空気を使用する場合について説明するが、この場合の空気は、MGT50から供給される圧縮空気となる。
【0022】
MGT50は、例えば図3に示すように、圧縮機51と、燃焼器52と、タービン53とを備えている。なお、図中の符号54はフィルタ、55は再生熱交換器である。
圧縮機51は、フィルタ54を介して導入した大気(空気)を圧縮するもので、この場合の駆動源はタービン53となる。圧縮機51で圧縮された圧縮空気は、燃焼器52や再生熱交換器55を介してSOFC等へ供給される。
燃焼器52は、圧縮空気の供給を受けて燃料の都市ガスを燃焼させ、高温高圧の燃焼排ガスを生成してタービン53へ供給する。この燃焼器52には、後述する排燃料ガス供給ライン27cと、起動用酸化性ガス供給ライン76に接続されている酸化性ガス排出系72と、未使用の都市ガス(燃料ガス)を供給する燃料ガス供給系統40とが接続されている。
【0023】
タービン53は、燃焼排ガスのエネルギーにより回転して軸出力を発生し、この軸出力を利用して圧縮機51及び図示しない発電機が駆動される。
タービン53で仕事をした燃焼排ガスは、再生熱交換器55で圧縮空気との熱交換により昇温させた後、煙突60から大気へと放出される。
【0024】
さて、図1に示す複合発電システム1は、SOFC10及びMGT50を組み合わせて発電を行うシステムであり、燃料極へ燃料を供給する燃料供給系20及び空気極へ酸化性ガスを供給する酸化性ガス供給系70を備えている。
図示の燃料供給系20には、都市ガス供給弁(開閉弁)21を備えた都市ガス(燃料ガス)供給ライン22と、不活性ガス供給弁(開閉弁)23を備えた窒素ガス供給ライン24と、水蒸気供給弁(開閉弁)25を備えた水蒸気供給ライン26とを備えている。
なお、窒素ガス供給ライン24及び水蒸気供給ライン26は、いずれも都市ガス供給弁21の下流側に接続されている。
【0025】
図示の燃料ガス排出系27は、SOFC10に供給された燃料ガスをMGT50に送給する流路である。この燃料ガス排出系27は、流量調整弁28及び排燃料ブロワ29を有する排燃料ガスライン27aと、排燃料ガスライン27aを経由してSOFC50に排燃料ガスを再循環させる再循環ライン27bと、排燃料ガスライン27aを経由してMGT50と接続する排燃料ガス供給ライン27cと、SOFC50から排燃料ガスを直接煙突60へ導く排燃料ガス大気放出ライン27eとにより構成されている。
【0026】
この燃料ガス排出系27において、再循環ライン27bは、再循環流量調整弁30を介してSOFC10の排燃料ガスを燃料供給系20に戻すための流路であり、排燃料ガス大気放出ライン27eは、開閉弁31を開操作することで排燃料ガスの大気放出を行う流路である。
また、上述した排燃料ガス供給ライン27cには、上流側となるSOFC10側から順に排燃料ガス開閉弁32及び排燃料ガス流量調整弁33が設けられ、排燃料ガス開閉弁32及び排燃料ガス流量調整弁33の間には、排燃料ガスの供給圧力を検出するため圧力センサー34が設けられている。
なお、図中の符号35は再循環ライン27bに設置された圧力センサー、符号36は排燃料ガスライン27aに設置された温度センサーである。
【0027】
図示の酸化性ガス供給系70は、MGT50の圧縮機51で圧縮された圧縮空気をSOFC10の空気極へ供給する流路である。この酸化性ガス供給系70は、再生熱交換器55で熱交換した圧縮空気をSOFC10へ供給するが、再生熱交換器55の下流となる流路途中には酸化性ガス流量調整弁71が設けられている。
また、酸化性ガス排出系72は、SOFC10から排出された酸化性ガスをMGT50に供給する流路であって、SOFC10とMGT50との間を連結する流路には開閉弁73が設けられている。なお、酸化性ガス排出系72は、開閉弁73の上流から分岐して煙突60に至るとともに、流路途中に開閉弁74を設けた排気流路75を備えている。
【0028】
そして、本実施形態の複合発電システム1は、通常運転時にSOFC10及びMGT50を組み合わせた連携運転を行って発電し、MGT50を起動してからSOFC10との連携運転(コンバインド運転)に移行する連携移行運転モードを備えている。また、本実施形態の複合発電システム1は、以下に説明する流路を具備して構成される。
排燃料ガス供給ライン27cは、SOFC10からMGT50の燃焼器52へ排燃料ガスを供給するとともに、上流側から順に設置された排燃料ガス開閉弁32及び排燃料ガス流量調整弁33を有する排燃料の流路である。ここで使用する排燃料ガス開閉弁32は、通常の連携運転時に全開とされ、排燃料ガス流量調整弁33は、運転(発電)状況に応じた開度調整により排燃料供給量を調整する。
【0029】
酸化性ガス供給ライン70は、MGT50からSOFC10へ圧縮した酸化性ガスを供給するとともに、酸化性ガス流量調整弁71を有する酸化性ガスの流路である。ここで使用する酸化性ガス流量調整弁71は、運転(発電)状況に応じた開度調整により酸化性ガス供給量を調整する。
【0030】
起動用酸化性ガス供給ライン76は、酸化性ガス流量調整弁71の上流で酸化性ガス供給系70から分岐するとともに起動用開閉弁77を有し、MGT50の起動時に燃焼器52へ酸化性ガスを供給する流路である。この起動用酸化性ガス供給ライン76は、酸化性ガス排出系72に設けられた開閉弁73の下流に合流している。従って、この起動用酸化性ガス供給ライン76は、MGT50の起動時において、酸化性ガス排出系72を介して燃焼器52へ酸化性ガスを供給する流路となる。なお、起動用開閉弁77は、連携運転を行って発電する通常運転時は閉とされ、連携移行運転モードでMGT50を起動する際に開かれる。
【0031】
燃料ガス逆流防止ライン78は、酸化性ガス流量調整弁71の上流で酸化性ガス供給系70から分岐して排燃料ガス供給ライン27cに接続されるとともに、流路途中に逆流防止開閉弁79を有している。この燃料ガス逆流防止ライン78は、MGT50の起動時において、排燃料ガス供給ライン27cを介して燃焼器52へ酸化性ガスを供給する流路である。この排燃料ガス逆流防止ライン78は、排燃料ガス供給ライン27cの排燃料ガス開閉弁32と排燃料ガス流量調整弁33との間に接続されている。なお、逆流防止開閉弁79は、連携運転を行って発電する通常運転時は閉とされ、連携移行運転モードでMGT50を起動する際に開かれる。
【0032】
このように構成された複合発電システム1では、通常運転時にSOFC10及びMGT50を組み合わせた連携運転を行って発電するが、SOFC10が運転停止の状態でMGT50を起動してからSOFC10との連携運転に移行する場合、酸化性ガス流量調整弁71及び排燃料ガス開閉弁32を全閉とし、かつ、排燃料ガス流量調整弁33及び逆流防止開閉弁79を所望の開度に開いた状態として、燃料ガス逆流防止ライン78に酸化性ガスを供給しながらMGT50を起動する。
こうしてMGT50の起動が完了した後には、後述する連携移行運転モードの制御フロー(図5参照)に基づいて、SOFC10の運転を開始して連携運転に移行する。
【0033】
すなわち、本実施形態の複合発電システム1では、連携運転移行前にMGT50を起動する場合、以下に説明する運転方法が採用される。
具体的に説明すると、燃焼器52に接続された3本のライン中で運転停止により排燃料ガスの供給を受けられない排燃料ガス供給ライン27cについては、弁の開閉操作により流路の切り換えを行う。この結果、通常運転時にSOFC10から導入する排燃料ガスに代えて、MGT50の圧縮機51で圧縮された後の酸化性ガスから一部を導入することが可能となる。この酸化性ガスは、少なくとも燃焼器52内の燃料ガスが排燃料ガス供給ライン27cに逆流しない程度の圧力を有しているので、例えば排燃料ガス流量調整弁33の開度調整により、燃焼器52内の燃料圧力と略同圧に調整して燃料ガスの流出を防止することができる。
【0034】
このような複合発電システム1の運転方法によれば、MGT50を起動してからSOFC10の運転を開始して両者の連携運転に移行する連携移行運転モードにおいて、酸化性ガス流量調整弁71及び開閉弁73を全閉とし、かつ、排燃料ガス流量調整弁33及び逆流防止開閉弁79を開いた状態にして、燃料ガス逆流防止ライン78に圧縮された状態の酸化性ガスを供給しながらMGT50を起動した後、SOFC10との連携運転に移行するので、SOFC10を停止状態にしても、燃焼器52から燃料ガスが流出する逆流を防止したMGT50の起動が可能となる。
【0035】
従って、燃焼器52に接続された3本のラインは、起動用酸化性ガス供給ライン76に接続されている酸化性ガス排出系72及び排燃料ガス供給ライン27cから酸化性ガスを供給することで燃料ガスの逆流が防止され、さらに、燃料ガス供給系統40から未使用の都市ガス(燃料ガス)が問題なく供給されるので、燃焼器52では燃料供給系統40から導入した都市ガスを酸化性ガス排出系72や排燃料ガス供給ライン27cから導入した酸化性ガスにより確実に燃焼させて起動することができる。
【0036】
このように、MGT50の圧縮機51で生成される酸化性ガス(圧縮空気)の供給ラインである酸化性ガス供給系70は、燃料ガス逆流防止ライン78を介して排燃料供給ライン27cと接続され、連携移行運転モードでは、排燃料供給ライン27cから酸化性ガスを燃焼器52に供給することでMGT50を起動してからSOFC10との連携運転に移行する。
【0037】
そして、MGT50の起動後には、図5に示すフローチャートのように、排燃料ガス流量調整弁33による制御ロジックをSOFC10−MGT50のタイミングで適正化することで、燃焼器52への安定的な燃料ガス供給と差圧制御を実現する。
なお、図5に基づいて以下に説明するフローチャートの制御については、各種弁類やセンサー類と電気的に接続された制御部90において実施される。
【0038】
さて、連携運転移行モードにおけるSOFC運転開始の制御過程において、ステップS1でMGT50を起動した後には、圧縮機51で圧縮された酸化性ガスが通気されているため、SOFC10の起動開始時に圧力制御は不要である。
そして、SOFC10の連携開始時には、ステップS2で不活性ガス供給弁23を開とし、さらに、ステップS3で再循環流量調整弁30を開(全開)とする。
この後、ステップS4に進んで排燃料ブロワ29を起動し、この排燃料ブロワ29により昇圧された窒素ガスを再循環ライン27bからSOFC10へ通気する。
【0039】
一方、MGT50の起動後におけるステップS2〜S4と並行して、ステップS11では逆流防止開閉弁79を開とし、さらに、ステップS12で排燃料ガス流量調整弁33を開とする。
この後、ステップS4の排燃料ブロワ起動と、ステップS11及びS12における弁の開操作が全て完了したら、ステップS13に進んで排燃料ガス流量調整弁33を段階的に閉じるレート閉の操作を実施する。
【0040】
ステップS14では、再循環ライン27bと排燃料ガス供給ライン27cとの圧力は同圧か否かを判断する。この判断は、圧力センサー34,35から制御部90に入力される圧力値Pa,Pbによりなされる。
この結果、圧力値Pa,Pbが同圧(この場合の同圧は、所定の圧力差がある場合も包含する)となるYESの場合には、次のステップS15に進み、排燃料ガス流量調整弁33の開度を現状のまま固定する。一方、ステップS14の判断結果がNOの場合には、再度ステップS13に戻り、排燃料ガス流量調整弁33の開度を1段階閉じるレート閉の操作を繰り返す。
【0041】
ステップS15で排燃料ガス流量調整弁33の開度を固定したら、次のステップS16に進んで排燃料ガス開閉弁32を開とする。この後、ステップS17に進み、排燃料ガス流量調整弁33の開度制御(トラッキング)を実施する。
この後、ステップS18に進み、さらに排燃料ガス流量調整弁33の開度制御(必要電力対応)を実施する。
【0042】
このように、排燃料ブロワ29を起動した状態で排燃料ガス流量調整弁33の開度制御を実施した後には、ステップS5に進み、図示しない温度センサーから入力される発電室13の温度について、所定値以上か否かを判断する。
この結果、ステップS5の判断がYESの場合には、ステップS6に進んで都市ガス供給弁21を開としてから、ステップS8に進んでSOFC10による発電を開始することとなる。
【0043】
一方、ステップS6及びS8と並行して実施されるステップS7では、連携運転が完了したことにより排燃料ガス供給ライン27cへの酸化性ガス供給が不要となるため、燃料ガス逆流防止ライン78から逆流防止開閉弁79を閉じる。この結果、SOFC10及びMGT50は、連携運転への移行が完了して通常の発電が行われる。
すなわち、再循環ライン27bの流量制御を行い、SOFC10への排燃料ガス供給と同じタイミングで逆流防止開閉弁79を閉じることで、燃焼器52に対する圧縮された酸化性ガス供給(通気)を終了する。従って、連携運転移行モードにおけるSOFC運転開始の制御過程についても、同様に終了する。
【0044】
このように、上述した本実施形態の複合発電システム及びその運転方法によれば、SOFC10との連携運転前にMGT50を起動する場合であっても、燃焼器52から燃料ガスが逆流することを防止し、安全かつ確実に起動することが可能になる。
なお、本発明は上述した実施形態に限定されることはなく、その要旨を逸脱しない範囲内において適宜変更することができる。
【符号の説明】
【0045】
1 複合発電システム(燃料電池・ガスタービン発電システム)
10 SOFC(固体酸化物形燃料電池)
11 SOFCカートリッジ
12 セルスタック
13 発電室
14 燃料ガス供給室
15 燃料ガス排出室
16 酸化性ガス供給室
17 酸化性ガス排出室
20 燃料供給系
21 都市ガス供給弁(開閉弁)
22 都市ガス(燃料ガス)供給ライン
23 不活性ガス供給弁(開閉弁)
24 窒素ガス(不活性ガス)供給ライン
25 水蒸気供給弁(開閉弁)
26 水蒸気供給ライン
27 燃料ガス排出系
27a 排燃料ガスライン
27b 再循環ライン
27c 排燃料ガス供給ライン
27e 排燃料ガス大気放出ライン
28 流量調整弁
29 排燃料ブロワ
30 再循環流量調整弁
32 排燃料ガス開閉弁
33 排燃料ガス流量調整弁
34,35 圧力センサー
36 温度センサー
40 燃料ガス供給系統
50 MGT(マイクロガスタービン)
51 圧縮機
52 燃焼器
53 タービン
60 煙突
70 酸化性ガス供給系
71 酸化性ガス流量調整弁
72 酸化性ガス排出系
76 起動用酸化性ガス供給ライン
77 起動用開閉弁
78 燃料ガス逆流防止ライン
79 逆流防止開閉弁
90 制御部
図1
図2
図3
図4
図5